JP3841336B2 - 植物プランクトンの利用方法 - Google Patents

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  • Cultivation Of Seaweed (AREA)
  • Farming Of Fish And Shellfish (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物プランクトンの利用方法、詳しくは、珪藻類等の植物プランクトンを休眠状態として保存や移送を行った後、栄養細胞に戻して赤潮発生防止等に利用するなどの植物プランクトンの利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物プランクトンには、無性的2分裂により無性生殖による増殖を行うものと、異なる交配型(+、−)の間でのみ有性生殖を行い、シスト(休眠接合子)を形成するものとがある。かかるシストの外壁はプランクトンの細胞壁とは全く異なり非常に強固な構造となっているため、プランクトンが生存できない暗所や還元状態等の悪環境下でも数年以上死なずに休眠できるという極めて耐久性の強いものであって、光や溶存酸素を必要とする栄養細胞状態のプランクトンとは生理、生態、さらには形態も全く異なるものであることが知られている。シストは、一定の環境のもとで発芽してプランクトンとなるが、シストの種類によっては、その発芽条件、発芽率及び発芽時期は一定しないばかりか、シストの休眠期間について正確には把握されていない等、シストと栄養細胞状態のプランクトンとの相関についてはなお多くのことがよくわかっていない。また、飢餓条件に曝されるなど劣悪な環境におかれた条件下で形成される休眠期細胞も、極めて耐久性の強いものであって、栄養細胞状態のプランクトンとは生理、生態を異にする。海水や湖水等の水中には多くの植物プランクトンが存在しており、水中の植物プランクトンは、周囲の環境条件(例えば水温、光、栄養塩濃度など)が生育に適さなくなると、シストを形成して自らは死滅したり、休眠期細胞となることが知られている。シストは沈降して海底に堆積して、再び環境条件がよくなると発芽し、休眠期細胞は再び環境条件がよくなると栄養細胞に復帰する。
【0003】
従来、淡水にも海水にも見い出される代表的な植物プランクトンである珪藻の増殖方法として、例えば、特開昭59−59129号公報には、日光のあたる海水中に、その表面に珪藻等を繁殖させることができる多数の穴や凹凸を設けたガラス質基板を漁礁構造体に装着してなる人工漁礁が開示されている。また、特開平9−172890号公報には、ウニやアワビなどの種苗生産を行う際の初期餌料として使用される付着珪藻の増殖させるために、珪藻の付着手段を備える水槽に海水を流入させながら換水するとともに空気を供給することにより珪藻を増殖する方法であって、ケイ素、リン、2価の鉄を一定量以上含む鉄分などからなるガラス状増殖材および窒素肥料を海水の流入位置近傍に配置し、流入する海水や空気によるエアレーションで生じた水流をこの増殖材および窒素肥料に接触させて増殖成分を海水中に溶出させる方法が記載されている。しかし、これらの方法では、生産した珪藻をその場で利用することはできるが、保存したり、移送したりすることはできず、その利用方法には限界があった。
【0004】
他方、植物プランクトン等の異常な大増殖に伴い、水が赤っぽく変色する赤潮現象はよく知られている。赤潮の原因となる主な植物プランクトンとしては、珪藻類と鞭毛藻類を挙げることができるが、植物プランクトンの種類によって漁場や海苔養殖場等の養殖漁業に与える影響が異なり、例えば、これまで珪藻類の増殖によって発生する赤潮が漁業に損害を与えた事例は殆どなく、むしろ、植食生物の餌料として歓迎される場合が多い。しかし、シャットネラ、ヘテロカプサなどの鞭毛藻類の増殖によって発生する赤潮は、養殖漁業等を中心とする漁業に大きな損害を与えることが知られている。珪藻類と鞭毛藻類は共に植物プランクトンであるが、双方が同時に高い密度で共存することが見られないことから、両者は競合関係にあるとされ、日光があたって水温が上昇し、両者が共に増殖する条件が整っている場合には、鞭毛藻類よりも珪藻類の方が優勢であることが知られている。例えば、春になって海水の温度が上昇し、冬の間に蓄積された栄養塩を利用してスプリングブルームと呼ばれる珪藻類の大増殖が起こると、鞭毛藻類による赤潮の発生は抑制される。シャットネラ、ヘテロカプサなどの鞭毛藻類は、発生期である夏季を除く年間の大部分の季節をシスト(胞子)として海底で過ごし、この間はいわゆる休眠状態にあるが、海底の水温が20℃に上昇する初夏に発芽し、この発芽期に表層水中に鞭毛藻類の有力な競争者である珪藻類等が存在しないと、鞭毛藻類が異常に増殖して有害な赤潮が発生すると考えられている。
