JP3868985B2 - ヒストンh3の1アミノ酸変異タンパク質とその変異細胞、並びにそれらの用途 - Google Patents

ヒストンh3の1アミノ酸変異タンパク質とその変異細胞、並びにそれらの用途 Download PDF

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この出願の発明は、ヒストン遺伝子領域に塩基多型を生じさせた変異酵母細胞と、その用途に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、特定の1アミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型のヒストンH3またはヒストンH4と、これらの変異型タンパク質を発現し、各種有用物質のスクリーニング等に有用な変異酵母細胞に関するものである。
ヒストン(histone)は、ヒトをはじめとする多細胞生物から真菌類(カビ・酵母)に代表される単細胞生物に至るまで、真核細胞の核内に共通に存在し、ゲノムDNAとイオン結合する塩基性タンパク質である。ヒストンは通常5種類の成分(H1、H2A、H2B、H3およびH4)からなっており、生物種を越えて高度に類似している。例えばヒストンH3の場合、出芽酵母ヒストンH3(N端から1番目から119番目までの119アミノ酸配列)とヒトヒストンH3.3(N端から1番目から119番目までの119アミノ酸配列)では93%のアミノ酸配列が一致し、相違はわずか8残基に過ぎない。ヒストンH4の場合、出芽酵母ヒストンH4(全長102アミノ酸配列)とヒトヒストンH4(全長102アミノ酸配列)では92%のアミノ酸配列が一致し、相違はわずか8残基である。1生物中に数万種類存在すると想定されている天然タンパク質の中で、ヒストンH4は真核生物種間で最も高度に保存されたタンパク質であることが知られている。なお出芽酵母は遺伝学的・生化学的解析が容易な真核生物種であると同時にパン酵母とも呼称され、パンをはじめとする食品類・酒類の発酵等に広く用いられる有用微生物である。また、出芽酵母と同様に真菌属に属するカンジダ菌、アスペルギルス菌、白癬菌等の有害微生物も出芽酵母と同様にヒストンを有しており、ヒストンH3およびH4のアミノ酸配列は出芽酵母のアミノ酸配列と高い類似性を示しているが、一部相違も見られる(図1、図2)。
ゲノムDNAはこのヒストンとの規則的な結合により折り畳まれており、両者の複合体は、ヌクレオソームという基本的な構造単位を形成する。そして、このヌクレオソームが凝集することによって染色体のクロマチン構造が形成され、このクロマチン構造を維持または特異的に構造変換することによって遺伝子発現、DNA複製、DNA修復等の染色体DNA上で生じる反応がコントロールされている。
一方、真核細胞を構成するタンパク質は、染色体DNA配列(ゲノム)にコードされた遺伝子から発現しており、各遺伝子の発現形態や遺伝子機能の解析、あるいは個々の遺伝子の産業的利用は、ゲノムDNAがコードする遺伝子やその転写産物を直接操作することに主眼がおかれていた。例えば、単離した遺伝子の宿主−ベクター系での発現、生物個体への外来遺伝子の導入(トランスジェニック)、あるいは生物個体における特定遺伝子の欠失(ノックアウト)等である。
しかしながら前記のとおり、ゲノムから適切な遺伝子発現、DNA複製、DNA修復等の反応が起こるためには染色体のクロマチン構造の維持が不可欠であり、そのためには、ヌクレオソームの規則性、さらにはヒストンの構造と機能が正常に維持されることが不可欠である。従って、ヒストンに変異を導入し、染色体の正常なクロマチン構造を変化させることによっても、遺伝子発現、DNA複製、DNA修復等をコントロールすることが可能である。例えば、Hischhorn J. N. et al.(Mol. Cell. Biol. 15:1999-2009, 1995)は、酵母細胞(Saccharomyces cerevisiae)のヒストンH2Aに変異を導入することによって、特定遺伝子の転写欠損を報告している。また、ヒストンはゲノムDNAを鋳型として起こる各種の反応(遺伝子発現、DNA複製、DNA修復等)の制御ターゲットであることから、生体内において薬剤などの各種化合物の標的となることが考えられる。実際に近年、ヒストンを脱アセチル化する酵素に対する阻害剤が抗がん活性を持つことが示され、創薬の重要候補と位置づけられている(Current Opinion in Oncology 13:477-483, 2001;Anti-cancer Drugs 13:1-13, 2002)。しかし従来技術では、ヒストンに作用する生理活性物質がヒストンタンパク質のどの表面部位(アミノ酸残基)に作用し、薬理活性を発揮するのかを特定するのが困難であるという問題点もあった。
この出願の発明は、染色体のタンパク質構成要素であるヒストンにアミノ酸点変異を導入することによって、ゲノムDNAがコードする遺伝子やその転写産物を直接操作することなく、新たな形質を獲得した新しい酵母細胞を提供することを課題としている。
また、この出願の発明は、酵母または非酵母細胞に対して新たな形質を付与することのできる変異型ヒストンと、それをコードするポリヌクレオチド、さらにはこれらを材料として酵母細胞または非酵母細胞に新たな形質を導入する方法を提供することを課題としている。
さらにこの出願の発明は、前記の変異細胞を用いた各種有用物質のスクリーニング方法、さらにはそれら有用物質のヒストンに対する作用点をアミノ酸1残基レベルに絞り込む方法を提供することを課題としている。
この出願は、前記の課題を解決するための第1の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、かつ酵母細胞ゲノムの必須遺伝子プロモーター領域にTy配列またはδ配列が挿入されており、変異型ヒストンH3と野生型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH3が、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第2位Arg、第3位Thr、第4位Lys、第40位Arg、第41位Tyr、第42位Lys、第44位Gly、第45位Thr、第46位Val、第49位Arg、第50位Glu、第52位Arg、第53位Arg、第54位Phe、第56位Lys、第59位Glu、第61位Leu、第64位Lys、第66位Pro、第69位Arg、第72位Arg、第84位Phe、第86位Ser、第94位Glu、第105位Glu、第115位Lys、第117位Val、第120位Gln、第122位Lys、第125位Lys、第126位Leu、第129位Argまたは第133位Gluのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3であり、SPT表現型を示すヒストンH3変異酵母細胞を提供する。
この出願は、第2の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、変異型ヒストンH3と野生型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH3が、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第5位Gln、第41位Tyr、第42位Lys、第44位Gly、第45位Thr、第49位Argまたは第52位Argのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3であり、Thiabendazole(TBZ)およびMethyl 1-(butylcarbamoyl)-2-benzimidazolecarbamate (Benomyl)に対して野生型酵母よりも高い感受性を示すヒストンH3変異酵母細胞を提供する。
この出願は、第3の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、変異型ヒストンH3と野生型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH3が、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第48位Leu、第51位Ile、第55位Gln、第112位Ileまたは第113位Hisのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3であり、野生型酵母よりも増殖の程度が低いヒストンH3変異酵母細胞を提供する。
