JP3868379B2 - 交互吸着膜を利用したビリルビンセンサー - Google Patents

交互吸着膜を利用したビリルビンセンサー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体試料を分析する技術分野に属し、特に、尿などに含まれるビリルビンを検知するためのビリルビンセンサーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ビリルビンは、ヘモグロビンの分解産物であり、胆汁色素の主成分である。尿中に含まれるビリルビンは、ストレス(生体内の緊張状態)のマーカーと見做されており、ストレスに応じてその量が増すことが知られている。また、肝機能障害があると血中のビリルビン濃度が高くなり皮膚や粘膜が黄色を帯び、いわゆる黄疸になるとともに、尿中のビリルビンも増加する。したがって、ビリルビンの量で肝機能障害の程度を知ることもできる。
【0003】
現在、ビリルビンの測定に主として用いられている方法は、ビリルビンをジアゾ試薬と反応させて生成したアゾ色素を比色法により分析するものである。しかし、この比色法は、ビリルビンの濃度や量に関するデータを直ちに与えるものではなく、機器の測定可能濃度範囲内で別途標準溶液を作製し、それに従って被検試料を稀釈してはじめて測定を行なうことができるなど、煩雑で時間が掛かるのが難点であった。
【特許文献1】
特開2001−49006号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、簡便にビリルビンを検知することのできる新しい技術を確立することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先に、新しいタイプの機能性薄膜として、従来から知られた交互吸着法のように静電的相互作用によりポリマー分子を逐次積層させるのではなく、らせんポリマーを利用しこのらせんポリマーと低分子化合物とを共有結合により結合させ交互に複数積層させた交互吸着膜(交互積層膜)を案出している(特開2001−49006号公報:特許文献1)。本発明は、検討を重ねた結果、このような交互吸着膜において特定の低分子化合物を用いれば、上述の目的を達成し得るビリルビンセンサーが得られることを発見し、本発明を導き出したものである。
【0006】
かくして、本発明に従えば、少なくとも2個のアミノ基を有する分子構造から成る芳香族アミンと、側鎖にエステル基を有する分子構造から成るらせんポリマーとが、基板上に、前記アミノ基と前記エステル基の共有結合を介して交互に複数層積層された交互吸着膜から構成されていることを特徴とするビリルビン検知用薄膜が提供される。
【0007】
本発明は、さらに、以上のような薄膜を用いて生体試料中のビリルビンを検知する方法であって、
(1)前記薄膜をジアゾ化反応に供する工程、および
(2)ジアゾ化後の薄膜を生体試料中に浸漬して、紫外可視吸収スペクトルを測定するか、または水晶発振子による振動数変化を測定する工程、を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のビリルビンセンサーを構成する交互吸着膜(交互積層膜)の素材と調製法については、既述の特開2001−49006号公報(特許文献1)に詳述されているが、以下に本発明の実施の形態に関連する部分に沿って説明する。
【0009】
らせんポリマー
本発明のビリルビンセンサーにおいて用いられるらせんポリマーとは、分子全体としてらせん構造を呈し、且つ、後述するような芳香族アミンと反応して共有結合を形成し得るようなエステル基を側鎖に有するような分子構造から成る高分子化合物である。取扱いや入手が簡単であり、所望の薄膜の設計や解析が容易であるという点から、本発明において用いられるのに好ましいらせんポリマーは、ポリアミノ酸(ポリペプチド)であるが、この他に、ポリ乳酸、核酸類、コラーゲン、多糖類なども使用可能である。これらのらせんポリマーの側鎖に存するエステル基は特に限定されるものではないが、一般に、−COOCH3または−COOC25で表わされるものである。本発明において用いられる特に好ましいらせんポリマーとしては、側鎖にエステル基(−COOCH3)を有するポリアミノ酸であるポリ(γ−メチル−L−グルタメート)(PMLG)が挙げられる。
