(参考例1)
図1は参考例1の電子スイッチの一部を示す回路図、図2は同電子スイッチの分解斜視図、図3は同電子スイッチの正面図(a)、右側面図(b)および下側面図(c)である。
本参考例1の電子スイッチは、図1に示すように、交流電源ACと負荷LDとの間に介設され、交流電源ACから負荷LDへの供給電力を位相制御で調整するものであり、図2,3に示すように、ボディ11と、カバー12とを備え、ボディ11およびカバー12からなるハウジング内に、ハンドル13と、一対の端子部14,14と、解除釦15と、放熱板16と、回路ブロック1とを収納するようになっている。そして、上記ハウジングは、図2,図3の例では、壁に埋設される1個モジュール寸法の配線器具2個分の大きさに設定されている。
ボディ11は絶縁樹脂により前方に開口11aを有する箱状に形成され、ボディ11の底部には一対の電線挿入孔などが穿設されている。カバー12は絶縁樹脂によりボディ11の開口11aを閉塞する箱状に形成され、カバー12の前面部120にはハンドル13を挿通するための孔120aが穿設されている。ハンドル13は、絶縁樹脂により有底筒状に形成され、位相制御角調整用のボリューム抵抗VRの軸と嵌合するようになっている。
端子部14は、端子板141および鎖錠ばね142により構成され、上記電線挿入孔に挿入された外部からの電線の導体線に鎖錠して電気的に接続するものである。解除釦15は、ボディ11の底部における別の孔から挿入された例えばマイナスドライバの先端部で押された場合に、上記導体線に対する端子部14の鎖錠を解除するものである。放熱板16は、回路ブロック1における後述する一対の自己消弧型素子Q21,Q22と機械的に接続され、それらに対して放熱をするものである。
回路ブロック1は、一対の端子部14,14と個別に電気的に接続される基板1aと、この両面に実装される各種電子部品とにより構成されている。すなわち、図1に示すように、片方向オンオフ制御構成の自己消弧型素子Q21,Q22が、一対の端子部14(T1),14(T2)間に逆直列に接続され、ボリューム抵抗VRに応じた図略の例えば制御部による位相制御(信号)でオン,オフされるようになっている。自己消弧型素子Q21,Q22の各々は、図1の例では、逆並列接続の寄生ダイオードを有するMOS型FETになっており、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両ドレインがそれぞれ一対の端子部14(T1),14(T2)と電気的に接続されている。なお、自己消弧型素子Q21,Q22の各々は、上記MOS型FETに限らず、バイポーラトランジスタと、これに逆並列接続されるダイオードとによりなる構成でも、あるいはIGBTと、これに逆並列接続されるダイオードとによりなる構成でもよい。
そして、本参考例1の特徴として、一対の端子部14(T1),14(T2)間に介設されるとともに一対の自己消弧型素子Q21,Q22と直列に接続されるシャント抵抗(低抵抗)R51,R52と、駆動時に自己消弧型素子Q21,Q22の両ゲートに印加する制御電圧をそれぞれ抜き取るサイリスタS71,S72とを備え、所定電流よりも大きな過電流がシャント抵抗R51,R52に流れたときに発生するそのシャント抵抗R51,R52の両端電圧でサイリスタS71,S72をそれぞれ瞬時にオンに駆動するようになっている。
より具体的には、一対の自己消弧型素子Q21,Q22間に、一対のシャント抵抗R51,R52がそれぞれ直列に介設されているとともに、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両ゲート間に、それぞれ一対の抵抗R21,R22を介して、一対のサイリスタS71,S72がカソード同士を接続するように逆直列に接続されている。そして、一対のシャント抵抗R51,R52の接続点P1と一対のサイリスタS71,S72の接続点P2とが接続されている。また、交流電源AC側のサイリスタS71のゲートが、抵抗R71を介して、交流電源AC側の自己消弧型素子Q21およびシャント抵抗R51の接続点P3に接続されている一方、負荷LD側のサイリスタS72のゲートが、抵抗R72を介して、負荷LD側の自己消弧型素子Q22およびシャント抵抗R52の接続点P4に接続されている。なお、図1において、DBはダイオードブリッジである。
次に、上記構成の電子スイッチの組立手順例について説明する。まず、一対の端子部14,14および解除釦15をボディ11内の所定の収納室に収納するとともに、回路ブロック1に取り付けられた放熱板16をボディ11内の別の収納室に収納する。この後、回路ブロック1のボリューム抵抗VRの軸にハンドル13を嵌合し、カバー12の孔120aにハンドル13を挿入するようにして、カバー12をボディ11に係合固定する。なお、ボリューム抵抗VRの軸にハンドル13を予め嵌合しておいてもよく、また端子部14を回路ブロック1に予め固定ないし仮固定しておいてもよい。
次に、本参考例1の特徴となる電子スイッチの動作について説明する。本参考例1の電子スイッチは、先述の如く、所定電流よりも大きな過電流がシャント抵抗R51,R52に流れたときに発生するそれらシャント抵抗R51,R52の両端電圧で、サイリスタS71,S72がそれぞれオンになるように回路設定されている。このため、例えば負荷LDの短絡や負荷LDとしての電球の球切れなどで、上記過電流がシャント抵抗R51,R52に流れると、これらの両端電圧がサイリスタS71,S72をオンにすることができる電圧以上に上昇して、サイリスタS71,S72が瞬時にオンになり、自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧が引き抜かれ、自己消弧型素子Q21,Q22が瞬時にオフになる。
これにより、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除することができ、電子スイッチの保護、短絡保護および球切れ保護などが可能となる。また、突入電流の自動的低減も可能である(温まったら通常制御)。そして、このような構成の電子スイッチによれば、後述する他の参考例、実施形態の電子スイッチと同様に、IECの要求するCISPR規格の雑音端子電圧の規格値レベルをクリアすることができる。
なお、参考例1では、ハウジングは、1個モジュール寸法の配線器具2個分の大きさに設定される構成になっているが、これに限らず、例えば図4,図5に示すように、1個モジュール寸法の配線器具3個分の大きさに設定される構成でもよい。
また、一対のサイリスタS71,S72に代えて、一対のトライアックを使用する構成でもよく、この構成でも、上記参考例1と同様の効果を奏することができる。
(参考例2)
図6は参考例2の電子スイッチの一部を示す回路図である。
本参考例2の電子スイッチは、参考例1との相違点として、図6に示すように、一対の端子部14(T1),14(T2)と一対の自己消弧型素子Q21,Q22との間に、一対のシャント抵抗R51,R52をそれぞれ介設して備えるとともに、発光ダイオードD51,D52およびフォトサイリスタPS71,PS72をそれぞれが含む一対のフォトサイリスタカプラPSC,PSCを備えている。
