JP3845937B2 - ガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスセンサとしては、従来から使用材料、ガス検知機構などの異なる多数のものが知られている。例えば、セラミックス、有機化合物、金属単結晶などを使用する半導体ガスセンサは、他の形式のガスセンサに比して、操作温度が低く、感度が良好であるという利点を有しているものの、選択性が低いという本質的な問題点を有している。電解質ガスセンサは、感度が良好で、応答速度が速いという利点はあるものの、やはり選択性が低いという欠点がある。接触燃焼式センサは、精度が良く、経済的であるという利点を有する反面、やはり選択性が低いのが欠点である。これに対し、電気化学式センサは、選択性には比較的優れているものの、メンテナンスが困難であり、経済性に欠けるので、実用的でない。
【0003】
従って、公知のガスセンサには、改善すべき余地が大いにある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、操作温度が低く、感度が良好で、選択性に優れ、メンテナンスが容易であるガスセンサを提供することを主な目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の様な従来技術の問題点に留意しつつ鋭意研究を重ねた結果、新規な構造を有するセンサが、微量のガス成分の同定能力乃至識別能力に極めて優れていることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記のガスセンサを提供するものである:
1.金属基板上に絶縁性極薄膜および導電性材料からなるガス透過性電極を順次形成したガスセンサ。
【0007】
2.ガス透過性電極が、網目状ネットワーク構造を有する上記項1に記載のガスセンサ。
【0008】
3.ガス透過性電極が、アイランド構造を有する上記項1に記載のガスセンサ。
【0009】
4.金属基板が、金属、半金属または合金により構成される上記項1に記載のガスセンサ。
【0010】
5.金属基板が、白金、パラジウム、アルミニウムまたはチタンにより構成される上記項4に記載のガスセンサ。
【0011】
6.半導体基板上に、絶縁性極薄膜を介在させ或いは介在させることなく、導電性材料からなるガス透過性電極を形成したガスセンサ。
【0012】
7.ガス透過性電極が、網目状ネットワーク構造を有する上記項6に記載のガスセンサ。
【0013】
8.ガス透過性電極が、アイランド構造を有する上記項6に記載のガスセンサ。
【0014】
9.半導体基板が、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄および酸化チタンならびにこれらの少なくとも1種を含む複合酸化物からなる群から選ばれた1種により構成される上記項6に記載のガスセンサ。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明によるガスセンサの1例を模式的に示す断面図であり、図2は、図1のガスセンサにおけるガス透過性電極の構造を模式的に示す平面図である。以下においては、この形式のガスセンサを便宜的に“縦型ガスセンサ”ということがある。
【0017】
図1および図2に示す縦型ガスセンサにおいては、金属基板3上に絶縁性極薄膜2および網目状乃至ネットワーク状のガス透過性電極3が設けられている。
【0018】
基板3を構成する金属としては、白金、パラジウム、アルミニウム、チタンなどの金属単体、セレン、アンチモンなどの半金属、ニッケル−クロム、銅−亜鉛などの合金などが例示される。
【0019】
絶縁性極薄膜2としては、絶縁性金属酸化物(例えば、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、五酸化二タンタル、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムなど;但し、1価金属の酸化物、アルカリ金属の酸化物を除く)、絶縁性金属窒化物(窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素など;但し、立方晶構造のものを除く)、比抵抗が106Ω・cm以上の半導体(例えば、窒化ガリウム、窒化インジウムなど)、ダイヤモンドの薄膜などが使用される。これらの中では、シリコン基板と組合せて、二酸化ケイ素を使用することがより好ましい。絶縁性極薄膜は、特に制限されることなく、PVD、CVD、低エネルギーイオンビームスパッタ法などの公知の成膜法により、形成することができるが、低エネルギーイオンビームスパッタ、CVDによることがより好ましい。絶縁性極薄膜の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.2〜100nm程度の範囲にあり、より好ましくは、1〜10nm程度の範囲にある。
【0020】
