JP3878966B2 - サマリウム錯体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン重合用などの触媒として有用な新規な二価サマリウム錯体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二価ランタノイドである二価サマリウム(Sm)の錯体については、従来、Cp*-(ペンタメチルシクロペンタジエニルアニオン)や I- など同一の配位子を複数個有する錯体を中心に研究が進められてきた。最近、新規な配位子を有するランタノイド錯体として、ビスアリールオキシドアニオン(ArO- ) を配位子とする二価ランタノイド錯体(ArO)2Ln (LnはSm又はYbを示し、ArO は2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノキシドアニオンを示す) についての特徴ある反応性が報告され、アリールオキシド配位子がランタノイド錯体に対して有用な配位子であることが明らかにされた(Hou, Z., et al., J. Am. Chem. Soc., 117, pp.4421-4422, 1995; Yoshimura, T., et al., Organometallics, 14, pp.4858-4864, 1995; Hou, Z., et al., J. Am. Chem. Soc., 116, pp.11169-11170, 1994)。しかしながら、異なる配位子を有するサマリウム錯体は配位子の再配列などによって合成が困難であり、ほとんど研究されていない。
【0003】
例えば、二価サマリウムアミド錯体Sm[N(SiMe3)2]2(THF)2(Me: メチル基;THF:テトラヒドロフラン配位子)を二当量の2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノールなどのヒドロキシアリール化合物と反応させると、対応する二価サマリウムアリールオキシド錯体 (ArO)2Sm(THF)3 が得られること、並びに、この錯体をI2と反応させるとアリールオキシド配位子を有する三価のサマリウム・ヨウ化物: (ArO)2Sm(THF)2I が得られることが知られている(日本化学会平成7年春季年会, 演題番号3H5/43, 京都市)。これらはいずれもモノマーとして単離することができるものの、オレフィン重合などの触媒としての有用性はほとんどない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、オレフィンの重合などに有用な新規なサマリウム錯体を提供することを課題としている。より具体的には、異なる配位子を有するサマリウム錯体であって、同一の配位子を有するサマリウム錯体では達成できない特異な反応性を有するサマリウム錯体を提供することが本発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子 (Cp* ) 及びアリールオキシド配位子を併せ持ち、従来のサマリウム錯体とは異なる特徴的な触媒活性を有する二価サマリウム錯体を提供すべく鋭意努力したところ、アリールオキシド錯体 (ArO)2Sm(THF)3 の2当量のCp* K と反応させると、 ArO, Cp* 及びCp* K を配位子とし [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]n で表されるポリメリックな錯体が得られること、並びにこのポリメリック錯体にヘキサメチルホスホルアミド (HMPA) を添加するとCp* 及びArO を配位子として有するサマリウム錯体Cp* Sm(OAr)(HMPA)2が得らることを見い出した。また、サマリウム錯体 (Cp* )2Sm(THF)3又は (Cp* )2Sm(HMPA)2 をフェノール化合物 (ArOH) と反応させることによってもCp* 及びArO を配位子として有するサマリウム錯体が得られることを見い出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0006】
すなわち本発明は、式(I): [Cp* Sm(OAr) Cp* X(THF)2]n (式中、X はアルカリ金属イオンを示し、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、ArO はアリールオキシド配位子を示し、THF はテトラヒドロフラン配位子を示し、n は該錯体が [Cp* Sm(OAr) Cp* X(THF)2]を繰り返し単位とするポリメリック錯体であることを示す)で表される二価サマリウム錯体を提供するものである。この本発明の好ましい態様によれば、X がカリウムイオンであり、アリールオキシド配位子が2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノキシド配位子又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド配位子である上記錯体が提供される。
【0007】
