JP3856693B2 - 不凍液及びブレーキ液用モニタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、不凍液及びブレーキ液用モニタに関し、詳しくは自動車エンジン等の内燃機関用ラジエータ冷却水中の不凍液の劣化の程度及び自動車のブレーキ液の劣化の程度を検出する不凍液及びブレーキ液用モニタに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、この種の不凍液には、ロングライフクーラント(以下「LLC」という)として、アミン系、ノンアミン系、無リン系、エチレングリコール系、プロピレングリコール系等各種の長期使用に耐えるものが出現している。このLLCは水道水で希釈して使用するものであり、通常は30%濃度で使用されるが、北海道のような寒冷地では50%濃度で使用される。このLLCを希釈した不凍液は、長く使用していると、防食性能が低下してエンジン冷却系の金属が腐食して不凍液中に溶解してくる。各種の金属イオン(アルミ、鉄、銅、亜鉛)の存在により、腐食は更に進行する。
そこで、不凍液が劣化する前に、LLCを追加したり、不凍液を交換することが行われる。ところが、溶解した金属は、イオンとして存在するため目視では良く判らない。例えば、茶色を呈した鉄さびを発見した時点ではエンジン内部の腐食は進行し過ぎている。この不凍液の劣化の程度を測定するモニタが求められるようになった。従来、不凍液モニタとして、不凍液のpHを淘定するpH計が知られている。
【0003】
しかしながら、このpH計では、劣化の程度が全て検出できるわけではない。日本のLLCはアルミ部品対策としてpH7 〜9 (pH7 .5 が主流)で製造されているが、欧米のLLCは鉄製品に良好な防食性能があるpH9
〜11で製造されている。このように、LLCによってpHが異なるため、基準値が変動する。また、pH計では、判定できないLLCがある。
一般に、LLCは、長く使用していると防食性能が低下してエンジン冷却系部品の金属が腐食してLLC中に溶解してくる。溶解した金属は、イオンとして存在している。各種金属イオンの存在により、更に腐食は進行する。
そこで、本願の発明者は、電流計を利用し、LLCに浸漬した際に、電位差が生じる異種の金属を、正負夫々の電極板とし、両極を連絡した際に、その間に流れる電流を電流計を利用して計測することにより、この金属イオンの発生量を、電流として検出することを考えた。この負極材と正極材とから成る電極は、pHに作用せず、LLC中の不純物特に金属イオンと作用して数値を出すものであるため、上記のpH計で生じた問題がない。
【0004】
一方、自動車のメンテナンスにおいて、消耗品としてチェックすべき重要なものには、上記不凍液の他、ブレーキフルード(ブレーキ液)がある。
ブレーキフルードの交換の時期の判断は、上記不凍液の交換の時期の判断と共に、自動車の所有者において重大な関心事である。
自動車のメンテナンスを行う者にとって、本願の発明者の上記提案によりLLCの劣化を検出することが簡単且つ正確に行えるものになったとしても、現状では、ブレーキフルードの劣化を検出する別途の手段を講ずる必要があり、そのための機材を別途用意する手間が依然存在する。
このように、不凍液の劣化とブレーキフルードの劣化を検出するために夫々の機材を用意するのは、自動車のメンテナンスを煩わしいものとし、ついつい、何れかの液の交換時期を逸して、安全な走行に支障を生じてしまう危惧がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、上記問題を解決する為になされたもので、その目的とするところは、LLCの種類に係わらず、当該不凍液の劣化の程度を正確且つ簡単に検出できる手段を提供すると共に、同一の装置にて、ブレーキ液の劣化の程度についても正確且つ簡単に検出できる手段を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願第1の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタは、自動車ラジエータ冷却水中の不凍液の劣化及び自動車のブレーキ液の劣化を検出する不凍液及びブレーキ液用モニタであって、次の構成を採る。
