JP3872972B2 - 舌可動域測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、舌可動域測定装置に関するものである。さらに詳しくは、舌運動障害の診断等に有用な舌可動域測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
口腔の先天的疾患の一つに舌強直症(舌小帯異常、舌小帯肥厚等ともいう)があり、舌小帯の異常により舌の運動が制限されるため、発音障害、哺乳障害、嚥下障害を生じ、疾患の程度が高度の場合には舌小帯伸展術が必要となる。
【0003】
しかしながら、舌の運動可能範囲(可動域)を正確に測定する手段が存在しないため、手術の適応を決める際の客観的基準を設けることができなかった。また、手術結果の評価に際しても困難を生じていた。
【0004】
さらに、舌癌等の口腔癌の治療では、舌の可動域に影響する舌、口底等の組織を切除するが、舌の可動域を測定する手段がないために、手術の舌運動への影響の客観的把握、手術法の改良、術後の舌機能回復運動の効果等を検討することができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
舌の可動域を客観的に測定する手段は、前記のとおり、舌強直症や舌癌手術後の舌運動障害における診断や治療についての高度な検討を可能とする。また近年、幼少児の口腔諸機能の低下が危惧されているが、そのような諸機能の一つである舌機能の一部としての舌可動域が客観的に測定可能となれば、幼少児における口腔諸機能低下の早期の診断や治療法の検討等が可能となる。さらに、舌可動域の測定手段は、高齢者等における中枢神経系障害による口腔機能障害の客観的指標を提供し、リハビリテーションの適応、その効果判定等としても高い有用性が期待されている。
【0006】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、舌の可動域を客観的に測定することのできる新しい装置を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願は、前記の課題を解決するための発明として、下顎前歯への固定部を先端に有する支持体が、先端に舌尖当接部を有するスライド部と、このスライド部の移動距離を計測するためのスケール部とを有しており、舌尖の前方への可動域をスライド部の移動距離として測定することを特徴とする舌可動域測定装置を提供する。
【0008】
また、この舌可動域測定装置においては、スライド部の舌尖当接部の初期位置が、支持体の下顎前歯固定部と略同一位置であること、およびスライド部に対する移動停止手段を備えていることを好ましい態様としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の舌可動域測定装置の一例を示した側面図である。例えばこの図1に示した測定装置(10)は、支持体(20)とこの支持体(20)に配設されたスケール部(30)、スケール部(30)の目盛りに対して平行移動するスライド部(40)からなっている。支持体(20)の先端には、被験者の下顎前歯(50)への固定部(21)と安定板(23)が設けられている。また、スライド部(40)の先端には被験者の舌(60)への当接部(41)が設けられている。
【0010】
スライド部(40)は、支持体(20)上の2本の支柱(22)の貫通孔を通過することによってスライド自在(矢印a、b方向)に保持されている。また、この図1に示した例では、2本の支柱(22)間のスライド部(40)には、前方(矢印a方向)への脱落防止手段を兼ねた指示針(42)を備えている。そして、この指示針(42)によって、スライド部(40)の先端の舌当接部(41)は、支持体(20)の下顎前歯固定部(21)と略同一位置から後方(矢印b方向)に移動するようになっている。
【0011】
なお、スライド部(40)の先端の舌尖当接部(41)は円盤状または角盤状であり、舌尖に当接させた際に違和感のない程度の大きさとすることができる。
【0012】
この測定装置(10)を用いて舌の可動域を測定する場合には、先ず、支持体(20)先端の安定板(23)を下顎前歯(50)の切端に載せ、固定部(21)を被験者の下顎前歯(50)の唇面(51)に当接固定する。そして、スライド部(40)を前方(矢印a方向)に伸ばして被験者の通常位置にある舌尖(61)にその当接部(41)を当てる。次いで、被験者が舌を前方に最大限まで伸長させた場合のスライド部(40)の移動(矢印b方向)の距離を、指示針(42)によってスケール部(30)の1mm毎の目盛りから読みとる。
