JP3859076B2 - ハイブリッド方式の作業機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源としてエンジンと電動機(以下、「モータ」という)とを備えるハイブリッド方式の作業機に関し、特に、作業機の走行方向の反転や走行停止の制御を簡単にすることができるようにしたハイブリッド方式の作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
耕耘機や芝刈り機等の作業機においては、通常の屋外の作業では、エンジンを動力源としたものを使用する一方、低い運転音が要求される地域ではモータを動力源としたものを使用していた。このように、従来は、エンジンで駆動される作業機とモータで駆動される作業機とが個々に使い分けられていた。
【0003】
これに対して、近年、動力源としてエンジンとモータの両方を混成使用する、いわゆるハイブリッド方式の作業機が提案されている。例えば、特開2001−161104号公報には、ロータリ作業機を備えた管理機において、管理機本体の走行駆動と発電機駆動用にエンジンを使用し、作業機の駆動用には前記発電機で充電されたバッテリを使用するハイブリッド方式の管理機が開示されている。この管理機では、作業機の正逆転切り換えを、モータの回転方向切り換えによって行えるようにして、従来複雑であった作業機の操作機構を簡素化している。
【0004】
また、従来から、エンジン駆動作業機をリモートコントロールするために、走行部を操作性の良好なモータにすることも行われている(特開平3−43013号公報)。このエンジン駆動作業機の前進および後進の切り換えも、モータの回転方向の切り換えで行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のハイブリッド方式の管理機において、エンジン駆動される発電機の出力をバッテリを介さずにモータへ直接供給するようにしてバッテリを省略する等、制御回路を簡素化することが考えられる。この場合、モータの正転および逆転の切り換え回路は、制御回路を簡素化するための障害となりやすい。
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を解消して、制御回路を複雑にしないで出力取り出し軸を正転および逆転できるようにするのに好適なハイブリッド方式の作業機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、エンジンと、該エンジンで駆動される発電機と、該発電機から供給される電力で駆動されるモータとを有するハイブリッド方式の作業機において、前記エンジンで駆動される太陽歯車と、前記モータで前記太陽歯車の周りに公転される遊星歯車と、前記遊星歯車に噛み合うとともに出力軸を構成する内歯車とからなり、前記エンジンおよび前記モータからの入力を混成して前記出力軸から出力させる遊星歯車装置を具備し、前記モータの一方向回転の回転数によって、前記出力軸の回転数および回転方向を決定するように構成した点に第1の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記出力軸に連結されて回転される走行用駆動輪を備えた点に第2の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記エンジンが、ほぼ定速運転されて作業機本体の駆動源を構成している点に第3の特徴がある。
【0010】
さらに、本発明は、前記発電機からバッテリを介さず直接供給される電力で前記モータが駆動されるようにした点に第4の特徴がある。
【0011】
上記第1の特徴によれば、エンジンの回転数を変化させず、モータの回転方向も変化させず、モータの一方向での回転数を変更するだけで、遊星歯車装置の出力軸の回転数および回転方向を制御することができる。
【0012】
第2の特徴によれば、モータの回転数を変更するだけで、走行用駆動輪の回転速度および回転方向を制御でき、作業機の前進および後退や速度変更が可能である。
【0013】
第3の特徴によれば、エンジンによって作業機本体を定速で駆動しつつ、モータで作業機の走行速度や方向を制御することができる。
【0014】
第4の特徴によれば、発電機の出力電力を蓄積するためのバッテリを省略して回路を簡素化するのと相まって、モータの正逆回転の切り換えのための構成も省略できるので、一層の簡素化が可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。図2は本発明の一実施形態に係るハイブリッド方式作業機としての芝刈機の全体斜視図、図3は芝刈機の要部平面図である。図2において、芝刈機のカッタハウジング1の前部には一対の前車輪Wf,Wfが、また後部に一対の後車輪Wr,Wrが懸架される。カッタハウジング1の中央部にはバーチカル型エンジンEが搭載され、エンジンEの上方突出部にはエンジンカバーCが被せられる。またカッタハウジング1の後部両側には後方に向って後上りに延びる操作ハンドルHが設けられ、さらに、カッタハウジング1の後部には、刈り取られた芝を収容するためのグラスバッグBが設けられる。
