JP3866500B2 - 電動パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や車両の操舵系にモータによるアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図20は、従来の自動車等に使用される電動パワーステアリング装置に係る制御装置の概略を示す。
【0003】
ステアリングホイール41に連結したステアリングシャフト42には、トーションバー43が設けられている。このトーションバー43には、トルクセンサ44が装着されている。そして、ステアリングシャフト42が回転してトーションバー43に力が加わると、加わった力に応じてトーションバー43が捩れ、その捩れをトルクセンサ44が検出している。
【0004】
又、ステアリングシャフト42には減速機45が固着されている。この減速機45には、モータ46の回転軸に取着したギア47が噛合されている。更に、減速機45にはピニオンシャフト48が固着されている。ピニオンシャフト48の先端には、ピニオン49が固着されるとともに、このピニオン49はラック51と噛合している。
【0005】
ラック51の両先端には、タイロッド52が固設されている。このタイロッド52の両端には、ナックル53が回動可能に連結されている。このナックル53には、前輪54が固着されている。又、ナックル53は、クロスメンバ55に回動可能に連結されている。
【0006】
従って、モータ46が回転すると、その回転数は減速機45によって減少されてピニオンシャフト48に伝達され、ラック&ピニオン機構50を介してラック51に伝達される。そして、ラック51に固設されたタイロッド52に連結されたナックル53は、モータ46の回転方向に応じて右方向又は左方向に移動する。尚、前輪54には車速センサ56が設けられている。
【0007】
そして、前記モータ46の回転数及び回転方向は、モータ駆動装置57から供給される正負のアシスト電流によって決定されている。このモータ駆動装置57がモータ46に供給するアシスト電流は、モータ駆動装置57を制御するアシスト電流決定手段58によって演算されている。アシスト電流決定手段58は、CPU等から構成され、トルクセンサ44からの検出信号からその時々のステアリングホイール41の操舵トルクThを演算するとともに、車速センサ56からの検出信号からその時々の車速Vを演算する。
【0008】
そして、アシスト電流決定手段58は、この演算した操舵トルクThと車速Vに基づいてアシスト電流(アシスト電流指令値)を算出する。この算出は、アシスト電流決定手段58内のメモリに予め記憶したアシストマップから求められる。そして、アシスト電流決定手段58はアシストトルクを発生させるモータ46の電流を前記アシスト電流(アシスト電流指令値)となるように制御する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の電動パワーステアリング装置の制御装置は、トルクセンサ44で検出した操舵トルクThと、車速Vに対し、前述のようにメモリ内に記憶したアシストマップ(アシストデータ)に基づき、アシスト電流を決定している。このアシストマップはある特定の路面反力状況(例えば平坦アスファルト路)で設定した値であって、路面反力状況が変わってしまう、すなわち、雪路等の低μ路やタイヤの空気圧低下、タイヤの諸元(摩耗、タイヤ種類等)が変わると、路面反力が変わり、そのため操舵力が変化してしまい、フィーリングの悪化を招いていた。
【0010】
又、操舵角に対する操舵トルクの立ち上がり(ビルドアップ感)を操舵フィーリングの判定の指標としているが、従来においては、操舵トルクと車速に対しアシスト電流を決定しているため、操舵角に対し所定の操舵トルクを出す(すなわち、ビルドアップ感を出す)ためのマップデータを設定することが非常に難しい問題があった。
【0011】
又、速い操舵等をしてモータや減速機等による慣性、粘性による外乱トルクが発生すると、アシスト電流決定手段ではこの外乱トルクを打ち消すことができないため、別途慣性、粘性を打ち消す制御が必要であった。
【0012】
又、左右に操舵した時の操舵トルクのヒステリシスのコントロールが自由に設定できず、理想の操舵フィーリングを実現するための自由度が低い問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、操舵角に対する操舵トルクの傾きを容易に設定することが可能となり、ビルドアップ感の適合を容易に行うことができる電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することにある。
【0014】
又、他の目的は、路面反力が低下したり、モータや減速機等による慣性や粘性により操舵トルクが減少したり、増加しても、操舵トルクが目標操舵トルクとなるようにアシスト電流指令値を調整する作用が働き、安定した操舵フィーリングを得ることができる電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、アシスト電流指令値に基づいてモータを駆動制御する制御手段を備えた電動パワーステアリング装置の制御装置において、操舵角及び車速に基づいて各速度毎に右操舵及び左操舵に対応した目標操舵トルクを設定する目標操舵トルク設定手段と、操舵トルク、前記目標操舵トルク、及び前記モータのモータ電流とに基づいてアシスト電流指令値を演算するアシスト電流演算手段を備えるとともに、前記操舵角を操舵角速度に基づいて位相補償する位相補償手段を備え、前記目標操舵トルク設定手段は、位相補償された操舵角が入力されるものであり、かつ、ハンドルの戻しの判定を行うハンドル戻し判定手段と、前記ハンドル戻し判定手段がハンドル戻し状態であると判定した際に、前記車速及び操舵角に基づいてハンドル戻し電流を演算するハンドル戻し制御手段とを設け、前記制御手段は、前記ハンドル戻し電流をアシスト電流指令値に加算した値に基づいてモータを駆動制御することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ハンドル戻し判定手段は、操舵角と操舵角速度が逆符号のときにハンドル戻しであると判定するものである電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1において、前記ハンドル戻し判定手段は、操舵角と操舵角速度が逆符号であって、かつ、アシスト電流指令値が0のときに、ハンドル戻しであると判定する電導パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
