JP3852526B2 - 荷電粒子蓄積装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、シンクロトロン放射光を発生するための装置である荷電粒子蓄積装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図17は、例えば「第11回加速器科学技術シンポジウム」(1997発行、535頁)に開示されている従来の荷電粒子蓄積装置の全体構成を示す平面図である。図において、1は荷電粒子を周回させる真空ダクト、2は荷電粒子を入射するインフレクタ、3は磁場を発生させるパータベータ、4は荷電粒子ビームを偏向させる偏向電磁石、5は荷電粒子ビームを集束させる4極電磁石、6は偏向電磁石4で放射された放射光を取り出す放射光取り出しポート、7は超電導ウィグラー、8は超電導ウィグラー7から放射される放射光を取り出す放射光取り出しポート、9は荷電粒子にエネルギーを補給する高周波加速空洞である。
【0003】
次に動作について説明する。マイクロトロンやライナックで初期加速された荷電粒子ビームは、インフレクタ2から荷電粒子蓄積装置に入射される。入射時にインフレクタ2とパータベータ3とでパルス磁場を発生させ、直進していた荷電粒子ビームを円軌道の周回軌道へ入射する。荷電粒子蓄積装置では、荷電粒子を多数回周回させる必要がある。荷電粒子ビームは、偏向電磁石4で曲げられ、4極電磁石5で集束されながら安定に周回する。荷電粒子が電磁場で曲げられると放射光を放射する。偏向電磁石4で放射される放射光の一部は、放射光取り出しポート6から取り出される。また、超電導ウィグラー7から放射される放射光は、放射光取り出しポート8から取り出される。
【0004】
荷電粒子は放射光を放射するとエネルギーを失うので、高周波加速空洞9でエネルギーの補給を受ける。放射光で失うエネルギーと高周波加速空洞9で補給されるエネルギーが等しい場合には、荷電粒子はある一定のエネルギーで蓄積される。一方、高周波加速空洞9で補給されるエネルギーのほうが大きい場合には、荷電粒子は徐々に加速される。
【0005】
荷電粒子を安定して長時間周回させる為には超高真空とする必要がある。従って、真空ダクト1内で荷電粒子を周回させる。真空ダクト1には、真空ポンプ(図示せず)が設置されており、超高真空が保たれる。
【0006】
なお、荷電粒子の中でも電子または陽電子が曲げられた時に放射される放射光の強度が、陽子や重粒子ビームから放射光の強度より桁違いに強いので、通常放射光を利用する装置では電子または陽電子ビームを周回させる。
【0007】
また、図18は、例えば「高エネルギー粒子加速の国際会議のプロシーディングス」(1996年発行、2067頁)に開示されている従来の荷電粒子蓄積装置の一部分を示す構成図であり、また、図19は、図18における真空ダクトの断面図である。図において、10は真空ダクト1内を真空に保つための真空ポンプ、11は冷却水などの冷媒が流れる冷却配管で構成された冷却部、100は真空ダクト1内の荷電粒子が通る領域である。
【0008】
次に動作について説明する。図18では、装置の横方向から見た図であるので図示されていないが、真空ダクト1は上面から見ると、上述した図17に示すような概円形の周回軌道を形成しており、荷電粒子は、この真空ダクト1内を周回しながら数時間から数10時間に渡って蓄積される。
【0009】
最近建設が進んでいる図18に示すような大型の荷電粒子蓄積装置では、荷電粒子から発生する放射光の強度が非常に強く、周回軌道の偏向部だけでなく直線部でも大量の放射光が真空ダクト1の内壁に衝突してアウトガスを発生する。従って、図19(a)に示すように、真空ダクト1に隣接して、冷却水が流れる冷却配管で構成された冷却部11を備えている。また、発生したアウトガスが真空ダクト1内に充満すると、真空ダクト1内の真空度が保たれなくなるため、図19(b)に示すように、真空ダクト1内の荷電粒子が通る領域100に隣接して、図7における真空ポンプ10とは別の真空ポンプを配置するためのダクトを設けている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の荷電粒子蓄積装置において、上記図17に示したような低エネルギービームを蓄積する装置では、超電導ウィグラー7による荷電粒子ビームの歪みが大きいので、ビーム周回軌道の直線部でも、真空ダクト1の内周側及び外周側の内壁面に大量の放射光が衝突する。冷却部11の金属表面から発生したアウトガスが真空ダクト1内に充満し、荷電粒子ビームの周回軌道に侵入すると、超高真空状態が保持できず、ビームの寿命が短くなり、放射光を長時間安定に利用できないという問題点があった。
