JP3867619B2 - 摩擦圧接された接合銅部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は摩擦圧接された接合銅部材の製造方法に関するものであり、例えば鉄鋼の連続鋳造用鋳型の溶鋼注入面と反対側の面にバックフレームの取付け座を接合する用途に利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼の連続鋳造用鋳型は、熱伝導性を考慮して銅または銅合金から製作されており、実際の操業形態としては、溶鋼との接触面側から受ける熱量を反溶鋼接触面から冷却水を循環させることによって抜熱して溶鋼を凝固させている。図7は、銅または銅合金製の鋳造用鋳型1の裏面に冷却水を循環させるためのバックフレーム2を取付けた普通に見られる代表例を示している。また図8は、鋳造用鋳型1とバックフレーム2との組み立て要領を示した同じく代表的な例であり、鋳造用鋳型1の裏面に設けたバックフレーム取付け用のねじ穴3に取付けボルト4を用いてバックフレーム2が装着され、一体化される。図7あるいは図8において、5は鋳造用鋳型の反溶鋼接触面(裏面)に設けられた冷却溝を示している。図9に鋳造用鋳型1の反溶鋼接触面(裏面)に設けられた冷却溝5とバックフレーム取付け穴3の代表な配置例を示す。
【0003】
バックフレーム2の材質は、鉄ないしステンレス鋼で製作されているが、後者は鋳造された鋳片品質を高めるために電磁攪拌を行う鋳造機の場合に利用されている。銅または銅合金製の鋳造用鋳型1の板厚は、連続鋳造機の種類や電磁攪拌機能の有無によって差異があるけれども、電磁攪拌機能無しの場合でおよそ40〜50mm厚、電磁攪拌機能付きの場合で25〜30mm厚の範囲に設定されることが多く、冷却効率あるいは透磁率を高めるという両方の観点から見れば、極力薄い肉厚が好ましい。しかし一方でバックフレーム2への装着のために多数のねじ穴3を設ける必要があり、この制約が薄肉化を妨げる一因となっていた。そしてその代償としてバックフレーム2に直接接触する鋳造用鋳型1に冷却能改善のために冷却溝5を設けている。
【0004】
また、電磁攪拌機能付きの鋳造用鋳型の場合には、透磁率改善のために鋳造用鋳型の肉厚を全体的に薄肉化しているが、バックフレームを取付ける部位のみはねじ穴加工の必要性より、当該部分に図10の如く、周囲から突出させた取付け座6を設けている事例もある。係る諸々の理由で本来の機能上から考えれば必要とする以上の厚肉の銅または銅合金を出発素材として大量の銅素材を切削除去することにより、冷却溝5やバックフレーム取付け座6等を形成するので、元の素材重量から見て10〜40%、時にはそれ以上の素材を多大な時間を掛けて無為に切削除去、廃棄しているという現実がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来からの鋳造用鋳型は、銅または銅合金の素材に対して外形の形状を整えるだけでなく、バックフレームを装着するという制約の元に、その取付け座加工のための肉厚の確保、そしてそれに伴う冷却溝やバックフレーム取付け座そのものの加工を行う必要があり、材料や加工時間の無駄というコスト削減上の大きな課題があった。これに対して、同一材質の部材を後接合せしめることにより、鋳造用鋳型へのバックフレーム取付け座の部位のみを部分選択的に厚肉化することができれば、鋳造用鋳型の肉厚を根本的に薄肉化し得るので、冷却効率を改善することが可能となり、冷却溝を殆ど不要とできるだけでなく、電磁攪拌に供する鋳造用鋳型においても透磁率確保ないし改善のための薄肉化を素材の除去ロスなしに達成できるので、総合的な経済効果は多大である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
先に述べたように、従来の鋳造用鋳型は、諸々の理由によって必要以上の厚肉素材の使用やその後の機械加工を伴っていた。これを必要箇所のみ必要な部材を素材の変質なく、信頼性をもって接合できればその波及効果は多大であるので、銅または銅合金製部材を局部接合する方法について種々検討した。
【0007】