【0010】
芳香族アミン
本発明のビリルビン検知用薄膜(ビリルビンセンサー)は、上記のようならせんポリマーに、少なくとも2個のアミノ基を有する分子構造から成る芳香族アミンを組み合わせて交互吸着膜を形成したものである。ここで、少なくとも2個のアミノ基を有する分子構造から成る芳香族アミンとは、分子構造において、通常、少なくともその両端部または周端部のそれぞれにアミノ基を有するような芳香族化合物であり、図1に例示されるような化合物を挙げることができる。本発明で用いられる芳香族アミンの特に好適な具体例の1つは、パラフェニレンジアミン(PPDA)である。なお、図1に示す化学構造式においては、慣用的な表現法に従い、炭素原子や水素原子を省略していることがある。
【0011】
ビリルビン検知用薄膜の調製
本発明のビリルビン検知用薄膜を調製するには、上述したようならせんポリマーの溶液に基板を浸漬し、次に、この基板を上述したような芳香族アミンの溶液に浸漬するか、あるいは、上述したような芳香族アミンの溶液に基板を浸漬し、次に、この基板を上述したようならせんポリマーの溶液に浸漬する。その後、交互に、らせんポリマー溶液に浸漬する操作と芳香族アミン溶液への浸漬する操作を所望の回数繰り返せばよい。
【0012】
このような浸漬操作を行なうためのらせんポリマーの溶液および芳香族アミンの溶液用の溶媒は、それぞれ、らせんポリマーおよび芳香族アミンの溶解性、ならびにらせんポリマーの側鎖にあるエステル基と芳香族アミンとの反応性を考慮して、有機溶媒、水、または有機溶媒/水の混合溶媒から適宜選ばれる。例えば、PMLGはエチレンジクロライド(EDC)溶液、PPDAはエタノール溶液とするのが好ましい。
【0013】
本発明のビリルビン検知用薄膜を調製するに当って用いられるらせんポリマーの溶液の濃度は、従来の交互吸着法の浸漬操作において用いるポリマー溶液よりも低濃度でよく、一般に、従来法における濃度が数100mM〜数10mM程度であったのに対し、本発明におけるらせんポリマーの溶液の濃度は0.1〜1mM程度である。
【0014】
本発明のビリルビン検知用薄膜の基板(担体)を構成する材料としては、後述のビリルビン検知手段として紫外可視吸収スペクトルの測定を行なう場合には、透明な材料、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルムなどが好ましく、また、ビリルビン検知手段として水晶発振子(QCM: Quartz Crystal Microbalance)による振動数変化を測定する場合には、金属、例えば、金、銀などが好ましい。
【0015】
これらの基板は、らせんポリマー溶液または芳香族アミン溶液への最初の浸漬操作により、それらのらせんポリマーまたは芳香族アミンが吸着され得るように適当なカップリング剤で表面処理しておく。例えば、基板としてガラスを用いるような場合には、3−アミノプロピルトリエトキシシランのようなカップリング剤で表面処理することにより、PMLGのようならせんポリマーを吸着することができる。また、金などの金属を基板とするような場合には、3−メルカプトプロピオン酸のような含イオウカップリング剤で表面処理しておけば、PPDAのような芳香族アミンを吸着させることができる。
【0016】
以上のようにして基板に最初の芳香族アミン(またはらせんポリマー)を吸着させた後、らせんポリマー溶液と芳香族アミン溶液への交互浸漬を繰り返すことにより、らせんポリマーの側鎖にあるエステル基と芳香族アミンのアミノ基との間にエステル・アミド交互反応が起こり、それにより生じた共有結合を介して結合されたらせんポリマーと芳香族アミンの層が交互に複数層積層された交互吸着膜が得られる。以上のようにして調製される薄膜は、従来の交互吸着法におけるように過剰吸着によりポリマーが積層されるのではなく、らせんポリマーが、そのらせん構造の側部に存在するエステル基により芳香族アミンと共有結合しながら該芳香族アミンを介在させて単分子レベル(すなわち、らせんポリマーのらせんのピッチに相当するポリマー1層の単位)で逐次積層されることになるので精密な膜厚制御を行なうことができる。このことは、水晶発振子(マイクロバランス)による測定によっても確認することができる。かくして、積層数(浸漬回数)に応じて膜厚を容易に制御することができ、一般に数nm〜数十nm程度の厚さの薄膜を得ることができる。