この出願は、第4の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、かつ酵母細胞ゲノムの必須遺伝子プロモーター領域にTy配列またはδ配列が挿入されており、野生型ヒストンH3と変異型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH4が、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第25位Asn、第32位Pro、第35位Arg、第36位Arg、第47位Ser、第48位Gly、第49位Leu、第51位Tyr、第52位Glu、第53位Glu、第55位Arg、第59位Lys、第78位Argまたは第99位Glyのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH4であり、SPT表現型を示すヒストンH4変異酵母細胞を提供する。
この出願は、第5の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、野生型ヒストンH3と変異型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH4が、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第97位Leuまたは第99位GlyがAla残基に置換されている変異型ヒストンH4であり、6アザウラシル(6AU)に対して野生型酵母よりも高い感受性を示すヒストンH4変異酵母細胞を提供する。
この出願は、第6の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、野生型ヒストンH3と変異型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH4が、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第97位Leuまたは第99位GlyがAla残基に置換されている変異型ヒストンH4であり、Thiabendazole(TBZ)およびMethyl 1-(butylcarbamoyl)-2-benzimidazolecarbamate (Benomyl)に対して野生型酵母よりも高い感受性を示すヒストンH4変異酵母細胞を提供する。
この出願は、第7の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、野生型ヒストンH3と変異型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH4が、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第23位Argまたは第99位Glyのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH4であり、野生型酵母よりも増殖の程度が低いヒストンH4変異酵母細胞を提供する。
この出願は、第8の発明として、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第2位Arg、第3位Thr、第4位Lys、第40位Arg、第41位Tyr、第42位Lys、第44位Gly、第45位Thr、第46位Val、第49位Arg、第50位Glu、第52位Arg、第53位Arg、第54位Phe、第56位Lys、第59位Glu、第61位Leu、第64位Lys、第66位Pro、第69位Arg、第72位Arg、第84位Phe、第86位Ser、第94位Glu、第105位Glu、第115位Lys、第117位Val、第120位Gln、第122位Lys、第125位Lys、第126位Leu、第129位Argまたは第133位Gluのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3を提供する。
この出願は、第9の発明として、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第5位Gln、第41位Tyr、第42位Lys、第44位Gly、第45位Thr、第49位Argまたは第52位Argのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3を提供する。
この出願は、第10の発明として、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第48位Leu、第51位Ile、第55位Gln、第112位Ileまたは第113位Hisのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3を提供する。
この出願は、第11の発明として、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第25位Asn、第32位Pro、第35位Arg、第36位Arg、第47位Ser、第48位Gly、第49位Leu、第51位Tyr、第52位Glu、第53位Glu、第55位Arg、第59位Lys、第78位Argまたは第99位Glyのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH4を提供する。
この出願は、第12の発明として、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第97位Leuまたは第99位GlyがAla残基に置換されている変異型ヒストンH4を提供する。
この出願は、第13の発明として、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第23位Argまたは第99位Glyのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH4を提供する。
この出願は、第14の発明として、前記第8発明の変異型ヒストンH3をコードするポリヌクレオチドを提供する。
この出願は、第15の発明として、前記第9発明の変異型ヒストンH3をコードするポリヌクレオチドを提供する。
この出願は、第16の発明として、前記第10発明の変異型ヒストンH3をコードするポリヌクレオチドを提供する。
この出願は、第17の発明として、前記第11発明の変異型ヒストンH4をコードするポリヌクレオチドを提供する。
この出願は、第18の発明として、前記第12発明の変異型ヒストンH4をコードするポリヌクレオチドを提供する。
この出願は、第19の発明として、前記第13発明の変異型ヒストンH4をコードするポリヌクレオチドを提供する。
