JP3878942B2 - 散乱体の吸収情報の計測方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、生体組織などの散乱体内部の吸収に関する情報を得ることができる計測方法及び装置、イメージング方法及び装置、透視方法及び装置、断層像撮影方法及び装置、あるいはマンモグラフィーの方法及び装置に関するものである。より詳しくは、本発明は、散乱体内部の特定部分の特定吸収成分の濃度の時間変化やその空間分布を計測する方法および装置、さらには種々の形状の表面をもつ散乱体内部の特定吸収成分の濃度分布を非侵襲計測することができる散乱体の吸収情報計測方法及び装置に関するものである。
光を利用して散乱体である生体組織を計測あるいはイメージングする主な方法は4種あり、これらは、(a)直進光(baristic photon)を利用するもの、(b)コヒーレント成分をヘテロダイン検出して利用するもの、(c)散乱光を利用するもの、(d)時間分解ゲートを利用するものに大別される。
(a)直進光(baristic photon)を利用するものは、計測対象にパルス光を入射して、出力光の中に含まれる直進透過成分を超高速ゲートで抽出する。この際、直進透過光の飛行時間は散乱光より短くなり、出力光の中で最短になる。したがって、計測対象から最初に出てくる光を超高速ゲートで切り出すことによって直進透過光が検出できる。この方法は、原理的にはX線CTのような高い空間解像度が期待できるという利点がある。しかし、散乱体である計測対象の内部ではほとんど全ての光が多重に散乱されるため、直進透過成分はほとんど存在しないか、たとえ有ったとしても極微量である。その結果、計測に際する光の利用率が極めて悪くなり、生体に入射できる最大光入射強度(2mW/mm2程度)を考慮すると、イメージング計測などに極めて長い時間が必要となり実用的でない。また、頭部や腕部などの大きな対象物では信号光が極微弱になり、実用上計測は不可能である。
(b)コヒーレント成分を利用する方法は、コヒーレントな高周波変調光を分岐して、一方を計測対象に入射する。そして出力光ともう一方の高周波変調光とを干渉させて、出力光の中に含まれるコヒーレント成分をヘテロダイン検出し、そのコヒーレント成分を計測に利用する。
つまり、この計測系では、散乱の度合いに応じて散乱光の飛行時間(または光路長)や飛行方向が変化して乱されるため多重散乱された光は干渉しなくなり、ほぼ直進透過した光が検出される。したがってこの場合にも、先の例と同様に原理的には高い空間解像度が期待されるが、光の利用率が極めて悪く、生体の計測やイメージングなどに実用することは極めて困難である。また、頭部や腕部などの大きな対象物の計測は実用上不可能である。
(c)散乱光を検出するものは、連続(CW)光、パルス光、あるいは変調光を計測対象に入射し、計測対象内を散乱伝播した光(出力光)を検出して利用する。この際、計測対象の時間応答特性に対して十分短いパルス幅のパルス光を入射する場合はインパルス光入射と考えてよく、対応する出力光はインパルス応答で表される。このような計測は時間分解計測(TRS)とよばれ、インパルス応答の時間波形を計測して内部情報を演算する。また、連続(CW)光を入射する方法はCW計測、変調光を入射する計測は位相変調計測(PMS)とよばれる。前者はインパルス応答の時間積分値を、また後者はインパルス応答のフーリエ変換、つまりシステム関数を計測していることになる。以上から、時間分解計測(TRS)では、他の2者より多くの情報を含む信号を得ていることが理解される。また、変調周波数を掃引する位相変調計測(PMS)とインパルス応答の時間分解計測(TRS)は、ほぼ同等の情報を含むことになる。連続(CW)計測と位相変調計測(PMS)では、信号処理方式は大きく異なるが、得られる信号は本質的に同等の情報を含むから、ほぼ同じ程度の情報の計測ができる。これらは、いずれの方法も、ほぼ全ての出力光を利用するから、前記(a)及び(b)の2例に比較すると光の利用率が桁違いに向上する。しかし、散乱光は計測対象の内部のほぼ全域、あるいはかなり広い範囲に広がってしまうため、上記の方法では狭い特定部位の定量計測ができない。また、イメジングや光CTでは、空間分解能が極めて悪く、実用化は困難である。
以上に対して、(d)時間分解ゲートを利用するものは、インパルス応答波形の一部分を利用する。例えば、時間分解出力信号(インパルス応答波形)の最初の部分に含まれる光子は、ほとんど散乱されなかった光子(あまり寄り道をしなかった光子)、つまり光入射位置(光入射点)と光検出位置(受光点)を結ぶ直線光路の近くを伝播した光子である。したがって、時間分解ゲートによる信号を利用すれば、上記直線光路の近くを伝播して検出された光子を抽出することができ、イメージングなどの空間分解能を向上させることができる。この極限が先に述べた直進光(ballistic photon)である。しかし、現在までに開発あるいは提案されている時間分解ゲート法では、散乱体内部の吸収成分の定量測定ができない。この理由は、時間分解ゲート法で得られる信号を解析的に記述する方法が開発されていないことにある。つまり、時間分解ゲート法で得られる信号を光拡散理論に基づいて解析して、吸収成分の定量に利用する方法は知られていない。また、仮に光拡散理論に基づいて解析する方法が開発されたとしても、光拡散理論に基づくことに起因する本質的問題、つまり拡散近似が成立しない場合や種々の外形形状をもつ散乱体の計測が不可能であるという問題が残る。以上から、時間分解ゲート法は空間分解能を向上させることができるが、吸収成分などの内部情報を定量することができないという大きな問題がある。
なお、以上のような時間分解ゲート法については多くの文献があり、代表的なものを次に列記する。ただし、いずれの場合にも、本発明で開示されるような吸収成分の定量化についての議論や示唆は皆無である。
A.J.Joblin, "Method of calculating the image resolution of a near-infrared time-of-flight tissue-imaging system", Appl.Opt.Vol.35, pp.752-757(1996) J.C.Hebden, D.J.Hall, M.Firbank and D.T.Delpy, "Time-resolved opticalimaging of a solid tissue-equivalent phantom", Appl.Opt.Vol.34, pp.8038-8047 (1995) G.Mitic, J.Kolzer, J.Otto, E.Plies, G.Solkner and W.Zinth, "Time-gated transillumination of biological tissues and tissue-like phantoms", Appl.Opt.Vol.33, pp.6699-6710 (1994) J.C.Hebden and D.T.Delpy, "Enhanced time-resolved imaging with a diffusion model of photon transport", Opt.Lett.Vol.19, pp.311-313 (1994) J.A.Moon, R.Mahon, M.D.Duncan and J.Reintjes, "Resolution limits forimaging through turbid media with diffuse light", Opt.Lett.Vol.18, pp.1591-1593 (1993)