【0005】
このような珪藻類と鞭毛藻類との相互関係を利用して、赤潮の発生を防止しようとする技術も知られている。例えば、特開平10−94341号公報には、有害赤潮の予防方法として、海面又は海中に浮体を設置し、ケイ素を含有したガラス質材料であって、ケイ素の溶出速度の大きいガラス質材料からなる珪藻類の増殖材を前記浮体に装着することによって海水に浸し、周囲の海水中にケイ素を溶出させ、前記ケイ素の供給により珪藻類の増殖を促進させて、周囲の海水中の栄養塩濃度を低下させることにより、鞭毛藻類の増殖を抑制する方法が記載されている。また、特開平11−196697号公報には、人工魚礁・増殖礁・養殖施設を利用した太陽光利用ケーブルによって植物プランクトン増大・藻場造成の活性化、炭酸ガス吸収による地球温暖化防止対策・栄養塩利用による赤潮防止対策、水産資源増大に利用するために、指定した方向に曲げられた光ケーブル照射レンズにより太陽光を海底に照射集配し植物プランクトン増大・藻場造成の活性化を促進するシステムが記載されている。この方法によれば、海底に豊富に存在する珪藻類の休眠期細胞が、光の照射により発芽あるいは復活し、表層に栄養細胞として浮上して、その後増殖するものと期待される。そして、この珪藻類によって、表層の栄養塩が摂取、消費され、その結果表層の栄養塩濃度が低下し、鞭毛藻類の異常増殖を抑制し、有害赤潮の発生が防止されるとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
動物細胞においては、例えば牛の受精卵を凍結保存して、解凍利用することが行なわれている。また、動物プランクトンにおいては、例えば熱帯魚の餌にするためにブラインシュリンプ(甲殻類)の卵を乾燥状態で保管しておき、利用者に販売して利用者がどこでも、必要な時に孵化させて利用する方法が知られている。しかし、植物性プランクトンについてこのような任意性の高い保存方法や利用方法は、従来全く考えられていなかった。本発明の課題は、植物プランクトン、特に珪藻類等の有用な植物プランクトンを、簡便な手段で保存及び/又は移送し、それが必要とされる時期に必要とされる場所に供給することによって、その必要量だけを簡便に供給することができる植物プランクトンの有効な利用方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
植物プランクトンの一部には休眠期細胞又はシストと呼ばれる休眠状態をとるものが知られている。このような休眠状態は植物プランクトンが増殖活動を休止した状態であって、休眠状態下の休眠期細胞やシストは栄養細胞よりも劣悪な環境下で生存することができ、再び良好な環境になると栄養細胞となる。本発明者らは、かかる知見を利用して、植物プランクトンを積極的に休眠状態とし、休眠状態下で保存(保管・貯蔵)や移送を行うと、植物プランクトンを有効に利用することができることを見い出した。すなわち、捕集又は増殖・生産して収集した栄養細胞状態の植物プランクトンを休眠状態とし、栄養細胞に戻せる最低限の環境におくことによって保存や移送を行い、必要な時期、必要な場所において栄養細胞に戻し、栄養細胞として利用することにより、植物プランクトンの利用性が著しく向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)付着性植物プランクトンを休眠状態とし、所定期間の保存及び/又は所定場所への移送を行った後、前記休眠状態にあった休眠期細胞又はシストを栄養細胞として、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面で増殖させることを特徴とする植物プランクトンの利用方法や、(2)付着性植物プランクトンを増殖させた後、休眠状態とすることを特徴とする上記(1)記載の植物プランクトンの利用方法や、(3)表面に付着性植物プランクトンを増殖させることができる基体を水中に浸漬し、基体表面に増殖した付着性植物プランクトンの繁殖活性期間又はその終了後に、基体表面に繁殖・付着した付着性植物プランクトンを剥ぎ取り、新たに露出した基体表面で付着性植物プランクトンを増殖させることを特徴とする上記(2)記載の植物プランクトンの利用方法や、(4)休眠状態とする前に、脱水・乾燥処理を施すことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法や、(5)光遮断処理、降温化処理、貧栄養化処理から選ばれる1又は2以上の処理により休眠状態とすることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法や、(6)光照射処理、昇温化処理、富栄養化処理から選ばれる1又は2以上の処理により、休眠状態にあった休眠期細胞又はシストを栄養細胞とすることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法や、(7)所定場所への移送が、赤潮発生予想水域の移送であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法や、(8) 