JP3867236B2 - ポリエチレン樹脂製管の耐久性についての迅速な評価方法、及び、管用ポリエチレン樹脂の迅速な良否判定方法 - Google Patents

ポリエチレン樹脂製管の耐久性についての迅速な評価方法、及び、管用ポリエチレン樹脂の迅速な良否判定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレン樹脂製管の評価方法、及び、管用ポリエチレン樹脂の良否判定方法に関する。特には、ポリエチレン樹脂からなるガス管、水道管等の流体輸送管の評価方法、または、このような流体輸送管用のポリエチレン樹脂の良否判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1979年頃、我が国にポリエチレン樹脂製ガス管が導入された。
【0003】
周知のとおり、ガス管は鋳鉄製が一般的であったが、安価かつ軽量であって、しかも耐食性等の性能に優れたポリエチレン樹脂製ガス管が使われるようになったのである。特に、1995年の阪神大震災の後には、耐震性に優れたポリエチレン樹脂製ガス管の使用量が急増している。
【0004】
ところが、ポリエチレン樹脂製ガス管を導入するにあたり、耐久性の評価が問題となった。
【0005】
鋳鉄製ガス管については、耐疲労性や、耐劣化性能についての評価方法が従前より確立している。一般に、単純な金属材料の強度信頼性及び耐久性については、ほぼ解明されており、これに基づき長期使用の可能性と信頼性についても容易に推定・評価することができるのである。
【0006】
これに対して、ポリエチレン樹脂製ガス管については、促進劣化試験といった方法により評価する以外に方法がなかった。
【0007】
従来の技術による、ポリエチレン樹脂製ガス管の評価方法について、以下に説明する。
【0008】
1.熱間内圧クリープ試験
ポリエチレン樹脂製ガス管の両端を密閉して、この中に水を注入することにより0.5MPa程度の内圧を加え、80℃と60℃の温水中に浸漬、静置し、ガス管が破裂するまでの時間を測定した。この試験では、102〜104時間で破壊するデータが数点必要なため、約1年の期間が必要であった。80℃と60℃の結果より、常温での寿命を推定している。
【0009】
2.繰り返し疲労試験
ポリエチレン樹脂製ガス管から、ガス管の軸方向に沿った角柱型の試片を切り出して、この中央部に全周ノッチを付ける。この両端をチャックに固定し、80℃の空気中で、矩形波状に増減する引っ張り応力をかけ続ける。引っ張り応力がなす矩形波は、0.1〜10MPaの一定の応力と、持続時間0〜1秒、インターバル0〜1秒であるパルス波とを加えたものである。このようにして破断するまでの時間を測定することにより、耐久性能を評価する。
【0010】
この繰り返し疲労試験は、ガス管が受ける実際の疲労及び酸化劣化との対応において非常にすぐれているものと考えられている。ガス管は、使用条件で、ある内圧を受け続けるとともに、ガス弁の急激な開放や閉鎖に伴う応力変動を受けるのであり、また、設置場所の振動による応力を受ける。また、ガス管の外面、及び、ガス中に僅かに混入する酸素による酸化劣化を受ける。酸化劣化については、活性化エネルギー及び反応速度論的についての解析に基づき劣化速度の温度依存性がほぼ推定できる。また、耐疲労性についても、通常想定される機械的疲労の量との関係から推定可能である。したがって、繰り返し疲労試験の結果から、かなりの信頼性をもって、安全に使用できる年数を推定することができる。
【0011】
しかし、上記の繰り返し疲労試験により、十分に良好な耐久性をもつと評価されるまでには、少なくとも3カ月間の期間を要する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ポリエチレン樹脂製ガス管の耐久性能を上記の繰り返し疲労試験にて評価するためには、その都度、結果を得るまでに3カ月間の長期を要していた。したがって、例えば、新規に安価で性能の優れたポリエチレン樹脂製ガス管が供給されたとしても、採用までに長期を要し、それだけガス管品質の向上と、コスト削減に支障を来していた。また、既に使用している品種のポリエチレン樹脂製ガス管について、使用前に、ロット間のばらつきによる耐久性能のばらつきを評価しておこうとする場合にも、同様に長期の試験を経なけれなならなかった。