即ち、このモニタ1は、LLCに浸漬した際に電位差が生じる異種の金属を正負夫々の電極として、両極を連絡した際に、その間に流れる電流を電流計を利用して計測することにより、LLC中の金属イオンの発生量を、電流として検出するものであり、上記負極材12と、絶縁体13を介してこの負極材12を先端に取り付けた棒状の上記正極材11と、この負極材12と正極材11との間に流れる電流を検出する電流計と、この電流計に流れる電流を表示する表示計20と、上記負極材12が取り付けられた棒状の正極材11と共に或いは交換可能に使用することが可能なブレーキ液用の副正極材61及び副負極材62と、電池7と、当該電池7を副正極材61と副負極材62との間に直列に接続し或いはこの接続を解除する切換手段70とを備える。上記表示計20は、自動車ラジエータ冷却水中の不凍液の劣化を検知するのに適した表示20aと、自動車のブレーキ液の劣化を検出するのに適した表示20bの、双方を備えたものである。
このような構成を採ることにより、本願第1の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタにおいては、不凍液に負極材12と正極材11とを浸漬し、両極11,12間に流れる電流を電流計で検出することにより、表示計20から不凍液の劣化の程度を知得することができ、また、ブレーキ液についても、ブレーキ液に副負極材62と副正極材61とを浸漬し当該副極61,62の間に、切換手段の操作にて電池を直列に接続し、両極61,62間に流れた電流を上記の電流計で検出することにより、表示計20からブレーキ液の劣化の程度を知得することができる。
即ち、本願第1の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタは、これ一つで不凍液の劣化の程度とブレーキ液の劣化の程度を検出することができる。
また、不凍液の劣化の検査において、棒状の正極材11と先端の負極材12の組み合わせにより、両極の一体として取り扱いやすいものとした。従って、中空棒をLLC(不凍液)に漬けるだけで、簡単にLLCの劣化の程度が検出できる。
【0007】
本願第2の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第1の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタにあって、前記負極材12が、マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金であることを特徴とする。
このような構成を採ることにより、本願第2の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、本願第1の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタの奏する作用を得ると共に、不凍液の劣化を検出するのに適した負極材12を提供し得た。
即ち、負極材12に、マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金を採用することによって、金属イオンの種類に関係なく、その総量に応じた起電力を発生させ、感度良くLLCの劣化を検出できる。
【0008】
本願第3の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第2の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタにあって、前記マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金は、亜鉛30〜40重量%、イリジウム10〜20重量%、鉛0
.5 〜3 重量%、残部がマグネシウムからなることを特徴とする。
このような構成を採ることにより、本願第3の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、本願第2の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタの負極材として、特に適したものを提供し得た。即ち、LLC(不凍液)の不純物特に金属イオンに応じた検出値が出力でき、感度が高すぎたり鈍すぎたりすることがない。
【0009】
本願第4の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第1乃至3の何れかの発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタにあって、前記正極材は中空棒に形成され、この中空棒の先端に絶縁体13を介して前記負極材が取り付けられ、この負極材からの配線が中空棒の中を通り、前記中空棒の外周に絶縁被覆が設けられたことを特徴とする。
