JP3860840B2 - 分光法のための交差ループ共振器の構造 - Google Patents

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Description

発明の背景
1.発明の分野
本発明は、マイクロ波及び低周波の共振器、より詳細には電子常磁性共鳴(EPR)分光法に用いる共振器に関するものである。
2.問題の提示
電子常磁性共鳴(EPR)分光法及び電子スピン共鳴(ESR)分光法は、化学、物理学、生物学、及び医学において分子構造を調べるため広く利用されている。EPRは物性科学に用いる誘電体における電子の波動関数、寿命、及び不純物の決定にも利用されている。従来のEPR分光計は以下の4つの主要な構成要素を備えている:1)定常的なDC磁場を発生させるための磁石;2)試料が配置される高Qマイクロ波共振器;3)導波管、同軸ケーブルなどを介して共振器に結合された、振動電磁場を発生可能なマイクロ波ブリッジ;4)磁場変調システム、信号増幅システム及び表示システムを備えた信号検出器。
EPRでは、定磁場がマイクロ波共振器内の化学試料に印加される。定磁場により、試料中の電子は、試料の組成により決定される周波数により歳差運動を行う。この歳差運動周波数は常磁性共鳴周波数と呼ばれ、印加された定磁場の強さと比例した関係にある。この歳差運動は、高周波エネルギを印加することにより、そのエネルギの周波数が常磁性共鳴周波数に近い場合には変化する。試料が不対電子を含んでいる場合は、歳差運動の変化を検出することが可能である。磁場又は周波数の関数としての電子の歳差運動の変化を比較することにより、試料の化学的性質に関する貴重な情報が得られる。
一般的なEPR分光計では、試料を収容した電気共振器による反射方式の測定が行われる。反射方式の分光計では、単一の共振器が使用される。試料が共振器内に配置され、マイクロ波エネルギが導波管、同軸ケーブルなどを介して共振器内に注入される一方、試料及び共振器は定磁場内に置かれる。所望のEPR信号をマイクロ波発生源の出力から分離するには、サーキュレータと呼ばれるマイクロ波素子が通常使用される。反射モードによる動作の短所は、共振器から反射されたマイクロ波発生源の出力における何れの部分も、共振器に発生したEPR信号に干渉するということである。連続したAC信号として入力マイクロ波エネルギが印加されるので「連続波」とも呼ばれる測定方式では、入力周波数が常磁性共鳴周波数と異なる場合、入力エネルギの反射を最小化するように共振器が同調される。
歳差運動周波数が入力マイクロ波電力の周波数と一致するまで磁場又はマイクロ波周波数発生源を掃引することにより解析が行われる。これら2つの周波数が同じであるとき、マイクロ波エネルギが試料に吸収され、その結果、検出素子により検出可能な反射エネルギがもたらされる。
連続波(CW)測定に関する反射方式の分光計の1つの短所は、注入されるマイクロ波エネルギの大きさと比較してEPR信号が微小であるということである。信号検出器は注入されるマイクロ波エネルギを分離しながら、EPR信号を検出しなければならない。入力信号からEPR信号を完全に分離するのは困難であることが実証されている。
もう1つの困難は、共振器に対する入力電力の不適切な結合により生ずるマイクロ波発生源の寄生的反射によって、EPR信号に大きなノイズが発生するという点にある。また、EPR信号に付加されて検出素子を飽和させることになる入力電力の大きな反射を防止するには、ソース入力導波管と検出器導波管とを共振器に精巧に結合しなければならない。
マイクロ波発生源の位相ノイズ又はノイズ周波数変調は、共振器によって反射信号におけるノイズ振幅変調に変換され、EPR信号の更なるノイズを発生させる。マイクロ波発生源から位相ノイズを除くことは不可能である。低下させることはできるが、その結果、費用が増大してしまう。位相ノイズの強度は発生源の強度に比例するので、高い電力の場合ほど結果は深刻なものになる。従って、現在のEPR機器は低電力で動作させなければならず、より大きな試料が必要になる。この位相ノイズのため、反射されたEPR信号の位相又は分散成分を反射式分光計で調べることは困難又は不可能である。
EPR用の機器は、電子スピンエコー(ESE)などのパルス方式の測定に用いることもできる。パルス方式の測定では、入力エネルギは連続波マイクロ波源ではなく高電力パルスにより与えられる。試料がDC磁場によりもたらされる基準線状態に復帰すると、このパルスは歳差運動のほぼ即時的な変化と、漸進的な減衰とを生じさせる。この測定方式では、EPR信号から入力電力を分離することが困難なので、測定前の入力パルスの印加が可能となった後に遅延させることが必要である。入力パルスにより共振器に蓄積されたエネルギは、測定値を得る前に「リングダウン」又は散逸しなければならないので、反射式の分光計ではESE信号の多くが失われる可能性がある。
EPR分光法では2種類の共振器が用いられる。初期の分光計では、空洞共振器が、そのモデル化し易い性能、可用性、及び高いQのために使用された。空洞共振器はマイクロ波、磁場、及び電場が空洞全体にわたり連続的に分布及び混和しているので、分布素子回路と呼ばれる。空洞共振器の特徴的な寸法は、使用される電磁場の波長と同じオーダである。更に最近では、集中素子共振器が提案されており、これは、それらの寸法を対象の波長よりもはるかに小さくすることが可能なためである。
集中素子共振器はマイクロ波、磁場、及び電場の混和がはるかに少なく;それぞれが共振器の物理的領域を大きく分割するように制限されている。磁場が集中している領域は、主にインダクタとして識別可能である。電場が集中している領域は、主にコンデンサとして識別される。これらの集中素子共振器のうちあるものを記述するのに用いられる用語が「ループギャップ共振器(loop-gap resonators)」である。この場合、ループは本質的に誘導性であり、ギャップは本質的に容量性である。分光計に用いられるループギャップ共振器では、試料は磁場と相互作用するようにループ内に配置される。
大部分のループギャップ共振器は上述の反射式分光計に用いられる。通常のループギャップ共振器は空洞共振器と比較してQ値が低いが、磁場が試料の近傍に集中しているので、良好なEPR信号を得ることができる。
反射式共振器に関する問題を軽減するために試みられてきた1つの手段が2モード共振器である。2モード共振器構造は、EPR信号が円偏波していることを利用するものである。言い換えれば、EPR信号は回転するベクトル場であり、空間的及び時間的に位相が90度ずれた2つの信号に等しい。これらのEPR信号の一方は入力源に結合されるもので、上述した従来の反射式分光計により検出可能である。2モード共振器は入力源から隔離された他方のEPR信号を検出する構造になっている。理論的には、マイクロ波磁場が空間的に90度に配向した2つの結合されないモードがソース共振器により励起可能である場合、一方のモードを用いてマイクロ波エネルギを試料に結合でき、他方のモードを用いてEPR信号を検出することができる。従って、2モード共振器の設計により、EPR信号からの入力電力のすぐれた分離が行われると共に、反射された入力電力によるノイズ又は位相ノイズに対し非感受的なEPR分光計がもたらされるであろう。
EPRのための実際の2モード共振器の開発は20年以上にわたって続けられている。2モード空洞共振器はバリアン・アソシエーツ社(Varian Associates,Inc.)から商業的に入手可能であったが、空洞共振器の設計に関する同調条件が複雑かつ困難であるという欠点があった。更に最近では、EPR分光法のための2モードループギャップ共振器が検討された。1992年、A・I・タピン(Tapin)、ジェームス・S・ハイド(James S.Hyde)、及びW・フロンシッツ(Froncisz)はジャーナル・オブ・マグネティック・レゾナンス(the Journal of Magnetic resonance)100号483から490頁に「2モードループギャップ共振器Bimodal Loop-Gap Resonator)」と題された論文を発表し、2つの直交したEPRモードが空間のある領域では重なり合っていないが、試料収容領域では重なり合って直交しているループギャップ共振器を提案した。残念ながら、商業的に成立可能な実施は行われなかった。
検出器から入力電力を効果的に隔離する一方で、同調が容易で低コストにより組み立てられる、EPR分光法のための共振器の構造が求められている。
従来のEPR分光計は磁場変調を行なって信号対雑音比を大きくしていた。磁場変調は、試料における歳差運動を生じさせるために用いられる定磁場と相互作用する振動磁場を発生させる変調コイルにより行われる。変調コイルは、例えば100kHzの高周波電流で励起される。磁場変調により、100kHzの変調周波数においてEPR信号に変調成分が生ずる。変調成分は増幅されて位相検波器に送られ、そこで磁場変調信号のサンプルと比較される。位相検波器は検出可能な常磁性共鳴信号の一次微分を発生させる。
磁場変調はノイズを生じさせ通路効果をもたらすので、EPR信号を抽出するには望ましくない方法である。磁場変調は共振器及び試料の近傍に磁気コイルを配置することを必要とするので、共振器構造に導入することは困難である。また、変調磁場を適正な電力レベルにおいて共振器構造に侵入させるには、共振器を薄くして、共振器構造をより脆弱かつ電気的に漏洩し易くしなければならない。