交流電源AC側および負荷LD側のフォトサイリスタカプラPSC,PSCの発光ダイオードD51,D52は、両アノードをそれぞれ一対の端子部14(T1),14(T2)側に向けて、交流電源AC側および負荷LD側のシャント抵抗R51,R52にそれぞれ並列に接続されている。一方、一対のフォトサイリスタPS71,PS72は、一対の抵抗R21,R22を介して一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両ゲート間に、カソード同士を接続するようにそれぞれ逆直列に接続されている。また、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の接続点P21と一対のフォトサイリスタPS71,PS72の接続点P22とが接続され、一対のフォトサイリスタPS71,PS72の両ゲートが、それぞれ一対の抵抗R71,R72を介して両接続点P21,P22に接続されている。
そして、一対のシャント抵抗R51,R52に所定電流よりも大きな過電流が流れたときに発生するそれらシャント抵抗R51,R52の両端電圧で、一対の発光ダイオードD51,D52をそれぞれ発光駆動することにより、一対のフォトサイリスタPS71,PS72をそれぞれ瞬時にオンに駆動するようになっている。
このように構成される電子スイッチでは、上記過電流が一対のシャント抵抗R51,R52に流れると、これらの両端電圧が一対の発光ダイオードD51,D52を発光させることができる電圧以上に上昇し、一対のフォトサイリスタPS71,PS72が瞬時にオン駆動して一対の自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧をそれぞれ抜き取り、一対の自己消弧型素子Q21,Q22が瞬時にオフになるので、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除することができる。また、一対のシャント抵抗R51,R52が一対の自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧に影響を与えないので、微妙な制御が容易となる。
なお、参考例2では、一対のフォトサイリスタカプラを使用する構成になっているが、例えば、フォトトライアックおよび発光ダイオードをそれぞれが含む一対のフォトトライアックカプラを使用する構成でもよく、この構成でも、上記参考例2と同様の効果を奏することができる。
(参考例3)
図7は参考例3の電子スイッチの一部を示す回路図である。
本参考例3の電子スイッチは、参考例1との相違点として、図7に示すように、交流電源AC側の端子部14(T1)および自己消弧型素子Q21間に、一のシャント抵抗R5を介設して備えるとともに、逆並列接続の一対の発光ダイオードD51,D52およびフォトサイリスタPS7を含む一のフォトサイリスタカプラPSCを備えている。
一対の発光ダイオードD51,D52は、シャント抵抗R5に並列に接続されている。一方、フォトサイリスタPS7は、抵抗R21,R22を介して、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両ゲートと一対の自己消弧型素子Q21,Q22の接続点P21との間に接続され、フォトサイリスタPS7のゲートが、抵抗R7を介して接続点P21に接続されている。
そして、シャント抵抗R5に所定電流よりも大きな過電流が流れたときに発生するそのシャント抵抗R5の両端電圧で、一対の発光ダイオードD51,D52を発光駆動することにより、フォトサイリスタPS7を瞬時にオンに駆動するようになっている。
このように構成される電子スイッチでは、上記過電流がシャント抵抗R5に流れると、この両端電圧が一対の発光ダイオードD51,D52を発光させることができる電圧以上に上昇し、フォトサイリスタPS7が瞬時にオン駆動して一対の自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧を抜き取り、一対の自己消弧型素子Q21,Q22が瞬時にオフになるので、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除することができる。また、シャント抵抗R5が一対の自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧に影響を与えないので、微妙な制御が容易となる。さらに、フォトサイリスタカプラPSCの個数が1個で済むので、小型化が可能となる。
なお、参考例3では、フォトサイリスタカプラを使用する構成になっているが、例えば、フォトトライアックおよび発光ダイオードを含むフォトトライアックカプラを使用する構成でもよいことは言うまでもなく、この構成でも、上記参考例3と同様の効果を奏することができる。
(参考例4)
図8は参考例4の電子スイッチの一部を示す回路図、図9は同電子スイッチの動作波形図である。
本参考例4の電子スイッチは、参考例1との相違点として、図8に示すように、交流電源AC側の端子部14(T1)および自己消弧型素子Q21間、および一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両ゲートと一対の自己消弧型素子Q21,Q22の接続点P21との間に、それぞれシャント抵抗R5およびサイリスタS7を介設して備えるとともに、逆並列接続の一対の発光ダイオードD51,D52およびフォトトランジスタPT7を含むフォトトランジスタカプラPTCを備えている。
一対の発光ダイオードD51,D52は、シャント抵抗R5に並列に接続されている。一方、フォトトランジスタPT7は、抵抗R73を介して、サイリスタS7のゲートと直流の内部電源(駆動電源)DCとの間に接続されている。
そして、シャント抵抗R5に所定電流(図9の過電流検出レベル)よりも大きな過電流が流れたときに発生するそのシャント抵抗R5の両端電圧で、一対の発光ダイオードD51,D52を発光駆動して、フォトトランジスタPT7を瞬時にオンに駆動することにより、サイリスタS7を瞬時にオンに駆動するようになっている。なお、図8において、100は、ボリューム抵抗VRに応じた位相制御(信号)で、一対の自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフする制御部である。また、図8では、自己消弧型素子Q21,Q22のゲートに接続される抵抗(R21,R22)の図示を省略してある。
このように構成される電子スイッチでは、上記過電流がシャント抵抗R5に流れると、この両端電圧が一対の発光ダイオードD51,D52を発光させることができる電圧以上に上昇し、フォトトランジスタPT7が瞬時にオン駆動することにより、サイリスタS7が瞬時にオン駆動して一対の自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧を抜き取り、一対の自己消弧型素子Q21,Q22が瞬時にオフになる。
これにより、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除することができ、参考例1で説明したように、電子スイッチの保護、短絡保護および球切れ保護などが可能となる(図9参照)。また、シャント抵抗R5が一対の自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧に影響を与えないので、微妙な制御が容易となる。さらに、安価なフォトトランジスタカプラPTCと小型のサイリスタS7で構成することができるので、コスト削減が可能となる。
(参考例5)