網目状乃至ネットワーク状構造のガス透過性電極1としては、ガスを透過しうる限り特に限定なく、種々の材料が使用できる。より具体的には、導電性金属単体(例えば、金、銀、銅、白金などの遷移金属)、導電性合金(ニッケル−クロム(ニクロム)、ニッケル−コバルト、鉄−クロム、ニッケル−銅、銅−亜鉛など)、導電性金属窒化物(例えば、タンタル、モリブデン、ニオブなどの遷移金属の窒化物で立方晶構造を有するもの)、導電性金属ホウ化物(例えば、ホウ化チタン、ホウ化タンタルなどなど)、導電性金属ケイ化物(例えば、ケイ化チタン、ケイ化鉄、ケイ化コバルト、ケイ化白金、ケイ化ジルコニウムなど)、導電性金属酸化物(例えば、インジウム、スズ、亜鉛などの単一酸化物或いは複合酸化物)などが挙げられる。これらの中では、後述するガス透過性電極の製造時の析出粒子自体が、nmオーダーであって、触媒効果を発揮する白金、金などがより好ましい。
【0021】
網目状乃至ネットワーク状構造のガス透過性電極は、常法による薄膜形成法に準じて行うことができる。すなわち、基板上での薄膜形成は、基板表面に対する薄膜形成材料粒子の付着量増大とともに、アイランド構造→ネットワーク構造→薄膜という過程を経て行われる。従って、本発明によるガスセンサを製造するには、薄膜形成法に準じてガス透過性電極材料を基板上に析出させるに際し、アイランド構造を経てネットワーク構造が形成された時点で、析出操作を停止すればよい。この様な網目状乃至ネットワーク状構造の形成は、公知の薄膜形成法(例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、プラズマCVDなどのドライプロセス;電解メッキ、無電解メッキなどのウェットプロセス)により、行うことができる。基板表面に形成されるべきガス透過性電極材料の構造は、基板への材料析出量と材料粒子のエネルギーとを制御することにより行うことができる。網目状乃至ネットワーク状構造は、空孔率が通常10〜90%程度、より好ましくは30〜70%となるようにすれば良い。
【0022】
ガス透過性電極の厚さは、特に限定されるものではないが、通常3〜1000nm程度であり、より好ましくは10〜500nm程度である。
【0023】
なお、図示はしないが、図1および図2に示す縦型ガスセンサにおいて、金属基板3に代えて半導体基板を使用することができる。基板を構成する半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン或いはこれらの少なくとも1種を含む複合酸化物などが例示される。この場合、拡散層が生じない様な低温条件下に(すなわち、ガス透過電極材料の再結晶温度未満の温度で)電極1を形成できるならば、半導体基板上には、絶縁性極薄膜2を設けなくともよい。
【0024】
図3は、本発明によるガスセンサの他の1例を模式的に示す断面図であり、図4は、図3のガスセンサにおけるガス透過性電極の構造を模式的に示す平面図である。以下においては、この形式のガスセンサを便宜的に“横型ガスセンサ”ということがある。
【0025】
図3および図4に示す横型ガスセンサにおいては、絶縁体または半導体からなる極薄膜12上にアイランド状のガス透過性電極11が設けられている。
【0026】
基板13は、構造材としての役割を果たすためのものであり、必須の構成要素ではない。構造材としての基板13を構成する金属としては、前記縦型ガスセンサと同様のものが使用できる。
【0027】
極薄膜を構成する絶縁体材料としても、前記縦型ガスセンサと同様のものが使用でき、その形成方法も同様である。また、極薄膜を構成する半導体材料としても、前記縦型ガスセンサと同様のものが使用でき、その形成方法も同様である。
【0028】
アイランド状構造のガス透過性電極11としても、前記縦型ガスセンサと同様のものが使用でき、その形成方法も同様である。また、極薄膜を構成する半導体材料としても、前記縦型ガスセンサと同様のものが使用でき、その形成方法も同様である。
【0029】
本発明によるガスセンサの作動原理の概要を図5〜7に模式的に示すグラフにより説明する。ガスセンサに電圧を加えていくと、電流はそのエネルギー値を変えることなく、電極間を流れる。しかしながら、吸着ガス分子の振動励起エネルギーに相当する電圧に達したとき、エネルギーの一部は、振動励起のために減少し、より低いエネルギーで流れる電流が生じる(図5において、実線の折れ曲がり部の右側部分)。図6は、図5のグラフ(実線)の傾き(一次微分dI/dV)を示す。この図6の縦軸の増加量(図5の傾きの変化量)は小さいので、その値(二次微分d2I/dV2)をグラフ化すると、図7のようにシャープなピークが現れる。従って、特定電圧におけるピークを測定することにより、吸着されたガス種とその濃度を検知することができる。
【0030】