本発明は、前述した従来の時間ゲート法の「高い空間分解能が得られる」という利点を生かしたまま、「吸収成分などの内部情報の定量計測ができない」という問題点を解決することを目的とする。具体的には、本発明は、形状の異なる散乱体内部の光の挙動を記述する方法(基本関係式)、およびこの基本関係を時間分解ゲート法に適用する方法を見出し、この関係を利用して種々の形状の散乱体内部の特定吸収成分の濃度変化や絶対値などを散乱体の外形形状に影響されずかつ高い空間解像度で計測する方法および装置を提供することを目的とする。そして、本発明は、特定部分の特定吸収成分に関する計測精度が大幅に改善されるとともに、それらの時間変化や空間分布を計測することができる生体計測方法及び装置、イメージング方法及び装置、透視方法及び装置、断層像解析方法及び装置、あるいはマンモグラフィーの方法及び装置などの散乱体内部の吸収情報の計測方法および装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の散乱体の吸収情報の計測方法は、所定の波長のパルス光を発生させる第1ステップと、前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する第2ステップと、測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する第3ステップと、前記第3ステップで得られた光信号の一部分を時間的に切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を取得する第4ステップと、異なる複数のタイミングでそれぞれ前記第1乃至第4ステップを繰り返して行い、前記複数のタイミングにおいて得られた複数の前記測定信号のそれぞれに対して時間積分値および平均光路長を導出する第5ステップと、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の変化量との間の所定の関係に基づいて、前記複数のタイミングの間に生じた吸収係数の変化量を演算する第6ステップと、を備えることを特徴とする方法である。
この場合、前記第6ステップで得られた吸収係数の変化量、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度変化量との間の所定の関係に基づいて、前記複数のタイミングの間に生じた吸収成分の濃度の変化量を演算する第7ステップをさらに備えてもよい。
また、前記第6ステップにおいて、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度変化量との間の所定の関係に基づいて、前記複数のタイミングの間に生じた吸収成分の濃度の変化量を演算してもよい。
本発明の第2の散乱体の吸収情報の計測方法は、所定の波長のパルス光を発生させる第1ステップと、前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する第2ステップと、測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する第3ステップと、前記第3ステップで得られた光信号の一部分を時間的に切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を取得する第4ステップと、前記光入射位置と前記光検出位置との間の距離を固定しつつ異なる複数の測定位置でそれぞれ前記第1乃至第4ステップを繰り返して行い、前記複数の測定位置において得られた複数の前記測定信号のそれぞれに対して時間積分値および平均光路長を導出する第5ステップと、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記複数の測定位置の間における吸収係数の差を演算する第6ステップと、を備えることを特徴とする方法である。
この場合、前記第6ステップで得られた吸収係数の差、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度差との間の所定の関係に基づいて、前記複数の測定位置の間における吸収成分の濃度の差を演算する第7ステップをさらに備えてもよい。
また、前記第6ステップにおいて、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度差との間の所定の関係に基づいて、前記複数の測定位置の間における吸収成分の濃度差を演算してもよい。
本発明の第3の散乱体の吸収情報の計測方法は、ヒトを除く測定対象物に対して散乱係数が等しいか又は等しいと見なせる異なる波長のパルス光を発生させる第1ステップと、前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する第2ステップと、測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する第3ステップと、前記第3ステップで得られた光信号の一部分を時間的に、所定の切り出しタイミング及び切り出し時間で切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を、前記異なる波長のパルス光に対するそれぞれの時間関係が同一となるようにして取得する第4ステップと、前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出する第5ステップと、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記異なる波長のパルス光に対する吸収係数の差を演算する第6ステップと、を備えることを特徴とする方法である。
また、前記第5ステップにおいて、前記複数の測定信号のそれぞれに対して所定の基準時刻からの時間を乗じた値の第2の時間積分値を導出し、前記時間積分値及び当該第2の時間積分値に基づき前記平均光路長を導出することとしてもよい。
また、前記第5ステップにおいて、散乱係数をμ、吸収係数をμ、光速度をc、前記光信号に対応する時間tの関数であるインパルス応答をs(μ,t)exp(−μct)、前記所定の切り出しタイミング及び切り出し時間をt=[t1,t2](t1<t2)、とそれぞれしたときに、前記平均光路長L(μ,μ)を以下の式
Figure 0003878942
に基づいて導出することとしてもよい。
この場合、前記第6ステップで得られた吸収係数の差、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する第7ステップをさらに備えてもよい。
また、前記第6ステップにおいて、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算してもよい。
さらに、前記第3ステップにおいて複数の光検出位置で受光し、前記第4ステップにおいて、前記複数の光検出位置でそれぞれ前記異なる波長のパルス光に対応してそれぞれ測定信号を取得し、前記第5ステップにおいて、前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出し、前記第6ステップにおいて、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する、ことがより好ましい。
また、前記第2ステップにおける光入射位置と前記第3ステップにおける光検出位置とを測定対象である散乱体の外周に沿って走査し、前記走査による複数の測定位置に対してそれぞれ前記第6ステップで得られる吸収係数の濃度を演算して、散乱体内の濃度分布の断層像を演算する第8ステップをさらに備えることも可能である。
本発明の第1の散乱体の吸収情報の計測装置は、所定の波長のパルス光を発生させる光源と、前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する光入射部と、測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する受光部と、前記受光部で得られた光信号の一部分を時間的に切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を取得する信号検出部と、異なる複数のタイミングでそれぞれ前記測定信号を取得する計測を行い、前記複数のタイミングにおいて得られた複数の前記測定信号のそれぞれに対して時間積分値および平均光路長を導出する第1の演算部と、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の変化量との間の所定の関係に基づいて、前記複数のタイミングの間に生じた吸収係数の変化量を演算する第2の演算部と、を備えることを特徴とする装置である。
この場合、前記第2の演算部は、さらに、前記第2の演算部で得られた吸収係数の変化量、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度変化量との間の所定の関係に基づいて、前記複数のタイミングの間に生じた吸収成分の濃度の変化量を演算してもよい。
また、前記第2の演算部において、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度変化量との間の所定の関係に基づいて、前記複数のタイミングの間に生じた吸収成分の濃度の変化量を演算してもよい。
