JP3874897B2 - β−カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子およびその使用 - Google Patents

β−カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子およびその使用 Download PDF

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Description

【0001】
〔発明の背景〕
【発明の属する技術分野】
本発明は、β‐イオノン環を有する化合物に水酸基を導入する酵素をコードする遺伝子、代表的にはラン藻に由来する遺伝子、およびその遺伝子を用いてβ- カロチン等の環状カロチノイドに水酸基を導入する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カロチノイド (carotenoid、カロテノイドとも呼ばれる) とは、通常、炭素鎖が40のイソプレン骨格からなる自然界に豊富に存在する天然色素の総称である。現在までに、約600 種類のカロチノイドが単離されている (Pfander, H., ed., Key to Carotenoids. Basel, Birkhauser, 1987)。カロチノイドは、植物や光合成微生物では必須の色素であり、光合成の補助色素として機能するほか、光酸化的障害から組織や細胞を保護する機能を担っている。本色素は、また、黄色や赤色の天然着色料として利用され、さらに、癌予防や免疫賦活活性などを有する栄養価改善剤として食用や飼料用にすでに一部実用化され、将来の発展が有望視されているものである(松野隆男、幹渉、動物におけるカロテノイドの生理機能と生物活性、化学と生物, 28, 219-227, 1990)。
【0003】
カロチノイドは、ステロール、キノン、及びその他のイソプレノイドと共通なイソプレン基本生合成経路によって合成される。最初のイソプレノイドであるC5のイソペンテニルピロリン酸 (IPP) は異性化反応によりジメチルアリルピロリン酸 (DMAPP) に変換され、さらに、DMAPP は、C5のIPP と順次、縮合することにより、C10 のゲラニルピロリン酸 (GPP)、C15 のファルネシルピロリン酸 (FPP)、C20 のゲラニルゲラニルピロリン酸 (GGPP) というふうに、炭素数を5 つづつ延ばしていく。カロチノイドに特異的な生合成経路は、GGPPにおいてイソプレン基本生合成経路から分岐する。すなわち、2 分子のGGPPが縮合して、最初のカロチノイドである無色のフィトエン (phytoene) が合成される。フィトエンは、不飽和化反応により、順次、二重結合が導入されることにより、フィトフルエン (phytofluene ;フィトエンに二重結合1 個) 、ζ- カロチン (ζ-carotene ;二重結合2 個) 、ノイロスポレン (neurosporene;二重結合3 個) 、リコペン(lycopene ;二重結合4 個) に変換される。さらに、リコペンは環化反応によりβ- カロチン (β-carotene) やα- カロチン (α-carotene) に変換される。そして、β- カロチンやα- カロチンに水酸基やケト基などが導入され、ゼアキサンチン (zeaxanthin) 、ルテイン (lutein) 、アスタキサンチン (astaxanthin)などの種々のキサントフィルが合成される。
【0004】
カロチノイドの生合成を担う遺伝子の知見は、1990年代に入って飛躍的に進展した。現在までに、多くのカロチノイド生合成遺伝子が、植物常在 (epiphytic)細菌Erwinia やトマト、赤ピーマンなどの植物を始めとして、光合成細菌Rhodobacter 、ラン藻Synechococcus sp. strain PCC7942、カビNeurospora crassa など、種々の生物から単離され、それらの機能が明らかにされた (三沢典彦,遺伝子レベルで解明されたカロチノイド生合成経路,蛋白質 核酸 酵素, 41, 337-346, 1996))。したがって、取得された種々のカロチノイド生合成遺伝子を利用して、遺伝子工学的手法により大腸菌や酵母などの微生物、さらには植物などを形質転換し発現させることによって、種々の生物に、カロチノイドの生合成能を新たに付与したり、カロチノイドの代謝経路を変えたりすることが可能となった (三沢典彦,セミナー室 メタボリックエンジニアリングの展開 −2 .大腸菌・酵母によるカロテノイド生産,化学と生物,35,60-68 ,1997、および、三沢典彦,イソプレノイド生合成遺伝子による植物の代謝工学,第33回 植物化学シンポジウム 講演要旨集,22-32 ,1997) 。
【0005】
