JP3865772B2 - プラスチック製コンベヤーシステム用の熱可塑性樹脂適合性潤滑剤 - Google Patents

Description

発明の分野
この発明は、プラスチック製コンベヤーシステムに使用するのに適した潤滑剤に関する。より詳細には、この発明は、プラスチック製のトラックまたはベルトの潤滑化によって、連続的に移動するプラスチック製コンベヤーの潤滑性を増大させるコンベヤー用潤滑剤に関する。
発明の背景食料や飲料の加工工業においては、ボトル類の洗浄、充填およびラベル張りの工程は自動的におこなわれる。この種のボトル類の作業ステーション間の輸送はベルトコンベヤーを用いておこなわれている。食料や飲料の加工工業においては、プラスチック製コンベヤーベルトの利用が増大しているので、プラスチックに優れた潤滑性を付与するが有害な影響をもたらさない水性潤滑剤が要請されている。
プラスチック製のコンベヤーベルト、トラックまたはチェーンに適用する水性潤滑剤についてはほとんど知られていない。当該工業界において使用されているタイプのプラスチック製コンベヤーシステムは、例えば、米国特許第４，４３６，２００号明細書に記載されている。
金属製コンベヤーシステム用の潤滑剤は周知であり、このようなシステムにおけるノニオン界面活性剤の役割は米国特許第３，３７２，１１７号および同第４，４１４，１２１号各明細書に記載されている。これらのいずれの明細書にも、金属製コンベヤーシステム用の金属被覆性潤滑剤組成物の他の配合成分と共に、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーをノニオン界面活性剤として使用することが記載されている。
ポリマーの応力亀裂を防止するために、アニオン界面活性剤またはカチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を併用することが米国特許第３，３５２，７８７号明細書に記載されている。
米国特許第４，４３６，２００号明細書に開示されているプラスチック製コンベヤーベルト用潤滑剤は、熱可塑性樹脂に埋没させた繊維から成る乾式潤滑剤である。この種の織維は均一に分散されたテトラフルオロエチレンモノフィラメント繊維から成る。
本発明者は、ＢＡＳＦ社製のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー［プルロニックス（Pluronics）］がプラスチック製コンベヤーシステム用水性潤滑剤組成物の基本成分として使用できることを究明した。該組成物は現在市販されている金属製コンベヤー用潤滑剤に比べて優れた潤滑性と性能を発揮する。
発明の概要
即ち本発明は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーを含有する熱可塑性樹脂適合性の水性潤滑剤組成物をプラスチック製のベルトまたはトラックの表面に塗布する工程を含む、連続的に移動する容器（好ましくはプラスチック製容器）輸送用プラスチック製コンベヤーシステムの潤滑化法に関する。
本発明の第２の観点によれば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、界面活性剤（好ましくはアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との混合物）および中和剤を含有する水性潤滑剤組成物をプラスチック製ベルトまたはトラックの表面に塗布することによる該プラスチック製コンベヤーシステムの潤滑化法が提供される。
本発明の第３の観点によれば、プラスチック製コンベヤーシステムに適用するのに適した熱可塑性樹脂適合性の液体状または固体状の潤滑剤濃厚物が提供される。この潤滑剤濃厚物はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー（分子量：約４，０００〜１５，０００）を約１．０〜１００重量％含有する。該潤滑剤濃厚物は約５０重量％までのアニオン界面活性剤、約３０重量％までのノニオン界面活性剤および約１０重量％までの中和剤を含有していてもよい。