この出願は、第20の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の染色体クロマチン構造または遺伝子発現形態に影響を及ぼす方法であって、前記第8発明の変異型ヒストンH3、または前記第14発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第21の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の染色体クロマチン構造または遺伝子発現形態に影響を及ぼす方法であって、前記第11発明の変異型ヒストンH4、または前記第17発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第22の発明として、酵母細胞または非酵母細胞のRNA転写またはDNA複製の阻害剤に対する感受性を増強させる方法であって、前記第12発明の変異型ヒストンH4、または前記第18発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第23の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の細胞分裂阻害剤に対する感受性を増強させる方法であって、前記第9発明の変異型ヒストンH3、または前記第15発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第24の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の細胞分裂阻害剤に対する感受性を増強させる方法であって、前記第12発明の変異型ヒストンH4、または前記第18発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第25の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の増殖を低下させる方法であって、前記第10発明の変異型ヒストンH3、または前記第16発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第26の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の増殖を低下させる方法であって、前記第13発明の変異型ヒストンH4、または前記第19発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第27の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の染色体クロマチン構造または遺伝子発現形態に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であって、前記第1発明または前記第4発明の変異酵母細胞に候補因子を導入する工程を含み、変異酵母細胞のSPT表現型を変化させる候補因子を目的因子として同定することを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第28の発明として、酵母細胞または非酵母細胞のRNA転写またはDNA複製に影響する因子を探索する方法であって、前記第5発明の変異酵母細胞に候補因子を導入する工程を含み、変異酵母細胞の死亡率を変化させる候補因子を目的因子として同定することを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第29の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の細胞分裂に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であって、前記第2発明または前記第6発明の変異酵母細胞に候補因子を導入する工程を含み、変異酵母細胞の死亡率を変化させる候補因子を目的因子として同定することを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第30の発明として、酵母細胞または非酵母細胞の増殖に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であって、前記第3発明または前記第7発明の変異酵母細胞に候補因子を導入する工程を含み、変異酵母細胞の増殖を変化させる候補因子を目的因子として同定することを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第31の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、変異型ヒストンH3と野生型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞119の集合であって、各酵母細胞の変異型ヒストンH3が、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第1位から第135位のAla残基以外のアミノ酸残基がそれぞれAla残基に置換された異なる変異型ヒストンH3であるヒストンH3変異酵母細胞の集合体を提供する。
この出願は、第32の発明として、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、野生型ヒストンH3と変異型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞96の集合であって、各酵母細胞の変異型ヒストンH4が、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2における第1位から第102位のAla残基以外のアミノ酸残基がそれぞれAla残基に置換された異なる変異型ヒストンH4であるヒストンH4変異酵母細胞の集合体を提供する。
この出願は、第33の発明として、ヒストンH3に作用を及ぼす因子の、ヒストンH3に対する作用点をスクリーニングする方法であって、前記第31発明の酵母細胞集合体を構成する各ヒストンH3変異酵母細胞のそれぞれに因子を導入し、因子の作用が変化した酵母細胞が発現する変異型ヒストンH3の置換アミノ酸部位をその因子の作用点として同定することを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第34の発明として、ヒストンH4に作用を及ぼす因子の、ヒストンH4に対する作用点をスクリーニングする方法であって、前記第32発明の酵母細胞集合体を構成する各ヒストンH4変異酵母細胞のそれぞれに因子を導入し、因子の作用が変化した酵母細胞が発現する変異型ヒストンH4の置換アミノ酸部位をその因子の作用点として同定することを特徴とする方法を提供する。
この出願は、第35の発明として、ヒトおよび酵母細胞には作用せず、カンジダ菌の染色体クロマチン構造、遺伝子発現形態または細胞増殖に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であって、野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、かつ酵母細胞ゲノムの必須遺伝子プロモーター領域にTy配列またはδ配列が挿入されており、野生型ヒストンH3と、配列番号2における第48位GlyがAla残基に置換されている変異型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有するヒストンH4変異酵母細胞に候補因子を導入する工程を含み、変異酵母細胞のSPT表現型や細胞増殖活性を変化させる候補因子を目的因子として同定することを特徴とする方法を提供する。
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、染色体の一方の構成要素であるヒストンに1アミノ酸変異(1アミノ酸置換)を導入することによって、ゲノムDNAがコードする遺伝子やその転写産物を直接操作することなく、ヒストンH3および/またはヒストンH4が関係するゲノムDNAを鋳型として起こる各種反応(クロマチン構造の維持、遺伝子の転写、細胞分裂、細胞増殖等)について新たな形質を獲得した新しい酵母細胞株が提供される。
また、この出願の発明によって、酵母細胞または非酵母細胞に新たな形質を導入する方法、各種有用物質のスクリーニング方法、さらにはそれら有用物質のヒストンに対するアミノ酸レベルでの作用点をスクリーニングする方法が提供される。
第1発明から第4発明の変異酵母細胞は、それぞれ、本来の野生型ヒストンH3遺伝子およびヒストンH4遺伝子を欠損しており、ヒストンH3およびヒストンH4のいずれか一方の1アミノ酸残基がアラニン残基に置換された変異型ヒストンH3またはヒストンH4を発現するポリヌクレオチド構築物(発現ベクター)を保有することを特徴としている。
野生型ヒストンH3遺伝子およびヒストンH4遺伝子を欠損した酵母細胞(以下、「H3/H4欠損酵母細胞」と記載する。この記載において「/」は”and”を意味する)は、公知の標的遺伝子置換法を用いた遺伝子ノックアウトによっても作成することができるが、好ましくは、MATa D(HHT1 HHF1) D(HHT2 HHF2) his4-912dlys2-128dleu2-3,112 ura3-52 pMS329[URA3 HHT1 HHF1]の遺伝型で示される出芽酵母MSY748株(Santisteban M.S. et al., EMBO Journal 16:2493-2506, 1997)を使用することができる。このMSY748株は、ゲノム中の野生型ヒストンH3遺伝子2種、野生型ヒストンH4遺伝子2種を欠損しており、ヒストンH3遺伝子とヒストンH4遺伝子を1種ずつ保有し、URA3遺伝子を保有するpSAB6プラスミド(以下、「H3/H4野生型プラスミド」と記載する。この記載において「/」は”and”を意味する)を保有することで生育している。
