JP3841623B2 - 電力増幅器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信等に用いられる送信用の電力増幅器に関し、特に、電力増幅用半導体素子とチップ部品とを用いた高周波電力増幅回路から構成される電力増幅モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、移動体通信システムの送信部に多く用いられている電力増幅モジュールは、マイクロストリップ線路等の配線パターンが形成されたプリント基板上に、例えばGaAs電界効果型トランジスタ(以下、FETと記す)等の電力増幅用半導体素子と、抵抗や容量等のチップ部品とが実装された電力増幅器である。この電力増幅器は、送信部に必要とされる送信出力を得るために、複数のFETが多段に接続されて構成されるが、小型化や調整の簡略化のためにはFETを2〜3段接続した構成のモジュール化への需要が高い。電力増幅モジュールとしての特性ばらつきを抑えるためには、FETのバイアス調整を精度良く行うことが重要である。
【0003】
一般に、FETには部品ばらつきとして、ある一定の電流を流すために必要なバイアス電圧にばらつきがあり、このため、個々のFETに対して動作点が一定になるようにバイアスを調整していく必要がある。尚、通常は、RF信号未入力時のドレイン電流を「アイドル電流」として規定する。また、アイドル電流を所望の電流値に設定するためのゲートバイアス電圧を以下の説明ではVopと記して説明する。
【0004】
従来の電力増幅器のバイアス回路の例を図8及び図9に示す。図8は特開2000−31753号公報に開示された従来の電力増幅器の一例を示す。同図において、FET20のゲートバイアス回路25は抵抗器30、31から構成されており、抵抗器30、31の抵抗値を調整することにより、電源供給端子Vgg1に供給された電圧を分圧して、FET1に所望のゲートバイアス電圧を供給する。同様に、FET21のゲートバイアス回路26は、抵抗器32、33から構成されており、抵抗器32、33の抵抗値を調整することにより、電源供給端子Vgg2に供給された電圧を分圧して、FET21に所望のゲートバイアス電圧を供給する。
【0005】
図9は、特開平8−125465号に開示された従来の携帯電話の端末に使用される電力増幅器を示す。同図において、FET22のゲートバイアス回路27には、4個の抵抗41、42、43、44が直列に接続されている。この抵抗中、抵抗44は、レギュレーターを介して供給される外部バイアス−Vgの電圧ばらつきを調整するための抵抗である。また、抵抗42はダンピング用の抵抗であり、その抵抗値は100Ω程度と小さい。従って、このバイアス回路27では、個々のFETのバイアス電圧Vopのばらつきに対して、FET22に印加されるゲートバイアス電圧Vgsを調整する抵抗は、2個の抵抗41、43となっており、バイアス調整のための基本的な構成は、図8の従来例と同一である。
【0006】
電力増幅モジュールでの抵抗値の調整方法としては、第1の方法として、予めFETのゲートバイアスに応じてランク分類を行う方法がある。この方法では、FETを実装前の検査段階において、所望のアイドル電流が得られるゲート電圧Vopを測定する。例えば、ドレイン電流が1.0Aとなる時のゲート電圧をVopとして測定する。このVopにより、−1.00V ≧ Vop>−1.05Vの場合をAランク、−1.05V ≧ Vop>−1.10Vの場合をBランクというように、Vopの値に応じてFETをランク分類しておく。モジュールの組み立て時に前記ランクに従ってAランクは1.0kΩと1.0kΩ、Bランクは1.0kΩと1.1kΩというように、抵抗値の組合せを変更して実装し、所望の電流値になるように電流調整する。
【0007】