本発明の第４の観点によれば、プラスチック製ベルトまたはトラックに塗布するための熱可塑性樹脂適合性の水性潤滑組成物が提供される。該水性潤滑組成物はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー（分子量：４，０００〜１５，０００）を約１００〜１０，０００ppm含有する。また、該水性潤滑組成物は５，０００ppmまでのアニオン界面活性剤、３，０００ppmまでのノニオン界面活性剤および１，０００ppmまでの中和剤を含有していてもよい。
発明の詳細な説明
食料や飲料の加工工業においては、食料や飲料を収容する容器の材質としては熱可塑性樹脂が利用される場合が多く、この種の容器の作業ステーション間の輸送はプラスチック製ベルトコンベヤーを用いておこなわれている。コンベヤー上でのバックアップ（back up）により容器がコンベヤー上で停止することがしばしばある。容器は停止してもベルトは連続的に移動する。容器の円滑な輸送を促進するために、潤滑組成物をコンベヤーベルトの表面上に噴霧する。潤滑組成物は一般的には、潤滑剤濃厚物を水で１：１００〜１：１０００に希釈することによって得られる水性液である。
潤滑組成物を使用する一つの理由は、円滑な移動を促進し、容器間の機械的な衝突並びに容器間および容器とベルトの間の摩擦作用に起因する容器の損傷を低減させることである。
従って、潤滑組成物は良好な界面活性剤特性を有するのが望ましく、これによって該水性液をベルトや容器の表面上に均一に分散させることができるので、該表面間の摩擦係数を低下させ、良好な洗浄特性によって容器の洗浄性を高めることができる。潤滑組成物に必要な特性は熱可塑性樹脂に対する適合性である。潤滑剤は、使用に際して、熱可塑性樹脂に対して確立された適合性試験に合格するならば、熱可塑性樹脂適合性があるとみなされる。
潤滑組成物の他の望ましい特性は生分解性と非毒性である。環境に放出される合成薬剤によって引き起こされる生態学的問題についての一般公衆の関心は増々高くなっている。行政によるより厳しい規制はこのような一般公衆の関心に応えるものでなければならない。潤滑剤濃厚物に配合されている常套の薬剤に比べて生分解性が高くて毒性の低い薬剤を含有する潤滑組成物が好ましい。
この発明は、水との混合によってプラスチック製コンベヤーシステム上の容器の輸送を促進する潤滑剤となる熱可塑性樹脂適合性潤滑剤濃厚物を提供する。特に、本発明には、プラスチック製コンベヤーベルトまたはトラック用潤滑剤としてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーの使用が含まれる。
ブロックコポリマー
エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーは当該分野においてはノニオン性界面活性剤として知られており、また、市販されている。この種のブロックコポリマーとしてはＢＡＳＦ社製の「プルロニックス」が例示される。
本発明においては、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーはノニオン性界面活性剤としてではなく、プラスチック製コンベヤーシステムのベルトやトラックに優れた潤滑性を付与する本質的成分として使用する。ブロックコポリマーの分子量は、約８００〜約２０，０００である。好ましいブロックコポリマーの分子量は約４，０００〜１５，０００である。
本発明において使用する１つのタイプのエチレンオキシド／プロピレンオキシドコポリマーは、プロピレンオキシドをプロピレングリコールの２つのヒドロキシル基に調整条件下で付加させて調製されるポリマーにエチレンオキシドを最終ポリマー分子の１０〜８０重量％になる割合で親水性基の間にこの疎水性化合物の両末端が結合するように付加させて得られるコポリマーである。このタイプのポリマーは次式で表される：

式中、Xおよびyは特に限定的ではなく、所望のポリマー中のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの量によって左右される整数である。この場合、いずれにしてもエチレンオキシドの量が１０〜８０重量％になるようにする。
