JP3870026B2 - 金属用の液溜を備えた溶融塩電解セル - Google Patents

金属用の液溜を備えた溶融塩電解セル Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、溶融金属を溶融塩から製造する際に使用される電解還元セル、ここで溶融金属の密度はその電解質の密度よりも低いものであり、及びそのセルの運転方法に関する。さらに詳しくは、セルにより製造された溶融金属を集めるための液溜を備えた上記のタイプの還元セルに関する。
【0002】
マグネシウム、そしてもっと少ないリチウム金属に至るまで、電解還元セルを用いて、加熱した溶融電解質中に含まれるそれらの塩化物を電解することにより、商業スケールで通常製造されている。電解が進むにつれて金属は溶融状態となり(金属の融点は溶融電解質の温度よりも低いからである。)、そして電解質の密度よりも低いので、溶融金属は電解質の上面に浮遊し、そこで集合して定期的に除去される。
【0003】
ほとんどの電解セルは、電解部と分離された金属回収部とを備えている。金属回収部は、金属の分離が効率的に進むようにセルの比較的静かな部分にある。多くの場合、電解部と金属回収部との間に遮断壁又は隔壁が設けられている。遮断壁又は隔壁は、電解質中の上面を浮遊している金属回収部中の分離された金属が電解の他の生成物である塩素ガスと接触しないようにする役割を果たす。電解処理に必要な十分な量の電解質が常に供給されるように、電解質は金属回収部から電解部へ戻るように再循環されている。上記目的のために使用される遮断壁又は隔壁には、電解質の再循環が可能なように金属層の液面より下の位置に溝又は開口が設けられている。電解質の再循環を容易にするため、上記のタイプの電解セルのいくつかは、金属回収部における液面(金属及び電解質の液面)を制御する液面制御装置を用いている。例えば、電解質に浸漬され不活性ガス供給部と繋がった、底面が開放された鐘又は"サブマリン"が使用され、ガスの圧力により鐘内の溜まった液体の量を調整し、それによりセル内の液面を変化させる。
【0004】
最近の電解セル、特に多極タイプのものは高い生産性を有しているが、同時に過剰な熱を発生させる。そこで、電解質の温度を一定の目標温度に維持するために、その熱を除去する必要がある。その目的のため、空気を、例えば、金属回収部の中に浸漬した、液体熱交換機として使用することがよく行われる。
【0005】
上記の多極セルの生産性は向上し、金属回収部の容量が定期的な金属除去操作(金属タッピング)の間、より多くの金属の貯留を可能にするように増加させる必要がある、あるいは、金属除去の周期を増加させる必要がある、のいずれかを選択せざるを得ない点にまで達している。しかし、いずれの解決策もまだ十分ではない。より大きな金属回収部はセルのサイズが大きくなることを意味し、金属製造設備を大きくさせる。また、頻繁に金属タッピングを行うと、セルの運転の効率が低下する。したがって、最も好ましいことである金属製造の効率の増加が、工場の設計と運転に関する問題をもたらしている。
【0006】
さらに、マグネシウムの製造に使用される最近の電解セルは、電流効率の最大にするため電解質の融点に非常に近い温度で使用されている。これは、また、セルの使用温度が製造品マグネシウムの凝固点に近いことを示している。従来のセルにおいて、マグネシウムが電解質の上面に集められた時、マグネシウムは半固体状態となるか、又は少なくともとても粘稠となり、タッピングするのは困難である。この問題に対する従来の解決策は、タッピングする前に、金属回収部の中のすべての金属パッドを加熱することである。もちろん、これにより電解質の温度は上昇し、セル運転の一部の電流効率は低下する。上記の熱交換器は、タッピングにおいて余分に熱を加える必要がある場合であっても、温度を比較的一定に維持するのに使用することができる。しかし、大容量のセルでは、タッピング操作の間及び後に温度を一定に維持しようとすると、それに必要な熱交換器の大きさが非常に大きく、かつ高価となり、さらにセルの大きさも熱交換器の大きさにあわせて大きくせざるを得ないという問題がある。
【0007】
オリーボ・シヴィロッティ(Olivo Sivilotti)による、PCT公開公報WO97/28295(発行日1997年8月7日)には、金属塩化物の電解方法及び装置が開示されている。この公報では、セル内に取り付けられ溶融電解質に浸漬している液溜に金属集合部から金属が循環され、そして金属は液溜から定期的に取り出される。適切に電解質が循環するように液溜はセルの概ね中心に配置されており、この配置はこのセル用に特別に決められた運転方法に関係している。耐火性物質との反応とそれによりもたらされる金属の汚染を防ぐため、溶融金属と耐火性のセル壁とが可能な限り接触しないように、中央に液体の溜まった液溜が設けられている。この構造の欠点は、特殊であること、複雑であること、そして、その結果高価になることである。既存のセルをこの構造のセルに適用するべく改良することは困難である。液溜が中央に配置されているとセルと液溜との間の熱の均一化が顕著に促進されるため、電流効率が低下する。
【0008】
したがって、金属製造用のセルにおいて金属の貯蔵量を増加させるという問題に対する、より簡単、かつより実用的は解決策が必要とされている。
【0009】
(発明の開示)
本発明の目的は、製造される金属の密度が電解質の密度よりも小さい金属製造であって、電解還元セルを用いた金属製造の効率及び容易さを向上させることである。
【0010】
また、本発明の別の目的は、電解質より密度が低い溶融金属を製造する方法及び電解装置を提供することにあり、特に大量の製造能力を有するセルに適し、より大きなサイズのセルに頼ることなく、通常の周期より頻繁に取り出すことなく、又は非常に大きく高価な熱交換器を使用することなく、溶融金属の増加量に対しても電解セル内で対処することが可能である。
【0011】
また、本発明の別の目的は、セルの効率を低下させることなく、電解還元セル中の溶融金属を、その温度が少なくとも一時的に溶融電解質の温度よりも高くなる状態に維持することを可能にすることにある。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、溶融金属の製造に使用される電解セルであって、溶融金属は電解セルでその溶融金属を製造するのに使用される溶融電解質の密度よりも低い密度を有し、溶融電解質に含まれる金属の塩を電解して電解質に含まれる金属を溶融状態の金属滴とするために使用される、少なくとも1つの電解部と、前記の電解部の内部に配置され電解に使用される複数の電極と、金属を電解質から分離せしめて、上面を有し溶融電解質の上面を浮遊する溶融金属層を形成する金属回収部と、その金属回収部の上部と連通し、溶融金属が溶融金属層からオーバーフローして溶融金属が集合する、液体が充填された液溜と、その液溜と連通し、既にその液溜に存在する液体を完全に取り除くことなく移動させて溶融金属層からの溶融金属と置換して液溜に溶融金属を蓄積する液体移送装置と、セルから溶融金属を定期的に取り出すタッピング装置と、から成る溶融金属製造用の電解セルであって、前記液溜は金属回収部と連通する少なくとも1個の開口部を有する容器の形をなし、該開口部は、通常のセル運転の少なくとも一部においては、少なくとも前記の開口部の一部が前記金属層の上面より下に位置し、通常のセル運転の少なくとも一部においては、前記の開口部の全体が金属回収部の中の電解質の上面より上に位置し、そして前記容器の前記開口部以外は、金属回収部と液溜との間を電解質又は金属が自由に流れるのを防ぐために閉じられている、溶融金属製造用の電解セルが提供される。溶融金属を回収部から液溜に“オーバーフロー”させることは、セルのこれらの部分に含まれる溶融金属の上面が異なる垂直液面を有することを必ずしも意味するものではない。実際には、これらの上面は連続しているかもしれない(すなわち、同じ垂直液面を有している。)。この場合には、金属移送装置の動作の影響によりセルの2つの部分における金属層の厚さに差が生じる結果、金属は必ずしも回収部から液溜に“オーバーフロー”しないであろう。
【0013】