【0013】
以上の方法によって、下顎前歯唇面(51)からの最大伸長距離として舌可動域が測定される。
【0014】
なお、この発明の装置では、舌可動域を測定するための舌尖(61)初期位置を、被験者の通常の舌尖(61)位置に応じて、下顎前歯唇面(51)よりさらに奥側(口腔内)または外側(口腔外)とすることもできる。例えば、通常の舌尖(61)位置が下顎前歯唇面(51)よりも口腔内にある被験者の場合には、脱落防止手段としての指示針(42)の位置を後方(矢印b方向)に移動させることによって、スライド部(40)の先端を下顎前歯唇面(51)より口腔内まで伸長させて、その位置からの舌可動範囲を測定することもできる。
【0015】
この発明の測定装置(10)は、舌の前方伸長によって移動したスライド部(40)を、その最大移動位置で停止させるような手段(ストッパー)を設けることも好ましい。このストッパー機能によって、被験者から装置を取り外した後に、正確に目盛りを読みとることができる。
【0016】
このような測定装置(10)は、舌の可動域として最大55mm程度を測定可能であればよい。従って、スライド部(40)はその先端の舌尖当接部(41)から前方の支柱(22)までの移動距離が約55mm、スケール部(30)はその目盛りが55mmまで備わる程度の大きさであればよく、装置全体としては全長約100mm程度とすることができる。
【0017】
個々の部材の形状や材質等は適宜とすることができる。例えば、個々の部材としてはステンレス鋼等の金属材やポリマー樹脂等を使用することができる。ただし、ポリマー樹脂を使用する場合には、加熱消毒等を考慮して、耐熱性に優れた樹脂(例えばポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等)の使用が好ましい。また、支持体(20)やスライド部(40)の形状は円柱や角柱、あるいは平板形状等とすることができる。ただし、スライド部(40)は、舌の伸長運動に対して大きな負荷をかけない程度の重量とすることが好ましい。
【0018】
さらに、スケール部(30)は支持体(20)と一体化されていてもよく、あるいは支持体(20)に対して取り外し可能であってもよい。
【0019】
もちろん、この発明の舌可動域測定装置は以上の例によって限定されるものではなく、細部の機構や形状等については様々な態様が可能である。
【0020】
次に、実施例として、この発明の測定装置を用いて舌可動域を測定した例を示す。
【0021】
【実施例】
図1に構成を示した測定装置(10)を作成し、健常成人被験者12名および成人の舌強直症1名について舌可動域(舌顎前歯唇面からの最大伸長距離)を測定した。測定は各人30回行い、その平均値を求めた。
【0022】
その結果、健常者の場合の舌可動域は最小21mm、最大39mm(平均27.9±1.5mm)であった。一方、舌強直症患者の場合には、最大値13mm(平均10mm)であり、健常者の約1/3であることが判明した。
【0023】
以上の結果から、この発明の測定装置によって、舌運動障害における舌可動域の低下が客観的かつ正確に測定できることが確認された。
【0024】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、舌の可動域を客観的に、簡便かつ短時間で、しかも非侵襲的に安定して測定することが可能となる。これによって、各種の原因からなる舌運動障害における障害の程度の客観的把握、治療法の改良、治療処置後の舌機能回復運動の効果等を検討することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の舌可動域測定装置の一例を示した側面図である。
【符号の説明】
10 舌可動域測定装置
20 支持体
21 下顎前歯固定部
22 支柱
23 安定板
30 スケール部
40 スライド部
41 舌尖当接部
42 指示針
50 下顎前歯
51 下顎前歯唇面
60 舌
61 舌尖

Claims (3)

  1. 下顎前歯への固定部を先端に有する支持体が、先端に舌尖当接部を有するスライド部と、このスライド部の移動距離を計測するためのスケール部とを有しており、舌尖の前方への可動域をスライド部の移動距離として測定することを特徴とする舌可動域測定装置。
  2. スライド部の舌尖当接部の初期位置が、支持体の下顎前歯固定部と略同一位置である請求項1の舌可動域測定装置。
  3. スライド部に対する移動停止手段を備えた請求項1の舌可動域測定装置。
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