本発明において使用する別のタイプのブロックポリマーは、エチレンオキシドをエチレングリコールに付加させて調製される所定量の分子量を有する親水性化合物の外側にプロピレンオキシドの疎水性ブロックを付加させて得られるコポリマー（即ち、中央のエチレンオキシドブロックとその両側のプロピレンオキシドブロックから成るポリマー）である。このタイプのコポリマーは次式で表される：

この場合も、エチレンオキシドの量は１０〜８０重量％である。
本発明においてプラスチック製コンベヤーシステム用潤滑剤として用いるこの種のブロックコポリマーは液状、ペースト状または固体状であってもよく、単独で使用してもよく、他の成分と併用してもよい。好ましいブロックコポリマーは分子量が４，０００〜１５，０００のものであり、ポリエチレンオキシドブロックによって挟まれたポリエチレンオキシドを含有し、エチレンオキシドの量が約１０〜８０重量％のコポリマーである。最も好ましいブロックコポリマーは市販されている「プルロニックＦ−１０８」のようなポリマー、即ち、平均分子量が１４，６００、溶融／流動点が５７℃、粘度が２，８００cps（７７℃）、表面張力が４１dyn／cm（２５℃、０．１％）の室温で固体のポリマーである。
その他の活性成分を配合して潤滑剤の有効性を高めてもよい。例えば、潤滑剤濃厚物はカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤およびノニオン界面活性剤を含有していてもよい。アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の混合物が好ましい。このような界面活性剤については、例えば、カークーオズマーの「エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー」、第１９巻（第２版、１９６９年）、第５０７頁〜第５９３頁（界面活性剤）に記載されており、該記載も本明細書の一部を成すものである。
本発明に使用するのに適したアニオン界面活性剤としては、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ホスフェートおよびこれらの任意の混合物が例示される。好ましいアニオン界面活性剤はホスフェートである。好ましいホスフェートはアルキルオルトホスフェート、例えば、ステアリル酸ホスフェート、アルキルポリホスフェートおよびアルキルエーテルホスフェート（アルキルホスフェートエステル）である。好ましいホスフェートエステルは炭素原子数８〜１６のアルキル鎖を有するものである。より好ましいホスフェートは直鎖状アルコールアルキレートホスフェートエステル、特にＣ₈〜Ｃ₁₀アルコールエトキシレートホスフェートエステルである。Ｃ₁₀〜Ｃ₁₈の飽和または不飽和脂肪酸、例えば、トール油、オレイン油またはココナツ油のアルカリ塩も好ましい。トール油ナトリウム石けんは特に有用である。潤滑剤濃厚物に配合するアニオン界面活性剤の好ましい量は約１〜５０重量％である。
本発明に使用するのに適したカチオン共界面活性剤には、１個または２個の長鎖脂肪アルキル基および１個または２個の低級アルキルまたはヒドロキシアルキル置換基を有する第四級アンモニウム界面活性剤が含まれ、好ましいものとしてはアルキルベンジルジメチルアンモニウムが例示される。この場合、アルキル基はステアリル、牛脂アルキル、ラウリル、ミリスチルおよびこれらの任意の混合基である。
ノニオン界面活性剤には、長鎖アルコール、例えば脂肪族脂肪アルコールおよびアルキルフェノールのポリアルキレンオキシド縮合物が含まれ、好ましいものとしてはＣ₆〜Ｃ₁₈アルキル鎖を有するものが例示され、一般的にはタル油、ココナツ油、ラウリン酸、ステアリン酸またはオレイン酸とポリオキシエチレンとの付加物またはこれらの任意の混合物が挙げられる。その他のノニオン界面活性としては、炭素原子数約８〜２２の脂肪アルキル基またはアシル基を有する脂肪酸アミンまたはアミドとポリオキシアルキレンとの縮合物（オキシアルキレン部分中のアルキルオキシユニット数：約１０〜４０）、例えば、エチレンオキシド１０〜３０モル有するココナツ油アミンまたはアミドとの縮合生成物が挙げられる。同一の脂肪酸アミンまたはアミドに異なったアルキレンオキシドを縮合させることによってブロックコポリマーを調製してもよい。例えば、３個のオキシアルキレンユニットブロックを有するポリオキシアルキレンと長鎖脂肪酸アミンとの縮合物を調製してもよい（この場合、第１および第２のブロックはプロピレンオキシド部分から成り、第２のブロックはエチレンオキシド部分から成る）。このようなブロックコポリマーは直鎖状または分枝鎖状のいずれであってもよい。