図10は参考例5の電子スイッチの一部を示す回路図である。
本参考例5の電子スイッチは、参考例4との相違点として、図10に示すように、抵抗R100〜R102,R7,R9と、ダイオードD101,102とをさらに備えている。そして、それら抵抗のうち、例えば、抵抗R100は220kΩ、抵抗R101は100kΩ、抵抗R102は15kΩ、抵抗R9は4.7kΩに設定される。
ところで、この種の電子スイッチでは、自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフするときに雑音電圧が発生するが、雑音電圧を低減しようとして穏やかにオン,オフすると、スイッチング損失による発熱が問題となってくる。このため、雑音電圧を低減し、発熱を抑えることができる最適な穏やかさで自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフする必要がある。また、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除するためには、自己消弧型素子Q21,Q22を瞬時にオフしなければならない。
そこで、本参考例5では、雑音電圧の低減および発熱の抑制を可能にするとともに、自己消弧型素子Q21,Q22を瞬時にオフすることができるように、抵抗R101,R102と、ダイオードD101,D102とを設け、抵抗R102よりも自己消弧型素子Q21,Q22側にサイリスタS71を配置するのである。
制御部100がポート#1からハイレベルのオン電圧を出力すると、そのオン電圧がダイオードD101、抵抗R101,R21,R22を介して自己消弧型素子Q21,Q22の両ゲートに印加し、抵抗R101の抵抗値による穏やかさで、自己消弧型素子Q21,Q22の両ゲートに電荷がチャージして自己消弧型素子Q21,Q22がオンになる。一方、制御部100がポート#1からローレベル(例えばグランドレベル)のオフ電圧を出力すると、抵抗R21,R22、ダイオードD102、抵抗R102を介して、抵抗R102の抵抗値による穏やかさで、自己消弧型素子Q21,Q22のゲートが放電して自己消弧型素子Q21,Q22がオフになる。これにより、雑音電圧の低減および発熱の抑制が可能となる。
一方、先述の過電流がシャント抵抗R5に流れると、フォトトランジスタPT7が瞬時にオン駆動することにより、サイリスタS7が瞬時にオン駆動し、自己消弧型素子Q21,Q22のゲート電圧が抵抗R21,R22およびダイオードD102を介して瞬時に抜き取られる。これにより、自己消弧型素子Q21,Q22を瞬時にオフすることができる。
また、本参考例5では、過電流発生時のサイリスタS7の動作後、少なくとも交流電源(商用電源)ACの半周期はサイリスタS7のオンを保持し、自己消弧型素子Q21,Q22のオフを保持するべく、抵抗R9を設けてある。つまり、雑音電圧の低減用に設定される抵抗R102の抵抗値が大きいときには、サイリスタS7に流れる電流が少なくなってしまうため、ダイオードD101を通じて抵抗R9をサイリスタS7に接続し、その抵抗R9の抵抗値をサイリスタS7の保持電流を確保できる値に設定してある。
上記構成の本参考例5によれば、自己消弧型素子のオン,オフのスイッチング速度、過電流検出時の自己消弧型素子の停止タイミング、サイリスタの保持電流を最小の部品点数でそれぞれ独立して制御することができる。
(参考例6)
図11は参考例6の電子スイッチの回路図、図12は同電子スイッチにおけるボリューム抵抗の抵抗値のばらつきを低減するための説明図である。
本参考例6の電子スイッチは、参考例5との相違点として、図11に示すように、先述の位相制御の位相角調整用のボリューム抵抗VRに並列に接続される固定抵抗Rを備えることを特徴とする。
市販されているボリューム抵抗は、一般に抵抗値が±20%〜30%程度の大きなばらつきを持つので、電子スイッチ毎に、調整できる位相角が大きくばらついてしまうことになる。このため、ボリューム抵抗の抵抗値を選別したり、製造工程で調整用の半固定ボリュームをつけたりするなどの工夫がなされているが、いずれもコストアップの要因となる。
そこで、本参考例6では、ボリューム抵抗VRと並列に固定抵抗Rを接続し、その合成抵抗値により、調整できる位相角のばらつきを抑えるのである。固定抵抗は、一般に抵抗値が±2〜5%程度のばらつきの範囲内に収まるので、図12(a)に示すボリューム抵抗VRが例えば100kΩ±30%程度のばらつきを持つ場合であっても、図12(b)に示すように、例えば200kΩ±5%程度のばらつきを持つ固定抵抗Rを並列に接続することにより、100kΩ+36%〜100kΩ−19.4%程度のばらつきの合成抵抗値に抑えることができる。
ところで、図11に示す電子スイッチについて補説すると、一対の自己消弧型素子Q21,Q22はノーマリオフである。一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両端からダイオードブリッジDBを通じて、制御部100が動作するための内部電源回路部(電源部)4が設けられている。また、ダイオードブリッジDBによって全波整流された出力波形において、0ボルト付近でゼロクロスタイミング信号を制御部100に出力するゼロクロス検出部101が設けられている。そして、制御部100は、そのタイミングで自己消弧型素子Q21,Q22をオン駆動する信号を出力し、ボリューム抵抗VRとコンデンサCなどで決定される時定数分の時間(交流半周期内の時間)経過後、自己消弧型素子Q21,Q22をオフ駆動する信号を出力するように構成される。
また、負荷LDの短絡などで過電流が流れ、シャント抵抗R5の両端電圧が1〜1.5V程度の電圧以上になると、発光ダイオードD51,D52に電流が流れてフォトトランジスタPT7がオンするようになっている。なお、図11において、SWはスイッチであり、Fはフューズであり、例えば本電子スイッチに含まれる。
(参考例7)
図13は本発明による参考例7の電子スイッチの回路図である。
本参考例7の電子スイッチは、図13に示すように、制御部100と、ドライブ回路部102と、一対の端子部14,14とを備えるとともに、一対の端子部14(T1),14(T2)間に、先述の自己消弧型素子Q21,Q22を一対逆直列に接続して備え、制御部100がドライブ回路部102を介して位相制御(信号)で一対の自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフするものである。
より具体的には、交流電源AC側の端子部14(T1)および自己消弧型素子Q21間に、一のシャント抵抗R5が介設され、逆並列接続の一対の発光ダイオードD51,D52およびフォトトランジスタPT7を含むフォトトランジスタカプラPTCが具備されている。一対の発光ダイオードD51,D52は、シャント抵抗R5に並列に接続されている。一方、フォトトランジスタPT7は、コレクタが抵抗R73を介して駆動電源DCに接続されるとともに制御部100の一の入力ポートに接続され、エミッタがグランドに接続されている。
そして、制御部100は、所定電流よりも大きな過電流がシャント抵抗R5に流れたときに発生するそのシャント抵抗R5の両端電圧に応じて、一対の自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフする制御を瞬時に停止するように構成される。