また、第2の方法として、トリミング抵抗による調整方法がある。この方法では、レーザートリミング等を用いた抵抗器のパターンカットにより抵抗値の調整が可能なトリマブルチップ抵抗器を用いて、予めバイアス回路を構成しておく。そして、FETの実装後、バイアス電圧を印加して、実際にFETを動作させ、ドレイン電流をモニターしながら、所望の電流値が得られるようにレーザートリミングにより抵抗値を調整して、ゲート電圧を制御する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の回路構成では、何れの抵抗調整方法においても、バイアス調整の精度が低いという問題があった。即ち、第1の方法として例に挙げたランク分けによる調整方法の場合では、バイアス調整の精度を良くするためには、ランクを細分化するしかなく、細分化されたランクに対してバイアス電圧を実現するためには、抵抗値の種類を増やすことが必要になる。しかし、実際の抵抗器は抵抗値の種類に限りがあるため、ランクの細分化も限度がある。また、第2の方法であるトリミング抵抗による調整においても、トリミング量と抵抗値の変化量との関係は一定ではなく、抵抗値が大きくなるに従い同一のトリミング量に対して抵抗値の変化量は大きくなるため、バイアス調整精度は低下する。
【0009】
また、前記従来の回路構成では、個々のFETのゲートバイアス電圧の調整に起因して、電力増幅モジュールの特性ばらつきが大きくなってしまうという問題が生じる。この問題は、近年急速に拡大しつつある移動体通信システムにおいては、重大な問題である。すなわち、移動体通信システムでは、高速化及び大容量化の要望が今後も強くなって行き、これに伴いシステムのキーデバイスの一つである電力増幅器に対しても性能の向上が求められ、特に、基地局装置に使用されるデバイスに対しては益々高出力化、低歪み化が要求される。将来サービス開始が予定されているW−CDMA基地局のような装置においては、送信系の増幅器として極めて直線性の高い増幅器が必要であり、これ等の装置においてはデバイス単独で特性を満足することはできず、何らかの歪み補償が不可欠である。図10はフィードフォワード方式といわれる歪み補償回路を示し、主信号を増幅する主増幅系と、歪み成分を検出して増幅する補助増幅系との2種の増幅系を備えており、歪み成分を再び主増幅系の出力に注入して歪みを相殺することにより、歪み補償を行う回路である。この方式の歪み補償量は、2つの増幅系の利得偏差、位相偏差により支配されており、実用的な20dB程度以上の歪み改善を行うには、例えば100MHzの帯域内において利得偏差、位相偏差とも各々±0.2dB、±2°以内というレベルの性能が要求される。従って、図10のような増幅器において、主増幅系及び副増幅系の一部の回路12、12をモジュール化しようとする場合、これ等のモジュールに対して、±0.1dB、±1°という非常に厳しい特性偏差が要求される。このような用途においては、図8及び図9に示した従来の回路構成では、バイアス回路での各抵抗値を調整した際の電力増幅器の特性変動が大きな問題となってくる。尚、図10において、13は遅延回路、14は方向性結合器である。
【0010】
更に、バイアス回路の各抵抗値を大きく設定した場合には、FETのゲート電流が変動した際に、バイアス抵抗での電圧降下によるバイアス変動が大きくなってしまうため、FETの熱暴走を引き起こし易くなる。従って、温度特性も考慮した場合、抵抗値を大きく設定することは、熱暴走に対する安定性の低下を引き起こすことになる。基地局のように増幅器の出力が大きいほどこの問題は顕著になる。
【0011】
本発明の目的は、前記問題点に鑑み、電力増幅器において、内部トランジスタのバイアス調整の精度を上げ、更に電力増幅器の特性ばらつきを有効に抑え、且つ温度特性の安定した電力増幅器を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明では、電力増幅器に内蔵するトランジスタのバイアス回路において、電力増幅器の特性ばらつきを抑制するための抵抗器と、バイアス調整用の抵抗器との2つの作用の異なる抵抗器を設ける。
【0013】