EPR分光計におけるノイズのもう1つの発生源は、試料の温度に関係する熱雑音である。この熱雑音を低減するには、試料を含む共振器構造を極低温まで冷却することが望ましい。低温での測定に関しては、共振器及び磁場変調装置を液体窒素、液体ヘリウム、又は同様の充填されたクリオスタット内に置くことが望ましい。磁場変調コイルが存在すると、低温クリオスタット内への配置はより困難となる。また、クリオスタット内に置かれた従来の共振構造を同調することは困難である。必要なのは、低温での動作と両立可能でクリオスタット又は同様の低温環境における自動式又は電動式の同調に適用可能で、構造的に堅牢な共振構造である。
従来技術による共振器構造のこれらの限界は、EPR分光法を生物学及び生物医学の研究に応用するに当たって主たる障害となる。EPR分光法の生物学的及び生物医学的用途は、試料におけるスピンの数が少ないこと、及び例えばマイクロ波発生源のノイズ、磁場変調、検出器ノイズなどの器械的なノイズ源に起因する低い信号対雑音比、及び時間分域EPRではマイクロ波パルス後のシステムの不動作時間によって制限される。EPRは自然発生するか標識又はプローブとして用いられる「フリーラジカル」及び金属酵素を検出及び解析することができるので、生物学試料に関するEPR分光法のこれらの障害を克服することは大きな商業的及び科学的意味を有している。
ある密接に関連する技術は、電子−電子二重共鳴(ELDOR)分光法と呼ばれている。ELDORには長い間、通常のEPRと比較して改善された有効分解能及び新規の緩和パラメータを解析する能力が期待されてきた。ELDORは2つ以上の電子常磁性共鳴周波数を有する試料において用いられている。過去において、ELDORは通常のEPR分光法と同様に、第1のマイクロ波周波数を印加して第1のEPR信号を第1のEPR周波数において励起することにより実施されていた。第2のマイクロ波周波数を第2の常磁性共鳴周波数により掃引する一方で、第1のEPR信号をモニタした。第2のEPR周波数を励起した際の第1のEPR信号の変化がELDOR現象である。
ELDOR現象は通常の共振構造では共振器の帯域幅が狭いことにより、第1のEPRモードと第2のEPRモードとが殆ど分離されないので、発生させ観察することが困難であった。また、ソースノイズ、同調の困難さなどに関する従来技術によるEPR分光計の上記全ての限界は、1つではなく2つの周波数において試料を励起することにより、非常に複雑なものとなる。必要とされているのは、EPR信号の広帯域の励起と、励起周波数から離れた周波数においてEPR信号を検出する能力とをもたらす共振構造である。
3.問題の解決
従来技術の上記問題は、検出素子から入力源電力を有効に隔離する共振構造を備えたEPR分光計により解決される。EPR分光法の問題としてのソース位相ノイズを実質上除去することにより、はるかに高い電力における動作及びより安価な発生源の利用が可能となる。本発明の交差ループ共振構造において2つのループの間が高度に隔離されており、反射された電力が検出器に達する入力から除かれていることにより、基準線が非常に安定したスーパヘテロダイン式の検波が可能になる。これにより、磁場変調を行う必要がなくなり、磁場変調に関係する信号のひずみが発生しないようになる。磁場変調、位相ノイズ、及び通路効果が除かれることにより、(スペクトルの一次微分とは異なる)真の分散スペクトルを、吸収信号の飽和電力レベルよりもはるかに高い電力レベルにおいて得ることができる。交差ループ共振構造における高度の隔離により、共振器のリングダウンの効果が低減し、パルス式測定における機器の不動作時間が大きく短縮される。
発明の概要
簡潔に言って、本発明は、導電性の壁部を備えた中空の通路により形成される第1の誘導ループを有する第1の集中素子型共振器と、導電性の壁部を備えた中空の通路により形成される第2の誘導ループを有する第2の集中素子型共振器とを具備する共振器構造を含むものである。第1の誘導ループと第2の誘導ループとは交差していて、それにより第1及び第2の誘導ループが実質上隔離され、第1及び第2の誘導ループの間の高周波エネルギの結合を防止するようになっている。
本発明の別の態様では、別記共振器構造が、第1及び第2の共振器誘導ループの交差により形成される空間に試料を配置することにより、EPR分光法に使用される。第1共振器には高周波エネルギが印加され、第1共振器は第1共振器の誘導ループに実質的に閉じ込められた均一な磁場を形成するように構成されている。第2共振器の誘導ループが第1共振器の誘導ループと交差する角度は、第1誘導ループに形成される磁場が第2誘導ループに結合することを実質的に阻止するように選択される。第1共振器の誘導ループと実質的に直交する第2共振器の誘導ループは、第1共振器の誘導ループの磁場により励起される試料内の不対電子スピンが発生させる磁場に結合される。検出回路は第2共振器の誘導ループに結合された高周波EPR信号を検出し、検出された信号をその後の解析のために供給する。本質的に電子スピンにより発生したエネルギだけが第2共振器のループに結合され、発生源の不安定性により発生し反射されて発生源に戻るノイズは検出器から隔離される。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の第1の実施例による共振器構造の斜視図である;
図2は図1に示す共振器構造の組立分解図である;
図3は図1に示す共振器構造の平面図である;
図4は本発明による好適な共振器構造の断面図である;
図5は図4に対し垂直に切った断面図を示す;
図6は本発明による第1の実施例の調整機構の断面図である;
図7は本発明による共振周波数同調機構及び電力結合調整機構を示す断面図である;
図8は本発明による第2の共振周波数同調機構及び第2の電力結合調整機構を示す断面図を示している;
図9は図7の機構をより詳細に示している;
図10(a)及び図10(b)は本発明による第2の実施例を示している;
図11(a)及び図11(b)は本発明による第3の実施例を示している;
図12は本発明による共振周波数を設定するための代替的実施例の構造を示している;
図13(a)から図13(d)は従来技術による反射分光計の比較結果を示している;
図14(a)から図14(d)は本発明の比較結果を示している;
図15は入力電力を変化させた際の吸収信号と分散信号との比較を示している;
図16は本発明によるスーパーヘテロダイン式の信号検波機器の構成をブロック図により示している;
図17(a)及び図17(b)は本発明によるスーパーヘテロダイン式の検波を行なって観察された吸収スペクトルを示している;
図18(a)は従来技術による反射式の共振構造により得られた電子スピンエコー(ESE)の測定結果である;
図18(b)は本発明による交差ループ共振構造を用いたESEの測定結果を示している。
好適な実施例の詳細な説明
1.概観
本発明は電子常磁性共鳴(EPR)による研究に特に好適な共振器の構造に関するものであるが、この共振器構造に関する他の用途も明らかであろう。本発明は集中素子型の共振器技術を用いて、入力共振器と出力共振器との間が隔離された、製造が容易で汎用的であり、堅牢な共振器構造を提供するものである。単一の電気的構造が2つの共振モードに対応している2モードのループギャップ共振器を作製する試みがこれまでなされてきたが、本発明は2つのEPR信号モードをより良好に隔離する電気的に独立した集中素子共振器を用いるものである。
他の2モードの共振器構造とは異なり、本発明の「交差ループ共振器(crossed-loop resonator)」は、2つの共振モードに対応した電気的に単一の構造ではない。本明細書で用いられる「交差ループ共振器」という用語は、2個以上の電気的に独立した共振器が、機械的には緊密に連結されているが、各共振器における磁場の間を電気的に隔離するように配されている新しい種類の共振器構造を定義するものである。
本発明の交差ループ共振器構造を作製するためには、多くの別個かつ独特の要素が結合される。具体的には、各共振構造は簡易で信頼性の高い同調と共振器からの高周波放射を最小化するための高度の遮蔽とを可能にする独特の構成を有している。また、本発明による共振構造の好適な構成によれば、共振器は共振器間の結合の微同調を可能にすると同時に共振器からの高周波放射を最小化するような様態で交差することが可能となる。
本発明の共振構造は、入力電力源と共振構造との不適合により発生するノイズに対し極めて非感受的であるが、本発明は、共振器に対する電力源の結合を容易に調整できるような、電力を結合する新規の構造及び方法を含むものである。また、本発明は各共振器の共振周波数を同調するための簡単であるが、融通性に富んだ方法を含んでいる。
EPR分光法における本発明の共振構造のすぐれた性能により、信号検出におけるスーパーヘテロダイン技術の利用が可能になる。図16に関して本明細書に開示されるスーパーヘテロダイン式の検出装置及び検出方法は、EPR信号を検出する実行可能な新規の手段を提供すると共に、ノイズ及びひずみの潜在的な原因を除くものである。
当業者によれば、本発明による方法及び装置に対し性能の改善及び自動化を行うための本発明の多くの変型が明らかなものとなろう。これらの変型は本明細書に開示される具体的な構造と均等なものであり、従って具体的に記述される本発明の概念の範囲内にあるものと見なされる。
本発明は図1に示す第1の実施例による共振構造100のような「交差ループ」共振器構造を含むものである。一般的に言って、本発明は垂直に交差する2つのループギャップ共振器を用いた集中素子方式又はループギャップ方式の共振器技術の延長上にある。これら2つの共振器は、それらが交差する共通領域を除いて本質的に電気的に独立しているので、直交した配置の結果、2つの共振器における磁場及び電場の間が高度に隔離される。