本発明の第2の散乱体の吸収情報の計測装置は、所定の波長のパルス光を発生させる光源と、前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する光入射部と、測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する受光部と、前記受光部で得られた光信号の一部分を時間的に切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を取得する信号検出部と、前記光入射位置と前記光検出位置との間の距離を固定しつつ異なる複数の測定位置でそれぞれ前記測定信号を取得する計測を行い、前記複数の測定位置において得られた複数の前記測定信号のそれぞれに対して時間積分値および平均光路長を導出する第1の演算部と、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記複数の測定位置の間における吸収係数の差を演算する第2の演算部と、を備えることを特徴とする装置である。
この場合、前記第2の演算部は、さらに、前記第2の演算部で得られた吸収係数の差、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度差との間の所定の関係に基づいて、前記複数の測定位置の間における吸収成分の濃度の差を演算してもよい。
また、前記第2の演算部において、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度差との間の所定の関係に基づいて、前記複数の測定位置の間における吸収成分の濃度差を演算してもよい。
本発明の第3の散乱体の吸収情報の計測装置は、測定対象物に対して散乱係数が等しいか又は等しいと見なせる異なる波長のパルス光を発生させる光源と、前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する光入射部と、測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する受光部と、前記受光部で得られた光信号の一部分を時間的に、所定の切り出しタイミング及び切り出し時間で切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を、前記異なる波長のパルス光に対するそれぞれの時間関係が同一となるようにして取得する信号検出部と、前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出する第1の演算部と、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記異なる波長のパルス光に対する吸収係数の差を演算する第2の演算部と、を備えることを特徴とする装置である。
また、前記第1の演算部は、前記複数の測定信号のそれぞれに対して所定の基準時刻からの時間を乗じた値の第2の時間積分値を導出し、前記時間積分値及び当該第2の時間積分値に基づき前記平均光路長を導出することとしてもよい。
また、前記第1の演算部は、散乱係数をμ 、吸収係数をμ 、光速度をc、前記光信号に対応する時間tの関数であるインパルス応答をs(μ ,t)exp(−μ ct)、前記所定の切り出しタイミング及び切り出し時間をt=[t1,t2](t1<t2)、とそれぞれしたときに、前記平均光路長L (μ ,μ )を以下の式
Figure 0003878942
に基づいて導出することとしてもよい。
この場合、前記第2の演算部は、さらに、前記第2の演算部で得られた吸収係数の差、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算してもよい。
また、前記第2の演算部において、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算してもよい。
さらに、前記受光部は、複数の光検出位置で受光するものであり、前記信号検出部は、前記複数の光検出位置でそれぞれ前記異なる波長のパルス光に対応してそれぞれ測定信号を取得するものであり、前記第1の演算部は、前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出するものであり、前記第2の演算部は、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算するものである、ことが好ましい。
また、前記光入射部における光入射位置と前記受光部における光検出位置とを測定対象である散乱体の外周に沿って走査し、前記走査による複数の測定位置に対してそれぞれ前記第2の演算部で得られる吸収係数の濃度を演算して、散乱体内の濃度分布の断層像を演算する第3の演算部をさらに備えることも可能である。
以上説明したように、本発明の散乱体の吸収情報計測方法及び装置によれば、再入射不可能な面からなる任意の形状の散乱体内部の特定吸収成分の濃度変化や絶対濃度などを、高空間分解能で計測することが可能となる。従って、本発明によれば、特定部分の特定吸収成分に関する計測精度を大幅に改善することができ、それらの時間変化や空間分布を散乱体の外形形状に影響されずかつ高い空間解像度で計測することができる生体計測方法及び装置、イメージング方法及び装置、透視方法及び装置、断層像解析方法及び装置、あるいはマンモグラフィーの方法及び装置などの散乱体内部の吸収情報の計測方法および装置を提供することが可能となる。
(本発明の原理)
先ず、本発明の原理について説明する。ここでは、先ず一般に用いられている光拡散近似法の問題点を明確にし、次に本発明の原理を述べる。
一般には、散乱体内部の光子の挙動は光拡散理論(Photon Diffusion Theory)に基づく光拡散方程式によって解析されている。つまり、散乱体内部の光の挙動は光拡散方程式によって近似され、この方程式を解くと計測対象の光学的特性あるいは光学定数と出力光との関係が求められ、この関係から吸収情報などを導出することができる。ところが、光拡散方程式に基づく方法は次のような問題がある。
つまり、光拡散方程式を解く場合、必ず境界条件が設定される必要がある。しかし、境界条件は散乱体の形状に大きく依存するため、正確な計測を行うためには、散乱体の形状が変わる度に、新たな境界条件を設定して光拡散方程式を解く必要がある。ところが、境界条件が有る程度正確に設定できる散乱体は無限空間、半無限空間、無限長の円柱、無限に広がる有限厚さのスラブ、球など、形状が極めて単純なものに限定される。この結果、形状が単純でない生体組織などの計測では、近似境界条件を用いることが不可欠になり、これが大きな計測誤差を生じる原因となっている。このような問題は、例えば最近の文献; Albert Cerussiet al. "The Frequency Domain Multi-Distance Method in the Presence of Curved Boundaries, in Biomedical Optical Spectroscopy and Diagnostics, 1996, Technical Digest (Optical Society of America, washington DC, 1996) pp.24-26 でも議論されている。以上の問題点を要約すると、「形状の異なる散乱体に対して統一的に適用できる計測法は未開発であり、従来技術では形状の異なる散乱体に対して統一的に内部の特定吸収成分の濃度などを正確に計測することは不可能である」となる。
そこで以下では、先ず形状の異なる散乱体に対して統一的に適用できる関係式を開示し、次にこの関係式を時間分解ゲート法に適用し、吸収成分の定量方法を開示する。空間分解能を向上させて、吸収成分などの内部情報を定量することができる本発明の装置及び方法においては、ゲート時間とそのタイミングを制御することによって空間分解能を選択することができる。
生体組織などの散乱体の内部を非侵襲計測しようとする場合、散乱体の表面に光を入射し、散乱体の内部を伝播した光を表面の他の位置で受光して測定信号を得て、その測定信号から内部に含まれる吸収成分の濃度などの情報を計測する。この際、光子は散乱体内部の散乱成分によって強く散乱され、その光路はジグザグに折れ曲がる。図1は、位置Pに入射した光子が位置Qで受光されたときの光子の飛跡の例を示す。基準時間t=0に散乱体にインパルス光を入射したときの出力光の時間波形(インパルス応答)は、種々のジグザク光路を飛行した種々の飛行距離(光路長)をもつ複数の光子で構成される。ところが、任意の時間tにおける出力光を構成する光子は、媒体中の光速度をcとしたとき、それぞれが一定の飛行距離(光路長)l=ctをもち、それぞれの光子に対してベア・ランバート(Beer-Lambert)則が成立する。つまり、吸収係数をμaとしたときそれぞれの光子の生存率はexp(-cμat)となる。つまり、多数の光子からなる光パルスを位置Pから入射して位置Qで受光すると、時間tには種々の光路を通過した多くの光子が検出されることになるが、それらの総和である検出光量、つまり生存率はexp(-cμat)に比例する。なお上記で、生体の巨視的な屈折率は水の屈折率にほぼ等しい一定値となるから、前記光速度cは定数と見なした。以下、上記の事実をマイクロ・ベア・ランバート則とよぶ。
