JP3839226B2 - プリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピューターを用いて、プリント熱線式防曇ガラスにおける熱線パターンの設計を評価する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
板ガラスに防曇のための熱線パターンを設けたプリント熱線式防曇ガラスは、例えば、自動車の後部窓ガラス等に用いられ、様々な気候や室内雰囲気の使用状況において、安全な視界を確保することが求められている。
【0003】
このようなことから、プリント熱線式防曇ガラスの熱線パターンの設計は、試作品を作成し、様々な使用状況を想定した性能試験を行うことによってその最適化が図られている。
【0004】
例えば、性能試験は、図5、図6に示されるような防曇試験機を使用して、所定の試験条件に従って試験を行い、この試験によって得られた結果に基づいて性能を評価することが行われている。
【0005】
この防曇試験機は、恒温恒湿槽内に防曇ガラス設置部とチェッカーボードとを設け、この防曇ガラス設置部を境にして恒温恒湿槽内の雰囲気を遮断し、例えば、自動車を想定する場合には、遮断された一方(この図では、設置される湾曲した防曇ガラスの凹側)の空間に車内環境(車内温度,車内湿度)を、他方(湾曲した防曇ガラスの凸側)の空間に車外環境(車外温度)を再現することができる。
【0006】
そして、防曇ガラス設置部に試作品のプリント熱線式防曇ガラスを設置し、通電を行い、透視可能範囲の推移をカメラにて撮影する。
【0007】
この性能試験の結果として、図7に示すように、通電開始時から時間の経過とともに透視可能範囲が出現し、この範囲が広がっていく様子(以下「晴れパターン」と称する)の映像が得られる。
【0008】
ここで、図5は、従来の防曇試験機を説明する図であり、図6は、図5の防曇試験機の内部構造を説明する図であり、図7は、従来の防曇試験機による性能試験の試験結果を説明する図である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、熱線パターンの設計に多くの時間や工数を要することから、顧客の要求仕様と社内の設計基準に従い、熱線の線幅、単位抵抗等を設計し、設計されたデータに基づいて熱線からの発熱量を計算し、さらにガラスの温度分布を求め、この、ガラスの温度分布に基づいて熱線パターンの設計を最適化する方法が実用化されている。
【0010】
この方法によれば、有限要素法等による解析によって発熱量、温度分布を求めることができるようになったが、実際の性能評価試験条件での性能評価までを行うことはできなかった。そのため、求められた温度分布から実際の防曇試験機での結果を類推しなければならないという問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、実施の試験条件(評価方法)のもとで、熱線パターン等の仕様により得られるデフォッガー機能を評価検討し、設計仕様の最適化を行う方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するため、本発明に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法は、プリント熱線式防曇ガラスの温度分布と車内の雰囲気温度と相対湿度とから、プリント熱線式防曇ガラスが結露するかどうかを判定し、その結果に基づいて、コンピューターグラッフィックスで実際の試験機と同等な画像を作成し、設計の妥当性の評価を行えるようにすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法は、有限要素法解析等を行うことによって求めた温度分布データに基づき、ガラス表面の結露の有無を判定し、透過率に変換した結果を用いて、コンピューターグラフィックスのレイトレーシング手法により、実際の性能評価試験と同等な画像を作成することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法は、コンピューターを利用して、プリント熱線式防曇ガラスに通電した場合の温度分布データと所定の試験条件とに基づいて、プリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況を算出し、算出されたプリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況が、所望の基準を満たさない場合には、プリント熱線式防曇ガラスの熱線パターンの設計条件の最適化を行うことを特徴とする。
【0015】
上記構成を有することにより、温度分布のデータを用いて、実施の試験条件のもとでのデフォッガー機能の性能評価を行うことができ、これにより、コンピューター内部で、熱線パターン設計の妥当性を評価することができ、さらには、設計条件の最適化を行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法を実施するためのシステム構成図であり、図2は、本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法の対象となるガラスを例示する図である。