また、本発明の別の態様によれば、式(II): Cp* Sm(OAr)(HMPA)2又はCp* Sm(OAr)(THF)3 (式中、Cp* 及びArO は上記と同様であり、HMPAはヘキサメチルホスホルアミド配位子を示し、THF はテトラヒドロフラン配位子を示す)で表される二価サマリウム錯体が提供される。この本発明の好ましい態様によれば、アリールオキシド配位子が、それぞれ2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノキシド配位子又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド配位子である上記錯体が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、式(I) 又は式(II)で表される二価サマリウム錯体からなる触媒、好ましくはオレフィン重合用触媒が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の錯体は、式(I): [Cp* Sm(OAr) Cp* X(THF)2]n 又は式(II): Cp* Sm(OAr)(HMPA)2又はCp* Sm(OAr)(THF)3 で表される二価サマリウム錯体である。これらの錯体において、ArO はアリールオキシド配位子を示し、好ましくは、置換フェノキシドアニオンを示す。置換フェノキシドアニオンとしては、ベンゼン環上に1個又は2個以上、好ましくは2個又は3個のアルキル基が置換したものを用いることができる。ベンゼン環上の2個以上のアルキル基を有する場合、これらのアルキル基は同一でも異なっていてもよく、これらのアルキル基のうちの2個がそれぞれベンゼン環上の2-位及び6-位(フェノキシドのベンゼン環においてオキシド基が置換した炭素原子を1-位とする)に置換して、2,6-ジアルキル置換フェノキシドアニオンを形成していることが好ましい。
【0009】
ベンゼン環上の2-位及び6-位に置換するアルキル基としては、錯体の安定性などの観点から、イソプロピル基、tert- ブチル基、ネオペンチル基などの立体的に嵩高いC3-C6 アルキル基を用いることが好適である。例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシドアニオン、2,6-ジイソプロピルフェノキシドアニオン、2,6-ジネオペンチルフェノキシドアニオン、2-tert- ブチル-6- イソプロピルフェノキシドアニオン、2-tert- ブチル-6- ネオペンチルフェノキシドアニオン、又は2-イソプロピル-6- ネオペンチルフェノキシドアニオンなどを用いることができる。これらのうち、ベンゼン環の2-位及び6-位がともに tert-ブチル基で置換されたフェノキシドアニオン(2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシドアニオン)が特に好ましい。
【0010】
また、これらの2,6-ジアルキル置換フェノキシドアニオンのベンゼン環がさらに1個又は2個以上、好ましくは1個のアルキル基を有する場合、そのようなアルキル基としてはC1-C4 アルキル基が好適であり、該アルキル基の置換位置としては4-位が好適である。例えば、2,6-ジアルキル置換フェノキシドアニオンのベンゼン環の4-位にメチル基やエチル基などのC1-C4 アルキル基が導入されたフェノキシドアニオンを配位子として有する錯体は、溶解性などの観点から好ましい。より具体的には、配位子として2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノキシドアニオンを有する錯体は本発明の特に好ましい態様である。
【0011】
式(I): [Cp* Sm(OAr) Cp* X(THF)2]n で表される錯体において、X としてはカリウムイオンやナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンを用いることができ、好ましくは、カリウムイオンを用いることができる。また、式(I) におけるn は、錯体中のCp* が架橋することにより、この錯体が [Cp* Sm(OAr) Cp* X(THF)2]を繰り返し単位とするポリメリック構造を有していることを示す。従って、上記の式により示される錯体における上記繰り返し単位の数(いわゆる重合度)は特に限定されず、実質的にポリメリック構造を有するものはいずれも本発明の範囲に包含される。
【0012】
本発明の式(I) で示される錯体は、公知の二価サマリウムアリールオキシド錯体(ArO)2Sm(THF)3(式中、ArO 及びTHF は上記のとおりである)を2当量のCp* X (X及びCp* は上記のとおりであり、X としてはカリウムイオンが好ましい)とテトラヒドロフラン中で反応させることにより収率よく製造することができる。原料として用いる (ArO)2Sm(THF)3 は、公知の方法(例えば、Jesorka, A. ら, 日本化学会平成7年春季年会, 演題番号3H5/43, 京都市, 1995年)に従い、二価サマリウムアミド錯体 Sm[N(SiMe3)2]2(THF)2 (SiMe3:トリメチルシリル基)に二当量のヒドロキシアリール化合物を反応させることにより容易に製造することができる。ヒドロキシアリール化合物としては、所望のアリールオキシド配位子に対応する化合物を用いればよく、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノキシドアニオンを配位子として導入する場合には、ヒドロキシアリール化合物2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノールを用いればよい。
