JP3857482B2 - シミュレーション方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスの開発に用いるシミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの動作原理は、1950年代に既に確立されている。その基本公式は、
p・n=ni 2 (1)
である。ここで、pは半導体中の正孔濃度、nは半導体中の電子濃度、ni は真性キャリア濃度である。半導体デバイスの動作を記述する関係式が、すべてこの式を満たすように定式化されている。
【0003】
近年、微細化の進展によって量子多体効果が混入し、この基本公式からのずれが存在することが指摘され始めている。そこで、半導体中の不純物のイオン化率を100%と仮定し、量子多体効果等によるバンドギャップ縮小効果(BGN:Band Gap Narrowing)を考慮に入れて、
【0004】
【数7】
【0005】
なる式を、デバイスシミュレーションの基本公式として来た。ここで、ND は半導体中のドナー不純物濃度、ΔEgはバンドギャップ縮小効果による縮小幅である。ここでは、n型半導体を例に取って説明を進めている。
【0006】
しかながら、シリコンに燐をドープした場合、不純物濃度が3E19cm-3を超えるほど濃くなると、イオン化率が100%よりずっと小さくなることが、最新の独自の計算から明らかになった。21世紀初頭には、この影響はますます大きくなり、もはや、式(2)に頼った対処療法ではデバイスシミュレーションの信頼性を確保することが不可能になりつつある。
【0007】
更に悪いことに、従来の理論物理学の枠組みでは、量子多体効果とイオン化率を同時に矛盾なく算出することが出来ていない。これは、従来の枠組みがあまりにコンピューターに負荷を掛けすぎる為である。このような状況から、量子多体効果を考慮に入れた上で、イオン化率を正しく、且つ高速に計算する、新しい枠組みの開発が危急の課題となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した問題を抱える部位を、MOSFETを例に取って、具体的に示すと以下の通りである。
【0009】
1)ゲートポリシリコン
2)拡散層の端に構成するエクステンション領域
3)基板表面の反転層、及び蓄積層
4)直接トンネリングによるゲートリークが無視できなくなるほど薄膜化が進んだMOSFET
これらは、ゲート電極容量を通じて閾電圧の評価の誤差として現れたり、トンネルゲートリークによるトランジスタ動作への補正という形で、デバイス設計に大きく影響してくる。
【0010】
本発明の目的は、バンドギャップ縮小効果を組み込んだイオン化率を容易に算出し得るシミュレーション方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
[構成]
本発明は、上記目的を達成するために以下のように構成されている。
【0012】
(1)本発明(請求項1)のシミュレーション方法は、半導体デバイスのシミュレーションの基本公式として、
【0013】
【数8】
【0014】
(pは半導体中の正孔濃度、nは半導体中の電子濃度、ni は真性キャリア濃度、ΔEgはバンドギャップ縮小効果によるバンドギャップの縮小幅、rは半導体中に含まれる不純物のイオン化率、NDは半導体中のドナー不純物濃度、NAは半導体中のアクセプタ不純物濃度、kBはボルツマン定数、Tは温度)
を用いることを特徴とする。
【0015】
(2)本発明(請求項2)のシミュレーション方法は、半導体中に含まれる不純物のイオン化率と、前記不純物のイオン化率が100%としたバンドギャップ縮小効果とを自己無撞着的に解いて前記不純物のイオン化率を考慮したバンドギャップ縮小効果を計算することを特徴とするシミュレーション方法。
【0016】
(3)本発明(請求項3)のシミュレーション方法は、局所的バンドギャップ縮小効果を無視した表面ポテンシャルΨs を計算する第1のステップと、電子数の増大に応じて追加される多体量子効果による準粒子エネルギーシフトの増加分に相当する
【0017】
【数9】
【0018】
の右辺の計算結果を左辺に代入し、新たな伝導帯の下降幅ecsと価電子帯の上昇幅evsを得る第2のステップと、表面電荷密度の釣り合いの式を解いて、表面ポテンシャルの多体効果補正δΨsを数値的に求める第3のステップと、Ψs+δΨsを、電子数の増大に応じて追加される多体量子効果による準粒子エネルギーの増加分に相当する
【0019】
【数10】
【0020】
