JP3865600B2 - 適応特性補聴器および最適補聴処理特性決定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、補聴器の補聴処理特性を環境音に適応させた適応特性補聴器およびその適応性を実現させる最適補聴処理特性決定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
4人に1人が65歳以上という超高齢者社会を目前に控え、高齢者の活動を支援する技術の開発が活発である。視覚や聴覚も老化は誰もが避けられず視力や聴力の損失を補うメガネや補聴器はますますその重要性を増す。しかしながら補聴器の特性を各人に最適に合せること(フィッティング)はメガネの調整のようにはいかず、まだまだ技術開発の余地が多い。
その困難な技術の1つに、補聴器に入ってくる会話、音楽、環境音などに応じて最適な特性に自動的に適応させる技術開発が求められている。
【0003】
最も多い市販の補聴器は、図7に示すように、マイクロホン100から入力したすべての音を単一の補聴特性で信号処理しイヤホン101を通じて聴覚障害者の耳に伝える補聴信号処理部102を備えている。そして、現状のほとんど全ての市販補聴器は、購入時に専門家によってフィッティングされた1つの補聴処理特性ですべての入力音に対応しているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、音楽と音声では最適フィッティング特性が異なっていたという実験結果(大崎美穂「進化的計算手法を用いた聴覚障害補償に関する研究」九州芸術工科大学博士論文 (1999)、 高木英行、大崎美穂、「聴覚障害者の聴こえに基づく聴覚補償の自動最適化」日本音響学会講演論文集 1-2-18, pp.359--360 (1999年3月),S. Fujii, H. Takagi, M.Ohsaki, M. Watanabe, and S. Sakamoto, "Evaluation and Analysis of IEC Fitting,'' 7th Western Pacific Regional Acoustics Conference (WESTPRAC VII), Kumamoto, Japan,pp.369-372 (Oct., 2000))からも分かるように、従来のような単一補聴処理特性ですべての音に対処しようとすることには無理があるか、少なくとも性能の低下を引き起こす。
【0005】
そこで、この問題を解決するための一般的な適応特性補聴器は、図8に示すように、外部から与えられたフィッティングパラメータによって決定される信号処理特性に基づいてマイクロホン100を介して入力される音響信号を聴覚障害者に適した音に信号処理してイヤホン101に出力する補聴信号処理部103と、マイクロホン100を介して入力される音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部104と、音響パラメータ抽出部104で得られた音響パラメータに従って補聴信号処理部103の特性を決定する適応補聴処理特性決定部105を備えている。なお、音響パラメータとは、周波数特性、音圧レベル、時間波形などをいう。
しかし、問題はどのように補聴処理特性を決定するかであり、従来の適応特性補聴器における適応補聴処理特性決定部105の構成では、ユーザの要求を満足させることはできなかった。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、補聴処理特性を環境音に適応して決定する適応特性補聴器およびその適応特性を最適に求めることができる最適補聴処理特性決定装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、外部から与えられたフィッティングパラメータによって決定される信号処理特性に基づいて入力音響信号を聴覚障害者に適した音に信号処理する補聴信号処理部と、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータに従って前記補聴信号処理部の特性を決定する適応補聴処理特性決定部とからなる適応特性補聴器において、前記適応補聴処理特性決定部が音響パラメータをフィッティングパラメータに変換する写像関係を記述する写像部で構成され、前記写像関係は数種類の環境音で決定されるものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、外部から与えられたフィッティングパラメータによって決定される信号処理特性に基づいて入力音響信号を聴覚障害者に適した音に信号処理する補聴信号処理部と、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータに従って前記補聴信号処理部の特性を決定する適応補聴処理特性決定部とからなる適応特性補聴器において、前記適応補聴処理特性決定部が入力音響信号をフィッティング特性の観点から識別する音響パラメータ認識部と、この音響パラメータ認識部の認識結果に対応した代表的なフィッティングパラメータを記録したフィッティングパラメータテーブルと、前記音響パラメータ認識部で得られた認識結果に基づいて対応するフィッティングパラメータを前記フィッティングパラメータテーブルから検索して出力するフィッティングパラメータ検索部から構成されるものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、音響信号を集めた音響データベースと、異なる音響信号毎に聴覚障害者に最適な補聴処理特性を決定する手段を備えて最適なフィッティングパラメータを出力するオフライン補聴器フィッティング部と、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータをフィッティングパラメータに変換する写像関係を記述する写像部と、前記オフライン補聴器フィッティング部で得られた最適フィッティングパラメータと前記写像部が出力したフィッティングパラメータの差を求めその差が最小になるよう前記音響パラメータ抽出部で抽出する音響パラメータを最適化するか或いは前記写像部の写像特性を最適化するか少なくとも一方を最適化する最適化部から構成されるものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、音響信号を集めた音響データベースと、異なる音響信号毎に聴覚障害者に最適な補聴処理特性を決定する手段を備えて最適なフィッティングパラメータを出力するオフライン補聴器フィッティング部と、このオフライン補聴器フィッティング部で得られた複数のフィッティングパラメータベクトルをクラスタリングするフィッティングパラメータクラスタリング部と、このフィッティングパラメータクラスタリング部でグループ化されたフィッティングベクトルの代表ベクトルを計算する代表ベクトル計算部と、この代表ベクトル計算部で得られた代表ベクトルを記録するフィッティングパラメータテーブルと、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータをクラスタリングする音響パラメータクラスタリング部と、前記フィッティングパラメータクラスタリング部で得られたクラスタリング特性と前記音響パラメータクラスタリング部で得られたクラスタリング特性の一致度を計算し、一致度が最大になるよう前記音響パラメータ抽出部で抽出する音響パラメータを最適化するか或いは前記音響パラメータクラスタリング部のクラスタリング特性を最適化するか少なくとも一方を最適化する最適化部から構成されるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る適応特性補聴器の構成図、図2は本発明に係る適応特性補聴器の第1の実施の形態における適応補聴処理特性決定部の構成図、図3は本発明に係る適応特性補聴器の第2の実施の形態における適応補聴処理特性決定部の構成図、図4は本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第1の実施の形態の構成図、図5は本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第2の実施の形態の構成図、図6は本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第2の実施の形態のオフライン補聴器フィッティング部と音響パラメータ抽出部が生成する音響パラメータ空間図とフィッティングパラメータ空間図である。
【0012】
本発明に係る適応特性補聴器は、図1に示すように、マイクロホン1と、外部から与えられたフィッティングパラメータによって決定される信号処理特性に基づいてマイクロホン1を介して入力される音響信号を聴覚障害者に適した音に信号処理する補聴信号処理部2と、マイクロホン1を介して入力される音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部3と、音響パラメータ抽出部3で得られた音響パラメータに従って補聴信号処理部2の特性を決定する適応補聴処理特性決定部4と、イヤホン5からなる。
【0013】
本発明に係る適応特性補聴器の第1の実施の形態では、適応補聴処理特性決定部4が、図2に示すように、n次元の音響パラメータをm次元のフィッティングパラメータに変換する写像関係を記述する写像部41で構成される。
【0014】