このように構成される電子スイッチでは、上記過電流がシャント抵抗R5に流れると、上記一の入力ポートに印加する電圧レベルがハイからローに切り替わることにより、制御部100が一対の自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフする制御を瞬時に停止するので、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除することができる。また、制御部100がマイコンやCMOS−ICなどで構成される場合に(図13ではマイコン)、コスト削減および小型化が可能となる。
(参考例8)
図14は参考例8の電子スイッチの回路図である。
本参考例8の電子スイッチは、図14に示すように、制御部100と、一対の端子部14(T1),14(T2)とを備えるとともに、先述の自己消弧型素子をQ2として一つ備え、制御部100が位相制御(信号)で自己消弧型素子Q2をオン,オフするものである。
より具体的には、一対の端子部14(T1),14(T2)に交流入力端子が接続されるダイオードブリッジDBと、シャント抵抗R5と、サイリスタS7と、発光ダイオードD5およびフォトトランジスタPT7を含むフォトトランジスタカプラPTCとが具備されている。
自己消弧型素子Q2は、オフ時にダイオードブリッジDBの直流出力端子間を遮断するように、自己消弧型素子Q2を構成するMOS型FETのドレインおよびソースがダイオードブリッジDBの正極性および負極性出力端子にそれぞれ接続されている。シャント抵抗R5は、ダイオードブリッジDBの正極性出力端子と自己消弧型素子Q2との間に介設されている。サイリスタS7は、抵抗R2を介して自己消弧型素子Q2のゲート・ソース間に接続されている。発光ダイオードD5はシャント抵抗R5と並列に接続されている。フォトトランジスタPT7は、コレクタが抵抗R73を介して内部電源DCに接続され、エミッタがサイリスタS7のゲートに接続されている。
そして、所定電流よりも大きな過電流がシャント抵抗R5に流れたときに発生するそのシャント抵抗R5の両端電圧で、発光ダイオードD5を発光駆動して、フォトトランジスタPT7を瞬時にオンに駆動することにより、サイリスタS7を瞬時にオンに駆動するようになっている。
このように構成される電子スイッチでは、上記過電流がシャント抵抗R5に流れると、この両端電圧が発光ダイオードD5を発光させることができる電圧以上に上昇し、フォトトランジスタPT7が瞬時にオン駆動することにより、サイリスタS7が瞬時にオン駆動して自己消弧型素子Q2のゲート電圧を抜き取り、自己消弧型素子Q2が瞬時にオフになる。
これにより、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除することができる。また、自己消弧型素子Q2およびシャント抵抗R5がそれぞれ1個で済むので、コスト削減および小型化が可能となる。
(参考例9)
図15は参考例9の電子スイッチの回路図である。
本参考例9の電子スイッチは、参考例8との相違点として、図15に示すように、サイリスタS7を廃止し、参考例7と同様に、制御部100が一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除するようになっている。
すなわち、フォトトランジスタPT7は、コレクタが抵抗R73を介して内部電源DCに接続されるとともに制御部100の一の入力ポートに接続され、エミッタがグランドに接続されている。そして、制御部100が、所定電流よりも大きな過電流がシャント抵抗R5に流れたときに発生するそのシャント抵抗R5の両端電圧に応じて、自己消弧型素子Q2をオン,オフする制御を瞬時に停止するように構成される。
このように構成される電子スイッチでは、上記過電流がシャント抵抗R5に流れると、上記一の入力ポートに印加する電圧レベルがハイからローに切り替わることにより、制御部100が自己消弧型素子Q2をオン,オフする制御を瞬時に停止するので、一対の端子部14,14間に過電流が流れるのを瞬時に解除することができる。
(実施形態1)
図16は本発明による実施形態1の電子スイッチの構成図、図17は同電子スイッチの定常時の動作波形図、図18は同電子スイッチの過電流時の動作波形図である。
ここで、上記各参考例のうち例えば参考例3の電子スイッチは、図7に示したように、自己消弧型(スイッチ)素子Q21,Q22および抵抗R21,R22によりなるスイッチ回路部と、ダイオードブリッジ(整流器)DBからなる整流回路部と、内部電源を各部に供給する内部電源回路部(図7では図示省略)と、位相制御信号で自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフする制御回路部(同図では図示省略)とを備えているほか、過電流検出回路部と、過電流保護回路部とを備えている。
過電流検出回路部は、端子部T1,T2間を流れる電流が、所定の定格電流より大きく自己消弧型素子Q21,Q22の耐電流以下となる過電流検出レベルに達したか否かの検出をするものであり、抵抗(シャント抵抗)R5と、発光ダイオードD51,D52とにより構成されている。
過電流保護回路部は、過電流検出回路部で過電流検出レベルに達したとの検出結果が得られると、自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子への位相制御信号を引き抜くものであり、フォトサイリスタPS7と、抵抗R7とにより構成されている。
このような構成の電子スイッチでは、端子部T1,T2間に過電流検出レベルに達する過電流が流れると、発光ダイオードが発光することにより、フォトサイリスタPS7がオンになって、自己消弧型素子Q21,Q22がオフになるので、端子部T1,T2間が遮断され、過電流が流れなくなる。
しかしながら、過電流に応じて端子部T1,T2間を遮断する構成では、交流電源ACおよびそれへの配線ケーブルのインダクタンスに起因する逆起電力により、端子部T1,T2間に過電圧が発生するという問題がある。
この問題は、端子部T1,T2間にサージアブソーバーを接続することにより解決可能であるが、コストが上昇し、大型になる上、より高耐圧の自己消弧型素子を使用しなければならなくなる。すなわち、200V以上の交流電源ACで使用される場合、通常使用時の電圧で導通しないように、1mAでの制限電圧が470Vクラスとなるサージアブソーバーを使用する必要があるが、このサージアブソーバーでは、数アンペアの電流で制限電圧が600Vを超えるので、耐電圧600V以下の汎用的な自己消弧型素子を使用することができないのである。また、より高耐圧の自己消弧型素子を使用すると、オン抵抗、オン電圧が高くなり、発熱が大きくなるので、負荷容量を制限するか放熱面積を大きくしなければならない。
本実施形態1の電子スイッチは、過電流保護時に、交流電源およびそれへの配線ケーブルのインダクタンスに起因する逆起電力で、一対の自己消弧型素子に大きなストレスがかかるのを防止するように構成される。
すなわち、本実施形態1の電子スイッチは、図16に示すように、交流電源ACと照明器具や換気扇などの負荷LDとの間に介設され、交流電源ACから負荷LDへの供給電力を位相制御で調整するものであり、スイッチ回路部2と、整流回路部3と、内部電源回路部4と、過電流検出回路部5と、過電圧検出回路部6と、過電流保護回路部7と、過電圧保護回路部8と、オフ保持回路部9と、制御回路部10とを回路ブロック1に備えている。