のΨsに代入して新たな伝導帯の下降幅ecsと価電子帯の上昇幅evsを求める第4のステップと、第2のステップから第4のステップを1回以上行って、所定の相対誤差以下に収束した伝導帯の下降幅ecsと価電子帯の上昇幅evs、多体効果補正δΨsを求めるステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
(4)本発明(請求項4)のシミュレーション方法は、不純物濃度と温度とを設定するステップと、バンドギャップ縮小効果を無視したフェルミエネルギーEF00−EC00を求めるステップと、バンドギャップ縮小効果によるフェルミ準位のずれef,伝導帯端のずれecを求めるステップと、求められたフェルミ準位のずれef,伝導帯端のずれecから価電子帯端のずれevを求めるステップと、前記フェルミ準位のずれefからイオン化率を求めるステップと、前記価電子帯端のずれev及び伝導帯端のずれecからバンドギャップ縮小効果によるバンドギャップの縮小幅ΔEGを求めるステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
なお、方法に係わる本発明は装置に係わる発明としても成立する。
【0023】
また、方法に係わる本発明は、コンピュータに当該発明に相当する機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体としても成立する。
【0024】
[作用]
本発明は、上記構成によって以下の作用・効果を有する。
【0025】
(1)本発明(請求項1)のシミュレーション方法は、半導体デバイスのシミュレーションの基本公式として、
【0026】
【数11】
【0027】
を用いることによって、シミュレーションが正確になる。
【0028】
半導体中に含まれる不純物のイオン化率と、前記不純物のイオン化率が100%としたバンドギャップ縮小効果とを自己無撞着的に解いて前記不純物のイオン化率を考慮したバンドギャップ縮小効果を計算することによって、前記不純物のイオン化率を考慮したバンドギャップ縮小効果が容易に計算することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。
【0030】
[第1実施形態]
従来の技術でも述べたように、半導体中の不純物のイオン化率は、必ずしも100%ではない。即ち、n型半導体を取り上げれば、バンドギャップ縮小効果(BGN)を考慮に入れたとき、デバイスシミュレーションの基本公式である式(2)を以下のように書き直さねばならない。
【0031】
【数12】
【0032】
なお、pは半導体中の正孔濃度、nは半導体中の電子濃度、ni は真性キャリア濃度、ΔEgはバンドギャップ縮小効果、rは半導体中に含まれる不純物のイオン化率、半導体中の不純物濃度、kBはボルツマン定数、Tは温度である。
【0033】
以下の実施形態の説明では、シリコンに燐をドープしてn型半導体を実現する場合を例に取り、BGNを無視した不純物のイオン化率と不純物のイオン化率を100%としたBGNを自己無撞着的に解いて、不純物のイオン化率を組み込んだBGNを計算する方法を紹介する。BGNは、伝導帯端(EC )を下げたり、価電子帯端(EV )を上げたりしてシリコンのバンドギャップをΔEG狭める効果である。
【0034】
多体計算は、現在最も進んだ理論と考えられ、多体効果については準粒子エネルギーシフト(QPS:Quasi Particle energy Shift)としてかなり詳細に取り入れられている。例えば、伝導帯端EC 付近の電子の準粒子エネルギーシフト(QPSe 、Δe )は、EF −Ec の減少として、キャリア間交換相互作用及びクーロン相互作用と、キャリア−不純物イオン間クーロン相互作用を全て同時に計算することができる。なお、EF はフェルミ準位である。
【0035】
また、価電子帯端EV 付近に対しては、EV −EF の増大として正孔の準粒子エネルギーシフト(QPSv 、Δh )を計算する。簡単な計算から、両方の準粒子エネルギーシフトQPSc ,QPSv を足しあわせてBGNになることが判る。
【0036】
バンド構造を決定する方法には、まず、イオン化率:
【数13】
【0037】
を計算しなければならない。
【0038】
BGNを無視した場合のフェルミ準位EF をEF00 、伝導帯端をEC00 、価電子端をEV00 、ドナー準位をED =EC00 −0.045eVとする。これらは、理想的な状態密度を仮定すればフェルミ・ディラック統計に従って一意に解かれる。なお、0.045eVは、燐原子に引きつけられている電子のエネルギーである。
【0039】
次に、BGNを考慮に入れた場合のそれぞれのエネルギーを