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明のビリルビン検知用薄膜において、芳香族アミンは、らせんポリマーの層間の架橋剤として機能している。すなわち、芳香族アミンに存する少なくとも2個のアミノ基のうちの1つが、下層のポリマー層を形成しているらせんポリマーの側鎖と反応(但し、最初の浸漬操作に芳香族アミン溶液が用いられた場合は、基板上のカップリング剤と反応)するとともに、残りのアミノ基が次の(上層の)ポリマー層と成るらせんポリマーの側鎖のエステル基と反応する。
【0018】
本発明において用いられる芳香族アミンは、さらに、後述するジアゾ化反応に供されることにより、ジアゾ基が導入され得るものであるので、交互吸着膜が調製された後も、未反応のアミノ基が残存していなければならない。したがって、交互吸着膜の調製に際しては、この点を考慮してらせんポリマー溶液の濃度と芳香族アミンの濃度を設計することが必要であるが、通常の浸漬操作では全ての芳香族アミンの全てのアミノ基がらせんポリマーの側鎖のエステル基と反応するわけではなく、一部がらせんポリマーと反応し、次のステップでジアゾ化に用いることのできるアミノ基を有した芳香族アミンが残る。例えば、らせんポリマーとしてPMLG、芳香族アミンとしてPPDAを用いる場合、PMLGのEDC溶液として0.1〜1mMに対して、PPDAのエタノール溶液として100mM程度の濃度で浸漬操作を行なえば、交互吸着膜調製後もジアゾ化反応を受けるのに充分な量の未反応のアミノ基が芳香族アミンに残存している。
【0019】
ジアゾ化反応
本発明に従いビリルビンを検知するには、上述のようにして調製した交互吸着膜をジアゾ化反応に供する。すなわち、交互吸着膜(芳香族アミンの未反応アミノ基が残存している)を、よく知られているように、低温(0 〜10℃)で塩酸酸性下に亜硝酸と反応させることによってジアゾ基を導入する。これによって、ジアゾニウム塩が交互吸着膜内に導入された固体状(膜状)のジアゾ試薬が得られることになる(図2参照)。
このジアゾ化反応は、一般に、ビリルビンを検知する直前に行なうが、必要に応じて、ジアゾ化反応を受けた後の交互吸着膜を本発明に従うビリルビン検知用薄膜として提供することもできる。
【0020】
生体試料中のビリルビンの検知
本発明に従えば、上記のようなジアゾ化反応後の薄膜(交互吸着膜)を目的の生体試料中に浸漬することによって該試料中のビリルビンを検知することができる。すなわち、ビリルビンはジアゾ試薬と反応して2分子のアゾ色素を生成することが知られているが、本発明においては、ビリルビンは、薄膜中に固定化されたジアゾ試薬(未反応アミノ基がジアゾ化された芳香族アミンに由来)と反応し該試薬と結合するのでその変化(重量変化)を水晶発振子または分光法(紫外可視吸収スペクトル測定)により検知することができる(図2参照)。
【0021】
ここで、水晶発振子とは、薄い水晶板の両側に金属電極を蒸着したものであり、QCM(Quartz Crystal Microbalance)としても知られている。この装置を用いれば、下記の式に従い、その振動数変化により金属電極表面上に固定化された物質の重量をナノグラムの精度で測定することができる。
−ΔF/F0=Δm/ρAd
ここで、F0は基本振動数、ΔFは振動数変化、Δmは電極上の物質の重量、ρは水晶の密度である。Aは電極面積、dは水晶の厚さである。この式を用いると、9MHz、AT−cutの水晶発振子では1ngの物質が電極上に付着すると約1Hz振動数が減少することがわかる。
【0022】
また、分光法(紫外可視吸収スペクトル測定)によりビリルビンを検知する場合には、通常、445nm付近の吸収スペクトルを測定する。この445nmは、ビリルビンのC=0に由来するピークであり、本発明に従う交互吸着膜内に固定されたジアゾ試薬と反応してこれに結合するビリルビンの量が大きくなるに従いその吸光度が大きくなる。
