JP3858793B2 - インクジェット記録用水性インク及びインクジェット記録用水性インクの調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置において用いられるインクジェット記録用水性インク、及び、インクジェット記録用水性インクの調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式のプリンター技術とは、急激に加熱し発生した気泡により微細ノズルからインクを吐出するバブル方式、電圧印加により変形する圧電素子を用いて微細ノズルからインクを吐出するピエゾ方式等により、基本色となる数色のインクを、数ピコリットル〜数十ピコリットルという微小液滴として選択的に紙面上に着弾させることにより画像を形成する印字技術である。
【0003】
このようなインクジェット記録方式に使用するインクジェット記録用水性インクとしては、水溶性染料又は水不溶性の粒子色材を、水と水溶性有機溶剤からなる液媒体に溶解又は分散させたものが知られている。最近では、画像の輪郭がシャープな高い印字品質が多品種の紙に対して求められていることから、紙面上に色材成分が残存することにより滲みを低減することができる顔料等の水不溶性の粒子色材を用いたインクジェット記録用水性インクが主流になりつつある。なかでも、水不溶性の粒子色材としては水中に分散できるよう表面処理が施された自己分散型のものが主流となっている。
【0004】
このような着色剤として水不溶性の粒子色材を分散させたインクジェット記録用水性インクの調製方法としては、水不溶性の粒子色材を分散させた色材水溶液を水不溶性の粒子色材の濃度が所望の着色濃度に適したものとなるように水により希釈した調製液を作製し、この調製液をゆっくりと攪拌しながら、その他のインク構成材料を調製液に随時添加するレットダウンと呼ばれる調製方法が一般的である。レットダウン法によれば、粒子色材の分散安定性を保ったままインクを調製することが可能となる。
【0005】
ところで、インクジェット記録用水性インクには、画像の輪郭がシャープな高い印字品質を達成できることに加え、インクジェット記録方式に用いられるのに最適の性能特性が要求されており、例えば、記録紙に画像形成した際に、異なる色同士が隣接する部分(以下、境界部ともいう)において、インク同士が混合することによる印字品質の悪化(以下、ブリーディングともいう)がないこと;記録紙に画像形成したときの乾燥が速く耐擦性が良好であること;長期にわたってインク特性・物性等に変化がなく安定であること;インクジェットヘッドに使用されている樹脂材料や金属材料を腐食せず、ノズルの目詰まりを発生させることなく長期にわたり安定した噴射が可能であること等が要求される。このような性能特性を満足するために、従来、インクジェット記録用インクに界面活性剤を添加することが行われている。例えば、特許文献1では、記録紙への記録を均一な濃度で行い、印字ムラを低減するためにアミンオキシド型の界面活性剤を使用したインクジェット記録用インクが開示されている。
【0006】
しかしながら、水不溶性の粒子色材を用いたインクジェット記録用インクに界面活性剤を添加した場合、長期間保存すると界面活性剤が水不溶性の粒子色材に吸着し、印字ムラの低減等の効果が減退したり、失われたりするという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−263930号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インク特性の経時安定性に優れ、長期にわたり安定して噴射でき、高品質の記録を行うことができるインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、自己分散型の水不溶性の粒子色材、下記式(1)で表される化合物、分子中に窒素原子を有する界面活性剤、水、及び、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用水性インクであって、表面張力が30〜50mN/mであり、かつ、60℃で2週間保存したときの表面張力の変化率が5%未満であるインクジェット記録用水性インクである。
【0010】
【化5】
【0011】
式(1)中、R1はアルキル基であり、xは20〜30である。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、自己分散型の水不溶性の粒子色材を含有する。上記自己分散型の水不溶性の粒子色材は、着色剤の役割を果たすものである。
上記自己分散型の水不溶性の粒子色材としては水相に分散可能なものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック、有機顔料、無機顔料、ポリマーを染料で染着した着色剤等の水不溶性の粒子色材に自己分散性を付与する表面処理が施されたものが挙げられる。
【0013】
上記有機顔料としては特に限定されず、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック昼光蛍光顔料等を挙げることができる。
上記無機顔料としては特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化鉄系顔料等を挙げることができる。
なお、上記自己分散型の水不溶性の粒子色材は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記自己分散型の水不溶性の粒子色材の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜20重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、充分な印字濃度が得られないことがある。20重量%を超えると、分散安定性を保つことができないことがある。より好ましくは0.3〜15重量%であり、更に好ましくは、0.5〜10重量%である。