【0013】
さらに、上記のような促進劣化試験による評価のみに頼り、ポリエチレン樹脂材料の高分子物性等についての知見を充分に備えて置かないとするならば、促進劣化試験の結果に基づく耐久性能評価の信頼性をさらに向上させる上で問題がある。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ポリエチレン樹脂製管の耐久性評価、及び管用ポリエチレン樹脂の良否判定を迅速に行うことができる方法を提供するものである。
【0015】
我々は、既に、特願平10−28982において、ポリエチレン樹脂材料の化学構造等の解析に基づき、2週間前後の期間でポリエチレン樹脂製管の耐久性評価、及び管用ポリエチレン樹脂の良否判定を行うことのできる方法を提案している。本発明は、この先の提案よりもさらに迅速に評価を行うとともに、高分子物性的な解析に基づき管用ポリエチレン樹脂についての知見をさらに深めることを目的としたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明のポリエチレン樹脂製管の耐久性能についての評価方法は、管を構成するポリエチレン樹脂が下記(1)の条件を満たす場合に、該管の耐久性が良好であると判定することを特徴とする。
【0017】
(1)室温から完全流動する温度までの音波伝播特性の温度依存性を測定して得られた温度依存性曲線に、全体の溶融または固化に伴う主たる吸収ピークの他にサブピークがある。
【0018】
上記構成により、ポリエチレン樹脂製管の耐久性についての評価を迅速に行うことができる。
【0019】
請求項2の発明は、前記(1)の条件に加えて下記(2)の条件を満たす場合に、該ガス管の耐久性がさらに良好であると判定することを特徴とする。
【0020】
このような構成であると、ポリエチレン樹脂製管の耐久性についてのより詳細な評価を行うことができる。
【0021】
(2)前記サブピークが2個以上ある。
【0022】
請求項4の発明は、前記(1)〜(2)の条件に加えて下記(4)〜(5)の条件を満たす場合に、該ガス管の耐久性が良好であると判定することを特徴とする。
【0023】
(4)140℃のo−ジクロロベンゼンをGPC溶媒として用いた場合のポリスチレン換算分子量において100万(106)以上である高分子量フラクションを全体の5.5重量%以上含み、かつ
(5)前記ポリスチレン換算分子量が10万(105)近傍のフラクションにおいて、高分子鎖の炭素原子数1000個あたりの、炭素数4以上の分岐の数に対する、重量分率の依存性を示す曲線に、前記分岐の数が5以上の領域に前記重量分率のピークがある。
【0024】
このような構成であると、ポリエチレン樹脂製管の耐久性についての評価をより確実に行うことができる。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1の発明と全く同様の方法により、管用ポリエチレン樹脂の良否の判定を行うものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
水道管や農業用灌水パイプ、都市ガス用配管等のガス管には、機械的強度特性に優れる線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が主として用いられる。特には、密度が0.933〜0.939g/cm3であり、炭素数4〜10といった短い分岐を有する高分子量のLLDPEが好適に用いられる。
【0027】