請求項4の発明は、請求項において、前記ハンドル戻し判定手段は、操舵トルクが0又はその近傍の値のときに、ハンドル戻しであると判定する電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記車速及び操舵角速度に基づいてダンパ電流を演算するダンパ制御手段を設け、前記制御手段は、ダンパ制御手段が演算したダンパ電流をアシスト電流指令値に加算した値に基づいてモータを駆動制御する電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0019】
請求項6の発明は、請求項において、ハンドルの手放しを判定する手放し判定手段を設け、前記手放し判定手段は、手放しであると判定した際に、前記ダンパ制御の制御を有効化する電動パワーステアリング装置の制御装置を要旨とするものである。
【0022】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、目標操舵トルク設定手段は、操舵角及び車速に基づいて各速度毎に右操舵及び左操舵に対応した目標操舵トルクを設定する。アシスト電流演算手段は、操舵トルク、前記目標操舵トルク、及び前記モータのモータ電流とに基づいてアシスト電流指令値を演算する。位相補償手段は、操舵角を操舵角速度に基づいて位相補償し、目標操舵トルク設定手段は、位相補償された操舵角が入力される。ハンドル戻し判定手段がハンドル戻し状態であると判定した際、ハンドル戻し制御手段は、ハンドル戻し電流を車速及び操舵角に基づいてハンドル戻し電流を演算し、制御手段は、前記ハンドル戻し電流をアシスト電流指令値に加算した値に基づいてモータを駆動制御する。
【0023】
請求項2の発明は、ハンドル戻し判定手段は、操舵角と操舵角速度が逆符号のときにハンドル戻しであると判定することにより、請求項1の作用を実現する。
【0024】
請求項3の発明は、ハンドル戻し判定手段は、操舵角と操舵角速度が逆符号であって、かつ、アシスト電流指令値が0のときに、ハンドル戻しであると判定することにより、請求項1の作用を実現する。
【0025】
請求項4の発明によれば、ハンドル戻し判定手段は、操舵トルクが0又はその近傍の値のときに、ハンドル戻しであると判定することにより、請求項1の作用を実現する。
【0026】
請求項5の発明によれば、ダンパ制御手段は、車速及び操舵角速度に基づいてダンパ電流を演算する。又、制御手段は、ダンパ電流をアシスト電流指令値に加算した値に基づいてモータを駆動制御する。
【0027】
請求項6の発明によれば、手放し判定手段は手放しであると判定した際に、ダンパ制御の制御を有効化する。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、自動車に搭載したラックアシスト型の電動パワーステアリング装置の制御装置20に具体化した実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0031】
図1は、電動パワーステアリング装置及びその制御装置20の概略を示す。
ハンドルとしてのステアリングホイール1に連結したステアリングシャフト2には、トーションバー3が設けられている。なお、説明の便宜上、ステアリングホイールを以下、ハンドルということがある。このトーションバー3には、トルクセンサ4が装着されている。そして、ステアリングシャフト2が回転してトーションバー3に力が加わると、加わった力に応じてトーションバー3が捩れ、その捩れ、即ちステアリングホイール1にかかる操舵トルクThをトルクセンサ4が検出している。又、ステアリングシャフト2にはステアリングシャフト2の操舵角θを検出する操舵角センサ17が装着されている。これらのセンサ出力は制御装置20へ供給される。
【0032】
又、ステアリングシャフト2にはピニオンシャフト8が固着されている。ピニオンシャフト8の先端には、ピニオン9が固着されるとともに、このピニオン9はラック10と噛合している。前記ラック10とピニオン9とによりラック&ピニオン機構が構成されている。前記ラック10の両端には、タイロッド12が固設されており、そのタイロッド12の先端部にはナックル13が回動可能に連結されている。このナックル13には、タイヤとしての前輪14が固着されている。又、ナックル13の一端は、クロスメンバ15に回動可能に連結されている。
【0033】
又、ラック10と同軸的に配置された電動モータ(以下、モータという)6は、モータ6が発生した補助操舵力をボールナット機構6aを介してラック10に伝達する。
【0034】
従って、モータ6が回転すると、その回転数はボールナット機構6aによって減少されてラック10に伝達される。そして、ラック10は、タイロッド12を介してナックル13に設けられた前輪14の向きを変更して車両の進行方向を変えることができる。
【0035】
前輪14には、車速センサ16が設けられている。
次に、この電動パワーステアリング装置の制御装置20の電気的構成を図1に示す。
【0036】
トルクセンサ4は、ステアリングホイール1の操舵トルクThを示す信号を出力している。操舵角センサ17はステアリングシャフト2の操舵角θを示す操舵角信号を出力している。車速センサ16は、その時の車速Vを前輪14の回転数に相対する検出信号を制御装置20へ出力する。又、制御装置20には、モータ6に流れる駆動電流(モータ電流Im、モータ電流値に相当)を検出するモータ駆動電流センサ18が電気的に接続されており、モータ駆動電流センサ18からのモータ電流Imを示す信号が供給されている。
