JP3877483B2 - ジャイロ制振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,ジャイロ制振装置に係り,詳しくは,吊橋,斜張橋などの長径間の橋梁が強風を受けたときに発生するフラッター振動を抑制するためのジャイロ制振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば図6に示すような吊橋,斜張橋あるいは大スパンの連続梁のような長径間の橋梁では,側方あるいは斜方から強風を受けると,ハンガー10を介してメインケーブル10に釣り下げられている補剛桁104に破壊的振動(フラッター振動)が生じることがある。このフラッター振動は,ある風速を越えると振動振幅が急激に大きくなる発散的性質を有する。
橋梁において発生するフラッターは,補剛桁104の上下振動(曲げ振動)と補剛桁104の捩れ振動との連成フラッターである。この連成フラッターは,支間長が長くなるほど,低い風速で発生し易くなる。このため,特に中央支間長が2000mを越えるような長大橋の設計においては,連成フラッターが発生する風速(フラッター発現風速,危険風速)をできるだけ高くし,連成フラッターに対する耐風安全性を確保することが重要となる。
橋梁の耐風安定化対策としては,ジャイロ制振装置を利用する方法が提案されている。このジャイロ制振装置は,橋梁の捩れ振動に対して制振効果があり,捩れ振動が原因となって生じる長大橋のフラッターに対して,非常に高い発現抑制効果を有することが確認されている(例えば藤澤:「機械式ダンパーによる連成フラッターの制御」,土木学会第50回年次学術講演会概要集 p1508-1509,1995を参照されたい)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,フラッタ振動とジャイロ制振装置の諸元との関係は明らかにされておらず,ジャイロ制振装置を設計する場合には,フラッターの解析を繰り返す必要があり,非効率的であった。
本発明は,このような従来の技術における課題を解決するために,等価極慣性モーメント比を基に,容易且つ効率的に設計を行うことのできるジャイロ制振装置を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために,請求項1に係る発明は,ロータと,橋梁に揺動可能に取り付けられ前記ロータを1自由度回転支持するジンバルとを備えたジャイロ制振装置において,前記ロータの回転数Ω(Ωi ),前記ロータの慣性モーメントIr (Iri),及び前記ジンバルの慣性モーメントIG (IGi)の関係が,次式(A)の等価極慣性モーメント比μe に基づいて定められてなることを特徴とするジャイロ制振装置として構成されている。
【数4】
Figure 0003877483
ただし,添字iはN個のジャイロ制振装置のうちi番目の装置とその設置位置を示し,ωθは橋梁単体(ジャイロ制振装置無し)での目標風速におけるフラッターの振動数を表す。また,Ii はi番目のジャイロ制振装置の設置位置における,橋梁の対象捩れモードのモーダル質量であって,次式(B)により表されるものである。
【数5】
Figure 0003877483
ただし,Λは橋梁の質量マトリクス,〔Φ〕は橋梁の対象捩れモードのモードベクトル,Φθi はi番目のジャイロ制振装置の設置位置における,橋梁構造物の対象捩れモードのモード振幅である。
また,請求項2に係る発明は,前記請求項1に記載のジャイロ制振装置において,前記等価極慣性モーメント比μe が15%以上となるように,前記ロータの回転数Ω,前記ロータの慣性モーメントIr ,及び前記ジンバルの慣性モーメントIG を定めてなることをその要旨とする。
また,請求項3に係る発明は,前記請求項1又は2に記載のジャイロ制振装置において,次式(C)に従って推定したジンバルの振動振幅Aφにも基づいて,前記ロータの回転数Ω,前記ロータ慣性モーメントIr ,及び前記ジンバルの慣性モーメントIG を定めてなることをその要旨とする。
【数6】
Figure 0003877483
ただし,Aθは橋梁の捩れ振動振幅の推定値,ζG はジャイロ制振装置のジンバル系の減衰比である。
また,請求項4に係る発明は,前記請求項3に記載のジャイロ制振装置において,前記ジンバルの振動振幅Aφが90度以下となるように,前記ロータの回転数Ω,前記ロータの慣性モーメントIr 及び前記ジンバルの慣性モーメント G 定めてなることをその要旨とする。