その手段として、まず金属と金属との接合方法について調査した。溶接という手法は、最も良く知られ汎用性もあり、方法としては被覆アーク溶接、消耗電極式ガスシールドアーク溶接、セルフシールドアーク溶接、非消耗電極式アーク溶接、サブマージアーク溶接、エレクトロスラグ溶接及びエレクトロガスアーク溶接、スタッド溶接、電子ビーム溶接、レーザー溶接、磁気駆動アーク溶接、酸素−アセチレン溶接、肉盛溶接等多岐に及ぶが、いずれも基本的に熱影響の大きな接合形態となったり、特別な雰囲気とする必要があったり、さらには手法そのものが部分接合であったりボイド等の溶接欠陥を発生したりする。結局、鋳造用鋳型という熱伝導度に優れた銅またはその合金に対しては、母材側への入熱を確保する観点で、レーザー溶接、電子ビーム溶接以外の溶融溶接法では、数百℃にも達する高温の予熱を行わないとならないし、材質の熱劣化により好ましい結果を示さない。ただ溶接手法の中でも多少共に可能性のある方法として、スタッド溶接に分類されるアークスタッド法を詳細に検討して見たが、入熱量が多いため、銅または銅合金材の変形(歪み)量と溶込み量とが多いことや、大気中での溶接は大気中の酸素等をしゃ断するアークシールド材を用いなければならず、シールドガス中での溶接を不可避としている。またフラックス、脱酸剤の併用を必要としており、且つ余盛を形成するアークシールドがないと溶接できないという難点と金属を溶融するために高低温割れが発生しやすく、結晶粒の粗大化により材料強度的な問題を生ずるという弊害、さらに溶融スラグが接合部分から排出されず残留して溶接欠陥などを発生しやすいなど難点の多い方法であり、適用が困難であることが分かった。
【0008】
一方、ろう付けなどの接合方法も高温が必要であるなど、その適用が困難である。そこででき得る限り入熱が少なく金属結合が可能な固相接合法として知られている摩擦圧接法に着目して、まず可能性の見極めを行った。なお書籍、例えば接合技術総覧(産業技術サービスセンター/1994年発行)によれば銅材同士の摩擦圧接は可能であるとされているが、実際問題として熱拡散性の高い銅材と銅材とを実用レベルで製品化した例は見当たらない。
【0009】
また、摩擦圧接された接合銅部材を鋳造用鋳型に適用することを想定すれば、耐熱強度を高めた銅材からなる大面積の板状物にバックフレームの取付け座とする柱状物を接合することになり、接合の信頼性の確保と熱影響の極力少ないことが要求される。そこで、縦型の摩擦圧接装置を利用して、まず同径同質の中実銅丸材での圧接試験を初めに実施したが、その際、摩擦速度とその圧力、アプセット(押込み)圧力とその時間、ブレーキ作動期間、ブレーキの作動とアプセット圧力との関係等をパラメーターとして各種の評価試験を繰り返した。この結果をさらに中実銅丸材と銅板材の接合試験とその評価を経て実用レベルの品質であることを再度確認してのち、実機レベルに近い鋳造用鋳型を作製して実用に供せられることを検証し、本発明を完成するに至った。なお付け加えれば摩擦圧接には方法の特性として特別なフラックス剤、あるいはシールドガス等の保護雰囲気も不要であるという利点もある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の完成に至るまでの実施の形態を実施例を交えながら順次説明する。まず先に述べた接合すべき物品の接合面を左右ではなく上下に配置し得る縦型の摩擦圧接装置により銅素材を高温強度の高い析出硬化型銅材のクロム−ジルコニウム銅(化学成分;Cu≧98.0%,Cr:0.5〜1.5%,Zr:0.08〜0.30%)に設定して検討した。以下実施例により説明する。
【0011】
(実施例1);接合強度試験
25mm径×70mm長さの中実クロム−ジルコニウム銅材により、摩擦接合の可能性を試験条件のパラメーターとその変動範囲を以下のように設定して検討した。
【0012】
【表1】
【0013】
その結果、摩擦圧力は20〜90MPa、摩擦寄代は、0.5〜3.5mm、アプセット圧力としては、40〜160MPa、また主軸回転数としては、1,200〜2,400rpmが好ましい範囲であることが分かった。しかしながらパラメーターとしての接合の信頼性、すなわち未接合部分の有無はブレーキタイミングを如何に設定するかに大きく依存していることも明らかとなった。すなわち、図1(a)に示すようにブレーキタイミングを「前」にした場合には、いずれの条件を以てしても、図2(a)に示したような外周部の未接合部(ボイド)を発生する。これは銅の熱伝導が高いゆえに接合界面において回転面移動を生じたためであると解釈できる。一方、図1(b)に示すようにブレーキタイミングを「後」にし、主軸回転と同期させてアプセット圧力を付与すると、図2(b)の如く未接合部を完全に解消できることを発見した。
【0014】