【0040】
【数14】
【0041】
と書く。
【0042】
このとき、式(4)は、
【0043】
【数15】
【0044】
と書き直せる。
【0045】
このイオン化率にドナー濃度を掛けたものが準粒子密度だから、
【0046】
【数16】
【0047】
なる方程式が成り立たなければならない。ここで、Ncは伝導体に対する有効状態密度、F 1/2 はフェルミ−ディラック積分を示している。
【0048】
ここで、上の方程式中のefcには、量子多体計算から求められた準粒子エネルギーシフト(Δe )を、
【0049】
【数17】
【0050】
の形で導入する。ただし、r(ef)×Ndは、Δe の引数である。この式(8)がBGNのモデルを決定する。
【0051】
具体的には、既に公知である、イオン化率100%を仮定して求められた多体公式を用いれば十分であるが、独自に導き出したり適当な修正を施したり、或いは多体計算の結果のフィッティング関数を或いは多体公式のフィッティング関数から導き出したものであっても構わない。
【0052】
従来の多体計算では、コンピュータの能力の限界から、イオン化率rと準粒子エネルギーシフトQPSを同時に計算することが不可能であったが、こうした従来の公式を用いても、本発明により、イオン化率を再計算することが可能となるのである。
【0053】
式(6)よりイオン化率rはefの関数であるから、式(7)と式(8)を数値的に解けばフェルミレベルの下降幅efと伝導帯端の下降幅ecが数値的に求まる。この値を式(6)に代入すれば、イオン化率も数値的に求まる。
【0054】
価電子帯端のずれevは、
【0055】
【数18】
【0056】
の関係から簡単に計算できる。
【0057】
BGNは、最後にec+ev(=−Δe −Δh )を計算すれば良い。p型半導体についても同様の計算を実行すれば良い。
【0058】
図1に、この例題における計算結果を示す。不純物が燐である、n型のシリコンにおいて、不純物濃度が3E19cm-3を超えたところで、イオン化率(点線)が急激に下がることが判る。また、この影響は、BGNの上昇を押さえるという形で、多体効果にも現れている。図1において、破線はシェンク(A. Schenk, J. Appl. Phys. 84, 3684(1998))が発表している、イオン化率が100%であることを前提にした多体公式によるBGNの計算結果である。一方、実線は、本発明により、イオン化率を計算し直して得られたBGNの計算結果である。
【0059】
ちょうど不純物濃度が3E19cm-3を超えたところで、BGNの上昇が抑えられているのが判る。このことから、3E19cm-3を超えるほど不純物濃度の高い領域、即ち、ポリシリコンゲート、拡散層のエクステンション領域、或いは、不純物濃度が高い場合と同じような多体効果の増大を招く反転層や蓄積層において、不純物のイオン化率が100%でないことによる影響が出てくるものと予想される。これらの効果は、すべて半導体デバイスの動作に重要な変調をもたらすのである。
【0060】
[第2の実施形態]
次に、ポテンシャルによって増大した量子多体効果の影響を見積もる為の枠組みについて説明する。キャリア間の多体効果によりシリコンのバンドギャップが縮小するのは、これまでに見てきた通りである。従って、バンドベンディングによりシリコン界面に誘起されたキャリアが、新たにシリコンのバンドギャップを縮小させると考えるのは自然である。このように、ポテンシャルによって誘起されるBGNを、局所的バンドギャップ縮小効果(LBGN:Local Band Gap Narrowing)と呼ぶ。
【0061】
以下、図2に描いたMOSFETの界面付近のエネルギーバンドを用いて、具体的に説明する。図2(a)はLBGNがない場合のエネルギーバンドであり、図2(b)がLBGNを考慮に入れた場合のエネルギーバンドである。ecsは界面での伝導帯の下降幅、evsは価電子帯の上昇幅である。
【0062】
ここで注意すべきことは、LBGNによってMOSFETの表面電荷密度が変化することである。即ち、LBGNを導入すると、表面電荷密度の釣り合いが満たされなくなってしまうのである。
【0063】
そこで、表面電荷密度の釣り合いを考慮に入れて、表面ポテンシャルを再計算したのが図2(c)である。実際の計算には、ポアッソン方程式を解き直せば良い。このとき、表面ポテンシャルは−δΨs だけ上昇する。(図2では、δΨsは負になっている。)
次に、図2の手順に従い、n型シリコンを例にとってLBGN(伝導帯の下降幅ecs,価電子帯の上昇幅evsの計算方法を説明する。なお、p型シリコンについても、同様の手法を用いることが出来る。