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のジャイロ制振装置によれば,等価極慣性モーメント比を用いて,フラッター発現風速を目標風速まで向上し得るロータ,ジンバルに関するパラメータを,容易且つ効率的に定めることができる。
しかも,前記請求項3又は4に記載のジャイロ制振装置では,ジンバルの推定振動振幅から,ジンバルが許容振動を越えて制振力が低下しないようなパラメータを,容易且つ効率的に定めることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下,添付図面を参照して,本発明の実施の形態につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明の具体的な例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここに,図1は本発明の実施の形態に係るジャイロ制振装置の構成及び解析モデルを説明するための図,図2は前記ジャイロ制振装置が備えられた橋梁の構成を説明するための図である。
本発明の実施の形態に係るジャイロ制振装置A1は,図1(a)に示す如く,ロータ1と,該ロータ1を1自由度支持するジンバル2とを具備し,図2に示すような,主塔101,ハンガー10,メインケーブル10,補剛桁(箱桁)104などからなる橋梁100の例えば前記補剛桁104内に設置されるものである。
一般に,ジャイロ制振装置には,ジンバルの揺動軸をモータで能動的に駆動するアクティブ制御方式を採用したものと,ジンバルの揺動軸の回転をバネとダンパで支え振動数を主系に同調させる動吸振器的なパッシブ制御方式を採用したものとがあるが,本発明の実施の形態に係るジャイロ制振装置A1は,パッシブ制御方式を採用したものである。
本発明の実施の形態に係るジャイロ制振装置A1が,特徴とするところは,前記ロータ1の回転数Ω,前記ロータ1の慣性モーメントIr ,及び前記ジンバル2の慣性モーメントIG の関係を,後記する式(10)の等価極慣性モーメント比μe ,及び式(13)によって推定されるジンバル2の振動振幅Aφに基づいて定める点である。
【0006】
前記等価極慣性モーメント比μe は,動吸振器の性能を表す質量比に相当するパラメータであり,強風によって橋梁に発生するフラッターの抑制効果を評価する指標となる。
まず,補剛桁104の撓み自由度を拘束した場合に相当する,剛体(補剛桁)の回転運動のモデル(図1(b)参照)を例にとり,そのなかで前記等価極慣性モーメント比μe を定義する。
図1(b)の解析モデルにおいて,互いに直交するx軸,y軸,z軸のうち,x軸,z軸を水平面内に,y軸を上下方向にとるものとし,前記橋梁100の補剛桁104に相当する剛体104′は,x軸周りに捩り運動を行うものとする。尚,x軸周りの減衰は十分に小さく無視できるものとする。また,前記ロータ1の中心は3軸の原点にあり,y軸周りに角速度Ωで回転するものとする。
このとき,前記剛体104′及びロータ1に作用するジャイロモーメント力は,それぞれ次式(1a),及び(1b)によって表される。
【数7】
Figure 0003877483
ただし,θはx軸周りの回転角(剛体の捩れ変位),φはz軸周りの回転角(ジンバル軸の回転変位),Ir はロータのy軸周りの極慣性モーメントである。
ジンバル2の回転変位φが十分に小さいと仮定し,上式(1a)及び(1b)におけるcos φを1として線形化すると,系の運動方程式は次式(2)の通りとなる。
【数8】
Figure 0003877483
ただし,Iは剛体の極慣性モーメント(ジャイロ制振装置のx軸周りの極慣性モーメントも含む),IG はロータを含めたジンバルのz軸周りの極慣性モーメント,kθはθ方向のばね定数,kφはφ方向のばね定数,cφはφ方向の減衰定数であり,また,MはM=M′exp〔jωt〕(jは虚数単位,ωは外力の周波数)で表される周期的外力とする。
そして,上式(2)を,次式(3)を用いて無次元化すると,
【数9】
Figure 0003877483
剛体の捩れ変位θについての伝達関数が,次式(4)のように表される。
【数10】
Figure 0003877483
この伝達関数から,ジャイロ制振装置の性能を評価するための等価極慣性モーメント比μe を得ることができる。