【0011】
また、従来の荷電粒子蓄積装置は、図17に示すように、超電導ウィグラー7からの放射光は、荷電粒子ビームの進行方向のみからしか放射光を取り出すことができず、利用できるビームライン数が限られるという問題点があった。
【0012】
この発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、アウトガスが荷電粒子ビームの軌道領域へ侵入するのを防いで荷電粒子ビームの軌道領域を高真空に保ち、長時間安定に放射光を発生させることができる荷電粒子蓄積装置を得ることを目的とする。また、1台の超電導ウィグラーから複数の放射光を取り出すことができる荷電粒子蓄積装置を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る荷電粒子蓄積装置は、荷電粒子ビームを周回させるための周回軌道を形成する真空ダクト、周回軌道直線部の真空ダクトに設けられ荷電粒子ビームを偏向して放射光を出射する超電導ウィグラー、周回軌道直線部の真空ダクトの内周側及び外周側に設けられ放射光により発生する熱を除去する冷却部、冷却部と荷電粒子ビーム軌道領域との間に設けられ放射光が真空ダクトの内壁に衝突したときに発生するアウトガスが荷電粒子ビームの軌道領域へ侵入するのを抑制するアウトガス侵入抑制手段を備えたものである。
【0014】
また、アウトガス侵入抑制手段は、金属板による隔壁である。
【0015】
また、冷却部とアウトガス侵入抑制手段との間にアウトガスを除去する真空ポンプを設けたものである。
【0016】
また、周回軌道直線部の真空ダクトの壁面と冷却部とを貫通する貫通穴を介して超電導ウィグラーからの放射光を荷電粒子ビームの進行方向から角度をなす方向に取り出す放射光取り出しポートを備えたものである。
【0017】
また、荷電粒子ビームを周回させるための周回軌道を形成する真空ダクト、周回軌道直線部の真空ダクトに設けられ放射光を出射する超電導ウィグラー、周回軌道直線部の真空ダクトの内周側及び外周側に設けられ放射光により発生する熱を除去する冷却部、周回軌道直線部の真空ダクトの壁面と冷却部とを貫通する貫通穴を介して超電導ウィグラーからの放射光を荷電粒子ビームの進行方向から角度をなす方向に取り出す放射光取り出しポートを備えたものである。
【0018】
また、貫通穴の断面積は、放射光取り出しポートの内断面積よりも狭いものである。
【0019】
また、貫通穴の貫通方向は、真空ダクトの壁面に対して垂直ではないものである。
【0020】
また、放射光取り出しポートと真空ダクトとの間を可動状態に接続した構成である。
【0021】
また、冷却部に冷媒を供給する冷却配管は、貫通穴の上部、下部、側部のいずれかに配置されているものである。
【0022】
また、冷却部に冷媒を供給する冷却配管は、貫通穴によって複数の系統に分離されているものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の一形態を図について説明する。図1は、この発明の実施の形態1による荷電粒子蓄積装置の全体平面図であり、図2は、図1の真空ダクトを示す断面図である。図において、1はアルミなどによる真空ダクト、2は荷電粒子を入射するインフレクタ、3は磁場を発生させるパータベータ、4は荷電粒子ビームを偏向させる偏向電磁石、5は荷電粒子ビームを集束させる4極電磁石、6は偏向電磁石4で放射された放射光を取り出す放射光取り出しポート、7は超電導ウィグラー、8は超電導ウィグラー7から放射される放射光を取り出す放射光取り出しポート、9は荷電粒子にエネルギーを補給する高周波加速空洞、10は真空ダクト1内を超高真空に保つための真空ポンプ、11は冷却水などの冷媒が流れる冷却配管(図示せず)で構成された冷却部、12は放射光が冷却部11の表面に衝突することによって発生したアウトガスが荷電粒子ビームの軌道に侵入するのを防ぐためのアウトガス侵入抑制手段、100は荷電粒子ビームが通る領域、101は荷電粒子ビームであり、進行方向は紙面に対して垂直方向である。
【0024】