本発明による共振構造100は、EPR分光計で使用するのに特に好適である。具体的には、共振構造100は、両方のループと交差点において直交した、図1に線Bで示す向きをもつDC磁場内に配置できるような寸法を有している。特定の用途に関しては、他の向きも可能であることが了解されるべきである。本発明の利点の1つは、共振器構造に対するDC磁場の向きに拘わらず様々な用途に容易に適応する小型で融通性に富んだ設計である。図1に示す共振構造100は好ましくは、扱いの容易な剛体構造をもたらす固体材料で構成される。
本発明による共振構造100は3つの主要な構成要素を含んでいる:即ち、第1共振器101、第2共振器102、及び磁場直交性調整機構103である。第1共振器101は共振周波数同調手段701と入力エネルギ結合調整手段702とに加え、半剛体の同軸線路104などの高周波エネルギ入力を備えている。同様に、第2共振器102は(図8に示す)共振周波数同調手段801と結合調整手段802とに加え、第2共振器102におけるエネルギを検出するための同軸線路106などの高周波導体を備えている。
動作の際に、試料は試料孔107を介して第1共振器101と第2共振器102との交差領域に配置される。共振構造100の全体は通常のEPR分光法と同様にDC磁場内に配置される。高周波エネルギが同軸線路104を介して入力されると、試料が配置されている領域(即ち、第1及び第2の共振器101及び102が交差する領域)を磁場が通過する。磁力線の方向は第1ループの軸と平行であり、第2ループの軸及びその中の試料管の軸と本質的に直交している。電子常磁性共鳴周波数の付近では、試料と高周波入力エネルギとの相互作用により、空間で90度、かつ位相で90度離れた2つの直線偏波したベクトル成分から成る円偏波磁場が生ずる。この円偏波磁場の一方の成分はループ201の軸と平行であり、他方の成分はループ202の軸と平行である(201及び202は図2に示されている)。ループ202の軸に平行な直線偏波成分は第2共振器102に高周波の応答信号を発生させる。入力電源により発生した共振器101の磁場は直線偏波しており、唯一の成分は共振器101の誘導ループの軸と平行である。そのため、電源のエネルギは入力共振器101から直接第2共振器102には実質的に全く結合されず、第2共振器102に結合される高周波応答信号のエネルギはほぼ純粋に試料の電子常磁性共鳴によるものである。応答信号は同軸線路106を介して検出素子(図示せず)に送られる。
高度の隔離を確実に行うためには、第2共振器102が共振器101を循環する高周波の電源エネルギと実際に結合不可能であることが必要である。これは、共振器102を流れる磁場が共振器101を流れる磁場と直交するように共振器102の機械的配置を行うことにより実現される。図1に示す実施例では、これは磁場直交性調整構造103により実現される。
共振器101と共振器102とは電気的に結合され、機械的に接続されているが、共振器102の(図6に記述される)軸回りの回転を可能にする少なくとも1回転自由度が与えられており、それにより第1の共振器101に対する第2の共振器102の精密な位置合わせが可能になる。ノブ601を用いて親ねじ602を回転させ、それによりナット603が親ねじ602の軸に沿って前後に移動するようになっている。ナット603は第2共振器102に固定して取り付けられている。位置合わせピン216(図2に示す)は、第2共振器102の回転中心となる軸を形成している。このようにして、第2共振器102を簡易で信頼性の高い方法により数度の角度だけ動かすことができる。
2.交差ループ共振器の構成
図2は共振構造100の組立分解斜視図を示しており、これにより好適な実施例による共振構造100の内部構造及び組立てを容易に説明することができる。共振器101は好適な実施例では、ボルト204により相互にボルト締め又はねじ留めされている上部101aと下部101bとを具備している。同様に、共振器102は好適な実施例では、ボルト206により相互にボルト締め又はねじ留めされている第1部分102aと第2部分102bとにより構成されている。共振器101及び102の2つの部品から成る構成は、製造の利便性及び平易性を考慮したものであり、単一部品から成る構成を含む他の製造技術を均等なものとして代用することができる。
共振器の部分101bを参照すると、中央部がフライス削りされて、共振器の半体101bの中央部に平面状のくぼみとして現われるギャッププレート207を形成している。ギャッププレート207は、共振器の部分101bを構成する材料ブロックの中央から少量の材料をフライス削りすることによって形成される。上部の共振器半体101aには、同様の機械加工された平坦領域(図示せず)が形成され、共振器101における共振器ギャップの上部プレートとなっている。部分101aと101bとを連結すると、下部ギャッププレート207と上部ギャッププレート(図示せず)とが容量性のギャップを形成する。ギャップのキャパシタンスはギャッププレートの表面積と間隔とにより決定される。
ある特定の試験的構造では、ギャッププレート207は幅12.5mm、長さ16mmであり、ギャッププレート207間の間隔は0.51mmであった。これらのパラメータの厳密な選択は、共振器101を同調可能な共振周波数範囲を設定するための設計上の選択である。ギャップの間隔は、アーク放電又はコロナ放電により高電力の用途が制限される可能性のあるギャップ内の高電場を防止するため、十分大きくすべきである。しかし、用途及び所望の共振周波数によって、設計上の寸法には相当の許容範囲が存在する。図示された特定の実施例は、Sバンドで動作するように構成されたものであり、公称の共振周波数は3ギガヘルツ(GHz)である。
ギャッププレート207を取り巻いているのは、各半体101a及び101bを半円形断面状にフライス削りすることにより形成された環状ループである。この特定の例では、ループ201は直径およそ5mmであり、円形断面を有している。ループ201の直径は約0.15ラムダ(λ)(λは動作周波数における自由空間波長)を超えるべきでない。Qをより低くすることによりループ201をより小さくすることができる。ループにおける最良のQ及び良好な磁場均一性は、ループの直径が約0.1λであるときに達成可能であると考えられる。ループ201の全体が同じ直径を有する必要はないが、ループ201の周囲の直径が実質的に一定の場合に良好な結果が得られている。
ループ201及びループ202は矩形状のものとして示されているが、任意の使い易い形状を用いることができる。円形であれば充填因子を高くすることができる一方、他の形状により、特定の用途にとって望ましい構成又は同調に関する利益を得ることができる。従って、好適な実施例に示される特定の矩形形状は、本発明の教示を限定するものではない。
共振器101の公称共振周波数は、ループ201のインダクタンスとギャッププレート207により形成されるギャップのキャパシタンスとにより決定される。ギャッププレート207を完全に取り囲むループ201を配置することにより、ループ201を囲む外側の導体材料によってループギャップ共振器を完全に封入及び遮蔽することができる。第1共振器101を完全に遮蔽可能であることは、本発明による主要な利点である。
同軸線路104により供給される高周波入力電力は、同軸線路末端703を経由して第1共振器101に結合される。同軸線路末端703は共振器の上部101aの結合ねじ702と位置合わせされている。結合調整ねじ702と同軸線路末端703との相互作用の詳細は、図7に関連してより詳細に説明される。また、共振周波数同調ねじ701は下部ギャッププレート207の上方に配置され、上部ギャッププレート207(図示せず)を貫通して延びている。共振周波数同調ねじ701の構成及び動作についても、図7に関連してより詳細に説明される。
前記の試験的構造では、第2共振器102は第1共振器101に関して説明したものと同様に、2個の半体102a及び102bにより構成されている。第2ループ202はループ201と同様の寸法(即ち、各半体において5mmの半円形環状リング)を有するように形成されている。ループ202とループ201とが同様の寸法を有する必要はないが、製造及び各共振器の共振周波数のマッチングに関して都合が良い。
ギャッププレート208は半体102a及び102bのそれぞれに形成されて、第2共振器102のギャップを形成している。試験された特定の例では、ギャッププレート208は約10mm四方であり、ギャップの間隔は0.25mmであった。この具体例に与えられた特定の寸法により、第1共振器101と第2共振器102とに関して本質的に同じ共振周波数が得られた。第2共振器102の共振周波数は、共振器の部分102aのギャッププレート208における孔を通って共振器102のギャップ内に貫入している同調ねじ801を用いて同様に同調される。同軸線路106の結合は、図8に示す同軸線路末端803と位置合わせされて、ギャッププレート208を貫通する同調ねじ802を用いて、同軸線路104の結合と同様に行われる。
共振器101と第2共振器102とは実質的に同じ設計によっているが、多くの重要な相違が存在しており、それによりループ201がループ202と交差して試料用の空間を形成するような共振器101と102との連結が可能になっている。共振器101の一部は図2に示すように切り欠かれており、その結果、環状ループ201とギャッププレート207の一部とが中断されている。また、孔211が共振器の部分102aと102bとを貫通して、ループ202と垂直に交差するように設けられている。共振器の部分102a及び102bの側部にはギャップ212が設けられており、このギャップはギャッププレート208から離れる方向に孔211の縁部から延びている。共振器102を共振器101の切欠き部内に配置する際、切欠き部212はギャッププレート207と位置合わせされ、孔211はループ201と位置合わせされる。このようにして、ループ201は孔211によって実際に完成し密閉される。