さらに別のノニオン界面活性剤は、アルコキシル化脂肪アルコールであり、一般的なものとしてはn−デシルアルコール、n−ドデシルアルコール、n−オクタデシルアルコールまたはこれらの任意の混合物と３〜５０モルのエチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。
本発明において使用するのに好ましいノニオン界面活性剤は重合度の比較的低いアルキルグリコシドのアルキレンオキシド付加物である。このようなオキシアルキル化グリコシドには、アルキレンオキシド残基を有するモノサッカリド、ジサッカリド、トリサッカリド等の脂肪エーテル誘導体が含まれ、好ましいものとしてはアルキレンオキシド（一般的にはエチレンオキシド）１〜３０ユニット、ペントースまたはヘキリース１〜３ユニットおよび炭素原子数６〜２０の脂肪アルキル基を有するものが挙げられる。オキシアルキル化グリコシドは次式で表される：
Ｈ−（ＡＯ）m−Ｇy−Ｏ−Ｒ
式中、ＡＯはアルキレンオキシド残基を示し、mは平均値１〜約３０のアルキルオキシド置換度を示し、Ｇは炭素原子数５または６の還元サッカリド、即ち、ペントースまたはヘキソースから誘導される残基を示し、Ｒは炭素原子数６〜２０の飽和または不飽和脂肪アルキル基を示し、また、ポリグリコシドの重合度（Ｄ．Ｐ．）であるyはポリグリコシド中のモノサッカリド繰り返しユニット数を示す（yは個々の分子に基づく整数であるが、潤滑剤用成分として使用するときには整数以外の平均値であってもよい）。
本発明において、使用するのにより好ましいものはソルビタンの脂肪酸エステルおよび「ツイーン（Ｔween）」（登録商標）として知られているソルビタンの脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体、即ち、ソルビタンの脂肪酸エステルにエチレンオキシドを付加させて調製されるものである。特に有用なものとしては、ポリソルベート２０、ポリオキシエチレン２０ソルビタン１０Ｒ８、ポリソルベート４０、ポリオキシエチレン２０ソルビタンモノパルマテート、ポリソルベート６０、ポリオキシエチレン２０ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート８５およびポリオキシエチレン２０ソルビタントリオリエート等が例示される。本発明による潤滑剤濃厚物に配合するノニオン界面活性剤の量は約１〜５０重量％である。
本発明による潤滑剤濃厚物に使用するのにより好ましい別のノニオン界面活性剤はアルキルポリグリコシド（ＡＰＧ）である。ＡＰＧは複数個のヒドロキシル基を有する炭水化物親水性部分も含む。
ＡＰＧはサッカリドまたはポリサッカリドの脂肪エーテル誘導体である。本発明において使用するサッカリドまたはポリサッカリド基はヘキソースまたはペントースのモノサッカリド、ジサッカリドおよびトリサッカリド等であり、アルキル基は炭素原子数７〜２０の脂肪基がある。ＡＰＧは次式で表される：
Ｇx−Ｏ−Ｒ
式中、Ｇは炭素原子数５または６の還元サッカリド即ち、ペントースまたはヘキソースから誘導される部分を示し、Ｒは炭素原子数６〜２０の飽和または不飽和脂肪アルキル基を示し、ポリグリコシドの平均重合度（Ｄ．Ｐ．）を示すｘは、ポリグリコシド中のモノサッカリド繰り返しユニットの数を表わす。この場合、xは個々の分子に基づく整数であるが、潤滑剤の配合成分として使用するときには整数以外の平均値であってもよい。本発明においては、好ましいｘの値は２．５よりも小さい値、より好ましくは１〜２の範囲の値である。
還元サッカリド部分Ｇはペントースまたはヘキソースから誘導することができる。サッカリドとしてはグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、タロース、グロース、アロース、アルトロース、イドース、アラビノース、キシロース、リキソースおよびリボース等が例示される。ポリグリコシドの製造原料としては入手の容易なグルコースが好ましい。