このような構成を採ることにより、本願第4の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第1乃至3の何れかの発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタと同様の作用を奏すると共に、特に、正負両電極板を、一体として扱うのに適した具体的構造を提供し得た。
【0010】
本願第5の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第4の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタにあって、負極材からの前記配線の途中に温度補償素子が設けられ、この温度素子が前記中空棒の中に収められたことを特徴とする。
このような構成を採ることにより、本願第5の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第4の何れかの発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタと同様の作用を奏すると共に、特に、不凍液について、劣化の検出の対象とする液ごとの温度の違いを、温度補償素子にて補償し、検出の対象となる液の温度に左右されずに、その劣化の程度を検出することができる。
具体的には、温度補償素子を用いない場合、通常20〜300 ℃でないと正確に検出できない液が、800 ℃位まで検出できるようになる。
【0011】
本願第6の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第1乃至第5の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタにあって、上記の絶縁体を介してこの負極材12を先端に取り付けた棒状の正極材11は、基部側が絶縁被覆15にて被覆され、不凍液に対し当該絶縁被覆15まで、正極材11を浸漬することにて、正極と負極との浸漬比率を一定に保つことが可能なるものである。
このような構成を採ることにより、本願第6の発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタでは、上記本願第1乃至5の何れかの発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタと同様の作用を奏すると共に上記の通り、不凍液に対し当該絶縁被覆まで、正極材11を浸漬することにて、正極と負極との浸漬比率を一定に保つことができる。
即ち、人によって対象液に浸漬する極材の量が異なってしまうことが考えられ、そのため、検査を行う者が異なれば結果が異なるといった危惧が生じるが、上記の構成を採ることによって、何れの検査者も、不凍液に対し当該絶縁被覆まで正極材11を浸漬することにて、正負の電極の浸漬比率を一定にすることができ、検査者ごとに結果にばらつきが生じるといった危惧がない。
例えば、不凍液の検査において、棒状の正極材11の不凍液に対する浸漬に際して、正極:負極の不凍液に対する浸漬する長さの比率は、1:3程度とすることが好ましいが、上記の構成を採ることにより、絶縁被覆15の被覆位置をこのような比率となるように設定すれば(負極材12と正極材11の絶縁被覆15から露出する比率を上記のように設定すれば)、何れの検査者も、簡単にこのような比率での検査を行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2へ、本願発明に係る不凍液用モニタの一実施の形態を示す。図1は、このモニタ1の全体正面図である。図2は、不凍液に対するこのモニタ1の使用状態を示す説明図である。
【0013】
この不凍液及びブレーキ液用モニタは、自動車ラジエータ冷却水中の不凍液の劣化及び自動車のブレーキ液の劣化を検出する不凍液及びブレーキ液用モニタである。
以下、各部の構成について、順に説明する。
【0014】
図1へ示す通り、このモニタ1は、負極材12と、絶縁体13を介してこの負極材12を先端に取り付けた棒状の正極材11(必要に応じて中空棒11と呼ぶ。)と、この負極材12と正極材11との間に流れる電流を検出する電流計と、この電流計に流れる電流を表示する表示計20と、上記負極材12が取り付けられた棒状の正極材11と共に或いは当該正極材11と交換可能に使用することができるブレーキ液用の副正極材61及び副負極材62と、電池7と、当該電池7を副正極材61と副負極材62との間に直列に接続し或いはこの接続を解除する切換手段70とを備える。
上記表示計20は、自動車ラジエータ冷却水中の不凍液の劣化を検知するのに適した第1表示20aと、自動車のブレーキ液の劣化を検出するのに適した第2表示20bの、双方を備えたものである。