【0037】
制御装置20は、制御手段としての中央処理装置(CPU)21、読み出し専用メモリ(ROM)22及びデータを一時記憶する読み出し及び書き込み専用メモリ(RAM)23を備えている。
【0038】
このROM22には、CPU21により実行される各種制御プログラムが格納されている。RAM23は、CPU21が演算処理を行うときの演算処理結果等を一時記憶する。
【0039】
前記CPU21は、目標操舵トルク設定手段、アシスト電流演算手段に相当する。前記CPU21には、後述する電流制御部34を備え、電流制御部34では、モータ電流がアシスト指令電流値となるようにモータ6をPWM演算を行い、その演算結果に基づいて駆動するようにされている。
【0040】
次に、図2〜図7を参照して、アシスト制御を説明する。
なお、以下のCPU21内部の機能の説明では、「車速V」、「操舵トルクTh」、「操舵角θ」等の各種パラメータは、説明の便宜上、それらの対応する信号の意味として使用するものとする。
【0041】
図2は、CPU21の制御ブロック図である。この実施形態ではCPU21内部においてプログラムで実行される機能を示している。例えば、位相補償器30は独立したハードウエアではなく、CPU21内部で実行される位相補償機能を示している。同じく図6及び図7は、CPU21内部の構成はCPU21がプログラムによって実行する処理機能を制御ブロック図で示しており、実際のハード構成を意味するものではない。
【0042】
以下、CPU21の機能と動作を説明する。
(車速感応アシスト制御)
CPU21は、図2に示すように位相補償器30、アシスト電流決定手段として電流指令値演算部31、目標操舵トルク設定手段として目標操舵トルク設定部32、減算器33、電流制御部34等の機能を備えている。
【0043】
目標操舵トルク設定部32は、車速センサ16から車速V、操舵角センサ17から操舵角θを入力し、目標操舵トルクTh*の設定を行う。なお、図4に示すように目標操舵トルク設定部32は、互いに異なる複数の所定の車速に対応した複数の目標操舵トルク設定マップを備えている。車速Vが大きくなるにつれて、車速Vが小さい場合に比して目標操舵トルク設定マップは目標操舵トルクThの傾きが急になる設定をしている。
【0044】
具体的に、目標操舵トルクTh*の設定の仕方を、CPU21が実行する目標操舵トルク設定ルーチンのフローチャート(図3参照)に従って説明する。
まず、S10において、操舵角θを読込み、S11において、現在の操舵状態が右操舵(右方向への操舵)か左操舵(左方向への操舵)であるか、或いは保舵している状態なのかを判定するために、操舵角θを微分して操舵角速度dθ/dtを算出する。
【0045】
次のS12において、操舵角速度がゼロ近傍(|dθ/dt|≦ε、εは微少な値である定数)の場合には、保舵しているものと判定し(S12において、「YES」と判定し)、S17において前回の制御サイクル時に判定した操舵方向を今回の操舵方向とし、S14に移行する。
【0046】
操舵角速度dθ/dtがゼロ近傍でない場合(S12において、「NO」と判定した場合)には、S13において操舵角速度dθ/dtの符号を見て、操舵方向を判定する。
【0047】
次にS14において、車速Vに対し、予めROM22に記憶されている複数の目標操舵トルク設定マップのうち、車速Vに近い車速に係る目標操舵トルク設定マップを検策する。この車速Vに近い、マップ側の車速をV1,V2とする(V1≦V<V2)。
【0048】
なお、目標操舵トルク設定マップは、図4に示すように、各速度毎に、右操舵及び左操舵に対応して、目標操舵トルクが求められるようにされている。
次のS15において、検索した車速V1,V2の目標操舵トルク設定マップから、先にS13において判定した、又はS15において読込みした操舵方向に基づいて、操舵角θに応じて仮目標操舵トルクTh1*、Th2*をそれぞれ求める。続く、S16において、車速Vに対し線形補間の式にて、車速V、操舵角θに対する目標操舵トルクTh*を算出する。
【0049】
なお、前記線形補間の式は下記の式である。
Th*=(Th2*−Th1*)/(V2−V1)×(V−V1)+Th1*
次に電流指令値演算部31について説明する。
【0050】
トルクセンサ4から入力された操舵トルクThは、位相補償器30で操舵系の安定を高めるために位相補償され、電流指令値演算部31に入力される。又、車速センサ16で検出された車速V、モータ駆動電流センサ18で検出されたモータ電流Im及び目標操舵トルク設定部32からの目標操舵トルクTh*はそれぞれ電流指令値演算部31に入力される。
【0051】
電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTh、車速V、目標操舵トルクTh*、モータ電流Imに基づいて、モータ6に供給する電流の制御目標値である車速感応アシスト指令値(アシスト電流指令値に相当する)Iを決定する。
【0052】
電流指令値演算部31は、図6に示すように不感帯幅設定部25、車速感応アシストトルク演算部26とを備えている。
不感帯幅設定部25は、車速Vに基づき、図7に示すように、ROM22に予め格納された不感帯幅マップMPを使用して、通電しない操舵トルクの不感帯幅T0を求め、車速感応アシストトルク演算部26に供給する。なお、不感帯幅マップMPは、車速Vと、不感帯幅T0からなる二次元マップからなり、車速Vから、一義的に不感帯幅T0が求められる。
【0053】
車速感応アシストトルク演算部26は、図5に示すように、目標操舵トルク設定部32で求められた目標操舵トルクTh*が前記不感帯幅T0(すなわち、図5では、不感帯幅T0は、−T0〜T0の間のことである。)の中にある場合には、車速感応アシスト指令値(以下、アシスト電流指令値という。)Iを0と決定し、この値を減算器33に出力する。
【0054】