【0018】
図1に示されるように、本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法を実施するためのシステムは、シミュレーション部1と、記憶手段2と、入出力手段3と、から構成されている。
【0019】
入出力手段3は、シミュレーションの対象となるプリント熱線式防曇ガラスのデータを入力する機能を有する。また、シミュレーションで用いられる、抵抗,電圧負荷位置,電圧,熱伝達率,外気温度,ガラス物性データ等の設定条件を入力する機能を有する。そして、雰囲気温度および相対湿度等の結露の計算で使用する試験条件を入力する機能を有する。
【0020】
シミュレーション部1は、CAD等のシステムを備えたコンピューター端末から構成されており、入出力手段3から入力されたシミュレーションの対象となるプリント熱線式防曇ガラスのデータを用いて、プリント熱線式防曇ガラスのモデルを作成する機能を有する。
【0021】
具体的には、図2に示されるような、対象となるプリント熱線式防曇ガラスに対して、メッシュ等のモデルを生成し、次に、このモデルを用いて、熱線パターンのシミュレーションを行うこととなる。
【0022】
そして、シミュレーション部1は、生成したモデルと、入出力手段3から入力された設定条件および試験条件に基づいて、熱線の電位分布の計算,防曇ガラスの内部発熱量の計算,温度分布の計算,結露の計算,発熱量と温度分布と晴れパターンとが設定範囲内であるかどうかの評価等の演算と、設計条件の最適化等の処理とを行う機能を有する。また、これらの演算あるいは処理の結果を入出力手段3から外部へ出力する機能と、記憶手段2へ送る機能とを有する。
【0023】
記憶手段2は、データベース等から構成することができる。そして、記憶手段2は、シミュレーション部1が生成したモデルについての演算結果等のシミュレーション情報および性能試験情報をデータとして蓄積する機能を有する。
【0024】
次に、図を参照して、本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法の流れを説明する。ここで、図3は、本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法の流れを説明する図である。
【0025】
図3に示すように、本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法は、入力された設定条件データに基づく熱線の電位分布の計算、防曇ガラスの内部発熱量の計算、演算結果の評価、ガラス上での温度分布の計算、演算結果の評価、結露の計算、演算結果の評価というステップで構成される。
【0026】
なお、本実施の形態においては、計算式に有限要素法を用いているが、本発明は、これに限られず、差分法等の他の方法も含まれる。
【0027】
(電位分布の計算)
まず、入力された、抵抗,電圧負荷位置,電圧,熱伝達率,外気温度,ガラス物性データ等の設定された諸条件と、生成されたモデルとを用いて、モデルの電位分布が計算される。
【0028】
電位分布を演算する第1のステップでは、全体のメッシュより熱線部分のみを取り出し、電気比抵抗や固定電位を指定し、電位分布の演算を行う(ステップ101)。
【0029】
この演算における支配方程式(電気伝導の方程式)は、例えば以下の通りである。
【0030】
【数1】
P(T)V=I………(1)
なお、この式において、P(T)は、電気伝導マトリックス、Iは、電流ベクトル、Vは、電圧ベクトルを表す。
【0031】
(内部発熱量の計算)
内部発熱量分布を演算する第2のステップでは、第1のステップで算出された電位分布を基に、熱線部分での発熱量に変換するための演算を行う(ステップ102)
この演算における支配方程式(電位分布との連成)は、例えば以下の通りである。
【0032】
【数2】
QE=∫VNTqEdv………(2)
qE=I2R………(2.1)
なお、この式において、QEは、電流による熱流束、Nは、要素マトリックス、Iは、電流、Rは、電気抵抗を表す。
【0033】
ここで、本発明の実施の形態に係る方法によって算出された発熱量については、入出力手段3から発熱分布表示として出力することが可能である。
【0034】
(演算結果の評価)
次に、第2のステップで得られた、内部発熱量の算出結果が所望の範囲に含まれるかどうかを評価し(ステップ103)、所望の範囲に含まれない場合には、設計の最適化(例えば、熱線の幅、厚みを変更する)(ステップ110)をして再度演算を行うようにすると好適である。この最適化には、線形計画法等の数学的な最適化手法を用いることができる。
【0035】
(温度分布の計算)
モデル上での温度分布を演算する第3のステップでは、第2のステップで算出された熱線の発熱量をガラス部分で構成されるモデルに与え、演算を行い、モデルについての温度分布を求める(ステップ104)。