好適な実施例では、共振器101と共振器102との機械的結合により、1回転自由度が与えられ、それにより共振器101に対する共振器102の回転が可能になる。
2つの共振器の間における第1共振器101の切欠き領域では良好な電気的接触を保つことにより、2つの共振器間を結合し隔離を弱めるような漏洩電流を防止しなければならない。また漏洩が起きると、少なくとも一方の共振器における特性値、即ちQが低下する。良好な電気的接触は、例えば2つの共振器における当接面の間のベリリウム銅板ばね214によりもたらされる。更に、2つの共振器が殆ど接触している領域における2つのループの外側の空間には導体のパッキング材料215が挿入されている。導体パッキングによるオープンスペースにより(下記のような)磁場変調の小規模であるが、十分な侵入が可能になり、その結果、通常の方法で連続波測定を行うことができる。しかし、以下で論じるように、装置の他の実施例により、磁場変調のより完全な侵入が可能となる。
第1ループ201は2つのループが実質的直角に位置合わせされるように、第2ループ202を挿入するための矩形の切欠きを除いては、完全に密閉されている。第2ループ202は試料用の空間内への試料の装入を可能にする試料孔209を除いて完全に密閉されている。孔211及びスロット212により、ループ201の磁場がループ202の磁場へ直角に移行することができ、またループ201が適正に動作することが可能になる。高度の隔離は少なくとも一方のループを他方から、それらが交差している点を除いて完全に密閉及び分離することにより実現される。他方のループも同様にほぼ完全に密閉されているが、図1及び図2に示す特定の実施例以外の構成も実用的であり、それらは当業者にとって明らかであろう。
各共振器101及び102のループにおける磁場について説明することにより、動作原理は最もよく理解される。磁力線はループ201及び202の中を循環する。ループが交差する領域では、磁力線が直交している場合に交差結合は殆ど生じない。磁場直交性を維持するために必要なのは1自由度のみである。これは図1の好適な実施例では、共振器101と共振器102とが、図2に想像線で示す位置合わせピン216により形成される軸回りに数度の角度にわたって回転可能なように構成され取り付けられていることによって実現されている。フレーム103は共振器101又は102の一方、この場合には共振器101にボルト203により固定して取り付けられている。親ねじ602は共振器101に対する共振器102の角度を調整するための手段となっている。磁場直交性を維持する他の手段は、下記の代替的実施例において説明される。
図3から図6は本発明の構成、相互作用、及び動作の更なる理解を助けるため、好適な実施例による共振器構造100を様々な視野において示している。図3は共振器101の上面に向かって見下ろした平面図である。ギャッププレート208とループ202とが位置合わせされている平面と垂直な第1平面内において、ギャッププレート207を含む共振器101とループ201とが実質的に位置合わせされていることは明らかである。磁場直交性調整制御装置103はこの構造の一端に取り付けられており、図6に関連してより詳細に説明される。
第1共振器101の共振周波数は、前記のようにねじ701を回転させることにより容易に調整される。ねじ701は第1共振器101の露出した上面から操作可能なので、同調は難しいものではない。また、同軸線路104と共振器101との結合の調整は、共振器101の上面に露出したねじ702を回転させることにより容易に実施される。対照的に、共振器102の共振器同調ねじ801及び結合ねじ802は、共振器101のフレーム部側部を穿孔又は切削したアクセスポート301を通して操作しなければならない。調整機構103が取り付けられている共振器101のフレーム部は、本発明による共振器構造では電気的な役割を果たしておらず、多くの構成要素を連結固定するための単なる機械的支持体である。従って、アクセス孔301の寸法及び配置は主として設計上の選択の問題であり、同調ねじ801及び結合ねじ802に接近するための他の手段も、開示された特定の構造に対する許容可能な均等物である。
図3及び図4は、図1及び図2に関して既に述べた特徴の多くを示している。しかし、図3及び図4は本明細書に記載された構成要素の順序、配置、相対的な大きさ及び間隔を概括的に理解するために有用である。とりわけ、位置合わせピン216が共振器ループ201及び共振器ループ202の双方の中心と位置合わせされており、2つのループの交差点を貫通していることに留意すべきである。位置合わせピン216により形成されたこの回転軸は、第2共振器102に対する第1共振器101の位置合わせを決定するものである。
3.磁場直交性の調整
図6は本発明の第1の実施例による磁場直交性調整機構の側面図を示している。この第1の実施例では、磁場直交性はLGR101に対しLGR102を物理的に回転させることにより制御される。ノブ601(図2)、親ねじ602、及び従動ナット603の作用は以上で述べてきたものである。簡単に言えば、それらは従動ナット603を図6に直線矢印で示す方向に前後に移動させる役割を果たしている。
従動ナット603から延びているピンは、図2に示すように共振器102の側部の中へ延びている。位置合わせピン216はフレーム103に固定して取り付けられ、第1共振器101のフレームの定位置内に延びている。親ねじ602を回転させると、図6に示す破線の軸によって表される円弧に沿って第2ループ102が数度だけ回転することになる。
位置合わせピン216は、図3に示すようにループ201及び202の交差点と位置合わせして配置されている。この単一の軸を中心とした回転により、ループ201及び202の磁場を高精度で垂直に位置合わせすることができる。これは高精度の機械加工が行われても、動作中の試料の装入によって、ループ201及び202を移動する磁場が、第1共振器101と第2共振器102との間の最大限の隔離を達成するための調整を要する程度までひずむ可能性があるので重要なことである。また、機械加工、表面の形状、及び材料組成にばらつきがあると、ループ201及び202を移動する磁場が撹乱され、それにより何らかの調整が必要となるであろう。図6に示す構造により、単純かつ信頼性の高い調整が可能であり、この調整は非常に安定しているので、試料が装入され本発明による共振構造100が第1共振器101と第2共振器102との高度の隔離のため調整されると、この隔離を長期のデータ収集に対しても維持可能であることが分かっている。この安定性は本発明と同じ機能を実現しようとする従来の2モード空洞共振器では通常見られないものである。
4.LGR共振周波数同調
図7から図9は共振構造101及び102のそれぞれの共振周波数を同調する好適な方法を示している。共振器101及び共振器102の双方を同じ周波数に同調できることは有用なので、共振構造の少なくとも一方を同調する手段を備えることが必要である。図7は第1共振器101のギャップ及びループの部分の断面図である。共振器のキャパシタンスは、上述のようにギャッププレート207の間隔によって与えられる。誘電性の同調ねじ701は、適切な材料(例えばテフロンやアルミナなど)で形成されており、円筒形の金属スラグ704を含んでいる。同調ねじ701は第1共振器101の一方の側にねじ込まれ、ギャップの反対側から金属スラグ704までの間隔を調整できるようになっている。これにより2つの直列キャパシタンスが発生する:即ち、下部ギャッププレート207から金属スラグ704までのキャパシタンスと、金属スラグ704から上部ギャッププレート207までのキャパシタンスである。これら2つのキャパシタンスは、ギャッププレート207により形成されたギャップのキャパシタンスと並列に結合する。
同調ねじ701を調整すると、金属スラグまでの間隔が変化し、それにより並列キャパシタンスが変化する。これによって、この部分の特性値、即ちQを殆ど又は全く変化させることなく、第1共振器101の共振周波数を数%変化させることができる。周波数同調は誘電体の筒と金属スラグ704とを備えた同調ねじ701の代りに、金属のねじによっても行うことができる。しかし、純粋な金属ねじの場合には、ねじと第1共振器101との間に接触抵抗が生じ、第1共振器101のQが低下するであろう。
第2共振器102の同調ねじ801も同様に動作する。金属スラグ804をギャッププレート208に対し接近するように、又は離れるように移動させると、それによってループギャップ共振器102のキャパシタンスが変化する。このようにして、第1共振器101又は第2共振器102の何れか又は双方の共振周波数を同一になるように、又は所定の値だけずれるように調整することが可能である。金属スラグ804の面積及び形状は、同調能力の程度を変化させるように調整することができる。例えば、ギャッププレート208に面した金属スラグ804の表面積を大きくすると、変位1単位当たりの変化量が比例して増大するであろう。
好適な実施例によれば、共振器101及び共振器102の双方の共振周波数を同調することが可能であるが、一方の共振器が調整可能でさえあれば、本発明による装置をEPR分光法に用いることができる。また、ある一定の用途に適したLGR共振器を同調するための他の均等な手段も知られている。
5.LGRの入出力結合