β- カロチンをβ- クリプトキサンチンを経てゼアキサンチンに変換する酵素であるβ- カロチンハイドロキシラーゼ (β-carotene hydroxylase) をコードする遺伝子 (crtZ またはbhy) は、植物常在細菌ErwiniaFlavobacterium 属細菌、海洋細菌Agrobacterium aurantiacum, Alcaligenes sp. strain PC-1 、植物シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) から取得されている (N. Misawa, Y. Satomi, K. Kondo, A. Yokoyama, S. Kajiwara, T. Saito, T. Ohtani, W. Miki, Structure and functional analysis of a marine bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed at the gene level. J. Bacteriol., 177, 6575-6584, 1995 、および、Z. Sun, E. Gantt, F. X. Cunningham, Jr., Cloning and functional analysis of the β-caortene hydroxylase of Arabidopsis thaliana, J. Biol. Chem., 271, 24349-24352, 1996 、および、L. Pasamontes, D. Hug, M. Tessier, H.-P. Hohmann, J. Schierle, A. P. G. A. M. van Loon, Isolation and characterization of the carotenoid biosynthesis genes of Flavobacterium sp. strain R1534, Gene, 185, 35-41, 1997) 。これらのβ- カロチンハイドロキシラーゼは、種を超えて、アミノ酸配列レベルでよく保存されていた。たとえば、Erwinia と海洋細菌のCrtZは53-56 %の同一のアミノ酸配列を有しており、これらの細菌と植物Arabidopsis のβ- カロチンハイドロキシラーゼは、31-37 %の同一のアミノ酸配列を有していた。
【0006】
カロチノイドは、炭素と水素のみからなる" カロチン" (たとえば、リコペン、β- カロチン、α- カロチン等)、及び、カロチンに水酸基、ケト基などの酸素を含む基が導入された" キサントフィル" (たとえば、ゼアキサンチン、ルテイン、アスタキサンチン等)からなりたっている。一般的に言って、キサントフィルは、カロチンと比べると、水溶性が若干あるため、癌予防や免疫賦活活性などの生理活性が高いと考えられている(西野輔翼, 食品中のカロテノイドによる発癌抑制, 農化誌, 67, 39-41, 1993)。
【0007】
〔発明の概要〕
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、カロチン、特に食品に最もよく含まれているカロチンであるβ- カロチンをβ- クリプトキサンチンやゼアキサンチンに変換する技術の開発が望まれる。
本発明の課題は、前述した種々の生物由来のβ- カロチンハイドロキシラーゼと同様の活性を持ちながら、これらのβ- カロチンハイドロキシラーゼとアミノ酸配列レベルで相同性を有さない酵素をコードする遺伝子を見出し、これを用いて、β- カロチン等のβ- イオノン環の3位(および/または3′位)に水酸基を導入し、β-クリプトキサンチンやゼアキサンチン等のキサントフィルを合成する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
ラン藻Synechocystis sp. strain PCC6803は、そのゲノム情報が明らかにされた唯一のラン藻である (T. Kaneko, S. Sato, H. Kotani, A. Tanaka et al., Sequence analysis of the genome of the unicellular cyanobacterium Synechocystis sp. strain PCC6803. II. Sequence determination of the entire genome and assignment of potential protein-coding regions. DNA Res. 3, 109-136, 1996) 。一方、Synechocystis PCC6803は、ゼアキサンチン、エキネノン、ミキソキサントフィル等のキサントフィルを生産することができる。それゆえ、本ラン藻はゼアキサンチンを作るためのβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子を有するはずであるが、相同性検索の結果、既存のβ- カロチンハイドロキシラーゼと類似性のあるタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム (ORF)は見出されなかった。したがって、Synechocystis PCC6803のβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子は、既存のβ- カロチンハイドロキシラーゼとは少なくとも構造の違う酵素をコードしていると考えられる。発明者らは、Synechocystis PCC6803のゲノム上に推定された3,166 個のタンパク質をコードしうるORF の中から、β- カロチンをβ- クリプトキサンチンを経てゼアキサンチンに変換するβ- カロチンハイドロキシラーゼをコードするORF sll 1468を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による遺伝子は、配列番号1で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつβ‐イオノン環の3位(および/または3′位)に水酸基を導入する酵素活性を有するポリペプチド(β‐カロチンハイドロキシラーゼ)をコードするものである。