すなわち、本発明による摩擦圧接法によれば、略同じ外径の円形の表面を有する銅または銅合金製の第1および第2の部材の円形の表面同士を互いに対向させて、少なくとも一方の部材を前記円形の表面の中心を軸として高速回転させながら、両部材間に回転軸と平行な方向に圧力を加えて、両部材の接触摺動面に所定の摩擦熱が生じるまで所定の圧力と所定の回転速度を維持し、その後、両部材間に加える圧力を急激に増加させながら、回転速度を急激に減少させて、回転停止時に両部材が接合されるようにしたものであり、これにより、熱伝導性が高く、放熱性に優れる銅または銅合金製の部材を極めて高い信頼性で接合できるものである。
【0015】
パラメーターを変化させて摩擦圧接して接合させた試験片より、図3に示す引張試験片として加工するに足るものを選別して接合強度を求めると表2のようになり、圧接条件を選定すれば無垢のクロム−ジルコニウム銅材の引張強度よりも僅か低いものの充分に実用レベルとし得ることを見出した。なお、適正条件範囲で摩擦圧接したものの引張強度が無垢のそれに比べてやや低い理由は、摩擦による熱影響を受けた軟化層の形成によるものと考えられる。
【0016】
【表2】
【0017】
(実施例2);摩擦圧接による軟化の硬度的確認
摩擦圧接による接合が完全に行える条件で作製したクロム−ジルコニウム銅中実材を軸方向に切断して採取した試料の接合面を基準として硬度を測定すると図6のようになった。すなわち、両部材の接合線(面)を基準として、中心軸とそれに熱影響の最も高い外径から2mm中央部に入った部位の硬さを連続測定すると、いずれの部位においても、それぞれ最大で約3mm程度の硬度軟化層が見られる程度で局所に止どまっており、顕微鏡組織からもマクロ的な材質変化は見られないことを確認できた。
【0018】
実施例1,2のような基礎試験を重ねて銅材同士の組合わせでも実用に耐え得る摩擦圧接が可能であることを見出したが、実際の鋳造用鋳型の場合には大面積の放熱部を持った大きい板状物であるので、実施例1で得られた適正条件が必ずしも適用できるとも限らない。そこで100mm角×25mm厚のクロム−ジルコニウム銅板と25mm径×70mm長さの中実クロム−ジルコニウム銅材を組合わせ、前者を固定側として接合試験を試みたが、結果として板材と中実丸材とを直接圧接するよりも板材側に事前に図4に示すような接合部の周辺に僅かな熱流方向規制溝を設けてやれば、全くの同一条件を適用できることを発見した。
【0019】
なお、熱流方向規制のために図4(b)のように接合部分を周囲よりも僅かに高くすることも当然考え得るが、そのためだけに接合部分の総面積よりも大きな面積の銅材を削り出すという不合理さを伴なうので、熱流方向を規制する方法としては、図4(a)のように接合部分に断熱用の溝加工を設けるのが好ましい。この溝は0.05〜1.0mm、好ましくは0.10〜0.5mmの範囲の溝幅とその深さを有するリング状の溝とし、その内径は接合される銅または銅合金製中実丸材の外径と同等程度とする。
【0020】
図5(c)に示すように、板材14へ円柱材12を摩擦圧接した時には、同図の矢印で示すように熱流は三次元的となり、いわゆる三次元熱伝導状態となる。これは接合界面に圧接に必要な十分な熱量、すなわち接合界面温度を保持しにくいことになる。一方、母材である板材14側に溝加工した図5(a)では、圧接時の熱流は上下方向、すなわち一次元熱流となる。この一次元熱伝導は、前者の三次元熱伝導より接合界面への熱量の供給は容易であり、接合に必要な温度を保持しやすい。図5(b)は突起加工したもので、原理は図5(a)と同じである。溝深さ、突起高さはマクロ的には数mm程度が望ましいが、工作上の問題を考えた場合には0.05mm以上あれば熱流方向の制限の効果は認められる。
【0021】
また、熱伝導率を意図的に落とす手立てとして、回転側の中実丸銅材の接合面あるいはその周囲を銅よりも熱伝導度の低い、例えばニッケルやニッケル合金あるいはアルミニウム等をめっき法、溶射法、溶融溶接等の手法で事前に被覆しておくと良いことも分かった。
【0022】
このように放熱面積の大きい銅合金板と同一材質の中実丸材との摩擦接合が可能であることを見出したので、実際の鋳造用鋳型の1/2スケールのものを準備して多数個の中実丸材を摩擦圧接し、板材の変形の程度や実際にねじ穴加工した後、バックフレーム装着を模してトルク付与を鋳型の寿命に至るまでの平均繰り返し装着回数の3倍繰り返したが、いずれも従来の鋳造用鋳型と遜色のないことを確認でき、本発明を完成するに至った。また銅の材質も変化させて同じような実験を繰り返し、再現性を見たが、いずれも問題なく接合することが可能であった。さらに、板状物と接合される柱状物は必ずしも円柱に限らず、四角柱、六角柱などの多角柱でも問題なく接合することが可能であった。なお、本発明は特に鋳造用鋳型に限定されるものではなく、銅またはその合金からなる同種類の金属を接合して利用する分野のあらゆる部品にも適用し得る。