具体的に、請求項1記載の発明の電力増幅器は、入力端子に受けた高周波信号を増幅して出力するトランジスタと、外部から電源供給を受ける電源供給端子と、前記電源供給端子と接地との間に配置され、複数の抵抗器を有して抵抗分圧により前記トランジスタの入力端子にバイアス電圧を供給するバイアス回路とを備え、前記バイアス回路は、一端が前記トランジスタの入力端子にマイクロストリップ線路を介して接続された第1の抵抗器と、一端が前記第1の抵抗器の他端に接続された第2の抵抗器と、一端が前記トランジスタの入力端子に接続された第3の抵抗器とを備え、前記バイアス電圧は、前記第1の抵抗器と前記第2の抵抗器との合成抵抗と、前記第3の抵抗器とから、前記電源供給端子からの電圧値が抵抗分圧されて得られた電圧であり、前記第1の抵抗器は、前記マイクロストリップ線路の特性インピーダンスよりも2倍以上の大きな抵抗値を有し、前記第2の抵抗器は、前記第1の抵抗器の抵抗値よりも小さい抵抗値を有し、前記トランジスタの特性ばらつきに応じて抵抗値が調整される抵抗器であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の電力増幅器において、前記バイアス回路において、前記第2の抵抗器の他端は接地され、前記第3の抵抗器は、前記電源供給端子と前記トランジスタの入力端子との間に接続されていることを特徴とする。
【0015】
更に、請求項3記載の発明は、前記請求項1記載の電力増幅器において、前記バイアス回路において、前記第2の抵抗器の他端は前記電源供給端子に接続され、前記第3の抵抗器は、前記トランジスタの入力端子と接地との間に接続されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、前記請求項1記載の電力増幅器において、前記バイアス回路において、前記第2の抵抗器の他端は接地され、前記第3の抵抗器は、一端が前記トランジスタの入力端子に他のマイクロストリップ線路を介して接続され、一端が前記第3の抵抗器の他端に接続され、他端が前記電源供給端子に接続された第4の抵抗器を更に備え、前記第3の抵抗器は、前記他のマイクロストリップ線路の特性インピーダンスよりも2倍以上の大きな抵抗値を有し、前記第4の抵抗器は、前記第3の抵抗器の抵抗値よりも小さい抵抗値を有し、前記第2の抵抗器と前記第4の抵抗器とは、前記トランジスタの特性ばらつきに応じて抵抗値が調整される抵抗器であることを特徴とする。
【0017】
加えて、請求項5記載の発明は、前記請求項1記載の電力増幅器において、前記トランジスタは、電界効果型トランジスタであることを特徴とする。
【0018】
以上により、請求項1−5記載の発明では、トランジスタの入力端子にマイクロストリップ線路を介して接続された抵抗器と、この抵抗器に接続された抵抗器との2つの抵抗器を持ち、前者の抵抗器の抵抗値が前記マイクロストリップ線路の特性インピーダンスよりも大きな値に設定されており、この設定により、前記トランジスタのバイアス調整の際に、後者の抵抗器の抵抗値を変化させても、この抵抗値の変化は、前記トランジスタの入力端子から高周波信号の入力側を見た低周波領域及び高周波領域でのインピーダンスに影響を与えない。従って、電力増幅器の特性ばらつきを有効に抑えながら、前記トランジスタのバイアス調整を行うことが可能である。この場合、後者の抵抗器の抵抗値を小さく設定できるので、その抵抗値の微細調整により前記トランジスタのバイアス調整の精度を上げることが可能である。しかも、この両抵抗器の合成抵抗値を低く抑えることができるので、バイアス回路において抵抗分圧を行う全抵抗器の抵抗値を低く設定でき、従って温度特性が安定してトランジスタの熱暴走を有効に防止できる電力増幅器が得られる。
【0019】