次に動作について説明する。荷電粒子ビームは、縦横それぞれ数100ミクロン〜数mm程度の大きさで、真空ダクト1内を周回している。放射光を長時間安定に供給するためには、荷電粒子ビームの寿命が長い必要があり、真空ダクト1内は、10-9〜10-10TORR程度の超高真空としている。超電導ウィグラー7から放射された放射光は、真空ダクト1の側面(紙面左側及び右側)に衝突する。荷電粒子のエネルギーが低いと超電導ウィグラー7が発生する磁場の作用が大きく、特に高磁場となるとその蛇行量が20mm以上になる。
【0025】
また、大電流を蓄積した場合には放射光の強度は非常に強く、放射光が真空ダクト1の内壁に衝突した場合には大量の熱を発生する。よって、真空ダクト1の側面に冷却部11を設置する。偏向電磁石4から放射される放射光が衝突する部分では真空ダクト1の外側に放射光が衝突するので、真空ダクト1の外周側のみに冷却部を設置すればよいが、超電導ウィグラー7からの放射の場合、荷電粒子ビームの軌道が蛇行し、真空ダクト1の外周側、内周側の双方に大強度の放射光が衝突するので、外周側、内周側の双方に冷却部11を配置する必要がある。
【0026】
放射光が冷却部11に衝突すると多量のアウトガスを放出する。また、冷却をしていてもある程度の温度上昇がさけられないので、冷却部11の金属表面からのアウトガス量も増大する。その結果、多量の残留ガスが真空ダクト1中に充満することになる。このガスが荷電粒子ビーム101まで達するとビーム寿命が短くなり、放射光を長時間安定に利用することが難しくなる。そのため、本発明では左右の冷却部11と荷電粒子ビームが通る領域100との間にアウトガス侵入抑制手段12を設けている。アウトガス侵入抑制手段12は、アウトガス発生部の冷却部11と荷電粒子ビームが通る領域100の間を狭くすることで、アウトガスが荷電粒子ビーム101へ流れこむのを防ぐ働きをする。
【0027】
さらに、冷却部11のすぐそばに14の真空ポンプ10を配置することで真空チェンバ内全体を超高真空に保つことができる。また、アウトガス侵入抑制手段12を設けることで、荷電粒子ビームが発生するウエーク電磁界を小さくすることが可能となる。
【0028】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。上記実施の形態1では、アウトガス侵入抑制手段12として、オリフィス状のものを用いたが、図3に示すように、アウトガス侵入抑制手段12として、金属板で構成された隔壁を用いても良い。
【0029】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。図において、110は冷却部11を構成する冷却配管である。
【0030】
荷電粒子ビームから発生した放射光は、真空ダクト1の側面(左側と右側)の冷却部11の壁面に衝突する。高エネルギーの光は、ほとんど金属中で吸収されるが、可視光程度のエネルギーの光は、金属表面で鏡面反射をする。従って、図に示すように、冷却配管110を傾斜して配置することによって、冷却部の壁面に傾斜を設ければ、冷却部の壁面で反射した放射光は、再度荷電粒子ビーム100が通る領域へ戻ることなく、アウトガス侵入抑制手段12で隔てられた領域で反射を繰り返しアウトガスを放出する。これによって、荷電粒子ビームが通る領域100を超高真空とすることができる。また、傾けて配置した場合には、金属壁面の単位面積の放射光パワーを小さくできるので、大強度の放射光を放射する装置に有効である。
【0031】
なお、図5に示すように、冷却配管110を、傾斜を設けた一体型とした構成であっても良い。
【0032】
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。図において、111は冷却配管110に設置された金属板である。
【0033】
例えば、真空ダクト1の材質としてステンレスを用いる場合、ステンレスは押し出し加工が難しく、上記図2ないし図5に示すような、真空ダクト1の内壁面と、冷却部11の壁面が一体となった構造とするのは困難である。そこで、図6に示すように、冷却配管110に、例えば銅などの金属板111を設置すれば、上記図2ないし図5と同様の構造とすることができる。
【0034】
実施の形態5.
図7は、この発明の実施の形態5による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。上記実施の形態1ないし4では、真空ポンプ10として、真空ダクト1内にあらかじめ組み込む組込型のポンプ(例えば、組込型イオンポンプや、ゲッタ型ポンプ)を想定していたが、図7に示すように、後から外づけできる、組込型以外の真空ポンプ10を用いても良い。
【0035】
実施の形態6.