本発明におけるポリエチレン樹脂の評価は、室温から、樹脂が完全流動する温度にわたって温度領域にて音波伝播特性を測定することにより行う。
【0028】
使用する音波としては、超音波、特には50KHz〜5MHz程度が測定精度の面から好ましい。また、正弦波及びパルス波のいずれも使用可能であるが、測定精度がより高く、発熱の少ないパルス波が好ましい。パルス波の幅すなわち持続時間長は、1μsec〜1nsecの範囲であればいずれでも良い。
【0029】
測定に使用する装置としては、例えば、2本の棒状のウェーブガイドが互いに共軸に、先端間を所定間隔だけ離して配置され、各ウェーブガイドの根元にトランスデューサー(送受波器)が取り付けられたものが用いられる。ここで、ウェーブガイドの先端部分が試料樹脂中に埋め込まれ、一般には、一方のウェーブガイドから一定の強度の音波を加え、他方のウェーブガイドへと試料樹脂中を通って伝播される音波の強度等を測定する。
【0030】
音波伝播特性の温度依存性曲線は、一般には、室温から溶融流動温度までを含む温度範囲を横軸とし、一方のウェーブガイドから加えた音波の強度と、他方のウェーブガイドの根元で測定される音波の強度との比を対数目盛りにて縦軸としたグラフである。この温度依存性曲線は、音波の減衰が極大となる吸収ピークを表すものである。試料樹脂全体が溶融または固化を行う温度領域、すなわち相転移温度付近に、主たる吸収ピークが見られる。
【0031】
本発明の方法においては、この主たる吸収ピークの他に、サブピークが見られた場合に、ポリエチレン樹脂、またはポリエチレン樹脂製の管について耐久性が比較的良好であると判断し、サブピークが複数見られた場合に、さらに良好であると判断する。特には、主たる吸収ピークが120〜130℃に見られる条件で、前記サブピークが90〜110℃と70〜90℃とにそれぞれ見られる場合に、さらに良好であると判断する。
【0032】
本明細書において、サブピークの語は、前記主たるピークと全く独立に現れるピークのみでなく、前記主たるピークまたは他のサブピークのショルダーとして現れる場合に、図形処理的に他のピークと分離して得たサブピークをも指すものとする。
【0033】
本発明の方法においては、さらに、分子量分布の測定と、炭素数4以上の分岐鎖の分岐密度及び分岐分布の測定とを行うことにより、より確実に、ポリエチレン樹脂及び管の評価を行うことができる。この際、下記(1)〜(3)の条件をも満たす場合に、良好であると判定する。
【0034】
(1)140℃のo−ジクロロベンゼンをGPC溶媒として用いた場合のポリスチレン換算分子量において100万(106)以上である高分子量フラクションを全体の5.5重量%以上含み、かつ
(2)前記ポリスチレン換算分子量が10万(105)近傍のフラクションにおいて、炭素原子数1000個あたりの炭素数4以上の分岐の数に対する重量分率の依存性を見た場合に、前記分岐の数が5以上の領域に前記重量分率のピークがある。
【0035】
以下に、本発明の内容を、促進劣化試験のデータと、超音波伝搬性の温度依存性等の測定結果との関連についての具体例により説明する。説明を簡単にするため、代表的な3種の銘柄のポリエチレン樹脂からなるガス管についての評価結果のみ記す。
【0036】
1. 促進劣化試験(繰り返し疲労試験)
図1は、繰り返し疲労試験について説明するための模式図である。
【0037】
ポリエチレン樹脂製ガス管から、ガス管の軸方向に沿った9mm×9mm×200mmの角柱型の試片を切り出して、この中央部に深さ1mmの断面半円形のノッチを全周に亘って付ける。角柱型試片の両端をチャックに固定し、下側を固定端、上側を移動端として、80℃の空気中で、矩形波状に増減する引っ張り応力をかけ続ける。引っ張り応力がなす矩形波は、0.1〜10Mpaの一定の応力と、持続時間1秒、インターバル1秒のパルス波とを加えたものである。このようにして、破断するまでの時間を各応力値について測定することにより耐久性能を評価した。
【0038】