このようなH3/H4欠損酵母細胞に、アラニン点変異を含むヒストンH3タンパク質またはヒストンH4タンパク質をコードするポリヌクレオチドをクローニングした構築体(具体的にはプラスミド。以下、「H3-H4変異型プラスミド」と記載する。この記載において「-」は”or”を意味する)を導入する。H3-H4変異型プラスミドはLEU2遺伝子を保有している。MSY748株がLEU2遺伝子を機能喪失しているため、ロイシンを含まない培地では生育できないが、このH3-H4変異型プラスミドを保有することにより生育可能となる。このH3-H4変異型プラスミドを導入したH3/H4欠損酵母株をA株と呼ぶ。A株を、1mg/mlの濃度の5-Fluorootic Acid(5-FOA)および0.05mg/mlの濃度のウラシルを含有する寒天プレート上に塗布する。出芽酵母内ではURA3遺伝子の働きがあると、5-FOAは致死的な中間体に代謝されることから、上記プレート上では生育することができない。一方URA3遺伝子の働きがない出芽酵母は細胞内でウラシルを生合成できないが、上記プレートのように外来的にウラシルを添加すればプレート上で生育することができる。A株はゲノム中のURA3遺伝子を機能喪失しているものの、H3/H4野生型プラスミドがURA3遺伝子を保有しているため、H3/H4野生型プラスミドが細胞内に保持されている限り上記プレート上では生育できない。しかし、プラスミドは一般に親細胞の分裂と共に娘細胞に分配されるが、低頻度で片方の娘細胞に分配されず宿主細胞から脱落することが知られている。A株の場合でも同様の現象が確認され、上記プレート上に塗布した場合でも一部のコロニーが生育する。この株をB株と呼ぶ。B株はゲノム中のヒストンH3遺伝子およびヒストンH4遺伝子を欠損しており、H3-H4変異型プラスミドを保有する株である。即ちB株は、ヒストンH3またはヒストンH4の特定の1アミノ酸だけを選択的にアラニンに置換した出芽酵母株として樹立される。
ヒストンH3タンパク質またはH4タンパク質の1アミノ酸残基をアラニン残基に置換する方法は、オリゴヌクレオチドと一本鎖DNAのハイブリダイゼーションに基づいたKunkel法(Kunkel, T. A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488, 1985およびKunkel, T. A., et al. Methods in Enzymology 154:367, 1987)に基づいて行うことができる。すなわち、dut、ungの遺伝型で示される大腸菌(BW313、CJ236等)は、dUTPase(Dut)とUracil-DNA glycosylase(Ung)を欠損している。そのため、DNA中のチアミン(T)の一部がデオキシウラシル(dU)に置き換わったDNAを合成する。この大腸菌を宿主菌として、変異導入の目標となるヒストンH3またはH4遺伝子をクローニングしたプラスミドの一本鎖DNAを調製する。ヒストンH3遺伝子およびヒストンH4遺伝子は、例えば公知の配列情報(H3:GenBank Accession No. Z35879; H4:GenBank Accession No. Z35878等)に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いて酵母cDNAをスクリーニングする方法や、オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR増幅する方法等によって得ることができる。また、入手可能な公知のクローンを利用することもできる。
この一本鎖DNAに対して、目的残基をアラニンで置換するように設計したオリゴヌクレオチドを試験管内でハイブリダイズさせ、DNAポリメラーゼ反応とDNAリガーゼ反応により相補DNA鎖を合成する。このDNAをung+の大腸菌株(DH5α等)に導入すると、もとのdUの含まれているDNA鎖はUngによって分解を受けるが、試験管内で合成された相補DNA鎖は分解されずに複製される。このようにして変異を導入した側のDNA鎖が選択的に増幅され、アラニン点変異を含むヒストンH3タンパク質またはヒストンH4タンパク質をコードする遺伝子をクローニングした変異導入プラスミドを得ることができる。
また、第1発明および第4発明の変異酵母細胞は、前記のとおりの構成に加えて、酵母細胞ゲノムの必須遺伝子プロモーター領域にTy配列またはδ配列が挿入されている。このような出芽酵母株は、例えばhis4-912d の遺伝型で示される。前記の出芽酵母MSY748株はこのhis4-912d の遺伝型を有してもいる。これはゲノム中のHIS4遺伝子のプロモーター領域にd 配列の挿入が起こり、HIS4遺伝子の発現が起こらなくなった株であることを意味している。このような株は培地上にヒスチジンを含有しないと生育することはできない。しかし、ある遺伝子の発現の量的または質的な変化が生じるとhis4-912d の遺伝型を持つ株でもヒスチジンを含有しない培地上で生育できるようになる。このような表現型をsuppressor of Ty (SPT)表現型と呼ぶ(Winston, F. and Carlson, M. Trends Genet. 8:387-391, 1992)。第1発明および第4発明の変異酵母細胞はヒスチジンを含有しない培地で生育することから、SPT表現型を示すことが確認された。SPT表現型をもたらす遺伝子変異には、ヒストンをはじめとしてゲノムのクロマチン構造の維持または変換過程に関わる分子をコードする遺伝子変異が数多く報告されていることから、SPT表現型は細胞内におけるゲノムのクロマチン構造の変化や遺伝子発現形態の変化を検出する重要な指標である。従って、この第1発明および第4発明の変異酵母細胞は、ヒストンH3およびH4のそれぞれ特定のアミノ酸点変異が染色体クロマチン構造や遺伝子発現形態にどのような影響を及ぼすかを調べる系として有用である。また、染色体クロマチン構造や遺伝子発現形態に影響を及ぼす因子を探索する系(第27発明)としても有用である。さらに、これらの変異酵母細胞が保有する変異型H3タンパク質および変異型H4タンパク質(第8発明、第11発明)、あるいはこれらの変異型タンパク質をコードするポリヌクレオチド(第14発明および第17発明)は、酵母または非酵母細胞の染色体クロマチン酵素や遺伝子発現形態を変化させるために使用することができる(第20発明、第21発明)。
なお、この出願の発明において、「因子」とは、未知および既知の化合物、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド等を含有する。また、この発明のスクリーニング方法では酵母細胞に加えて「非酵母細胞」を対象とするが、これは、前記のとおりヒストンの構造(アミノ酸配列)が種間を越えて高度に保存されており、酵母以外の種においても酵母での知見が確実に適用できるためである。さらに、非酵母細胞は、培養細胞(インビトロ)だけでなく、生物個体内の生細胞(インビボ)をも対象とする。
一方、第2−3発明および第5−7発明の変異酵母細胞は、それぞれ特定の条件に対して野生型酵母細胞とは異なる表現型を示す酵母細胞である。
第5発明の変異酵母細胞は、6アザウラシル(6-azauracil:6AU)に対して野生型よりも有意に高い感受性を有する細胞株として特定された。6AUは細胞内のヌクレオチド濃度を変化させることによってRNA転写やDNA複製に影響を与える薬剤である(Nakanishi T. et al. J Biol. Chem. 270:8991-8995, 1995、Hampsey M. Yeast 13:1099-1133, 1997)。従って、これらの変異酵母細胞は、RNA転写またはDNA複製に影響を及ぼす因子に対して敏感に反応するため、それらの因子を探索する系(第28発明)として有用である。さの変異酵母細胞が保有する変異型H4タンパク質(第12発明)、あるいはこの変異型タンパク質をコードするポリヌクレオチド(第18発明)は、酵母または非酵母細胞のRNA転写またはDNA複製の阻害剤に対する感受性を増強させるために使用することができる(第22発明)。