以上から、t=0に散乱体にインパルス光を入射したときのインパルス応答h(t)は、散乱係数μs、吸収係数μa、および時間tの関数となり、次のように表される。
Figure 0003878942
ここで、s(μs,t)は吸収係数がμa=0のときの応答(つまり、散乱のみがあるときの応答)、指数項exp(-μact)は吸収係数μaによる減衰を表す項である。いずれの関数もt<0のときゼロとなる時間因果関数である。以上ではインパルス光入射を考えたが、媒体の時間応答に対して時間幅が十分短いと見なせるパルス光入射に対して、上記の関係が成立することは明らかである。したがって以下では、時間幅が十分短いと見なせるパルス光入射について考える。
なお、ここで上式は境界条件に関する変数を含んでいないことに注目されたい。このことは、境界条件に関する変数を含む光拡散方程式の解とは大きく異なる。上式で境界条件はインパルス応答h(t)に関数s(μs,t)を介して反映されている。したがって、上式は種々の再入射不可能な表面形状をもつ散乱体に広く適用することができる。
このとき、出力信号J(μsa,t)は、
Figure 0003878942
のように表される。ここで、bは入射光の強度に比例する係数である。出力信号J(μsa,t)の時間積分は全積分出力信号量I(μsa)を表わし、CW計測のときの計測値に対応する。この積分出力信号I(μsa)は(2.1)式から次のようになる。
Figure 0003878942
今、図2に示すように、出力信号J(μsa,t)の任意の一部分t=[t1,t2] (t1<t2)を切り出すことを考える。このときの積分出力信号つまり測定信号ITsa)は、次式のように表される。
Figure 0003878942
さらに、(4.1)および(4.2)式から、
Figure 0003878942
が導出される。ここで<tT>は検出された光子の平均飛行時間、LTsa)は平均光路長であり、このような考え方は本発明によって初めて開示されるものである。次に、(5)式を積分すると、
Figure 0003878942
が得られる。ここで、右辺第2および第3項は積分定数であり、(4.1)式でμa=0として求められる。当然の結果ではあるが、(6)式は境界条件に関する変数を含んでいない。このことは、境界条件に関する変数を必ず含む光拡散方程式の解とは大きく異なる。前出の(6)式においては、境界条件は測定信号ITsa)および平均光路長LTsa)に反映されている。したがって、(6)式は、種々の再入射不可能な表面形状をもつ散乱体に広く適用することができる。
ここで、出力信号J(μsa,t)の一部分を切り出して得た測定信号を構成する光子の飛跡について考えると次のことが理解される。出力信号J(μsa,t)の最初の部分のみを切り出せば、先に述べたように短い光路長の光子が検出されるから、図3(a)及び図3(b)において実線ハッチ(T1)で示した狭い部分を伝播した光子が検出されて、空間分解能が向上する。ここで図3(a)は透過型計測、また図3(b)は反射型計測の構成を示す。また、切り出し時間T=t2−t1を長くしていくと(T1→T2→T3)、図3(a)及び図3(b)において鎖斜線ハッチ(T2)及び鎖縦線ハッチ(T3)で示すように順次広い部分を伝播した光子が検出されるようになることから、計測に利用する光量(または信号量)は増加するが、空間分解能は低下する。
さらに、出力信号J(μsa,t)の途中の一部分を切り出す場合、その切り出しタイミングを遅らせていくと、図4(a)及び図4(b)に示すように計測する部分を変えることができる(t1→t2)。また、このような計測は、異なる時間ゲートで得られた2つの信号の差を求める計測でも実現できる。つまり、出力信号J(μsa,t)の後の部分を切り出せば、周辺部の情報がより多く含まれることを利用している。したがって、本発明においては、前記の切り出し時間T=t2−t1および切り出しのタイミングを制御して、空間分解能や情報を取得する部位を選択することができる。
但し、図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)は、検出光(出力信号)に含まれる光子の中で、ある程度の割合を占める一般的な光子の飛跡の範囲を示したものである。したがって、検出される光子の中には、当然、図示の範囲の外を伝播した光子も含まれる。
以下、前記(6)式を用いて測定値から吸収に関する情報を算出する方法を説明する。
(吸収成分の濃度変化の計測)
媒体中に1種類の吸収成分が含まれ、その濃度が変化して吸収係数μaがμa1からμa2に変化した場合を考える。通常の生体や散乱体では、吸収成分の濃度が変化しても散乱特性は変化しないと考えてよい。これは、丁度、牛乳の中にインクを入れる場合と同様である。変化の前後でs(μs,t)あるいは散乱係数μsが変化しない場合、測定位置(パルス光入射位置と光検出位置)を固定して計測すれば前記平均光路長LTsa)は吸収係数μaの関数となり、変化の前後の測定値に対して(6)式が成立する。したがって、変化の前後のμa1とμa2とを用いて(6)式から次式が導出される。
Figure 0003878942
つぎに、平均値定理を用いると(7)式から次式が得られる。
Figure 0003878942
ただし、μxはμa1≦μx≦μa2またはμa1≧μx≧μa2なる適宜の値である。以上から、平均光路長LTsa)を知ることができれば、変化の前後の測定信号ITsx)の値から、変化の前後の吸収係数の差μa2−μa1を算出することができる。
さらにこの場合、平均光路長LTs, μx)は係数αを用いて、
Figure 0003878942
と表すことができる。ただし、αは0≦α≦1なる適宜の値をもつ。この場合、LTsx
)は単調関数であり、通常はμa1とμa2における値がほぼ等しいから、α=1/2としてよい。また、それぞれの平均光路長LTsa1)およびLTsa2)は、前出の(5)式に示したように、測定信号の波形の重心(平均タイムディレイ)を演算することによって求めることができる。すなわち、前出の(5)式の第2行に示す式の値を計算する。ここで、cは媒質中の光速度であるから、既知あるいは別の方法で知ることができる。また、分子と分母に含まれる項、つまりs(μs,t)exp(−μact)=Aは前出の(2.1)式に示した出力信号J(μsa,t)を1/b倍したものである。この係数bは積分操作の外に出すことができ、かつ分子と分母の両方に含まれるから消去される。つまり、上記の計算では、Aを用いても、bAである計測値J(μsa,t)を用いても、同じ結果が得られる。したがって、分子はtJ(μsa,t)を、また分母はJ(μsa,t)をtについて、それぞれt1からt2まで積分したものである。これら2つの項、及びそれらの比の計算は、コンピュータを用いて高速に計算することができる。また、上記重心の計算は、上記のように直接(5)式第2行の分子と分母を演算する方法以外に、これと等価な種々の方法がある。いずれの場合にも、この計算結果は平均飛行時間となり、前記cを乗じて平均光路長を得る。
吸収成分の濃度変化ΔVを算出するには、ベア・ランバート則から導かれる次式を用いる。
Figure 0003878942
ただし、εは吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数(または消光係数)であり、分光光度計で測定することができる。また、多くの吸収物質の吸収係数(または消光係数)は種々の文献に公表されている。したがって、(8)〜(10)式から、
Figure 0003878942
が得られる。以上の(11)式によって、散乱体内部の吸収成分の濃度変化ΔVを計測する方法が明らかとなる。
(吸収成分の濃度変化の計測の応用)
上記の方法は、測定位置を固定したまま、異なる波長のパルス光を用いて複数種の吸収成分の濃度の時間的変化を計測することに応用できる。さらに、計測対象の外周に沿って複数箇所でこのような計測を繰り返して、X線CTや光CT等に見られるような断層像再構成演算を行えば、所定の部位のヘモグロビンの濃度の時間変化の計測などに応用することもできる。