また、請求項1及び4記載の発明では、マイクロストリップ線路に接続された抵抗器の抵抗値が、前記マイクロストリップ線路の特性インピーダンスよりも2倍以上の大きな値であるので、トランジスタのバイアス調整を行っても、電力増幅器の特性ばらつきを一層有効に抑えながら、トランジスタのバイアス調整を行うことが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の電力増幅モジュールの要部構成を示す。同図において、6は電力増幅用半導体素子であるFET(トランジスタ)であって、ゲート端子7と、出力端子であるドレイン端子8と、接地されたソース端子9とを備える。前記ゲート端子7は高周波信号を受ける入力端子であり、FET6は前記ゲート端子7に受けた高周波信号を増幅してドレイン端子8から出力する。10は外部から電圧Vggの電源供給を受ける電源供給端子、11はバイアス回路であって、前記電源供給端子10と接地との間に配置されると共に3個の抵抗器1、2、3を持つ。
【0021】
前記FET6は図示しないプリント基板に形成される。また、前記バイアス回路11の抵抗器1〜3はチップ部品であって、前記基板に実装される。前記基板には、前記FET6と基板に実装されたチップ部品とを接続するマイクロストリップ線路5が形成される。
【0022】
前記バイアス回路11において、第1の抵抗器1は、一端が前記基板上のマイクロストリップ線路5を介してFET6のゲート端子7に接続され、他端が第2の抵抗器2の一端に接続され、第2の抵抗器2の他端は接地される。。
【0023】
本実施の形態の特徴的な構成は、ゲート端子と接地との間に第1及び第2の抵抗器1、2を直列接続し、この両抵抗器1、2のうち、FET6のゲート端子7にマイクロストリップ線路5を介して接続された第1の抵抗器1の抵抗値を、前記マイクロストリップ線路5の特性インピーダンスに応じた特殊の抵抗値に設定し、FET6の特性ばらつきに対しては第2の抵抗器2を用いてバイアス調整を行うように構成する点にある。以下、この構成を詳述する。
【0024】
FET6のゲート端子7に与えられる電圧は、第1〜第3の抵抗器1〜3の抵抗値R1〜R3の組合せにより、
Vgg×(R1+R2)/(R1+R2+R3)
で決定される。例えば、Vgg=−2Vのとき、ゲート端子7に−1V程度のゲートバイアスを設定したい場合には、R3=1kΩで固定すると、第1及び第2の抵抗器1、2の抵抗値R1、R2の合成抵抗値として1kΩが必要となる。実際のFETにおいてゲートバイアスの設定精度が電流ばらつきにどの程度影響を与えるかを図2に示す。図2は、出力10WクラスのFETのVgs−Ids特性を示す。Ids=1Aに設定したとき、Vgsの精度が0.05V程度ばらつくと、電流Idsは0.5A程度ばらつく。電流ばらつきを0.1A以下に抑えるには、0.01V以下の精度でバイアス設定を行う必要がある。第1〜第3の抵抗器1〜3として下記表に示すような抵抗シリーズを用いた場合、調整可能な電圧設定を図3に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
ここで、第3の抵抗器3の抵抗値R3は1kΩで固定とし、第1及び第2の抵抗器1、2の抵抗値R1又はR2のみで調整を行うとする。FET6のゲート端子7と接地との間の抵抗器が1個の抵抗器のみで構成される場合には、約0.05V間隔でしか調整できないのに対し、第1及び第2の抵抗器1、2の合成抵抗とすることにより、0.01V以下での調整が可能となる。
【0027】
本実施の形態の特徴点は、第1及び第2の抵抗器1、2の直列抵抗の組合せにおいて、FET6のゲート端子7から高周波信号の入力側を見たインピーダンスが全周波数域で変動しないように、ゲート端子7に接続される第1の抵抗器1の抵抗値R1を十分大きな抵抗値とすると共に、接地側の第2の抵抗器2を用いてFET6のバイアス調整を微細に行う点にある。このように第1及び第2の抵抗器1、2の抵抗値R1、R2を限定した理由を図4を用いて以下に詳細に説明する。
【0028】