【0023】
交互吸着膜に結合したビリルビンを紫外可視吸収スペクトル測定または水晶発振子(QCM)による振動数変化測定を介して検知する本発明の方法は、ビリルビンの濃度ではなくその量(重量)を検知するものであるが、既知濃度の試料と同一条件で測定を行ない比較することにより、濃度を知ることもできる。また、同一被験者からの試料を同一条件で測定してその相対変化を追跡することにより、生体内の異常や障害などを調べることもできる(例えば、尿中にビリルビン量の相対変化からストレスの程度や肝障害の有無を知ることができる)。
交互吸着膜から成るビリルビン検知用薄膜を用いる本発明の方法は、この薄膜を目的とする生体試料に浸漬して水晶発振子(QCM)測定または分光測定を行なうことにより、直ちに当該生体試料中のビリルビンの絶対量に関する知見が得られ、特に煩雑な操作も必要とせず簡便である。
【0024】
さらに、積層回数(浸漬回数)により自由に膜中の反応基量を制御することができ、用途に応じて高感度のビリルビンセンサーを得ることができ、特に、血中に比べて少量(低濃度)の尿中のビリルビンを検知するのに好適である。
また、本発明でビリルビンセンサーとして用いられる薄膜は、らせん構造を有するので剛直なポリマーが共有結合により三次元的に架橋されて固定化されているので、化学的および構造的に安定である。そして、安価に大量に作製できる交互吸着膜を利用することで、高速に測定可能なディスポーザブル(使い捨て)ビリルビンセンサーの開発も期待される。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の特徴を更に具体的に示すため実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1:分光法を用いたビリルビンの検知用交互吸着膜の調製
基板となるマイクロカバーガラスをピラニア溶液(H22:H2SO4=1:3で調整したもの)で洗浄し、さらに、超純水洗浄およびソニック洗浄を行なった後、窒素乾燥した。次に、3−アミノプロピルトリエトキシシランのトルエン溶液(1mM)に24時間浸漬した後、トルエン溶液で洗浄を繰り返した。
このガラス基板を平均重合度1,000のPMLGのEDC溶液(1.0mM)中に30分間浸し、3−アミノプロピルトリエトキシシランとPMLGを反応させた後、EDC溶液で洗浄を繰り返した。次にPPDAのエタノール溶液(100mM)中に60分間浸し、PMLGとPPDAを反応させた。エタノール溶液で洗浄を繰り返す。このPMLG溶液浸漬/PPDA溶液浸漬操作を繰り返し、目的回数まで積層を重ねた。
【0026】
ジアゾ化
0.01N HClを2倍に薄めて氷浴中で冷却した(サンプル瓶A)。亜硝酸ナトリウム0.03molを超純水10mlで調製した(サンプル瓶B)。一方、クロロホルム10ml中にビリルビン1mMを溶解させてビリルビン溶液を調製した。調製後は氷浴中で10℃以下に冷却しておいた。
氷浴中にサンプル瓶Aとサンプル瓶Bを浸漬し、10℃以下に冷却した。上記のように調製した交互吸着膜を新たなサンプル瓶Cに入れ、表面が浸るようにサンプル瓶A中のHClを必要量加えた後、サンプルA、Cともに氷浴中に5分間静置した。氷浴からサンプル瓶Cを取出し、このサンプル瓶Cの中にサンプル瓶Bの亜硝酸ナトリウム水溶液を0.3ml加えた。サンプル瓶B、Cともに氷浴に戻し、サンプル瓶Cは反応が十分に進行するように氷浴中で10分間よく攪拌した。このようにして得られたジアゾ化後の交互吸着膜(ガラス基板製)を引き上げ、氷水で洗浄した。
【0027】
スペクトル測定
先に調製していた氷浴中のビリルビン溶液1mM中にジアゾ化した交互吸着膜を30分間浸漬した(浸漬中も氷浴内で保冷した)。ジアゾ化交互吸着膜を取出し、クロロホルムで洗浄を行なった後、窒素乾燥を行ない、紫外可視吸収スペクトル測定を行なった。測定結果を図3に示す。
図3から理解されるように積層量の増加とともにピーク値の445nmの吸収が増加している。この445nmはビリルビンのC=0に由来するピークである。なお、図4には、BG(バックグランド)を合わせた状態で、交互吸着膜内の未反応アミノ基に対してジアゾ化反応を行なわずにビリルビンを吸着させたものとジアゾ化反応後にビリルビンを吸着させたものを比較して示している。