本発明の別の態様によれば、電解セルの電解部において溶融電解質に含まれる金属の塩を電解して溶融金属と溶融電解質との混合物を調製し、その混合物をセルの金属回収部に移送して金属層と電解質層とに分離し、ここで溶融状態の金属は溶融電解質より小さい密度を有し、金属回収部から溶融電解質を電解部に再循環し、そして、セルから溶融金属を定期的に取り除く、金属の製造方法であって、金属回収部の上部と連通した液溜であって、溶融金属を溶融金属層からオーバーフローさせて溶融金属を集合させる液体充填用の液溜と、その液溜と連通する液体移送装置とを準備する工程を含み、その液体移送装置は、既に液溜に存在する液体を完全に取り除くことなく移動させて溶融金属層からの溶融金属と置換して液溜に溶融金属を蓄積する、金属の製造方法が提供される。
【0014】
液溜は、上面と側面と底面とを有し、上面又は側面に金属回収部と連通する少なくとも1個の開口部を有し、少なくとも開口部の一部が通常のセル運転の少なくとも一部において金属層の上面より下に位置し、開口部の全体が通常のセル運転の少なくとも一部において金属回収部の中の電解質の上面より上に位置し、側面と底面は、前記開口部以外、金属回収部と液溜の間を金属又は電解質が自由に流れるのを防ぐために閉じられていることが好ましい。
【0015】
少なくとも開口部の一部は、通常のセル運転のすべての期間において金属回収部の金属層の上面より下に位置することが好ましい。
【0016】
液溜の側壁には、複数の隣接する側壁(例えば矩形容器)又は連続した一枚の側壁(例えば円筒容器)を用いることができる。
【0017】
本発明の別の態様によれば、溶融金属の製造に使用する電解セルであって、溶融金属は電解セルにおいてその溶融金属を製造するのに使用される溶融電解質の密度よりも低い密度を有し、溶融電解質に含まれる前記の金属の塩を電解して電解質に含まれる金属を溶融状態の金属滴とするために使用される、少なくとも1つの電解部と、前記の電解部の内部に配置され電解に使用される複数の電極と、前記の金属を電解質から分離せしめ、上面を有し溶融電解質の上面を浮遊する溶融金属層を形成する金属回収部と、その金属回収部の中の電解質から分離された溶融金属のタッピングと一時的な保持とを行う液溜と、セルから溶融金属を定期的に取り出すタッピング装置と、から成り、液溜は金属回収部と連通する少なくとも1個の開口部を有する容器の形をなし、その開口部は、通常のセル運転中には少なくとも開口部の一部が前記の金属層の上面より下に位置し、通常のセル運転の少なくとも一部には、開口部の全体が金属回収部の中の電解質の上面より上に位置し、そして容器は、開口部以外が金属回収部と液溜との間を電解質又は金属が自由に流れるのを妨ぐために閉じられている、溶融金属用の電解セルが提供される。
【0018】
液溜を形成する容器は、上面と、側面と、底面とを有することが好ましい。少なくとも1個の開口部が容器の上面又は側面にあることが好ましい。完全に開口した上面を有し、それにより液溜と回収部との間の開口部を形成するようにしても良い。
【0019】
本発明の別の態様によれば、電解セルの電解部において溶融電解質に含まれる金属の塩を電解して溶融金属と溶融電解質との混合物を調製し、その混合物をセルの金属回収部に移送して金属層と電解質層とに分離し、ここで溶融状態の金属は溶融電解質より低い密度を有し、金属回収部から溶融電解質を電解部に再循環し、そして、セルから溶融金属を定期的に取り除く、金属の製造方法であって、金属回収部と連通する少なくとも1個の開口部を有する容器から成る溶融金属用の液溜をセルの中に設ける工程と、通常のセル運転中には金属回収部の中の前記金属層の上面が、少なくとも開口部の一部より上に位置するように維持する一方、通常のセル運転の少なくとも一部においては金属回収部の中の前記電解質の上面が、開口部の全体より下に位置するように維持する工程とを含み、電解質と金属は、開口部以外では、金属回収部と液溜との間を自由に流れることができない、金属の製造方法が提供される。
【0020】
前記の開口部の全体が、通常のセル運転の少なくとも80%の期間、電解質の上面より上に位置することが好ましい。さらに好ましくは、通常のセル運転の実質的にすべての期間において、前記の開口部の全体が電解質の上面より上に位置することである。
【0021】
通常のセル運転において、前記の開口部は、金属回収部の中の電解質と金属層の両方よりも部分的に上に位置することが好ましい。
【0022】
固体の側壁と底壁を有し上面が開口した容器の形をとるように液溜が完全に開口した上面を有し、側壁の少なくとも一部は、通常のセル運転中、金属回収部の金属層の上面より下に位置し、側壁全体は、通常のセル運転中、金属回収部の電解質の上面より上に位置することが最も好ましい。側壁の一部も通常のセル運転中、金属層より上に位置する。しかし、側壁は通常のセル運転中、金属の上面より下になるよう完全に浸漬されても良い。
【0023】
液溜の液体を置換する液体移送装置は、(たとえ一時的であっても)セルから液体を完全に取り除くことなく、液体を置換することが最も好ましい。しかし、一時的に液体を取り除くことが好ましい場合もある。例えば、セルのある場所から他の場所へセルの外側を通って送られる場合である。したがって、セルの内部の通路を通るか、又は一時的にセルの外側を通るかのいずれかの方法により、液溜からの液体の置換を行うことができる。前記の開口部の一部が金属回収部の金属の上面より下に位置している通常のセル運転の一部の期間においてのみ、液体移送装置を運転することが好ましい。、
【0024】
液体移送装置は、例えば、液溜の内部にあり外部のガス供給部と連結している鐘又はサブマリンを用いることができる。ここで、ガスの圧力は、液溜から鐘又はサブマリンの中へ液体を置換可能に調整される。液体移送装置は、特に好ましくは、液溜から液体をタッピング、それを金属回収部に戻す。これを行うため、通常ポンプを使用することができる。セル環境に適合するものであれば、どのような形状のポンプも使用できる。ガスリフトポンプ又は羽根駆動延伸チュープを使用することができる。液体が、真空又はガス圧力によりチャンバーから交互に吸引、そして排出され、チェックバルブにより流量が調整される、ポンプを使用することができる。また、その目的のため、遠心ポンプを使用することもできる。ポンプは、第2の貯蔵用液溜、又はサージ容量、又はそこから金属回収部へ戻る、類似の容器に液体を供給する。
液溜の液体は、好ましくは液溜の少なくとも半分以下である時、最も好ましくは液溜の底面又は底面近傍にある時に置換又は取り除くことができる。
【0025】
通常のセル運転とは、セルが作動している時間の大部分におけるセルの運転状況を指し、始動と停止の操作、そしてセルからの金属のタッピング又は電解質や金属塩を添加する時に起こる金属や電解質の液面の短時間の変動は含まない。
【0026】
タッピング装置は金属タッピング用のサイフォンが好ましく、液溜から金属を取出すのに使用することができる。遠心ポンプと、周期的な吸引と加圧により動作するポンプとを含むポンプ装置もセルから金属を取出すのに使用することができる。
【0027】
本発明に適用可能な金属は、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カルシウム、そしてそれらの混合物のいずれか一つが好ましい。最も好ましいのは、マグネシウムである。
【0028】
電解部と金属回収部とは、電解時のガス生成物が金属回収部に入るのを防ぐとともに、電解質が循環するのを可能とする開口部を有する、隔壁又は障壁手段により分離されていることが好ましい。
【0029】
溶融金属用の液溜の役割は、金属回収部の溶融電解質の上に浮遊層として単に保持されている量以上に、セルからの金属を一時的に貯蔵することにある。液溜は、セルと一体又はセルの内部要素であっても良く、又はセルと分離していても良い。セルから分離している場合、セルの外壁に取り付けられた絶縁性容器であっても良い。絶縁性容器には、耐火性容器又は上面に絶縁材料層を有するスチール容器を用いることができる。しかし、液溜がセルと一体又はセルの内部要素であることが好ましく、さらに液溜が金属回収部にすぐ隣接して又は金属回収部の内部に配置され、そして1枚又は複数の壁の距離だけ離間して(通常、液溜自身の1枚の壁又は複数の壁)配置されていることが好ましい。