動吸振器の場合,一般に固有振動数は主系の固有振動数近傍に設定され,共振点近傍での応答が評価されることから,それにならい振動数比f,hをそれぞれf=1,h=1とおくと,このとき上式(4)は,次式(5)の通りとなり,
【数11】
Figure 0003877483
ばね質量系で構成される動吸振器の性能を表す質量比μ(=副系質量/主系質量)と同様に,等価極慣性モーメント比μe が,次式(6)で与えられる。
【数12】
Figure 0003877483
上式(5)から理解される通り,上式(6)の前記等価極慣性モーメント比μe が大きくなるほど,加振力に対する振動の伝達倍率が小さくなる。すなわち,制振効果が大きくなる。
【0007】
次に,曲げと捩れの2自由度系で橋桁振動を表現した系にジャイロ制振装置を取り付けた例を述べ,前記等価極慣性モーメント比μe とフラッター特性との関係について考える。
解析モデルは図1(b)に示したモデルに補剛桁104の撓みの自由度yを加え,その自由度に対する剛性kηと,撓み及び捩り方向にそれぞれ構造減衰cη,cθを付与したものとする。このとき,運動方程式は,次式(7)の通りとなる。
【数13】
Figure 0003877483
ただし,mはジャイロ制振装置を含めた橋梁の単位長さあたりの質量,ηは鉛直変位yを桁幅Bで無次元化した量である。また,Lは揚力(上下方向の力),Mは空力モーメント力(回転成分の力)であり,これらの値には平板翼理論値を用いることができる。連成フラッターの危険風速は,風速を上げたときに各モードの減衰の一つが正から負に変わるときの風速となる。
上式(7)において,ジンバル2の回転変位φをφ=φ′/(Ir Ω)と置き換えると,上式(7)の運動方程式は,次式(8)のように表すことができる。
【数14】
Figure 0003877483
ただし,ζφはジンバルの減衰比を表し,次式(9)のように定義される。
【数15】
Figure 0003877483
上式(8)のφ′に関する式において,Iおよびωθは橋桁の特性値である。従って,ジャイロ制振装置のチューニングパラメータであるωφ,ζφと等価極慣性モーメント比μe の3つのパラメータ値が等しければ,上式(8)の複素固有値解析で求まる固有値は等しい。すなわち,フラッターに対するジャイロ制振装置の効果は等しい。後述するが,ωφとζφは,基本的に橋梁のフラッター特性とジャイロの等価極慣性モーメント比の関係に応じて定まる。よって,フラッターに対するジャイロ制振装置の性能は,等価極慣性モーメント比μe によって,一意に定まると言える。
橋梁長手方向についてのジャイロ制振装置の設置位置の影響は,対象捩れ振動のモーダル質量を考え,設置位置における等価なモーダル質量と,ジャイロ制振装置の等価極慣性モーメントとの比を考えれば良い。また,複数のジャイロ制振装置を設置する場合に,橋梁系全体に影響する等価極慣性モーメント比μe は,各装置における等価極慣性モーメント比を足し合わせればよい。
即ち,上式(6)をより一般化した等価極慣性モーメント比μe は,次式(10)のように表すことができる。
【数16】
Figure 0003877483
ただし,ωθは目標風速における橋梁の捩れ振動数,添字iはN個の者色制振装置のうちのi番目の装置とその設置位置を表し,またΩi ,Iri,IGiはそれぞれi番目の装置のロータの回転数,慣性モーメント,ジンバルの慣性モーメントを表す。Ii はi番目のジャイロ制振装置設置位置における橋梁の対象捩れモードのモーダル質量であって,次式により表される。
【数17】
Figure 0003877483
ただし,Λは橋梁の質量マトリクス,Φθi は橋梁の対象捩れモードのモードベクトルである。
【0008】
橋梁のフラッター対策として,ジャイロ制振装置を利用する場合には,上式(10)で表されるような等価極慣性モーメント比を指標とすれば,その諸元を変更する度に,フラッター解析をし直して,その性能評価を行うといった非効率な作業を無くすことができる。
前記等価極慣性モーメント比μe を用いたジャイロ制振装置の具体的な設計の手順は次の(S1a)〜(S3a)の通りである。
(S1a) 複数の等価極慣性モーメント比μe を予め準備し,フラッター解析により,各μe の値におけるジャイロ制振装置の固有振動数及び減衰比とフラッター発現風速の関係を求める。
(S2a) ジャイロのチューニング誤差等を考慮しても,十分に目標風速を満足するための,前記等価極慣性モーメント比μe を決定する。
