JP3867248B2 - 温度依存性補正を加えた感圧塗料のinsitu計測手法とその装置 - Google Patents
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Description
ここで、画像として得られた感圧塗料発光強度を圧力に変換する較正方法のひとつとしてin situ 法がある。in situ 法とは、実験を行いつつリアルタイムで較正特性を取得する手法である。感圧塗料計測法の場合の較正手法は被検体まわりに複数の圧力孔を設け、圧力孔に接続した圧力変換器等のデータと圧力孔まわりの感圧塗料発光強度を関係付けて較正特性を割り出す方法が採用されている。この方法は、圧力孔に接続した圧力変換器等のデータを基準値として圧力孔まわりの感圧塗料発光強度データを対応させてグラフ上にプロットし、得られた複数のプロット点を最小二乗法等で近似して発光強度と圧力との関係の較正曲線を得るという手法である。この際に基準器として用いられる圧力変換器データは予め電圧と圧力を関連づける較正特性線により圧力に変換されるものであり、長年の実績があり信頼性の高い圧力変換器データを用いることにより感圧塗料計測の信頼性を確保することができる。
しかし、このin situ 法による較正は任意物体が均一の温度分布である場合にのみ適用でき、偏った温度分布を有する場合には適用できない。なぜなら、感圧塗料を形成している化学物質は、圧力のみならず温度に対しても発光強度を変化させる特性を持つからである。例えば、任意物体まわりの圧力分布が一様な場合でも、温度分布が不均一で偏りがあった場合、温度の影響により感圧塗料の発光強度が変化するため、結果として、あたかも圧力分布に偏りがあるかのように検出されてしまう。この特性は、一般に感圧塗料の温度依存性と呼ばれ、感圧塗料計測における大きな問題とされている。
国外において赤外線カメラを使用して感圧塗料の温度依存性を補正する内容を記載した論文(非特許文献1)があるが、そもそも a priori 法への適応を論じており、in situ 法への適用ではない。この a priori 法とは感圧塗料を塗布した試験片を圧力と温度が制御できるチャンバー内に設置し、温度と圧力を変化させてその発光特性を事前に調べておく校正法であるため、模型に圧力孔を設ける必要はないが時々刻々変化する現場の状況に即した較正ではなく、一般に実験中に生じる様々な誤差要因に対して弱く、十分な計測精度を得ることが難しいとされている。また、この場合、感圧塗料計測用とは別に赤外線カメラシステム等の機材を要する。赤外線カメラはレンズや観測窓に赤外線を通す特殊材質を用いる必要があり一般に非常に高価である。
被検体表面の各区分領域についての温度分布データを取得する温度計測手法としては、赤外線カメラによる撮影画像を用いるもの、また、温度依存性を有する感圧塗料が塗布された領域と対称領域に温度に対して発光強度を変化させる感温塗料を塗布したもの、あるいは感圧・感温複合塗料を用いるものを提示する。
本発明の被検体表面圧力計測方法では、取得された感温塗料の発光強度は予め取得された該感温塗料の特性データに基づいて被検体表面の温度計測がなされ、感圧塗料の発光強度は予め取得された該感圧塗料の定圧力下における温度依存特性較正データに基づいて温度依存成分が算出される。
また、本発明の被検体表面圧力計測装置では、被検体を撮影する撮像装置がCCDカメラおよび/又は赤外線カメラであって、被検体表面の各区分領域についての温度を割り出す手段は前記カメラの画素情報を温度検出に用いるものである。
更に、本発明の in situ法による感圧塗料の較正装置は、複数箇所に圧力孔を設けると共に表面に感圧塗料が塗布された被検体を照射する励起光源と、前記被検体を撮影する撮像装置と、被検体画像情報から前記被検体表面の各区分領域についての温度を割り出す手段と、感圧塗料が塗布された被検体画像情報から前記温度情報と当該感圧塗料の温度依存特性較正データに基づいて温度補正した被検体表面の感圧塗料発光強度を割り出す手段と、圧力孔近傍の補正された感圧塗料発光強度と他の圧力計で検出した圧力孔データとを関連付ける手段を備えるものとした。
本発明は素材を選ばず多くの材質で形成された物体に対する適用が可能であり、そこではデータの空間的情報を損なうことなく、かつ、長年の実績があり信頼性の高い圧力変換器データを基準器データとして用いることにより、計測の信頼性を確保したまま、感圧塗料計測法における計測精度を向上させることができる。