図7、図8及び図9は、本発明による共振構造100において入力電力(図7)及び出力信号(図8)を結合する好適な方法を示している。集中素子技術に固有の相対的に低いQと共に、第1共振器101と第2共振器102との間が高度に隔離されていることは、結合効率の重要性がより小さいことを示しているが、本発明による構造は入力電力を効果的に調整するように容易に調整可能である。これにより、所与の入力電力に対してより大きな信号が得られると共に、より低い電力とより安価なマイクロ波源を使用できるようになる。
図7に示すように、入力同軸線路104は第1共振器101に貫入すると共に、絶縁シース707及び外側遮蔽導体708に覆われた中心導体706を具備している。同軸線路104は同軸線路中心導体706に対し好適な実施例では、直角をなして電気的に接続された中心導体709まで延びている。導体709はテフロン又は他の既知の絶縁材料を具備した絶縁シース711で覆われている。導体709は図7に示すように、調整ねじ702と共にギャッププレート207により形成されたギャップ内まで延びている。調整ねじ702は好ましくは成形された末端712を含む導体材料を具備している。末端712は同軸線路末端703から、調整ねじ702により選択された距離だけ離間している。このようにして、調整ねじ702により同軸線路末端703と上部ギャッププレート207との間に可変的キャパシタンスが与えられる。
図8に示すように、出力同軸線路106に対する検出器出力の結合のための調整も同様に行われる。同軸線路106は絶縁シース811に覆われた延長部809まで延びている。導体809は延長部末端803において、ギャッププレート208により形成されたギャップ内に延びている。導体809は第2共振器102の反対側に形成された導体調整ねじ802と位置合わせされている。第2共振器調整ねじ802を回転させることにより、ねじ802の成形された末端812と導体809との距離を変化させ、導体809と右側ギャッププレート208との間の容量結合を変化させることができる。
図7、図8及び図9に示す好適な実施例は、入力電力と出力EPR信号の検出との双方に容量結合を用いている。容量結合では、容量性リアクタンスを用いて同軸線路からの電力が、ループギャップ共振器101及び102のギャップ内に、又はギャップ内から結合される。誘導ループ201又は202に対する誘導結合によれば、同様の、場合によっては更に有効な結合を行うことができる。誘導結合を用いるとより大きな電力を結合可能なことから、特に入力、即ち第1共振器101に関しては、電力をループ201に誘導結合することが望ましい場合がある。より大きな電力はより大きな信号をもたらし、従って多くの用途においてより良好な測定が行われる。誘導結合は図7に示すケーブル104のような同軸ケーブルの末端をループ201内のワイヤループとすることにより実施可能である。このワイヤループを流れる電流は磁場を誘導し、この磁場はループ201によって第1共振器101に結合される。誘導結合は本発明の前記方法に具体的に示された容量結合と均等な代替手段であると考えられる。
6.代替的実施例
図10(a)、図10(b)、図11(a)、図11(b)及び図12は、本発明の教示を組み入れた様々な代替的実施例を示している。図10(a)は代替的な第2共振構造1002に結合された代替的な第1共振構造1001を見下ろした略図を示している。入力エネルギ供給及び検出器の同軸ケーブルなどの第1の実施例に関してこれまでに述べた多くの詳細は、各代替的実施例においても実質的に同じなので、代替的実施例の説明では省略される。図10(b)は図10(a)に示す共振構造に関して、共振構造1002の上面又はある側面を見下ろした図を示している。
図10(a)及び図10(b)に示す実施例では、共振器1001及び1002は相互に固定されており、共振器が相互に回転できないようになっている。共振器1001及び1002は固定して取り付けられる独立した部材として機械加工されるか、単体の金属又はその他の材料から機械加工される。共振構造1001と共振構造1002との間の隔離の調整は、ループ1003とループ1005との交差点の何れかの側に配された調整ねじ1004を用いて行われる。ねじ1004は図10(b)に示すように、ループ1005内に可変量延びる導体又は誘電体材料を具備している。ループ1005内に調整ねじ1004が存在することにより、ループ1005内を移動する磁場の変形又は湾曲が起きる。特に、ねじ1004がループ1003と1005との交差点の片側又は両側に配置されている場合に、このひずみを利用してループ1005の磁場がループ1003の磁場と垂直な状態に置かれる。本発明のこの実施例では、前記の実施例に示された調整手段103が使用されないことにより、より簡潔な構成が可能になる。
図11(a)及び図11(b)は本発明による第3の実施例を示している。この実施例では、第2共振器1102は充填因子を高めるため短縮されており、放射防止のためRFシールド1103により遮蔽されている。この場合に、共振器1102は図2に示す切欠き部212及び孔211と同様の様態で、第1共振器1101の側部に入り込むように機械加工されている。しかし、図11(a)及び図11(b)に示す実施例では、共振器1102の誘導ループ1105の凹部は、シールド1103の内側体積全体を含むように寸法が大きくなっている。共振器1102における誘導ループのこの部分は、共振器1102の共振周波数に対して、もはや大きな影響を与えないので、代替的な図面では共振器1102の凹部が省略されている。しかし、シールド1103は共振器1102のループ1105に対する帰還磁束を内包することが、なお必要である。
共振器1102のキャパシタンスはスロット1107によって規定される一方で、共振器1102のインダクタンスはループ1105によって規定される。共振器1102に対する結合は、図8に示したものと類似の様態で出力同軸ケーブルの中心からギャップ1107への容量結合によって行われる。別の方法として、共振器1102におけるループ1105の開口近傍の出力ケーブル(図示せず)の端部にある小さなワイヤループ(図示せず)によって誘導結合を行うこともできる。この実施例では、調整ねじ1104及び試料管装入孔1108への接近が可能である限り、RFシールド1103は必要であれば共振器1101全体を密封することができる。調整ねじ1104は、図10(a)及び図10(b)に示す調整ねじ1004と同様に作用する。
上記実施例は全て、中にループ及びギャップ構造が機械加工された導体材料の固体片に関して説明してきたが、他の均等な構成方法も既知であり、本発明により利用可能であることは明らかである。例えば、非磁性体絶縁材料を利用、加工してループ及びギャップ構造を形成し、その後に銀、金など導電性の高い材料を適度の厚さにめっきして、適切な低導電性表面を形成することができる。また、誘電体材料を本明細書で述べたギャップ及びループ構造の形状に形成し、その後に、外表面を適度な厚さにめっきすることも可能である。この場合に、好適な実施例に示した空気ではなく、誘電体自身がギャップ及びループ構造を満たすことになり、試料の装入を可能にするため誘電体の一部が除去されることになる。これらの構成方法では、金属めっきによって磁場変調のより良好な侵入がもたらされる。更に、何れかの共振器が試料管を収容するようにしてもよく、何れかの共振器がループ間の隔離(即ち、磁場直交性)を調整するための機能を備えるようにしてもよい。本明細書で述べられた本発明による主要な特徴が利用される限り、これらの均等な構造の全てを用いることができる。
図12は第1共振器1201の共振周波数を同調する新規の方法を示す本発明による第4の実施例を示している。大部分の用途においては、共振器の少なくとも一方、特に試料に電力を供給する第1共振器の共振周波数を変化させる能力を備えることが望ましい。図12に示すように、テフロンなどのフッ素化重合体又はアルミナ(Al23)又は他の適切な材料を具備する誘電体スラグを、ねじ構造によって第1共振器1201のループ1203内へ可変量進入させることができる。誘電体スラグ1202はある様態で磁場を変化させて、プラスマイナス5%〜10%と推定される広範囲で共振周波数を変化させるであろう。これに対して、第1の実施例で示した容量性の同調方法では、周波数の変化は僅かにプラスマイナス1%である。多くの場合に、図12に示す方法による共振器の一方の周波数同調では、第2共振器の周波数を同調させることは不必要になるであろう。誘電体ロッド1202がアルミナの場合に可能性があるように、不対電子を有する材料を具備しているとしても、なお本発明で使用可能であることは特別に留意すべきである。検出可能なEPR信号を発生させるのは、2つの誘導ループが交差する領域の空間に含まれた試料だけなので、漂遊的又は寄生的な常磁性共鳴は、本発明による共振構造の性能を害するものではない。
7.結果
図1及び2に示す共振器はSバンドに対応して構成されたものであり、HPネットワークアナライザ(HP Network Analyzer)を用いて試験を行い、第1共振器101と第2共振器102との間の隔離の程度を測定した。交差ループ共振構造100を、Sバンド分光計において連続波及びパルス励起によって試験し、その結果を反射方式の共振器のものと比較した。交差ループ共振器を用い、スーパーヘテロダイン式の分光計により連続波誘導のもとで、更なる試験を実施した。試料を取り替えた際に、共振周波数を再び同調させ、共振部間の角度を隔離が最大となるように調整した。70dBの隔離がばらつきなく得られた。試料の取替えのために隔離が低下した際は、試料を回転させるだけで十分に再調整がなされ、当初の隔離の程度が得られた。
本発明の主要な特徴は、電力源における位相ノイズの弁別により生ずる位相ノイズが低下することである。これは電力源における位相ノイズが反射式共振器の周波数特性により変化してノイズを増幅させるプロセスである。