図4から明らかなように交互吸着膜内の未反応アミノ基に対してジアゾ化を行なった場合の方が、格段にピーク値(ビリルビンに由来するC=0のピーク吸収)が高いことが明らかである。このことから、ビリルビンは膜内に物理的に吸着されているのではなく、アミノ基をジアゾ化することによって膜内にビリルビンが結合されていることが確認できる。
【0028】
実施例2:尿中のビリルビン検知
実施例1と同様にPMLGとPPDAとから成る交互吸着膜(20層)を調製し、ジアゾ化反応に供した後、尿中のビリルビンを検知した。但し、下記のように、基板として金電極を用い、水晶発振子(QCM)による振動数変化測定によりビリルビンを検知した。
先ず、前処理として、9MHz、ATcutの金蒸着水晶発振子(USI社より購入)に王水を2,3滴垂らして電極表面をエッチングした後、メタノールで洗浄した。この水晶発振子を3−メルカプトプロピオン酸(MPA)メタノール溶液(濃度101mM)に10分間浸して修飾した。その後、純メタノール溶液中に10分間浸して過剰分を洗浄した。次に、PPDAのエタノール溶液(濃度100mM)に60分間浸漬した後、過剰分をエタノールで洗浄した。PPDA溶液から取出した後、PMLGのEDC溶液(濃度1mM)に30分間浸漬した。このPPDA溶液浸漬/PMLG溶液浸漬を20回繰り返し、所望の交互吸着膜を得た後、実施例1と同様にジアゾ化反応に供した。
C型肝炎患者の実際の尿、ならびにこれを2倍および5倍に稀釈したものを試料として、この試料中に上記のジアゾ化交互吸着膜を浸漬し、水晶発振子の振動数変化をQuartz Crystal Microbalance (QCM)測定装置(USI(社)製CR05−P、岩崎通信機(社)製Universal Counter SC-7201)を用いて、窒素雰囲気下で測定することにより尿中のビリルビンを検知した。その結果を図5に示す。図5に示されるように、QCMによる測定により、尿中のビリルビンの濃度に依存して、膜と反応するビリルビンの重量が高感度に検出されることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のビリルビンセンサーを構成する交互吸着膜において用いられる芳香族アミンの化学構造式を例示する。
【図2】本発明に従うビリルビンの検知方法の原理を模式的に示す。
【図3】本発明に従いジアゾ化交互吸着膜を用いてビリルビン溶液を検知する場合の紫外可視吸収スペクトルの測定結果を示す。
【図4】本発明に従いジアゾ化交互吸着膜を用いてビリルビン溶液を検知する場合の紫外可視吸収スペクトルの測定結果を比較のためにジアゾ化反応を行なわない交互吸着膜を用いた場合との結果とともに示す。
【図5】本発明に従いジアゾ化交互吸着膜を用いて尿中のビリルビンをQCMによる振動数変化測定により検知した例を示す。

Claims (5)

  1. 少なくとも2個のアミノ基を有する分子構造から成る芳香族アミンと、側鎖にエステル基を有する分子構造から成るらせんポリマーとが、基板上に、前記アミノ基と前記エステル基の共有結合を介して交互に複数層積層された交互吸着膜から構成されていることを特徴とするビリルビン検知用薄膜。
  2. らせんポリマーがポリアミノ酸であることを特徴とする請求項1に記載のビリルビン検知用薄膜。
  3. ポリアミノ酸がポリ(γ−メチル−L−グルタメート)であり、芳香族アミンがパラフェニレンジアミンであることを特徴とする請求項2に記載のビリルビン検知用薄膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかの薄膜を用いて生体試料中のビリルビンを検知する方法であって、
    (1)前記薄膜をジアゾ化反応に供する工程、および
    (2)ジアゾ化後の薄膜を生体試料中に浸漬して、紫外可視吸収スペクトルを測定するか、または水晶発振子による振動数変化を測定する工程、を含むことを特徴とする方法。
  5. 生体試料が尿であることを特徴とする請求項1に記載のビリルビン検知方法。
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