好ましい脂肪アルキル基は飽和アルキル基であるが、不飽和脂肪アルキル基を用いてもよい。脂肪アルキル基の代りに芳香族基、例えばアルキルフェニル基またはアルキルベンジル基等を用いても芳香族ポリグリコシドを調製してもよい。
一般的には、市販のポリグリコシドはＣ₈〜Ｃ₁₆のアルキル鎖を有し、平均重合度は１．４〜１．６である。また、一般的には、本発明によるベルト用潤滑剤濃厚物には随意にアルキルポリグリコシドを約１〜約５０重量％、好ましくは約３〜１０重量％配合してもよい。該濃厚物を使用のために希釈するときには、希釈潤滑剤溶液中のアルキルポリグリコシドの濃度を約１０〜約５，０００ppmにするのが好ましい。
多くの界面活性剤は中性pＨの条件下において最も有効であり、酸性条件下では熱可塑性樹脂に化学的な侵蝕作用をもたらす。用いる界面活性剤、例えば、ホスフェートに起因する酸は中和して系のpＨはより中性にするのが好ましい。潤滑剤濃厚物のpＨは広範囲のアルカリ性または酸性であってもよいが、好ましくは５〜１０、より好ましくは６〜９にする。一般的に使用される中和剤はアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等である。別の中和剤は第一、第二または第三アルキルアミン、好ましくはアルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等である。
中和剤としては脂肪アルキル置換アミンを用いてもよい。この場合、アミンの第一の置換基は炭素原子数８〜２２の飽和または不飽和の分枝鎖状または直鎖状アルキル基であり、第二の置換基は炭素原子数１〜４のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基またはアルコキシレート基であり、第三の置換基は親水性部分、例えば、−ＮＨ₂、−ＯＨ、−ＳＯ₃、アミンアルコキシレートおよびアルコキシレート等に結合した炭素原子数２〜１２のアルキレン基である。このようなアミンは次式でされる：

式中、Ｒ¹は炭素原子数８〜２２のアルキル基を示し、Ｒ²は水素原子、炭素原子数１〜４のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基またはアルコキシレート基を示し、Ｒ³は炭素原子数２〜１２のアルキレン基を示し、Ｘは水素原子または親水性基、例えば、−ＮＨ₂、−ＯＨ、−ＳＯ₃、アミンアルコキシレートおよびアルコキシレート等を示す。
有用な中和アミンとしては、ジメチルデシルアミン、ジメチルオクチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、エチルオクチルアミン、またはこれらの任意の混合物が例示される。
Ｘが−ＮＨ₂のときの好ましい中和剤はアルキルプロピレンアミン、例えばＮ−ココ−１，３−ジアミノプロパン、Ｎ−タロー−１，３−ジアミノプロパンおよびこれらの任意の混合物である。
好ましいエトキシル化アミンとしてはエトキシル化タローアミン、エトキシル化ココナツアミン、エトキシル化アルキルプロピレンアミンおよびこれらの任意の混合物が例示される。
一般的には、潤滑剤濃厚物に配合する中和剤の量は約１．０〜約１５重量％である。
潤滑剤濃厚物には安定剤またはカップリング剤を配合して該濃厚物を低温下でも均一になるようにしてもよい。配合成分のなかには高濃度に起因して相分離または層形成をもたらす傾向のものがある。安定剤としては種々のタイプの異なった化合物を使用してもよく、例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、尿素、オクタンスルホネート並びにグリコール類、例えばヘキシレングリコールおよびプロピレングリコール等が挙げられる。
分散助剤を添加してもよく、適当な分散助剤としてはトリエタノールアミン、アルコキシル化脂肪アルキルモノアミンおよびジアミン、例えば、ココビス（２−ヒドロキシエチル）アミン、ポリオキシエチレン（５）ココアミン、ポリオキシエチレン（１５）ココアミン、タロービス（２一ヒドロキシエチル）アミン、ポリオキシエチレン（１５）アミンおよびポリオキシエチレン（５）オレイルアミン等が挙げられる。