【0015】
図1に示す通り、具体的には、モニタ1は、不凍液用センサ部分2aと、ブレーキ液センサ部分2bと、テスタ部分3とを備える。
不凍液用センサ部分2aは、不凍液の検査に用いる上記の正極材11と負極材12と、当該正極材11に連絡する配線コード4と、当該負極材12に連絡する配線コード14とを備える。
ブレーキ液センサ部分2bは、ブレーキ液の検査に用いる上記の副正極材61と副負極材62と、当該副正極材61に連絡する配線コード63と、当該副負極に連絡する配設コード64とを備える。
【0016】
以下図2を用いて、不凍液に使用する場合を例に採って説明する。
不凍液用センサ部分2aについては、正極材11であるステンレス製の中空棒の先端に、マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金の負極材12が絶縁体13を介して接着等により取り付けられ、中空棒11の中心孔11a内に負極材12からの配線コード14を抜き出し、中空棒11の外周に上記の絶縁被覆15(以下第1絶縁被覆15という。)と第2絶縁被覆16を設けてなる。各被覆15,16には、シリコンゴム(シリコン収縮チューブ)を用いるのが好ましい。
【0017】
負極材12が取り付けられた中空棒11の先端側は第1絶縁被覆15から露出しており、この露出部分がLLCに向けて漬けられる。第1絶縁被覆15と第2絶縁被覆16との間に中空棒11の露出部分があり、この露出部分には、配線コード4の先端に設けられた接続部4aが固定されている。接続部4aの後端側は、第3絶縁被覆18にて被覆されている。この第3絶縁被覆18も、上記第1及び第2絶縁被覆15
,16と同様の素材にて形成すればよい。この接続部4aを介して、配設4が正極材11に接続されているのである。
【0018】
中空棒11の中心孔11a内に位置する配線コード14の先端14aの近くには、温度補償素子17が接続されており、LLC5の温度に応じた出力の温度補償を行うようになっている。即ち、温度の変化によってLLCの抵抗が変化するため、このような抵抗の変化による電流の変化を補償するために、このような温度補償素子17を設けておくのである。この温度補償素子17は、サーミスタを用いるのが好ましい。
【0019】
配線コード4の後端はプラグ4bになっており、テスタ部分3のコネクタ21に接続可能である。また、配線コード14の後端もプラグ14bになっており、テスタ部分3のコネクタ22に接続可能である。
【0020】
以上の構成により、負極材12と正極材である中空棒11との間に生じる金属イオンの起電力が、配線コード4及び配線コード14を介してテスタ部分3に入力可能になっている。
【0021】
テスタ部分3は、電流計30兼表示計20として構成され、起電力による電流が流れるコイル31と、コイル31に流れる電流に応じた電磁力により振れる位置が変わる針32と、針32の先端の表示部23と、感度調整用のボリューム摘まみ24とを備えて成る。コイル31と針32が電流計を構成し、針32と感度調整用のボリューム摘まみ24と第1表示20aと第2表示20bとが表示計20を構成する。感度調整用のボリューム摘まみ24はコイルに直列に接続される例えば可変抵抗であり、コイル31に流れる電流を調整する。第1表示20aは、良好(グッド)、交換(チェンジ)、劣化(バッド)に区分され、針32のメータ指針で判別できる様になっている。すなわち、このテスタ部分3は、不凍液用センサ部分2aで生じた起電力の程度に応じた表示が可能となっている。
【0022】
負極材12に使用する合金には、マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金が選択される。特に、亜鉛30〜40重量%、イリジウム10〜20重量%、鉛0 .5 〜3 重量%、残部がマグネシウムからなるものが好ましい。上記鉛は、加工性向上のために添加されている。所定の亜鉛、イジウム、マグネシウムの合金の負極材は、LLC中の各種金属イオンの量に応じた起電力を生じさせるために適切に作動する。
【0023】
この不凍液モニタ1の作動は以下の通りである。配線コード14のプラグ14bをコネクタ22に差し込む。また、配線コード4のブラグ4bをコネクタ21に差し込み、準備が完了する。
【0024】
センサ部分2の先端をラジエータ内部に入れる。このとき、ラジエータが作動中か停止中かを問わない。ラジエータ内のLLCの劣化により生じた金属イオンの量に応じた起電力が負極材12と正極材である中空棒11との間に生じ、この起電力により流れる電流の程度がテスタ部分3で検出される。テスタ部分3の表示がグッドであれば、作動が良好である。テスタ部分3の表示がチェンジであると、LLCを交換又は新たな濃縮LLCを添加することが促される。テスタ部分3の表示がバッドであると、LLCを直ぐに交換しなければならない。
このようなLLCの検査において、棒状の正極材11のLLCに対する浸漬に際して、正極:負極の不凍液に対する浸漬する長さの比率は、1:3程度とする。具体的には、第1絶縁被覆15から露出する正極材11は長さ約30mmであり、その先端に長さ約3mmの絶縁体13を介して長さ約10mmの負極材12が設けられているのである。これら部材の表面(浸漬によりLLCと直接接触する部位)について詳しく述べると、正極材11の露出部分は上記の長さを備えた直径約5mmの円筒状部であり、絶縁体13は正極材11と同心となるように円筒状の正極材11の先端に配設された直径約6mm且つ上記長さを有する円柱状部であり、負極材12は絶縁体3の先端に絶縁体13と同心となるように配設され且つ上記長さを備えた直径約6mmの円柱状部である。円柱状の負極材12の先端(底面)は、特に被覆されたり他の部材が設けられたりするものではなく、その外周面と共にLLCと直接接触する部位となっている。
尚、上記の各寸法の数値は、必要に応じて変更可能である。但し、上記の各寸法数値を採るものとするのが、本願発明を実施する上で最も好ましい。
【0025】
次に図1及び図2を用いて、このモニタ1を、ブレーキ液に使用する場合を例に採って説明する。この場合、図1に示す通り、ブレーキ液用センサ部分2bを、不凍液用センサ部分2a、即ち上記負極材12を備えた正極材である中空棒11に代え、テスタ部分3に接続して使用する。
【0026】
ブレーキ液用センサ部分2bは、何れもブレーキ液に使用するのに適した、副正極材61と、副負極材62と、副正極材61に接続された配線コード63と、副負極材62に接続された配線コード64と、各極材61,62と配線コード63,64との接続部分を被覆し副正極材61と副負極材62とを電気的に絶縁状態を維持して両者を一体とする絶縁被覆65とにて構成されている。
副正極材61と副負極材62とは、何れもその先端を同じ長さ絶縁被覆65から露出するものである。即ち、ブレーキ液に対して、両極材61,62は、1:1の比率で浸漬される。
【0027】
配線コード63の後端はプラグ63aになっており、テスタ部分3のコネクタ23に接続可能である。また、配線コード64の後端もプラグ64aになっており、テスタ部分3のコネクタ22に接続可能である。但し、両極材61,62は、同じ金属素材にて形成され、電池7との接続によって正負が決まるものであるため、プラグ63a,64aの、コネクタ22,23に対する接続を上記と逆にしても実施可能である。
副電極材61,62は、正負何れも亜鉛メッキされた鉄にて形成するのが好ましい。
【0028】
テスタ部分3内において、上記の電池7の正極がコネクタ23へ電気的に連絡し、上記電池7の負極が切換手段70を介して、コイル31へ連絡する。コネクタ22もコイル31とは、切換手段70を介して接続されている。
即ち、不凍液用センサ部分2aを使用する場合、テスタ部分3内において、切換手段70の操作により、前記のコイル31は、電気的に、コネクタ21,22と連絡させる。そして、ブレーキ液94センサ2bを使用する場合、コネクタ21とコイル31との連絡は変わらないが、切換手段70の操作により、コイル31の連絡をコネクタ22からコネクタ23へ切り換える。
【0029】
表示計20の第2表示20bは、温度によって異なる表示部分を備えている。この実施の形態では、第1表示20aの直下に配された上表示部分20cは、ブレーキ液の温度が40℃前後に対応したスケールを備える。また、この表示部分の下に配置された下表示部分20dは、ブレーキ液の温度が15℃前後に対応したスケールを備える。上表示部分20c及び下表示部分20dの何れも、「良好」、「交換」、「即交換」に区分され、針32のメータ指針で判別できる様になっている。指針について、夏期には上表示部分20cで読み取り、冬期には下表示部分20dで読み取る。
ブレーキフルードの交換時期は、ブレーキフルード中の水分の量で決まる。即ち、劣化により水分量が劣化すれば、流れる電流が大きくなるので、上記のモニタ1は、このような電流の増加を検出して、ブレーキフルードの交換時期を表示することができるのである。
【0030】
【実施例】
先ず、LLCの劣化の程度の検出に関する構成について、説明する。
負極材12に、亜鉛35wt%、イリジウム15wt%、鉛1 .5 %、残部マグネシウムからなる合金を用い、正極材にステンレスを用いたセンサ本体2を使用した。そして、水にプロビレングリコール系のLLC30%を添加した不凍液を作成し、更にアルミイオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオンを所定ppm添加した表1の不凍液ナンバー1〜10を調整した。