写像部41の写像関係は、主成分分析のような各種線形変換の他、非線形関数、ニューラルネットワーク、ファジィルールベースシステムのような各種非線形変換の中から適当な手法を1つ選択して構築される。
【0015】
そこで、写像部41の写像関係を構築するために、先ず事前に、個々の難聴者にとって数種類の音響信号に対する補聴信号処理部2の最適なフィッティングパラメータを、遺伝的アルゴリズム(GA)による対話型進化的計算(IEC)などを用いて求めておく。
【0016】
次いで、事前に決めた数種類の音響信号に対する最適なフィッティングパラメータを基に、マイクロホン1を介して入力される音響信号から音響パラメータを抽出し、この音響パラメータに対する最適なフィッティングパラメータを、ニューラルネット、ファジイなどにより推定し、n次元の音響パラメータをm次元のフィッティングパラメータに変換する写像関係を求める。
【0017】
以上のように構成した適応特性補聴器の第1の実施の形態による動作を説明する。
先ず、マイクロホン1を介して入力される音響信号(例えば、室内の環境音)から音響パラメータ抽出部3が音響パラメータを抽出し、この抽出した音響パラメータを適応補聴処理特性決定部4に入力する。
【0018】
次いで、写像部41が音響パラメータ抽出部3により抽出された音響パラメータに対応するフィッティングパラメータを選択し、この選択したフィッティングパラメータを補聴信号処理部2に設定する。
すると、補聴信号処理部2のフィッティング特性が室内の環境音に適応すべく変更される。補聴器装用者は、マイクロホン1を介して入力される室内の環境音を最適な状態でイヤホン5を介して聴取する。
【0019】
また、補聴器装用者が別の環境に移動した場合(例えば、室内から街頭)には、
同様に補聴信号処理部2のフィッティング特性が街頭の環境音に適応すべく変更される。補聴器装用者は、マイクロホン1を介して入力される街頭の環境音を最適な状態でイヤホン5を介して聴取する。
【0020】
このように適応特性補聴器の第1の実施の形態によれば、適応補聴処理特性決定部4が、n次元の音響パラメータをm次元のフィッティングパラメータに変換する写像関係を記述する写像部41で構成されているので、補聴信号処理部2の補聴特性をマイクロホン1を介して入力され時々刻々変化する音響信号に適応したフィッティング特性に変更することができる。
【0021】
本発明に係る適応特性補聴器の第2の実施の形態では、適応補聴処理特性決定部4が、図3に示すように、音響パラメータ抽出部3で抽出される音響パラメータを入力し代表フィッティングパラメータベクトル番号の識別をする音響パラメータ認識部42と、代表フィッティングパラメータベクトルを代表フィッティングパラメータベクトル番号とともに記録してあるフィッティングパラメータテーブル43と、音響パラメータ認識部42がパターン識別した代表フィッティングパラメータベクトル番号をもとにフィッティングパラメータテーブル43から代表フィッティングパラメータベクトルを読み出すフィッティングパラメータ検索部44とから構成される。
【0022】
先ず事前に、個々の難聴者にとって数種類の音響信号に対する補聴信号処理部2の最適なフィッティングパラメータセットを、遺伝的アルゴリズム(GA)による対話型進化的計算(IEC)などを用いて求めておく。
また、事前に、最適なフィッティングパラメータセットに基づいて、前記数種類の音響信号に対する複数のフィッティングパラメータセット(代表フィッティングパラメータベクトル)を用意して、フィッティングパラメータテーブル44に格納し、同時に各々のフィッティングパラメータセットに番号をふっておく。
【0023】
以上のように構成した適応特性補聴器の第2の実施の形態による動作を説明する。
先ず、マイクロホン1を介して入力される音響信号(例えば、室内の環境音)から音響パラメータ抽出部3が音響パラメータを抽出し、この抽出した音響パラメータを適応補聴処理特性決定部4に入力する。
【0024】
次いで、事前に求めておいた個々の難聴者にとっての数種類の音響信号に対する補聴信号処理部2の最適なフィッティングパラメータを基に、音響パラメータ認識部42が音響パラメータ抽出部3で抽出された音響パラメータに対応する代表フィッティングパラメータベクトルの番号をパターン識別する。そして、その番号をフィッティングパラメータ検索部44に入力する。
【0025】
次いで、フィッティングパラメータ検索部44が音響パラメータ認識部42によって識別された番号に対応するフィッティングパラメータをフィッティングパラメータテーブル43より読み出す。そして、読み出したフィッティングパラメータを補聴信号処理部2に設定する。
【0026】
すると、補聴信号処理部2のフィッティング特性が室内の環境音に適応すべく変更される。補聴器装用者は、マイクロホン1を介して入力される室内の環境音を最適な状態でイヤホン5を介して聴取する。