第2発明および第6発明の変異酵母細胞は、TBZ(Thiabendazole)およびBenomyl(Methyl 1-(butylcarbamoyl)-2-benzimidazolecarbamate)に対して野生型よりも有意に高い感受性を有する細胞株として特定された。TBZおよびBenomylはともに細胞内の微小管重合を阻害することで細胞分裂を阻害する生理活性を有している(Hampsey M. Yeast 13:1099-1133, 1997)。従って、これらの変異酵母細胞は、細胞分裂に影響を及ぼす因子に対して敏感に反応するため、それらの因子を探索する系(第29発明)として有用である。さらにこれらの変異酵母細胞が保有する変異型H3タンパク質(第9発明)および変異型H4タンパク質(第12発明)、あるいはこれらの変異型タンパク質をコードするポリヌクレオチド(第15発明、第18発明)は、酵母または非酵母細胞の細胞分裂の阻害剤に対する感受性を増強させるために使用することができる(第23発明、第24発明)。
第3発明および第7発明の変異酵母細胞は、野生型よりも増殖の程度が低い細胞株として特定された。従って、これらの変異酵母細胞は、増殖の程度に影響を及ぼす因子に対して敏感に反応するため、それらの因子を探索する系(第30発明)として有用である。さらにこれらの変異酵母細胞が保有する変異型H3タンパク質(第10発明)および変異型H4タンパク質(第13発明)、あるいはこれらの変異型タンパク質をコードするポリヌクレオチド(第16発明、第19発明)は、酵母または非酵母細胞の増殖を低下させるために使用することができる(第25発明、第26発明)。
第8発明から第13発明は、それぞれ、前記の各変異酵母細胞が発現する変異型ヒストンH3タンパク質および変異型ヒストンH4タンパク質である。これらの変異型タンパク質は、配列番号1および2の配列情報と、各アミノ酸置換に基づいて、公知の化学合成法によってペプチドを合成する方法によっても得ることができるが、好ましくは、前記の各変異酵母細胞を公知の方法で培養し、その培養物から公知の手段で目的タンパク質を単離精製する方法によって取得することができる。あるいはまた、各変異タンパク質をコードするポリヌクレオチド(第14発明から第19発明。以下、「変異型ポリヌクレオチド」と記載する)を適当な発現ベクターに連結することによって、インビトロ転写翻訳系や、非酵母細胞(微生物、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞等)の培養物から、変異型タンパク質を単離精製することができる。
例えば、変異型タンパク質をインビトロ転写翻訳系で発現させる場合には、前記の変異型ポリヌクレオチドを、RNAポリメラーゼプロモーターを有するベクターに挿入して組換えベクターを作製する。このベクターを、プロモーターに対応するRNAポリメラーゼを含むウサギ網状赤血球溶解物や小麦胚芽抽出物などのインビトロ転写翻訳系に添加すれば、目的とする変異型タンパク質をインビトロで生産することができる。RNAポリメラーゼプロモーターとしては、T7、T3、SP6などが例示できる。これらのRNAポリメラーゼプロモーターを含むベクターとしては、pKA1、pCDM8、pT3/T7 18、pT7/3 19、pBluescript IIなどが例示できる。
変異型タンパク質を、大腸菌などの微生物で発現させる場合には、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、DNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターに前記の変異型ポリヌクレオチドを組換えて発現ベクターを作成する。この発現ベクターで宿主細胞を形質転換すれば、変異型タンパク質を発現する形質転換体細胞を得ることができ、この形質転換体を培養すれば、その培養物から目的の変異型タンパク質を大量生産することができる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescript II、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。
さらに、変異型タンパク質を真核細胞で発現させる場合には、前記の変異型ポリヌクレオチドを、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターに挿入して組換えベクターを作成する。このベクターを真核細胞内に導入して培養すれば、目的とする変異型タンパク質を発現する形質転換真核細胞を得ることができる。発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK-CMV、pBK-RSV、EBVベクター、pRS、pYES2などが例示できる。真核細胞としては、ヒト胎児腎臓由来細胞HEK293T、サル腎臓細胞COS7、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHOなどの哺乳動物培養細胞、あるいはヒト臓器から単離した初代培養細胞などが使用できる。出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞なども使用できる。発現ベクターを細胞に導入するには、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など公知の方法を用いることができる。
この発明の変異酵母細胞または形質転換細胞で発現させた変異型タンパク質を単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば、尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒沈殿法、透析、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどが挙げられる。
なお、細胞で発現したタンパク質は、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。したがって、修飾されたタンパク質もこの発明の変異型タンパク質の範囲に含まれる。このような翻訳後修飾としては、N末端メチオニンの脱離、アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテア−ゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、メチル化などである。
以上のとおりにして得た変異型ヒストンH3およびH4、およびそれらをコードする変異型ポリヌクレオチドは、前記のとおりの第20発明から第26発明に使用することができる。なお、これらの方法発明において、変異型タンパク質を被検細胞に導入するには、これら変異型タンパク質の構造や機能を変更することなく、かつ薬理学的に許容される担体溶液にこの変異型タンパク質を混合し、例えばマイクロインジェクション法により細胞内に導入する。あるいは、最近開発された脂質による細胞内導入法(BioPORTER(Gene Therapy Systems社、米国)、Chariot(Active Motif社、米国)等)を採用すれば、生物個体内の生細胞に変異型タンパク質を導入し、その作用をインビボで発揮させることもできる。
また、変異型ポリヌクレオチドを細胞内に導入する場合には、変異型ポリヌクレオチドを保有する構築体(発現ベクター)を、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など公知の方法で細胞に導入する方法を採用することができる。また、発現ベクターを中空ナノ粒子、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等に組み込むことによって、遺伝子治療の手法により変異型ポリヌクレオチドを生体内に導入発現させることもできる。