液溜が“井戸”(すなわち、溶融金属が流れ込むことができる貯蔵領域であって、金属回収部よりもさらに深いところ)として働くように、液溜の底壁は、金属回収部の溶融電解質の通常の最上部の位置よりも垂直方向のかなり下の位置にあることが好ましい。これにより、セル全体の大きさを過度に大きくすることなく金属の貯蔵容量を増加させることができる。
貯蔵容量を最大にするには、液溜の底壁を金属回収部の底面の位置に配置するのが好ましく、実施形態によっては金属回収部の底面が液溜の底壁であっても良い。実際、金属回収部の端又は角を横切る適当な分離壁を設けることにより、既存のセルの金属回収部から金属溜を分離することができる。
液溜は、金属回収部の内部の箱であって、金属回収部とつながった通常の壁を持たないものであっても良い。これはセルが利用可能な電解質の体積を減少させる。しかし、運転に問題が生じたり、又は金属回収部と電解部との間の電解質の通常の循環に大きな影響を与えるほどのものではない。
液溜を、電解質の流れが比較的静止した場所である金属回収部の一部に配置することはすべてにおいて有利である。これは、電解部と連通する溝又は通路から離れた場所の場合に特にあてはまる。
液溜が、金属回収部の内部にあるか、又は隔壁により金属回収部と分離されている場合には、金属回収部の操作とは異なる操作が必要とされる。すなわち、金属回収部は電解質から溶融金属の小さな液滴を分離して上面に層を形成する目的で使用されるが、液溜は既に形成された層のいくつか又は全てを集め、取出す前に保存しておく目的で使用される。それ以外は、溶融金属溜を持たない従来のセルと同様の方法で、セルを使用することができる。
【0030】
上記のような液溜に金属を集めれば、金属が熱放射により速やかに冷却してしまうことはない。なぜなら、タッピングに先だって加えられる余分の熱は、より狭い領域に加えられるため、小さな熱交換器を使用すればセルに対する熱の影響を減らすことができるからである。
【0031】
液溜の材料には、セル環境に適合するものであればいかなる材料も使用できる。スチールを使用することができる。通常のセル運転の間、液溜は通常の静水ヘッドの出入り(液溜の内部及び外部における金属の電解質に対する相対的な液面の変化のみによって起きる全てのヘッド差)に従って動き、高温での起こり得る崩壊を防ぐための補強及び特別の設計を行うことなく、液溜の寸法形状の最適化を行うことができるからである。スチールは、取り外し可能な液溜を作製することができるので、修理又は交換のため液溜を定期的にセルから取り外すことができる、という利点も有している。
【0032】
この目的のために金属回収部の一部と離間するように分離する分離壁を用いて金属回収部の直近に隣接して金属液溜を配置した時、液溜と金属回収部とを分離する通常の壁が、液溜の外部の垂直壁の小さい部分(約半分以下)以上を形成することが好ましい。この部分は、液溜の金属が定期的なタッピングに先立って速やかに加熱される時に、金属回収部に過剰な熱を移動させるための最小限の領域を提供する。
【0033】
液溜と金属回収部との間に、絶縁性の壁を設けることがさらに好ましい。例えば、溶融鋳造アルミナ、アルミノシリケート、又は壁が溶融金属や溶融電解質に抵抗性があり、さらに熱の移動を抑制するものであればいかなる材料でも使用することができる。セルのデザインと運転温度にもよるが、この目的のためには通常、断熱係数が1〜10W/m℃の範囲にあることが好ましい。温度制御のための熱交換器の使用を極力抑制する必要がある場合には、この範囲が有利である。耐火性の壁を、上記のように分離用の壁として、又はスチール容器の内側又は外側のライニングとして使用することもできる。
【0034】
もちろん、液溜の金属による金属回収部の電解質の加熱は、液溜を金属回収部から物理的に分離することにより完全に防ぐことができる。しかし、これは通常好ましいことではない。液溜を金属回収部に隣接して配置することにより、金属回収部からの熱は連続壁(たとえ、これが断熱性耐火物でできていたとしても)を除々に貫通し、さらに加熱しなくても、液溜の金属の温度をその融点付近にまで押し上げてしまう。しかし、連続壁の断熱性及び/又は連続壁をできるだけ熱に曝さない様にすることにより、タッピングに先立って必要である時々及び短時間の金属の温度上昇から電解質を保護することができる。
【0035】
運転中、電解部で製造された金属は金属回収部へ運ばれ、そこで分離して、電解質の上面に金属層又は"パッド"を形成する。液溜と金属回収部との間の開口部が金属の液面よりも下に位置している状態で運転している場合、金属も液溜の中に流れ込む。運転中、液溜はタッピングのサイクルに応じて異なった比率を有する金属と電解質により満たされている。通常、電解質である液体は、液溜の底面の部分から取出される。この電解質は液溜内に配置されたサブマリン又は鐘のいずれかに移送されるか、又は金属回収部に吸い上げられる。これにより、液溜により多くの金属が流れ込むので、金属回収部よりも液溜において金属層の深さが増大する。液溜がタッピングに適した量の金属を含む時に、金属を電解質の温度より好ましくは20〜50℃高く加熱し、金属を液溜からサイフォンにより取出す。金属がサイフォンにより取出されるにつれて、サブマリン又は鐘のいずれかから、又は金属回収部からのオーバフローにより、又は両者の組合せにより、液体は液溜に戻る。この液体は、金属又は電解質、又は両者の組合せからなる。一旦タッピングが終了すると、手順は繰り返される。
【0036】
サブマリン又は鐘を使用した時、液溜の電解質は金属回収部の電解質と、いかなる量も又は全く接触又は混合しないようにすることができる。これは、液溜の電解質の組成はセルの他の部分の電解質の組成と異なることがあることを意味する。これは、経時変化により起こり得る場合もあり(例えば、塩化マグネシウムの液面の変化により)、又は故意になされる場合もある(例えば、異なる融点とする)。
【0037】
液溜において金属回収部と自由に連通する唯一の部分が、液溜の上面又は側面に設けられ、上述の金属と電解質の上面に関して特別の位置に配置された開口部であるように液溜は設計されている。側面又は底面にある開口部であって、液溜と金属回収部との間の自由移動を可能にし、かつこれらの要求を満たさないあらゆる開口部は、装置が要求通りに金属を回収することを阻害するので、そのような開口部を設けることは避けるべきである。例えば、側面又は底面にある開口部であって、常に電解質の上面より下に位置し、金属回収部と液溜との間の自由移動を可能にする開口部は、液溜の本来の動作を阻害する。しかし、一方向のみしか液体を移動させず(例えば、チェックバルブを使用して)、そのため金属と電解質が液溜と金属回収部との間を自由に移動できないような特定の開口部は、装置の運転に影響を与えないように使用できるだけでなく、液溜から金属回収部に電解質を移動させるのに使用される特定の型のポンプにおいては好適に使用できる。
【0038】
操作の特定のモードにおいて、金属回収部における液面を、液溜に対する1個の開口部又は複数の開口部が金属回収チャンバー中の金属より上に位置するように十分に低くすることが可能である。金属が製造されるにつれて、液面は上昇し、ついには金属は液溜に流れ込み、そして液溜からの金属のタッピングが開始可能となる位置にまで達する。もし、金属回収部と液体が連通していない場合、液溜から液体をタッピングするための手段を運転することは好ましいことではない。なぜなら、それにより生じる液面の不均衡が液溜の壁の歪等を含む運転上の問題点を発生させる可能性があるからである。操作の単純化及び操作の全体的な管理性の向上のためには、1個又は複数の開口部の一部を金属回収部の中の金属の上面より常に下に浸漬した状態でセルを運転することが好ましい。これは、金属回収部の中で液面制御手段を作動させることにより非常に容易に行うことができる。この液面制御手段には、鐘、又はサブマリン(液体を一時的に貯蔵するために液溜において使用されるものと類似のもの)を使用することができる。
【0039】