図4は、3段構成の電力増幅モジュールを例に挙げ、バイアス回路11内の抵抗器の抵抗値の組合せに応じた高周波特性の変化の相違を示す。ここでは最終段のFETのバイアス回路でのみ各抵抗器の抵抗値の組合せを変化させて、利得の周波数特性の変動を比較した。ゲートバイアス回路としては図1に示すバイアス回路11の構成を用いた。電源供給端子10にはVgg=−2.1Vが供給され、第3の抵抗器3の抵抗値R3を1.3kΩで固定にし、第1及び第2の抵抗器1、2の合成抵抗値が1.55kΩで一定になるようにその各抵抗値R1、R2の値の組合せを変化させた。このような条件において、FET6のゲート端子7には常に約1.09Vが印加されており、バイアス状態は一定に保たれているにも拘わらず、高周波特性は図4に示すように各抵抗値R1、R2の組合せにより差が見られた。第1の抵抗器1の抵抗値R1が小さい場合には、その抵抗値R1を150Ωから51Ωへ変化させただけで、2200MHz付近で利得の盛り上りが見られ、利得の変化量も大きい。一方、第1の抵抗器1の抵抗値R1を1.4〜1.5kΩと大きく設定し、第2の抵抗器2の抵抗値R2を51Ωから150Ωへ変化させた場合には、周波数特性にほとんど変化は見られず、利得の平坦性は維持されたままであった。そこで、更に詳細に抵抗値依存性を検討した結果を図5に示す。
【0029】
図5は、横軸が第1の抵抗器1の抵抗値R1を示しており、縦軸が2100MHz及び2200MHzでの利得を示している。第1及び第2の抵抗器1、2の合成抵抗値は、1.55kΩで一定になるようにして、その抵抗値R1、R2の組合せを変更しているが、第1の抵抗器1の抵抗値R1が200Ω以下では、利得の変化が大きく、抵抗値R1がある程度大きくなるに従って利得の変化はなくなり、一定となる。これは、直流的にみた場合には、FETのゲート端子と接地との間には1.55kΩが接続されており、バイアス条件は一定に保持されているが、2GHz帯での高周波的なインピーダンスを考えた場合には、第1の抵抗器1の抵抗値R1が小さいと、FETのゲート端子から高周波信号の入力側を見たインピーダンスが変動することを示している。実際のモジュールでのバイアス回路は、図1に示した基板上のマイクロストリップ線路5によって、FET6と第1の抵抗器(チップ部品)1とが接続されており、第1及び第2の抵抗器1、2の合成抵抗値として同一値であっても、各抵抗値R1、R2の組合せにより、FET6のゲート端子7から高周波信号の入力側を見たインピーダンスは各抵抗値R1、R2の変化の影響を受けてしまう。図4及び図5の検討に用いたモジュールでは、マイクロストリップ線路5の線路幅を0.1mm、その特性インピーダンスを140Ωとした。このマイクロストリップ線路5の特性インピーダンスと比較して第1の抵抗器1の抵抗値R1を見た場合、抵抗値R1が140Ω未満では利得の変化が大きく、140Ω以上大きくなると、徐々に抵抗値R1の変化の影響は無くなってくる。抵抗値R1の変化の影響を完全に無視し得るためには、300Ω程度より大きな抵抗値R1が必要となる。
【0030】
従って、第1の抵抗器1の抵抗値R1としては、マイクロストリップ線路5の特性インピーダンス以上の値、好ましくは特性インピーダンスの2倍以上の抵抗値を有することが良い。このように第1の抵抗器1の抵抗値R1をマイクロストリップ線路5の特性インピーダンス以上の大きな値とすることにより、第2の抵抗器2の抵抗値R2は特性インピーダンスよりも小さい抵抗値であっても利得の変化はみられず、第2の抵抗器2の抵抗値R2の抵抗値の変化は無視できる。従って、FET6の特性ばらつきに対しては、第2の抵抗器2の抵抗値R2を調整してバイアス調整することにより、FET6の信号入力側を見た高周波域でのインピーダンスに影響を与えずにバイアス調整が可能となる。このとき、第2の抵抗器2はFET6の信号入力側を見たインピーダンスに影響を与えないので、その抵抗値R2を第1の抵抗器1の抵抗値R1よりも小さく設定できる。従って、FET6のバイアス調整の精度を上げることが可能である。しかも、第1及び第2の抵抗器1、2の合成抵抗値も低く抑えられる。従って、第3の抵抗器3の抵抗値R3も数kΩ以下で設定が可能であり、FET6の熱暴走に対する安定性を損なうこともない。
【0031】
尚、第1及び第2の抵抗器1、2を固定抵抗器として検討した結果を例に説明したが、第2の抵抗器2にトリマブル抵抗器を用いれば、更にバイアス調整の簡略化と調整精度の向上を図ることができる。
【0032】