スイッチ回路部2は、負荷LDを介して交流電源ACが印加する一対の端子部T1,T2間に、直列に接続される一対の自己消弧型素子Q21,Q22と、これらの制御端子(ゲート)にそれぞれ直列に接続される一対の抵抗R21,R22とにより構成されている。自己消弧型素子Q21,Q22は、いずれも逆並列接続の寄生ダイオードを有するMOS型FETになっており、本実施形態1では、互いに逆方向にソース同士で直列に接続されている。なお、本発明の自己消弧型素子は、MOS型FETに限らず、バイポーラトランジスタとこれに逆並列接続されるダイオードとによりなる構成でもよく、あるいはIGBTとこれに逆並列接続されるダイオードとによりなる構成などでもよい。
整流回路部3は、一対の端子部T1,T2に両交流入力端子が接続され、一対の自己消弧型素子Q21,Q22間(図ではQ21,Q22の接続点)に負極性直流出力端子が接続されるダイオードブリッジ(整流器)DBにより構成されている。
内部電源回路部4は、整流回路部3からの直流電力を平滑などして所定レベルの内部電源を生成し、これを電子スイッチの各部(制御回路部10など)に供給するものである。
過電流検出回路部5は、一対の端子部T1,T2間を流れる電流が、所定の定格電流より大きく一対の自己消弧型素子Q21,Q22の耐電流以下となる過電流検出レベルに達したか否かの検出をするものである。図では、端子部T1と自己消弧型素子Q21との間に介設され、一対の端子部T1,T2間を流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換器としての抵抗(シャント抵抗)R5と、この抵抗R5と並列に接続され、抵抗R5で変換された電圧が上記過電流検出レベルに相当する電圧に達したときに発光する逆並列接続の一対の発光ダイオードD51,D52とにより構成されている。
過電圧検出回路部6は、一対の端子部T1,T2間に印加する電圧が、少なくとも交流電源ACより高い過電圧検出レベルに達したか否かの検出をするものである。本実施形態1では、ダイオードブリッジDBの正極性直流出力端子と一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子側(図では抵抗R21,R22の接続点)とにそれぞれカソードとアノードとが接続されるツェナーダイオードZD6により構成されている。
過電流保護回路部7は、過電流検出回路部5で過電流検出レベルに達したとの検出結果が得られると、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子への位相制御信号を引き抜くものである。図では、自己消弧型素子Q21,Q22間とそれら一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子側とにそれぞれカソードおよびゲートとアノードとが接続され過電流検出回路部5の発光ダイオードの発光によりオンとなるフォトサイリスタPS7と、このゲートと自己消弧型素子Q21,Q22の接続点との間に介設される抵抗R7とにより構成されている。
ここで、本実施形態1の過電流保護回路部7のフォトサイリスタPS7は、過電圧検出回路部6で過電流検出レベルに達したとの検出結果が得られなくなる時点から、上記位相制御信号が一対の自己消弧型素子Q21,Q22をオフするローレベルの信号に変わるまでの期間、一対の自己消弧型素子Q21,Q22をオフに保持するオフ保持回路部9により共用される構成になっている。なお、フォトサイリスタPS7および過電流検出回路部5の発光ダイオードD51,D52は、フォトサイリスタカプラによりなる。
過電圧保護回路部8は、過電圧検出回路部6で過電圧検出レベルに達したとの検出結果が得られると、位相制御信号とは別に、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子に対して、一対の端子部T1,T2間の電圧を交流電源ACより高く一対の自己消弧型素子Q21,Q22の耐電圧以下となる過電圧制限レベルに抑える信号を出力するものである。図では、ツェナーダイオードZD6と、ダイオードD8と、抵抗R8とにより構成され、過電圧検出回路部6とツェナーダイオードZD6を共用する構成になっている。過電圧検出レベルおよび過電圧制限レベルは同一であり、ツェナーダイオードZD6は、それら双方に相当するツェナー電圧に設定される。ダイオードD8は、位相制御信号の過電圧検出回路部6内への流入を防止するためのものである。抵抗R8は、自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子が接地されるのを防止して過電圧保護回路部8を動作させるためのものである。
制御回路部10は、自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子に対して、図略の操作部に対する操作に応じた点孤角に対応する位相制御信号を出力することにより、それら自己消弧型素子Q21,Q22をオン,オフするものである。
次に本実施形態1の定常時の動作について説明する。図17に示すように、交流電源ACのゼロクロス時点t1で、制御回路部10から出力される位相制御信号がハイレベルとなり、自己消弧型素子Q21,Q22がオンになる。これにより、一対の端子部T1,T2間に、交流電源ACに応じた負荷電流が流れる。このとき、端子部T1,T2間電圧(端子部間電圧)は、ほぼゼロとなる。この後、操作に応じた点孤角の終点に対応する時点t2で、制御回路部10から出力される制御信号がローレベルとなり、自己消弧型素子Q21,Q22がオフとなる。これにより、一対の端子部T1,T2間が遮断され、負荷電流がほとんど流れなくなる。このとき、端子部T1,T2間に交流電源ACの電圧が印加して、内部電源回路4が動作する。このような一連の動作が、位相制御信号に応じて交流電源ACの半波毎に繰り返される。
次に本実施形態1の過電流時の動作について説明する。突入電流発生時や、負荷短絡や電球切時などで、図18に示すように、過電流検出レベルに達するような過電流(負荷電流)が発生し、端子部T1,T2間を流れる電流が過電流検出レベルに達すると(t10)、過電流検出レベルに達している間の過電流検出期間TM1、過電流検出回路部5の発光ダイオードが点灯するので、フォトサイリスタPS7がオンになる。
フォトサイリスタPS7がオンになると、自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子(ゲート)への位相制御信号が引き抜かれ、各制御端子電圧(ゲート電圧)が降下し始める。そして、ゲート電圧が降下するにつれ、各自己消弧型素子のオン抵抗が上昇するので、端子部T1,T2間電圧が上昇する。この後、過電流(負荷電流)が上昇から下降に転ずると、交流電源ACおよびそれへの図示しない配線ケーブルのインダクタンスに起因する逆起電力で、端子部T1,T2間電圧が交流電源ACよりも上昇する。これにより、端子部T1,T2間電圧が過電圧検出レベル(過電圧制限レベル)に達すると(t11)、過電圧検出レベルに達する間の過電圧検出期間TM2、ツェナーダイオードZD6が導通、非導通を繰り返す。