このタイプのセルを立ち上げる間、液溜には通常、電解質を充填する。充填は、液溜に直接電解質を加え、停止状態でセルを電解質で満たしていくか、又は液溜に電解質がオーバーフローしていくように金属回収部の電解質の液面を上げていくことにより行うことができる。もし、液溜の中にサブマリン又は鐘がある場合、サブマリン又は鐘に加圧したガスを満たすことにより充填を行う。
【0040】
本発明の効果は、タッピング操作の間に溶融金属を貯蔵するための電解セルの容量を、セルのフロアスペースを実質的に増加させることなく、かつ通常運転におけるセルの電流効率を低下させることなく、増大させることにある。
【0041】
(実施の形態)
本発明の装置は、好ましい実施形態においては、従来のマグネシウム用還元セル、すなわち、電解部からの電解質混合物中の金属滴が上面に浮遊し合体して溶融金属から成る浮遊層を形成する金属集合部から構成された金属回収部、を備えたセルを改良した形をとることができる。改良には、金属集合部に連結された金属用液溜を設けること、そして、液溜及び/又は金属集合部の中に、溶融金属を液溜に取り込み、溶融金属を加熱し(必要に応じて)、そして溶融金属を定期的に取出すことを行う装置を配置することが含まれる。
【0042】
従来のセルの構造を改良した例を図1と図2に示す。図1は、内側を耐火材料12でライニングしたスチール製の容器11である多極型の電解セル10の垂直断面図である。セルは耐火壁13により2つの部分、すなわち、電解部14と金属回収部15とに分けられている。耐火壁は上方と下方に開口部16,17を有し、これにより電解部14と金属回収部15との間の電解質の移動を可能にしている。電解部14の中には1以上の電極群18があり、それぞれの群は1個のアノード19と1個のカソード20と、そして1以上のバイポーラ電極21から成っている。電極接合部22,23はアノードとカソードとにそれぞれ取り付けられている。
【0043】
従来のこの種類のセルと異なり、セルは溶融金属用液溜25を備えている。液溜25は、金属回収部15から分離され、少なくとも一部の上面が開放した矩形のスペース(“井戸”で表現される。)を有し、側壁26と底壁27とを有するスチール製の箱型の構造をしている。箱は、断熱性の耐火材料から構成されても、又は断熱性の耐火材料でライニングあるいは上面被覆されたスチール板から構成されても良い。液溜は矩形セル10の一端を占めるが、セルからは分離されている(通常、壁はない。)。この実施形態では、液溜25の底壁27は金属回収部15の底壁28よりかなり上に位置し、支柱30がその安定を確保している。側壁26の一部31は、側壁の残りの部分よりも低い。通常、これは金属回収部に面した部分である。液溜から金属を取出すための取出し口32がセルの上面33に設けられている。
【0044】
運転中のほとんどの段階において液面を概ね一定に保つ、液面制御装置(図示せず)を金属回収部15に、設けることもできる。このタイプの電解セル(液溜を有しないもの)についてのより詳しい内容は、例えば、1996年10月24日に発行されたPCT公開公報WO96/33297に記載されている。
【0045】
図2は多極電解セル40の第2のタイプの垂直断面図である。この実施形態のセルもまた、耐火性のライニングを有する金属性の容器であり、セルの上方が耐火壁43により電解部44と金属回収部45とに分離されている。液面制御装置46は金属回収部45の中に配置され底面に開口部48を備えた中空チャンバー47から成り、開口部48は金属回収部45の液体電解質49と連通し、外部の不活性ガス源(図示せず)とパイプ手段を介して接続されている。チャンバーは密閉ジャケット50により周囲を囲まれ、外部の送風機(図示せず)からの空気は密閉ジャケット50を通過する。この空気はパイプ51から供給され、図示しない第2のパイプを通って排気される。
【0046】
セルは溶融金属用液溜60を設けるために改良され、液溜60は、セルのフロア62からセルの上面64の近くの上縁部63にまで伸びる固体の耐火壁61により金属回収部45から分離されている。液溜は上面が完全に開放された井戸の形をしており、壁61とセルの耐火壁42の一部がそれぞれ側壁の一部を構成し、そしてセルフロア62の一部が底壁を構成している。液溜60からのタッピングが可能なように、取出し口65がセル63の上面に設けられている。このタイプの多極セルの他の特徴(液溜60を除く。)については、1985年5月21日発行のシビィロッティ(Sivilotti)の米国特許第4,518,475号公報に記載されている。
【0047】
図1と図2のセルは同様の方法で動作し、金属マグネシウムを製造することができる。電極間に含まれる電解質を介して電極群に電流が流れる。金属マグネシウムはカソード電極又はバイポーラ電極のカソード側の上面に生成し、塩素ガスはアノード電極又はバイポーラ電極のアノード側の上面に生成する。マグネシウム滴を含む電解質は、電極間の隙間の中を塩素ガスの力により電極群の最上部まで上昇する。そこで、電解質はオーバーフローし、障壁の下又は障壁の上部の穴を通って金属回収部に達する。これにより、塩素ガスは電解質から分離して電解部の上部に留まり、そこから回収される。一方、金属滴は壁を超えて金属回収部に達し、電解質の上面に浮遊し金属層70を形成する。電解質は、セルの分離壁の下部の開口部(図1)又は吊下げ式の分離壁の下縁部の下(図2)を通って金属回収部から電解部へと戻される。
【0048】
図2の実施形態では、電解質の流量を最適レベルに維持するために、液面制御装置46が設けられている。装置内の不活性ガスの圧力を、電解質の中空チャンバー47への導入又は中空チャンバー47からの排出が可能なように調整することにより、通常のセル運転の間所望の設定レベルに液面を維持し、そして塩の減少分を補充し金属の生産量を確保することを可能とする。図1の実施形態にもこの液面制御装置は使用することができ、又はカソード電極集合体20と液面制御装置とを組み合わせて使用することもできる。その装置については、PCT出願WO96/33297(シビィロッティら)に記載されている。
【0049】
本発明のすべての実施形態において、通常のセル運転の少なくともいくつかの区間では、液溜の側壁の上縁部の最下部(図1の31、図2の63)が金属回収部の中の金属の上面71よりも下に位置するようにセルは運転される。タッピング及び供給のサイクルの間のセルの運転中に液面は変動する。そして、側壁の上縁部の最下部を金属の上面より常に下に位置させて、製造された金属が縁部をオーバーフローして液溜に流れ込むように液面を維持するように液溜を操作する。しかし、側壁の上縁部の最下部を、通常のセル運転の実質的にすべての期間において金属の上面71よりも下に位置させることが特に好ましい。これは、図2の記載されたタイプの液面制御装置46を用いることにより容易に行うことができる。
【0050】
本発明のすべての実施形態において、側壁の上縁部の最下部が、通常のセル運転の一部の期間、好ましくは通常のセル運転のほとんどの期間(例えば、80%、又はより好ましくはすべてのセル運転の期間)、金属と電解質との間の界面72よりも上に位置するように、セルを運転する。上縁部が界面72よりも上に位置している時のみにおいて、液溜は効率的に動作し金属を集めることができるので、セルを運転中のほとんどの時間において、この状態を保つべきである。
【0051】
図1と図2は、異なる種類のセルに溶融金属用の液溜(図1の25、図2の60)を設けた例を示している。しかし、本発明の目的とする装置にするために、付属装置が取り付けられている。この付属装置の詳細は、図3から図6を参照して、以下に説明する。しかし、この付属装置は、図1及び図2のセルだけでなく、金属回収部と金属用液溜を備えたあらゆる種類のセルに適用可能であることに留意されたい。
【0052】
図3と図4は、図1と図2に示したタイプの液溜80と金属回収部81の一部とを示している。セルが通常運転されている場合、金属回収部の中の液体(電解質と、電解質の上面に存在し種々の量をとる溶融金属とから成る)は、通常の運転レベル(液体の上面の液面)82にあり、側壁84の上縁部83の最下部より上に位置するように維持されている。液溜80には、底面のみが開放されそれ以外は密閉された、逆さにされた容器86から成る液体貯蔵用の鐘(又はサブマリン)85が配置され、それには(不活性)ガスの外部ソース(図示せず)と接続されたガス供給パイプ87が取り付けられ、そして加圧又は吸引により動作する。ガス供給パイプ87を介して吸引されると、液体(通常は電解質)は液溜から引き出されて容器86の内部に移動し、金属回収部からの金属は液体が液溜から吸い出されるのにつれて液溜に流れ込む。