図2には、3種の銘柄のポリエチレン樹脂について、上記の繰り返し疲労試験を行った結果を示す。
【0039】
図2から、樹脂#1,#2及び#3の耐久性能について、それぞれ、「優れる」、「やや劣る」、「劣る」とう評価を行うことができる。樹脂#2の耐久性能は、概ね、樹脂#1と樹脂#3の中間であり、応力が90〜100kg/cm2の領域においては耐久性能の劣る樹脂#3とほぼ同等である。
【0040】
2.超音波伝播特性の温度依存性の測定
図3には、超音波伝播特性の温度依存性の測定に用いた装置の構成について示す。
【0041】
測定装置10は、図に示すように、次の(1)〜(5)の部材からなる。
【0042】
(1)互いに共軸に、先端間を所定間隔Lだけ離して配置される、2本の棒状のウェーブガイド1A,1B、
(2)両ウェーブガイド1A,1Bの先端部分1a,1bが試料樹脂2に埋め込まれるように該試料樹脂2を収納するためのカップ状のセル3、
(3)両ウェーブガイド1A,1Bの根元側の端部、すなわちセル3から遠い側の端部にそれぞれ接合される発振用及びセンサ用のトランスデューサー4A,4B、
(4)セル3中の試料樹脂に埋め込まれる温度センサ5、及び
(5)セル3を収納する加熱室6。
【0043】
ウェーブガイド1A,1Bは、ステンレス鋼製であり、セル3としては、音波伝搬速度の遅いセラミックス製を用いた。また、発振用及びセンサ用のトランスデューサー4A,4Bは、両ウェーブガイド1A,1B間の中心点から等距離に配置される。
【0044】
ファンクションジェネレーターで生成される一定のパルス波電流が発振用トランスデューサー4Aにより音波に変換され、ウェーブガイド1A→試料樹脂2→ウェーブガイド1Bを経て、センサ用トランスデューサー4Bにより再び波形電流に変換される。
【0045】
センサ用トランスデューサー4Bから出力される波形電流は、図4に示すような減衰波形をなすが、最大振幅Aを抽出してコンピュータを用いて解析を行う。加えられるパルス波の振幅(強度)を一定とし、−lnA、すなわち最大振幅Aの自然対数に−符号を付けたものを超音波伝播性の指標とする。なお、この最大振幅Aと、発振パルス波の振幅A0及び減衰係数αとは、図中に示す一般式の関係にある。
【0046】
具体的には、以下のようにして測定を行った。
【0047】
まず、約2mm角のペレットに粉砕した樹脂試料を、セル3に仕込み、窒素置換を行った後、一旦200℃まで昇温して完全に溶融させ、12時間以上かけて室温まで徐々に冷却した。
【0048】
次いで、引き続き窒素気流下に、室温から230℃まで昇温しつつ、また、230℃から室温まで冷却しつつ、上記のようにして超音波伝播特性を測定した。測定の際の昇温速度及び冷却速度は、いずれも1℃/分とした。また、ウェーブガイド間の間隔Lは5mmとし、発振超音波のパルス周期及びパルス間隔は、150Hz及び76nsecとした。1回の測定に要する時間は、1〜2日である。
【0049】
図5には、このような方法により、上記の樹脂#1,#2及び#3について、超音波伝播特性の温度依存性を求めた結果について示す。なお、これらの測定においては、昇温過程と、冷却過程とでは得られた曲線に相違が見られなかったため、昇温過程で得られた曲線のみを示す。また、5回の繰り返しで充分な再現性が得られている。
【0050】
図5に示すように、促進劣化試験において耐久性に「優れる」と判定された樹脂#1では100〜105℃と70〜75℃とにサブピークが見られ、「やや劣る」と判定された樹脂#2では、100〜105℃においてのみサブピークが見られた。これに対して、「劣る」と判定された樹脂Cではサブピークが見られなかった。相転移に伴う主たる吸収ピークは、樹脂#1,#2及び#3のいずれも、120〜125℃に見られた。この結果を表1にまとめた。
【0051】
【表1】
Figure 0003867236