潤滑剤は希釈状態で製造または販売してもよいが、取扱いの容易性と輸送コストの観点からは濃厚物として製造販売するのが好ましい。潤滑剤濃厚物は、該潤滑剤の種々の配合成分を分散させるためのキャリヤー流体が約１重量％以下の実質的に固体状態であってもよい。しかしながら、潤滑剤濃厚物はキャリヤー流体を含有するのが好ましい。キャリヤー流体は、潤滑剤をコンベヤーベルトおよび熱可塑性樹脂製容器に塗布する前の該濃厚物の水を用いる分散と希釈を容易にする。
潤滑剤濃厚物の調製に際して種々の配合成分を分散させるために最も一般的に使用するのは水であり、水は好ましいキャリヤーである。しかしながら、水溶性溶剤、例えばアルコールやポリオールを使用することもできる。この種の溶剤は単独で使用してもよく、あるいは、水と併用してもよい。適当なアルコールはエタノール、プロパノールまたはブタノールであり、ポリオールとしてはグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールまたはこれらの任意の混合物を用いてもよい。一般的には、潤滑剤濃厚物に配合するキャリヤーの量は約１〜９０重量％である。該濃厚物をベルトに塗布するために水で希釈する場合、希釈潤滑溶液中の含水量は約９０〜９９．９重量％である。
一般的には、潤滑剤濃厚物を使用前に水で希釈するときの該濃厚物と水の比は１：１００〜１：１０００である。この発明の別の観点によれば、連続的に移動する容器輸送用プラスチック製コンベヤーシステムの潤滑化法は、熱可塑性樹脂に対して適合性を有する希釈水性潤滑組成物をプラスチック製コンベヤーの表面上に塗布することによっておこなう。塗布処理は噴霧法、浸漬法および刷毛塗法等によっておこなえばよい。希釈は、適当な量の濃厚物を収容する容器中に水を添加するバッチ方式でおこなってもよく、あるいは連続的なオンライン方式でおこなってもよい。オンライン方式による希釈は、通常は、定常状態の水流中に調整された量の濃厚物を射出することによっておこなう。濃厚物の射出はポンプ、例えば計量型ポンプ等を用いることによっておこなうことができるが、その他の射出手段を利用してもよい。性質の異なる水、例えば、水道水、軟水および脱イオン水等を用いてもよく、また、水は加熱してもよい。
潤滑剤濃厚物には前述の成分のほかに、別の薬剤を配合してもよい。例えば、軟水が入手できないために硬水を用いて潤滑剤濃厚物を希釈するときには、硬度カチオン、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび第一鉄イオン等が界面活性剤の効果を低減させるか、またはスルフェートイオンやカーボネートイオンと接触して沈殿物を生成する傾向があるので、このような場合には、金属イオン封鎖剤を用いて硬度イオンとの錯体を形成させることができる。金属封鎖剤の分子は、硬度イオンと配位結合を形成し得るドナー原子を２個以上有していてもよい。ドナー原子を３個、４個またはそれ以上有する金属イオン封鎖剤は三座配位、四座配位または多座配位の配位体と呼ばれる。一般的には、ドナー原子の数が多い化合物ほど良好な金属イオン封鎖剤である。好ましい金属イオン封鎖剤はエチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）である。「ベルセン（Ｖersene）」はドウ・ケミカルズ社から販売されているＮａ₂ＥＤＴＡである。その他の金属イオン封鎖剤としては次のものが例示される：トランス−１，２−ジアミノシクロヘキサン四酢酸モノハイドレート、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸のナトリウ塩、Ｎ−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸の五ナトリウム塩、Ｎ，Ｎ−ジ（β−ヒドロキシエチル）グリシンの三ナトリウム塩およびナトリウムグルコヘプトネートのナトリウム塩等。
潤滑剤濃厚物の種々の特性を改善するために、さらに別の成分を配合してもよい。例えば、流動性、粘度、安定性および微生物による変性に対する貯蔵性等を改善するための成分を配合してもよい。