【0064】
(1) LBGNを無視して表面ポテンシャルΨs を計算する。(ecs=evs=0)
(2) 次式:
【0065】
【数19】
【0066】
の右辺の計算結果を左辺に代入し、新たな伝導帯の下降幅ecsと価電子帯の上昇幅evsを得る。ただし、δe XCは、電子数の増大に応じて追加される多体量子効果による準粒子エネルギーシフトQPSeの増加分に相当する。Δh XCは、正孔数の増大に応じて追加される多体量子効果による準粒子エネルギーシフトQPSvの増加分に相当する。
【0067】
簡単のため、交換相互作用部分のみ抜き出して書き下せば、
【0068】
【数20】
【0069】
となる。
【0070】
ここで、Ψ>0なら、電子間交換相互作用の増大により伝導帯の下降に寄与し、逆にΨ<0なら、伝導帯を下降させていた交換相互作用の減少による伝導帯の上昇に寄与する。
【0071】
同様に、正孔に対しては、
【0072】
【数21】
【0073】
と書き下すことができる。
【0074】
式(12),(13)をどう選ぶかによって、LBGNの素因子をどう取り込むかが決定する。クーロン相互作用部分も入れれば、より完全な公式を得る。ここでは、最も簡単に交換相互作用の計算公式のみ紹介した。
【0075】
手順(1),(2)を基板とゲート両方に同時に実施すれば、LBGNを無視して計算したΨssub ,Ψspolyに対して、基板のLBGN(ecssub ,evssub )、及びゲートのLBGN(ecspoly,evspoly)が数値的に求められる。
【0076】
(3) 表面電荷密度の釣り合いの式:
【0077】
【数22】
【0078】
を解いて、基板及びゲートの表面ポテンシャルの多体効果補正δΨssub ,δΨspolyを数値的に求めるか、或いはδΨspoly,δΨssubをそれぞれΨspoly,Ψssubの中に逐次代入しながらポアッソン方程式を解き直して、表面電荷密度のつり合いを回復する。
【0079】
ただし、
【0080】
【数23】
【0081】
である。
【0082】
但し、
【0083】
【数24】
【0084】
NAはアクセプタ濃度、NDはドナー濃度、p0はΨ=0の時の正孔濃度、n0はΨ=0の時の電子濃度、EAはアクセプタ準位、EDはドナー準位、EFはフェルミ準位である。
【0085】
(4)Ψssub +δΨssub をΨssubにΨspoly+δΨspolyをΨspolyに代入して手順(2)に戻る。これを数回繰り返し、相対誤差が1E−5以下に収束したら結果として、ecssub ,evssub ,ecspoly,evspoly,Ψssub ,Ψspolyを返す。こうして、LBGNを考慮に入れ、更に表面電荷密度の釣り合いを満たす解を得ることが出来る。
【0086】
n+ poly−Si/SiO2 /n型Si基板を例に取り、上記手順で計算した表面素電荷密度Ns に対するLBGNの結果を図3(VG>0)、及び図4(VG<0)に示す。基板を空乏化させた図3では、ゲートの価電子帯は不変であるが、伝導帯が表面素電荷密度Ns と共に上昇している。前者はドナー濃度が高くキャリアの反転がないためであり、後者はゲート界面の表面ポテンシャルが電子を掃き出すことによって、伝導帯を下げていた多体効果が減少することを反映している。一方、基板の伝導帯は下降し、価電子帯は若干下がる。前者は、電子が蓄積して伝導帯を下げている交換相互作用が増大することを反映し、後者は、正孔が掃き出されて価電子帯を押し上げていた正孔の交換相互作用が減少することから来る。ただし、正孔密度が低い為、元々の多体相互作用も小さく、価電子帯の下降幅も2〜3[meV]程度に押さえられる。
【0087】
ゲートを蓄積化した図4では、ゲートの伝導帯が下降し、価電子帯は不変である。前者は、電子が蓄積して伝導帯を下げる多体効果が増大することを反映し、後者は、正孔濃度が極めて低くほとんど影響しないことからくる。一方の基板では、価電子帯が上昇し、伝導帯は不変である。これは誘起された正孔による多体相互作用の増大によるものである。
【0088】
ここで、本発明の有用性をより明白にするため、BGNを計算する際に導入した不純物のイオン化率について考える。イオン化率を100%とか、1/3とか、ある特定の値に固定したままLBGNを数値的に求めようとすると、ある表面ポテンシャルVoxの付近で、キンクが出現する。図5には、イオン化率1/3の場合の結果を実線で示した。これに対し、上述した方法でイオン化率を計算してからLBGNを数値的に求めた結果を図5の丸印で示すと、キンクは消滅した。
【0089】