目標操舵トルクTh*が不感帯幅T0の範囲外の場合には、現時点での操舵トルクThとモータ電流Imで演算されるラック推力と、目標操舵トルクTh*、アシスト電流指令値Iでのラック推力が釣り合うようにアシスト電流指令値Iを設定する。
【0055】
以下に、ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置の制御装置20における、アシスト電流指令値Iの決定の仕方について説明する。
ラックアシスト型の場合、操舵トルクTh、モータ電流Imの時のラック推力Fは下記の(A)式で求まる。
【0056】
F = Fm + Fh ……(A)
ここで、Fmはモータ6がアシストする推力、Fhはハンドル操舵による推力であり、下記の式でそれぞれ求めることができる。
【0057】
Fm=2π・Tm・ηb/L ……(B)
Fh=2π・Th・ηp/St ……(C)
上記(B)中、Tmはモータトルクを表し、
Tm=Kt×Im ……(D)
で求まる。
【0058】
なお、Tmはモータトルク、ηbはボールナット機構6aのボールねじ効率、Lはそのボールねじリードである。Thは操舵トルク、ηpは前記ラック&ピニオン機構のラック&ピニオンギヤ効率、Stはそのストローク比である。又、Ktはトルク定数である。
【0059】
従って、上記の(A)式を用いて、車速V、操舵角θにおける目標操舵トルクTh*、アシスト電流指令値Iのときのラック推力F(以下、この推力をF(Th*,I)で表す。)と、操舵トルクTh、モータ電流Imのときのラック推力F(以下、この推力をF(Th,Im)で表す。)が等しくなるようにアシスト電流指令値Iを設定する。
【0060】
F(Th*,I)=F(Th,Im)に、上記(B)、(C)、(D)を代入して、Iを求めれば、下記の式となる。
I=Im+ (Th−Th*)L・ηp/(St・Kt・ηb)
このようにして得られたアシスト電流指令値Iを減算器33に出力する。
【0061】
なお、アシスト電流指令値Iが目標操舵トルクTh*と逆符号、すなわち、逆アシストとなる場合には、アシスト電流指令値Iをゼロと決定して、減算器33に出力する。
【0062】
減算器33は実際のモータ電流Imとの差に相当する信号(アシスト電流制御値に相当する)を電流制御部34に出力する。
電流制御部34は本実施形態では、公知のPI制御を行うようにされており、減算器33の出力と実際のモータ電流Imとの差に相当する信号に基づいてフィードバック制御を行うべくモータ駆動装置24に供給する。すなわち、電流制御部34では、モータ電流がアシスト指令電流値となるようにモータ6をPWM演算を行い、その演算結果に基づいて駆動する。
【0063】
この結果、モータ駆動装置24を介してモータ6を駆動制御することにより、モータ6による適正なアシスト力が得られる。
上記実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0064】
(1)本実施形態においては、操舵角θ、車速Vに応じて目標操舵トルクTh*を設定し、操舵トルクThと目標操舵トルクTh*及びモータ電流Imによりアシスト電流指令値Iを制御(以下、この制御をMA−MT制御という。)するようにした。
【0065】
このため、車速Vと操舵角θに対する目標操舵トルクTh*を自由に設定することが可能となる。この結果、操舵角θに対する操舵トルクの傾きを容易に設定することができるようになり、ビルドアップ感の適合が容易になる。
【0066】
又、路面反力が低下したり、モータ6やモータ6に接続される減速機等による粘性や慣性により(実)操舵トルクが減少したり、増加したりしても、操舵トルクが目標操舵トルクTh*となるようにアシスト電流指令値Iを調整する作用が働き、安定した操作フィーリングの提供が可能となる。
【0067】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図8及び図9を参照して説明する。
本実施形態のハード構成は第1実施形態の図1と同様に構成されており、ソフトウエアの構成が一部異なっている。従って、前記第1実施形態の構成中、同一構成、又は相当する構成については、同一符号を付してその詳細な説明を省略し、異なるところを中心に説明する。なお、第2実施形態に限らず、以下の各実施形態、及び他の態様についても同様にして説明することとする。
【0068】
図8は、前記第1実施形態の図2の相当図である。
前記第1実施形態では、操舵角センサ17が出力した操舵角信号をそのまま操舵角θとしたが、本実施形態では、操舵角センサ17が出力した操舵角信号を、位相補償器35にて位相を進ませる位相補償した後の値を操舵角θとして、目標操舵トルク設定部32に出力する。前記位相補償器35は位相補償手段に相当する。
【0069】
詳しく説明すると、位相補償器35は図9に示すように微分器36とゲイン乗算部37と、加算器38とから構成されている。
微分器36では、操舵角センサ17からの操舵角信号を微分して操舵角速度Sを求め、ゲイン乗算部37では、その操舵角速度Sに予め設定したゲインTを乗算した値STを加算器38に出力する。前記ゲインTは、操舵角信号の位相遅れにより、操舵角信号に対する操舵トルク(実操舵トルク)が狙った目標操舵トルクTh*に一致しない現象が生じないように予め試験等よって得られた値に基づいて定められている。加算器38は、操舵角信号に対してSTを加算して位相を進ませた値(本実施形態では、これを操舵角θという。)とし、目標操舵トルク設定部32に出力する。
【0070】
本実施形態では、CPU21は、制御手段、目標操舵トルク設定手段、アシスト電流演算手段、及び位相補償手段に相当する。
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0071】