好ましい態様においては、連続的に移動するプラスチック製コンベヤーシステムに使用するのに適した熱可塑性樹脂適合性の潤滑剤濃厚物は実質的に次の成分から成る：エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー（分子量：約４，０００〜１５，０００）約１０〜７５重量％、アニオン界面活性剤約１〜５０重量％、ノニオン界面活性剤約１〜５０重量％および中和剤約１〜１５重量１％。
熱可塑性樹脂適合性の希釈水性潤滑組成物の好ましい態様においては、該組成物は実質的に次の成分から成る：エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー（分子量：約４，０００〜１５，０００）約１００〜７，５００ppm、アニオン界面活性剤約１０〜約５，０００ppm、ノニオン界面活性剤約１０〜５，０００ppmおよび中和剤約１〜約１，５００ppm。
使用する溶液は濃厚物と水を１：１００〜１：１０００（１．０％〜０．１％）で希釈したものである。
濃厚組成物は、配合原料の選択と濃度に応じて液体または固体のいずれであってもよい。
本発明のより完全な理解のために、以下の実施例によって本発明の実施の態様についてさらに説明する。これらの実施例は例示的なものであり、これらによって本発明は限定されない。「部」は特に別の意味で使用する以外は全て重量に基づく。
潤滑剤濃厚物の潤滑性は短トラックコンベヤーシステムにおいて測定する。コンベヤーベルトとしては「レックスノード（Ｒexnord）ＬＦ」（ポリアセタール）プラスチック製コンベヤーベルトを用いる。輸送容器としてはＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）製ボトルを用いる。コンベヤーはモーターを用いて１００フィート／分の速度で駆動させる。希釈した潤滑剤組成物はノズルを用いてボトルとトラックに噴霧する。一般的には希釈比１：１０００の溶液を用いるが、必要に応じて異なる濃度の溶液を使用する。２０〜６０個のボトルをトラック上のラックに載せる。このラックはワイヤーを用いて歪ゲージに連結する。ベルトが移動すると、ワイヤーに対するラックの引張作用によって歪ゲージに力がかかる。引張強さをコンピュータを用いて記録する。測定試験は１時間おこない、１５〜４５分間の引張強さと摩擦係数の平均値をもとめる。摩擦係数は測定する力とボトルの質量に基づいて計算する。引張強さと摩擦係数を用いて異なる潤滑剤の特性を比較する。
水性潤滑組成物の熱可塑性樹脂に対する適合性は、希釈潤滑組成物を加圧容器に噴霧し、クラックのパターンを観察することによっておこなう。標準的な熱可塑性樹脂製ボトル（２リットル）内に水を満たし、冷蔵庫内に一夜放置する。各々のボトル内の水の量は１８００gに調整する。重炭酸ナトリウム３０gおよびクエン酸３０ｇを添加した後、ボトルに直ちに蓋をする。重炭酸ナトリウムとクエン酸はＣＯ₂を発生してボトルを加圧する。１個のボトルについては、圧力がセットされた範囲内（４．９〜５．０容積）にあることを確認するためにツァーン−ナーゲル（Ｚahn−Ｎagel）ゲージ上でチェックする。ボトルは室温下で一夜放置する。潤滑溶液は、潤滑剤濃厚物を水で１：５０に希釈することによって調製する。１２個の容器内においては、２００mlの潤滑溶液を電気ビーターを用いて５分間泡立てることによって発泡させる。発泡した潤滑溶液をプラスチック製容器の底部に散布する。ボトルを泡の中に置く。次いでボトルを相対湿度が８５％で温度が１００°Ｆのチャンバー内に２週間放置する。２週間後、ボトルをチャンバー内から取り出し、底部のひび割れ、しわおよびクラックパターンを観察し、同じ条件下の標準的な潤滑剤（実施例１Ａ参照）中に放置した対照ボトルと比較する。
実施例１
前述のような短トラックコンベヤーシステムについて潤滑性を測定した。コンベヤーベルトとしては、レクスノルド社製の殺ノミ剤処理したプラスチック製ベルト（「レクスノルドＬＦ」プラスチック製コンベヤーベルト）を使用した。ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）製ボトルを輸送した。このコンベヤーシステムは走行速度１００フィート／分および輸送負荷２２．４１kgの条件下で駆動させた。使用した溶液の流量は２，６００ml／時とした。
以下の配合成分をホットプレート上で均一になるまで攪拌下で混合した。