また本発明は、上記の遺伝子を用いたキサントフィルの発現もしくは製造方法をも提供する。すなわち、本発明によるキサントフィルの発現もしくは製造方法は、配列番号1で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子を宿主に導入してこれを発現させ、宿主中のβ‐イオノン環を有する化合物における該環の3位(および/または3′位)に水酸基を導入することを特徴とするものであり、好ましい具体的態様は、該遺伝子を宿主に導入してこれを発現させ該宿主中のβ‐カロチンをβ‐クリプトキサンチンまたはこれを経てゼアキサンチンに変換することを特徴とするものである。
【0010】
上記の方法により、たとえば、もともと従来型のβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子を有している微生物や植物に本発明によるβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子を導入しても、相同組み換えやco-suppression 等の問題を気にすることなく、これらの微生物や植物においてβ- カロチンハイドロキシラーゼ活性を付与または増大させることができる。
【0011】
〔発明の具体的な説明〕
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は遺伝子は、配列番号1で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(β‐カロチンハイドロキシラーゼ)をコードするものであることは前記したところであり、その典型的な例は配列番号1のアミノ酸配列をコードするラン藻由来の遺伝子である。
また本発明は、上記遺伝子を用いたキサントフィルの発現もしくは製造方法にも関し、このキサントフィルの製造方法は、上記遺伝子を宿主に導入してこれを発現させ、該宿主中のβ‐イオノン環を有する化合物における該環の3位(および/または3′位)に水酸基を導入することを特徴とするものである。本発明方法の好ましい具体的態様は、上記遺伝子を宿主に導入して発現させ、該宿主中のβ‐カロチンをβ‐クリプトキサンチンまたはこれを経てゼアキサンチンに変換することを特徴とする方法である。
【0012】
本発明方法において、宿主がβ‐カロチンを産生している(蓄積している)場合、好適な例としてトマト、ニンジン、トウモロコシ、カンキツ類、タバコ、Phaffia属酵母などでは、β‐カロチン生成に関与する遺伝子はすでに存在しているため本発明遺伝子のみを宿主細胞に導入すればよい。
また、宿主がβ‐カロチンを産生していない場合、本発明遺伝子の他に、β‐カロチン生成に関与する不足の遺伝子、すなわち、カロチノイド生合成遺伝子crtE、crtB、crtI、crtYの全部または一部を導入する必要がある。例えば、本発明において好ましい宿主である大腸菌、Zymomonas属細菌、Saccharomyces属酵母、Candida属酵母の場合は、上記のカロチノイド生合成遺伝子を保有していないか、crtEと同様な働きをする遺伝子を保有している場合でもその活性が弱いのでそれらの遺伝子すべてを導入する必要がある。
【0013】
カロチノイド生合成遺伝子であるcrtE、crtB、crtI、crtYは、公知の種々の生物由来、たとえば植物常在細菌Erwinia(たとえばErwinia uredovora)、海洋細菌(たとえばAgrobacterium aurantiacum)、Alcaligenes sp.strain PC−1等に由来するものを用いることができ、これらの具体的な配列については、例えばN.Misawa et al.,J.Bacteriol.172,6704−6712,1990、N.Misawa et al.,J.Bacteriol.,177,6575−6584,1995等に記載されている。具体的に例示すれば、crtEは本願明細書の配列番号4のアミノ酸番号1〜302、crtBは配列番号3のアミノ酸番号1〜296、crtIは配列番号5のアミノ酸番号1〜492、crtYは配列番号6のアミノ酸番号1〜382または配列番号2の1〜386、でそれぞれ示されるアミノ酸配列およびそれらの変異体(例えば1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有しかつ同じ酵素活性を有するタンパク質)をコードする遺伝子を使用することができる。
【0014】
本発明遺伝子および上記の各種crt 遺伝子を取得する一つの手段は、核酸合成の方法に従って、その鎖長の少なくとも一部を化学合成することであるが、遺伝子のサイズが大きく数が多いということを考えれば、この化学合成法よりも染色体DNAライブラリーを作製し、このライブラリーから遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば適当なプローブ(たとえば、化学合成したDNAプローブなど)によるハイブリダイゼーション法、によりこれを取得するほうが早いといえる。
【0015】
<ラン藻Synechocystis sp. strain PCC6803のゲノム情報>