【0013】
また、本発明の式(II)で示される錯体のうちCp* Sm(OAr)(HMPA)2で表される錯体は、式(I) で示される上記のポリメリック錯体にヘキサメチルホスホルアミド (HMPA) を加えることによって容易に製造することができる。また、Cp* Sm(OAr)(THF)3 で表される錯体は、容易に入手可能な (Cp* )2Sm(THF)2に対してテトラヒドロフラン中でヒドロキシアリール化合物を反応させることにより製造可能である。なお、この錯体はテトラヒドロフラン中に溶解すると、不均化して (Cp* )2Sm(THF)2と(ArO)2Sm(THF)3を与える場合がある。
【0014】
また、Cp* Sm(OAr)(HMPA)2で表される本発明の錯体は、上記のCp* Sm(OAr)(THF)3 を含むテトラヒドロフラン溶液にヘキサメチルホスホルアミドを加えることによっても製造することができる。さらに、Cp* Sm(OAr)(HMPA)2で表される錯体は、(ArO)2Sm(THF)3に対して SmI2 を反応させて (ArO)SmI(THF)3 を製造した後、得られた錯体に対してヘキサメチルホスホルアミドとCp* X (Xとしてはカリウムイオンが好ましい)を反応させることによっても製造可能である。
【0015】
本発明の錯体は各種の有機反応の触媒として用いることができ、例えば、オレフィンの重合用触媒として好適に用いることができる。本発明の錯体を用いたオレフィンの重合方法は、例えば、公知の二価又は三価サマリウム錯体について報告されたオレフィンの重合方法に従って行うことが可能である。このような方法として、例えば、安田らの方法などを利用することができる (Yasuda, H., et al., Macromolecules, 26, pp.7134-7143, 1993) 。また、本発明の錯体は、アリールオキシド配位子を有する他の二価サマリウム錯体の製造用原料として用いることもできる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。
例1:
Sm[N(SiMe3)2]2(THF)2 (4.44 g, 7.21 mmol)をテトラヒドロフラン(50 ml) に溶解し、20 ml のテトラヒドロフランに溶解した 2,6- ジターシャリーブチル-4- メチルフェノール (3.18 g, 14.42 mmol) を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去して得られた残査をヘキサンで洗浄し、テトラヒドロフラン/トルエンから再結晶してフェノキシド・サマリウム錯体 Sm(OAr)2(THF)3 (OAr: 2,6-di-tert-ブチル-4- メチルフェノキシド配位子) を黒褐色結晶として得た(4.81 g, 5.97 mmol, 収率 83%)。
1H-NMR (C6D6, 22℃) δ: 9.15(brs, 12H, THF), 4.20(brs, 12H, THF), -0.10(brs, 36H, tert-Bu), -0.95(brs, 4H, C6H2), -1.90(brs, 6H, Me)
Anal. Calcd. for C42H70O5Sm: C, 62.67%; H, 8.76%. Found: C, 62.30%, H, 8.81%.
【0017】
上記錯体 Sm(OAr)2(THF)3 (0.805 g, 1.00 mmol)を 10 mlのテトラヒドロフランに溶解し、Cp* K (0.35 g, 2.01 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 (2 ml) に加えて室温で約18時間攪拌した。反応液を濾過して母液を減圧濃縮した後、残査にテトラヒドロフランを加えて析出物を濾去して暗緑色の母液を得た。この母液を濃縮して結晶化させ、さらにテトラヒドロフランを加えて沈殿を濾去して緑褐色の母液を得た。この分液の溶媒を留去して残査を結晶化させ、得られた結晶を濾取してテトラヒドロフランから再結晶して本発明のサマリウム錯体 [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]n (ArO: 2,6-ジターシャリーブチル-4- メチルフェノキシド配位子)を得た。
1H-NMR (C6D6, 22℃) δ: 6.64(s, 2H, C6H2), 3.54(s, 15H, C5Me5), 1.68(s, 3H, Me), 1.58(s, 15H, C5Me5), 1.32(s, 18H, tert-Bu)
Anal. Calcd. : C, 62.72%; H, 8.45%. Found: C, 63.39%, H, 8.11%.