【0036】
この演算における支配方程式(熱伝導の方程式)は、例えば以下の通りである。
【0037】
【数3】
C(T)・δT+K(T)・T=Q+QE………(3)
なお、この式において、K(T)は、熱伝導マトリックス、Tは、温度ベクトル、δTは、温度変化ベクトル、Qは、熱流束ベクトル、QEは、電流による熱流束を表す。
【0038】
ここで、算出された温度分布については、入出力手段3から温度分布表示として出力することが可能である。
【0039】
(演算結果の評価)
次に、第3のステップで得られたガラス上での温度分布に基づいて、ある特定の点を選び、この点の温度が設定範囲内であるかどうかを評価する(ステップ105)。
【0040】
そして、この点の温度が設定範囲外である場合には、設計の最適化を行い(ステップ110)、再度演算を行う。
【0041】
(結露の計算)
結露を計算する第4のステップでは、第3のステップで算出された温度分布に基づいて、モデルのガラス表面の結露状態を計算する(ステップ106)。なお、この計算結果に基づいて、入出力手段3を用いて晴れパターンを表示することが可能である。
【0042】
(演算結果の評価)
そして、この計算結果(晴れパターン)が所定の基準(例えば、通電後一定時間経過後の透視可能範囲の割合等)を満たす場合には演算を終了し、満たさない場合には、最適化(ステップ110)を行い、再度演算を行う。
【0043】
なお、本実施の形態においては、これらの評価は自動的に行われることとされているが、設計者が判断するようにしてもよい。
【0044】
次に結露の計算について、図を参照して詳細に説明する。ここで図4は、本発明の実施の形態に係るの結露の計算の流れを説明する図である。
【0045】
まず、入出力手段3から入力された、試験条件である雰囲気温度と相対湿度から絶対湿度を計算し、露点を求める(ステップ201)。
【0046】
次に、第3のステップで算出された温度分布から、各ガラス要素の温度を計算する(ステップ202)。
【0047】
そして、算出された各ガラス要素の温度が、露点以下であるかどうかを判断する(ステップ203)。
【0048】
この結果、各ガラス要素の温度が露点以下である場合には、当該ガラス要素においてはガラス表面は結露することとなり、露点を越える場合には、結露しないこととなる。
【0049】
このようにして得られた各ガラス要素の結露状態のデータから、ガラス表面の結露の有無を判定し、透過率に変換する。
【0050】
そして、この透過率に基づいて、例えばコンピューターグラフィックスのレイトレーシング法を使用して晴れパターンを作成し、入出力手段3を用いて表示する。
【0051】
このようにすることにより、プリント熱線式防曇ガラスの結露状態の推移を透過率の変化に基づいて画像として表すことができる。そして、本発明により、従来の防曇試験機を用いた試験による晴れパターンと、同等のコンピューター画像を実現することができる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、第3のステップで算出された温度分布を用いて結露に関する演算を行い、晴れパターンを作成しているが、本発明はこれに限られるものではない。対象となる温度分布のデータは、他の演算処理によって求められた温度分布であってもよく、さらには、実際の測定によって求められた温度分布であってもよい。
【0053】
このようにすることによって、温度分布データを用いて、様々な使用条件のもとでガラス表面の結露の有無を判定し、透過率に変換した結果を用いて、実際の性能評価試験と同等な画像を作り出すことができる。
【0054】
また、上記構成を有することにより、温度分布のデータを用いて、実施の試験条件のもとでデフォッガー機能の性能評価を行うことができる。これにより、コンピューター内部で、熱線パターン設計の妥当性を評価することができ、さらには、設計条件の最適化を行うことができる。
【0055】
そして、本発明によれば、晴れパターンを作成する防曇ガラスの試験条件として、従来の防曇試験のようなチェッカーボードを使用する場合のみならず、実車を想定した、風景や人物等を用いることにより、多様な使用状況を反映した評価が可能となる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、デフォッガー機能の性能評価について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、フロント合わせガラスにおけるプリント熱線式融雪ガラスあるいは透明導電膜式融雪ガラス、リア合わせガラスにおける熱線封入式防曇ガラス、導電膜式防曇ガラス等についても同様の性能評価を行うことができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、実際の試験機での評価と同等な評価をコンピューター上で行うことができ、この評価に基づいて、設計の最適化を図ることができる。