本発明によるガスセンサは、液体ヘリウム温度(4.2K)からセンサに吸着された検知対象ガスが再び脱離するに至るまでの広い温度範囲で、ガス中に微量含まれる各種の成分を検知することができる。本発明によるガスセンサは、赤外・可視・近紫外部の光を吸収するような振動を有する成分であれば、検知可能である。この様な成分としては、アセトン、アンモニア、ベンゼン、一酸化炭素、二酸化炭素、エタノール、ホルムアルデヒド、亜酸化窒素、エチレン、シアン化水素、ホスゲンなどが例示される。
【0031】
本発明によるガスセンサは、従来公知のガスセンサが用いられてきた分野で使用することができる。より具体的には、例えば、ガス漏れ警報機、車の排気ガス測定器、燃焼設備省エネルギー用酸素センサ、電子レンジ或いはエアコンなどに組み込まれる湿度センサ、酸欠防止用の一酸化炭素センサなどが例示される。
【0032】
さらに、本発明によるガスセンサは、その特性である高感度、高選択性、高応答速度などを利用して、口臭センサ、おむつ監視センサなどの健康管理用センサ;火炎を発する直前の微量ガスを検知する早期警報センサ;冷蔵庫内容物の劣化乃至腐敗を示す食品鮮度監視センサ;貯蔵中の果物が発する成分(エチレンなど)を検知する熟度センサなどの新たな用途においても、有用である。
また、本発明によるガスセンサは、極微量成分の分析装置(ガスクロマトグラフィーなど)における検知素子としても使用可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明によるガスセンサは、以下の様な顕著な効果を発揮する。
【0034】
a)従来のガスセンサに比して、高感度である。
【0035】
b)ガス中の多種類の成分に対する検知能に優れている。
【0036】
c)ガス状である限り、殆どすべての成分を検知できる。
【0037】
d)短時間内にガス中の各種成分の検知を行うことができる。
【0038】
e)以上の結果として、従来のガスセンサでは検知対象となり得なかった新たな分野での利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による縦型ガスセンサの1例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1のガスセンサにおけるガス透過性電極の構造を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明による横型ガスセンサの1例を模式的に示す断面図である。
【図4】図3の横型ガスセンサにおけるガス透過性電極の構造を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明によるガスセンサの作動原理の概要を模式的に示すグラフであり、吸着ガス分子の振動励起エネルギーに相当する電圧に達したときに生じる電流の変化を示すグラフである。
【図6】図5に示すグラフ(実線)の傾き(一次微分dI/dV)を示すグラフである。
【図7】図6に示すグラフの縦軸方向の増加量(二次微分d2I/dV2)を示すグラフである。
【符号の説明】
1…網目状乃至ネットワーク状構造のガス透過性電極
2…絶縁性極薄膜
3…金属基板
11…アイランド状構造のガス透過性電極
12…絶縁体または半導体からなる極薄膜
13…金属基板
Claims (5)
- 金属基板上に絶縁性極薄膜と導電性材料からなるガス透過性電極とを順次形成したガスセンサであって、ガス透過性電極が薄膜形成法に準じてガス透過性電極材料を基板上に析出させるに際し、アイランド構造を経てネットワーク構造が形成された時点で、析出操作を停止することにより得られるネットワーク構造、又はアイランド構造を有するガスセンサ。
- 金属基板が、金属、半金属または合金により構成される請求項1に記載のガスセンサ。
- 金属基板が、白金、パラジウム、アルミニウムまたはチタンにより構成される請求項2に記載のガスセンサ。
- 半導体基板上に、絶縁性極薄膜を介在させ或いは介在させることなく、導電性材料からなるガス透過性電極を形成したガスセンサであって、ガス透過性電極が薄膜形成法に準じてガス透過性電極材料を基板上に析出させるに際し、アイランド構造を経てネットワーク構造が形成された時点で、析出操作を停止することにより得られるネットワーク構造、又はアイランド構造を有するガスセンサ。
- 半導体基板が、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム、アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄および酸化チタンならびにこれらの少なくとも1種を含む複合酸化物からなる群から選ばれた1種により構成される請求項4に記載のガスセンサ。
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- 1997-03-14 JP JP06132797A patent/JP3845937B2/ja not_active Expired - Lifetime
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