【0018】
この錯体の単結晶 (0.40×0.35×0.20 mm)をX線解析に付したところ以下の結晶データが得られ、この結晶が [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]を一単位としてCp* が架橋したポリメリック構造を有していることが確認された。
a=13.002 (3); b=17.202 (4); c=10.373 (6)Å
α=91.40 (3)°; β=103.97 (3) °; γ=100.38 (2) °
単位体積:2209 (1)Å3 ;結晶系:三斜晶系;空間群:P-1 (#2)
【0019】
例2
例1と同様にして Sm(OAr)2(THF)3 (ArO: 2,6-ジターシャリーブチルフェノキシド配位子)を製造した。この錯体 (0.305 g, 0.401 mmol)を 7 ml のテトラヒドロフランに溶解し、Cp* K (0.140 g, 0.803 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 (1 ml) に加えて室温で約20時間攪拌した。反応液を濾過した後に溶媒を留去し、残査の固体をテトラヒドロフランに溶解してトルエンを加え、析出した結晶を濾取して本発明のサマリウム錯体 [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]n (ArO: 2,6-ジターシャリーブチルフェノキシド配位子)の板状晶を得た。
1H-NMR (THF-d6, 22℃) δ: 6.67(d, 2H, J=6.6Hz, C6H3), 5.67(t, 1H, J=6.6Hz, C6H3), 3.54(s, 15H, C5Me5), 1.59(s, 15H, C5Me5),
1.34(s, 18H, tert-Bu)
Anal. Calcd. : C, 62.32%; H, 8.34%. Found: C, 61.26%, H, 8.29%.
【0020】
この錯体の単結晶 (0.40×0.35×0.20 mm)をX線解析に付したところ以下の結晶データが得られ、この結晶が [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]を一単位としてCp* が架橋したポリメリック構造を有していることが確認された。
a=13.810 (2); b=17.174 (2); c=10.338 (3)Å
α=90.00 (0)°; β=100.80 (2) °; γ=90.00 (0)°
単位体積:2408.5 (9)Å3 ;結晶系:単斜晶系;空間群:P21/m (#11)
【0021】
例3
例1で得た錯体 Sm(OAr)2(THF)3 (0.81 g, 1 mmol)を 5 ml のテトラヒドロフランに溶解して、SmI2 (10 ml, 1 mmol)の0.1 M テトラヒドロフラン溶液に加えて室温で4時間攪拌した。減圧下で溶媒を一部留去した濃縮液にエーテルを加えて、二価サマリウム錯体 (ArO)SmI(THF)3 を黒色結晶として沈殿させた(0.91 g)。この結晶を減圧乾燥したところ、錯体1分子あたり2個のテトラヒドロフラン分子が失われたことが確認された (THF 分子が失われた状態での収率 80%)。
1H-NMR (C6D6, 22℃) δ: 4.40(brs), 1.53(brs), -3.5〜0.5(very broad)
Anal. Calcd. for C19H31O2ISm [錯体一分子あたり2個のテトラヒドロフラン分子が失われた状態:(ArO)SmI(THF)]: C, 40.12%; H, 5.49%. Found: C, 39.50%, H, 5.79%.