Synechocystis sp. strain PCC6803 ( 以下 PCC6803) は単細胞性のラン藻で、約3.6 Mb の環状ゲノムを持っている (金子貴一, 中村保一, 田畑哲之, ラン藻ゲノムの全構造解明がもたらすもの, 化学と生物, 34, 786-792, 1996)。1996年の2 月に、光合成生物としては始めてPCC6803 ゲノムの全塩基配列が決定され、9 月には、配列データーとコンピューターによる解析データが公開された (T. Kaneko, S. Sato, H. Kotani, A. Tanaka et al., Sequence analysis of the genome of the unicellular cyanobacterium Synechocystis sp. strain PCC6803. II. Sequence determination of the entire genome and assignment of potential protein-coding regions. DNA Res. 3, 109-136, 1996)。現在では、pCC6803 に関するすべてのゲノム情報は、ftp://ftp.kazusa.or.jp/pub/cyano/cyano.p.aa.z にてアクセスすることができる。
【0016】
PCC6803のゲノム上には、3,166 個のタンパク質をコードしうる遺伝子領域 (ORF) が推定された。3,166 個のうち、既知の遺伝子と類似性を示したものは 1,742個 (全体の55%) であり、そのうち機能が予測できるものは 1,402個であった。したがって、既知の遺伝子と類似性を示さない未知の遺伝子は 1,424個ということになる。β- カロチンをβ- クリプトキサンチンを経てゼアキサンチンに変換するβ- カロチンハイドロキシラーゼをコードするORF sll 1468は、この未知の遺伝子の中から、思いがけず見いだされたものである。
【0017】
<ラン藻 PCC6803のβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子の取得>
β- カロチンをβ- クリプトキサンチンを経てゼアキサンチンに変換するβ- カロチンハイドロキシラーゼをコードするORF sll 1468は、その塩基配列の情報 (T. Kaneko, S. Sato, H. Kotani, A. Tanaka et al., DNA Res. 3, 109-136, 1996)に基づいて、PCR 反応 (林健志 編、実験医学別冊、PCR 法の最新技術、羊土社) や化学合成法等の方法により取得することができる。たとえば、発明者らは、化学合成した以下のDNA 配列をプライマーとして用いたPCR 法により、PCC6803 の染色体DNA 断片からORF sll 1468の配列を単離した。
5´- TCC TCG AGC GTG TGC CAG GAG TCC G -3´
5´- ACT CTA GAG CTA GGG CTT GTC AGA TG -3´
ここで得られたDNA 断片をXhoI/XbaI で消化後、pBluescript II KS+ (Stratagene) のXhoI-XbaI 部位に挿入し、大腸菌でPCC6803 のβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子を発現するプラスミドを得た。
【0018】
<ラン藻 PCC6803のβ- カロチンハイドロキシラーゼを含むプラスミドの作製法、及び各種生物への導入・発現法>
次に、前述の単離したORF (本発明の遺伝子を含む)を用いた各種生物での発現用プラスミドの作製法、及びこれらのプラスミドの各種生物への導入・発現法についてさらに詳しく説明する。
【0019】
微生物の形質転換および遺伝子発現
以下は、好ましい微生物への外来遺伝子の導入・発現法の概要について記載したものである。
外来遺伝子を含むプラスミドの作製法、大腸菌等の微生物へのプラスミドの導入および発現のための手順ないし方法は、本発明において下記したところ以外のものにおいても、遺伝子工学の分野により慣用されているものを含み、その手法ないし方法(たとえば、"Vectors for cloning genes", Methods in Enzymology, 216, p. 469-631, 1992, Academic Press 、および、"Other bacterial systems", Methods in Enzymology, 204, p.305-636, 1991, Academic Press 参照)に準じて実施すればよい。組換え微生物の培養は、導入されたプラスミドが有する薬剤耐性等の形質に合わせて、薬剤を添加したりすること以外は、もともとの微生物の親株の培養に準じて行えばよい(たとえば、Sambrook, J., Fritsch, E. F., Maniatis, T., "Molecular cloning -A laboratory manual." Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989、または、財団法人 発行研究所, LIST OF CULTURES 10th Edition, 1996 参照)。
【0020】
(1)大腸菌
大腸菌では、本発明遺伝子の他にβ‐カロチンの合成に関与する遺伝子 crt E、crt B、crt I、crt Y の導入が必要となる。大腸菌への外来遺伝子の導入法は、ハナハンの方法、ルビジウム法などすでに確立されたいくつかの効率的方法があり、それを用いて行えばよい(たとえば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, T. Maniatis, "Molecular cloning -A laboratory manual." Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 参照)。大腸菌での外来遺伝子の発現は常法に従って行えばよいが(たとえば、前述の "Molecular cloning -A laboratory manual."参照)、たとえば、pUC 系やpBluescript 系等のlac のプロモーター等を有する大腸菌用ベクターを用いて行うことができる。発明者等は、lac のプロモーターを有する大腸菌用ベクターpBluescript II KS+ (Stratagene) を用いて、lac のプロモーターの転写およびlacZ の翻訳のリードスルーを受ける用に PCC6803のORF sll 1468 遺伝子(本発明の遺伝子を含む)および4種の上記β‐カロチン合成遺伝子)を挿入し、この遺伝子を大腸菌で発現させればよい。