上記の試料を短トラックコンベヤー上で試験した。全ての試験においては軟水を使用した。試料の濃度は０．０２５％および０．０１０％とし、市販の金属製コンベヤーシステム用の標準的な潤滑剤組成物（０．１％）と比較した。その結果、該市販品濃度の１０分の１の濃度でも、上記試料はより小さな摩擦係数を示すことが判明した。
実施例１Ａ
標準的組成物
市販の潤滑剤「ペットガード（ＰＥＴＧＵＡＲＤ）」（登録商標）を本発明による組成物に対する比較試料として使用した。
「ペットガード」は脂肪酸１２％、高級アルキルアミンエトキシレート１５％、アルキルアリールスルホネートカップリング剤２０％、アルキルジアミン１．５％およびキレート化剤４％を含有する水性組成物である。
実施例２
以下の配合成分をホットプレート上で加温しながら攪拌混合することによって潤滑剤組成物を調製した。

上記試料を実施例１と同様にして試験し、実施例１Ａの標準的組成物の場合と比較したところ、より小さな摩擦係数を示した。この潤滑剤組成物はＰＥＴボトルについての応力亀裂試験においても該標準的組成物と比較したところ、応力亀裂は全く観察されなかった。
実施例３
以下の配合処方によって得られた潤滑剤組成物は実施例１および２で調製した組成物と同様の特性を示した。

実施例４
個々の試料の潤滑性を、実施例１Ａの潤滑剤組成物並びに実施例１および２の潤滑剤組成物の場合と比較した。
「プルロニック Ｆ−１０８」の０．０２５％軟水溶液を短トラックプラスチック製コンベヤーについて試験した。該溶液は試験した上記試料または組成物のいずれの場合よりも小さな摩擦係数を示した。
「プルロニック Ｆ−１０５」の０．０２５％軟水溶液を潤滑剤としての試験に供したところ、「プルロニック Ｆ−１０８」、実施例１および２並びに実施例１Ａの組成物のような潤滑性を示さなかった。
同じ希釈濃度のときの潤滑性を個々の配合成分たとえば、ポリオキシエチレン（２０）ソルビタンモノステアレートおよびタル油ナトリウムセッケンについて試験したところ、いずれの成分も不十分な潤滑性しか示さず、また、この種の成分を含有するいずれの組成物の場合よりも劣った。

Claims (6)

1. 潤滑性を付与する本質的成分としてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーを使用することを特徴とする連続的に移動する容器輸送用プラスチック製コンベヤーシステムの潤滑化法であって該ブロックコポリマーを含有する熱可塑性樹脂適合性の水性潤滑剤組成物をプラスチック製のベルトまたはトラックの表面に塗布する工程を含む該潤滑化法。
2. エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーが８００〜２０，０００の分子量を有する請求項１記載の方法。
3. ブロックコポリマーの分子量が４，０００〜１５，０００である請求項２記載の方法。
4. 水性潤滑剤組成物が下記の成分（ａ）〜（ｄ）を含有する請求項１記載の方法：
   （ａ）エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー１００〜７，５００ｐｐｍ、
   （ｂ）アニオン界面活性剤１０〜５，０００ｐｐｍ、
   （ｃ）ノニオン界面活性剤１０〜５，０００ｐｐｍおよび
   （ｄ）中和剤１〜１，５００ｐｐｍ。
5. 潤滑性を付与する本質的成分としてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー（分子量：４，０００〜１５，０００）を含有することを特徴とする連続的に移動するプラスチック製コンベヤーシステムに使用するための熱可塑性樹脂適合性潤滑剤濃厚物であって、該ブロックコポリマーを１．０〜１００重量％含有する該潤滑剤濃厚物。
6. 潤滑性を付与する本質的成分としてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー（分子量：４，０００〜１５，０００）を含有することを特徴とする連続的に移動するプラスチック製コンベヤーベルトまたはトラックに使用するための熱可塑性樹脂適合性の水性潤滑組成物であって、該ブロックコポリマーを１００〜１０，０００ｐｐｍ含有する該水性潤滑組成物。