【0053】
セルの上面90の開口部89を介して液溜の領域88(図4参照)に接触している、サイフォン(図示せず)を用いて液溜から定期的に金属がタッピングされる。タッピングの間、圧力がガス供給パイプ87に加えられ、容器86の中の液体は一時的に液溜に移動して取出された金属が占めていた空間を満たし、次いで、より多くの金属を受け入れるために液溜内の金属−電解質界面を上昇させる。液体貯蔵用の鐘は図3と図4では液溜の内部に配置されているが、必要に応じて、液溜の下部と容器(パイプにシールされた)の下部とを閉じたパイプで連結することにより、液溜の外側に配置することができる。
【0054】
浸漬タイプの熱交換器を液溜に設けることも、そして液溜内に永久的に固定することもでき、又は必要に応じて、タッピングの間だけ一時的に挿入することもできる。この目的のために使用可能な浸漬型の熱交換器は、例えば、その特許に記載の通り冷却だけでなく加熱にも使用可能であるが、米国特許第4,420,381号(シヴィロッティら)に、そして、日本の公開公報JP02-129391(前原ら)にも記載されている。又は、他のタイプのヒータ(例えば、液溜の液体の中に浸漬又は液溜に隣接する耐火壁96に埋め込んだ電気抵抗式ヒータ、あるいは液溜の底面にある電解質に浸漬されたAC電極)を用いることができる。
【0055】
特に図示してはいないが、セルからの出口となるすべての装置(例えば、熱交換器の接合部、そしてサブマリンへのガス供給部)は、それらが通るセルの上面90でシールされている。タッピング用サイフォンを挿入するためにセルの上面に設けられた開口部には、着脱可能なカバーが取り付けられている。このように、セルの上面は運転中のほとんどの間密閉され、金属回収部と液溜の中のマグネシウムの酸化を防ぐため不活性ガスのフラッシュが行われる。
【0056】
図5から図9は、本発明のセルの金属回収部内取り付けられた液溜100のみを示している。図5では、液溜100の側壁101は金属の上面102より完全に下に位置している。図6から図9では、側壁101の一部103のみが金属の上面102よりも下に位置している。図には示していないが、金属回収部に液面制御装置や熱交換器を取り付けることもでき、さらに、液溜には固定型又は浸漬型の熱交換器(すなわち、図2,3そして4に示したように)を取り付けることもできる。液溜からは前の実施形態で示したようにタッピングを行うことができる。
【0057】
図5は、液体を液溜から金属回収部に移送するガスリフトポンプ110を示している。ポンプは、セル(図示せず)の屋根にシールされた、内部にあるガス供給管111と、同心状の液体保持管112とから成る。不活性ガスのソース(図示せず)はセルの外側にある管の末端113に接続されている。ガスはガス供給管に供給され、その管と同心状の液体保持管との間の環状の空間を上昇する。これにより、その環の内部の液体は、上方に移動して出口パイプ114に流れ込み、そしてパイプの端部で溢れ出た後に、滴下して金属回収部の中に戻る。115で逃げたガスは、セルから発生する他のガスと一緒にされて金属回収部から排気される。出口パイプ114は、金属回収部の中の液体の上面より下の位置にその端部が達するように延ばすことができる(点線116で示したように)。その場合、ガスが逃げられるように開口部を設けることが必要である。その改良により、液体は上面より下の位置で放出されるので乱流や液体のはねを減少させることができる。ガスリフトポンプは連続的に、あるいは間欠的に運転することができるが、間欠的に運転するのが好ましい。ポンプは、液溜中の液体(電解質)を金属回収チャンバーに移送し、そして増加する液体金属を液溜に充填できるように、この液体を金属で置換する。サブマリンや鐘では、タッピングの間、操作を逆にしてタッピングした金属の分を補充するために液溜に液体を戻すのに対し、このタイプのポンプは操作を逆転させず、液溜に液体(通常は金属)を戻すのに、液溜100の浸漬した壁101の上を超えて液体を戻すようにしている。何故なら、金属回収部の液面102は常にその壁101よりも高い位置にあるからである。もし金属のタッピング量が多過ぎた場合、電解質が液溜の中に移動するが、これは次のサイクルで吸い上げられるので、運転上の問題を生じることはない。
【0058】
図6は液溜から液体を移送するのに使用される通風管式液体循環装置120を示している。装置は、底面が開放され、金属回収部へ放出するためのオーバーフロー用出口122を備えた通風管121から成る。シャフト124に取り付けられた羽根123は通風管の中に配置されている。シャフトはセル(図示せず)の上面を貫通し、そこで回転シール(図示せず)によりシールされている。羽根はセル(図示せず)の外部のモータ、入手可能であればいかなる物でも良く(例えば、電動モータ又は空気モータ)、により回転する。羽根123は、通風管121の中を液体が上方に移動し、出口122でオーバーフローするように配置されている。以下の点以外は、図5の実施形態の場合と同様に操作することができる。すなわち、液体が液溜から吸い上げられて金属回収部に流れ込む時、液体を液溜100に戻すための通路が壁101の浸漬部103に限定されている点である。
【0059】
図7は本発明に使用可能な別のタイプのポンプを示している。このポンプには、入口パイプ130、出口パイプ131、そして保持用パイプ131が設けられている。保持パイプ(又は保持パイプに接続された直径の小さいパイプ)は炉(図示せず)の上面を貫通しそこでシールされている。出口パイプは金属回収部の中に放出する。入口パイプと出口パイプには、液体が図示した方向のみに流れるように設定された一方向バルブ133、134が取り付けられている。不活性ガスのソースは保持パイプ132の端部135に接続される。加圧と吸引とを交互に繰り返すことにより、バルブ134がその上の液体の重さにより閉じられている間、液体はまずバルブ133を通って上方に引き上げられ(サイクルの吸引時)保持パイプ132の中に入る。サイクルの加圧時では、バルブ133が液体の重さにより閉じられている間は、液体はバルブ134を通過させられた後、金属回収部の中に放出される。それ以外については、このポンプは図5と図6のポンプと同様に動作する。
【0060】
他のポンプも使用することができる。例えば、液溜に浸漬された入口と金属回収部に放出する出口とを有する遠心ポンプを使用することもできる。そのポンプはセル(図示せず)の上面を貫通して伸びるシャフトにより駆動され、セルの上面で回転シール(図示せず)によりシールされ、外部モータ(図示せず)により駆動される。
【0061】
図8は、側壁101の一方に設けられた開口部を有する液溜100を示している。図示のように開口部は金属の上面102の上面より下に位置し完全に浸漬している。しかし、必要に応じて、一部のみを浸漬するように変更することも可能である。液溜の上面141は、熱交換器、ポンプそしてサイフォン等の装置が貫通している部分以外をすべてカバーすることもでき、又は開口部を設けることもできる。液溜と金属回収部との間の"ガス"の連絡部分として、少なくとも1個の開口部を設けることが好ましい。しかし、その開口部として、いろいろな装置が液溜の上面を貫通する際の空隙を用いることもできる。ガスリフトポンプ142(図5に詳しく示されている)も示されており、タッピング用サイフォン143の端部も金属の液面102より下に浸漬されている。このサイフォンに取り付けられているタッピング用ルツボは図示されていないが、通常の形のものを使用することができる。タッピング操作以外の通常の操作においては、金属回収部の中の電解質の液面144は、液溜と金属回収部との間を連通するすべての開口部よりも下に位置している。図8に示された操作においては、金属パッドの上面102は液面制御手段(この図には記載されていない。しかし、例えば、図2には記載されている。)を用いて一定の設定レベルに維持されている。