キンクの位置は不純物濃度に依存しており、従って、不純物濃度ごとに適当なイオン化率を選べばキンクは発生しなくなるはずである。ということは、イオン化率をセルフコンシステントに計算した結果が、たまたまその値を与えるとは考え難いだろう。
【0090】
こうして、上述した方法を用いてイオン化率をきちんと計算しなければ、ポテンシャルを正確に求めることが出来ないということが判る。このように、従来通りイオン化率100%を前提にしたやり方では、量子多体効果もポテンシャルをもきちんと考慮に入れることが出来ないのである。図6は、LBGNの有無による、表面ポテンシャルの計算結果である。高電界領域において、数十mVの差があることが判る。
【0091】
[第3の実施形態]
図7に、上述した計算の枠組みを具現化する方法を示す。これは、n型シリコンに燐をドープした場合に相当する。本発明は、該アルゴリズムを記憶し、保持する記憶装置と、該記憶装置を含み、該記憶装置に随時アクセスする計算システム全体に関わる、ハードウェア及びソフトウェアに関するものである。
【0092】
まず、半導体中のドナー不純物濃度ND と温度T[K]を入力する(ステップS1)。次いで、BGNを無視してフェルミエネルギー、EF00−EC00を求める(ステップS2)。
【0093】
実際には、
【0094】
【数25】
【0095】
を計算する。
【0096】
式(17)の左辺は、(BGNを無視した)理想的な状態密度を仮定したとき予想される電子密度であり、右辺は、不純物濃度に、BGNを無視したときのイオン化率r0 を掛け合わせた物である。n型なので、正孔の影響は無視できる。式(18)の第1式は、ショックレーの教科書にも登場する関係式で、BGNを無視した場合に、フェルミ・ディラック統計に基づいて不純物のイオン化率を厳密に与える式である。式(18)の第2式は、不純物が燐である場合にドナーレベルを与える式である。この式(17)と式(18)を使って、BGNを無視した場合のフェルミエネルギーを厳密に計算した結果として、EF00 −EC00 を得る。添え字の00は、平衡状態であり、且つ、BGNを考慮に入れていないことを意味している。ここまでは、既知の計算方法である。
【0097】
次いで、フェルミ準位の上昇幅efと伝導帯端の下降幅ecとを求める(ステップS3)。なお、本発明の枠組は、フェルミ準位の上昇幅efと伝導帯端の下降幅ecとを求めるという目的を満たす限り、以下で説明する通りの方法でなくても構わない。
【0098】
BGNを考慮に入れた場合の、式(17),(18)からのずれを計算する。まず、不純物準位が不変であることを前提とし、BGNによるフェルミ準位の下降幅ef、を用いてイオン化率r(ef)を次式で定義する。
【0099】
【数26】
【0100】
更に、伝導帯端の下降幅ecと合せると、BGNを考慮に入れたときの電子数を計算する公式と、イオン化率r(ef)に不純物濃度を掛けたものとが等しくなることから次式が得られる。
【0101】
【数27】
【0102】
ここで、式(19)と式(20)とを合せて、一つの非線型方程式をなしているのだが、フェルミ準位の上昇幅ef及び伝導帯端の下降幅ecと変数が二つ存在している。
【0103】
そこで、定義から伝導帯端の下降幅ecとフェルミ準位の上昇幅efの和が、準粒子シフトに負号をつけた物であること利用し、多体理論の結果として得られる準粒子シフトの計算公式Δe を用いて、次の方程式が得られる。
【0104】
【数28】
【0105】
式(19),(20),(21)からなる連立非線型方程式を数値的に解くことによって、フェルミ準位の上昇幅efと伝導帯端の下降幅ecを得ることが出来る。
【0106】
ここで、Δe の精度を上げれば、図7に示したアルゴリズムによる数値的予測の精度を上げることが出来ることを断わっておく。即ち、Δe に用いる計算公式は、既に、公知のものであっても良いし、目的に合せてユーザーがそれを修正したり、或いは、ユーザーが最初から独自に作り直したりしたものであっても良い。計算時間を節約するのか、精度の向上取るのか、ユーザーが目的に合せて選択出来るように、インターフェースを準備しておくことも可能である。しかしながら、どのような計算公式をΔe に用いるにせよ、以上説明した機能を持つ、一連のプログラムは、本発明によるものである。
【0107】
次に、フェルミ準位の上昇幅efと伝導帯端の下降幅ecとから価電子帯の上昇幅evを得る(ステップS4)。具体的には、価電子帯側の準粒子シフト、即ち、ホールに対する量子多体相互作用の影響を考慮した非線型方程式である、
【0108】
【数29】
【0109】
に、式(19)〜式(21)の非線型方程式を解いて得られたefを代入して、価電子帯の上昇幅evを数値的に得る。