第1実施形態では、操舵角信号をそのまま操舵角θとして目標操舵トルク設定部32に出力していた。目標操舵トルク設定部32の目標操舵トルク設定マップは、車速Vが大きくなるにつれて、車速Vが小さい場合に比して目標操舵トルクTh*の傾きが急になる設定としている。このため、操舵速度が遅い操舵の場合には、問題とならないが、操舵速度が速い場合、操舵角センサ17で検出した操舵角信号をそのまま操舵角θとし、この操舵角θに基づいて目標操舵トルクTh*を決定してしまうと、操舵角の位相遅れにより、操舵角に対する操舵トルク(実操舵トルク)が狙った目標操舵トルクTh*に一致しない現象が生ずる。
【0072】
本実施形態では、位相補償器35により、操舵角θは、位相が操舵角信号よりも位相が進められていて、位相遅れが生じないため、操舵角θに対する操舵トルク(実操舵トルク)が狙った目標操舵トルクTh*に一致する。
【0073】
従って、第2実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、急操舵(操舵速度が速い)した場合であっても操舵角センサ17で検出した操舵角信号を操舵角速度Sに基づき、位相補償するようにしたため、目標操舵トルク設定部32で設定された目標操舵トルクTh*になるように制御することができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に第3実施形態を図10及び図11を参照して説明する。
本実施形態は、第2実施形態の構成にさらに、ハンドル戻し制御部60及び戻し判定部70を設けた構成とされている。本実施形態のCPU21は、第2実施形態の各手段の他に、ハンドル戻し制御手段、及びハンドル戻し判定手段に相当する。
【0075】
ハンドル戻し制御部60は、車速ゲインマップ61、ハンドル戻しマップ62及び乗算器63を備えている。
ハンドル戻し制御部60では、車速Vに対して予め設定されている車速ゲインマップ61に基づき車速ゲインKhを演算し、乗算器63に供給する。車速ゲインマップ61は、図11に示すように車速Vが低速の場合は、車速ゲインKhは一定値であり、所定車速を越えると減少して、高速になると0となるようにされている。
【0076】
又、ハンドル戻し制御部60は、操舵角θに対して予め設定されたハンドル戻しマップ62に基づいて、ハンドル戻し電流Ihを演算し、乗算器63に入力する。なお、ハンドル戻しマップ62は図11に示すように、操舵角θの符号によって、右アシスト又は左アシストに係るハンドル戻し電流Ihの演算を行う。又、ハンドル戻しマップ62は、|θ|が大きくなると、ハンドル戻し電流Ihがそれぞれ一定値に設定され、|θ|が0を含む所定範囲内では、ハンドル戻し電流Ihは0となるように設定されている。
【0077】
乗算器63は、入力された車速ゲインKhをハンドル戻し電流Ihに乗算した後、その出力値を乗算器71に供給する。
ハンドルハンドル戻し制御部60はハンドル戻し制御手段に相当する。
【0078】
戻し判定部70は、操舵角θを入力して微分し、操舵角速度Sを算出する。そして、戻し判定部70は入力した操舵角θと操舵角速度Sとの符号が不一致の場合(すなわち、互いに逆符号の場合)には、「1」を、一致している場合には「0」を乗算器71に出力する。すなわち、「1」の場合には、ハンドル戻しが行われていると判定し、「0」の場合には、ハンドル戻しがされていないとして判定しているのである。
【0079】
戻し判定部70は、ハンドル戻し判定手段に相当する。
乗算器71は、戻し判定部70が出力した「1」又は「0」の値と、ハンドル戻し電流Ihを乗算して、その結果をハンドル戻し電流Ihとして加算器39に出力する。
【0080】
加算器39は、電流指令値演算部31から出力されたアシスト電流指令値Iにハンドル戻し電流Ihを加算し、その値を減算器33に出力する。
図10に示す減算器33は、アシスト電流指令値Iとハンドル戻し電流Ihの合計値と実際のモータ電流Imとの差に相当する信号(アシスト電流制御値に相当する)を電流制御部34に出力する。
【0081】
電流制御部34では、減算器33の出力と実際のモータ電流Imとの差に相当する信号に基づいてフィードバック制御を行うべくモータ駆動装置24に供給する。
【0082】
この結果、モータ駆動装置24を介してモータ6を駆動制御することにより、モータ6による適正なアシスト力が得られ、或いはハンドル戻し時のハンドル戻し特性を良好にする。
【0083】
本実施形態では、車速V及び操舵角θがハンドル操舵環境パラメータに相当する。
第3実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0084】
(1) 本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同様にMA−MT制御を行うようにした。
ここで、低速走行中にある操舵角だけ操舵し、ステアリングホイール1(ハンドル)を手放した場合を想定すると、目標操舵トルク設定部32でのその時点での操舵角θ、車速Vにおける目標操舵トルクTh*が設定される。しかし、手放ししたことにより、操舵トルクThが0となり、目標操舵トルクTh*にするために電流指令値演算部31では、アシストするためのモータ電流Imを減少させていずれ0となる。ハンドルを手放しした時点で前輪14(タイヤ)に働くセルフアライニングトルク(以下、SATという。)によりハンドルは中立位置(車両が直進するためのハンドル位置)方向へ戻される。
【0085】
この場合、仮に、前記ハンドル戻し制御部60、戻し判定部70が設けられていない第2実施形態のような構成では、低速走行時には、このSATは小さく、又、前記MA−MT制御側でも、ハンドルを中立位置方向へ戻そうとするモータ電流Imを制御していないため、電動パワーステアリング装置を構成している機構の内部摩擦によりハンドルが途中で止まってしまい、操舵フィーリングが悪化する問題がある。
【0086】
それに対して、本実施形態では、戻し判定部70により、ハンドル戻しを判定した場合、MA−MT制御によるアシスト電流指令値Iが0となっても、ハンドル戻し制御部60の制御によってハンドル戻し電流Ihが、モータ6に通電されて、ハンドルを中立位置に戻す。この結果、低速走行時のハンドル戻し特性が向上する。
【0087】