タッピング前の通常の操作において、金属が製造され金属回収部で分離されるにつれて(上記のように)、上面102は一定に、又は設定値付近のわずかの巾の範囲内に維持される。そして、電解質の液面144は、ポンプ142が液溜から液体を吸い上げて金属回収部に戻すまで低下する。このようにして、液溜100に金属を流れ込ませ、そして液溜の金属−電解質界面145を低下させて界面位置144を上昇させる。セルの金属をタッピングする時、サイフォンは液溜内の金属層から金属を吸い上げ、そして金属の液面102が一定に維持されると電解質の液面144はさらに上昇する。しかし、界面145は、もしタッピングの操作中にポンプ142を運転しなかった場合には一定のレベルに保たれ、又は、もしポンプを連続して運転していた場合にはさらに低下する。もし、大量の金属がサイフォンにより吸い出された場合、電解質の液面はレベル146(ちょうど、又は側面の開口部140の最下部147より少し上)にまで上昇し、その時点で電解質148は開口部140の低部147を超えて液溜に流れ込み界面145より下の空間のいくらかを占有する。この電解質は、タッピングの後に金属がまた増加すると、結局ポンプにより金属回収部に戻される。しかし、ポンプ140に過度に依存するのを防ぐために、この時間はできるだけ短い方が好ましい。この図から明らかなように、もし電解質がレベル146丁度、あるいはそれ以上の位置に長い時間あると、液溜の金属の液面が金属回収部のそれと同じになり(もしポンプ140が、少なくとも液溜への電解質の流量に打ち勝つだけの十分に高い運転能力を有しない限り)、その結果、この期間に金属をさらに貯蔵することが困難となり、セルを好ましい条件で運転することはできない。通常のセル運転の少なくとも一部において、すべての連通する開口部が金属回収部の電解質の液面より上に位置することの重要性は明らかであり、そうでなければ、液溜の有用性は喪失する。連通する開口部は、通常のセル運転のほとんどの部分(80%以上)、より好ましくは実質的に通常操作のすべてにおいて、金属回収部の電解質の液面より常に上に位置することが好ましい。
【0062】
図9は、本発明に使用できるさらに別のタイプのポンプを示している。この場合、ポンプの入口パイプ150は液溜100の壁151を貫通している。ポンプ152は、例えば、図5に示したようなガスリフトポンプであるが、このガス中のガスと液体は金属回収部153の中の液体に放出される。その後、ガスは上面に上昇する。チェックバルブ154は、もしポンプが止まった場合、液体が液溜に戻るのを防ぐために設けられている。このチェックバルブは、電解質が液溜と金属回収部との間を自由に流れるのを防ぐ。図に示したガスリフトポンプ以外に、本発明で使用する他のポンプも使用することができる。ポンプの入口150は、図のように側壁151の中に配置しても良く、又は、もし液溜用の容器がそれにふさわしい形であれば(例えば、図1に示したように)、液溜の底面に配置することもできる。
【0063】
図10は、本発明に使用可能なガスリフトポンプの変形例を示している。この場合、出口パイプ161が液溜100と金属回収部162の中の液体の中に完全に浸漬されている以外は、図5のように取り付けることができる。ポンプに吸い上げられた液体はパイプ163により金属回収部の中に放出される。そして、ポンプを作動させるのに使用されるガスは、液体の上面を抜けて伸びるパイプ164を通って逃げ、必要に応じてセルの外部に放出される。ポンプの入口のチェックバルブ165も、ポンプが止まった時、液体が逆流するのを防ぐために設けられている。チェックバルブはまた放出パイプ163にも設けることができる。前述のポンプをガスリフトポンプの代わりに使用することもできる。
【0064】
図11はガスリフトポンプの別の変形例を示している。出口パイプ171がタンク172に放出するところにガスリフトポンプ170が設けられている。このタンクは、セルの内部又は外部に設けられ、例えば、セルに使用するためにさらに導入した電解質を混合するのに用いるタンクとしても使用することができる。タンクには、計量供給ポンプ又は金属回収部に液体を戻す速度を制御するバルブ174を備えた出口173が設けられている。セルの外側で使用する場合、ポンプとタンクは液体が固化するのを防ぐために適当なヒータを備える必要がある。ポンプの出口175は、電解質だけがタンク172の中に吸い出されるように液溜100の液面の位置に配置される必要がある。タンク172がセルの外側に配置されているか否かに関わらず、操作中に電解質をセルから完全にタッピングてはいけない。
【0065】
図12a、図12bそして図12cは、前の図で示した液溜の側面の一部を示している。一般に、これは金属回収部に対向する側面である。すべての図に、金属回収部の金属の上面の好ましい位置180が示されている(点線)。図12aでは、液溜の開口部(上面の開口部も含む)は矩形の切抜き部181を有し、そこでは開口部は金属の上面より下に位置している。図12bでは、同じ目的で連続した斜めの切抜き部182が設けられている。図12cでは、一連の穴183が、少なくとも穴の一部が金属の上面より下に位置するように、側面に設けられている。図12cの実施形態には、上面が開放された容器、又は、例えば、図8に示したような上面が閉じた容器を用いることができる。これらの図は、本発明に使用可能な開口部のいくつかの実例である。しかし、浸漬に要求される基準を満たす開口部の形状を用いる必要があり、特定のセル構造に使用される他の部材の配置に応じて選択する必要がある。
【0066】
図13は、金属の上面の位置が制御されていない場合に使用される開口部のデザインを示している。液溜190の一方の側面には、ハンガー192から吊下げられたスライド壁部191が取り付けられ、ハンガー192はセルの上面(図示せず)を貫通して伸び、そこで適当な機械手段(例えば、スクリュージャック)により昇降可能に保持されている。スライド壁部191は垂直方向に移動自在で、金属回収部の中の金属の上面193の位置の測定に対応して昇降する。位置は、位置決めセンサ(例えば、レーザ位置決めセンサ、容量センサ、フロート、又は類似の手段)により測定される。スライド壁部は適当なタイプの(図12a〜図12cに示したような)1個又は複数の開口部を含み、壁部の垂直運動により、壁部の少なくとも一部とその中の開口部が、セルの通常運転のほとんどにおいて金属の上面より下に位置する。
【0067】
図14は、“外部”の液溜201が取り付けられた金属部200の一部を示す斜視図である。金属回収部は耐火物でライニングされたスチール壁202の内部にあり、液溜自身は耐火物でライニングされた3つのスチール壁203で形成され、金属回収部の外側が閉鎖壁204を形成している。閉鎖壁となるスチールの外側の部分は金属回収部から取り除くこともできる。液溜は床を有しており、必要に応じて、金属回収部の床と異なる高さに床を設けても良い。閉鎖壁を貫通し、液溜と金属回収部とを連通する通路205を有する。運転時には、金属回収部の金属の液面は波線206で示される位置に維持され、通路205の底部207は金属の上面より下に位置する。金属回収部の電解質の液面208は、通常、通路の底部207よりも下に位置する。金属回収部と液溜は、通常、ガス不透過の耐火物でライニングされたカバーにより被覆されており、そのカバーを前述の金属の液面制御手段、ヒータそしてタッピング装置等が貫通する。前述の、内部サブマリン又はポンプのいずれかを、液体を液溜からタッピング、そして液溜又は金属回収部に戻す目的で液溜とともに使用することができる。
【0068】
図15は、好ましい液溜の設計例であり、セルから分離した状態を示している。この設計例では、液溜220は上面が開放された箱であり、固体の側壁221、222、223そして224と、固体の底壁(見えない)と、完全に開放された上面225とを有している。側壁222は、他の側壁の上縁部227、228そして229よりも低い上縁部226を有している。上縁部226よりも上の開放部230は開口部を形成しており、溶融金属はそこを通って隣接する金属回収部(図示せず)から液溜に入る。溶融金属の液面は線231で示され、溶融電解質の液面は線232で示される。図から明らかなように、上縁部226は、溶融金属の液面231よりも下に位置するが、溶融金属のみが液溜に入れるように溶融電解質よりもに位置している。