連続波による試験では、信号対雑音比は吸収信号に関して約1300であり、これは標準的な反射モードの動作により入力電力70マイクロW、100kHzの磁場変調0.75ガウスにおいて得られたものと等しくなった。しかし、本発明による交差ループ共振構造の分散信号に関する信号対雑音比は925であり、僅かに75であった反射モード共振器よりも約22dB良好であって、吸収信号に関する信号対雑音比と実質的に同じ大きさであった。
位相ノイズの阻止に関して共振器を試験するため、ノイズ発生器を電力源のFM入力に接続した。この位相ノイズ発生器は位相ノイズを約55dB増大させた。反射モードの吸収信号に関する信号対雑音比は31まで低下し、分散信号は従来技術による反射分光計では得ることができなかった。しかし、交差ループ共振構造100では、吸収信号に関する信号対雑音比は1200であり、分散信号対雑音比は795であって、ノイズを加えなかった場合とほぼ同じであった。これは、本発明による交差ループ共振構造100の位相ノイズを阻止する顕著な能力を示すものである。位相ノイズの阻止能が高いことの実際的な結果として、すぐれた結果を達成しながら、共振器を駆動するためにより高電力及び/又はより安価なマイクロ波ブリッジを使用することができる。
パルスモードにおいては、本発明による交差ループ共振構造100により、最終の高出力パルスの70ナノ秒後に始まる電子スピンエコー(ESE)を測定することができた。反射モードでは、このパルスの220ナノ秒後までは測定することができなかった。ESEは最終の高出力パルスの後できる限り、早期に測定可能であることが、最良の信号対雑音比が得られると共にスピン/核相互作用についての重要な付加的情報が提供されるので重要である。
交差ループ共振器の2つの共振器間の隔離の程度は、精密な機械加工、正確な調整などによって少なくとも70dBとすることができる。即ち、共振器101から共振器102に結合される電力は1/107未満である。以上の試験結果は、この隔離の程度により達成可能な結果である。理論的には、達成可能な隔離の程度には限界がなく、実際にはこれらよりも更に良好な結果が得られる可能性がある。
図13(a)はノイズを加えることなく通常の先行技術による反射分光計によって得られた吸収信号を示している。この試験では、試料はNBSコール(Coal)1635番を具備したものであり、入力電力は70マイクロW、0.75ガウス(gauss)における100kHz磁場変調を行った。検出器の時定数0.128秒で単一の60秒の走査を行った。図13(a)は先行技術による共振式の分光計により理想的な条件下で発生した通常の高品位の信号(signal)を表している。一方、図13(b)は上述のようにノイズを加えた場合に発生する信号ひずみを表している。この信号は図13(b)に示す出力からなお検出可能であるが、ノイズは応答の定量的な測定におけるひずみと困難とをもたらすものである。
図13(c)はノイズを加えることなく通常の先行技術による反射分光計によって得られた分散信号を示している。発明の背景の項で述べたように、マイクロ波電力源の位相ノイズは共振器により振幅変調されて、図13(c)に示すように、望ましい信号の上に重ね合わされたノイズ信号として現われるので、分散信号の測定は本来的にノイズ感応的なものである。図13(d)では、ノイズが加えられており、分散信号が事実上検出不可能であることが分かる。
図14(a)から図14(d)は本発明による共振構造100により得られた同様の測定結果を示している。図14(a)は従来技術による図13(a)に相当する、ノイズを加えない場合の標準的な吸収信号を示している。即ち、理想的な条件下では、本発明による交差ループ共振構造100により同様の結果が得られる。これに対し、図14(b)はノイズを加えた場合の吸収信号を示しており、ノイズが交差ループ共振構造100により実質的に阻止され、その結果、ノイズが存在しなかった図14(a)と実質的に同様の出力が得られることが分かる。これは、図14(b)と図13(b)との比較によって明らかなように、従来技術に対し大きな改善がなされたものである。図14(c)を図13(c)と比較すると、本発明による交差ループ共振構造100が固有の位相ノイズに対し極めて非感受的であり、ノイズが加えられない場合でもより良好な分散信号をもたらすことが明らかである。ノイズの加わった分散信号の場合に、先行技術による反射分光計では信号が検出不可能であったのに対し、図14(d)は交差ループ共振構造100が高品位の信号を実現することを示している。
図14(a)から14(d)に示す改善された結果に加え、本発明による交差ループ共振器では、容易に飽和する試料を評価する場合にもすぐれた結果が得られる。図15は照射済みの溶融石英試料に関して、円形のデータ点1502で示す分散信号とダイヤモンド形のデータ点1501で示す吸収信号との比較を示している。図15で垂直軸は信号の振幅を表しており、水平軸は印加された電力の平方根である。照射済みの溶融石英のような試料の吸収信号は、入力電力が増大するにつれ、平坦な線による応答の示すように低い電力において飽和する。分散信号はそれほど容易には飽和せず、高電力においても測定可能であり、吸収信号はヒルベルト変換により算出される。
これまで、従来の反射分光器における位相ノイズの感受性に関する問題により、これらの分散信号を測定することが可能な電力が制限されていた。本発明による交差ループ共振器構造は、高電力による吸収又は分散モードにおいても良好に動作するので、これらの飽和し易い物質から非常に高出力の信号を得ることができる。例えば、図15のデータが導き出された照射済みの溶融石英に関する実験の測定は、従来可能であった電力の100倍を上回るものにおいて行われた。実施された実験では、入力電力のレベルを制限したものは、利用可能な電源のみであった。このような高電力における信号が飽和しなかったので、本発明による装置では、実験を行った際よりも少なくとも10倍の測定値が現実的であると考えられる。
8.スーパーヘテロダインの動作
EPR測定におけるもう1つの困難は、「通路効果」、即ち測定された信号を抽出するために行われる磁場変調によって生ずるEPR信号のひずみに関するものである。磁場変調を避けることができれば、通路効果は問題とならないであろう。本発明による交差ループ共振器構造によれば、磁場変調の必要をなくしたスーパーヘテロダイン方式による非常に安定した動作が可能となる。
スーパーヘテロダイン式の検波は、ラジオ、テレビ、及び衛星通信に用いられる標準的な技術である。本発明のこの特徴によれば、高周波のEPR信号と、周波数が一定値だけ異なる別の信号とを混合することにより、より低い中間周波数(IF)がもたらされる。このIFを位相検波器又は同等の検波器による増幅及び直接検波が可能な範囲に選択すると、磁場変調信号を除くことができる。分光計に関する利点は、中間周波数を1/fノイズ(低周波ノイズ)をはるかに上回るものにできることにある。位相検波器によりIF信号を検波する際に、この信号は当初の高周波(マイクロ波)信号の振幅に比例しており、基準線は磁場変調技術の場合と同様に非常に安定している。
図16は本発明により試験されたスーパーヘテロダイン方式の構成をブロック図により示している。マイクロ波発生源1601は図1及び図2に示す入力同軸線路104のような伝送線を介して交差ループ共振構造100に結合されたマイクロ波発振器又は他の高周波エネルギ源である。交差ループ共振構造100は高周波信号を発生させ、この信号は図1及び図2に示す同軸線路106のような導体を介して出力される。ミクサ1602は二相変調器1603によりこれらの試験において供給された局部発振器(LO)信号と共に、交差ループ共振構造100からの高周波出力を受け取る。二重平衡ミクサ1602は周知のように中間周波出力を供給する。この中間周波出力は位相検波器1604に結合されるが、この検波器の検波帯域は中間周波数を含み、好ましくは中間周波数を中心としている。位相検波器1604は更に、測定に用いられるESE信号を発生させる。これらの試験における二相変調器の使用は利便性のみに関する問題であり、他の更に最適なスーパーヘテロダイン方式の構成も周知であり、説明された具体例と均等なものである。
分光計のスーパーヘテロダイン方式の動作は、その他の点では従来の分光計と同一である。二重平衡ミクサに供給される信号は、従来技術による反射式分光計の場合におけるようなソース電力の反射をもはや含んでいない。本発明による交差ループ共振構造100の高度の隔離はフィルタとして作用し、その結果、本質的に所望のEPR信号のみが検波器に到達する。双方の分光計において、二重平衡ミクサの前に低雑音のマイクロ波増幅器を用いることにより信号対雑音比を改善することができる。
スーパーヘテロダイン方式の動作では、磁場変調は行われず、二相又はその他の適切な変調器1603を用いて、二重平衡ミクサ1602に結合される局部発振器信号を発生させる。この変調の低周波源1605は、位相検波器1604に対する参照として用いられる信号である。二重平衡ミクサ1602からの中間周波信号は、位相検波器1604に与えられる周波数参照と同じ周波数成分を有している。ある特定の例では、使用された低周波は従来の分光計において磁場変調(100kHz)のために用いられる発生源であったが、その理由はこれにより位相検波器1604の検波帯域内の適切な信号周波数が供給されるからである。また、検波器1604のIF入力への低周波源1605の漏洩を制限するためフィルタリングを行っても有益であったであろう。スーパーヘテロダイン方式の構成及び100kHzのIFの選択は最適ではないかもしれないが、交差ループ共振器の性能を実証するための供給が実行可能であったために便宜的に利用されたものであり、最適でない構成であったにも拘わらず顕著な成果がもたらされた。磁場変調の場合に、変調周波数はEPR信号のひずみを防止するように低く保たねばならない。スーパーヘテロダイン方式の構成の場合はそのような制限は存在しないので、信号対雑音比を最適化するように変調周波数を選択することができる。