【0022】
上記の (ArO)SmI(THF) (0.57 g, 1 mmol) をテトラヒドロフランに溶解し、ペンタメチルシクロペンタジエノ・カリウム (0.18 g, 1 mmol) のテトラヒドロフラン溶液に加えた。暗褐色の反応液を終夜攪拌した後に濾過し、母液を減圧濃縮して暗褐色の残査を得た。この残査をトルエンで洗浄した後にテトラヒドロフランに溶解し、さらにヘキサメチルホスホルアミド (0.35 ml, 2 mmol)を加えた。反応液を減圧で一部濃縮し、エーテルを加えて析出する結晶を濾取し、本発明のサマリウム錯体Cp* Sm(OSr)(HMPA)2 (ArO: 2,6- ジターシャリーブチル-4- メチルフェノキシド配位子)を褐色柱状晶として得た。
1H-NMR (C6D6, 22℃) δ: 5.26(s, 15H, C5Me5), 4.20(brs, 36H, NMe), 2.76(s, 18H, tert-Bu), 2.24(s, 2H, C6H2), 0.42(S, 3H, Me)
Anal. Calcd. for C37H74N6O3P2Sm: C, 51.47; H, 8.64; N, 9.73. Found: C, 51.10; H, 8.73; N, 9.91
【0023】
例1で得た本発明のサマリウム錯体 [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]n (ArO: 2,6-ジターシャリーブチル-4- メチルフェノキシド配位子)をテトラヒドロフランに溶解し、ヘキサメチルホスホルアミドを加えた。反応液を上記と同様に後処理することにより、上記の物理化学的性状を有する本発明のサマリウム錯体Cp* Sm(OAr)(HMPA)2 (ArO: 2,6- ジターシャリーブチル-4- メチルフェノキシド配位子)を得ることができた。
【0024】
例4
本発明のサマリウム錯体として、錯体A: [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]n (ArO: 2,6-ジターシャリーブチルフェノキシド配位子);錯体B:Cp* Sm(OAr)(HMPA)2 (ArO: 2,6- ジターシャリーブチルフェノキシド配位子);及び錯体C:Cp* Sm(OAr)(THF)m 〔ArO: 2,6- ジターシャリーブチル-4- メチルフェノキシド配位子, テトラヒドロフラン中で (Cp* )2Sm(THF)2に対して 2,6- ジターシャリーブチル-4- メチルフェノールを反応させることにより製造したもの。錯体の構造は推定構造であり、THF の数(m) は乾燥の具合によって異なる。トルエン洗浄後に真空乾燥するとテトラヒドロフランが脱離した錯体が得られた:Anal. Calcd. for (Cp* )Sm(OAr): C, 58.72; H, 7.39; Found: C, 57.42; H, 7.32 〕を用い、安田らの方法 (Yasuda, H., et al., Macromolecules, 26, pp.7134-7143, 1993) に従って、トルエン中でオレフィンの重合反応を行った結果を以下の表に示す。
【0025】
【表1】
─────────────────────────────
錯体 MMA1) 時間(hr) 温度 Mn2) Mw3) Mw/Mn 収率
─────────────────────────────
A 500 0.5 0℃ 122 647 5.31 100%
A 1429 0.5 0 1283 1831 1.43 7.5
B 500 1.0 0 259 338 1.30 8.8
C 500 1.0 0 851 1710 2.01 37
C 500 2.0 0 1049 2813 2.68 42
C 250 1.0 0 546 1710 3.13 67
C 250 1.0 0 519 1793 3.48 67
─────────────────────────────
1)メタクリル酸メチル (触媒に対するモル比)
2)生成物の数平均分子量 (×10-3)
3)生成物の重量平均分子量 (×10-3)
【0026】
【発明の効果】
本発明のサマリウム錯体は、オレフィンの重合反応やアリールオキシド配位子を有する他のサマリウム錯体の製造に有用である。
Claims (6)
- 式: [Cp* Sm(OAr) Cp* X(THF)2]n (式中、X はアルカリ金属イオンを示し、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、ArO はアリールオキシド配位子を示し、THF はテトラヒドロフラン配位子を示し、n は該錯体が [Cp* Sm(OAr) Cp* X(THF)2]を繰り返し単位とするポリメリック錯体であることを示す)で表される二価サマリウム錯体。
- X がカリウムイオンであり、アリールオキシド配位子が2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノキシド配位子又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド配位子である請求項1に記載の錯体。
- 式: Cp * Sm(OAr)(HMPA) 2 (式中、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、ArO はアリールオキシド配位子を示し、HMPAはヘキサメチルホスホルアミド配位子を示す)で表される二価サマリウム錯体。
- アリールオキシド配位子が2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノキシド配位子又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド配位子である請求項3に記載の錯体。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の二価サマリウム錯体からなる触媒。
- オレフィン重合用に用いる請求項5に記載の触媒。
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