JP3849853B2 - 手術用受信コイル及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に用いられる受信コイルに関し、特に診断画像を参照しながら手術を行うのに好適な受信コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、脳の治療法として定位脳手術が行われることがある。定位脳手術とは、開頭器具を用いて頭部を開頭せず、ある特定の領域に対し治療をする手法であり、頭部固定具を装着した状態で、腫瘍の切除、吸引あるいは穿刺等を行うものである。また、この定位脳手術と画像診断装置を組み合わせた治療法があり、電気刺激を用いたてんかん等の機能解析、機能マップを用いた腫瘍の切除、機能を刺激しながらの外科手術等を行う機能的脳神経外科を始め、他の分野においても注目が集められている。
【0003】
X線CT装置と定位脳手術を組み合わせて、病変部位を正確に計測し、目標点を決定するCT誘導定位脳手術法があり、これをMRI装置に展開したMRI誘導定位脳手術として応用が行われている。また、これまで画像診断用として発展してきたMRI装置も、最近になって術中にMR撮影し、撮影と手術を交互に繰り返すことで腫瘍の確認をリアルタイムに行い、腫瘍を正確に切除するといった外科的手術に応用されてきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、MRI装置による撮影では受信コイルを撮影部位に取り付けて撮影をする必要があり、術中では患部を清潔に保つためにドレープで覆わなければいけないため、受信コイルをドレープの上から取り付けることになり、撮影スペースを確保することが難しく、術中撮影の安全性、確実性に問題があった。また、撮影時に受信コイルを取り付けるときは、頭部固定具から頭部を外してから受信コイル取り付けなければならず、逆に手術時には受信コイルを外し再度頭部固定具に頭部を固定させなければならないため、術者の作業手順が増え、手術時間の延長となり効率が低下するものとなっていた。
【0005】
また、頭部固定具に固定したままで撮影しようとしてもこれまでと同様の各患部専用の診断用受信コイルでは患部に触れることになり使用することは困難であるため、患部に触れないよう径の大きな受信コイルを用いなければならず、感度が劣るものとなっていた。
【0006】
さらに、撮影された診断画像を腫瘍特定のためのナビゲーションとして使用する場合、MR画像空間と実空間とのレジストレーションが必要となり、高価なナビゲーション装置を使用しなければならなかった。定位脳手術においても、従来のような術前画像を用いた誘導定位脳手術では、開頭後の髄液流出や腫瘍切除によって撮影前の脳の位置と開頭後の脳の位置がずれてしまうブレインシフトの影響を回避できないなどの問題点がある。
【0007】
本発明は、定位脳手術においても使用可能な受信コイルを提供すると共に、ナビゲーション機能を容易に達成することが可能な受信コイル並びにMRI装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の手術用受信コイルは、被検体頭部の周囲に配置され頭部固定用のボルトを介して頭部を固定すると共に導電体で形成されたU字形状の固定部と、手術用治具が取り付けられると共に導電体で形成されたフレーム部と、前記固定部と前記フレーム部の端部同士を電気的に接続するコネクタ部とを有するようにしたものである。上記コネクタは、上記フレーム部を所望の角度に変更可能な可動機構を備えてもよい。
【0009】
また、本発明の磁気共鳴イメージング装置は、被検体を寝載する寝台と、静磁場空間を形成し前記被検体に対し高周波磁場、傾斜磁場を印加して核磁気共鳴信号を得るガントリとを有する磁気共鳴イメージング装置において、前記寝台に取り付けられ被検体からの核磁気共鳴信号を受信する手術用受信コイルを備え、この手術用受信コイルは被検体頭部の周方向に配置され頭部を固定し導電体で形成された頭部固定部と、手術用治具が取り付けられると共に導電体で形成されたフレーム部と、前記頭部固定部と前記フレーム部とを電気的に接続するコネクタ部とを有してループ状のコイルを構成し、上記コネクタは、上記フレーム部を所望の角度に変更可能な可動機構を備えたものである。さらに、上記手術用受信コイルに取り付けられもしくは内部に装填されたマーカと、上記フレーム部に取り付けられた手術用治具とマーカとの距離を計測するスケールとを有し、上記磁気共鳴イメージング装置にて撮影された診断画像上のマーカと所望の部位との距離を前記スケールに対応させて、上記処置治具を上記フレーム部上で上記所望の部位に対して処置できる位置に配置できるようにしてもよい。
【0010】