付着性植物プランクトンが珪藻類であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の植物プランクトンの利用方法としては、植物プランクトンを休眠状態とし、所定期間の保存及び/又は所定場所への移送を行った後、休眠状態にあった休眠期細胞又はシストを栄養細胞として利用する方法であればどのような方法でもよく、本発明の利用方法の対象となる植物プランクトンとしては、休眠状態とすることができるものであれば特に制限されないが、例えば、中心目(Centrales)、羽状目(Pennales)等に属する珪藻類や、クロオコックス目(Chroococcales)、ネンジュモ目(Nostocales)等に属する藍藻類や、ラフィドモナス目(Raphidomonadales)に属するラフィド藻類や、オクロモナス目(Ochromonodales)、ペディネラ目(Pedinellales)等に属する黄金色藻類や、ユーグレナ目等に属するユーグレナ藻類や、ボルボックス目(Volvocales)等に属する緑藻類などであって、休眠状態とすることができるものを挙げることができるが、これらの中でも赤潮発生を予防することができ、また、養殖漁業における貝類等の餌料としての利用価値が大きいキートセロス(Chaetoceros)属、セテファノピキシス(Stephanopyxix)属、リクモフォラ(Licmophora)属等に属する珪藻類が好ましい。
【0010】
本発明の植物プランクトンの利用方法において、休眠状態とする栄養細胞状態の植物プランクトンを収集する方法としては、植物プランクトンが豊富に生息する海水や湖水等の水中から、例えばプランクトンネットなどを用いて捕集する方法や、人工的に増殖・生産する方法を挙げることができるが、収集効率や所望の植物プランクトンを収集することができる点から、植物プランクトンを人工的に増殖・生産する方法が好ましい。そして、陸上の培養タンク等を用いて人工培養する場合は、植物プランクトンを周年安定的に収集することが可能となる。また、前記所望の植物プランクトンとしては、例えば、より大型で増殖速度の速い植物プランクトンや、所定の海(湖)域における赤潮の原因となることが予想される種類の鞭毛藻類に対してその生育抑制あるいは生育停止作用を有する特定の植物プランクトンや、養殖漁業における貝類等の餌としての利用価値が大きい植物プランクトンや、栄養細胞から簡便かつ効率よく休眠期細胞又はシストを作製でき、かつ休眠期細胞又はシストから簡便かつ効率よく栄養細胞に戻しうる植物プランクトンなどを挙げることができる。
【0011】
上記植物プランクトンの増殖・生産方法としては特に制限されるものではなく、公知の植物プランクトンの生産方法であればどのような生産方法をも使用することができる。例えば、珪藻類の増殖方法には前述の特開昭59−59129号公報、特開平9−172890号公報、特開平10−94341号公報、特開平11−196697号公報記載の公知方法を利用することができる。また、所望の植物プランクトンが付着性の藻類、特に付着性の珪藻類の場合、本発明者らにより開発された以下の2つの生産方法(特願2001−82650及び特願2001−82651参照)を特に有利に用いることができる。
【0012】
生産方法の1つは、R−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、デプシペプチド、環状カーボネートと、ε‐カプロラクトンとの共重合体等の生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面で付着性珪藻類を増殖させる珪藻類の生産方法である。生分解性基材を水中に浸漬すると、基材表面で珪藻類が増殖し、生分解性基材表面を覆う珪藻類が一定厚さに達すると珪藻類の増殖速度は飽和し、次いで他の水生生物が繁殖することもあるが、この増殖速度が飽和する前の繁殖活性期間に、珪藻類が繁殖した表面から付着性珪藻類が、水中微生物の作用により分解した生分解性基材表面と共に剥がれ、生分解性基材表面が新たに露出し、その露出生分解性基材表面を再び高速増殖面として利用し珪藻類が急速に増殖する。この方法においては、上記生分解性基材の表面積を、珪藻類の繁殖活性期間と生分解性基材の表面分解期間とがほぼ同等になるように設定することや、上記生分解性基材として、珪藻類の繁殖活性期間とその表面分解期間とがほぼ同等になる生分解性基材を用いることにより、長期にわたって簡便かつ多量に生産することができる。