(S3a) (S2a)において定めた等価極慣性モーメント比μe と上式(10)からジャイロ制振装置の設置位置,ロータ1の回転数Ω,ロータ1の極慣性モーメントIr ,ジンバル2の極慣性モーメントIG の関係を定めて,装置を設計する。
例えば対象橋梁を,中間支間長が2500mの超長大吊橋とし,その吊橋の諸元が,桁幅B=41m,単位長さあたりの全死荷重m=406kN/m,極慣性モーメントI=101459kNm2 /mであり,曲げ及び捩れの1次固有振動数が,それぞれ0.056Hz,0.16Hzであり,対数減衰率はそれぞれの振動モードに対し0.02とする。
非定常空気力として平板翼の理論値を用い,前記対象橋梁にジャイロ制振装置を付加しない場合についてフラッター解析を実施したときの風速と応答振動数,風速と対数減衰率の関係をそれぞれ図3(a),(b)に示す。
対数減衰率が負となるとき自励振動,即ちフラッター振動となる。この例では,前記ジャイロ制振装置を付加しないときのフラッター発現風速は64m/sとなった。
この橋梁に対して,ジャイロ制振装置を付加したときの目標風速を80m/sとおき,有風時の橋梁の基準捩れ振動数ωθを,図3(a)から0.1Hzとおき,ジャイロ制振装置を付加した場合について実施したフラッター解析の結果を,図4に示す。前記フラッター解析は,準備した4つの等価極慣性モーメント比μe 10%,15%,40%,70%それぞれの場合について行った。図4(a),(b),(c),(d)が,それぞれの場合を示す。尚,図4の各図における縦軸はジンバルの減衰比であり,横軸は固有振動数であり,図中の実線は等風速線で実線上の数字は風速を表す。
図4から理解される通り,等価極慣性モーメント比μe が大きくなる程,最大フラッター発現風速は高くなるとともに,目標風速80m/sを満足するジャイロ制振装置のパラメータ範囲が広がることを確認することができる。
この例のように,明石海峡大橋を越える中央径間2500m以上の超長大橋において,ジャイロ制振装置によりフラッター発現風速を80m/s以上確保するには,橋梁の諸元により特性は若干異なるものの,少なくとも等価極慣性モーメント比が15%以上必要となることが,発明者の研究により確かめられている。
ただし,図4の例において,等価極慣性モーメント比15%のジャイロ制振装置で目標風速80m/sを確保するためには,ジャイロ制振装置のパラメータωφ,ζφをかなりシビアに設定する必要がある。実際の橋梁においては,橋梁の構造特性や自励空気力の見積もり誤差から,ジャイロ制振装置のパラメータを最適に設定することはほとんど不可能に近いと言えるため,実際には等価極慣性モーメント比が30%以上となるジャイロ制振装置を設置する必要があると考えられる。
【0009】
ところで,上式(1)に示したように,本装置において制振力に相当するジャイロモーメント力は,cos φ( φ:ジンバルの回転角)が掛け合わされた値である。等価極慣性モーメント比μe にもその影響が現れるため,ジンバル2の回転角が大きくなれば,ジャイロ制振装置の性能は悪化する。さらに,このジンバル2の振動が90度を越えるようなことがあれば,このジャイロ制振装置は逆に橋梁に加振力を与えてしまうことになる。橋梁100が正の減衰特性を有するため,理論的には,フラッターが発現するまでは,橋梁100およびジンバル2は振動しない。しかしながら,実際の風は乱れ成分を有しているから,フラッター振動が発生せずとも,その乱れにより橋梁が振動することがある。この乱れ成分による応答はガスト応答と呼ばれている。このガスト応答に伴って橋梁が振動することにより,ジンバル2も振動する。ジンバル2が大きく振動している状態では,既述の通りジャイロ制振装置の制振効果が低下するため,設計通りの目標風速を確保することができない恐れが生じる。
そこで,ジャイロ制振装置を設計する際には,前記等価極慣性モーメント比μe による設計に加えて,事前に目標風速におけるジンバル2の振動レベルを推定し,その推定振動レベルに応じた設計を行う方が好ましい。
ここで,橋桁の捩れ振動に対するジンバル2の振動倍率について考える。橋桁の捩れ変位θに対するジンバル2の回転変位φの振幅比は,上式(2)の運動方程式に,φ=φ0 exp〔jωt〕,θ=θ0 exp〔jωt〕なる解を仮定して求めることができる。上式(3)の無次元数を用いると,ジンバル2の回転変位φの振幅比は,次式(11)のように表すことができる。
【数18】
Figure 0003877483
等価極慣性モーメントの計算と同様に,振動数比f,hをそれぞれf=1,h=1とおくと,このとき上式(11)を次式(12)のように表すことができる。