(2)本実施形態においては、戻し判定部70(ハンドル戻し判定手段)は、操舵角θと操舵角速度Sが符号が一致していない互いに逆符号のときにハンドル戻しであると判定するようにした。この結果、手で戻している場合や、ハンドルを手放ししているいずれの状態においても、ハンドル戻しの判定を行うことができる。
【0088】
(第3実施形態の他の態様)
第3実施形態の構成を下記のように変更してもよい。
A.ハンドル戻しマップ62の代わりにハンドル戻しマップ64の構成に代えること。
【0089】
図12には、ハンドル戻しマップ64及びその周辺の構成を示している。ハンドル戻しマップ64には、微分器65で操舵角θを微分して得た操舵角速度Sが入力される。
【0090】
ハンドル戻しマップ64は図12に示すように、操舵角速度Sの符号によって、右アシスト又は左アシストに係るハンドル戻し電流Ihの演算を行う。又、ハンドル戻しマップ64は、|S|が大きくなると、ハンドル戻し電流Ihがそれぞれ一定値に設定され、|S|が0を含む所定範囲内では、ハンドル戻し電流Ihは0となるように設定されている。
【0091】
従って、このハンドル戻しマップ64では、操舵角速度Sに対し操舵方向へアシストするようにハンドル戻し電流Ihを設定する。
本態様では、車速V及び操舵角速度Sがハンドル操舵環境パラメータに相当する。
【0092】
B.乗算器71の後段になまし処理部72を設ける。
図13は、第3実施形態の構成になまし処理部72を設けた構成を示し、図14は、上記Aの構成になまし処理部72を設けた構成をそれぞれ示している。
【0093】
なまし処理部72では、例えば、ローパスフィルタ処理にてなまし処理を行う。なまし処理により、戻し判定部70でハンドル戻し制御部60の制御が有効になったり、無効になったりする瞬間にハンドル戻し電流Ihが不連続になり、違和感が生じることがなくなる。
【0094】
C.戻し判定部70の戻し判定処理を下記のように変更すること。
○ 操舵角θと操舵角速度Sが逆符号(不一致)であって、かつ、MA−MT制御のアシスト電流指令値Iが0のとき、「1」としてハンドル戻しが行われていると判定し、それ以外のときは「0」として、ハンドル戻しがされていないとして判定する。こうすると、ハンドルを手放ししている状態においてのみ、ハンドル戻しの判定を行うことができる。この状態のときのみ、ハンドル戻し制御を実現することができる。
【0095】
○ 図15に示すように戻し判定部70を、マップとして構成する。CPU21は、このマップを使用して、操舵トルクThを入力すると、操舵トルクThが0近傍のときには、「1」を出力し、操舵トルク|Th|>X(X(>0)は定数)のように、ある値X以上になると、「0」を出力するようにする。このようにすると、手で戻している場合や、ハンドルを手放ししているいずれの状態においても、ハンドル戻しの判定を行うことができる。
【0096】
(第4実施形態)
次に第4実施形態を図16及び図17を参照して説明する。図16は、ダンパ制御部80の機能ブロック図、図17は電動パワーステアリング装置の制御装置のブロック図である。
【0097】
本実施形態は、第3実施形態の構成中、ハンドル戻し制御部60、戻し判定部70の代わりに、ダンパ制御部80が設けられているところが異なっている。
ダンパ制御部80は、車速ゲインマップ81、ダンパマップ82、乗算器83及び微分器84を備えている。
【0098】
本実施形態のCPU21は、第2実施形態の各手段の他に、ダンパ制御手段に相当する。
ダンパ制御部80では、車速Vに対して予め設定されている車速ゲインマップ81に基づき車速ゲインKdを演算し、乗算器83に供給する。車速ゲインマップ81は、図16に示すように車速Vが低速の場合は、車速ゲインKhは0に設定されており、車速Vが所定値を越えると、車速ゲインKhが増加し、高速となると一定値となるように設定されている。
【0099】
ダンパマップ82には、微分器84で操舵角θを微分して得た操舵角速度Sが入力される。
ダンパ制御部80では、操舵角速度Sに対して予め設定されたダンパマップ82に基づいて、ダンパ電流Idを演算し、乗算器83に入力する。なお、ダンパマップ82は図16に示すように操舵角速度Sの符号によって、右アシスト又は左アシストに係るダンパ電流Idの演算を行う。又、ダンパマップ82は、|S|が大きくなると、右アシスト又は左アシストに係るダンパ電流Idがそれぞれ一定値に設定され、|S|が0を含む所定範囲内では、同ダンパ電流Idは0となるように設定されている。
【0100】
乗算器83は、入力された車速ゲインKdをダンパ電流Idに乗算した後、その出力値を加算器39に供給する。
加算器39は、電流指令値演算部31から出力されたアシスト電流指令値Iにダンパ電流Idを加算し、その値を減算器33に出力する。
【0101】
図17に示す減算器33は、アシスト電流指令値Iとダンパ電流Idの合計値と実際のモータ電流Imとの差に相当する信号(アシスト電流制御値に相当する)を電流制御部34に出力する。
【0102】
電流制御部34では、減算器33の出力と実際のモータ電流Imとの差に相当する信号に基づいてフィードバック制御を行うべくモータ駆動装置24に供給する。
【0103】
この結果、モータ駆動装置24を介してモータ6を駆動制御することにより、モータ6による適正なアシスト力が得られ、或いはダンパ制御により、MA−MT制御において、高速走行時のハンドルの収斂性を良好にする。
【0104】
本実施形態では、CPU21は、第2実施形態の各手段の他にダンパ制御手段も構成している。又、車速V、操舵角速度Sはハンドル操舵環境パラメータに相当する。
【0105】
第4実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態では、第1実施形態乃至第3実施形態と同様にMA−MT制御を行うようにした。
【0106】