【0013】
もう1つの生産方法は、表面に珪藻類を増殖させることができる基体、好ましくは回転しうる円板から構成されている基体を水中に浸漬し、基体表面に増殖した珪藻類の繁殖活性期間又はその終了後に、ジェット水流等を用いて基体表面に繁殖・付着した珪藻類を剥ぎ取り、珪藻類を増殖させることができる基体表面を新たに露出させる珪藻類の生産方法である。基体を水中に浸漬すると、基体表面で珪藻類が増殖し、基体表面を覆う珪藻類が一定厚さに達すると、珪藻類の増殖速度は飽和し、次いで他の水生生物が繁殖することもあるが、この増殖速度が飽和する前の繁殖活性期間に、珪藻類が繁殖した基体表面から付着性珪藻類をジェット水流等で剥ぎ取り、珪藻類が繁殖していない基体表面を露出させると、その新たに露出した基体表面を再び高速増殖面として利用し珪藻類が急速に増殖する。このような基体表面での珪藻類の繁殖と剥ぎ取りを繰り返すと、効率よく珪藻類を連続的に生産することができる。この方法においては、採苗手段を設けて、採苗手段から採取されたプランクトンから所望の珪藻類を選別し、選別された珪藻類を剥ぎ取られた基体表面上に撒布することにより、所望の珪藻類を選択的かつ大量に生産することができる。
【0014】
本発明の植物プランクトンの利用方法において、光遮断処理、降温化処理、貧栄養化処理等を単独に又は組合せて用いることにより、栄養細胞状態にある植物プランクトンを休眠状態、すなわち、休眠期細胞ないしシストにすることができる。植物プランクトンは光合成によって繁殖に必要な栄養素を合成しており、光遮断処理により光が遮断された環境下におかれた栄養細胞は増殖不能となり、やがて飢餓状態となり、休眠状態となる。降温化処理、すなわち水温を徐々に低下させ低温環境下に植物プランクトンをおくと、温度低下により栄養細胞の繁殖能が低下し、やがて休眠状態となる。また、植物プランクトンは増殖に栄養塩を必要としており、植物プランクトンが生育している水中の栄養塩を低下させるなど貧栄養化処理を施すと、栄養塩の少ない環境におかれた栄養細胞は増殖不能となり、やがて飢餓状態となり、休眠状態となる。例えば、増殖・生産又は捕集により収集した植物プランクトンを貯蔵状態で増殖させると、栄養塩が低下して飢餓状態となり、休眠状態となる。その他、植物プランクトンが生育している水中の塩分量、PH、酸化還元電位等を調整することによって、栄養細胞状態にある植物プランクトンを休眠状態とすることもできる。
【0015】
本発明の植物プランクトンの利用方法においては、休眠状態とした植物プランクトンは、休眠状態のまま所定期間の保存及び/又は所定場所へ移送される。休眠状態とした条件を維持することによって、利用するまでの所定の期間、保存(貯蔵・保管)することが可能となる。すなわち、植物プランクトンの生産又は捕集時期と利用時期を休眠状態での保存によって任意に変更することができる。また、移送によって、生産又は捕集場所と利用場所の制限がなくなる。また、保存されている植物プランクトンのうち必要量だけを利用すればよいので、生産又は捕集のための設備能力に制限がなく、随時必要量を利用することができる。
【0016】
また、休眠状態とした休眠期細胞又はシストの保存や移送が簡便になるように、休眠状態とする前に植物プランクトンに前処理を施すことが好ましい。かかる前処理としては、生産又は捕集した収集状態の植物プランクトンを含む海水・湖水の脱水処理や脱水処理後の乾燥処理(脱水・乾燥処理)を挙げることができ、かかる脱水・乾燥処理により植物プランクトンの密度を高めた状態で休眠状態とすることができ、休眠状態とした後の休眠期細胞又はシストの保存スペースや移送の効率化を図ることができる。かかる脱水・乾燥処理としては、栄養細胞状態の植物プランクトンが死滅しない条件下での脱水・乾燥処理であれば特に制限されず、遠心分離による脱水処理や、送風による乾燥処理等を具体的に例示することができる。また、上記前処理として、運搬用の基材や利用時の基材に予め植物プランクトンを付着・担持させておくと、移送や利用が簡便となる。これら前処理は組み合わせて行うこともできる。
【0017】