以上のように、本実施の形態によれば、抵抗分圧を用いたバイアス回路において、FETのゲート端子と接地間に第1及び第2の抵抗器を直列に設け、FETに接続された第1の抵抗器を、接続されるマイクロストリップ線路の特性インピーダンス以上の大きな抵抗値とすることにより、第2の抵抗器2の抵抗値R2を調整しても、FET6の信号入力側を見たインピーダンスに影響を与えない。従って、第2の抵抗器2の抵抗値R2を小さく設定して、FET6のバイアス調整を精度良く行うことが可能であり、また各抵抗値R1〜R3を小さく設定できるので、熱暴走し難く、高出力動作でも安定性を損なうことはない。
【0033】
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態の電力増幅器の構成を示す。同図の電力増幅器のバイアス回路11’では、FET6のゲート端子7と電源供給端子10との間に第1及び第2の抵抗器1、2を直列に接続し、第1の抵抗器1をマイクロストリップ線路5を介してFET6のゲート端子7に接続し、第2の抵抗器2を電源供給端子10に接続している。また、第3の抵抗器3はFET6のゲート端子7と接地との間に配置している。
【0034】
本実施の形態においても、第1の抵抗器1の抵抗値は、前記第1の実施の形態と同様に、マイクロストリップ線路5の特性インピーダンス以上の大きな値、好ましくは特性インピーダンスの2倍以上の大きな抵抗値に設定される。また、第2の抵抗器2の抵抗値R2は第1の抵抗器1の抵抗値R1よりも小さく設定される。
【0035】
従って、本実施の形態も、前記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0036】
(第3の実施の形態)
図7は本発明の第3の実施の形態の電力増幅器の構成を示す。同図の電力増幅器のバイアス回路11''は、第1及び第2の実施の形態のバイアス回路11、11’を組み合わせた構成を持つ。即ち、FET6のゲート端子7と接地との間に第1及び第2の抵抗器1、2を直列に接続し、第1の抵抗器1をマイクロストリップ線路5を介してFET6のゲート端子7に接続し、第2の抵抗器2を接地している。また、FET6のゲート端子7と電源供給端子10との間に第3及び第4の抵抗器3、4を直列に接続し、第3の抵抗器3を他のマイクロストリップ線路5を介してFET6のゲート端子7に接続し、第4の抵抗器4を電源供給端子10に接続している。
【0037】
本実施の形態においても、第1の抵抗器1の抵抗値はマイクロストリップ線路5の特性インピーダンス以上の大きな値、好ましくは特性インピーダンスの2倍以上の大きな抵抗値に設定され、第3の抵抗器3の抵抗値は他のマイクロストリップ線路5の特性インピーダンス以上の大きな値、好ましくは特性インピーダンスの2倍以上の大きな抵抗値に設定される。また、第2の抵抗器2の抵抗値R2は第1の抵抗器1の抵抗値R1よりも小さく設定され、第4の抵抗器4の抵抗値R4は第3の抵抗器3の抵抗値R3よりも小さく設定される。
【0038】
尚、以上の説明では、1個のFET6を持つ電力増幅器を説明したが、本発明は電力増幅用トランジスタを複数個備えて電力を複数段増幅する電力増幅器に対しても適用できるのは勿論である。この場合には、各電力増幅用トランジスタのバイアス回路に対して図1、図6又は図7の構成を採用すればよい。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1−5記載の発明の電力増幅器によれば、電力増幅器の特性ばらつきを有効に抑えながら、しかもトランジスタの熱暴走を招かずに温度特性が安定した電力増幅器としつつ、内蔵トランジスタのバイアス調整を精度良く行うことが可能である。
【0040】
また、請求項1及び4記載の発明の電力増幅器によれば、電力増幅器の特性ばらつきを一層有効に抑えながら、トランジスタのバイアス調整を精度良く行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態の電力増幅モジュールの構成を示す図である。