なお、本発明遺伝子を含む上記5種の遺伝子を連結する際のそれらの結合順位は特に限定されない。
【0021】
(2)Zymomonas mobilis
Zymomonas mobilis では、本発明遺伝子の他に上記の4種の crt遺伝子の導入が必要となる。エタノール生産細菌 Zymomonas mobilis への外来遺伝子の導入法は、グラム陰性菌に共通な接合伝達法により行うことができ、Zymomonas mobilis での外来遺伝子の発現は、たとえば Zymomonas mobilis 用ベクターpZA22 を用いて行うことができる(中村克己、「Zymomonas 細菌の分子育種」、日本農芸化学会誌, 63, p.1016-1018, 1989 、および、N. Misawa, S. Yamano, H. Ikenaga, Production of β-carotene in Zymomonas mobilis and Agrobacterium tumefaciens by introduction of the biosynthesis genes from Erwinia uredovora. Appl. Environ. Microbiol., 57, 1847-1849, 1991参照)。
【0022】
(3)酵母
酵母では、本発明遺伝子の他に上記の4種のcrt遺伝子の導入が必要となる。酵母Saccharomyces cerevisiae への外来遺伝子の導入法は、リチウム法などすでに確立された方法があり、それを用いて行えばよい(たとえば、秋山裕一監修バイオインダストリー協会編集、「酵母のニューバイオテクノロジー」医学出版センター刊参照)。酵母での外来遺伝子の発現は、PGK や GPD (GAP) 等のプロモーターおよびターミネーターを用いて、外来遺伝子(本発明遺伝子および4種の crt遺伝子)をこのプロモーターとターミネーターの間に転写のリードスルーを受けるように挿入した発現カセットを構築し、この発現カセットを、 S. cerevisiae のベクター、たとえば、YRp 系(酵母染色体のARS 配列を複製起点とする酵母用マルチコピーベクター)、YEp 系(酵母の2μm DNA の複製起点を持つ酵母用マルチコピーベクター)、YIp 系(酵母の複製起点を持たない酵母染色体組込み用ベクター)等のベクターに挿入することにより行うことができる(前述の「酵母のニューバイオテクノロジー」医学出版センター刊、日本農芸化学会ABC シリーズ「物質生産のための遺伝子工学」朝倉書店刊、および、S. Yamano, T. Ishii, M. Nakagawa, H. Ikenaga, N. Misawa, Metabolic engineering for production of β-carotene and lycopene in Saccharomyces cerevisiae. Biosci. Biotech. Biochem., 58, 1112-1114, 1994 参照)。
【0023】
酵母Candida utilis への外来遺伝子の導入法については、すでに本発明者らにより開示された方法(近藤、三沢、梶原、特開平8-173170号公報)に従って実施できる。具体的にはシクロヘキシミド耐性遺伝子、G418耐性遺伝子、あるいはハイグロマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性マーカー遺伝子を含んだプラスミドを直鎖状にした後、電気パルス法もしくはリチウム法によって、染色体上に組み込むことができる。外来遺伝子(本発明遺伝子および4種の crt遺伝子)の発現には同公報に記載されたGAP, PGK, PMA などのプロモーターを使用することができる。
【0024】
酵母Phaffia rhodozyma への外来遺伝子(本発明遺伝子および4種の crt遺伝子)の導入法については、Van Ooyen らにより、開示された方法(Van Ooyen et al., Transformation of Phaffia rhodozyma,WO94/06918, 1994)により、G418耐性遺伝子などの選択マーカー遺伝子を含むプラスミドをリチウム法などによって染色体上に組み込むことができる。
【0025】
微生物からのカロチノイド色素の抽出・精製法
培養物からのβ‐クリプトキサンチン、ゼアキサンチン等のカロチノイドの単離・精製は、微生物代謝生産物をその培養物から単離精製するために常用される方法に従っておこなわれる。例えば、培養物をろ過や遠心分離により培養ろ液と菌体に分け、菌体を有機溶剤(たとえば、アセトン、メタノール、クロロホルムおよびこれらの2種以上の混合物など)で抽出する。ついで抽出液を濃縮後、シリカゲル、化学結合型シリカゲル (ODS ゲル等) 、ゲルろ過剤などを用いた液体クロマトグラフィ−により精製する。得られたカロチノイドは、着色料、栄養価改善として食用や飼料用に、あるいは試薬用などに用いられる。
【0026】
植物の形質転換および遺伝子発現