【0016】
図3において、カッタハウジング1の中央部は下面つまり地面側が開放された中空円筒状の空間であり、ブレードカッタ(作業機本体)4が収容されるカッタ室3が形成される。ブレードカッタ4は、エンジンEのクランク軸5に連結され、エンジンで駆動されてカッタ室3内で回転する。カッタハウジング1の進行方向右側には、カッタ室3の出口から後方に延び、前記グラスバッグBに通じる芝放出口2が形成される。ブレードカッタ4で刈り取られた芝等は、この芝放出口2を通ってグラスバッグBに集められる。
【0017】
カッタハウジング1の後部左右両側には、後輪支持部材14,14が配置され、該支持部材14,14には後車輪Wr,Wrの車軸16,16が軸架される。左右の支持部材14,14は連結軸19で互いに結合され、該連結軸19と平行に出力軸17が設けられる。出力軸17は変速機20を介してモータ7に結合されるとともに、出力軸17の両端は、それぞれ前記支持部材14,14側に延びて後輪Wr,Wrの車軸16,16に連結される。出力軸17と車軸16,16との間には減速歯車機構8を介してもよいし、出力軸17の延長部両端に後輪Wr,Wrを結合するようにして車軸16,16を省略してもよい。
【0018】
前記変速機20には、エンジンEの出力軸も連結される。変速機20は、遊星歯車装置を備え、モータ7およびエンジンEの回転数によって決定される回転数および回転方向の駆動力を出力する。詳細は後述する。
【0019】
エンジンEの上部を覆うエンジンカバーC内には、図示しないリコイルスタータが収容される。エンジンカバーCには、リコイルスタータのスタータロープ(図示しない)に結合されるスタータグリップ15が保持されている。
【0020】
図4は、上記芝刈り機の全体システムを示すブロック図である。同図において、エンジンEには、発電機Gが連結される。発電機Gは、例えば、アウタロータ式三相交流発電機である。発電機Gの出力はモータ7の駆動回路10に接続され、駆動回路10は、入力された交流を位相制御してモータ7に供給する。モータ7は、例えば、直流モータであるが、ユニバーサルモータ等であってもよい。駆動回路10は、このモータ7に適合した駆動出力を発生する。エンジン回転数は目標回転数に維持するように制御される。エンジンEの回転はブレードカッタ4に伝達されるとともに、かさ歯車21等で方向転換され、伝達軸22を介して変速機20に伝達される。
【0021】
図5は、駆動回路10の一例を示す回路図である。同図において、駆動回路10は、発電機Gの三相出力巻線に接続されたサイリスタブリッジ101と、CPU102とを備える。点線で示すように、平滑用のコンデンサ103を設けても良いが、回路ユニットの小型化を図るためには、このコンデンサ103を省略することが好ましい。モータ7は直流ブラシモータである。CPU102は、発電機Gの単相副巻線SCから電力を得ることができる。
【0022】
この構成において、CPU102は、モータ電流を検出し、このモータ電流に基づいてサイリスタ101a,101b,101cを位相制御し、モータ7の出力を制御する。つまり、サイリスタの導通位相角つまりオンタイミングを変えて、発電機Gの出力交流の波形内の導通割合を制御する。
【0023】
駆動回路10は、負荷に対応したモータ電流を検出する。モータ7にかかる負荷が変化すると、モータ電流が変化する。モータ電流の変化に伴ってモータ電圧も変化する。例えば、運転中に負荷が増大してモータ電流が増大すると、モータ電圧は低下する。その結果、モータ回転数が低下してトルクが低下する。このままでは、走行速度が低下するので、目標回転数を維持させるため、出力を増大させてモータ電圧を増大させる。
【0024】
なお、芝刈り機にバッテリを搭載した場合には、モータロック等の過電流を想定し、電流を検出して過電流時に駆動素子を停止して保護する回路が必要である。これに対して、この駆動回路10では、バッテリを使用せずに、発電機Gから直接モータ7へ電力を供給するようにし、かつ発電機Gの最大出力電力がモータ7へ供給される最大制御電力以内となるようにした。したがって、駆動回路10に使用される駆動素子(図5の例ではサイリスタとダイオード)の容量は発電機Gの出力電流の最大値で決定できるので、過電流に対する保護回路を省略することができる。
【0025】