【図2】 同電力増幅モジュールに備えるFETのゲートバイアス電圧Vgsとドレイン電流Idsとの関係を示す図である。
【図3】 複数の抵抗器の抵抗値の組合せにより実現可能なゲートバイアス電圧Vgsとその設定間隔ΔVgsとの関係を示す図である。
【図4】 第1の実施の形態において複数の抵抗器の抵抗値の組合せをパラメータとする電力増幅モジュールの周波数特性を示す図である。
【図5】 同電力増幅モジュールの利得の抵抗値依存性を示す図である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態の電力増幅モジュールの構成を示す図である。
【図7】 本発明の第3の実施の形態の電力増幅モジュールの構成を示す図である。
【図8】 従来の電力増幅モジュールの構成を示す図である。
【図9】 従来の他の電力増幅モジュールの構成を示す図である。
【図10】 歪補償回路と本発明の電力増幅器との位置関係を示す図である。
【符号の説明】
1 第1の抵抗器
2 第2の抵抗器
3 第3の抵抗器
4 第4の抵抗器
5 マイクロストリップ線路
6 FET(トランジスタ)
7 FETのゲート端子
8 FETのドレイン端子
9 FETのソース端子
10 電源供給供給端子
11、11’、11'' バイアス回路
Claims (5)
- 入力端子に受けた高周波信号を増幅して出力するトランジスタと、
外部から電源供給を受ける電源供給端子と、
前記電源供給端子と接地との間に配置され、複数の抵抗器を有して抵抗分圧により前記トランジスタの入力端子にバイアス電圧を供給するバイアス回路とを備え、
前記バイアス回路は、
一端が前記トランジスタの入力端子にマイクロストリップ線路を介して接続された第1の抵抗器と、
一端が前記第1の抵抗器の他端に接続された第2の抵抗器と、
一端が前記トランジスタの入力端子に接続された第3の抵抗器とを備え、
前記バイアス電圧は、前記第1の抵抗器と前記第2の抵抗器との合成抵抗と、前記第3の抵抗器とから、前記電源供給端子からの電圧値が抵抗分圧されて得られた電圧であり、
前記第1の抵抗器は、前記マイクロストリップ線路の特性インピーダンスよりも2倍以上の大きな抵抗値を有し、
前記第2の抵抗器は、前記第1の抵抗器の抵抗値よりも小さい抵抗値を有し、前記トランジスタの特性ばらつきに応じて抵抗値が調整される抵抗器である
ことを特徴とする電力増幅器。 - 前記バイアス回路において、前記第2の抵抗器の他端は接地され、
前記第3の抵抗器は、前記電源供給端子と前記トランジスタの入力端子との間に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。 - 前記バイアス回路において、前記第2の抵抗器の他端は前記電源供給端子に接続され、
前記第3の抵抗器は、前記トランジスタの入力端子と接地との間に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。 - 前記バイアス回路において、前記第2の抵抗器の他端は接地され、
前記第3の抵抗器は、一端が前記トランジスタの入力端子に他のマイクロストリップ線路を介して接続され、
一端が前記第3の抵抗器の他端に接続され、他端が前記電源供給端子に接続された第4の抵抗器を更に備え、
前記第3の抵抗器は、前記他のマイクロストリップ線路の特性インピーダンスよりも2倍以上の大きな抵抗値を有し、
前記第4の抵抗器は、前記第3の抵抗器の抵抗値よりも小さい抵抗値を有し、
前記第2の抵抗器と前記第4の抵抗器とは、前記トランジスタの特性ばらつきに応じて抵抗値が調整される抵抗器である
ことを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。 - 前記トランジスタは、電界効果型トランジスタである
ことを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。
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