【0015】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、下記式(1)で表される化合物を含有する。下記式(1)で表される化合物は、本発明のインクジェット記録用水性インク中で上記水不溶性の粒子色材の表面を覆って粒子色材の分散安定性を向上させるとともに、後述する窒素原子を有する界面活性剤が粒子色材に吸着することを防止する。これにより、本発明のインクジェット記録用水性インクは、優れたインク特性の経時安定性を有する。
【0016】
【化6】
【0017】
式(1)中、R1はアルキル基であり、xは20〜30である。xが20〜30であると、粒子色材の表面を覆うのに適当な分子量となり、本発明のインクジェット記録用水性インクの経時安定性を高めることが可能となる。
【0018】
上記式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム等を挙げることができる。このうち市販されているものとしては、例えば、レベノールWX(x=25)、ラテムルWX(x=23)(以上、花王社製)等を挙げることができる。
【0019】
上記式(1)で表される化合物の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.01〜5重量%であることが好ましい。0.01重量%未満であると、粒子色材の表面を充分に覆うことができず、充分な経時安定性を得ることができないことがある。5重量%を超えると、粒子色材の分散安定性が悪くなることがある。より好ましくは0.1〜3重量%であり、更に好ましくは0.5〜1重量%である。
【0020】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、分子中に窒素原子を有する界面活性剤を含有する。上記分子中に窒素原子を有する界面活性剤は、本発明のインクジェット記録用水性インクの表面張力を調整する効果等を有する。
【0021】
上記分子中に窒素原子を有する界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、下記式(2)で表される界面活性剤、下記式(3)で表される界面活性剤等が好適に用いられる。これらの界面活性剤は、適当な界面活性作用を示し、必要な浸透性を本発明のインクジェット記録用水性インクに与えることができる。なお、上記分子中に窒素原子を有する界面活性剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
【化7】
【0023】
式(2)中、R2はアルキル基であり、y+zは5〜15である。y+zが5〜15であると、適当な界面活性作用を示し、必要な浸透性を本発明のインクジェット記録用水性インクに与えることができる。
【0024】
【化8】
【0025】
式(3)中、R3はアルキル基であり、N→Oはアミンオキシドの半極性結合を表す。
【0026】
上記式(2)で表される界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン等を挙げることができる。このうち市販されているものとしては、例えば、エソミンC/15(y+z=5)、エソミンC/20(y+z=10)、エソミンC/25(y+z=15)、エソミンS/15(y+z=5)、エソミンS/20(y+z=10)、エソミンS/25(y+z=15)、エソミンT/15(y+z=5)、エソミンT/20(y+z=10)、エソミンT/25(y+z=15)(以上、ライオンアクゾ社製)等を挙げることができる。
【0027】
上記式(3)で表される界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ヤシ油ジメチルアミンオキシド等のアルキルジメチルアミンオキシド等を挙げることができる。このうち市販されているものとしては、例えば、アロモックスDMC−W、アロモックスDM12D−W(C)、アロモックスDM14D−N(以上、ライオンアクゾ社製)等を挙げることができる。
【0028】
上記分子中に窒素原子を有する界面活性剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.01〜10重量%であることが好ましい。0.01重量%未満であると、本発明のインクジェット記録用水性インクの表面張力を適当な範囲に調整することができなくなり、記録紙等の被記録材への充分な浸透作用が得られないことがある。10重量%を超えると、本発明のインクジェット記録用水性インクの表面張力を適当な範囲に調整することができなくなり、吐出ヘッドへの導入性や吐出安定性を保つことが困難となることがある。より好ましくは0.1〜3重量%である。
【0029】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水を含有する。
上記水としては特に限定されないが、脱イオン水、純水を使用することが好ましい。上記水の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して40重量%以上であることが好ましい。40重量%未満であると、通常時のインク粘度を正常に噴射可能な低粘度に保つことが困難になる。
【0030】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水溶性有機溶剤を含有する。上記水溶性有機溶剤は、インクジェットヘッドの先端部における本発明のインクジェット記録用水性インクからの析出発生、乾固防止を主目的として使用される。
上記水溶性有機溶剤としては特に限定されないが、揮発性が低く染料溶解性の高いものが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;グリセリン;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類等を挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記水溶性有機溶剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して5〜40重量%であることが好ましい。5重量%未満であると、湿潤作用が不充分となり、析出、乾固等の問題を生じることがある。40重量%を超えると、本発明のインクジェット記録用水性インクが必要以上に増粘して吐出不能になったり、記録紙上での乾燥が極端に遅くなったりする等の問題を生じることがある。より好ましくは、7〜40重量%、更に好ましくは、10〜30重量%である。