【0069】
図16は、金属用液溜の別の実施形態を示しており、液溜は金属の液面制御装置を組み合わされているので、1個の装置が両方の機能を有し、図2の60と46のような分離した液溜と液面制御装置を考える必要がない。これは、セルの金属回収部の内部の空間的制約の問題を緩和する。この金属用液溜300は、セルの外部と連通するガスパイプを頂部に有する密閉されたスチール容器314から成る。液溜の底面近傍から、概ねセルの金属回収部の中の金属パッド302の内部にまで伸びる直立管301を有している。外部のガスパイプ303は、液溜の上部に設けられたガス空間306へのアルゴン等の不活性ガスの吸気と排気を制御する圧力制御装置304に接続されている。回収部の金属パッドの液面を設定値の近傍で一定に維持可能に、圧力制御装置を作動させて吸気又はガス空間306から排気せしめるため、圧力制御装置に信号をフィードバックする液面センサも設けられている。液面センサは、マグネシウム用セルの環境に適合するものであれば、タンクやそれに類似する装置の液面測定に使用可能なあらゆる装置を使用できる。容量型、レーザ装置が知られており、又はセルの中の液面より下の所定の位置で測定される静水圧を、この目的のために使用できる。
【0070】
セルの運転時に、金属は連続して製造され、塩化マグネシウムはセルに連続的に又は間欠的に供給される。そして、金属回収部の金属の液面を一定に維持するため、ガスが導入され又はガス空間306から排気され、ガスが排気されている間、ガスを置換しながら、金属は移動し液溜の307に集まる。金属が製造され液溜に移動している間は、ガスが液溜から大体連続的に排気されるように制御されている場合、塩化マグネシウムを連続的に供給することが好ましい。時々、幾分かの電解質が、金属に付随して、あるいは一時的なプロセスの動揺により液溜に入ることがある。これは液溜の底面の溜まり308の中に集まる。
【0071】
液溜の他の実施形態の場合と同様に、タッピングに先立って金属を加熱するためにヒータを設けることは有用である。高温ガスを用いる熱交換器、又はAC抵抗ヒータを使用することができる。図16の実施形態では、ガスパイプ303の中のシール311を介して導入された電力ケーブル310により給電されたAC抵抗ヒータを用いることができ、そのヒータはスチール性の外側ジャケット312の内部に設けられている。絶縁物313を液溜の外側及び内側ジャケットの間に設けることもできる。
【0072】
金属は、常法に従い金属パッド302からのタッピングによりセルから取出される。これにより、金属の液面は低下し始め、その時、ガスは圧力制御装置304によりガス空間306に吸引される。そして、金属307の少なくとも一部が金属パッド302に放出されて戻り、タッピング量の一部となる。直立管301は液溜の底面近くまで伸びているので、もし大量の電解質が液溜の中に取り込まれた場合(底面の層308の中に)、この層の少なくとも一部は放出されて戻り直立管の中を上昇し、タッピング操作の間、セル内の電解質の本体部分に戻る。タッピング用のサイフォンは、その先端を金属パッド302の中に入れた状態で配置されるか、又はその先端が直立管301の途中まで伸びるように配置することができる。後者の場合、セルの外部で金属と電解質とを分離するには、液溜の中に取り込まれた電解質を時々取り除くことが必要となる。
【0073】
図17は、絶縁性の底壁401と、側壁402と絶縁性の上面カバーとを備えた金属回収部400の一部を示している。回収された金属は電解質層405の上面に層404を形成している。容器の形をした金属用の液溜406は、閉じた端部を有する円柱状の断面と、容器の頂部に金属層404と連通する開口部407とを有している。必要により、上面のカバーの開口部407と引出し口(図示せず)とを介してタッピング用ルツボの入口を挿入することにより、液溜から金属を取出すことができる。前述のいずれか一つのタイプのポンプ408を、液溜から液体をタッピング、そして金属を前の実施形態と同様にして液溜にオーバーフローさせるために用いることができる。
【0074】
図18は、絶縁性の底壁452と側壁452と絶縁性の上面カバー453とを有する金属回収部450の一部を示している。回収された金属は電解質層455の上面に層454を形成している。容器の形をした金属用の液溜456は、閉じた端部を有する円柱状の断面と、横方向で対向し金属層454と連通する開口部457とを有している。前述のいずれか一つのポンプ458を用いることができる。液溜の頂部に設けられた開口部459は、金属回収部の金属の上に存在するガス空間460と連通し、液溜と回収部との間のガスの圧力を均一化し(もし金属461の上面が開口部457の頂部よりも上昇したら)、そして液溜の内部の金属461の液面を液溜の外側の金属の液面と同じ高さに維持する。開口部459も、液溜の金属をタッピングする際の通路を提供する。
【0075】
図19は、絶縁性の底壁501と側壁502と絶縁性の上面カバー503とを有する金属回収部500の一部を示している。回収された金属は電解質層505の上面に層504を形成している。矩形の箱の形をした金属用の液溜456は、上面に開口部507を有している。開口部507は、金属回収部の上のガス空間508と連通し、液溜の中の金属をタッピングする際の通路を提供し、液溜の金属の液面と金属回収部の金属の液面の高さを同じにするように働く。パイプ511には、金属層504と連通する上面の開口部512が設けられ、パイプ511は液溜513の底面に接続されている。前述のいずれか一つのポンプ514を用いることができる。パイプを介して金属を液溜に入れて上昇させ液溜内に層516を形成する際に、ポンプの中にすぐに金属が吸い上げられないようにするため、ポンプ515への金属の導入は、パイプ接続部513からできるだけ離れた場所で行う必要がある。小さな障壁517もこのバイパスを減らすのに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に使用可能な金属回収用の液溜の一実施形態を含むように変更された第1の種類の電解還元セルの垂直断面図である。
【図2】 本発明に使用可能な金属回収用の液溜の第2の実施形態を含むように変更された第2の種類の電解還元セルの垂直断面図である。
【図3】 本発明の第1の好ましい実施形態を構成する付属装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図4】 図3の実施形態の水平断面図である。
【図5】 本発明の第2の好ましい実施形態を構成する付属装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図6】 本発明の第3の好ましい実施形態を構成する付属装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図7】 本発明の第4の好ましい実施形態を構成する付属装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図8】 図6に類似した装置であって、タッピング装置を備えた装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図9】 本発明の第5の好ましい実施形態を構成する付属装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図10】 本発明の第6の好ましい実施形態を構成する付属装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図11】 本発明の第7の好ましい実施形態を構成する付属装置を示す電解還元セルの部分断面図である。
【図12A】 金属回収部と連通する開口部の異なる形状を示す、前の実施形態における液溜の側面の側面図である。
【図12B】 金属回収部と連通する開口部の異なる形状を示す、前の実施形態における液溜の側面の側面図である。
【図12C】 金属回収部と連通する開口部の異なる形状を示す、前の実施形態における液溜の側面の側面図である。