また、厚さが一定になるように保持した計測対象に対して、測定位置(光入射位置及び光検出位置)を平行移動あるいは走査させて計測し、任意の位置での測定値を基準値とすることで、散乱体内部の吸収成分の濃度の基準値に対する差の分布を計測することもできる。このような計測は、乳ガンの診断を行うための光マンモグラフィーに応用することができる。
本発明による以上のような計測は、ゲート時間(切り出し時間)を短くすると空間分解能が向上する。また、ゲートのタイミングを可変にして計測する部位(あるいは部分)を制御することができる。具体的な応用例として光マンモグラフィーの他に、透視装置、光CT、手術や治療に利用される臨床モニターなどがある。
(特定吸収成分の濃度の計測)
つぎに、波長 がλ1とλ2の2種のパルス光を用いて計測する場合、つまり2波長分光計測法について説明する。今、1種類の吸収成分を含む散乱体の吸収係数が、波長λ1のときμa1、波長λ2のときμa2であるとする。そして、波長λ1とλ2における媒質の散乱係数μs1およびμs2が同じであるか、ほぼ等しいものとする。このような条件は、測定に用いる波長を選択することによって、容易に実現される。したがって、同一の測定位置(パルス光入射位置及び光検出位置)で2波長計測する場合、μs1≒μs2=μsとすれば、
Figure 0003878942
が成立する。そして(6)式から
Figure 0003878942
が得られる。すると、(8)式の場合と同様にして、
Figure 0003878942
が得られる。ただし、μxはμa1≦μx≦μa2またはμa1≧μx≧μa2なる適宜の値である。この(14)式は、b1/b2=1つまり2波長のパルス光の入射光強度が等しいとき、前出の(7)式に等しくなる。また、係数b1/b2は入射パルス光の強度を調整することによってb1/b2=1とすることができる。さらに、光源あるいはパルス光の強度を実測してb1/b2の値を推定することもできる。以上により、平均光路長LTsx)とb1/b2の値、および波長λ1とλ2のパルス光を用いた計測で得られる測定信号IT1)およびIT2)の値から、吸収係数の差μa2−μa1を算出することができる。
平均光路長LTsx)は、前記と同様の係数αを用いて、
Figure 0003878942
と表すことができる。ただし、αは0≦α≦1なる適宜の値をもつ。この場合にも、LTが単調関数であることを考慮すると、通常はα=1/2としてよい。また、それぞれの平均光路長LTsa1)およびLTsa2)は、前出の(5)式に示したように測定信号の波形の重心(平均タイムディレイ)を演算することによって求めることができる。
特定吸収成分の濃度Vは、波長λ1とλ2における特定吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数(または消光係数)ε1およびε2を用いて、次式から算出される。
Figure 0003878942
ただし、ε1およびε2の値は前もって分光光度計で測定することができる。したがって、
Figure 0003878942
となり、前出の吸収成分の濃度変化の計測と全く同様にして、吸収成分の絶対濃度Vを計測することができる。この場合、2種以上のn種の波長のパルス光を使用すれば、(n-1)種類の吸収成分の濃度を計測することができる。
(2点2波長計測)
2種の検出距離(光入射−光検出位置間距離)で前記の2波長分光計測を行うと、前出の係数b1/b2を消去することができる。つまり、係数b1/b2が光入射−光検出位置に依存しないことを利用して、係数b1/b2を消去する。この場合、前記(17)式は次のようになる。
Figure 0003878942
ただし、IT11)とIT22)およびLT1sx1)とLT2sx2)は、それぞれ光検出距離1と2で得られる測定信号と平均光路長である。また、μx1はμa1≦μx1≦μa2またはμa1≧μx1≧μa2、μx2はμa1≦μx2≦μa2またはμa1≧μx2≧μa2なる適宜の値であり、(15)式と同様にして求めることができる。さらに、当然ではあるが、以上に述べた方法は、2つ以上の波長の光を用いる多波長分光計測に拡張することができる。
(吸収成分の濃度の空間分布の計測)
多箇所で上述のような計測を行って、吸収成分の濃度の空間分布を計測することができる。この場合、吸収成分の濃度の計測値はそれぞれ独立に計測されるから、各計測位置での検出距離(光入射−光検出位置間距離)は異なっていてもよい。つまり、本発明の方法によれば、再入射不可能な種々の外形をもつ散乱体内部の吸収成分の濃度を高空間分解能で計測することができる。この際、空間分解能は前述の切り出し時間T=t2−t1とそのタイミングで制御する。具体的な応用例としては、光マンモグラフィー、透視装置、光CTなどがある。これらでは、複数箇所での受光、光入射位置や光検出位置の走査、時分割計測などの方法が利用される。また、必要に応じて、CTに見られるような画像再構成演算を行う。これらの計測の特長は、既に説明したように、特定吸収成分の濃度分布を高い空間分解能で定量計測できることにある。
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。ただし、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
実施例1
図5は本発明の方法を実施するための本発明の装置の第1実施例を示すもので、散乱体2の内部の吸収成分の濃度の時間変化を計測する装置1の構成を示す。この装置1の構成では、1種類の吸収成分が含まれている散乱体2の吸収成分の濃度変化、あるいは複数の成分からなる吸収物質の濃度変化を計測する。この構成では、散乱体2の表面の位置P(光入射位置)に所定の波長λの十分時間幅の狭いパルス光を入射し、表面の他の位置Q(光検出位置)で散乱体2の内部を伝播した光を受光する。そして、この測定を繰り返して散乱体2内部の比較的狭い部分の吸収成分の濃度の変化を定量する。この場合、第1回目の計測を行ったときの吸収成分の濃度を基準値にとれば、吸収成分の濃度の変化が定量できる。計測装置1は一体化されて1つの筐体に収納されている。
光源10はレーザーダイオードなどを使用し、波長λのパルス光を発生する。この場合、波長は計測すべき散乱体2や吸収成分に応じて選択される。生体の計測では、酸素化型、脱酸素化型ヘモグロビンや酸素化型、脱酸素化型ミオグロビンを計測することが多く、それらの吸収成分の吸収スペクトルを図6に示す。したがって、生体の計測では通常600nm〜1.3μmの光が使用される。また、パルス幅は通常、20ps〜200ps程度にする。光源にはレーザーダイオードの他に、発光ダイオード、パルスレーザーなどを使用することができる。
光源10から発したパルス光は光ガイド12を通して計測対象である散乱体2の表面に入射される。光ガイド12と散乱体2の間の空間は、図5の実施例では微小になっている。しかし実際にはこの隙間を広くして、そこに散乱体2とほぼ等しい屈折率と散乱係数をもつ液状体やゼリー状物体(以下、インタフェース材と呼ぶ)を満たしておいてもよい。つまり、光はこのインタフェース材の中を伝播して計測対象に入射するから何ら問題は生じない。また、散乱体2の表面反射が問題になるときは、インタフェース材を適宜に選択することによって、表面反射などの影響を低減することができる。
散乱体2の内部を伝播した光は、前記光入射位置Pから距離rの位置Q(光検出位置)に置いた光ガイド13で受光される。ここでも前記と同様の理由によって、インタフェース材を使用してもよい。光検出器14は、前記光信号を電気信号に変換し、必要に応じて増幅して出力する。光検出器14としては、光電子増倍管の他に、光電管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード、ストリークカメラ、ストリークスコープ、光オシロスコープなどを使用することができる。光検出器14の選択に際しては、所定波長の光を検出する分光感度特性と必要な時間応答速度をもっていればよい。また、光信号が微弱であるときは、高利得の光検出器を使用する。さらには、光子を計数する時間相関光子計数法を用いてもよい。光検出器の受光面以外の場所は、光を吸収あるいは遮光する構造にしておくことが望ましい。