なお、アルミイオンは、不凍液が酸性でもアルカリ性でもアルミ本体に反応し、水素を発生して溶解することにより発生する。不凍液が中性付近でアルミは腐食しない安定状態になる。アルミは、車両のラジエータ、エンジン、ウォーターポンプに使用されている。鉄イオンは、硫酸等の酸性側で腐食して発生する。アルカリ側では発生が抑制される。鉄は、車両のエンジン、ウォーターポンプに使用されている。銅イオンは、元々腐食しにくい金属であるが、防錆材がないと冷却系では酸性側で溶解する。銅は、車両では、ラジエータ、ヒータコアに使用されている。亜鉛イオンは、各種の接着構造部分に使用されている合金が溶解して発生する。このように、アルミイオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオンの種々の組み合わせに対して実験することにより、アミン系、ノンアミン系、無リン系、エチレングリコール系、プロビレングリコール系等各種に対して、pHに関わらず、車両の冷却系における劣化の程度を確認できることになる。
【0031】
そして、上記不凍液1〜10に、センサ本体を漬けて、メータ指針1〜10のスケールで起電力を検出した。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003856693
【0033】
各種金属イオンが含まれる不凍液ナンバー1〜5の場合について、全体のイオン量が多くなるにつれて、メータ指針が大きくなっている。この状態が図3(A)に示される。
【0034】
特定金属イオンであるアルミイオンだけが含まれる不凍液ナンバー6〜10の場合についても、イオン量が多くなるにつれて、メータ指針が大きくなっている。この状態が図3(B)に示される。
【0035】
この表1の結果から、不凍液に含まれる金属イオンの種類に係わらず、その全体具に応じたメータ指針が得られ、不凍液の劣化の程度を正確に検出する事が可能になる。
【0036】
なお、上述した実施形態は以下のように変更して実施することができる。
(1)テスタ部分3は正極材と負極材との間の起電力を検出できる電流計であればよく、その形態はコイル31を有するものに限らず、種々の電流計が流用できる。また、表示計は電流計と分離していてもよい。
(2)正極材と負極材との組み合わせは、中空棒の正極材の先端に負極材を取り付けるものに限らず、不凍液に漬かる部分に正極材と負極材が存在しておればよく、種々の形態を取ることができる。
【0037】
(3)負極材の材質は、マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金が好ましいが、これに限らず、金属イオンに応じた起電力を生じる合金であってもよい。
(4)温度補償素子を設けるものが好ましいが、この温度補償素子がなくても、20〜300 ℃の範囲にあるLLCにすれば、正確に検出可能である。
【0038】
次に、ブレーキフルードの劣化の程度の検出について説明する。
副正極材61及び副負極材62の双方に、亜鉛メッキを施した鉄製のものを用いた。
ブレーキフルードの種類により、モニタ1の表示が若干異なる。ブレーキフルードの交換が必要なテスタ指示値と、ブレーキフルード中の水分量と、その沸点の関係について、表2に示す。
ここで、DOT3は、注意の指示を示す場合であり、DOT4は、危険の指示域の中間位置を示す場合である。
この表2を見れば分かる通り、ブレーキフルードが新しい場合(新液)、DOT3及びDOT4の何れも「良好」となっているが、水分量が増えるに従って、例えばDOT3では、「交換」から「即交換」に指示が変化している。また、DOT4では、水分量が2.0重量%を超えると直ちに「即交換」となる。
【0039】
【表2】
水分量(wt%) 沸点(℃) モニタ表示(表示計)
DOT3 DOT4 DOT3 DOT4
新液 230 260 良好 良好
2.0 165 180 良好 即交換
4.0 135 150 交換 即交換
6.0 125 140 即交換 即交換
【0040】
【発明の効果】
本願第1の発明の実施によって、それ一つで、不凍液の劣化の程度とブレーキ液の劣化の程度の双方を検出することが可能なモニタを提供し得た。
これにて、不凍液とブレーキ液夫々の劣化の検出に別途の機器を用意する手間がなくなった。