【0027】
また、補聴器装用者が別の環境に移動した場合(例えば、室内から街頭)には、
同様に補聴信号処理部2のフィッティング特性が街頭の環境音に適応すべく変更される。補聴器装用者は、マイクロホン1を介して入力される街頭の環境音を最適な状態でイヤホン5を介して聴取する。
【0028】
このように適応特性補聴器の第2の実施の形態によれば、音響パラメータ認識部42が、入力音を予めフィッティングパラメータテーブル43に用意された有限個の補聴特性のいずれかに識別し、フィッティングパラメータ検索部44がフィッティングパラメータテーブル43から該当するフィッティングパラメータを読み出すことで、マイクロホン1を介して入力される音響信号に適応した補聴特性を決定する適応補聴処理特性決定部4を構成することができる。この結果、適応的に補聴信号処理部1の特性を最適にすることが可能になる。
【0029】
本発明の第1の実施の形態における適応特性補聴器では、限られた学習データで無限の(連続的な)写像関係を学習することによって、常時補聴特性を変化させるのに対し、本発明の第2の実施の形態における適応特性補聴器では、代表的な補聴特性の間で音響信号に適応してフィッティングパラメータの切り替えを行う点が異なる。いずれの場合も、本発明の適応特性補聴器では、予め学習した写像部41や音響パラメータ認識部42を用意することでマイクロホン1を介して入力される音響信号に適応した補聴特性を実現している。
【0030】
次に、本発明に係る最適補聴処理特性決定装置は、学習された写像部41や音響パラメータ認識部42や、或いは音響パラメータ抽出部2を決定するものである。
【0031】
本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第1の実施の形態は、図4に示すように、補聴特性の学習用に各種の音響信号を集めた音響データベース7と、与えられた音響信号に対する最適なフィッティング特性をオフラインで決定するオフライン補聴器フィッティング部8と、写像部41の出力がオフライン補聴器フィッティング部8で得られた理想的なフィッティングパラメータに近づくように音響パラメータ抽出部3或いは写像部41の特性を学習させる最適化部9とから構成される。
【0032】
以上のように構成した最適補聴処理特性決定装置の第1の実施の形態による動作を説明する。基本動作には、多少時間がかかってもオフラインで最適な補聴特性を生成するオフライン補聴器フィッティング部8による流れと、リアルタイムでそのような補聴特性を生成できるように学習する音響パラメータ抽出部3と写像部41による流れの2つの流れがあり、最適化部9がその学習を行うことである。
【0033】
先ず、オフライン補聴器フィッティング部8において、複数の異なる音響信号に対して、補聴器を使う聴覚障害者にとって最適な補聴特性を決定するために、音響データベース7内の音響信号に対する最適特性(フィッティングパラメータ)を、IECフィッティングなどの方法で決定する。
【0034】
従来の補聴器フィッティングでは、純音や帯域雑音の非日常音を使って聴覚障害者の聴覚特性を事前測定し、フィッティングの専門家が経験に基づいて補聴特性を調整していた。この従来のフィッティング方法に基づいて、街頭での会話、コンサート会場、走行中のカーオーディオ、職場音など各種の音響信号に対する最適な補聴特性をオフライン補聴器フィッティング部5に実現することはほとんど不可能である。
【0035】
しかし、人間の聞こえに基づいて進化計算が補聴器のフィッティング特性を最適にするIECフィッティング(大崎美穂「進化的計算手法を用いた聴覚障害補償に関する研究」九州芸術工科大学博士論文(1999)、高木英行、大崎美穂、「聴覚障害者の聴こえに基づく聴覚補償の自動最適化」 日本音響学会講演論文集 1-2-18, pp.359--360 (1999年3月))を用いれば、各種音響信号に対する最適な補聴特性を個別に最適化することが可能になる。
【0036】
こうして、音響データベース7に用意した各種音響信号に対する聴覚障害者の補聴器の最適フィッティング特性がオフラインで得られる。これらのフィッティング特性(フィッティングパラメータ)が音響パラメータ抽出部3或いは写像部41を学習するための教師データになる。
【0037】
次いで、最適化部9において、オフライン補聴器フィッティング部8と写像部41の出力差を計算し、その誤差が最小になるように音響パラメータ抽出部3の音響パラメータを選択したり、写像部41の写像方法を調整したりする。音響パラメータ抽出部3で得られる音響パラメータを何にするか、および、得られた音響パラメータをどのような方法で写像するかによって、教師データのフィッティングパラメータに近づいたり遠ざかったりする。
【0038】