信号検出部15は、前記の検出信号から所定の時間域を切り出して、測定信号を出力する。具体的には、よく知られているゲート回路が利用される。この際、所定の時間域を切り出すためのゲート信号は信号処理部11で発生する。この場合、信号処理部11は、必要に応じて光源10から発せられるパルス光と同期した信号を利用する。空間分解能は前記ゲート信号の時間幅(ゲート時間)を可変にして制御することができる。また、ゲート信号のタイミングを変えて、測定すべき部分を選択することができる。例えば、検出信号の先端部分を狭いゲートで抽出した場合には、散乱体内部の狭い部分2aを伝播した光を計測することになるが、ゲート時間を長くすると部分2aより広い部分2bを伝播した光を計測することになる。さらに、前述の図3および図4に示したような制御も可能である。
以上の測定信号の取得は他の方法、例えば図7及び図8に示すように、光検出器で直接ゲートするようにしてもよい。例えば光電子増倍管を用いた場合、光電陰極、第1ダイノードやその他のダイノード、あるいは陽極にパルス状の電圧を印加して、ゲート動作をさせることができる。また、アバランシェフォトダイオードにおいてパルス電圧を印加してゲート動作をさせることができる。ストリークカメラも時間ゲート機能が備わっている。これらの場合は、光電変換とゲート動作が同一デバイスで実行される。
第1の演算部16は、前記測定信号から時間積分値ITおよび平均光路長LT(波形の重心(平均タイムディレイ)に相当する)を演算する。この際、前記(5)式に従って平均光路長LTを演算する。そして以上の計測を異なる時間に繰り返して実行する。以下、m回目と(m+1)回目の計測を考える。
第2の演算部17は、m回目と(m+1)回目の計測で得られた2種の前記時間積分値 IT,mとIT,m+1、および(9)式を用いて2種の前記平均光路長LT,mとLT,m+1から求めた平均光路長LTsx)を前出の(8)式に代入して、散乱体2の部分の吸収係数の変化量μa(m+1)−μam(第1次情報)を演算し、さらに前出の(11)式を用いて吸収成分の変化量(第2次情報)を演算する。このとき、平均光路長LTsx)の算出は、前出の(8)式でα=1/2として十分な精度が得られる。これらの演算処理は、第1及び第2の演算部に組み込んだマイクロコンピュータなどで高速に実行される。
表示記録部18は、以上のようにして得られた吸収成分の濃度情報を記憶する機能をもち、これらを表示あるいは記録する。
上記では、1つの波長のパルス光を用いたが、実際には2つ以上の波長のパルス光を利用することもできる。さらに、1つの光入射位置からパルス光を入射し、2つ以上の光検出位置で伝播光を検出することもできる。また、これらは並列あるいは時分割で検出してもよい。
散乱体2に光を入射する手段は、図5に示した光ガイド12の代わりに、集光レンズによる方法(図9(a))、光ファイバーを用いる方法(図9(b))、ピンホールを利用する方法(図9(c))、胃カメラのように体内から光を入射する方法(図9(d))などがある。また、太いビーム状の光を散乱体に入射してもよい。この場合には、複数のスポット状光源が並んでいると考えればよい。
散乱体2の内部を拡散伝播した光を検出する手段としては、図5に示した光ガイド13を用いる方法以外に、直接検出する方法(図10(a))、光ファイバーを用いる方法(図10(b))、レンズを用いる方法(図10(c))などがある。
実施例2
上記第1実施例で、パルス光の光入射位置Pと光検出位置Qの相対位置関係を一定(固定)にしたまま、散乱体2に沿って走査させて計測し、任意の位置での吸収成分の濃度を基準値として、その基準値に対する濃度の差の空間分布を計測することができる。この場合、前記第1実施例と同様にして、(8)〜(11)式を用いて、吸収成分の濃度の基準値に対する差の空間分布を計測することができる。
図11は本発明の方法を実施するための本発明の装置の第2実施例を示すもので、平行な平らな面をもつように軽く挟みつけた乳房のような散乱体2の内部の吸収成分の濃度の空間分布を計測する装置1の構成を示す。図11中では、前記第1実施例にかかる図5に示したものと同じ機能をもつものには同じ記号を用いた。散乱体2の表面に所定の波長λのパルス光を入射し、反対側の表面の位置で散乱体2の内部を伝播した光を受光する。この際、パルス光の光入射位置と光検出位置は、それらの相対位置関係を一定にしたまま、散乱体2に沿って走査させて計測する。そして、例えば、第1の測定位置(第1の光入射位置及び第1の光検出位置)で計測を行ったときの吸収成分の濃度を基準値(つまり変化量の計測の基準値)にとれば、吸収成分の濃度差の空間分布が計測できる。
この第2実施例では、散乱体2を平行に軽く挟みつける第1の機構部30がある。つまり、乳房のような散乱体2を少し平たく伸して計測する。この第1の機構部30には、パルス光の光入射位置と光検出位置との相対位置関係を一定にしたまま、パルス光の光入射位置(入射部)と光検出位置(受光部)を散乱体に沿って同期して走査させて計測するための第2の機構部31が設けてある。そして、この第2の機構部31からは走査位置を表す位置信号が発せられ、この位置信号は表示記録部18に供給されて、空間分布の演算、表示記録に利用される。また、パルス光を発生する光源10の後段には波長選択器19が設けてあり、適宜所望の波長のパルス光が選択できるようにしてある。その他の部分は、前記の第1実施例の装置のものと同じである。
この第2実施例の装置1では、前記ゲート信号で出力光の最初の部分を抽出するが、その際にゲート時間を狭くすれば空間解像度が向上する。また、上記では1つの波長のパルス光を用いたが、実際には2つ以上の波長のパルス光を利用することもできる。さらに、1つの光入射位置から光を入射し、2つ以上の光検出位置で同時あるいは時分割で伝播光を検出することもできる。
実施例3
図12は本発明の方法を実施するための本発明の装置の第3実施例を示すもので、散乱体2の内部の吸収成分の濃度分布を計測する装置1の構成を示す。この場合、乳房のような散乱体2は軽く挟みつけられる。図12中では、前記第1実施例にかかる図5および前記第2実施例にかかる図11に示したものと同じ機能をもつものには同じ記号を用いた。この装置1の構成では、散乱体2に対して散乱係数が等しいかまたは等しいと見なせる異なるn種の波長λ1〜λnのパルス光を用い、前出の(17)式を用いて(n-1)種の吸収成分の濃度のイメージングを行うことができる。この第3実施例は前記第2実施例とよく似た構成となっているが、計測するパラメーターは吸収成分の濃度の空間分布である。また、測定位置(光入射位置及び光検出位置)は走査されるが、各走査位置で吸収成分の濃度を前出の(17)式に基づいて計測するから、パルス光の光入射位置(光入射点)と光検出位置(受光点)の相対位置関係は変化してもよい。つまり、前記の第2実施例では散乱体2を平行に挟んで光入射位置と光検出位置の相対位置関係が一定になるように走査したが、第3実施例ではこのような制限はない。その理由については、前出の(吸収成分の濃度の空間分布の計測)の項で述べた通りである。
光源101〜10nはレーザーダイオードなどを使用し、異なるn種の波長のパルス光を順次に発生する。この際、光源101〜10nの発振タイミングは信号処理部11からの信号で制御される。光源101〜10nからのパルス光は合波器20で合波され、光ガイド12を通して計測対象である散乱体2の表面に入射される。
光ガイド12と散乱体2との間の空間は、図12の実施例では微小になっている。しかし実際には、第1実施例と同様にこれを広くして、この空間に散乱体2とほぼ等しい屈折率と散乱係数をもつインタフェース材を満たしておいてもよい。つまり、パルス光はこのインタフェース材の中を伝播して計測対象に入射するから何ら問題は生じない。また、散乱体2の表面反射が問題になるときは、インタフェース材を適宜に選択することによって、表面反射などの影響を低減することができる。
散乱体2の内部を伝播した光は、前記光入射位置と反対側の位置に置いた光ガイド13で受光される。ここでも前記と同様の理由によって、インタフェース材を使用してもよい。光ガイド13からの光信号は波長選択器21で波長選択されて、それぞれの波長の入射パルス光に対応する光信号が光ガイド13を介して次段の光検出器14に導かれる。
散乱体2は、前記第2実施例と同様に、第1の機構部30によって軽く挟みつけられる。この第1の機構部30には、パルス光の光入射位置と光検出位置とを同期して走査させるための第2の機構部31が設けてある。そして、この第2の機構部31からは、走査位置を表す位置信号が発せられ、この位置信号は表示記録部18に供給されて、空間分布演算及びその結果の表示記録に利用される。