ここで、高速走行中にある操舵角θだけ操舵し、ハンドルを手放しした場合を想定する。この場合、目標操舵トルク設定部32でその時点での操舵角θ、車速Vにおける目標操舵トルクTh*が設定される。しかし、手放ししたことにより、操舵トルクThが0となり、目標操舵トルクTh*にするために電流指令値演算部31ではアシストするためのモータ電流Imを減少させていずれ0となる。ハンドルを手放しした時点で前輪14(タイヤ)に働くセルフアライニングトルク(SAT)によりハンドルは中立位置方向へ戻される。
【0107】
この場合、仮に、ダンパ制御部80が設けられていない第2実施形態のような構成では、高速走行時には、このセルフアライニングトルク(SAT)は大きく、又、MA−MT制御側で操舵角速度Sを減速するダンピングのためのモータ電流Imはない。従って、モータ6や、減速機等の回転体の慣性により、電動パワーステアリング装置を構成している機構の内部摩擦があっても、ハンドルの中立位置を越えてハンドルがオーバーシュートしてしまう。この結果、ハンドルが中立位置に収斂するのに時間がかかり、車両がふらつく問題がある。
【0108】
又、高速走行時に手放ししていなくてもハンドルの中立位置付近ではMA−MT制御によるアシスト電流指令値Iが0となる領域があり、モータ6や減速機等の回転体の慣性によりハンドルがオーバーシュートしてしまいハンドルの収斂性が悪化する問題がある。
【0109】
それに対して、本実施形態では、高速走行時に、ある操舵角θだけ操舵し、ハンドルを手放しした場合や、手放ししない状態のように操舵状態に関わりなく、ダンパ制御部80により、モータ6や、減速機等の回転体の慣性により、ハンドルの中立位置を越えてハンドルがオーバーシュートすることがなく、ハンドルが中立位置に収斂するのに時間がかかることがなくなる。
【0110】
(第4実施形態の他の態様)
第4実施形態を図18に示すように変更してもよい。
図18に示すように、この態様では、手放し判定部90を設けている。
【0111】
手放し判定部90は、操舵トルクゲインマップを備えている。手放し判定部90は、このマップを使用して、操舵トルクThを入力すると、操舵トルクThが0及び0近傍のときには、手放ししていると判定して「1」を出力し、操舵トルク|Th|>X1(X1(>0)は定数)のように、ある値X1以上になると、手放ししていないと判定して「0」を出力するようにする。
【0112】
このようにすると、ハンドルを手放ししている状態や、ハンドルが中立位置に近傍にある場合において、ダンパ制御を有効化することができる。
この場合、本実施形態では、CPU21は、手放し判定部90を設けているため、さらに手放し判定手段も構成している。
【0113】
尚、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
○第1実施形態においては、目標操舵トルクを左右のそれぞれの操舵に応じて設定しなかったが、目標操舵トルクを左右のそれぞれの操舵に応じて独立に設定してもよい。こうすると、左右に操舵した場合のヒステリシスの制御が可能となる。
【0114】
○前記各実施形態では、ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置の制御装置において、MA−MT制御を行うように構成したが、図19に示すようにコラム及びピニオンアシスト型の電動パワーステアリング装置の制御装置に具体化してもよい。
【0115】
なお、図において、ステアリングシャフト2には減速機5が固着されている。この減速機5にはモータ6の回転軸に取着したギア7が噛合されている。更に、減速機5にはピニオンシャフト8が固着されている。他の構成は、第1実施形態と同様の構成を備えているため詳細な説明は省略する。
【0116】
又、この態様においては、第1実施形態の電気的構成と同様の構成を採用し、アシスト電流指令値Iの決定の仕方についてのみ、第1実施形態と異なるため、このアシスト電流指令値Iの決定の仕方について以下説明する。
【0117】
コラム及びピニオンアシスト型の場合、操舵トルクTh、モータ電流Imの時のラック推力Fは次式(E)で求まる。
F(Th,Im)=2π(Th+Kt・Im・G・ηg)・ηp/St…(E)
なお、Thは操舵トルク、ηpはラック&ピニオンギヤ効率、Stはそのストローク比である。又、Ktはトルク定数、Gは減速機5の減速比、ηgは減速機5の減速機効率である。
【0118】
従って、上記(E)を用いて、車速V、操舵角θにおける目標操舵トルクTh*、アシスト電流指令値Iのときのラック推力F(以下、この推力をF(Th*,I)で表す。)と、操舵トルクTh、モータ電流Imのときのラック推力F(以下、この推力をF(Th,Im)で表す。)が等しくなるようにアシスト電流指令値Iを設定する。
【0119】
F(Th*,I)=F(Th,Im)に、上記(E)式を代入して、Iを求めれば、下記の式となる。
I=Im+(Th−Th*)/(Kt・G・ηg)
このようにして得られたアシスト電流指令値Iを減算器33に出力する。
【0120】
なお、アシスト電流指令値Iが目標操舵トルクTh*と逆符号、すなわち、逆アシストとなる場合には、アシスト電流指令値Iをゼロと決定して、減算器33に出力する。
【0121】
なお、他の処理は第1実施形態と同様に処理する。
○なお、各実施形態及び各実施形態の態様を互いに組み合わせても良い。
例えば、第3実施形態と第4実施形態とを組み合わせたり、第3実施形態の他の態様と第4実施形態とを組み合わせたりしてもよい。
【0122】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1乃至請求項の発明によれば、操舵角に対する操舵トルクの傾きを容易に設定することが可能となり、ビルドアップ感の適合が容易に行うことができる。
【0123】
又、路面反力が低下したり、モータや減速機等による慣性や粘性により操舵トルクが減少したり、増加しても、操舵トルクが目標操舵トルクとなるようにアシスト電流指令値を調整する作用が働き、安定した操舵フィーリングを得ることができる。
【0124】