このように、超音波伝播特性の測定により樹脂の評価・判定を行うならば、わずか1〜2日で、ポリエチレン樹脂製管または管用ポリエチレン樹脂についての耐久性の評価を行うことができる。
【0052】
3.化学的分析による評価
上記の超音波伝搬特性による評価とともに、以下の化学分析による評価を併用することができる。
【0053】
3−1.高温GPCによる分子量分布の測定
分子量分布の測定には、GPC溶媒としては140℃のo−ジクロロベンゼンを用い、高温GPC装置としてWaters社製の150C型、GPCカラムとして東ソー社製GMHを用いた。溶出速度は1.0ml/min.とし、検出装置にはRI(示唆屈折率計)を用いた。
【0054】
図6には、GPC測定により得られた分子量分布について示す。
【0055】
上記繰り返し疲労試験にて耐久性能に劣るとされた樹脂#3の分子量分布がほぼ完全な正規分布の曲線である。この左右対称のピークと重ねて見た場合、耐久性能が良好であるとされた樹脂#1の分子量分布曲線と、樹脂#2の分子量分布曲線には、樹脂#3の分子量分布曲線から高分子量側に張り出した部分がある。樹脂#1及び樹脂#2の分子量分布曲線は、高分子量側に肩部を持つ他は、樹脂#3の分子量分布曲線とほぼ同じ形をしている。図6に示す分子量分布曲線は、いずれも、メインピークの中心値がほぼ同一であり、平均分子量に大差はない。
【0056】
3−2.TREF−GPCによる分岐密度及び分岐分布の測定
上記の高温GPCの測定のために調製したものと同じ試料溶液を調製した後、まず、一旦35℃まで冷却して、カラム中に充填されたガラスビーズ上に析出堆積させた。次に、これを113℃まで段階的に昇温しながら、高温GPCに用いたと同じo−ジクロロベンゼンにて徐々に溶出させた。この溶出液を連続的に取得して、13C−NMR及びFT−IRにより分岐密度を測定するとともに、上記高温GPCによる分子量測定を行った。
【0057】
図7には、ポリスチレン換算分子量10万近傍のフラクションについて、分岐数(炭素原子数1000個あたりの炭素数4以上の分岐の数)と、重量分率との関係を示す。
【0058】
図7から知られるように、樹脂#1においては、分岐密度7のところでピーク(最大値)を示す。すなわち、分岐密度7の高分子鎖が最も多く含まれる。これに対し、樹脂#2及び#3においては、分岐密度3のところでピークを示す。
【0059】
測定結果の要点について、上記のGPCによる結果の要点及びTREF−GPCによるその他の項目の結果とともに表2に示す。
【0060】
【表2】
Figure 0003867236
上記結果より、超音波伝播特性の温度依存性と、化学的構造との間に明確な相関関係があることが明らかである。
【0061】
超音波伝播特性の測定に見られたサブピークと、化学的な構造との関係について以下のように説明することができる。
【0062】
耐久性能が良好な樹脂は、全体が相転移する温度よりも低温の領域にサブピークが見られるが、これは、いわば局所的な相転移、または結晶緩和を示すものと考えられる。ポリエチレン樹脂は折り畳み構造からなる結晶構造を形成するが、分岐の密度が増加した場合に、分岐が結晶構造を生成する障害となり、結晶領域外においても分子同士の配列を阻害する。このようにして、分岐が多く分布して極端に配列が乱された領域や、充分なサイズの結晶を生成できず微結晶を多く含むこととなった領域が超音波吸収のサブピークの原因となっていると推察される。
【0063】
以上説明したように、ポリエチレン樹脂製ガス管について、3〜4カ月の期間を所用する、繰り返し疲労による促進劣化試験を逐一行わなくとも、樹脂の分子量分布、及び、高分子量フラクションにおけるブチル基(またはそれ以上の長さの基)の分岐密度等を測定するだけで、耐久性能を評価判定することができる。
【0064】
上記具体例においては説明を簡単にするためごく一部のデータのみを示したが、出願人が20年間にわたり蓄積した膨大な促進劣化試験その他の耐久性評価のデータより、本発明の内容は充分に裏付けられている。そのため、本発明の評価方法は、充分に高い信頼性を有するものである。