光検出器14は前記のそれぞれの波長の光信号を電気信号に変換し、必要に応じて増幅して検出信号を出力する。光検出器14としては、光電子増倍管の他に、光電管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード、ストリークカメラ、ストリークスコープ、光オシロスコープなどを使用することができる。光検出器14の選択に際しては、所定波長の光を検出する分光感度特性と必要な時間応答速度をもっていればよい。また、光信号が微弱であるときは、高利得の光検出器を使用する。さらには、光子を計数する時間相関光子計数法を用いてもよい。光検出器14の受光面以外の場所は、光を吸収あるいは遮光する構造にしておくことが望ましい。
信号検出部15は、前記の検出信号から所定の時間域を切り出して、測定信号を出力する。所定の時間域を切り出すためのゲート信号は信号処理部11で発生する。空間分解能は前記ゲート信号の時間幅(ゲート時間)を可変にして制御することができ、ゲート時間を狭くすれば空間解像度が向上する。例えば、検出信号の先端部分を狭いゲートで抽出した場合には、散乱体内部の狭い部分2aを伝播した光を計測することになる。ゲート時間を長くすると部分2aより広い部分を伝播した光を計測することになり、空間解像度が低下する。以上の測定信号の取得は他の方法、例えば前述の図7及び図8に示すように、光検出器で直接ゲートする方法でもよい。
第1の演算部16は、前記測定信号から時間積分値ITおよび平均光路長LT(波形の重心(平均タイムディレイ)に相当する)を演算する。この際、平均光路長LTは前記(5)式に従って演算する。第2の演算部17は、前記の計測で得られたn種の前記時間積分値IT1〜ITn、n種の前記平均光路長LT1〜LTnおよびn種の消光係数を用いて、散乱体2の内部の部分2aに含まれる(n-1)種類の吸収成分の濃度を演算する。これらの演算処理は、第1及び第2の演算部に組み込んだマイクロコンピュータなどで高速に実行される。
そして、前記第2の機構部31によって測定位置を変えて以上の一連の計測を繰り返えし、各測定位置(光入射位置及び光検出位置)での吸収成分の濃度を演算する。前記表示記録部18は、以上のようにして得られた吸収成分の濃度を記憶する機能をもち、これらを表示あるいは記録する。
上記の場合、n種の波長のパルス光を順次に入射する方法について述べたが、n種の波長のパルス光を同時に点灯して、同軸状に入射する方法としてもよい。この場合、光検出器14の直前に設けた波長選択器21で波長選択する方法、さらには検出光をnに分岐して波長選択したあと、n個の光検出器で並列に検出する方法もある。
また、図12では散乱体2をほぼ平行に挟むようにしたが、既に述べたように実際には厚さが異なってもよい。ただし、この場合には、第2の機構部31は散乱体2の表面に沿って走査されるようにする。さらに、図12では光入射位置と光検出位置が上下(紙面の上下方向)に配置してあるが、これらを斜めの位置関係に配置して計測したデータも含めて、CTのような画像再構成を行ってもよい。
実施例4
図13は本発明の方法を実施するための本発明の装置の第4実施例を示すもので、散乱体2の断面内の吸収成分の濃度分布を計測する装置の構成を示す。光入射位置(光入射部)と光検出位置(受光部)は散乱体2の外周に沿って走査される。図13の中では、前記第1実施例にかかる図5、前記第2実施例にかかる図11、前記第3実施例にかかる図12に示したものと同じ機能をもつものには同じ記号を用いた。この装置の構成では散乱係数が等しいかまたは等しいと見なせる異なる2種の波長λ1とλ2のパルス光を用いる。そして、前出の(17)式を用いて各測定位置(光入射位置及び光検出位置)における特定吸収成分の濃度を求め、複数の測定位置における特定吸収成分の濃度値から、散乱体2の断面内の特定吸収成分の濃度の分布を求める。この第4実施例の装置は、光入射位置と光検出位置の周辺以外の部分では前記第3実施例とよく似た構成となるが、測定結果は断層像として得られる。
計測対象である散乱体2は、散乱体2を取りまく円形の回転機構部32の中に置かれる。散乱体2と回転機構部32の内壁との間隙にはインタフェース材33が詰められ、散乱体2を固定したまま回転機構部32が回転できるようになっている。また、回転機構部32には光入射用の光ファイバー12と受光用の光ガイド13が取り付けてある。この回転機構部32からは、走査位置を表す位置信号が発せられ、この位置信号は第3の演算部22に供給されて、断層像の再構成に利用される。
光源10はレーザーダイオードなどを使用して波長の異なる2種のパルス光を発生し、波長切換器19は前記2種のパルス光を交互に切り換えて通過させる。光源10の発振および波長切換器19の切り換えタイミングは信号処理部11からの信号で制御される。この際、2種の波長の異なるパルス光源を交互に点灯させてもよい。また、2種の波長のパルス光を同時に入射する方法としてもよく、このときには波長選択器19は省略され、後述する光検出器14の前段に波長選択器を設けて測定に用いる波長を選択する。
波長切換器19から出たパルス光は、光ファイバー12を通して計測対象である散乱体2を包む込むインタフェース材33の表面に入射される。インタフェース材33は、第1実施例において既に述べたものである。散乱体2とインタフェース材33の内部を伝播した光は、前記光入射位置と反対側の位置に設けられた光ガイド13で受光される。光ガイド13からの光信号は次段の光検出器14に導かれる。
光検出器14は前記の2種の波長の光信号を電気信号に変換し、必要に応じて増幅して検出信号を出力する。光検出器14としては、光電子増倍管の他に、光電管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード、ストリークカメラ、ストリークスコープ、光オシロスコープなどを使用することができる。また、光信号が微弱であるときは、高利得の光検出器を使用する。さらには、光子を計数する時間相関光子計数法を用いてもよい。光検出器14の受光面以外の場所は、光を吸収あるいは遮光する構造にしておくことが望ましい。
信号検出部15は、前記の検出信号から所定の時間域を切り出して、測定信号を出力する。所定の時間域を切り出すためのゲート信号は信号処理部11で発生する。空間分解能は前記ゲート信号の時間幅(ゲート時間)を可変にして制御することができ、ゲート時間を狭くすれば空間解像度が向上する。以上の測定信号の取得は他の方法、例えば前出の図7及び図8に示すように、光検出器で直接ゲートする方法でもよい。
第1の演算部16は、前記測定信号から時間積分値ITおよび平均光路長LT(波形の重心(平均タイムディレイ)に相当する)を演算する。この際、平均光路長は前記(5)式に従って演算する。第2の演算部17は、前記の計測で得られた2種の前記時間積分値IT1とIT2、2種の前記平均光路長LT1とLT2、および2種の消光係数を用いて、前記測定位置における特定吸収成分の濃度を演算する。
これらの演算処理は、第1及び第2の演算部に組み込んだマイクロコンピュータなどで高速に実行される。
次に、前記回転機構部32を適宜の角度だけ回転して測定位置(光入射位置及び光検出位置)を変えて、上記一連の計測を繰り返えし、各測定位置での吸収成分の濃度を演算する。第3の演算部22は、このようにして得られた複数の測定位置における吸収成分の濃度の値から、断面内の吸収成分の濃度分布(断層像)を演算する。
表示記録部18は、以上のようにして得られた吸収成分の濃度分布を記憶する機能をもち、これらを断層像として表示あるいは記録する。なお、上記の断層像の再構成には、CTとしてよく知られている手法やハードウエアを利用することができる。
また、上記の実施例ではパルス光の光入射位置と光検出位置の相対位置関係を一定にしたが、この相対位置関係を可変にしてもよい。この場合には、散乱体に対するサンプリング密度が向上し、測定データ数も多くなるから、断層像の空間解像度が向上する。さらに、上記のパルス光の光入射位置と光検出位置の相対位置関係を3次元で可変制御して、3次元の解析を行うCTとすることもできる。
散乱体内部を伝播した光子の飛跡を示す模式図である。 本発明にかかる測定信号(切り出した信号)を説明するための波形図である。 (a)及び(b)はそれぞれ切り出し時間と計測される部分(散乱体内の部分)の関係を示す模式図である。 (a)及び(b)はそれぞれ切り出しタイミングと計測される部分(散乱体内の部分)の関係を示す模式図である。 本発明にかかる第1実施例の装置の構成概略図である。 ヘモグロビン及びミオグロビンの吸収スペクトルを示すグラフである。 測定信号を得るための他の方法を示す模式図である。 図7に示す方法による場合の出力光とゲート信号と測定信号との関係を示す波形図である。 (a)〜(d)はそれぞれ、散乱体への光入射方法を示す概略図である。 (a)〜(c)はそれぞれ、受光方法を示す概略図である。 本発明にかかる第2実施例の装置の構成概略図である。 本発明にかかる第3実施例の装置の構成概略図である。 本発明にかかる第4実施例の装置の構成概略図である。