植物の場合は通常β‐カロチンを産生しているので、本発明遺伝子のみを導入すればよい。
前述のPCC6803 の本発明β- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子 (ORF sll 1468) を含むプラスミドを作製し、これをトマト、ニンジン、トウモロコシ、カンキツ類、タバコなどの適切な植物に導入し、発現させることにより、ゼアキサンチンやβ- クリプトキサンチンおよびこれらのカロテノイド代謝物を得たり、増やしたりすることができる。
微生物の場合は形質転換体で生成したカロチノイドを単離することが主目的である。植物体ではむしろ、果実や花におけるカロチノイド含量を増やしたり、カロチノイドの種類を変化させることにより、栄養価を高めたりカロチノイド色を増大させることを主目的とする。
【0027】
以下は、植物への外来遺伝子の導入・発現法の概要について記載したものである。外来遺伝子を含むプラスミドの作製法、植物(細胞)へのプラスミドの導入および発現(植物体)のための手順ないし方法は、本発明において下記したところ以外のものにおいても、植物の遺伝子工学の分野により慣用されているものを含み、その手法ないし方法(たとえば、石田功, 三沢典彦, 細胞工学実験操作入門, 講談社, 1992 参照)に準じて実施すればよい。
【0028】
植物への外来遺伝子の導入法は、植物病原細菌Agrobacterium tumefaciens を介する方法、エレクトロポレーション法、パーティクルガンを用いる方法等が知られている。導入したい植物の種類に応じてこれらの方法を使い分けることができるが、現在では、Agrobacterium tumefaciens を介する方法が最も多用されている。プロモーターは、全身高発現プロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス (CaMV) の35S プロモーターを始めとして、種々の器官特異的に発現するものも使うことができる。CaMV 35S プロモーターを含んだバイナリーベクターpBI121 は Clontech 社より入手でき、Agrobacterium tumefaciens を介するためのベクターとして、広く使われているものである。ErwiniacrtI などの細菌のカロテノイド生合成遺伝子は、pBI121 をベクターとして用いることにより、タバコやトマト等の植物に導入でき、これらの遺伝子がタバコの葉やトマトの実などで発現し、機能することがすでに示されている (三沢典彦, カロテノイド生合成阻害剤抵抗性植物の作出, 植物の化学調節, 31, 143-149, 1996)。なお、この際、植物細胞質内で合成されたCrt タンパク質を、カロテノイド生産の場である葉緑体や色素体などのプラスチドに移行させるのに、トランジットペプチド配列 (例えばRubisco の小サブユニットのトランジットペプチド配列) をcrt 遺伝子(ここでは本発明遺伝子)の開始コドンの直前に付与する必要がある (三沢典彦, カロテノイド生合成阻害剤抵抗性植物の作出, 植物の化学調節, 31, 143-149, 1996)。
【0029】
配列番号3〜6に関する遺伝子を組み込んだ大腸菌は、下記のように工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−2377として寄託されており、配列番号2に関する遺伝子を組み込んだ大腸菌はBP−4505として寄託されている。
(1) Escherichia coli JM109(pCAR1)
受託番号:FERM BP-2377
受託年月日:平成元年4月11日
(2) Escherichia coli JM101(pAccrt-EIB,pAK92)
受託番号:FERM BP-4505
受託年月日:平成5年12月20日
菌株(1)は、Erwinia uredovoracrtE(zexA)、crtB(zexE)、crtI(zexD)、crtY(zexC)等の遺伝子を含んでおり、菌株(2)は、Agrobacterium aurantiacumcrtY 等の遺伝子を含んでいる。
【0030】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
〔実施例1〕 プラスミドの作製
植物常在 (epiphytic) 細菌Erwinia uredovoracrtE, crtB, crtI, crtY 遺伝子を有するプラスミドpACCAR16ΔcrtXは大腸菌にβ- カロチンを合成する能力を与えることができる (N. Misawa et al., Structure and functional analysis of a marine bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed at the gene level. J. Bacteriol., 177, 6575-6584, 1995) 。このプラスミドは、マーカー遺伝子としてクロラムフェニコール耐性遺伝子を有しており、よく使われているpBluescript やpUC 等の大腸菌ベクターと1つの細胞内で共存可能である。 PCC6803 ゲノムのコスミドライブラリーの内 ORF sll 1468 ( 後にβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子, bhy と同定された) を含むコスミドクローン cs 0827 (T. Kaneko et al., DNA Res. 3, 109-136, 1996 ) を鋳型として用いて、以下の1本鎖DNA をプライマーとしてPCR 反応を行った。
