JP3870567B2 - 架橋水素化nbr再生ゴムの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋水素化NBR再生ゴムの製造法に関する。更に詳しくは、実用に耐え得る再生ゴムを与える架橋水素化NBR再生ゴムの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
加硫スクラップゴムの再生には、オープンスチーム法(パン法)、ダイジェスター法(蒸解法)、メカニカル法(機械法)、UHF加熱脱硫法等が従来から知られているが、これらの方法では脱硫缶、蒸解缶、リクレーメーター、スーパーミキサー、UHF加熱処理装置等が用いられ、高温もしくは高圧条件下で処理するため、多大のエネルギー消費を必要とするばかりではなく、刺激臭や高温という作業環境の改善を求める声も大きい。
【0003】
即ち、加硫ゴムを可塑化し、再生する方法では、しゃく解剤(分子を切断するように作用する化学的軟化剤;ペプタイザー)、オイル等の再生処理剤を用い、高温、高圧処理を行うため、再生工程で刺激臭があり、得られた再生ゴムをバージンゴムに混合すると、再生処理剤の混入を避けることができず、このため再生ゴムをバージンゴムに多量に混合すると物性の低下がみられ、再生ゴムを混合したゴム材料の使用用途が限定されることになる。
【0004】
また、加硫ゴムを可塑化し、再生する対象は、廃タイヤであることが多く、これらは天然ゴムやSBR等イオウ加硫されたゴムであり、しかるに一般に過酸化物架橋された水素化NBRの可塑化方法としては、前記各方法は適当な方法とはいえない。更に、水素化NBRは、それ自体高価格であり、その架橋ゴム廃棄物の有効利用は、コスト削減および環境問題の観点から、重要な課題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、架橋した水素化NBRを可塑化する再生ゴムの製造法であって、可塑化して得られた再生ゴムを有効に使用し得る架橋水素化NBR再生ゴムの製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、架橋した水素化NBRに過酸化水素を加え、加圧加熱処理して可塑化し、好ましくはその後機械的せん断力を加える架橋水素化NBR再生ゴムの製造法によって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
可塑化処理される架橋水素化NBRは、水素化NBRを有機過酸化物またはイオウで架橋したものであり、水素化NBRとしては、分子主鎖中の不飽和結合量を約30%以下、好ましくは約10%以下にしたNBR水素化物であって、そのムーニー粘度ML1+4(100℃)が約50〜85程度のものが一般に用いられるが、100以上のものも用いることができる。
【0008】
実際の処理対象物は、加硫成形した際のバリ、屑、不良成形品等であり、可塑化処理前に予め粉砕しておくと、取扱性が良くなるばかりではなく、可塑化に要する時間を短縮できるので好ましいことである。
【0009】
可塑化処理に用いられる過酸化水素としては、約3〜40%の濃度のものが用いられ、一般には35%過酸化水素水が用いられる。35%過酸化水素水の場合、それは架橋水素化NBR100重量部当り約10重量部以上、好ましくは約20〜100重量部の割合で用いられる。過酸化水素水の量がこれよりも少ないと、可塑化時間を長くする必要があり、一方これ以上の割合で用いられると、可塑化時間は短かくできるものの、再生ゴム中に含まれる水分量が多くなり、それの乾燥に時間がかかるようになる。また、過酸化水素水の濃度の大小についても、同様の傾向がみられる。
【0010】
過酸化水素は、加熱処理により水と活性酸素とに分解し、その過程で架橋水素化NBRを分解し、可塑化、軟化させる。この過酸化水素水による可塑化処理は、加圧加熱条件下で行われる。加圧は、オートクレーブ等の密閉容器を用い、それを加熱することにより加圧された状態で用いられる。密閉容器内の圧力は、用いられた過酸化水素水の量が多い程高くなるが、5Kg/cm2程度でも十分に可塑化することができ、一般には約2〜50Kg/cm2の圧力が適用される。加熱条件は、約100〜200℃で約5〜48時間、好ましくは約120〜180℃で約10〜24時間程度であり、加熱温度を高くすれば加熱時間を短かくすることができる。
【0011】
可塑化処理後、ゴムに水を多く含む場合には、機械的脱水処理あるいは恒温槽やオーブン等による乾燥処理が行われる。水を多く含まない場合には、水の除去処理を行うことなく、そのまま用いることもできる。
【0012】
可塑化処理を終えたゴムには、ロール、押出機等を用いて機械的せん断を加えることが好ましい。ロールとしては、高炭素クロム軸受鋼ドリルド構造を有するリファイナーロールが、また押出機としては2軸押出機が好んで用いられる。このような機械的せん断力を適用すると、可塑化および軟化した表面が平滑な再生ゴムが得られるようになる。
【0013】
このようにして得られる再生ゴム中には、架橋反応を阻害するような成分が含まれていないため、そこに有機過酸化物等の架橋剤や架橋促進剤を新たに加えることにより、バージンゴムと同様に再架橋することができる。
【0014】
また、この再生ゴムをバージンゴムと混合して用いることもでき、例えばバージンゴム100重量部当り約5〜300重量部、好ましくは約5〜150重量部程度混合して用いても、バージンゴム単体から得られた架橋物と比較して、加硫物性や耐熱性の点で何ら遜色のない架橋物を得ることができる。
【0015】
【発明の効果】