【数19】
Figure 0003877483
ロータ1の極慣性モーメントIr とジンバル2の極慣性モーメントIG の関係は,円盤状のロータ1だけを考えると,IG =Ir /2であるが,ジンバル2などの付加慣性を考慮すると,ほぼ同程度の大きさになると考えられ,その比は装置によらず大体1に近いものと考えられる。よって,振動倍率は,橋桁の捩れ振動数に対するロータ1の回転数比αに比例し,ジンバル2の減衰比ζが小さいほど大きくなると言える。橋梁の振動振幅をAθとすると,ジンバル2の振動振幅Aφは次式(13)の通りとなる。
【数20】
Figure 0003877483
ジャイロ制振装置のジンバル2の許容振動振幅と前記振動振幅Aφを照らし合わせることにより,ジャイロ制振装置の設計が可能となる。
前記振動振幅Aφを考慮したジャイロ制振装置の具体的な設計の手順は次の(S1b)〜(S5b)の通りである。
(S1b) 目標風速を満足し得る前記等価極慣性モーメント比μe を上述の通り定めておく。
(S2b) 目標風速を満足し得るジャイロ制振装置の固有振動数と減衰比ζG を求める。
(S3b) 前記等価極慣性モーメント比μe ,固有振動数,及び減衰比ζG をパラメータとするジャイロ制振装置を付加したときの,目標風速における橋梁の振動特性(橋梁の振動数及び減衰比)を求める。
(S4b) この振動特性を用いて,ガスト応答解析などにより,目標風速における橋梁の捩れ振動振幅を求める。
(S5b) 上式(13)に従って,ジンバル2の振動振幅を推定し,該ジンバル2の振動振幅を許容範囲に抑え得るロータ1の回転数Ω,ロータ1の極慣性モーメントIr ,ジンバル2の極慣性モーメントIG などを,前記等価極慣性モーメントμe と合わせ持って決定する。
【0010】
ガスト応答の計算は,本州四国連絡橋公団の明石海峡大橋台風設計要領・同解説などに詳しく説明されており,それにならって計算すればよい。計算は,フラッターの発現が予測される対象とする捩れモードに対して,ジャイロ制振装置を付加したときの,橋梁の振動数や減衰を与えて行う。目標風速におけるジャイロ制振装置設置橋梁の減衰特性などが,上式(7)のフラッター方程式を解くことにより求まり,この値をもとに,ガスト応答の計算が行える。図5に,解析結果の一例として,風速80m/sにおけるジャイロパラメータωφ,ζG と系の対数減衰率の関係を示す。図5(a)は等価極慣性モーメント比μe が40%の場合,図5(b)は等価極慣性モーメント比μe が70%の場合を示す。また,図5の各図の縦軸はジンバルの減衰比ζG ,横軸はジンバルの振動数を示し,図中の実線上の数字が対数減衰率を表す。
図5において,ジャイロパラメータのチューニング誤差等を考慮しても,橋梁の対数減衰率は,等価極慣性モーメント比が40%の場合は0.2以上,70%の場合では0.4以上確保し得ることが示されている。橋梁の減衰が大きくなる程,このガスト応答のレベルは小さくなるため,ジンバルの振動を抑えるという意味で重要となる。
ここで,前述した中央径間2500mmの橋梁での計算例に当てはめると,橋梁の基準振動数を0.1Hzとし,対数減衰率に0.2及び0.4を用いてガスト応答の計算を行うと,対数減衰率が0.2の場合,捩れ片振幅のRMS値は1.6度,対数減衰率が0.4の場合は捩れ片振幅のRMS値は1.2度という結果を得た。
ジンバル2の振動振幅の推定には,上式(11)を用いる。ロータ1の極慣性モーメント比Ir とジンバル2の極慣性モーメントIG との比を1と仮定し,ロータ1の回転数をfrotor とすると,ジンバル2の振動振幅Aφは,次式(14)の通りとなる。
【数21】
Figure 0003877483
等価極慣性モーメント比μe が40%の場合に,ジンバル2の減衰比ζG を0.25に調整するものとすると,ジンバル2の振動振幅Aφは32×frotor 度となる。ジンバル2の許容振幅から,ロータ1の最大回転数を求めると,例えばジンバル2の許容振幅Aφが60度のとき,ロータ1の最大回転数は,1.875Hzとなる。この値を基準にして,等価極慣性モーメント比μe が40%となるように上式(10)から,ジャイロ制振装置の諸元や設置場所を設計すれば良い。
また,等価極慣性モーメント比μe が70%の場合も同様である。ジンバル2の減衰比が0.4であるとすると,ジンバル2の振動振幅Aφの推定値は,15×frotor となる。この結果からロータ1の最大回転数を決定し,上式(10)の等価極慣性モーメント比μe から,ジャイロ制振装置の諸元を設計することができる。