音響パラメータ抽出部3の修正は、多く用意した音響パラメータの中からどれを選択し組み合わせるかという組合せ最適化問題であるから、例えば遺伝的アルゴリズムのような最適化手法を用いればよい。また、写像部41の修正は、写像パラメータの調整であるから、例えば遺伝的アルゴリズムや勾配法などの各種最適化手法を用いればよい。
【0039】
このように最適補聴処理特性決定装置の第1の実施の形態によれば、学習用に各種音響信号に対する最適な補聴特性を決定するオフライン補聴器フィッティング部8を設けることによって、オンラインで補聴特性を決定できる音響パラメータ抽出部3と写像部41とを設計できる。これらを用いることで、適応特性補聴器も構成できる。
【0040】
本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第2の実施の形態は、図5に示すように、オフライン補聴器フィッティング部8で生成された複数の各種音響信号に対する最適なフィッティングパラメータをクラスタリングし、数個のフィッティンググループに分けるフィッティングパラメータクラスタリング部10と、フィッティングパラメータクラスタリング部10でグループ化された各クラスタの代表ベクトルを計算する代表ベクトル計算部11と、音響パラメータ抽出部3で得られた複数の各種音響信号の音響パラメータをクラスタリングし、数個のフィッティンググループに分ける音響パラメータクラスタリング部12と、フィッティングパラメータクラスタリング部10と音響パラメータクラスタリング部12とのクラスタリング対応が一致するように音響パラメータ抽出部3或いは音響パラメータクラスタリング部12の少なくとも一方を調整する最適化部13とから構成される。
【0041】
フィッティングパラメータクラスタリング部10と音響パラメータクラスタリング部12がクラスタリングを行うのは、図6に示すように、それぞれフィッティングパラメータ空間と音響パラメータ空間である。
【0042】
補聴特性の切り替えをする手がかりは音響パラメータの変化であり、切り替えられた補聴特性はフィッティングパラメータで表されるのであるから、音響データベース7の音響データを使った学習では両者のクラスタリング対応がうまくついている必要がある。この対応は、音響パラメータ抽出部3でどのような音響パラメータを抽出するか、または、音響パラメータクラスタリング部12でどのようなクラスタリングを行うかによって異なる。
【0043】
最適化部13では、フィッティングパラメータ空間と音響パラメータ空間における両者のクラスタリングの一致度を求め、一致度が増すように音響パラメータ抽出部3または音響パラメータクラスタリング部12を修正する。一致度はクラスタリングされた各グループに含まれる元の音響信号の番号が一致する個数を数えればよい。
【0044】
音響パラメータ抽出部3の修正は、多く用意した音響パラメータの中からどれを選択し組み合わせるかという組合せ最適化問題であるから、例えば遺伝的アルゴリズムのような最適化手法を用いればよい。音響パラメータクラスタリング部12の修正は、クラスタリング手法の選択とクラスタリングパラメータの調整の2つの方法で修正できるが、これも例えば遺伝的アルゴリズムで最適化が可能であるし、後者のクラスタリングパラメータの調整は勾配法でも可能である。
【0045】
以上のように構成した最適補聴処理特性決定装置の第2の実施の形態による動作を説明する。
先ず、オフライン補聴器フィッティング部8において、複数の異なる音響信号に対して、補聴器を使う聴覚障害者にとって最適な補聴特性を決定するために、音響データベース7内の音響信号に対する最適特性(フィッティングパラメータ)を、IECフィッティングなどの方法で決定する。
【0046】
次いで、オフライン補聴器フィッティング部8で求めた複数の最適フィッティングパラメータを、フィッティングパラメータクラスタリング部10によって、図6に示すように、複数のグループ(特性A,特性B,特性Cなど)に分割する。
更に、代表ベクトル計算部11により、フィッティングパラメータクラスタリング部10により分割した各グループ(特性A,特性B,特性Cなど)の代表となるフィッティングパラメータ(代表ベクトル)を、計算する。
【0047】
また、音響パラメータ抽出部3によって、音響データベース7内の音響信号の音響パラメータを抽出する。音響パラメータ抽出部3で抽出した音響パラメータを、音響パラメータクラスタリング部12によって、図6に示すように、複数のグループ(音響グループA,音響グループB,音響グループCなど)に分割する。
【0048】
また、フィッティングパラメータクラスタリング部10によるクラスタリングと音響パラメータクラスタリング部12によるクラスタリングの一致度を算出する。
【0049】