発電機Gの出力を、モータ定格+α(モータの静止状態から走行状態までの加速に必要な容量)とするのがよい。すなわち、モータが必要とする最大作業能力電流値が、出力インピーダンスによって制限される発電機Gの最大出力電流値となるようにする。こうすることにより、上述のように、駆動回路10の駆動素子の保護機能を省くことができる。
【0026】
図1は、駆動輪つまり後輪の駆動装置のブロック図である。変速機20は遊星歯車装置23並びにモータ側減速機24およびエンジン側減速機25を含む。これら両減速機24,25は、周知の歯車装置を使用できる。遊星歯車装置23は、太陽歯車26、遊星歯車27および内歯車28からなる。モータ側減速機24の出力軸29には小歯車30が結合され、エンジン側減速機25の出力軸31には太陽歯車26が結合される。遊星歯車27はアーム32に回転自在に設けられ、アーム32は前記出力軸31と同軸上にアイドル状態つまり回転自在に設けられた中間歯車33に対して偏心位置に結合される。内歯車28の軸つまり変速機20の出力軸34はかさ歯車等図示しない歯車で出力軸17に連結される。
【0027】
図1において、エンジンEの回転は減速機25を介して太陽歯車26に伝達され、太陽歯車26の回転は遊星歯車27を介して内歯車28に伝達される。一方、モータ7の回転が減速機24、小歯車30を介して中間歯車33に伝達され、遊星歯車27が太陽歯車26の周りに回転する。遊星歯車27が太陽歯車26の周囲を回転することにより、内歯車28は太陽歯車26の周囲を回転する。
【0028】
この遊星歯車装置23の各歯車の回転方向および回転数を回転数線図を参照して説明する。図6は、遊星歯車装置の回転数線図である。図6の各回転数線図において、縦軸に遊星歯車装置23の各歯車の回転数(太陽歯車の回転数に対する他の歯車の回転数比率)を示す。横軸の一端に太陽歯車26の回転数比を示し、他端に内歯車28の回転数比を示す。そして、太陽歯車26の歯数Zsと内歯車28の歯数Zrの逆数比で決定される位置に遊星歯車27の公転数比を示す。図に示すように、太陽歯車26、遊星歯車27、および内歯車28の回転数比は直線V上に乗る。したがって、遊星歯車27の公転数比は横軸上の歯数の逆数比で分割された点Dから延びる縦線と直線Vとの交点で示される。
【0029】
図6(a)は芝刈り機の停止状態における回転数比である。太陽歯車26の回転数に対する内歯車28の回転数比を「0」にするためには、遊星歯車27の公転数比を「Zs/(Zr+Zs)」にする。つまり、エンジンEの駆動回転数に対して、遊星歯車27が回転数比Zs/(Zr+Zs)で公転するようにモータ7を駆動すると内歯車28は停止し、芝刈り機の走行は停止する。例えば、モータ側減速機24の減速比が「1/20」、エンジン側減速機25の減速比が「1/6.8」、太陽歯車26の歯数Zsが「34」、内歯車28の歯数Zrが「90」である場合、エンジンEを3400rpm、モータ7を2700rpmでそれぞれ駆動すると変速機20の出力軸34の回転数は0rpmである。
【0030】
図6(b)は芝刈り機の最大速度前進状態における回転数比である。太陽歯車26の回転数に対して遊星歯車27の公転数比を「1」にすると、内歯車28の回転数比は「1」になる。例えば、エンジンEを3400rpmで駆動し、モータ7を10000rpmで回転させると、変速機20の出力軸34は500rpmで正転つまり太陽歯車26と同方向に回転する。
【0031】
図6(c)は芝刈り機の最大速度後進状態における回転数比である。太陽歯車26の回転数に対して遊星歯車27の公転数比を「0」にすると、内歯車28の回転数比は負になる。つまり内歯車27は太陽歯車26対して回転数比Zs/Zrで逆回転する。したがって、図6(c)に示した各歯車の回転数比になるようにエンジンEおよびモータ7を回転させれば、つまり遊星歯車27を公転させるモータ7を停止させれば芝刈り機を後退させることができる。例えば、エンジンEの回転数を3400rpm、モータ7の回転数を0rpmにすると、内歯車28は190rpmで逆転する。
【0032】
このように、エンジンEの回転数に対してモータ7の回転数を変化させるだけで、モータ7の回転方向は変化させずに、変速機20の出力軸34の回転数および回転方向を変えることができる。
【0033】
なお、エンジン回転数の変動によって変速機20の出力軸34の回転数、つまり芝刈り機の走行速度が変化しないように、モータ7は、エンジン回転数に応じて可変とするのがよい。すなわち、図6に示した各走行状態における回転数比を維持するためには、エンジン回転数が変化すればモータ7の回転数も、これに応じて変化させなければならないのが理解されるであろう。但し、モータ7を逆転しないという前提があるので、後進速度はエンジンの回転数に伴って変化する。