さらに、急操舵した場合であっても操舵角センサで検出した操舵角信号を操舵角速度に基づき、位相補償するようにしたため、操舵角は、位相が操舵角信号よりも位相が進められていて、位相遅れが生じず、目標操舵トルク設定手段で設定された目標操舵トルクになるように制御することができる。
【0125】
加えて、ハンドル戻し判定手段により、ハンドル戻しを判定した場合、MA−MT制御によるアシスト電流指令値が0となっても、ハンドル戻し制御手段の制御によってハンドル戻し電流が、モータに通電されて、ハンドルを中立位置に戻すため、低速走行時のハンドル戻し特性を向上できる。
【0126】
請求項及び請求項の発明によれば、手で戻している場合や、ハンドルを手放ししているいずれの状態においても、ハンドル戻しの判定を行うことができる。
【0127】
請求項の発明によれば、ハンドルを手放ししている状態においてのみ、ハンドル戻しの判定が行われて、ハンドル戻し制御を実現することができる。
請求項の発明によれば、高速走行時に、ある操舵角だけ操舵し、ハンドルを手放しした場合や、手放ししない状態のように操舵状態に関わりなく、モータや、減速機等の回転体の慣性により、ハンドルの中立位置を越えてハンドルがオーバーシュートすることがなく、ハンドルが中立位置に収斂するのに時間がかかることがなくなる。
【0128】
請求項の発明によれば、ハンドルを手放ししている状態や、ハンドルが中立位置に近傍にある場合において、ダンパ制御を有効化することができ、請求項の効果を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態における電動パワーステアリング装置の制御装置の概略図。
【図2】 同じく制御装置のブロック図。
【図3】 同じく目標操舵トルク設定ルーチンのフローチャート。
【図4】 同じく目標操舵トルク設定マップの説明図。
【図5】 同じく不感帯の説明図。
【図6】 同じく電流指令値演算部のブロック図。
【図7】 同じく不感帯幅の算出の説明図。
【図8】 第2実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置のブロック図。
【図9】 同じく位相補償器35の機能ブロック図。
【図10】第3実施形態の電動パワーステアリング装置の制御装置のブロック図。
【図11】同じくハンドル戻し制御部及び戻し判定部の機能ブロック図。
【図12】他の形態のハンドル戻し制御部及び戻し判定部の機能ブロック図。
【図13】他の形態のハンドル戻し制御部及び戻し判定部の機能ブロック図。
【図14】他の形態のハンドル戻し制御部及び戻し判定部の機能ブロック図。
【図15】他の形態の戻し判定部の機能ブロック図。
【図16】第4実施形態のダンパ制御部の機能ブロック図。
【図17】同じく電動パワーステアリング装置の制御装置のブロック図。
【図18】同じくダンパ制御部及び操舵トルクゲインマップの機能ブロック図。
【図19】他の実施形態の電動パワーステアリング装置に係る制御装置の概略図。
【図20】従来の電動パワーステアリング装置に係る制御装置の概略図。
【符号の説明】
1…ステアリングホイール(ハンドル)、4…トルクセンサ、6…モータ、
20…制御装置(制御手段)、
21…CPU(制御手段、目標操舵トルク設定手段、アシスト電流演算手段、位相補償手段、ハンドル戻し制御手段、戻し判定手段、ダンパ制御手段、手放し判定手段)、
60…ハンドル戻し制御部、70…戻し判定部、
80…ダンパ制御部、90…手放し判定部。

Claims (6)

  1. アシスト電流指令値に基づいてモータを駆動制御する制御手段を備えた電動パワーステアリング装置の制御装置において、
    操舵角及び車速に基づいて各速度毎に右操舵及び左操舵に対応した目標操舵トルクを設定する目標操舵トルク設定手段と、
    操舵トルク、前記目標操舵トルク、及び前記モータのモータ電流とに基づいてアシスト電流指令値を演算するアシスト電流演算手段を備えるとともに、
    前記操舵角を操舵角速度に基づいて位相補償する位相補償手段を備え、前記目標操舵トルク設定手段は、位相補償された操舵角が入力されるものであり、
    かつ、ハンドルの戻しの判定を行うハンドル戻し判定手段と、
    前記ハンドル戻し判定手段がハンドル戻し状態であると判定した際に、前記車速及び操舵角に基づいてハンドル戻し電流を演算するハンドル戻し制御手段とを設け、
    前記制御手段は、前記ハンドル戻し電流をアシスト電流指令値に加算した値に基づいてモータを駆動制御することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
  2. 前記ハンドル戻し判定手段は、操舵角と操舵角速度が逆符号のときにハンドル戻しであると判定することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  3. 前記ハンドル戻し判定手段は、操舵角と操舵角速度が逆符号であって、かつ、アシスト電流指令値が0のときに、ハンドル戻しであると判定することを特徴とする請求項1に記載の電導パワーステアリング装置の制御装置。
  4. 前記ハンドル戻し判定手段は、操舵トルクが0又はその近傍の値のときに、ハンドル戻しであると判定することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  5. 前記車速及び操舵角速度に基づいてダンパ電流を演算するダンパ制御手段を設け、
    前記制御手段は、ダンパ制御手段が演算したダンパ電流をアシスト電流指令値に加算した値に基づいてモータを駆動制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  6. ハンドルの手放しを判定する手放し判定手段を設け、
    前記手放し判定手段は、手放しであると判定した際に、前記ダンパ制御の制御を有効化することを特徴とする請求項5に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置
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