【0065】
【発明の効果】
ポリエチレン樹脂製ガス管の耐久性能評価、または、ガス管用ポリエチレン樹脂の良否判定を、1〜2日の短期間に行うことができる。このため、例えば、新規に安価で良質なガス管が供給された場合において、評価のための期間を圧縮することができ、その結果、ガス管についてのコストダウンの促進や性能向上の促進にも寄与することができる。
【0066】
また、ガス管用ポリエチレン樹脂の特質について、樹脂のミクロな構造と関連した高分子物性の解析に基づいて把握することができるため、促進劣化試験によるデータと組み合わせた場合に、耐久性能評価の信頼性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】疲労繰り返しによる促進劣化試験について説明するための模式図である。
【図2】疲労繰り返しによる促進劣化試験の結果について示すグラフである。
【図3】超音波伝播特性の温度依存性の測定に用いた装置の構成について示す模式的な縦断面図である。
【図4】超音波伝播特性の測定に用いる伝播の一般式を説明するための模式図である。
【図5】超音波伝播特性の温度依存性の測定結果を示すグラフである。
【図6】高温GPCによる分子量分布測定結果を示すグラフである。
【図7】TREF−GPCによる分岐分布の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1A,1B ウェーブガイド
2 ポリエチレン樹脂試料
3 セル
4A,4B トランスデューサー
5 温度センサ
6 加熱室

Claims (5)

  1. 管を構成するポリエチレン樹脂が下記(1)の条件を満たす場合に、該管の耐久性が良好であると判定することを特徴とする、ポリエチレン樹脂製管の耐久性能についての評価方法。
    (1)室温から完全流動する温度までの音波伝播特性の温度依存性を測定して得られた温度依存性曲線に、全体の溶融または固化に伴う主たる吸収ピークの他にサブピークがある。
  2. 前記(1)の条件に加えて下記(2)の条件を満たす場合に、該ガス管の耐久性がさらに良好であると判定することを特徴とする、請求項1記載のポリエチレン樹脂製管についての評価方法。
    (2)前記サブピークが2個以上ある。
  3. 前記(1)〜(2)の条件に加えて下記(3)の条件を満たす場合に、該ガス管の耐久性がさらに良好であると判定することを特徴とする、請求項1記載のポリエチレン樹脂製管についての評価方法。
    (3)前記主たる吸収ピークが120〜130℃にあるとき、前記サブピークが90〜110℃と70〜90℃とにそれぞれある。
  4. 前記(1)〜(2)の条件に加えて下記(4)〜(5)の条件を満たす場合に、該ガス管の耐久性が良好であると判定することを特徴とする、請求項1記載のポリエチレン樹脂製管についての評価方法。
    (4)140℃のo−ジクロロベンゼンをGPC溶媒として用いた場合のポリスチレン換算分子量において100万(106)以上である高分子量フラクションを全体の5.5重量%以上含み、かつ
    (5)前記ポリスチレン換算分子量が10万(105)近傍のフラクションにおいて、高分子鎖の炭素原子数1000個あたりの、炭素数4以上の分岐の数に対する、重量分率の依存性を示す曲線をとった場合に、前記分岐の数が5以上の領域に前記重量分率のピークがある。
  5. 管を構成するポリエチレン樹脂が下記(1)の条件を満たす場合に、該管の耐久性が良好であると判定することを特徴とする、管用ポリエチレン樹脂の良否判定方法。
    (1)室温から完全流動する温度までの音波伝播特性の温度依存性を測定して得られた温度依存性曲線が、全体の流動に伴う主たる吸収ピークよりも低温域にサブピークを有する。
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