【0034】
図7は、エンジン回転数とモータ回転数との関係を各走行状態毎に示す図である。図示のように、モータ回転数は、最大速度での前進および停止を維持するためにエンジン回転数が下がると、それに応じて低下させられる。後進時にはモータ7は停止させたままである。
【0035】
エンジン回転数に応じた目標モータ回転数を、予めテーブル等に設定しておくか、計算によって求め、この目標モータ回転数に合うようにモータ7の回転数を制御する。エンジン回転数は、発電機Gの発電電力の周波数に基づいて検出する等、周知の適宜の方法を使用して検出することができる。
【0036】
上述の実施形態は、作業機としての芝刈り機を例にしたが、本発明は、これに限らず、耕耘機や除雪機等、エンジン駆動される耕耘ロータリや除雪用オーガ等の作業機本体と、作業機本体を搭載または連結して移動させるため、エンジンおよびモータで駆動される車体とを有する種々の作業機に適用することができる。
【0037】
また、本発明は、発電電力をバッテリに蓄積せずに直接モータに供給するもにに限らず、発電機の出力電力を蓄積するバッテリを搭載し、このバッテリの電力によってモータを駆動させる作業機にも適用できる。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1〜請求項4の発明によれば、モータの回転数を一方向で変更するだけの簡単な構成で遊星歯車装置の出力軸の回転数および回転方向を制御できる。
【0039】
請求項2の発明によれば、モータの回転数を一方向で変更するだけで、作業機の前進および後進の切り換えおよび速度制御を行うことができる。
【0040】
請求項3の発明によれば、エンジンをほぼ定速で回転して作業機本体を駆動することができる。例えば、作業機が芝刈り機であれば、作業機本体としてのカッタブレードをほぼ定速で回転させて刈り後の仕上がりを良好に保持できる。また、作業機が耕耘機であれば、作業機本体としてのロータリをほぼ定速で回転させて安定な耕耘作業を行うことができる。
【0041】
請求項4の発明によれば、バッテリ搭載を省略して回路を簡素化したうえに、さらにモータの正逆切り換え制御の省略による構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る作業機の走行用駆動装置のブロック図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係る芝刈り機の斜視図である。
【図3】 本発明の一実施形態に係る芝刈り機の要部平面図である。
【図4】 芝刈り機の全体システムを示すブロック図である。
【図5】 本発明の一実施形態に係る作業機の駆動回路の一例を示す図である。
【図6】 減速機を構成する遊星歯車装置の回転数比線図である。
【図7】 モータとエンジンの回転数の関係を示す図である。
【符号の説明】
1…カッタハウジング、 2…芝放出口、 3…カッタ室、 4…ブレードカッタ、 5…クランク軸、 7…モータ、 8…減速歯車機構、 10…駆動回路、 17…出力軸、 20…変速機、 23…遊星歯車装置、 26…太陽歯車、 27…遊星歯車、 28…内歯車、 101…サイリスタブリッジ、 102…CPU、 E…エンジン、 G…発電機
Claims (4)
- エンジンと、該エンジンで駆動される発電機と、該発電機から供給される電力で駆動されるモータとを有するハイブリッド方式の作業機において、
前記エンジンで駆動される太陽歯車と、
前記モータで前記太陽歯車の周りに公転される遊星歯車と、
前記遊星歯車に噛み合うとともに出力軸を構成する内歯車とからなり、
前記エンジンおよび前記モータからの入力を混成して前記出力軸から出力させる遊星歯車装置を具備し、
前記モータの一方向回転の回転数によって、前記出力軸の回転数および回転方向を決定するように構成したことを特徴とするハイブリッド方式の作業機。 - 前記出力軸に連結されて回転される走行用駆動輪を備えたことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド方式の作業機。
- 前記エンジンが、ほぼ定速運転されて作業機本体の駆動源を構成していることを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド方式の作業機。
- 前記発電機からバッテリを介さず直接供給される電力で前記モータが駆動されるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハイブリッド方式の作業機。
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