即ち、図6に示すフィッティングパラメータ空間において分割された特性A(音響信号の番号1,2,6)、特性B(音響信号の番号5,7)、特性C(音響信号の番号3,4)などのグループと、音響パラメータ空間において分割された音響グループA(音響信号の番号1,2,6)、音響グループB(音響信号の番号5,7)、音響グループC(音響信号の番号3,4)などのグループを対比し、各グループ内の音響信号の番号の一致数を算出する。なお、図6では全てのグループ内の音響信号の番号が一致している。
【0050】
次いで、最適化部13において、遺伝的アルゴリズム等を用い、音響パラメータ抽出部3で用いる音響パラメータの種類や、音響パラメータクラスタリング部12でのクラスタリングの手法若しくは調整値を適宜変更、調整したり、またフィッティングパラメータクラスタリング部10によるクラスタリングと音響パラメータクラスタリング部12によるクラスタリングの一致度を算出したりする作業を繰り返し、一致度が増すように音響パラメータの種類及びクラスタリング法を決定する。
【0051】
そして、最適化部13によって最適化された音響パラメータクラスタリング部12をパターン認識に使えるように若干修正し、図3に示す音響パラメータ認識部42と置き換えると共に、フィッティングパラメータテーブル43を導入することにより、最適補聴処理特性を有する適応特性補聴器が構成される。クラスタリングで分けられたグループにグループ名をラベル付けすればパターン認識に転用できるので、音響パラメータクラスタリング部12を音響パラメータ認識部42に転用することに技術的難易度はない。
【0052】
このように最適補聴処理特性決定装置の第2の実施の形態によれば、オフライン補聴器フィッティング部8がオフラインで色々な音に対するフィッティングパラメータを個々に最適化することによってフィッティングパラメータクラスタリング部10から得られたクラスタリング結果と、音響パラメータ抽出部3と音響パラメータクラスタリング部12の組合せからオンラインで得られた対応する音に対するフィッティングパラメータベクトルのクラスタリング結果が同じになるように最適化することで、オンラインで最適化できる音響パラメータ抽出部3と音響パラメータクラスタリング部12が得られる。クラスタリングはパターン認識に転用が容易なので、これらで最適な適応補聴処理特性決定部4が構成できる。これは適応特性補聴器に転用できる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、数種類の環境音で決定される写像関係を記述する写像部を設けることで、時々刻々入力される音響信号から音響パラメータ抽出部が音響パラメータを抽出し、適応補聴処理特性決定部がその音響パラメータを写像してからフィッティングパラメータに変換することにより、補聴信号処理部の特性を入力される音響信号に適応させて変化させることができる。
【0054】
請求項2に係る発明によれば、音響パラメータ認識部を設けることで、時々刻々入力される音響信号から音響パラメータ抽出部が音響パラメータを抽出し、適応補聴処理特性決定部がその音響パラメータをパターン識別してからフィッティングパラメータに変換することにより、補聴信号処理部の特性を入力される音響信号に適応させて変化させることができる。
【0055】
請求項3に係る発明によれば、オフライン補聴器フィッティング部がオフラインで色々な音に対するフィッティングパラメータを個々に最適化して教師データを作成し、音響パラメータ抽出部と写像部の組合せからオンラインで得られた対応する音に対するフィッティングパラメータとの差を最適化部が最小にすることで、オンラインで最適化できる音響パラメータ抽出部と写像部が得られる。これは適応特性補聴器に転用できる。
【0056】
請求項4に係る発明によれば、オフライン補聴器フィッティング部がオフラインで色々な音に対するフィッティングパラメータを個々に最適化することによってフィッティングパラメータクラスタリング部から得られたクラスタリング結果と、音響パラメータ抽出部と音響パラメータクラスタリング部の組合せからオンラインで得られた対応する音に対するフィッティングパラメータベクトルのクラスタリング結果が同じになるように最適化することで、オンラインで最適化できる音響パラメータ抽出部と音響パラメータクラスタリング部が得られる。これは適応特性補聴器に転用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る適応特性補聴器の構成図
【図2】本発明に係る適応特性補聴器の第1の実施の形態における適応補聴処理特性決定部の構成図
【図3】本発明に係る適応特性補聴器の第2の実施の形態における適応補聴処理特性決定部の構成図
【図4】本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第1の実施の形態の構成図