図8は、この発明の実施の形態6による荷電粒子蓄積装置の全体構成を示す平面図であり、図9は、図8のA部分を拡大した図である。図8及び9において、4は偏向電磁石、5は4極電磁石、7は超電導ウィグラー、13は真空ダクト1の内壁と冷却部11とを貫通する貫通穴、14は超電導ウィグラー7から放射された放射光(矢印)を、貫通穴13を介して取り出す放射光取り出しポート、101は荷電粒子ビームの周回軌道、102は放射光取り出しポートから取り出される放射光、103は超電導ウィグラー7の最大磁場付近から放射される放射光である。
【0036】
また図10は、荷電粒子ビームの進行方向とのなす角と放射光の出射点での超電導ウィグラー7の磁場との関係を示すグラフである。図において、横軸が荷電粒子ビームの進行方向とのなす角(単位:ミリラジアン)であり、縦軸が放射光の出射点での超電導ウィグラー7の磁場強度(単位:テスラ)を示す。
【0037】
次に動作について説明する。荷電粒子ビームは、図8の周回軌道101を周回する。超電導ウィグラー7の発生する磁場の影響を受けて、図9の矢印で示すように軌道は大きく蛇行する。磁場で曲げられた荷電粒子は接線方向に放射光102を放射する。従来の装置では、図8に示す放射光103のように、荷電粒子ビームの進行方向のみから放射光を取り出していた。これは、超電導ウィグラー7の磁場強度が弱く、また磁場の周期長が短かく、また、荷電粒子のエネルギーが高かったためである。
【0038】
そこで、本実施の形態では、図9に示すように、真空ダクト1の内壁と冷却部11とを貫通する貫通穴13を介して、超電導ウィグラー7から放射された放射光102を取り出す放射光取り出しポートを設け、荷電粒子ビームの進行方向から角度をなす方向にも放射光を取り出す構成とした。これにより、周回軌道101の直線部分からも放射光102を取り出すことができ、1台の超電導ウィグラー7から複数の放射光102、103を取り出すことが可能である。
【0039】
上述のような構成が現実的に可能かどうかについて、ビームシミュレーションを行った結果を図10に示す。計算条件として、荷電粒子:電子、エネルギー:1GeV、超電導ウィグラー磁場強度:7T、超電導ウィグラー周期:0.4m、磁極数:3(主磁極1、測磁極2)で行った。図から、荷電粒子進行方向と90mrad程度(5度)の角度を持つ方向に、磁場強度5Tのウィグラーから出射される放射光強度と同程度の放射光が得られることが分かり、問題はなかった。
【0040】
実施の形態7.
図11は、この発明の実施の形態7による荷電粒子蓄積装置の超電導ウィグラー付近の構成を示す平面図である。超電導ウィグラー7から放射された放射光102は、放射光取り出しポート14を通じて取り出されるが、取り出し経路が4極電磁石5の設置位置と干渉する場合も考えられる。この場合には、図11に示すように、4極電磁石5の一部に貫通穴を設けるか、またはポート側のリターンヨークをなくした4極電磁石5を製作すると良い。
【0041】
実施の形態8.
図12は、この発明の実施の形態8による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。放射光取り出しポート14の熱負荷を減らすためにも、貫通穴13は、必要な放射光が得られる範囲でできるだけ小さい穴径とし、余分な放射光102が放射光取り出しポート14内に侵入しないことが望ましい。そこで、図に示すように、冷却部11に開けた貫通穴13の径は、放射光取り出しポート14の内断面積よりも狭く構成する。なお、貫通穴13の穴径は、放射光取り出しポート14の放射光ミラーや実験装置のアクセプタンスとほぼ等しくなるように決定するのが望ましい。
【0042】
実施の形態9.
図13は、この発明の実施の形態9による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。アルミの押し出し加工等で製作した場合には、冷却部11の肉厚がかなり厚くなるので、冷却部11の金属表面に対して垂直方向からずらした方向に貫通穴13を開ける構成とする。この様な構成とすることで、貫通穴13の穴径をできるだけ小さくでき、放射光取り出しポート14に放射される余分な放射光102をできるだけ少なくできる。
【0043】
実施の形態10.