特に不凍液に対し、この発明に係るモニタでは、不凍液即ちLLCが、アミン系、ノンアミン系、無リン系、エチレングリコール系、プロビレングリコール系のいかんに関わらず、正確に劣化の程度を検出でき、pH計の様に、判定不可能なLLCというものがない。また、不凍液の劣化の検査において、棒状の正極材と先端の負極材の組み合わせにより、両極の一体として取り扱いやすいものとした。
【0041】
本願第2の発明の実施によって、上記本願第1の発明と同様の効果を奏するとと共に、不凍液の劣化を検出するのに適した負極材を提供し得た。
【0042】
本願第3の発明の実施によって、本願第2の発明の奏する効果を得るモニタの負極材として、特に適したものを提供し得た。
【0043】
本願第4の発明の実施によって、記本願第1乃至3の何れかの発明に係る不凍液及びブレーキ液用モニタと同様の効果を奏すると共に、特に、不凍液の劣化の検査に用いる正負両電極板について、両極を一体として扱うのに適した具体的構造を提供し得た。
【0044】
本願第5の発明の実施によって、上記本願第1乃至4の何れかの発明と同様の効果を奏すると共に、特に、不凍液について、検出の対象となる液の温度に左右されずに、その劣化の程度を検出することができる。
【0045】
本願第6の発明の実施によって、上記本願第1乃至5の何れかの発明と同様の効果を奏すると共に、特に、何れの検査者も、不凍液に対し当該絶縁被覆まで正極材を浸漬することにて、正負の電極の浸漬比率を一定にすることができ、検査者ごとに結果にばらつきが生じるといった危惧がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の一実施の形態の全体正面図である。
【図2】 上記実施の形態の説明図である。
【図3】 (A)及び(B)は上記実施の形態の不凍液に使用した際の作動のグラフを示す説明図である。
【符号の説明】
1 不凍液モニタ
2a 不凍液用センサ部分
2b ブレーキ液用センサ部分
3 テスタ部分(電流計)
7 電池
11 中空棒(正極材)
12 負極材
13 絶縁体
20 表示計
20a (第1)表示
20b (第2)表示
31 コイル(電流計)
32 針(電流計、表示計)
61 副正極材
62 副負極材
70 切換手段

Claims (6)

  1. 自動車ラジエータ冷却水中の不凍液の劣化及び自動車のブレーキ液の劣化を検出する不凍液及びブレーキ液用モニタであって、
    LLCに浸漬した際に電位差が生じる異種の金属を正負夫々の電極として、両極を連絡した際に、その間に流れる電流を電流計を利用して計測することにより、LLC中の金属イオンの発生量を、電流として検出するものであり、
    上記負極材と、絶縁体を介してこの負極材を先端に取り付けた棒状の上記正極材と、この負極材と正極材との間に流れる電流を検出する電流計と、この電流計に流れる電流を表示する表示計と、上記負極材が取り付けられた棒状の正極材と共に或いは交換可能に使用することが可能なブレーキ液用の副正極材及び副負極材と、電池と、当該電池を副正極材と副負極材との間に直列に接続し或いはこの接続を解除する切換手段とを備え、
    上記表示計は、自動車ラジエータ冷却水中の不凍液の劣化を検知するのに適した表示と、自動車のブレーキ液の劣化を検出するのに適した表示の、双方を備えたものであることを特徴とする不凍液及びブレーキ液用モニタ。
  2. 前記負極材が、マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金である請求項1に記載の不凍液及びブレーキ液用モニタ
  3. 前記マグネシウム−亜鉛−イリジウム系合金は、亜鉛30〜40重量%、イリジウム10〜20重量%、鉛0 .5 〜3 重量%、残部がマグネシウムからなる請求項2に記載の不凍液及びブレーキ液用モニタ
  4. 前記正極材は中空棒に形成され、この中空棒の先端に絶縁体を介して前記負極材が取り付けられ、この負極材からの配線が中空棒の中を通り、前記中空棒の外周に絶縁被覆が設けられた請求項1乃至3の何れかに記載の不凍液及びブレーキ液用モニタ
  5. 負極材からの前記配線の途中に温度補償素子が設けられ、この温度素子が前記中空棒の中に収められた請求項4に記載の不凍液及びブレーキ液用モニタ。
  6. 上記の絶縁体を介してこの負極材を先端に取り付けた棒状の正極材は、基部側が絶縁被覆にて被覆され、不凍液に対し当該絶縁被覆まで、正極材を浸漬することにて、正極と負極との浸漬比率を一定に保つことが可能なるものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の不凍液及びブレーキ液用モニタ
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