すなわち、過電圧制限レベルに達してツェナーダイオードZD6が導通すると、ダイオードブリッジDBの正極性直流出力端子が自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子側に接続されることにより、正極性直流出力端子の電圧上昇に伴って、各自己消弧型素子のゲートしきい値電圧に達すると、各自己消弧型素子がオンになる。これにより、ダイオードブリッジDBの両端電圧が上昇から下降に転じ、正極性直流出力端子の電圧が過電圧制限レベルを下回ると、ツェナーダイオードZD6が非導通となるが、過電圧により正極性直流出力端子の電圧が再度上昇に転じる。そして、過電圧制限レベルに達してツェナーダイオードZD6が導通すると、ゲート電圧が上昇し始め、各自己消弧型素子のゲートしきい値電圧に達し、各自己消弧型素子がオンになる。このような動作は、過電圧(端子部T1,T2間電圧)が過電圧検出レベルに達する過電圧検出期間TM2繰り返されるので、端子部T1,T2間電圧が過電圧制限レベルに抑制されることになる。そして、過電流遮断が完了して過電圧検出期間TM2が終了すると、端子部T1,T2間電圧は交流電源ACのレベルに落ち着く。
なお、過電流が減少していく途中で過電流検出レベルを下回ると、過電流検出回路部5の発光ダイオードが消灯するが、フォトサイリスタPS7は、制御回路部10からオン用のハイレベルの位相制御信号を受けている間オンを保持するので、位相制御信号がオフ用のローレベルに切り替わった時点でオフになる。
上記動作は、過電流検出レベルに達するような過電流が発生する度に実行される。例えば、負荷LDが白熱灯である場合には、始動時の突入電流が半波毎に制限され、フィラメントが暖まり過電流検出レベルに達しなくなるまで上記動作が繰り返される。負荷LDが短絡した場合には、短絡状態が除去されるまで上記動作が繰り返される。電球切れの場合には、フィラメントまたは電球内のヒューズが断線するまで上記動作が繰り返される。
以上、本実施形態1によれば、過電流検出レベルに達したとの検出結果が得られ、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子への位相制御信号が引き抜かれることにより、交流電源ACおよびそれへの配線ケーブルのインダクタンスに起因する逆起電力で一対の端子部T1,T2間の電圧が交流電源ACよりも上昇するが、一対の端子部T1,T2間の電圧が過電圧検出レベル(過電圧制限レベル)に達したとの検出結果が得られると、過電圧保護回路部8により、一対の端子部T1,T2間の電圧が過電圧制限レベルに抑えられるので、過電流保護時に、交流電源ACおよびそれへの配線ケーブルのインダクタンスに起因する逆起電力で、一対の自己消弧型素子Q21,Q22に大きなストレスがかかるのを防止することができる。
また、過電流検出レベルに達したとの検出結果が得られなくなる時点の後、位相制御信号による本来の位相制御のタイミングとは異なるタイミングで、一対の自己消弧型素子Q21,Q22がオンするのを防止することができるので、交流電源ACのゼロクロス時以外で一対の自己消弧型素子Q21,Q22がオンするのを防止することができる。
さらに、フォトサイリスタPS7の持つ特性を利用することにより、過電流保護回路部7およびオフ保持回路部9を簡単に構成することができ、小型化が可能となる。また、サージアブソーバーが不要となる。
(実施形態2)
図19は本発明による実施形態2の電子スイッチの構成図である。
本実施形態2の電子スイッチは、実施形態1との相違点として、図19に示すように、過電圧保護回路部8において、ダイオードD8とツェナーダイオードZD6との間に介在し、コレクタに内部電源が入力し、エミッタとベースとがそれぞれダイオードD8のアノードとツェナーダイオードZD6のアノード側とに接続されるトランジスタTr8と、このベースとツェナーダイオードZD6のアノードとの間に介設される抵抗R80とを設けたことを特徴とする。つまり、ツェナーダイオードZD6に流れる電流をトランジスタTr8により増幅する構成になっている。
実施形態1では、ツェナーダイオードZD6に高耐圧のものを使用する必要がある。また、高電圧で電流が流れると損失が大きいので、大型のパワーツェナーダイオードが必要となる。
これに対して、本実施形態2によれば、トランジスタTr8を設けたことにより、高耐圧で大型のパワーツェナーダイオードを使用する必要がなくなり、信号レベルの小型のツェナーダイオードを使用することが可能となるので、コストダウンおよび小型化が可能となる。また、自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子に対して、過電圧制限レベルに抑える信号を高速に出力することができ、過電圧から自己消弧型素子Q21,Q22を好適に保護することができる。
(実施形態3)
図20は本発明による実施形態3の電子スイッチの構成図である。
本実施形態3の電子スイッチは、実施形態1との相違点として、図20に示すように、過電圧検出回路部6が、ツェナーダイオードZD6に代えて、過電圧制限レベルと同じ過電圧検出レベルに対するダイオードブリッジDBの正極性直流出力端子からの電圧レベルの誤差分を増幅する誤差増幅器60を含み、過電圧保護回路部8が、誤差増幅器60からの出力を受けて過電圧制限レベルに抑える信号を自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子に出力することを特徴とする。
図20では、過電圧検出回路部6は、出力端子がダイオードD8のアノードに接続される誤差増幅器60と、上記過電圧制限レベルと同じ過電圧検出レベルとなる基準電圧の出力端と誤差増幅器60の反転入力端子との間に介設される抵抗R61と、誤差増幅器60の非反転入力端子とダイオードブリッジDBの正極性直流出力端子との間に介設される抵抗R62と、誤差増幅器60の非反転入力端子とグランドとの間に介設される抵抗R63と、誤差増幅器60の反転入力端子と出力端子との間に接続される抵抗R64と、これに並列に接続されるコンデンサC6とを備えている。この構成では、ダイオードブリッジDBの正極性直流出力端子の電圧が抵抗R62,R63で分圧されて誤差増幅器60の非反転入力端子に入力し、上記基準電圧との誤差分が増幅される。
次に本実施形態3の特徴となる動作について説明する。過電流が発生せず、過電圧が発生しなければ、誤差増幅器60の非反転入力端子に入力する電圧が反転入力端子に入力する基準電圧よりも低くなり、誤差増幅器60の出力信号はローレベルとなる。この場合、位相制御信号は、互いに協調する過電圧検出回路部6および過電圧保護回路部8の影響を受けず、自己消弧型素子Q21,Q22を通常の動作でオン,オフさせる。
一方、過電流検出レベルに達するような過電流が発生すると、過電流検出回路部5および過電流保護回路部7が実施形態1と同様に動作し、この後、過電圧検出レベル(過電圧制限レベル)に達する過電圧が発生すると、誤差増幅器60の出力信号がハイレベルとなり、過電圧保護回路部8が、その出力信号を受けて過電圧制限レベルに抑える信号を自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子に出力する。つまり、端子部T1,T2間電圧が上昇して過電圧検出レベルに達した瞬間に誤差増幅器60の出力信号がハイレベルとなって過電圧保護回路部8経由で自己消弧型素子Q21,Q22をオンにし、これにより、端子部T1,T2間電圧が上昇から下降に転じて過電圧検出レベルを下回った瞬間に誤差増幅器60の出力信号がローレベルとなって過電圧保護回路部8経由で自己消弧型素子Q21,Q22をオフすることにより、端子部T1,T2間電圧を過電圧制限レベルに抑えるのである。このような動作は、過電圧(端子部T1,T2間電圧)が過電圧検出レベルに達する過電圧検出期間繰り返される。