図14(a)は、この発明の実施の形態10による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図であり、図14(b)は、図14(a)における矢印方向から見た貫通穴13付近の拡大図である。冷却部11に開けられた貫通穴13と、冷却部11中の冷却配管110が干渉しないよう、図に示すように、冷却配管110を貫通穴13からずらして配置する。図では、貫通部13の上下のみに冷却配管110を通しているが、貫通穴13の側面部に配置しても良い。
【0044】
実施の形態11.
図15は、この発明の実施の形態11による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。図において、15は放射光取り出しポート14と真空ダクト1とを可動状態に接続するベローズである。
【0045】
上述したように、貫通穴13は必要な放射光が得られる範囲でできるだけ小さい穴径であることが望ましい。そのような穴径とした場合には、超電導ウィグラー7が発生する磁場に誤差磁界があったとき、放射光102が放射光取り出しポート14の壁面に衝突してしまう可能性がある。そこで本実施の形態では、放射光取り出しポート14と真空ダクト1との間にベローズ15を取り付け、放射光102が放射光取り出しポート14の壁面に衝突しないような位置に取り出しポート14を移動できる構成とした。なお、荷電粒子蓄積装置のビーム調整が終了した後では、放射される放射光位置の変動は小さいので、放射光取り出しポート14を動かすのは初期ビーム調整時であることが多い。
【0046】
実施の形態12.
図16(a)は、この発明の実施の形態12による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図であり、図16(b)は、図16(a)における矢印方向から見た貫通穴13付近の拡大図である。本実施の形態では、図に示すように、冷却配管110は貫通穴13を境界部として二つの系統に分割された構造となっている。冷却配管110は図のように往復構造としても良いし、境界部から外へ取り出しても良い。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、荷電粒子ビームを周回させるための周回軌道を形成する真空ダクト、周回軌道直線部の真空ダクトに設けられ荷電粒子ビームを偏向して放射光を出射する超電導ウィグラー、周回軌道直線部の真空ダクトの内周側及び外周側に設けられ放射光により発生する熱を除去する冷却部、冷却部と荷電粒子ビーム軌道領域との間に設けられ放射光が真空ダクトの内壁に衝突したときに発生するアウトガスが荷電粒子ビームの軌道領域へ侵入するのを抑制するアウトガス侵入抑制手段を備えたので、荷電粒子の周回領域で超高真空が保たれ、長時間安定的に放射光を発生できる効果が得られる。
【0048】
また、この発明によれば、アウトガス侵入抑制手段は、金属板による隔壁であるので、荷電粒子の周回領域で超高真空が保たれ、長時間安定的に放射光を発生できる効果が得られる。
【0049】
また、この発明によれば、冷却部とアウトガス侵入抑制手段との間にアウトガスを除去する真空ポンプを設けたので、荷電粒子の周回領域で超高真空が保たれ、長時間安定的に放射光を発生できる効果が得られる。
【0050】
また、この発明によれば、周回軌道直線部の真空ダクトの壁面と冷却部とを貫通する貫通穴を介して超電導ウィグラーからの放射光を荷電粒子ビームの進行方向から角度をなす方向に取り出す放射光取り出しポートを備えたので、1台の超電導ウィグラーから複数の放射光を取り出すことができる効果が得られる。
【0051】
また、この発明によれば、荷電粒子ビームを周回させるための周回軌道を形成する真空ダクト、周回軌道直線部の真空ダクトに設けられ放射光を出射する超電導ウィグラー、周回軌道直線部の真空ダクトの内周側及び外周側に設けられ放射光により発生する熱を除去する冷却部、周回軌道直線部の真空ダクトの壁面と冷却部とを貫通する貫通穴を介して超電導ウィグラーからの放射光を荷電粒子ビームの進行方向から角度をなす方向に取り出す放射光取り出しポートを備えたので、1台の超電導ウィグラーから複数の放射光を取り出すことができる効果が得られる。
【0052】
また、この発明によれば、貫通穴の断面積は、放射光取り出しポートの内断面積よりも狭いので、余分な放射光の出射を防ぎ、放射光取り出しポートの熱負荷を減らすことができる効果が得られる。
【0053】
また、この発明によれば、貫通穴の貫通方向は、真空ダクトの壁面に対して垂直ではないので、余分な放射光の出射を防ぎ、放射光取り出しポートの熱負荷を減らすことができる効果が得られる。
【0054】
また、この発明によれば、放射光取り出しポートと真空ダクトとの間を可動状態に接続した構成であるので、貫通穴を小さくしても放射光取り出しポートに安定に放射光を供給することができる効果が得られる。
【0055】
また、この発明によれば、冷却部に冷媒を供給する冷却配管は、貫通穴と干渉しないように配置されているので、冷却部に貫通穴を開けても、冷却部に十分な冷却機能を保持できるという効果が得られる。
【0056】