【0032】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、更に必要に応じて、公知の浸透剤、樹脂バインダー、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、染料溶解剤、防腐防カビ剤、防錆剤等を含有していてもよい。また、本発明のインクジェット記録用水性インクの記録紙への浸透性、乾燥性を制御する目的で、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価アルコールを含有させてもよい。
【0033】
上記浸透剤は、窒素原子を有する界面活性剤により得られる本発明のインクジェット記録用水性インクの記録紙への浸透性を補って浸透速度を速め、紙面上での乾燥性を向上させることにより、ブリーディングを防止する。
上記浸透剤としては特に限定されないが、浸透に伴うフェザリング(紙の繊維に沿ったヒゲ状のにじみ)を起こし難いものが好ましく、例えば、低臭気性で蒸気圧の低い多価アルコールモノアルキルエーテル等が好適に用いられる。
上記多価アルコールモノアルキルエーテルとしては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0034】
上記多価アルコールアルキルエーテルの配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して3〜15重量%であることが好ましい。3重量%未満であると、記録紙へのインク浸透速度が遅いために、乾燥時間、滲みの問題を生じることがある。15重量%を超えると、記録紙へのインク浸透速度が速くなり過ぎるため、記録紙の裏側まで本発明のインクジェット記録用水性インクが達してしまったり、滲みを生じたりすることがある。
【0035】
なお、本発明のインクジェット記録用水性インクは、熱エネルギーの作用によってインクを吐出させるインクジェット方式に適用される場合には、比熱、熱膨張係数、熱電導率等の熱的な物性値が調整されてもよい。
【0036】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、分子中に窒素原子を有する界面活性剤を含有することにより、表面張力が30〜50mN/mとなる。表面張力が30〜50mN/mであることにより、記録紙等の被記録材に対する浸透性に優れ、滲みのない優れた印字品質で記録を行うことができる。30mN/m未満であると、滲みが生じて印字品質が低下する。50mN/mを超えると、吐出ヘッドへの導入性や吐出安定性を保つことが困難となる。
【0037】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、式(1)で表される化合物を含有することにより、60℃で2週間保存したときの表面張力の変化率が5%未満となる。60℃で2週間保存したときの表面張力の変化率が5%未満であることにより、長期にわたり安定して噴射でき、高品質の記録を行うことができる。60℃で2週間保存したときの表面張力の変化率が5%を超えると、インクジェット記録用インクとして必要なインク特性の経時安定性が不充分であると判断できる。
なお、上記表面張力変化率は、下記式(4)により求めることができる。
【0038】
【数1】
【0039】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、分子中に窒素原子を有する界面活性剤を含有することにより、吐出ヘッドへの導入性や吐出安定性を損なうことなく、滲みを防止して高い印字品質で記録を行うことができ、更に式(1)で表される化合物を含有することにより、含有される粒子色材の分散安定性に優れるとともに、窒素原子を有する界面活性剤の粒子色材への吸着が防止され、インク特性の経時安定性に優れるので、長期にわたり安定して噴射でき、高品質の記録を行うことができる。
【0040】
本発明のインクジェット記録用水性インクを調製する方法としては特に限定されないが、例えば、自己分散型の水不溶性の粒子色材を分散させた色材水溶液と上記式(1)で表される化合物とを混合した調製液Aと、上記自己分散型の水不溶性の粒子色材と上記式(1)で表される化合物とを除く本発明のインクジェット記録用水性インクの構成材料全てを混合した調製液Bを作製し、調製液Aを攪拌しながら、攪拌中の調製液Aに調製液Bを添加して混合する方法等が好適に使用される。このような自己分散型の水不溶性の粒子色材、上記式(1)で表される化合物、分子中に窒素原子を有する界面活性剤、水、及び、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用水性インクを調製する方法であって、少なくとも、上記自己分散型の水不溶性の粒子色材を分散させた色材水溶液と上記式(1)で表される化合物とを混合して調製液Aを作製する工程と、上記自己分散型の水不溶性の粒子色材と上記式(1)で表される化合物とを除く構成材料全てを混合して調製液Bを作製する工程と、上記調製液Aを攪拌しながら、攪拌中の上記調製液Aに上記調製液Bを添加して混合する工程とを有するインクジェット記録用水性インクの調製方法もまた本発明の1つである。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
ブラック顔料分散水溶液(キャボット社製、CAB−O−JET300;固形分15重量%)33.3重量部、式(1)で表される化合物(花王社製、レベノールWX;x=25)1重量部、及び、純水20.0重量部を3時間攪拌混合して調製液A1を作製した。次に、純水19.1重量部、グリセリン26重量部、式(2)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、エソミンC/15;y+z=5)0.2重量部、及び、式(3)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、アロモックスDMC−W)0.4重量部を30分間混合攪拌して調製液B1を作製した。上記調製液A1をゆっくり攪拌しているところに調製液B1をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0043】