実施形態1では、ツェナー電圧のばらつきや温度特性により、過電圧制限レベルが変動するので、その変動幅を見込んだ耐電圧性能を持つ自己消弧型素子を使用する必要があるが、本実施形態3によれば、端子部T1,T2間の電圧を精度良く過電圧制限レベルに抑えることができるので、より耐電圧の低いより低価格な自己消弧型素子を使用することができるととともに、自己消弧型素子の発熱を抑えることができる。
(実施形態4)
図21は本発明による実施形態4の電子スイッチの構成図、図22は同電子スイッチの過電流時の動作波形図である。
本実施形態4の電子スイッチは、図21に示すように、スイッチ回路部2と、整流回路部3と、内部電源回路部4と、過電圧検出回路部6と、過電圧保護回路部8と、制御回路部10とを実施形態1から3のいずれか(図21の例では実施形態1)と同様に備えているほか、実施形態1とは相違する、過電流検出回路部5と、過電流保護回路部7と、オフ保持回路部9とを備えている。
過電流検出回路部5は、一対の端子部T1,T2間に流れる電流を電圧に変換するものであって抵抗(シャント抵抗)R51,R52およびダイオードD53,D54により構成される電流電圧変換器と、この電流電圧変換器で変換された電圧が過電流検出レベルに相当する電圧(基準電圧)に達したきに、過電流検出レベルに達したとの検出結果を示す信号を出力する比較器50とを備えている。つまり、過電流検出回路部5の出力側は、オープンコレクタ型出力の比較器50および抵抗R53,R54により構成され、一対の端子部T1,T2間に流れる電流が過電流検出レベルに達すると、ローレベルの信号を出力する一方、そうでなければハイレベルの信号を出力するようになっている。
過電流保護回路部7およびオフ保持回路部9は、オープンコレクタ型出力の比較器70を共用する構成になっている。比較器70は、過電流検出回路部5からの信号を一方(図では非反転入力端子)の入力とし、過電流検出レベルに達したとの検出結果を示す信号が出力される場合に、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子への位相制御信号を引き抜き保持し、位相制御信号をもう一方(図では反転入力端子)の入力とし、位相制御信号が停止した場合に、オフ保持回路部9としての上記位相制御信号の引き抜き保持の動作を停止するように、出力端子が一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子側に接続されている。
つまり、過電流保護回路部7は、ダイオードD7および比較器70により構成され、図22に示すように、比較器50の出力がローレベルとなる場合にローレベルの信号を自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子側に出力するようになっている。一方、オフ保持回路部9は、比較器70および抵抗R91〜R94により構成され、比較器50の出力がローレベルからハイレベルとなる場合に、制御回路部10からの位相制御信号を抵抗R93,R94で分圧した反転入力端子の電圧レベルよりも低いハイレベルとなる信号が非反転入力端子に入力することにより、位相制御信号がローレベルとなるまで、比較器70の出力をローレベルに保持するようになっている。比較器70の非反転入力端子には、内部電源回路部4による内部電源を抵抗R91,R92で分圧した電圧により、上記ハイレベルとなる信号が入力する。つまり、抵抗R91,R92は、上記ハイレベルとなる信号が、上記比較器70の反転入力端子への電圧レベルよりも低くなるように設定される。
次に本実施形態4の特徴となる動作について説明する。図22に示すように、過電流検出レベルに達するような過電流が発生し、端子部T1,T2間を流れる電流が過電流検出レベルに達すると(t20)、過電流検出レベルに達している間の過電流検出期間TM1、過電流検出回路部5の比較器50の出力がローレベルになり、過電流保護回路部7の比較器70の出力がローレベルになる。
比較器70の出力がローレベルになると、自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子への位相制御信号が引き抜かれ、各ゲート電圧が降下し始める。そして、ゲート電圧が降下するにつれ、端子部T1,T2間電圧が上昇する。この後、過電流が上昇から下降に転ずると、端子部T1,T2間電圧が交流電源ACよりも上昇する。これにより、端子部T1,T2間電圧が過電圧検出レベル(過電圧制限レベル)に達すると、過電圧検出レベルに達する間の過電圧検出期間、ツェナーダイオードZD6が導通、非導通を繰り返し、端子部T1,T2間電圧が過電圧制限レベルに抑制される。そして、過電圧検出期間が終了すると、端子部T1,T2間電圧は交流電源ACのレベルに落ち着く。
一方、過電流が減少していく途中で過電流検出レベルを下回ると(t21)、比較器50から比較器70の非反転入力端子に入力する信号がハイレベルとなるが、比較器70の反転入力端子に入力する位相制御信号のハイレベルよりも低いので、比較器70の出力はローレベルに保持され、位相制御信号がローレベルになった時点t22で、ハイレベルに切り替わる。
本実施形態4によれば、過電流検出回路部5を電流電圧変換器および比較器50で構成したので、一対の端子部T1,T2間を流れる電流が過電流検出レベルに達したか否かの検出精度を良くすることができる。これにより、より耐電流の低いより低価格な自己消弧型素子を使用することができるととともに、自己消弧型素子の発熱を抑えることができる。
また、フォトサイリスタカプラを使用する構成では、フォトサイリスタPS7の応答速度が遅いためすぐにオン状態に移行することができないのに対し、本実施形態4によれば、過電流検出回路部5はすぐに出力ロー状態に移行することができる。
また、フォトサイリスタカプラを使用する構成では、各発光ダイオードの発光タイミングに個体差があり、フォトサイリスタPS7のトリガに必要な光量もばらつき、そのばらつきが周囲温度の影響を受けるのに対し、本実施形態4によれば、基準電圧を用いることにより、ばらつきを抑えた正確な動作が可能となる。
さらに、過電流保護回路部7およびオフ保持回路部9を比較器70等で簡単に構成することができ、小型化が可能となる。
(実施形態5)
図23は本発明による実施形態5の電子スイッチの構成図である。
本実施形態5の電子スイッチは、実施形態4との相違点として、図23に示すように、過電流保護回路部7が、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子側とグランドとの間に介設されるPNP型のトランジスタTr7を含み、このトランジスタTr7の制御端子(ベース)の側に自己の比較器70の出力端子が接続されている構成になっている。より具体的には、ダイオードD7および抵抗R8間に、トランジスタTr7が介設され、トランジスタTr7のエミッタおよびベースがダイオードD7のカソードおよび抵抗R74にそれぞれ接続されている。そして、トランジスタTr7のコレクタとグランドとの間に上記抵抗R8が設けられている。
実施形態4では、位相制御信号が比較器70の出力で直接引き抜かれるが、比較器70がIC構成である場合、通電容量に限りがあるため、自己消弧型素子Q21,Q22のゲート端子における比較的大きな静電容量により、ゲート電流を急速に引き抜くことができず、瞬時に電流遮断動作に移行できない。