第31発明および第32発明は、変異型ヒストンH3タンパク質または変異型ヒストンH4を発現する変異酵母細胞の集合である。これらの酵母細胞集団は、それぞれが異なるアミノ酸点変異を有する変異型タンパク質を発現するため、ヒストンH3またはヒストンH4に作用を及ぼす因子(公知の因子や、前記の第27〜30発明で同定された新規因子)が、ヒストンのどのアミノ酸残基に対して作用するかを特定するための系(第33発明、第34発明)として有用である。そして、このような作用点の解明は、特定の動物種に対してのみ作用する薬剤(例えば細胞毒性薬剤)を選択するために有効である。すなわち、ヒストンは前記のとおりに種間を越えて高度に保存されているが、図1、図2に示したように、酵母(sce)ヒストンは、ヒト(hum)ヒストンに比べて、アスペルギウス(asp)、カンジダ・アルビカンス(cal)等の菌類のヒストンとの相同性が高い。従って、例えば、ヒトヒストンに特有のアミノ酸残基に置換した酵母ヒストンの毒性薬剤感受性が低下したとすれば、この薬剤は、ヒト細胞には影響を与えず、酵母や菌類に対してのみ薬効を示すものと判断することができる。
第35の発明は、ヒトおよび酵母細胞には作用せず、カンジダ菌の染色体クロマチン構造、遺伝子発現形態または細胞増殖に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法である。この第35発明では、配列番号2の第48位GlyがAla残基に置換されている変異型ヒストンH4(G48A)を発現するヒストンH4変異酵母細胞を使用する。すなわち、図2にも示したように、野生型出芽酵母のヒストンH4の22番目から53番目の32アミノ酸の配列はヒトヒストンH4の該当領域のアミノ酸配列と同一である。従って野生型出芽酵母ヒストンH4(配列番号2)の22番目から53番目の32アミノ酸配列領域は、出芽酵母型であると同時にヒト型でもある。一方、第48位GlyをAlaに置換した変異型ヒストンH4(G48A)は、2番目から53番目までの領域においてカンジダヒストンH4のアミノ酸配列と同一であり、当該領域においては野生型出芽酵母型ではなく、カンジダ型である。そして、このヒストンH4変異酵母(G48A)は、実施例4および表2に示したように、野生型に比べて1000倍のSPT表現型を示した。このことは、少なくとも22-53領域がヒト型の出芽酵母(野生型株)と比べて、カンジダ型のヒストンH4変異酵母(G48A)はゲノムDNAの細胞内高次構造または染色体のクロマチン構造が異なることを示す。従って、このカンジダ型のヒストンH4変異酵母(G48A)に候補因子を導入し、そのSPT表現型や細胞増殖活性などを調べることによって、ヒトおよび出芽酵母には作用せず、カンジダ菌のみに作用する(例えば、カンジダ菌を殺傷する)因子を特定することができる。
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
実施例1
野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、かつ酵母細胞ゲノムの必須遺伝子プロモーター領域にδ配列が挿入されており、変異型ヒストンH3タンパク質と野生型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有するヒストンH3変異酵母細胞を作成した。変異型ヒストンH3タンパク質は、野生型ヒストンH3タンパク質のアミノ酸配列を示した配列番号1の各アミノ酸残基をそれぞれAla残基に置換した変異型ヒストンH3タンパク質である。
具体的には、Kunkel法に従って配列番号1のアラニン残基以外の各アミノ酸残基をそれぞれアラニン残基に置換した変異型ヒストンH3と野生型ヒストンH4をそれぞれコードするポリヌクレオチドを保有するプラスミドを酵母細胞MSY748株に導入した。この株をA株と呼ぶ。A株を、1mg/mlの濃度の5-Fluorootic Acid(5-FOA)および0.05mg/mlの濃度のウラシルを含有する寒天プレート上に塗布した。出芽酵母内ではURA3遺伝子の働きがあると、5-FOAは致死的な中間体に代謝されることから、上記プレート上では生育することができない。一方URA3遺伝子の働きがない出芽酵母は細胞内でウラシルを生合成できないが、上記プレートのように外来的にウラシルを添加すればプレート上で生育することができる。A株はゲノム中のURA3遺伝子を機能喪失しているものの、H3/H4野生型プラスミドがURA3遺伝子を保有しているため、H3/H4野生型プラスミドが細胞内に保持されている限り上記プレート上では生育できない。しかし、プラスミドは一般に親細胞の分裂と共に娘細胞に分配されるが、低頻度で片方の娘細胞に分配されず宿主細胞から脱落することが知られている。A株の場合でも同様の現象が確認され、上記プレート上に塗布した場合でも一部のコロニーが生育した。この株をB株と呼ぶ。B株はゲノム中のヒストンH3遺伝子およびヒストンH4遺伝子を欠損しており、アラニン点変異を含むヒストンH3タンパク質および野生型ヒストンH4タンパク質をコードする遺伝子をクローニングしたプラスミドを保有する株である。
以上のとおりにして、ヒストンH3の特定の1アミノ酸だけを選択的にアラニンに置換したヒストンH3変異酵母細胞119株を樹立した。
実施例2
野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、かつ酵母細胞ゲノムの必須遺伝子プロモーター領域にδ配列が挿入されており、野生型ヒストンH3と変異型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有するヒストンH4変異酵母細胞を作成した。変異型ヒストンH4が、野生型ヒストンH4のアミノ酸配列を示した配列番号2のアラニン残基以外の各アミノ酸残基をそれぞれアラニン残基に置換した以外は、実施例1と同一の方法で作成した。
実施例3
実施例1で作成したヒストンH3変異酵母細胞を用いて、SPT表現型の変化を調べた。
具体的には、実施例1で作成したヒストンH3変異酵母細胞と野生型出芽酵母をそれぞれ培地上で生育させ、遠心分離操作および水による洗浄操作より培地成分を除去した株をそれぞれヒスチジンを含有する培地およびヒスチジンを含有しない培地上に塗布した。塗布の方法は、あらかじめ顕微鏡観察により計数した細胞濃度に基づいて、1スポット当たり約10万細胞、約3万細胞、約1万細胞、約3000細胞、約1000細胞、約300、約100細胞、約30細胞になるように段階的に希釈し、それぞれ5μlのスポットとして塗布した。このプレートを30度で約2日〜4日間保温し、各培地上での生育状況を観察した(Hartzog GA et al. Mol Cell Biol. 16:2848-2856, 1996参照)。生育状況の一例は図3に示したとおりである。この図3に示した例では、第59位GluをAlaに置換(E59A)したH3変異酵母はヒスチジンを含有しない培地でも良好に生育し(右図)、SPT表現型を示している。
作製した119種類のH3変異酵母細胞のうち、SPT表現型を示した変異酵母のアミノ酸置換部位と、野生型に対するSPT表現型の倍率(−Hisプレートでの生育の倍率)は表1に示したとおりである。作成した119種類のヒストンH3変異酵母細胞のうち、表1に示した33種類の変異型ヒストンH3を発現する酵母細胞が、野生型酵母細胞に比べて、少なくとも3倍以上のSPT表現型の変化を示した。
これら33種類のヒストンH3変異酵母細胞は、変異型ヒストンH3の発現によりヌクレオソームおよび染色体クロマチン構造を変化させることによって、遺伝子発現形態を改変していることが確認された。従って、これらのヒストンH3変異酵母細胞を使用することによって、遺伝子発現形態に影響を及ぼす因子を探索することが可能であることが確認された。また、各々の変異型ヒストンH3またはそれらを個々にコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、細胞の遺伝子発現形態を改変することが可能であることが確認された。
Figure 0003868985
実施例4
実施例2で作成したヒストンH4変異酵母細胞を用いて、実施例3と同様の方法によりSPT表現型の変化を調べた。生育状況の一例は図4および図5に示したとおりである。図4では、第35位ArgをAlaに置換した変異型ヒストンH4を発現するR35A変異酵母細胞が、また図5ではR36A変異酵母、S47A変異酵母、G48A変異酵母、L49A変異酵母がSPT表現型を示している。