【0023】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、略同じ外径の円形の表面を有する銅または銅合金製の第1および第2の部材の円形の表面同士を互いに対向させて、少なくとも一方の部材を前記円形の表面の中心を軸として高速回転させながら、両部材間に回転軸と平行な方向に圧力を加えて、両部材の接触摺動面に所定の摩擦熱が生じるまで所定の圧力と所定の回転速度を維持し、その後、両部材間に加える圧力を急激に増加させながら、回転速度を急激に減少させて、回転停止時に両部材が接合されるようにしたので、熱伝導性が高く、放熱性に優れる銅または銅合金製の部材を極めて高い信頼性で接合できる効果がある。
【0024】
請求項2の発明によれば、円形または多角形の柱状物を大面積の板状物に強固に接合した接合銅部材を提供できる効果がある。
【0025】
また、請求項1または2の発明によれば、少なくとも一方の部材の少なくとも接合面に両部材よりも熱伝導度が低い異種金属を予め被覆しておくようにしたので、接合面から銅材を介する熱伝導により熱が逃げる現象を抑える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による接合銅部材の製造方法の説明図である。
【図2】本発明による接合銅部材の接合形態を示す説明図である。
【図3】本発明による接合銅部材の接合強度測定用の引張試験片を示す説明図である。
【図4】本発明による接合銅部材の構造例を示す説明図である。
【図5】本発明による接合銅部材の接合時の熱流方向を示す説明図である。
【図6】本発明による接合銅部材の硬度分布を示す図である。
【図7】従来の鋳造用鋳型をバックフレームに装着した構造の一例を示す斜視図である。
【図8】従来の鋳造用鋳型とバックフレームの取付構造の一例を示す斜視図である。
【図9】従来の鋳造用鋳型のバックフレーム装着面における冷却溝とねじ穴の配置例を示す正面図である。
【図10】従来の鋳造用鋳型にバックフレーム取付け座を設けた構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋳造用鋳型
2 バックフレーム
3 バックフレーム取付け穴
4 取付けボルト
5 冷却溝
6 取付け座
7 Cr−Zr中実銅
8 摩擦圧接で生じるバリ
9 接合面の軟化層
10 未接合部ボイド
11 引張試験片
12 銅または銅合金製中実丸材
13 熱流方向規制溝
14 銅または銅合金製板材
15 熱流方向規制突起
Claims (2)
- 略同じ外径の円形の表面を有する銅または銅合金製の第1および第2の部材のうち、少なくとも一方の部材の少なくとも接合面に両部材よりも熱伝導度が低い異種金属を予め被覆した後、第1および第2の部材の円形の表面同士を互いに対向させて、少なくとも一方の部材を前記円形の表面の中心を軸として高速回転させながら、両部材間に回転軸と平行な方向に圧力を加えて、両部材の接触摺動面に所定の摩擦熱が生じるまで所定の圧力と所定の回転速度を維持し、その後、両部材間に加える圧力を急激に増加させながら、回転速度を急激に減少させて、回転停止時に両部材が接合されるようにしたことを特徴とする摩擦圧接された接合銅部材の製造方法。
- 多角形または円形の表面を有する銅または銅合金製の第1の部材と、第1の部材よりも大面積の表面を有する銅または銅合金製の第2の部材のうち、少なくとも一方の部材の少なくとも接合面に両部材よりも熱伝導度が低い異種金属を予め被覆した後、第1および第2の部材の表面同士を互いに対向させて、第1の部材を前記多角形または円形の表面の中心を軸として高速回転させながら、両部材間に回転軸と平行な方向に圧力を加えて、両部材の接触摺動面に所定の摩擦熱が生じるまで所定の圧力と所定の回転速度を維持し、その後、両部材間に加える圧力を急激に増加させながら、回転速度を急激に減少させて、回転停止時に両部材が接合されるようにしたことを特徴とする摩擦圧接された接合銅部材の製造方法。
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