尚,上述の通りジンバル2の振動振幅が90度を越えるようなことがあれば,ジャイロ制振装置は逆に橋梁に加振力を与えてしまう。目標のフラッター発現風速よりも低い風速でも,ジンバル2の定常振動が90度以上となっていると,フラッター抑制効果が無くなるために,一気にフラッターへ移行する。フラッターは発散振動であり,「橋梁が大きく揺れると,ジンバル2も大きく揺れる。ジンバル2が大きく揺れると制振効果が小さくなる。制振効果が小さくなると,橋梁はさらに揺れる」という循環を繰り返すためである。このことから,橋梁のフラッターに対して,ジャイロ制振装置の設計を行う際には,上式(13)によって算出されるジンバル2の振動振幅の推定値が,90度以下になる様にする必要がある。
このように,本発明の実施の形態に係るジャイロ制振装置では,等価極慣性モーメント比及びジンバルの推定振動振幅から,フラッター発現風速を目標風速まで向上し,しかもジンバルが許容振動を越えて制振力が低下しないようなロータ,ジンバルに関するパラメータを,容易且つ効率的に定めることができる。
【0011】
【発明の効果】
以上説明した通り,前記請求項1〜4のいずれか1項に記載のジャイロ制振装置によれば,等価極慣性モーメント比を用いて,フラッター発現風速を目標風速まで向上し得るロータ,ジンバルに関するパラメータを,容易且つ効率的に定めることができる。
しかも,前記請求項3又は4に記載のジャイロ制振装置では,ジンバルの推定振動振幅から,ジンバルが許容振動を越えて制振力が低下しないようなパラメータを,容易且つ効率的に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るジャイロ制振装置の構成及び解析モデルを説明するための図。
【図2】 前記ジャイロ制振装置の橋梁に対する取り付け例を説明するための図。
【図3】 橋梁単体でのフラッター解析の結果の一例を示す図。
【図4】 前記ジャイロ制振装置のパラメータと等価極慣性モーメント比と風速の関係を示す図。
【図5】 前記ジャイロ制振装置のパラメータと対数減衰率との関係を示す図。
【図6】 橋梁の構成例を説明するための図。
【符号の説明】
1…ロータ
2…ジンバル
104…補剛桁
104′…剛体

Claims (4)

  1. ロータと,橋梁に揺動可能に取り付けられ前記ロータを1自由度回転支持するジンバルとを備えたジャイロ制振装置において,
    前記ロータの回転数Ω(Ωi ),前記ロータの慣性モーメントIr (Iri),及び前記ジンバルの慣性モーメントIG (IGi)の関係が,次式(A)の等価極慣性モーメント比μe に基づいて定められてなることを特徴とするジャイロ制振装置。
    Figure 0003877483
    ただし,添字iはN個のジャイロ制振装置のうちi番目の装置とその設置位置を示し,ωθは橋梁単体(ジャイロ制振装置無し)での目標風速におけるフラッターの振動数を表す。また,Ii はi番目のジャイロ制振装置の設置位置における,橋梁の対象捩れモードのモーダル質量であって,次式(B)により表されるものである。
    Figure 0003877483
    ただし,Λは橋梁の質量マトリクス,〔Φ〕は橋梁の対象捩れモードのモードベクトル,Φθi はi番目のジャイロ制振装置の設置位置における,橋梁構造物の対象捩れモードのモード振幅である。
  2. 前記等価極慣性モーメント比μe が15%以上となるように,前記ロータの回転数Ω,前記ロータの慣性モーメントIr ,及び前記ジンバルの慣性モーメントIG を定めてなる請求項1に記載のジャイロ制振装置。
  3. 次式(C)に従って推定したジンバルの振動振幅Aφにも基づいて,前記ロータの回転数Ω,前記ロータ慣性モーメント r ,及び前記ジンバルの慣性モーメントIG を定めてなる請求項1又は2に記載のジャイロ制振装置。
    Figure 0003877483
    ただし,Aθは橋梁の捩れ振動振幅の推定値,ζG はジャイロ制振装置のジンバル系の減衰比である。
  4. 前記ジンバルの振動振幅Aφが90度以下となるように,前記ロータの回転数Ω,前記ロータの慣性モーメントIr ,及び前記ジンバルの慣性モーメントIG を定めてなる請求項3に記載のジャイロ制振装置。
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