これに対して、本実施形態5によれば、トランジスタTr7を設けたことにより、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子への位相制御信号を引き抜く応答性を良くすることができるので、負荷短絡等でのより立ち上がりの速い過電流に対して、小さい電流値に制限して電流遮断ができ、より小型の安価な自己消弧型素子を使用することができる。
(実施形態6)
図24は本発明による実施形態6の電子スイッチの構成図、図25はインダクタンスと過電流耐量との関係を示す図である。
本実施形態6の電子スイッチは、図24に示すように、実施形態4,5(図24の例では実施形態5)との相違点として、過電流検出回路部5が、自己の電流電圧変換器および比較器50間に、自己の電流電圧変換器で変換された電圧を微分する微分回路部を含むことを特徴とする。この微分回路部は、抵抗R53と、この抵抗R53および比較器50の反転入力端子の接続点と電流電圧変換器の出力(ダイオードD53,D54の両カソード)との間に介設される抵抗R55と、これに並列に接続されるコンデンサC5とにより構成されている。
ここで、交流電源ACのゼロクロスで自己消弧型素子Q21,Q22をオンした場合の突入電流は、交流電源ACの上昇に応じて増加していく。交流電源ACの周波数は一般的に50Hzまたは60Hzであるため、突入電流の立ち上がりは比較的遅くなるので、交流電源ACおよびそれへの配線ケーブルのインダクタンスが変わったとしても、一定の電流値で過電流を遮断することができる。
しかし、図25に示すように、インダクタンスが小さいと過電流の立ち上がりが速くなるので、自己消弧型素子Q21,Q22に対して、ゲートの静電容量により電流引き抜きに時間がかかると、自己消弧型素子Q21,Q22のオン時に、交流電源ACの電圧が高い状態で、電球切れや負荷短絡で過電流が発生した場合に、過電流が大きくなりすぎる問題がある。
本実施形態6によれば、インダクタンスが小さい場合に、立ち上がりが急速な過電流が発生したとしても、微分回路部を設けたことにより、まだ過電流の小さい時点で過電流と判定することができるので、ゲート電流の引き抜きによる動作遅れを補うことができ、過電流が大きくなりすぎることを防止することができる。これにより、自己消弧型素子Q21,Q22を過電流から好適に保護することができる。
(実施形態7)
図26は本発明による実施形態7の電子スイッチの構成図である。
本実施形態7の電子スイッチは、図26に示すように、実施形態1〜6(図26の例では実施形態6)との相違点として、所定の単位時間に、過電流検出回路部5で過電流検出レベルに達したとの検出結果が得られた回数を計数する計数手段(図示せず)を制御回路部10内に備え、この計数手段で計数された単位時間当たりの回数が所定回数に達した場合に、制御回路部10が、一対の自己消弧型素子Q21,Q22の両制御端子に対する位相制御信号の出力を停止することを特徴とする。図では、ダイオードD7のアノードの電圧(自己消弧型素子のゲート電圧の低下)を監視することにより、上記回数を計数するようになっている。
本実施形態7によれば、単位時間当たりの回数が所定回数に達した場合、何らかの故障が発生したとみなせるので、その場合に位相制御信号の出力を停止することにより、何らかの故障が発生したとみなせる状態で電子スイッチが動作するのを防止することができるほか、消費電力を低減することが可能となる。
(実施形態8)
図27は本発明による実施形態8の電子スイッチの構成図(a)および同電子スイッチ内の制御回路部の一例としての構成図(b)、図28は同電子スイッチの動作波形図である。
ここで、負荷LDが照明器具である場合において、負荷LDの最大点灯時には、図28に示すわずかな「最大点灯時自己消弧型素子電圧」しか自己消弧型素子(端子部T1,T2間)に印加しない。最小点灯時には、図28に示す高めの「最小点灯時自己消弧型素子電圧」が自己消弧型素子(端子部T1,T2間)に印加するので、端子部T1,T2間の電圧を整流して出力するダイオードブリッジDBの出力電圧が高くなり、この高くなった電圧が内部電源回路部4に印加することになる。
自己消弧型素子Q21,Q22のオン期間TM3の例えば終了間際においても、わずかな「最大点灯時自己消弧型素子電圧」を利用してより多くの電力を確保するように内部電源回路部4を動作させる場合、上記のように「最小点灯時自己消弧型素子電圧」が「最大点灯時自己消弧型素子電圧」に比べて高くなり過ぎると、内部電源回路部4内の素子(後述のトランジスタTr4)の温度がより上昇し、より一層の発熱対策等が必要となる。しかし、電子スイッチは、寸法の制限を受けるため、図2に示した放熱板16を大きくするにも限度がある。
本実施形態8の電子スイッチは、図27に示すように、実施形態1〜7(図27の例では実施形態7)との相違点として、ダイオードブリッジDBの両直流出力端子間からの直流電圧を安定化して内部電源を生成する内部電源回路部4に対して、制御回路部10が、間欠動作をさせることにより、上記発熱の対策をとるようになっている。
内部電源回路部4は、アノード接地のツェナーダイオードZD4と、抵抗R41と、これを介してダイオードブリッジDBの正極性直流出力端子に一端(コレクタ)が接続されるとともに、ツェナーダイオードZD4を介してダイオードブリッジDBの負極性直流出力端子に制御端子(ベース)が接続されるトランジスタTr4と、このコレクタ・ベース間に接続される抵抗R42と、トランジスタTr4の他端(エミッタ)と制御端子側との間に接続される平滑コンデンサC4とにより構成されている。なお、トランジスタTr4は、バイポーラ型に限らず、例えばBi−CMOS型でもよい。
制御回路部10は、例えばマルチバイブレータ100a,100bを2個内蔵するCMOS−ICにより構成される制御部100などを備えるほか、内部電源回路部4のトランジスタTr4の制御端子とダイオードブリッジDBの負極性直流出力端子との間に接続される間欠動作用のスイッチ素子(図ではトランジスタ)Tr10と、このベースと一方のマルチバイブレータ100aの出力との間に介設される抵抗R10とを備えている。
制御部100において、マルチバイブレータ100aは、図28に示すように、他方のマルチバイブレータ100bから出力される先述の位相制御信号により一対の自己消弧型素子Q21,Q22をオンしている期間TM3の一部の期間TM4において、スイッチ素子Tr10をオンにする一方、その一部の期間外の期間TM5において、スイッチ素子Tr10をオフにする。
本実施形態8によれば、例えば、負荷LDが照明器具である場合のその調光下限点灯時に、一対の端子部T1,T2間の電圧が高くなってダイオードブリッジDBの両直流出力端子間の電圧が高くなったとしても、一対の端子部T1,T2間の電圧が高くなる期間TM3の一部の期間TM4において、内部電源回路4のトランジスタTr4の動作が停止するので、トランジスタTr4の発熱を抑えることができる。
以上、本発明を詳細にその最も好ましい幾つかの実施形態によって説明したが、本発明は、それらの好ましい実施形態についての各構成要件の組合せおよび配列に限定されるものではないほか、それら実施形態についての各構成要件の組合せおよび配列は、本発明の精神および範囲に反することなく種々変更することができるものである。