【図13】 金属の液面制御装置のないセルに使用可能に変更された液溜を示す電解還元セルの垂直断面図である。
【図14】 電解還元セルと外部に取り付けられた液溜の一部を示す斜視図である。
【図15】 セルから分離された好ましい種類の液溜の斜視図である。
【図16】 金属用の液溜の他の実施形態の部分断面図である。
【図17】 金属回収部の拡大断面図であり、別のデザインを示す。
【図18】 図17に類似した金属回収部の断面図であり、変更されたデザインを示す。
【図19】 金属回収部の一部の断面図であり、別の金属移送手段を示す。

Claims (18)

  1. 溶融金属の製造に使用される電解セルであって、該溶融金属は電解セルを用いて該溶融金属を製造するのに使用される溶融電解質の密度よりも低い密度を有し、
    溶融電解質に含まれる前記の金属の塩を電解して前記電解質に含まれる金属を溶融状態の金属滴とするために使用される、少なくとも1つの電解部と、
    前記の電解部の内部に配置され電解に使用される複数の電極と、
    前記の金属を前記の電解質から分離せしめ、上面を有し溶融電解質の上面を浮遊する溶融金属層を形成する金属回収部と、
    前記金属回収部の上部と連通し、溶融金属が前記溶融金属層からオーバーフローして溶融金属が集合する液体が充填された液溜と、
    前記液溜と連通し、既に前記液溜に存在する液体を完全に取り除くことなく移動させて前記溶融金属層からの溶融金属と置換して前記液溜に溶融金属を蓄積する液体移送装置と、
    セルから溶融金属を定期的に取り除くタッピング装置と、から成る溶融金属製造用の電解セルであって、
    前記液溜は金属回収部と連通する少なくとも1個の開口部を有する容器の形をなし、
    該開口部は、
    通常のセル運転の少なくとも一部においては、少なくとも前記の開口部の一部が前記金属層の上面より下に位置し、
    通常のセル運転の少なくとも一部においては、前記の開口部の全体が金属回収部の中の電解質の上面より上に位置し、
    そして前記容器の前記開口部以外は、金属回収部と液溜との間を電解質又は金属が自由に流れるのを防ぐために閉じられている、溶融金属製造用の電解セル。
  2. 少なくとも前記の開口部の一部が、通常のセル運転のすべてにおいて、前記の金属層の上面より下に位置する請求項1記載のセル。
  3. 前記の開口部の全体が、通常のセル運転の時間の少なくとも80%の時間、前記の電解質の上面より上に位置する請求項2記載のセル。
  4. 前記の開口部の全体が、通常のセル運転のすべてにおいて、前記の電解質の上面より上に位置する請求項3記載のセル。
  5. 前記の開口部の一部が、通常のセル運転中、前記の電解質の上面及び前記の金属層の上面の上に位置する請求項2記載のセル。
  6. 前記液溜は開放された上面と、側面を形成する固体の側壁と、固体の底壁とを有し、
    該側壁は上縁部を有し、該上縁部の少なくとも一部は通常のセル運転中に、前記の開口部を金属回収部の中の溶融金属層の上面より下に位置するように規定する一方、
    前記の上縁部の少なくとも一部は通常のセル運転中、金属回収部中の前記の電解質の上面より完全に上に位置している請求項2記載のセル。
  7. 前記側壁の上縁部のすべての部分が、通常のセル運転中、前記の金属層の上面より下に位置する請求項6記載のセル。
  8. 前記液溜が、液溜中の金属を加熱する手段を有する請求項1記載のセル。
  9. 溶融金属の製造に使用される電解セルであって、該溶融金属は電解セルを用いて該溶融金属を製造するのに使用される溶融電解質の密度よりも低い密度を有し、
    溶融電解質に含まれる前記の金属の塩を電解して前記の電解質に含まれる金属を溶融状態の金属滴とするために使用される、少なくとも1つの電解部と、
    前記の電解部の内部に配置され電解に使用される複数の電極と、
    前記の金属を前記の電解質から分離せしめ、上面を有し溶融電解質の上面を浮遊する溶融金属層を形成する金属回収部と、
    前記金属回収部の中の電解質から分離された溶融金属のタッピングと一時的な保持とを行う液溜と、
    セルから溶融金属を定期的に取出すタッピング装置と、から成り、
    前記液溜は金属回収部と連通する少なくとも1個の開口部を有する容器の形をなし、
    通常のセル運転においては、少なくとも前記の開口部の一部が前記金属層の上面より下に位置し、
    通常のセル運転の少なくとも一部においては、前記の開口部の全体が金属回収部の中の電解質の上面より上に位置し、
    そして前記の容器においては、前記の開口部以外が、金属回収部と液溜との間を電解質又は金属が自由に流れるのを防ぐために閉じられている溶融金属用の電解セル。
  10. 前記容器が上面と、側面と、底面とを有する請求項9記載のセル。
  11. 前記の開口部が、前記容器の上面を形成する請求項10記載のセル。
  12. 前記液溜が、前記の回収部の中の溶融金属層と連通し液溜の底面近傍に伸びる開口部を備えた密閉された容器であって、該容器に封止されたガス入口には圧力制御装置からガスが供給され、前記の上面の位置を検出する液面センサが取り付けられ、さらに、セルの運転中に前記の上面の位置を所定の位置に維持するために、吸引又は容器からガスを排気して圧力を制御する制御手段を有する請求項9又は10に記載のセル。
  13. 電解セルの電解部において溶融電解質に含まれる金属の塩を電解して溶融金属と溶融電解質との混合物を調製し、該混合物をセルの金属回収部に移送して金属層と電解質層とに分離し、ここで溶融状態の金属は溶融電解質より低い密度を有し、金属回収部から溶融電解質を電解部に再循環し、そして、セルから溶融金属を定期的に取り除く、金属の製造方法において、
    前記の方法が、
    前記金属回収部の上部と連通した液溜であって、溶融金属を前記溶融金属層からオーバーフローさせて溶融金属を集める液体充填用の液溜と、前記液溜と連通する液体移送装置とを準備する工程を含み、
    該液体移送装置は、既に前記液溜に存在する液体を、該液体を完全に取り除くことなく移動させて前記溶融金属層からの溶融金属と置換して前記液溜に溶融金属を蓄積させる、金属の製造方法。
  14. 前記の回収部の中の溶融金属層の上面が、前記液溜の中の溶融金属の上面と連続している請求項13記載の方法。
  15. 電解セルの電解部において溶融電解質に含まれる金属の塩を電解して溶融金属と溶融電解質との混合物を調製し、該混合物をセルの金属回収部に移送して金属層と電解質層とに分離し、ここで溶融状態の金属は溶融電解質より低い密度を有し、金属回収部から溶融電解質を電解部に再循環し、そして、セルから溶融金属を定期的に取り除く、金属の製造方法において、
    前記の方法が、
    金属回収部と連通する少なくとも1個の開口部を有する容器から成る溶融金属用液溜をセルの中に設ける工程と、
    通常のセル運転では、金属回収部の中の前記の金属層の上面が少なくとも前記の開口部の一部より上に位置するように維持する一方、通常のセル運転の少なくとも一部においては、金属回収部の中の前記電解質の上面が前記の開口部の全体より下に位置するように維持する工程とを含み、
    前記の電解質と前記の金属は、前記の開口部以外では、金属回収部と溶融金属用の液溜との間を前記側壁や前記底壁を通って自由に流れることができない、金属の製造方法。
  16. 前記液溜が上面と、側面と、底面とを有する請求項15記載の方法。
  17. 前記液溜の中の液体を、電解セルから永久的に取り除くのではなく、液溜から定期的にタッピング溶融金属が前記液溜に流れ込むようにする請求項15又は16に記載の方法。
  18. 前記液溜が密封された容器であり、該容器は金属回収部の中の溶融金属層と連通し、かつ液溜の底面近くまで伸びる直立管型の開口部を有し、
    ガスは圧力調整器から封止された導入部を通って容器に供給され、
    上面は液面センサにより検出され、
    制御手段により圧力調整器を制御して、セル運転中に前記上面を所定の位置に維持するように容器からのガスの導入又は排気を行う、請求項15又は16に記載の方法。
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