【0110】
続いて、r(ef)を計算してBGNを考慮した場合のイオン化率が得られ、これに不純物濃度を掛けて電子密度が得られ、伝導帯帯の下降幅ecと価電子帯の上昇幅evを足しあわせてBGNが得られる(ステップS4)。
【0111】
これらの結果を用いて、トンネル電流、ゲート電極容量、閾電圧等の、半導体デバイスの動作を決定する基本的ファクターを数値的に得ることができるようになる。
【0112】
更に、ポテンシャルを含む場合、上述したアルゴリズムを実行した後に、式(11)から(16)を用いて説明したアルゴリズムを適用し、LBGNを計算する必要がある。この部分も、本発明の第二の中心部分である。尚、本発明をデバイスシミュレータに組み込む場合、近接する離散化格子点に囲まれる空間中の不純物濃度や温度といったインプットパラメータを定数と見なせるようなメッシュの切り方が、シミュレーション精度向上を実現する上で重要である。また、p型半導体や、シリコン以外の半導体を用いた場合にも、上述したのと同様な枠組が適用できる。本発明は、量子多体効果等を含むBGN及びLBGNの影響、或いはもっと一般的な言い方をすれば、原因はなんであれ、理想的な状態密度からのずれを考慮に入れたデバイスシミュレーションを可能とする概念そのものに関する。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、以上の各機能は、ハードウェアを用いても、或いはソフトウェアを用いても実現可能である。
【0114】
また、本実施形態は、コンピュータに所定の機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実施することもできる。
【0115】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、
半導体中の不純物のイオン化率を、量子多体効果と自己無撞着的に計算することを可能とし、半導体デバイスシミュレーションの信頼性向上に大いに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオン化率とバンドギャップ縮小効果とを自己無撞着的に計算した結果を示す図。
【図2】局所的バンドギャップ縮小効果を概念的に説明するためのエネルギーバンドを示す図。
【図3】ゲート電圧が正の場合の表面電荷密度に対する局所的バンドキャップ縮小効果によるエネルギーバンドの補正幅を示す図。
【図4】ゲート電圧が負の場合の表面電荷密度に対する局所的バンドキャップ縮小効果によるエネルギーバンドの補正幅を示す図。
【図5】酸化膜電圧に対する表面ポテンシャルを示す図。
【図6】酸化膜電圧に対する表面ポテンシャルを示す図。
【図7】バンドギャップ縮小効果によるエネルギーバンドの補正幅及び不純物のイオン化率、キャリア濃度バンドギャップ縮小効果を求める方法を示すフローチャート。
Claims (5)
- 半導体デバイスのシミュレーションの基本公式として、
バンドギャップ縮小効果を考慮したイオン化率の式
- 局所的バンドギャップ縮小効果を無視した表面ポテンシャルΨs を計算する第1のステップと、電子数及び正孔数の増大に応じて追加される多体量子効果による準粒子エネルギーシフトの増加分に相当する伝導帯の下降幅ecs及び価電子帯の上昇幅evsを、
- プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、半導体デバイスのシミュレーションの基本公式として、
バンドギャップ縮小効果を考慮したイオン化率の式
- プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、局所的バンドギャップ縮小効果を無視した表面ポテンシャルΨs を計算する第1の機能と、電子数及び正孔数の増大に応じて追加される多体量子効果による準粒子エネルギーシフトの増加分に相当する伝導帯の下降幅ecs及び価電子帯の上昇幅evsを、
- 不純物濃度と温度とを設定する第1のステップと、
バンドギャップ縮小効果を無視したフェルミエネルギーEF00−EC00を求める第2のステップと、
求められたフェルミ準位のずれefを前記(1)式に代入してイオン化率を求める第4のステップと、
前記フェルミ準位のずれefと前記イオン化率を
前記価電子帯端のずれev及び伝導帯端のずれecからバンドギャップ縮小効果によるバンドギャップの縮小幅ΔEGを求める第6のステップと、
を含むことを特徴とするシミュレーション方法。
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