(実施例2)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
純水18.5重量部、グリセリン26重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル1重量部、及び、式(2)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、エソミンC/15;y+z=5)0.2重量部を30分間混合攪拌して調製液B2を作製した。実施例1で作製した調製液A1をゆっくり攪拌しているところに調製液B2をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0044】
(実施例3)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
純水16.8重量部、グリセリン28重量部、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル0.5重量部、及び、式(3)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、アロモックスDMC−W)0.4重量部を30分間混合攪拌して調製液B3を作製した。実施例1で作製した調製液A1をゆっくり攪拌しているところに調製液B3をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0045】
(実施例4)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
ブラック顔料分散水溶液(キャボット社製、CAB−O−JET300;固形分15重量%)33.3重量部、式(1)で表される化合物(花王社製、ラテムルWX、x=23)0.8重量部、及び、純水20.7重量部を3時間攪拌混合して調製液A2を作製した。次に、純水17.7重量部、グリセリン26重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部、及び、化学式(2)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、エソミンS/15;y+z=5)0.2重量部を30分間混合攪拌して調製液B4を作製した。調製液A2をゆっくり攪拌しているところに調製液B4をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0046】
(実施例5)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
ブラック顔料分散水溶液(キャボット社製、CAB−O−JET300;固形分15重量%)33.3重量部、式(1)で表される化合物(花王社製、ラテムルWX、x=23)1.5重量部、及び、純水20.0重量部を3時間攪拌混合して調製液A3を作製した。次に、純水19.4重量部、グリセリン15重量部、1,5ペンタンジオール10重量部、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル0.3重量部、及び、式(3)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、アロモックスDM14D−N)0.5重量部を30分間混合攪拌して調製液B5を作製した。調製液A2をゆっくり攪拌しているところに調製液B5をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0047】
(比較例1)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
ブラック顔料分散水溶液(キャボット社製、CAB−O−JET300;固形分15重量%)33.3重量部、及び、純水20.0重量部を3時間攪拌混合して調製液C1を作製した。次に、純水20.1重量部、グリセリン26重量部、式(2)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、エソミンC/15;y+z=5)0.2重量部、及び、式(3)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、アロモックスDMC−W)0.4重量部を30分間混合攪拌して調製液D1を作製した。調製液C1をゆっくり攪拌しているところに調製液D1をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0048】
(比較例2)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
純水20.5重量部、グリセリン26重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル1重量部、及び、式(2)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、エソミンC/15、y+z=5)0.2重量部を30分間混合攪拌して調製液D2を作製した。比較例1で作製した調製液C1をゆっくり攪拌しているところに調製液D2をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0049】
(比較例3)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
純水17.8重量部、グリセリン28重量部、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル0.5重量部、及び、式(3)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、アロモックスDMC−W)0.4重量部を30分間混合攪拌して調製液D3を作製した。比較例1で作製した調製液C1をゆっくり攪拌しているところに調製液D3をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0050】