架橋水素化NBR、特にパーオキサイド架橋水素化NBRは、しゃく解剤、オイル等の再生処理剤による可塑化が困難であり、またこれらの再生処理剤を加えて処理すると、再生前後でゴムの配合組成が変り、バージンゴムに再生ゴムを混合した場合物性等の特性が変り、ゴム製品の要求品質によっては再生ゴムの混合割合を増やすことができなくなる場合もあるが、本発明方法で得られる再生ゴムは、これをバージンゴムと混合して架橋してもバージンゴム単体と同程度の品質を維持することができる。このことは、再生ゴムの使用用途の適用範囲を拡げるばかりではなく、廃棄物の有効利用およびコストの削減をも達成させる。
【0016】
かかる再生ゴムの使用用途としては、Oリング、パッキン等のシール材の成形材料としてだけではなく、水素化NBRが一般に用いられている各種用途への展開を可能とする。
【0017】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0018】
実施例1
水素化NBR(日本ゼオン製品ゼットポール1020) 100重量部
SRFカーボンブラック 30 〃
酸化亜鉛 5 〃
ステアリン酸 0.5 〃
1,2-ポリブタジエン(MW2000) 2 〃
アジピン酸系エーテルエステル可塑剤(粘度20cps) 5 〃
ジフェニルアミン系老化防止剤 1.5 〃
イミダゾール系老化防止剤 1.5 〃
ジクミルパーオキサイド 8 〃
以上の各成分を3Lニーダおよびオープンロールを用いて混練し、混練物について180℃、6分間のプレス加硫を行ない、加硫バリをロール間隔を0.1mm、ロール温度を40℃に調整した10インチ型リファイナーロール機に10回程度通し、粗粉砕を行った。
【0019】
この粗粉砕架橋水素化NBR100重量部に対して35%過酸化水素水40重量部を加えた後オートクレーブ中に入れ、150℃で15時間の加熱処理を行った。加熱処理後オートクレーブを開放し、空冷もしくは水冷する。
【0020】
このようにして可塑化処理を終えたゴムを、120℃の恒温槽で15分間乾燥した後、ロール間隔を0.1mm、ロール温度を40℃に調整した10インチ型リファイナーロール機に20回通し、その後ロールに巻き付け、5分間の切り返しを行ない、練りを加えた。ロール間隔を1mmにして分出しを行った結果、バージンゴムシートと同様の表面状態を有する再生ゴムシートが得られた。この再生ゴムシートの刺激臭は、少なかった。
【0021】
得られた再生ゴムの可塑化の程度を評価するため、レオメーターODR(180℃)の最低トルク値を測定すると、11Kgf・cmという値が得られた。
【0022】
また、バージンゴム153.5重量部に対して40重量部または80重量部の再生ゴムを配合し、混練、プレス加硫(180℃、6分間)したものについて、常態物性の測定ならびに空気加熱老化試験(120℃、70時間後の常態物性の変化)を行ない、次のような結果を得た。
測定・試験項目 バージンゴム 再生ゴム 40 部 再生ゴム 80 部
[常態物性]
硬さ (JIS A) 75 77 78
引張強さ (MPa) 22.8 24.7 24.5
伸び (%) 238 236 246
[空気加熱老化試験]
硬さ変化 (ポイント) +7 +5 +6
引張強さ変化率 (%) +12 +10 +16
伸び変化率 (%) -10 -15 -15
【0023】
実施例2
実施例1において、オートクレーブ中での加熱処理条件を120℃、15時間に変更した。再生ゴムシートの刺激臭は少なく、ODR(180℃)最低トルク値は40Kgf・cmであった。
【0024】
実施例3
実施例1において、オートクレーブ中での加熱処理条件を150℃、5時間に変更した。再生ゴムシートの刺激臭は少なく、ODR(180℃)最低トルク値は25Kgf・cmであった。
【0025】
実施例4
水素化NBR(ゼットポール1020) 100重量部
FEFカーボンブラック 40 〃
酸化亜鉛 5 〃
ステアリン酸 0.5 〃
ジフェニルアミン系老化防止剤 1.5 〃
イオウ 0.5 〃
チウラム系加硫促進剤(大内新興化学製品ノクセラーTRA) 0.7 〃
チウラム系加硫促進剤(同社製品ノクセラーTT) 0.7 〃
チアゾール系加硫促進剤(同社製品ノクセラーM) 0.5 〃
以上の各成分を実施例1と同様に混練し、160℃、14分間プレス加硫を行った後、以下実施例1と同様の条件で粉砕、加圧加熱処理およびリファイナーロールによる練りが行われた。再生ゴムシートの刺激臭は少なく、ODR(180℃)最低トルク値は15Kgf・cmであった。
【0026】
比較例1
実施例1の粗粉砕架橋水素化NBR100重量部にトルクレジルホスフェート可塑剤40重量部を加え、実施例1と同様な可塑化処理を行った。得られた再生ゴムシートの表面には凹凸があり、また再生ゴムには大きな刺激臭がみられた。なお、ODR(180℃)最低トルク値の測定は不可能であった。
【0027】
比較例2
比較例1において、更に混合ジアリルジスルフィドしゃく解剤(精工化学製品MR-906)が添加して用いられたが、全く同様な結果しか得られなかった。
【0028】
比較例3
比較例1において、トリクレジルホスフェートの代りに同量の蒸留水が用いられた。得られた再生ゴムシート表面の凹凸は大で、ただし再生ゴムの刺激臭は少なかった。なお、ODR(180℃)最低トルク値の測定は不可能であった。
【0029】
比較例4
実施例1において、過酸化水素水を加えての加熱処理が行われなかった。得られた再生ゴムシート表面の凹凸は大で、ただし再生ゴムの刺激臭は少なかった。なお、ODR(180℃)最低トルク値の測定は不可能であった。
Claims (2)
- 架橋した水素化NBRに過酸化水素を加え、加圧加熱処理して可塑化することを特徴とする架橋水素化NBR再生ゴムの製造法。
- 加圧加熱処理して可塑化した後機械的せん断力を加える請求項1記載の架橋水素化NBR再生ゴムの製造法。
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