また、特許文献3には感圧塗料(センサA)の補正用に感温塗料(センサB)と他のセンサCを用いる技術が開示されているが、補正の具体的手法や適用のしかたははっきりしない。温度領域を区分して2本の較正曲線を使用する旨の説明があるが、これでは精度の良い補正はできないし、領域間の不連続をどのようにスムージングするのかも不明である。そして、この文献にもin situ 法による較正への言及はない。
感圧塗料計測法および感温塗料計測法において、圧力および温度を算出するための理論式および経験式を適用するためや塗料の塗りむらを相殺するために、基準状態である無風時の発光強度と通風状態の発光強度の比を求めて用いるが、この際の画像処理において画像の位置合わせを容易にするため模型上には位置参照点となるマーカーを設置しておく。
励起光源としてはキセノン光源を用い干渉フィルタを介して励起光照射する。感圧塗料および感温塗料のそれぞれが励起される適切な波長域の光を模型に照射する。また、光源からの光照射とカメラシャッターはパルス信号発生装置を使用して適切なタイミングで同期させる。
ここで、事前処理として、温度と感圧塗料および感温塗料の発光強度を関連付ける較正特性曲線を得ておく。なお、本実施例では、流れ場および模型温度は模型左右で同じであると仮定し、また、感圧塗料の温度感度の圧力依存性と感温塗料の温度感度の圧力依存性は無視した。
Claims (6)
- 複数箇所に圧力孔を設けると共に表面に感圧塗料を塗布した任意の被検体に励起光を照射した状態において、前記被検体表面の各区分領域についての温度分布データを任意の温度計測手法により取得するステップと、該温度分布データに基づいて感圧塗料の温度による発光強度変化分を補正し、圧力のみの関数とした感圧塗料の発光強度分布を得るステップと、圧力孔近傍の補正された感圧塗料発光強度と前記圧力孔につながれた他の圧力計で検出した圧力孔データとを関連付けるin situ法による較正ステップと、該in situ法による較正特性に基づいて前記補正により圧力のみの関数とした感圧塗料の発光強度分布を圧力分布値に変換するステップとからなる被検体表面圧力計測方法。
- 被検体表面の各区分領域についての温度分布データを取得する温度計測手法が、赤外線カメラによる撮影画像を用いるものである請求項1に記載の被検体表面圧力計測方法。
- 被検体表面の各区分領域についての温度分布データを取得する温度計測手法が、感圧・感温複合塗料からの感温帯域の発光強度信号を用いるものである請求項1に記載の被検体表面圧力計測方法。
- 被検体表面の各区分領域についての温度分布データを取得する温度計測手法が、左右対称構造の被検体において、温度依存性を有する感圧塗料が塗布された領域と対称領域に温度に対して発光強度を変化させる感温塗料を塗布し、各区分領域は反転位置に対応させるようにした請求項1に記載の被検体表面圧力計測方法。
- 複数箇所に圧力孔を設けると共に感圧塗料と感温塗料が左右表面に塗り分け塗布された被検体を照射する励起光源と、前記被検体を撮影する撮像装置と、感温塗料が塗布された被検体画像情報から前記被検体表面の各区分領域についての温度を割り出す手段と、この温度分布データとシステム内に蓄積してあるチャンバー内の均一状態で校正された感圧塗料の温度依存特性とを用い、得られた感圧塗料画像データを温度補正してその温度補正された感圧塗料発光強度分布画像を得る手段と、圧力孔近傍の温度依存分を補正した感圧塗料の発光データを基準器となる圧力変換器のデータとを関連づけてin situ法による較正特性を得る手段と、得られた較正特性に基づいて前記温度依存性を補正した感圧塗料発光強度分布画像から圧力分布情報を得る手段とを備えたin situ法による感圧塗料計測の較正装置。
- 複数箇所に圧力孔を設けると共に表面に感圧塗料が塗布された被検体を照射する励起光源と、前記被検体を撮影するCCDカメラおよび赤外線カメラと、赤外線カメラからの被検体画像情報から前記被検体表面の各区分領域についての温度を割り出す手段と、この温度分布データとシステム内に蓄積してあるチャンバー内の均一状態で校正された感圧塗料の温度依存特性とを用い、得られた感圧塗料画像データを温度補正してその温度補正された感圧塗料発光強度分布画像を得る手段と、圧力孔近傍の温度依存分を補正した感圧塗料の発光データを基準器となる圧力変換器のデータとを関連づけてin situ法による較正特性を得る手段と、得られた較正特性に基づいて前記温度依存性を補正した感圧塗料発光強度分布画像から圧力分布情報を得る手段とを備えたin situ法による感圧塗料計測の較正装置。
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