5´- TCC TCG AGC GTG TGC CAG GAG TCC G -3´
5´- ACT CTA GAG CTA GGG CTT GTC AGA TG -3´
【0031】
ここで得られた0. 94 kb のDNA 断片を制限酵素XhoI/XbaI で消化後、pBluescript II KS+ (アンピシリン耐性, Stratagene社) のXhoI-XbaI 部位に挿入することによりプラスミドpBS-bhy を得た。塩基配列の分析等により、pBS-bhy は目的とするORF sll 1468 を含んでいることを確認した。なお、このプラスミドでは、ORF sll 1468 は、ベクターpBluescript II KS+ のlac プロモーターの転写のリードスルーを受けるだけでなく、pBluescript II KS+ のlacZ の翻訳のリードスルーを受けること、すなわち、LacZの最初のN 末領域と融合タンパク質ができるようにデザインされている。
【0032】
〔実施例2〕 組換え大腸菌が生産するカロテノイドの同定
2つのプラスミドpACCAR16ΔcrtXおよびpBS-bhy を有する大腸菌を、150 μg/ml のアンピシリン、30 μg/ml のクロラムフェニコール、0.1 mMのイソプロピル- 1- チオ- β-D- ガラクトピラノシド (IPTG) を含むLB培地 (1 % トリプトン、0.5 % 酵母エキス、1 % NaCl) で30℃で24時間、定常期まで培養を行った。集菌後、菌体からカロチノイド色素をアセトンで抽出し、乾固した後、クロロフォルム−メタノール (9:1) で再抽出を行った。乾固後、色素を少量のメタノール、2-プロパノールまたはアセトンに溶かした後、高速液体クロマトグラフィー (HPLC) または薄層クロマトグラフィー (TLC) のサンプルとした。HPLCは、Nova-pak HR 6 μ カラム (300 x 3.9 mm, Waters) を用い、1 ml/min の速度で、アセトニトリル−メタノール−2-プロパノール (90:6:4) で展開を行った。TLC は、シリカゲル (60F254) を用い、クロロフォルム−メタノール (15:1) で展開を行った。
β- カロチン (all-trans 型) はSigma 社から購入したものを標品として用いた。さらに、ゼアキサンチン (all-trans 型) 、β- クリプトキサンチン (all-trans 型) 、カンタキサンチン (all-trans 型) 、エキネノン (all-trans 型) は、開示された方法 (N. Misawa et al., J. Bacteriol., 177, 6575-6584, 1995) に従って、Erwinia 、またはErwinia と海洋細菌のcrt 遺伝子を有する組換え大腸菌から精製を行った。
【0033】
pACCAR16ΔcrtXおよびpBS-bhy を有する大腸菌から抽出されたカロチノイド色素は、上記の条件でHPLCおよびTLC 分析した結果、ゼアキサンチン (all-trans 型) (全体の65%) 、β-クリプトキサンチン (all-trans 型) ( 全体の5 %) 、β- カロチン (all-trans 型) ( 全体の24%) の混合物であると同定された。なお、β- カロチンにケト基が導入されたカロチノイドであるカンタキサンチン やエキネノンは全く見いだされなかった。したがって、プラスミドpBS-bhy に含まれるORF sll 1468 は、β- カロチンを基質として、β- カロチンの3 位に水酸基が導入されたカロチノイドであるβ- クリプトキサンチンを経て、さらに、β- クリプトキサンチンの3´位に水酸基が導入されたカロチノイドであるゼアキサンチンを合成する酵素β- カロチンハイドロキシラーゼ (β-carotene hydroxylase) をコードする遺伝子であることがわかった。すなわち、ORF sll 1468 は、β- イオノン環の 3位 (3´位) に水酸基を導入する酵素をコードする遺伝子であることがわかる。
【0034】
この結果は全く思いがけないことであった。なぜなら、β- カロチンハイドロキシラーゼをコードする遺伝子 (crtZ またはbhy) は、植物常在細菌ErwiniaFlavobacterium 属細菌、海洋細菌Agrobacterium aurantiacum, Alcaligenes sp. strain PC-1 、植物シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) からすでに取得されているが (N. Misawa, et. al., J. Bacteriol., 177, 6575-6584, 1995、および、Z. Sun, et. al., J. Biol. Chem., 271, 24349-24352, 1996 、および、L. Pasamontes, et al., Gene, 185, 35-41, 1997)、これらのβ- カロチンハイドロキシラーゼは、種を超えて、アミノ酸配列レベルでよく保存されていることがわかっていた。たとえば、Erwinia と海洋細菌のCrtZは53-56 %の同一のアミノ酸配列を有しており、これらの細菌と植物Arabidopsis のβ- カロチンハイドロキシラーゼは、31-37 %の同一のアミノ酸配列を有していた。一方、ラン藻 PCC6803 のβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子と同定されたORF sll 1468がコードするタンパク質は、上記の種々のβ- カロチンハイドロキシラーゼとはアミノ酸レベルで相同性を有していなかった。