(比較例4)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
純水18.5重量部、グリセリン26重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部、及び、式(2)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、エソミンS/15;y+z=5)0.2重量部を30分間混合攪拌して調製液D4を作製した。比較例1で作製した調製液C1をゆっくり攪拌しているところに調製液D4をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0051】
(比較例5)
<インクジェット記録用水性インクの調製>
純水19.9重量部、グリセリン15重量部、1,5ペンタンジオール10重量部、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル0.3重量部、及び、化学式(3)で表される界面活性剤(ライオンアクゾ社製、アロモックスDM14D−N)0.5重量部を30分間混合攪拌して調製液D5を作製した。比較例1で作製した調製液C1をゆっくり攪拌しているところに調製液D5をゆっくり添加し、更に30分間攪拌した後に0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクジェット記録用水性インクを得た。
【0052】
(評価)
<表面張力値安定性評価>
実施例1〜5及び比較例1〜5で調製したインクジェット記録用水性インクそれぞれについて、60℃、2週間の保存試験を実施し、保存試験前後で表面張力値を測定した。結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
<保存試験後印字品質評価>
実施例1〜5及び比較例1〜5で調製したインクジェット記録用水性インクそれぞれについて、60℃、2週間の保存試験を実施し、保存試験の前後で、記録ヘッド内のインクジェット記録用水性インクにピエゾ素子の振動による圧力を与えて液滴を発生させ、記録を行うオンデマンドタイプのマルチヘッド(吐出オリフィス径40μm、駆動電圧30V、周波数10kHz)を有する記録装置を用いて、普通紙(XEROX 4200)に印字を行った。
得られた印字画像について、ブリーディング及びバンディングを以下の基準により評価し、結果を表2に示した。
なお、上記バンディングとは、単色ベタ印字した際の均一度を表し、バンディングがない場合には、均一な濃度のベタ印字が達成されており、バンディングがある場合には、ベタ印字部が充分に埋まっておらず見た目には白スジが入っているように見える。
○・・・ブリーディング、バンディングともに生じなかった。
△・・・ブリーディング、バンディングのいずれかが生じた。
×・・・ブリーディング、バンディングともに生じた。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1〜5で調製したインクジェット記録用水性インクは、60℃2週間の保存試験後における表面張力変化が小さく、印字品質の劣化も認められなかった。
一方、比較例1〜5で調製したインクジェット記録用水性インクは、表面張力値安定性評価及び保存試験後印字品質評価において問題を有していた。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、インク特性の経時安定性に優れ、長期にわたり安定して噴射でき、高品質の記録を行うことができるインクジェット記録用水性インクを提供することができる。
Claims (9)
- 前記自己分散型の水不溶性の粒子色材の配合量が、前記インクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記式(1)で表される化合物が、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記式(1)で表される化合物の配合量が、前記インクジェット記録用水性インク全量に対して0.01〜5重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記式(2)で表される界面活性剤が、ポリオキシエチレンオレイルアミン及び/又はポリオキシエチレンラウリルアミンであることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記式(3)で表される界面活性剤が、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド及びヤシ油ジメチルアミンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記分子中に窒素原子を有する界面活性剤の配合量が、前記インクジェット記録用水性インク全量に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インク。
- 自己分散型の水不溶性の粒子色材、下記式(1)で表される化合物、分子中に窒素原子を有する界面活性剤、水、及び、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用水性インクを調製する方法であって、
少なくとも、
前記自己分散型の水不溶性の粒子色材を分散させた色材水溶液と前記式(1)で表される化合物とを混合して調製液Aを作製する工程と、
前記自己分散型の水不溶性の粒子色材と前記式(1)で表される化合物とを除く構成材料全てを混合して調製液Bを作製する工程と、
前記調製液Aを攪拌しながら、攪拌中の前記調製液Aに前記調製液Bを添加して混合する工程とを有する
ことを特徴とするインクジェット記録用水性インクの調製方法。
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