【図5】本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第2の実施の形態の構成図
【図6】本発明に係る最適補聴処理特性決定装置の第2の実施の形態のオフライン補聴器フィッティング部と音響パラメータ抽出部が生成する音響パラメータ空間図とフィッティングパラメータ空間図
【図7】従来の補聴器の構成図
【図8】従来の一般的な適応特性補聴器の構成図
【符号の説明】
1…マイクロホン、2…補聴信号処理部、3…音響パラメータ抽出部、4…適応補聴処理特性決定部、5…イヤホン、7…音響データベース、8…オフライン補聴器フィッティング部、9,13…最適化部、10…フィッティングパラメータクラスタリング部、11…代表ベクトル計算部、12…音響パラメータクラスタリング部、41…写像部、42…音響パラメータ認識部、43…フィッティングパラメータテーブル、44…フィッティングパラメータ検索部。
Claims (4)
- 外部から与えられたフィッティングパラメータによって決定される信号処理特性に基づいて入力音響信号を聴覚障害者に適した音に信号処理する補聴信号処理部と、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータに従って前記補聴信号処理部の特性を決定する適応補聴処理特性決定部とからなる適応特性補聴器において、前記適応補聴処理特性決定部が音響パラメータをフィッティングパラメータに変換する写像関係を記述する写像部で構成され、前記写像関係は数種類の環境音で決定されることを特徴とする適応特性補聴器。
- 外部から与えられたフィッティングパラメータによって決定される信号処理特性に基づいて入力音響信号を聴覚障害者に適した音に信号処理する補聴信号処理部と、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータに従って前記補聴信号処理部の特性を決定する適応補聴処理特性決定部とからなる適応特性補聴器において、前記適応補聴処理特性決定部が入力音響信号をフィッティング特性の観点から識別する音響パラメータ認識部と、この音響パラメータ認識部の認識結果に対応した代表的なフィッティングパラメータを記録したフィッティングパラメータテーブルと、前記音響パラメータ認識部で得られた認識結果に基づいて対応するフィッティングパラメータを前記フィッティングパラメータテーブルから検索して出力するフィッティングパラメータ検索部から構成されることを特徴とする適応特性補聴器。
- 音響信号を集めた音響データベースと、異なる音響信号毎に聴覚障害者に最適な補聴処理特性を決定する手段を備えて最適なフィッティングパラメータを出力するオフライン補聴器フィッティング部と、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータをフィッティングパラメータに変換する写像関係を記述する写像部と、前記オフライン補聴器フィッティング部で得られた最適フィッティングパラメータと前記写像部が出力したフィッティングパラメータの差を求めその差が最小になるよう前記音響パラメータ抽出部で抽出する音響パラメータを最適化するか或いは前記写像部の写像特性を最適化するか少なくとも一方を最適化する最適化部から構成されることを特徴とする最適補聴処理特性決定装置。
- 音響信号を集めた音響データベースと、異なる音響信号毎に聴覚障害者に最適な補聴処理特性を決定する手段を備えて最適なフィッティングパラメータを出力するオフライン補聴器フィッティング部と、このオフライン補聴器フィッティング部で得られた複数のフィッティングパラメータベクトルをクラスタリングするフィッティングパラメータクラスタリング部と、このフィッティングパラメータクラスタリング部でグループ化されたフィッティングベクトルの代表ベクトルを計算する代表ベクトル計算部と、この代表ベクトル計算部で得られた代表ベクトルを記録するフィッティングパラメータテーブルと、入力音響信号から音響パラメータを抽出する音響パラメータ抽出部と、この音響パラメータ抽出部で得られた音響パラメータをクラスタリングする音響パラメータクラスタリング部と、前記フィッティングパラメータクラスタリング部で得られたクラスタリング特性と前記音響パラメータクラスタリング部で得られたクラスタリング特性の一致度を計算し、一致度が最大になるよう前記音響パラメータ抽出部で抽出する音響パラメータを最適化するか或いは前記音響パラメータクラスタリング部のクラスタリング特性を最適化するか少なくとも一方を最適化する最適化部から構成されることを特徴とする最適補聴処理特性決定装置。
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