むしろ、PCC6803 のORF sll 1468がコードするタンパク質は、海洋細菌Agrobacterium aurantiacumAlcaligenes sp. strain PC-1 のCrtW や緑藻Haematococcus pluvialis のBKT といったβ- カロチンケトラーゼ (β-carotene ketolase) (S. Kajiwara, T. Kakizono, T. Saito, K. Kondo, T. Ohtani, N. Nishio, S. Nagai, N. Misawa, Isolation and functional identification of a novel cDNA for astaxanthin biosynthesis from Haematococcus pluvialis, and astaxanthin synthesis in Escherichia coli. Plant Mol. Biol., 29, 343-352, 1995) とアミノ酸配列レベルで意義深い相同性を有していた。そこで、発明者らは、ORF sll 1468は、β- カロチンの4 位にケト基が導入されたエキネノンを経てエキネノンの3´位に水酸基が導入されたカロチノイドであるカンタキサンチンを合成する酵素でβ- カロチンケトラーゼをコードする遺伝子であろうと考え、β- カロチンを合成できる大腸菌を宿主として用いて、上記の実験を行ったのである。その結果、予想に反して思いがけず、ORF sll 1468は、β- カロチンケトラーゼではなくβ- カロチンハイドロキシラーゼをコードする遺伝子であることを発見したのであった。
【0035】
【配列表】
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【0036】
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【0037】
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【0038】
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【0039】
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【0040】
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【0041】
【発明の効果】
本発明による遺伝子は、種々の生物由来のβ‐カロチンハイドロキシラーゼと同様の活性を持ちながら、これらのβ‐カロチンハイドロキシラーゼとアミノ酸配列レベルで相同性を有さない酵素をコードするものであり、むしろβ‐カロチンケトラーゼとアミノ酸レベルで意義深い相同性を有していたことからすれば全く思いがけない配列と機能の関係を有するといえる。
本発明により、β- カロチンを多く蓄積している微生物や植物に、本発明によるβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子を導入して、あるいはβ‐カロチンを産生しない微生物や植物に本発明遺伝子をβ‐カロチン生合成に関与する遺伝子と共に導入して、ゼアキサンチンやβ- クリプトキサンチンなどのキサントフィルに変換することができる。また、もともと従来型のβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子を有している微生物や植物に、本発明によるβ- カロチンハイドロキシラーゼ遺伝子を導入しても、相同組み換えやco-suppression 等の問題を気にすることなく、これらの微生物や植物においてβ- カロチンハイドロキシラーゼ活性を付与または増大させることができ、その結果として、ゼアキサンチンやβ- クリプトキサンチン等のキサントフィルおよびこれらのキサントフィルの代謝物の生産量を増やすことができる。

Claims (6)

  1. 配列番号1で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードする遺伝子を宿主に導入してこれを発現させ、宿主中のβ- イオノン環を有する化合物における該環の3位( および/または3′位) に水酸基を導入することを特徴とする、キサントフィルの発現もしくは製造方法。
  2. 配列番号1で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードする遺伝子を宿主に導入してこれを発現させ、宿主中のβ- カロチンをβ- クリプトキサンチンまたはこれを経てゼアキサンチンに変換することを特徴とする、請求項1記載のキサントフィルの発現もしくは製造方法。
  3. 宿主がβ‐カロチンを産生している植物または微生物である、請求項1または2記載の方法。
  4. 植物または微生物がトマト、ニンジン、トウモロコシ、カンキツ類、タバコ、またはPhaffia属酵母である、請求項3記載の方法。
  5. 宿主がβ‐カロチンを産生しない微生物であり、β‐カロチンの産生に関与する遺伝子を該宿主に更に導入する、請求項1または2記載の方法。
  6. β‐カロチンを産生しない微生物が大腸菌、Zymomonas属細菌、Saccharomyces属酵母、またはCandida属酵母である、請求項5記載の方法。
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