符号の説明
1…吸収情報計測装置、2…散乱体、2a…散乱体内部の第1の部分、2b…散乱体内部の第2の部分、10,101…10n…光源、11…信号処理部、12,13…光ガイド、14…光検出器、15…信号検出部、16…第1の演算部、17…第2の演算部、18…表示記録部、19…波長切換器、20…合波器、21…波長選択器、22…第3の演算部、30…第1の機構部、31…第2の機構部、32…回転機構部、33…インタフェース材。

Claims (14)

  1. ヒトを除く測定対象物に対して散乱係数が等しいか又は等しいと見なせる異なる波長のパルス光を発生させる第1ステップと、
    前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する第2ステップと、
    測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する第3ステップと、
    前記第3ステップで得られた光信号の一部分を時間的に、所定の切り出しタイミング及び切り出し時間で切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を、前記異なる波長のパルス光に対するそれぞれの時間関係が同一となるようにして取得する第4ステップと、
    前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出する第5ステップと、
    前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記異なる波長のパルス光に対する吸収係数の差を演算する第6ステップと、
    を備えることを特徴とする散乱体の吸収情報の計測方法。
  2. 前記第5ステップにおいて、前記複数の測定信号のそれぞれに対して所定の基準時刻からの時間を乗じた値の第2の時間積分値を導出し、前記時間積分値及び当該第2の時間積分値に基づき前記平均光路長を導出することを特徴とする請求項1記載の散乱体の吸収情報の計測方法。
  3. 前記第5ステップにおいて、散乱係数をμ 、吸収係数をμ 、光速度をc、前記光信号に対応する時間tの関数であるインパルス応答をs(μ ,t)exp(−μ ct)、前記所定の切り出しタイミング及び切り出し時間をt=[t1,t2](t1<t2)、とそれぞれしたときに、前記平均光路長L (μ ,μ )を以下の式
    Figure 0003878942
    に基づいて導出することを特徴とする請求項2記載の散乱体の吸収情報の計測方法。
  4. 前記第6ステップで得られた吸収係数の差、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する第7ステップをさらに備えることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の散乱体の吸収情報の計測方法。
  5. 前記第6ステップにおいて、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の散乱体の吸収情報の計測方法。
  6. 前記第3ステップにおいて複数の光検出位置で受光し、
    前記第4ステップにおいて、前記複数の光検出位置でそれぞれ前記異なる波長のパルス光に対応してそれぞれ測定信号を取得し、
    前記第5ステップにおいて、前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出し、
    前記第6ステップにおいて、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する、
    ことを特徴とする請求項記載の散乱体の吸収情報の計測方法。
  7. 前記第2ステップにおける光入射位置と前記第3ステップにおける光検出位置とを測定対象である散乱体の外周に沿って走査し、前記走査による複数の測定位置に対してそれぞれ前記第6ステップで得られる吸収係数の濃度を演算して、散乱体内の濃度分布の断層像を演算する第8ステップをさらに備えることを特徴とする、請求項または記載の散乱体の吸収情報の計測方法。
  8. 測定対象物に対して散乱係数が等しいか又は等しいと見なせる異なる波長のパルス光を発生させる光源と、
    前記パルス光を測定対象物である散乱体の表面における光入射位置にスポット状に入射する光入射部と、
    測定対象物の内部を伝播した光を、前記散乱体の表面における光検出位置で受光する受光部と、
    前記受光部で得られた光信号の一部分を時間的に、所定の切り出しタイミング及び切り出し時間で切り出し、切り出された信号に相当する測定信号を、前記異なる波長のパルス光に対するそれぞれの時間関係が同一となるようにして取得する信号検出部と、
    前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出する第1の演算部と、
    前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、および吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記異なる波長のパルス光に対する吸収係数の差を演算する第2の演算部と、
    を備えることを特徴とする散乱体の吸収情報の計測装置。
  9. 前記第1の演算部は、前記複数の測定信号のそれぞれに対して所定の基準時刻からの時間を乗じた値の第2の時間積分値を導出し、前記時間積分値及び当該第2の時間積分値に基づき前記平均光路長を導出することを特徴とする請求項8記載の散乱体の吸収情報の計測装置。
  10. 前記第1の演算部は、散乱係数をμ 、吸収係数をμ 、光速度をc、前記光信号に対応する時間tの関数であるインパルス応答をs(μ ,t)exp(−μ ct)、前記所定の切り出しタイミング及び切り出し時間をt=[t1,t2](t1<t2)、とそれぞれしたときに、前記平均光路長L (μ ,μ )を以下の式
    Figure 0003878942
    に基づいて導出することを特徴とする請求項9記載の散乱体の吸収情報の計測装置。
  11. 前記第2の演算部は、さらに、前記第2の演算部で得られた吸収係数の差、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算することを特徴とする、請求項8〜10の何れか一項に記載の散乱体の吸収情報の計測装置。
  12. 前記第2の演算部において、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算することを特徴とする、請求項8〜10の何れか一項に記載の散乱体の吸収情報の計測装置。
  13. 前記受光部は、複数の光検出位置で受光するものであり、
    前記信号検出部は、前記複数の光検出位置でそれぞれ前記異なる波長のパルス光に対応してそれぞれ測定信号を取得するものであり、
    前記第1の演算部は、前記複数の測定信号のそれぞれに対して時間積分値を導出し、前記複数の測定信号のそれぞれに対して当該時間積分値及び当該測定信号に基づき時間的な平均光路長を導出するものであり、
    前記第2の演算部は、前記複数の時間積分値、前記複数の平均光路長、吸収成分の前記異なる波長のパルス光に対する単位濃度当たりの吸収係数、および吸収成分の濃度との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算するものである、
    ことを特徴とする請求項12記載の散乱体の吸収情報の計測装置。
  14. 前記光入射部における光入射位置と前記受光部における光検出位置とを測定対象である散乱体の外周に沿って走査し、前記走査による複数の測定位置に対してそれぞれ前記第2の演算部で得られる吸収係数の濃度を演算して、散乱体内の濃度分布の断層像を演算する第3の演算部をさらに備えることを特徴とする、請求項11または12記載の散乱体の吸収情報の計測装置。
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