本発明によるスーパーヘテロダイン方式の検波を利用して、標準的な照射済みの溶融石英試料及びNBS1635番の石炭試料の飽和特性を測定した。70マイクロWによる照射済みの溶融石英及び7mWのソース電力による結果的なスペクトルを図17(a)及び図17(b)にそれぞれ示す。測定されたスペクトルは真のスペクトルであり、図14に用いたようなスペクトルの一次微分ではない。これは磁場変調が行われず、また本発明による共振構造100によって発生する信号がスピンシステムの信号の直接振幅だからである。
振幅又は分散信号の検波は、二重平衡ミクサ1602に送られるLO信号の位相に依存している。LOの参照信号は周知のように適切なパワードライバ及び移相器を用いてマイクロ波源から導出される。吸収及び分散の双方に関し700nWからmWまで(4つのオーダ)のスペクトルを記録した。これらのスペクトルは、飽和に特有の僅かな広がりを除いて、電力により形状が変化しなかった。これは吸収よりも分散スペクトル(図示せず)において明らかである。図17(a)及び図17(b)に示す吸収信号は、70マイクロWのソース信号において最大となった。この最大の吸収信号の30倍大きな真の分散信号を得ることができた。従来、これらの電力レベルに対応したマイクロ波の場の強度において、照射済み溶融石英の吸収スペクトル及び分散スペクトルを測定することは困難であった。
試験の示すところでは、本発明によるスーパーヘテロダイン方式の共振構造100は、従来技術による反射式分光計で可能なものより2桁大きな感度まで対応することができる。ノイズは電力と共に増大しなかったが信号が電力と共に増大したことは、電力が大きくなると非常に高い信号対雑音比が得られたことを意味している。本発明のこの特徴の1つの重要な側面は、多くの生物学試料に関する吸収信号が極低温において非常に低い電力で飽和するが、分散信号はそのようにはならないということである。本発明によるスーパーヘテロダインモードにおける交差ループ共振構造では、高電力において分散信号を測定することにより、これらの種類の試料に関する感度を数桁改善することが可能である。
スピンエコー又はFT・EPR分光法では、観測中はソース電力がオフになっている。しかし、ソース電力パルスに続いてできる限り早くエコー又は自由誘導減衰(FID)を記録することが重要である。実際には、対象となる信号はパルスに対する共振器の過渡応答に重なり合っている。パルスは、パルス終了後に指数関数的に減衰する共振器内のエネルギを蓄積する。この共振器の「リングダウン(ring down)」により、従来技術のシステムにおける望ましいESE信号と同様に、サーキュレータを通って検出器に達する大きな過渡的信号が発生する。従って、過渡事象がESE信号よりも小さくなるまで待機しないと、有意義なデータを観測することができない。このため、分光計の「不動作時間」、即ち共振器の「リングダウン」の多数の時定数にかかる期間が生じ、その間にESE信号の重要な部分が失われる。
本発明による交差ループ共振構造は2つのセクションを有しており、第1共振器のエネルギは殆ど検出器に到達しないので、ESEにおいて重要なのは第2共振器102のリングダウンである。第2セクションは第1セクションから隔離されているので、パルスからのエネルギは第2共振器102には殆ど蓄積されない。その結果、リングダウンの振幅は、交差ループ共振器では、はるかに小さく(即ち反射共振器の場合の1/3000)、数時定数によりESE信号を検出可能なほどに小さくなる。
図18(a)は従来技術による反射式共振器を用いた、NBS石炭試料1635に関するSバンドの時間操引されたESEスペクトルである。図18(b)は本発明による交差ループ共振構造100を用いた比較スペクトルである。従来技術による共振器を用いたNBSコールに関するパルスESE測定では、機器の不動作時間は220ナノ秒である。この分光計の検出器はパルスの後220ナノ秒間遮蔽しなければならないが、その理由はこの時間の前の過渡的なリングダウンが検出器を飽和させるからである。本発明による交差ループ共振構造100を用いると、70ナノ秒後、即ち反射式共振器よりも150ナノ秒早く検出器を開放することができる。了解されるように、反射式共振器は本発明による交差ループ共振構造ではESE信号において明瞭に視認できた170ナノ秒における早い方のピークを検出することができなかった。最終の大きなエネルギパルスの後に、できる限り早くESE信号を測定可能であることは、最良の信号対雑音比とスピン/核相互作用についての重要な付加的情報とをもたらすので重要である。
9.結論
本発明はEPR分光法に関し従来の反射共振器に対して多くの利点をもたらす。マイクロ波ソース電力の僅か1×10-7しか検出器に到達せず、70dBの隔離が実現される。その結果、ソースノイズは検出された信号においては実質的に除かれており、マイクロ波増幅器を保護するためのリミッタ又はスイッチを用いずに時間分域EPRを実施することができる。マイクロ波サーキュレータは磁気的なものであり磁場内には配置できないが、このサーキュレータを不要にすることにより、重要なマイクロ波素子(例えばマイクロ波増幅器)を試料の物理的近傍に置き、低温での測定では試料と共に冷却することができ、それにより信号対雑音比が改善される。
幅広のEPRスペクトルに関しては、従来の分光計における低い信号対雑音比は、スペクトル線幅に対し小さい磁場変調により制限される。実現可能な大きい変調振幅は、変調磁場と共振器との電磁気的な相互作用のためにノイズを招来した。緩和時間の長い試料に関しては、通路効果により磁場変調がもたらすスペクトルのひずみは、スペクトルの解釈を妨げるものであった。緩和時間の長い試料は、より一般的な吸収スペクトルではなく分散スペクトルを用いると、より良好に調べられるが、その理由は分散信号は飽和しにくいからである。しかし、従来の反射共振器では分散スペクトルの方が、マイクロ波位相ノイズの復調による吸収スペクトルよりも信号対雑音比が低くなる。これらの問題は全て、ソースノイズに対する高い非感受性と磁場変調の選択的な省略とにより、本発明によって実質的に単純化又は解消される。
本発明を単一の周波数測定及びパルスEPRに関して説明してきたが、本発明は多重周波数EPRにも適用可能である。多重周波数によるEPRに対する関心は高まっている。従来の反射共振器における1つの問題は、共振器のリングダウンが波長と正比例して増大するということである。このため、リングダウンは低周波において許容不可能なものとなる。フーリエ変換(FT)EPRは、FIDの減衰時間に対して長い不動作時間により低周波においては特定が困難になる。商業的に入手可能なマイクロ波源は低周波の方がノイズが大きくなる。本発明による共振構造は、共振構造の独立した同調により多重周波数測定を可能にすることによって、これらの短所を克服している。ソースの隔離によって、リングダウンの問題が事実上解消し、それによってより低周波での測定が可能になる。更に、マイクロ波ソースノイズの隔離により、より低周波におけるソースの動作が可能になる。
また、生物学的に重要な核種に固有の電子スピンの性質に対しても関心が高まっている。更に、生物学的に重要な核種に加えられる特有の電子スピンを発生させるプローブの研究にも関心が払われている。これまで、そのような関心は、反射EPR分光計の上記で明らかにした限界により妨げられてきた。本発明により、生物学試料に固有の電子スピン及びそれらに加えられる電子スピンに対するEPR分析が可能になる。
生物学試料のEPR撮像も本発明の教示を利用することにより可能となる。本発明によれば、EPRを以前可能であったよりも低い周波数及び高い電力まで拡張することができる。低い周波数によって試料の侵入をより深くすることができる。また、高い電力を用いることによって信号対雑音比を高めることができる。従って、本発明の教示を利用することにより、磁気共鳴イメージング(MRI)と同様の実験機器及び医療機器が実現可能であると考えられる。またEPR画像によって、MRIで撮像される陽子密度とは対照的に、特定の病原体又は誘導スピン標識の生物学的な結果の撮像が可能になるものと考えられる。
本発明によれば、EPR分光法の再現可能性が高まり、その実施が容易かつ安価になると共に、利用者の訓練が少なくて済むようになる。反射共振器の場合のように、交差ループ共振構造に対する精度の高い結合は必要でない;これは励振(即ち第1)共振器及び検出(即ち第2)共振器の双方について当てはまる。クリオスタット及びその他の苛酷な環境において有用となるような遠隔的同調は非常に簡易なものとなる。更に、バラクタを用いた電子同調も考えられる。
本発明による交差ループ共振構造は、従来の反射式共振器よりも温度変化に対する耐性を有している。この耐性の増大の結果、動作中のマイクロ波電力の抵抗損により温度が変化する際に、安定性と共に高い測定精度と温度を変化させる環境の再現可能性とがもたらされる。
本発明による共振器の増大した感度により、より少ないスピンで試料を測定することが可能になると共に、よりひずみが小さいスペクトルがもたらされ、これらのスペクトルはスペクトルの微分とは異なる実際のスペクトルとすることができる。これらの改善によりエラーの可能性が小さくなり、データの解釈が容易になる。