【0058】
また、実車を想定した種々の環境条件のもとで性能試験を行うことができ、多様な使用状況を反映した信頼性の高い評価が可能となる。
【0059】
さらに、コンピューターを利用して、熱線パターンの設計から、通電シミュレーション,実施条件での性能評価,設計の最適化の処理までを行うことができ、熱線パターン設計の最適化を高精度かつ短時間で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法を実施するためのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法の対象となるガラスを例示する図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法の流れを説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るの結露の計算の流れを説明する図である。
【図5】従来の防曇試験機を説明する図である。
【図6】図5の防曇試験機の内部構造を説明する図である。
【図7】従来の防曇試験機による性能試験の試験結果を説明する図である。
【符号の説明】
1 シミュレーション部
2 記憶手段
3 入出力手段
Claims (5)
- シミュレーション部と入出力手段と記憶手段とを有するコンピューターを利用して、プリント熱線式防曇ガラスの設計を評価する方法において、
(a)前記入出力手段が、所定の設計条件および所定の試験条件を、前記シミュレーション部に入力するステップと、
(b)前記シミュレーション部により、プリント熱線式防曇ガラスのモデルを用いて、所定の設計条件のもとに、プリント熱線式防曇ガラスの熱線パターンの通電シミュレーションを行い、前記プリント熱線式防曇ガラスのモデル上での温度分布を算出するステップと、
(c)前記シミュレーション部により、前記算出された温度分布と前記所定の試験条件とに基づいて、前記プリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況を算出するステップと、
(d)前記シミュレーション部により、コンピューターグラフィックスを利用して、前記算出されたプリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況を表現する画像を作成し、前記入出力手段に出力するステップと、
を含むプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法。 - 請求項1に記載のプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法において、前記ステップ(c)は、前記温度分布と雰囲気温度と相対湿度とから、前記プリント熱線式防曇ガラス表面の結露の有無を判定し、透過率に変換するステップを含むことを特徴とするプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法。
- 請求項2に記載のプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法において、
(e)前記シミュレーション部により、前記算出されたプリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況が、所望の基準を満たさない場合には、前記プリント熱線式防曇ガラスの熱線パターンの設計条件の最適化を行うステップをさらに含むプリント熱線式防曇ガラスの設計評価方法。 - (a)プリント熱線式防曇ガラスのモデルを用いて、所定の設計条件のもとに、プリント熱線式防曇ガラスの熱線パターンの通電シミュレーションを行い、前記プリント熱線式防曇ガラスのモデル上での温度分布を算出するステップと、
(b)前記算出された温度分布と前記所定の試験条件とに基づいて、前記プリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況を算出するステップと、
(c)コンピューターグラフィックスを利用して、前記算出されたプリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況を表現する画像を作成するステップと、
(d)前記算出されたプリント熱線式防曇ガラス表面の結露の推移状況が、所望の基準を満たさない場合には、前記プリント熱線式防曇ガラスの熱線パターンの設計条件を最適化を行うステップとを、コンピューターに実行させるためのプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体。 - 請求項4に記載の記録媒体において、前記ステップ(c)は、前記温度分布と雰囲気温度と相対湿度とから、前記プリント熱線式防曇ガラス表面の結露の有無を判定し、透過率に変換するステップを含むことを特徴とする記録媒体。
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