作製した96種類のH4変異酵母細胞のうち、SPT表現型を示した変異酵母のアミノ酸置換部位と、野生型に対するSPT表現型の倍率(−Hisプレートでの生育の倍率)は表2に示したとおりである。作成した96種類のヒストンH4変異酵母細胞のうち、表2に示した14種類の変異型ヒストンH4を発現する酵母細胞が、野生型酵母細胞に比べて、少なくとも3倍以上のSPT表現型の変化を示した。
これら14種類のヒストンH4変異酵母細胞は、変異型ヒストンH4の発現によりヌクレオソームおよび染色体クロマチン構造を変化させることによって、遺伝子発現形態を改変していることが確認された。従って、これらのヒストンH4変異酵母細胞を使用することによって、遺伝子発現形態に影響を及ぼす因子を探索することが可能であることが確認された。また、各々の変異型ヒストンH4またはそれらを個々にコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、細胞の遺伝子発現形態を改変することが可能であることが確認された。
また図5に示したG48A変異酵母は、配列番号2の2番目から53番目までの領域においてカンジダヒストンH4のアミノ酸配列と同一であり、このG48A変異酵母が野生型に比べて1000倍のSPT表現型を示したことから、カンジダ型のヒストンH4変異酵母(G48A)はゲノムDNAの細胞内高次構造または染色体のクロマチン構造が野生型(またその22-53アミノ酸領域はヒト型)とは異なっていることが確認された。従って、このカンジダ型のヒストンH4変異酵母(G48A)は、野生型の出芽酵母(そして恐らくはヒト)には作用せず、カンジダ菌のみに作用する因子を特定するために使用可能であることが確認された。
Figure 0003868985
実施例5
実施例1および2で作成したヒストンH3変異酵母細胞およびヒストンH4変異酵母細胞を使用して、6AUに対する各細胞の感受性を調べた。
具体的には、実施例1および2で作成したヒストンH3変異酵母細胞、ヒストンH4変異酵母細胞、野生型酵母細胞をそれぞれ培地上で生育させ、遠心分離操作および水による洗浄操作により培地成分を除去した株をそれぞれ1mg/mlの濃度の6AUを含有する培地および6AUを全く含有しない培地上に塗布した。塗布の方法は、あらかじめ顕微鏡観察により計数した細胞濃度に基づいて、1スポット当たり約10万細胞、約3万細胞、約1万細胞、約3000細胞、約1000細胞、約300細胞、約100細胞、約30細胞になるように段階的に希釈し、それぞれ5mlのスポットとして塗布した。このプレートを30度で約2日〜4日間保温し、各培地上での生育状況を観察した。
その結果、試験した全てのヒストンH3変異酵母細胞では6AUに対して有意に高い感受性を示した変異酵母株は得られなかった。一方、ヒストンH4変異酵母細胞の中には、6AUに対して高い感受性を示す変異酵母株が2株観察された。その結果の例を図6に示す。97位LeuをAla残基に置換した変異型ヒストンH4(L97A)を発現する変異酵母細胞が6AUに対して有意に高い感受性を示した。
この図6に例示されるようなH4変異酵母細胞のアミノ酸置換部位と、その6AU感受性増強の程度は表3に示したとおりである。これらの変異型ヒストンH4を発現する酵母細胞が、野生型酵母細胞に比べ3倍以上の6AU感受性を示した。
これらのヒストンH4変異酵母細胞は、変異型ヒストンH4の発現によって、6AUに対する感受性を増強させていることが確認された。6AUは細胞のRNA転写およびDNA複製の阻害剤であることから、これらのヒストンH4変異酵母細胞は、6AUと同様の作用を有する因子を高感度で探索するための系として有用であることが確認された。また、それらの変異型ヒストンH4またはそれらをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、細胞の6AUまたは類似因子に対する感受性を増強することが可能であることが確認された。
Figure 0003868985
実施例6
実施例1で作成したヒストンH3変異酵母細胞を使用して、TBZまたはBenomylに対する各細胞の感受性を調べた。
具体的には、実施例1で作成したヒストンH3変異酵母細胞と野生型出芽酵母をそれぞれ培地上で生育させ、遠心分離操作および水による洗浄操作により培地成分を除去した株をそれぞれ25μg/mlの濃度のTBZを含有する培地、10μg/mlの濃度のBenomylを含有する培地、および薬剤を含有しないDMSO含有培地上に塗布した。なお、薬剤を含有しない培地においてもTBZおよびBenomylの水溶化のために用いた溶媒のDMSOを等量含有させた。塗布の方法は、あらかじめ顕微鏡観察により計数した細胞濃度に基づいて、1スポット当たり約10万細胞、約3万細胞、約1万細胞、約3000細胞、約1000細胞、約300細胞、約100細胞、約30細胞になるように段階的に希釈し、それぞれ5μlのスポットとして塗布した。このプレートを30度で約2日〜4日間保温し、各培地上での生育状況を観察した。図7は左がDMSO含有培地、中がTBZ含有培地、右がBenomyl含有培地における生育状況の一例である。この図7に示した例では、41位TyrをAlaに置換した変異型ヒストンH3(Y41A)、42位LysをAlaに置換した変異型ヒストンH3(K42A)を発現する変異酵母細胞が、TBZおよびBenomylに対する感受性を増強させている。
作製した119種類のH3変異酵母細胞のうち、TBZおよびBenomylに対して感受性を増強した変異酵母のアミノ酸置換部位と、感受性増強の程度は表4(TBZ)および表5(Benomyl)に示したとおりである。作成した119種類のヒストンH3変異酵母細胞のうち、表4および表5に示した7種類の変異型ヒストンH3を発現する酵母細胞が、野生型酵母細胞に比べ、TBZおよびBenomylに対して少なくとも3倍以上の感受性を示した。
これら7種類のヒストンH3変異酵母細胞は、変異型ヒストンH3の発現によって、TBZおよびBenomylに対する感受性を増強させていることが確認された。TBZおよびBenomylは細胞分裂阻害剤であることから、これらのヒストンH3変異酵母細胞は、TBZおよびBenomylと同様の作用を有する細胞分裂阻害因子を高感度で探索するための系として有用であることが確認された。また、各々の変異型ヒストンH3またはそれらを個々にコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、細胞分裂阻害因子に対する感受性を増強することが可能であることが確認された。
Figure 0003868985
Figure 0003868985
実施例7
実施例2で作成したヒストンH4変異酵母細胞を使用し、実施例6と同様にしてTBZおよびBenomylに対する各細胞の感受性を調べた。その結果、図8に示した変異酵母株(97位LeuがAlaに置換された変異型ヒストンH4(L97A)を発現する酵母株)および99位GlyがAlaに置換された変異型ヒストンH4(G99A)を発現する酵母株が、TBZおよびBenomylに対して、野生型酵母株よりも300倍以上の感受性を示した(表6、7)。
この実施例7に代表されるヒストンH4変異酵母細胞は、TBZおよびBenomylと同様の作用を有する細胞分裂阻害因子を高感度で探索するための系として有用であることが確認された。また、それらの変異型ヒストンH4またはそれらをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、細胞分裂阻害因子に対する感受性を増強することが可能であることが確認された。
なお、この実施例7に代表されるヒストンH4変異酵母細胞は、実施例5で得られた6AUに対して高い感受性を有する変異酵母株と同一であり、これらのヒストンH4変異酵母細胞は、作用の異なる2種類の薬剤(6AUと、TBZおよびBenomyl)に対して感受性が増強した変異酵母株である。
Figure 0003868985
Figure 0003868985
実施例8
実施例1で作成したヒストンH3変異酵母細胞を使用して、各細胞の生育の程度を調べた。