本発明による共振構造により、上述のELDORの実施が容易になる。ポンプされる周波数と観測周波数との分離は、従来の反射式分光計の場合のように単一共振器モードの帯域幅によっては制限されない。ポンプモードではQ値を低くするか過結合することによって広い帯域を実現することができ、観測モードでは所望の観測周波数においてQ値を高くすることができる。使用される周波数に対する実際的な制限は殆ど存在しない。本発明は定常ELDOR又はパルス化ELDORの何れかに適用することができる。ELDORは長い間、有望な技術とされてきたが、本発明によってELDORにより利用可能な緩和時間の分析を可能にする実際的な適用を行うことができる。
いまや、EPR分光法における問題としてのソース位相ノイズを実質的に除去する交差ループ共振構造がもたらされることを了解すべきである。これにより、はるかに高い電力における動作及びより安価な発生源の使用が可能なる。本発明による交差ループ共振構造の2つのループ間の高度の隔離、及び第1ループから検出器に到達する反射電力の除去により、非常に安定した基準線を伴うスーパーヘテロダイン式の検波による動作が可能になる。これにより、磁場変調の必要がなくなり、磁場変調に関連する信号のひずみが防止される。本発明による交差ループ共振構造により、試料の導入に対しても高い隔離を維持する簡易な手段が提供される。試料はマイクロ波の電磁場を妨害してソース電力の信号への漏洩を引き起こす。全ての場合において、本発明による交差ループ共振構造を用いると、試料の有無に拘わらず70dBの隔離を維持することができる。
位相ノイズ及び通路効果の除去によって、吸収信号の飽和電力レベルよりもはるかに高い電力レベルにおいて真の分散スペクトルを得ることができる。これにより、分光計の感度を2桁を超えて増大させることができる。交差ループ共振構造における高度の隔離によって、共振器のリングダウンの効果が小さくなり、パルス式測定における機器の不動作時間が大きく短縮される。本発明により、例えばSバンドにおいて従来技術による反射モード共振器での220ナノ秒に対し70ナノ秒で開始するESE信号を観測することができる。
本明細書で開示された好適な実施例及び具体的な実施は、最良の動作態様であると考えられるが、均等な構造、代替的な材料、及び設計の変更が可能であることは容易に了解されよう。好適な実施例の特徴に関する具体的な寸法、材料の組成、及び形状は限定として意図されるものではなく、本発明に組み込まれた広範な概念を説明するためのものである。

Claims (19)

  1. 導電性の壁部を備えた中空の通路により形成され第1の高周波磁場を閉じ込める第1の共振器ループを具備する第1共振器と、導電性の壁部を備えた中空の通路により形成され第2の高周波磁場を閉じ込める第2の共振器ループを具備する第2共振器とを有する共振器の構造であって、
    前記第1の高周波磁場の磁束線と前記第2の高周波磁場の磁束線とを直交させると共に、前記第1の共振器ループを導電材料により遮蔽し、前記第1共振器と前記第2共振器を前記第1及び第2の高周波磁場の結合を防止するように交差させ、
    前記第1共振器は、第1のコンデンサの一部を構成する第1の平面状ギャップと、該第1の平面状ギャップを部分的に取り囲み前記第1の共振器ループの一部を構成する第1の環状ループとを有する第1の材料ブロックとを具備し、前記第1の平面状ギャップと前記第1の環状ループとが導電性の壁部を有すると共に電気的に接続されており、前記第1の平面状ギャップと前記第1の環状ループとが第1の平面内に配置されており、前記第1の材料ブロックの縁部には前記第1の環状ループ及び前記第1の平面状ギャップと交差する切欠き部が形成されており、
    前記第2共振器は、第2のコンデンサを形成するように中央部に形成された第2の平面状ギャップと、該第2の平面状ギャップを取り囲み前記第2の共振器ループを構成する第2の環状ループとを有する第2の材料ブロックとを具備し、前記第2の平面状ギャップと前記第2の環状ループとは導電性の壁部を有すると共に電気的に接続されており、前記第2の平面状ギャップと前記第2の環状ループとは前記第1の平面に垂直な第2の平面内に配置されており
    前記第2の材料ブロックには、これを貫通して延びる導電性の側壁を有し、前記第2の環状ループと垂直に交差する孔と、前記第2のブロック内に形成され前記第2の平面状ギャップに対し垂直方向を向いた導電性の側壁を有する平面状の開口であって、前記第2の平面状ギャップから離れる方向に前記孔の側壁から前記第2のブロックの縁部まで延びた平面状の開口とを形成し、
    前記第1の材料ブロックに形成された切欠き部に前記第2の材料ブロックを嵌合して、前記孔と前記第1の環状ループとが位置合わせされて前記第1の平面状ギャップを取り囲み、前記第2の環状ループと交差する閉じた第1の共振器ループを形成すると共に、前記第1の平面状ギャップが前記第2の材料ブロックの前記平面状の開口と位置合わせされて、前記第1のコンデンサを形成するように構成した共振器の構造。
  2. 前記第1の共振器ループにおける前記第1の高周波磁場を前記第2共振器ループから減結合するように選択した角度により、前記第2の共振器ループと前記第1の共振器ループとは交差している請求項1の共振器の構造。
  3. 前記第1及び第2の共振器ループが垂直に交差している請求項1の共振器の構造。
  4. 前記第1の高周波磁場を発生させて、経時変化する刺激信号を前記第1の共振器ループ内に供給するための手段と、前記第1の共振器ループと前記第2の共振器ループとの交差領域内に試料を配置するための手段と、前記第2の共振器ループにおける経時変化する応答信号を検出するための手段とを更に具備している請求項1の共振器の構造。
  5. 前記第1の環状ループと前記第2の環状ループとの交差点を通り、前記第1及び第2の平面と平行に延びる軸線の回りに前記第1の材料ブロックに対して前記第2の材料ブロックが回転可能となるように、前記第1の材料ブロックと第2の材料ブロックとが連結されている請求項の共振器の構造。
  6. 前記第1の材料ブロックが前記第2の材料ブロックと全ての当接面において電気的に短絡している請求項の共振器の構造。
  7. 前記第1及び第2の材料ブロックの当接面に、第2の材料ブロックを第1の材料ブロックに対して回転可能としながら第1及び第2の材料ブロックを導電結合するための導電性連結手段を配置した請求項の共振器の構造。
  8. 前記第1の材料ブロックと前記第2の材料ブロックとが強固に連結されている請求項1の共振器の構造。
  9. 前記第1及び第2の材料ブロックが金属で形成されている請求項1の共振器の構造。
  10. 前記第1及び第2共振器を、ギャップを形成する薄い内側部分とループを形成するより厚い環状部分とを有し、前記ループと前記ギャップとを内包するシールドを形成する中空の導電性エンベロープをそれぞれが具備する第1及び第2の集中素子共振器で構成し、
    前記第1及び第2共振器のそれぞれの前記ループの一部分に形成され、前記第1の共振器ループと前記第2の共振器ループとの交差を可能にする不連続部と、前記第1共振器に高周波エネルギを供給するための手段と、前記第1の共振器ループと前記第2の共振器ループとの交差領域に試料を供給するための手段と、前記第2共振器における高周波エネルギを検出するための手段と、
    前記少なくとも一方の共振器の前記ループにおける前記高周波エネルギによって発生した磁場の、前記共振器ループの他方における前記高周波エネルギによって発生した磁場に対する直交性を調整するための、前記第1及び第2共振器の少なくとも一方の内部に配置された磁場直交性調整手段とを具備している請求項1の共振器の構造。
  11. 前記第1共振器に高周波エネルギを供給するための手段として、前記第1共振器の前記ギャップに容量結合された同軸給電線を設けた請求項10の共振器の構造。
  12. 前記同軸給電線の末端が前記第1共振器の前記薄い内側部分における前記ギャップの一方の側まで延びており、前記第1共振器前記同軸給電線末端の反対側に位置する導電性スラグを更に具備しており、該導電性スラグの前記同軸給電線末端からの距離が調整可能になっている請求項11の共振器の構造。
  13. 前記第1共振器に高周波エネルギを供給するための手段として、前記少なくとも一方の共振器ループ内に配置されたワイヤループを設けた請求項10の共振器の構造。
  14. 前記少なくとも一方の共振器の共振周波数を調整するために、前記少なくとも一方の共振器ループの内部に同調手段を設けた請求項10の共振器の構造。
  15. 前記同調手段前記第1及び第2共振器のそれぞれにおける前記ギャップの一方の側に結合された導電性スラグを具備しており、該導電性スラグが、前記ギャップの反対側に向かって前記ギャップ内に使用者により選択可能な距離だけ延びて可変的なギャップコンデンサを形成している請求項14の共振器の構造。
  16. 前記高周波磁場の直交性を調整するための手段が、前記第1共振器と前記第2共振器との交差点を通って延びる軸線の回りに前記第1共振器に対して前記第2共振器を回転させるための手段を具備している請求項10の共振器の構造。
  17. 前記高周波磁場の直交性を調整するための手段が、前記第1及び第2共振器の交差点の近傍において前記少なくとも一方の共振器ループ内に延びる導電性の突起を具備している請求項10の共振器の構造。
  18. 前記高周波磁場の直交性を調整するための手段が、前記第1及び第2共振器の交差点の近傍において前記少なくとも一方の共振器ループ内に延びる誘電性の突起を具備している請求項10の共振器の構造。
  19. 前記同調手段が、前記第1及び第2共振器の少なくとも一方の内側に配置された誘電性のスラグを具備している請求項14の共振器の構造。
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