【発明の実施例】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のMRI装置の概略図である。撮影室あるいは手術室内に静磁場発生用の磁石、傾斜磁場発生用のGCコイル、被検体3に高周波信号を発生するためのRFコイルとを含んで形成されるガントリ1と被検体3を寝載する寝台2が配置され、手術用として顕微鏡4、麻酔器5等が配置される。ガントリ1の周囲には術者が寝台2の脇で診断画像を確認するためのインルームモニタ6が設置されている。このインルームモニタ6はガントリ1の上部からアーム7を介して取り付けられ、術者の位置に応じて種々の角度に向けることができる。寝台2は撮影及び手術時に用いられものであり、定位脳手術の際に頭部を固定するための定位脳用頭部支持装置8が取り付けられている。このような構成により、被検体3をガントリ1から出した状態で手術を行い、必要に応じてガントリ1に被検体3を入れて撮影を行う。これを繰り返すことで腫瘍等の患部の位置を正確に把握しながら手術が行える。
【0011】
次に、定位脳用頭部支持装置8の詳細を説明する。
図2は寝台2に取り付けられた定位脳用頭部支持装置8の説明図である。定位脳用頭部支持装置8は、寝台2へ固定する寝台保持部9と、MR画像に影響の少ないチタン製固定ボルト11を介して被検体3の頭部周囲を固定すると共に導電性を持たせた例えばアルミ製のU字形状の頭部固定部10と、開頭治具等を保持するヘッドフレーム13と、頭部固定部10に取り付けられ中継コネクタ15を介してステレオフレーム16を保持するためのコネクタ14と、頭部固定部10とステレオフレーム16を電気的に接続し全体としてコイルとして形成させるための中継コネクタ15と、穿刺針等の手術用器具を保持すると共に導電性を持たせた例えばアルミ製のステレオフレーム16から構成される。このような定位脳用頭部支持装置8を用いて手術を行う場合、頭部固定部10に複数のボルト11で被検体を固定し、治療部位が不潔にならないよう治療部位以外の全体をドレープ12で覆う。頭部固定部10の両端には接触抵抗の少ないコネクタ14を取り付け、ドレープ12にはコネクタ14が貫通する穴を設け、この穴にコネクタ14を通して取り付ける。この状態で、ヘッドフレーム13と滅菌された中継コネクタ15を頭部固定部10に取り付ける。そして、中継コネクタ15にステレオフレーム16を取り付ける。このように形成することにより、定位脳用頭部支持装置8全体が導電性を持つこととなり、1つのループ状コイルが形成されることとなる。つまり、電気的導通のよいアルミ製の頭部固定部10〜コネクタ14〜中継コネクタ15〜ステレオフレーム16〜中継コネクタ15〜コネクタ14〜頭部固定部10でループ状の受信コイルを形成することができる。この場合、ループ状のコイルを形成させるために、頭部固定部10、コネクタ14、中継コネクタ15、ステレオフレーム16のみ導電性は持たせるようにし、それ以外のヘッドフレーム13等は導電性を持たせないように構成する。なお、コネクタ14を省略してもよく、この場合でも十分ループ状の受信コイルを形成できる。また、ヘッドフレーム13も必要に応じて取り外すことができる。
【0012】
本実施形態において、受信コイルのケーブルは図示省略したが、中継コネクタ15より引き出される。なお、寝台2内にケーブルを埋め込み、寝台保持部9が取り付けられる箇所をコネクタ状にすれば、定位脳用頭部支持装置8を寝台2に取り付けるだけで、電気的接続ができるようにすることもできる。また、寝台保持部9と頭部固定部10を一体に構成してもよい。
【0013】
次に、定位脳用頭部支持装置8を用いたナビゲーションシステムの具体的な構成を説明する。ナビゲーションシステムとは、MRI装置で撮影した診断画像上において腫瘍等の病変部の位置とそれを処置するための手術用治具の位置関係を知ることで、正確な手術が行えるものである。そのために、基準マーカと呼ばれる基準点を設け、現実空間とMR診断画像とのレジストレーションに使用される。従来、レジストレーションでは現実空間に配置された基準マーカの位置を位置検知器で読み取り、その位置とMR診断画像上に表示された基準マーカの位置を一致させる作業を行う。
【0014】
本実施形態では、ステレオフレーム16に直接基準マーカを取り付けたり、もしくは内部に基準マーカを装填する。この基準マーカを含むMR診断画像を撮影し、診断画像上で基準マーカの位置を把握する。そして、診断画像上で基準マーカと腫瘍等の病変部位の距離を把握する。また、ステレオフレーム16にスケールを取り付け、診断画像上からの距離とスケールとの距離が合うよう設定することで、穿刺等の手術用治具を正確に病変部位に位置させることができる。
このような構成により、従来のナビゲーションシステムには必要であった位置検知器を使用しなくともレジストレーションを行うことができる。
【0015】
より具体的な構成を図3に示す。図3はナビゲーションシステムとして定位脳用頭部支持装置8と穿刺用治具17を使用した図である。本実施形態の定位脳用頭部支持装置8を用いることによって手術を行う状態で撮影をし、撮影終了後に即座に手術に移行できる。手術時にナビゲーションを必要とする場合には、ステレオフレーム16の上に穿刺用治具17を取り付ける。この穿刺用治具17には3次元的な位置を把握するためのスケールがあり、これにより正確に3次元の位置を知ることができ、正確な位置への穿刺ができる。なお、穿刺用治具17の代わりに腫瘍切除用の治具や吸引用の治具を取り付けることもでき上述と同様にスケールを備えることで腫瘍の切除、吸引を正確に行うことができる。
【0016】