具体的には、実施例1で作成したヒストンH3変異酵母細胞と野生型酵母細胞をそれぞれ培地上で生育させ、遠心分離操作および水による洗浄操作により培地成分を除去した株を通常酵母が生育可能な栄養豊富寒天培地(5FOA培地)上に塗布した。このプレートを30度で48時間保温し、培地上での生育状況を観察した。
作成した119種類のヒストンH3変異酵母細胞のうち、表8に示した5種類の変異型ヒストンH3を発現する酵母細胞が、致死または野生型細胞株に比べて生育不良を示した。
これら5種類のヒストンH3変異酵母細胞は、変異型ヒストンH3の発現によって、生育の程度を有意に低下させていることが確認された。従って、これらのヒストンH3変異酵母細胞は、細胞の生育(細胞増殖)に影響を及ぼす因子を高感度で探索するための系として有用であることが確認された。また、各々の変異型ヒストンH3またはそれらを個々にコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、細胞の生育(細胞増殖)を抑制することが可能であることが確認された。
Figure 0003868985
実施例9
実施例2で作成したヒストンH4変異酵母細胞を使用し、実施例8と同様にして生育(細胞増殖)の程度を調べた。生育状況の一例は図9に示したとおりである。この図9に示した例では、100位PheをAlaに置換した変異型ヒストン(F100A)を発現する酵母株が良好に生育するのに対し、99位GlyをAlaに置換した変異型ヒストン(G99A)を発現するヒストンH4変異酵母細胞は生育不良(細胞増殖不良)を示した。
作成した96種類のヒストンH4変異酵母細胞のうち、表9に示した2種類の変異型ヒストンH4を発現する酵母細胞が、致死または野生型細胞株に比べて生育不良(細胞増殖不良)を示した。
これら2種類のヒストンH4変異酵母細胞は、変異型ヒストンH4の発現によって、生育(細胞増殖)の程度を有意に低下させていることが確認された。従って、これらのヒストンH4変異酵母細胞は、細胞増殖に影響を及ぼす因子を高感度で探索するための系として有用であることが確認された。また、各々の変異型ヒストンH4またはそれらを個々にコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、細胞の増殖を抑制することが可能であることが確認された。
Figure 0003868985
ヒストンH3の種間の配列相同性を示したアミノ酸配列図である。「.」は最上段のアミノ酸と同一であること、「*」は最上段に示したアミノ酸が全種で保存されていること、数字はアミノ酸配列のN端からの位置を示す。sceはパン酵母(出芽酵母)、humはヒト、aspは真菌アスペルギウス、calは真菌カンジダ、tcrはトリパノゾーマである。 ヒストンH4の種間の配列相同性を、図1と同様に示したアミノ酸配列図である。 実施例3におけるヒストンH3変異酵母細胞の94時間培養後の生育状況である。左図はロイシンを含有しない培地、右図はロイシンとヒスチジンを含有しない培地における酵母細胞の生育状況である。A〜Hは1μl中の細胞数(A:約20,000、B:約6,000、C:約2,000、D:約600、E:約200、F:約60、G:約20、H:約6)である。細胞は、1:DY2864株(SPTを示さないコントロール)、2:DY2864株esal-L327S(SPTを示すコントロール)、3,4:H3/H4野生型プラスミド導入株(SPTを示さないコントロール)、5,6:S57A変異酵母、7,8:T58A変異酵母、9,10:E59A変異酵母、11,12:L60A変異酵母である。 実施例4におけるヒストンH4変異酵母細胞の64時間培養後の生育状況である。左図はロイシンを含有しない培地、右図はロイシンとヒスチジンを含有しない培地における酵母細胞の生育状況である。細胞数(A〜H)は図3と同一。細胞は、1-4は図3と同一であり、5,6:K31A変異酵母、7,8:P32A変異酵母、9,10:R35A変異酵母である。 実施例4におけるヒストンH4変異酵母細胞の64時間培養後の生育状況である。左図はロイシンを含有しない培地、右図はロイシンとヒスチジンを含有しない培地における酵母細胞の生育状況である。細胞数(A〜H)は図3と同一。細胞は、1-4は図3と同一であり、5,6:R36A変異酵母、7,8:S47A変異酵母、9,10:G48A変異酵母、11,12:L49A変異酵母である。 実施例5におけるヒストンH4変異酵母細胞の64時間培養後の生育状況である。左図は6AUを含有しない培地、右図は6AU(1mg/ml)を含有する培地における酵母細胞の生育状況である。細胞数(A〜H)は図3と同一。細胞は、1:W303株(野生型酵母株;6AU感受性を示さないコントロール)、2:W303-cia(6AU感受性を示すコントロール)、3,4: H3/H4野生型プラスミド導入株(6AU感受性を示さないコントロール)、5,6:Q93A変異酵母、7,8:R95A変異酵母、9,10:T96A変異酵母、11,12:L97A変異酵母である。 実施例6におけるヒストンH3変異酵母細胞の64時間培養後の生育状況である。左からDMSO含有培地、DMSO+TBZ(25μl/ml)含有培地、DMSO+Benomyl(10μl/ml)含有培地における酵母細胞の生育状況である。細胞数(A〜H)は図3と同一。細胞は、1:W303株(野生型酵母株;コントロール)、2:WTH-1D株(TBZおよびBenomylに感受性を示すコントロール)、3,4: H3/H4野生型プラスミド導入株(TBZおよびBenomylに感受性を示さないコントロール)、5,6:R40A変異酵母、7,8:Y41A変異酵母、9,10:K42A変異酵母、11,12:P43A変異酵母である。 実施例7におけるヒストンH4変異酵母細胞の64時間培養後の生育状況である。左からDMSO含有培地、DMSO+TBZ(25μl/ml)含有培地、DMSO+Benomyl(10μl/ml)含有培地における酵母細胞の生育状況である。細胞数(A〜H)は図3と同一。細胞は、1-4は図7と同一、5,6:Q93A変異酵母、7,8:R95A変異酵母、9,10:T96A変異酵母、11,12:L97A変異酵母である。 実施例9におけるヒストンH4変異酵母細胞の5FOA培地上での48時間培養後の生育(細胞増殖)の状況である。12時および3時方向はG99A変異酵母、6時および9時方向はF100A変異酵母である。

Claims (5)

  1. 野生型ヒストン遺伝子H3およびH4を欠失し、変異型ヒストンH3と野生型ヒストンH4とを発現するポリヌクレオチド構築物を保有する酵母細胞であって、変異型ヒストンH3が、野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第5位Gln、第41位Tyr、第42位Lys、第44位Gly、第45位Thr、第49位Argまたは第52位Argのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3であり、Thiabendazole(TBZ)およびMethyl 1-(butylcarbamoyl)-2-benzimidazolecarbamate (Benomyl)に対して野生型酵母よりも高い感受性を示すヒストンH3変異酵母細胞。
  2. 野生型ヒストンH3のアミノ酸配列を示した配列番号1における第5位Gln、第41位Tyr、第42位Lys、第44位Gly、第45位Thr、第49位Argまたは第52位Argのいずれか1個のアミノ酸残基がAla残基に置換されている変異型ヒストンH3。
  3. 請求項2の変異型ヒストンH3をコードするポリヌクレオチド。
  4. 酵母細胞の細胞分裂阻害剤に対する感受性を増強させる方法であって、請求項2の変異型ヒストンH3、または請求項3のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法。
  5. 酵母細胞の細胞分裂に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であって、請求項1の変異酵母細胞に候補因子を導入する工程を含み、変異酵母細胞の死亡率を変化させる候補因子を目的因子として同定することを特徴とする方法。
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