本発明の植物プランクトンの利用方法において、光照射処理、昇温化処理、富栄養化処理等を単独に又は組合せて用いることにより、休眠状態、すなわち、休眠期細胞又はシスト状態にある植物プランクトンを栄養細胞に戻すことができる。発芽に光を必要とする珪藻類等の植物プランクトンは、光照射処理により、休眠期細胞又はシスト状態にある植物プランクトンを栄養細胞に戻すことができる。例えば、遮光によって休眠状態としている場合は、遮光を解除すればよい。多くの植物プランクトンでは、5℃では発芽しないが、10℃でわずかに発芽し、15℃活発に発芽する。そこで、昇温化処理により水温を徐々に上昇させることにより、休眠期細胞ないしシスト状態にある植物プランクトンを栄養細胞に戻すことができる。利用水域の水温が発芽条件を満たしているときは、休眠期細胞又はシストを徐々に利用水域へ放散・撒布することにより、簡便に栄養細胞に戻すことができる。また、休眠期細胞ないしシスト状態にある植物プランクトンを、栄養塩を含む水中に入れるなど、植物プランクトンの生育に必要な栄養塩が含まれる環境に戻す富栄養化処理によって、栄養細胞状態の植物プランクトンとすることができる。その他、休眠状態にある植物プランクトンを、塩分量、PH、酸化還元電位等を調整した水中に入れることにより、栄養細胞状態にある植物プランクトンとすることもできる。
【0018】
植物プランクトンは、水中食物連鎖の一次栄養源であり、本発明の植物プランクトンの利用方法は広範に適用することができる。例えば、有害な赤潮発生予想水域に、有害赤潮プランクトンである鞭毛藻類と競合関係にある珪藻類等の休眠期細胞ないしシストを移送し、栄養細胞に戻して撒布することにより赤潮の発生を未然に防止したり、保存しておいた休眠期細胞ないしシストを、養殖漁場に移送後、栄養細胞に戻して撒布することにより貝類等の餌料として利用したり、保存しておいた休眠期細胞ないしシストを、特定の水域に移送後、栄養細胞に戻して撒布し、小魚や海老などの餌として消費させることにより、該水域の魚の餌を増やし、同水域を有力な漁場とすることができる。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、休眠状態では劣悪な環境下で保存しても再生可能である植物プランクトンの特性を利用しており、簡便に保存(保管・貯蔵)や移送を行うことができることから、必要とされる時期に、必要とされる場所で、必要とされる量の、必要とされる種類の植物プランクトンを簡便かつ周年安定的に供給することが可能となる。また、自然界に存在する植物プランクトンを利用するものであり、新たな環境汚染のおそれがない。

Claims (8)

  1. 付着性植物プランクトンを休眠状態とし、所定期間の保存及び/又は所定場所への移送を行った後、前記休眠状態にあった休眠期細胞又はシストを栄養細胞として、生分解性高分子又は生分解性高分子組成物からなる生分解性基材の表面で増殖させることを特徴とする植物プランクトンの利用方法。
  2. 付着性植物プランクトンを増殖させた後、休眠状態とすることを特徴とする請求項1記載の植物プランクトンの利用方法。
  3. 表面に付着性植物プランクトンを増殖させることができる基体を水中に浸漬し、基体表面に増殖した付着性植物プランクトンの繁殖活性期間又はその終了後に、基体表面に繁殖・付着した付着性植物プランクトンを剥ぎ取り、新たに露出した基体表面で付着性植物プランクトンを増殖させることを特徴とする請求項2記載の植物プランクトンの利用方法。
  4. 休眠状態とする前に、脱水・乾燥処理を施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法。
  5. 光遮断処理、降温化処理、貧栄養化処理から選ばれる1又は2以上の処理により休眠状態とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法。
  6. 光照射処理、昇温化処理、富栄養化処理から選ばれる1又は2以上の処理により、休眠状態にあった休眠期細胞又はシストを栄養細胞とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法。
  7. 所定場所への移送が、赤潮発生予想水域の移送であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法。
  8. 付着性植物プランクトンが珪藻類であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の植物プランクトンの利用方法。
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