また、この発明によれば、冷却部に冷媒を供給する冷却配管は、貫通穴の上部、下部、側部のいずれかに配置されているので、冷却部に貫通穴を開けても、冷却部に十分な冷却機能を保持できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による荷電粒子蓄積装置の全体構成を示す平面図である。
【図3】 この発明の実施の形態2による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態3による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態4による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。
【図6】 この発明の実施の形態4による荷電粒子蓄積装置の別の真空ダクトを示す断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態5による荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。
【図8】 この発明の実施の形態6による荷電粒子蓄積装置の全体構成を示す平面図である。
【図9】 この発明の実施の形態6による荷電粒子蓄積装置の一部分を拡大した図である。
【図10】 この発明の実施の形態6による荷電粒子蓄積装置の荷電粒子ビームの進行方向とのなす角と放射光の出射点での超電導ウィグラーの磁場との関係を示すグラフである。
【図11】 この発明の実施の形態7による荷電粒子蓄積装置の超電導ウィグラー付近の構成を示す平面図である。
【図12】 この発明の実施の形態8による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。
【図13】 この発明の実施の形態9による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。
【図14】 この発明の実施の形態10による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。
【図15】 この発明の実施の形態11による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。
【図16】 この発明の実施の形態12による荷電粒子蓄積装置の放射光取り出しポート付近を示す平面図である。
【図17】 従来の荷電粒子蓄積装置の全体構成を示す平面図である。
【図18】 従来の荷電粒子蓄積装置の一部分を示す構成図である。
【図19】 従来の荷電粒子蓄積装置の真空ダクトを示す断面図である。
【符号の説明】
1 真空ダクト、2 真空ポンプ、4 偏向電磁石、5 4極電磁石、7 超電導ウィグラー、11 冷却部、12 アウトガス侵入抑制手段、13 貫通穴、14 放射光取り出しポート、15 ベローズ、100 荷電粒子ビームが通る領域、101 荷電粒子ビームの周回軌道、102、103 放射光、110 冷却配管、111 金属板
Claims (9)
- 荷電粒子ビ−ムを周回させるための周回軌道を形成する真空ダクト、上記周回軌道直線部の真空ダクトに設けられ放射光を出射する超電導ウィグラ−、上記周回軌道直線部の真空ダクトの壁面を貫通する貫通穴を介して上記超電導ウィグラ−による放射光を上記荷電粒子ビ−ムの進行方向から角度をなす方向に取り出す放射光取り出しポ−トを備えたことを特徴とする荷電粒子蓄積装置。
- 貫通穴の断面積は、放射光取り出しポ−トの内断面積よりも狭いことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子蓄積装置。
- 放射光取り出しポ−トと真空ダクトとの間を可動状態に接続した構成であることを特徴とする請求項1または2記載の荷電粒子蓄積装置。
- 周回軌道直線部の真空ダクトの壁面に熱を除去する冷却部が設けられたことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の荷電粒子蓄積装置。
- 冷却部に冷媒を供給する冷却配管は、貫通穴の上部、下部、側部のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の荷電粒子蓄積装置。
- 冷却部に冷媒を供給する冷却配管は、貫通穴によって複数の系統に分離されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の荷電粒子蓄積装置。
- 真空ダクト内の周回軌道直線部と真空ダクトの壁面に設けられた冷却部との間にアウトガス侵入抑制手段が設けられたことを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の荷電粒子蓄積装置。
- アウトガス侵入抑制手段は、金属板による隔壁であることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の荷電粒子蓄積装置。
- 冷却部とアウトガス侵入抑制手段との間にアウトガスを除去する真空ポンプを設けたことを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の荷電粒子蓄積装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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