なお、術式によってはステレオフレーム16の配置場所が手術に支障をきたす場合もあるため、図4に示すように角度を変更できる機構の可動式コネクタ18を設けることで、ステレオフレーム16を手術の邪魔にならないよう角度を変えることができる。このとき、角度が新たに設定されてもナビゲーションの位置は幾何学変換を施せば問題とならない。また、ナビゲーションを必要としない手術の場合には、ステレオフレーム16を中継コネクタ15から取り外すことができる。そして、撮影の際には中継コネクタ15やフレームコイル16を再度取り付けるだけなので、作業的に煩雑になることはない。
【0017】
以上のように、手術時に使用する定位脳用頭部支持装置8を導電体で構成することにより、ループ状の受信コイルを形成することができ、手術から撮影に移行する場合でも、被検体を移動させることがなくなるため、被検体及び術者の負担を軽減でき作業効率が向上する。また、手術時と撮影時に頭部の位置が変わらないためブレインシフトの影響を最小限に抑えることができ、診断能が向上する。
【0018】
また、ステレオフレームに直接基準マーカを取り付けもしくは内部に装填する共に、ステレオフレームにスケールを備えることで、位置検出器を使用しなくとも、正確な位置を把握できる。
【0019】
このように本実施形態によれば、定位脳用頭部支持装置8をコイル化することによって、径の小さな受信コイルが形成でき、高精度な画像を確保できる。その上、撮影時における煩雑な操作を取り除き、安全性を保持できる。また、目的に応じてステレオフレーム16の角度を変えたり、取付け、取り外しが可能であるため、より広範囲の手術に利用できる。また、マーカやスケールをステレオフレーム16に取り付け、術中撮影した画像を使用して手術を行えるため、ブレインシフトの影響が少なく、頭部全体の動きがなく、正確なナビゲーションを行うことができる。
【0020】
【発明の効果】
以上、説明したことから明らかなように、頭部固定部とフレーム部を導電体で形成し中継コネクタで接続することでループ状のコイルを形成させることができるため、被検体を移動させることなく撮影と手術を交互に行うような誘導定位脳手術が行え、手術手順が簡略化され効率の向上が図れる。また、患者に近い位置で径の小さな受信コイルを形成することが可能なことから、高感度の画像データを取得することができる。さらに、フレーム部にマーカとスケールを備えることで、診断画像との位置合わせを容易に行えるため、簡易的なナビゲーションシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMRI装置の概略を説明するための図である。
【図2】本発明の手術用受信コイルの一実施形態を示す図である。
【図3】本発明の手術用受信コイルの一実施形態を示す図である。
【図4】本発明の手術用受信コイルの他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 ガントリ、2 寝台、3 被検体、4 顕微鏡、5 麻酔器、6 インルームモニタ、7 モニタ支持アーム、8 定位脳用頭部支持装置、9 寝台保持部、10 頭部固定部、11 ボルト、12 ドレープ、13 ヘッドフレーム、14 コネクタ、15 中継コネクタ、16 ステレオフレーム、17 穿刺用治具、18 可動式コネクタ

Claims (3)

  1. 被検体頭部の周囲に配置され頭部固定用のボルトを介して頭部を固定すると共に導電体で形成されたU字形状の固定部と、手術用治具が取り付けられると共に導電体で形成されたフレーム部と、前記固定部と前記フレーム部の端部同士を電気的に接続するコネクタ部とを有し、
    上記コネクタは、上記フレーム部を所望の角度に変更可能な可動機構を備えたことを特徴とする手術用受信コイル。
  2. 被検体を寝載する寝台と、静磁場空間を形成し前記被検体に対し高周波磁場、傾斜磁場を印加して核磁気共鳴信号を得るガントリとを有する磁気共鳴イメージング装置において、前記寝台に取り付けられ被検体からの核磁気共鳴信号を受信する手術用受信コイルを備え、この手術用受信コイルは被検体頭部の周方向に配置され頭部を固定し導電体で形成された頭部固定部と、手術用治具が取り付けられると共に導電体で形成されたフレーム部と、前記頭部固定部と前記フレーム部とを電気的に接続するコネクタ部とを有してループ状のコイルを構成し、
    上記コネクタは、上記フレーム部を所望の角度に変更可能な可動機構を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 上記手術用受信コイルに取り付けられもしくは内部に装填されたマーカと、上記フレーム部に取り付けられた処置治具とマーカとの距離を計測するスケールとを有し、上記磁気共鳴イメージング装置にて撮影された診断画像上のマーカと所望の部位との距離を前記スケールに対応させて、上記処置治具を上記フレーム部上で上記所望の部位に対して処置できる位置に配置できることを特徴とする請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置。
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