JP3837521B2 - 分子配向の揃った球状微粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性材料あるいは医療材料等としてファインケミカル分野や電子・情報分野等において有用な、低分子量有機化合物からなる分子配向の揃った球状微粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下記の一般式Aで表される化合物は、両親媒性を有する双頭型脂質として注目すべき性状を示し、機能性材料あるいは医療材料等としてファインケミカル分野や電子・情報分野等において、種々の用途に利用することが期待されている。
【0003】
【式2】
Figure 0003837521
【0004】
(式中、Xは1〜3の整数;Yは8〜20の整数;そしてRは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
上記化合物は、アルカリ性水溶液を徐々に酸性化することによって、10〜30nm程度の幅を有するナノスケールの繊維を形成することが知られている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許第3012932号公報
【非特許文献1】
M.Kogiso外3名,Chem.Commn.,1998,第1791−1792頁
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの化合物を、機能性材料あるいは医療材料等としてファインケミカル分野や電子・情報分野等に適用する場合には、性状の揃った微粒子とすることが必要となるが、上記化合物からなる性状の揃った微粒子は知られていない。
したがって、本発明は、機能性材料あるいは医療材料等としてファインケミカル分野や電子・情報分野等において有用な、上記一般式Aで表される化合物からなる分子配向の揃った球状微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記一般式Aで表される化合物の塩の水性溶液に親水性を有する基材を浸漬させて、酸性雰囲気下で微粒子を析出させることにより、分子配向の揃った球状微粒子が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は次のような構成をとるものである。
1.次の一般式Aで表される化合物からなる分子配向の揃った球状微粒子。
【0008】
【式3】
Figure 0003837521
【0009】
(式中、Xは1〜3の整数;Yは8〜20の整数;そしてRは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
2.微粒子が中心から放射状に均等に配向したものであることを特徴とする1に記載の球状微粒子。
3.微粒子の粒径が0.01〜100μmであることを特徴とする1又2に記載の球状微粒子。
4.一般式Aで表される化合物の塩の水性溶液に親水性を有する基材を浸漬させて、酸性雰囲気下で微粒子を析出させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の球状微粒子の製造方法。
5.一般式Aで表される化合物の塩が、アルカリ金属塩であることを特徴とする4に記載の球状微粒子の製造方法。
6.基材がガラス、金属、シリカ、マイカ、セラミックス、陶磁器、プラスチック、あるいはこれらの複合材料からなるものであることを特徴とする4又は5に記載の球状微粒子の製造方法。
7.微粒子をpH5〜6の酸性雰囲気下で析出させることを特徴とする4〜6のいずれかに記載の球状微粒子の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の分子配向の揃った球状微粒子は、上記一般式Aで表される化合物の塩の水性溶液に親水性を有する基材を浸漬させて、酸性雰囲気下で微粒子を析出させることにより、得ることができる。
本発明において、分子配向の揃った球状微粒子とは、微粒子が略球状の形状を有し、その中心から放射状に均等に配向したものであること(点転傾を有する同心球状の分子配向を有すること)を意味する(図2にこのような分子配向を有する球状微粒子の模式図の1例を示す)。このような微粒子は、偏光顕微鏡で観察したときに、クロスニコル下で球体に十字模様を示し、対象物を回転させても十字模様の向きが変化しないことによって、均等に配向したものであることが確認することができる。
【0011】
本発明の分子配向の揃った球状微粒子は、粒径が0.01〜1000μm程度の微粒子として得ることができるが、その粒径は製造条件を調整することによって所望のものとすることができる。本発明の球状微粒子を、機能性材料あるいは医療材料等としてファインケミカル分野や電子・情報分野等に使用するには、その粒径を0.01〜100μm、特に0.05〜50μm程度にすることが好ましい。
【0012】
本発明の球状微粒子は、次の一般式Aで表される化合物の塩の水性溶液に親水性を有する基材を浸漬させて、酸性雰囲気下で微粒子を析出させることにより、製造することができる。
【0013】
【式4】
Figure 0003837521
【0014】
(式中、Xは1〜3の整数;Yは8〜20の整数;そしてRは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
好ましい化合物としては、X=2、Y=8,10又は12で、Rが水素、メチル基、又はイソプロピル基であるものが例示され、特に好ましい化合物としては、X=2、Y=8又は10で、Rがイソプロピル基である化合物が挙げられる。
【0015】
これらの化合物の塩の種類には特に制限はなく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等種々の塩を使用することができるが、アルカリ金属塩、特にナトリウム又はカリウムの塩を使用することが好ましい。
水性溶液中の一般式Aで表される化合物の塩の濃度は、0.1〜100mM/L程度、特に0.5〜20mM/L程度とすることが好ましい。
【0016】
これらの塩の水溶液に浸漬する基材としては親水性を有するものであれば特に制限はなく、例えばガラス、金属、シリカ、マイカ、セラミックス、陶磁器、プラスチック或いはこれらの複合材料を使用することができる。基材が親水性を有さないものである場合には、その表面に親水処理を施すことによって、親水性を付与すればよい。このような親水処理は、基材の性状に応じて適宜選択することができるが、例えば基材がガラスである場合には、ガラス基材の表面を洗浄した後に、エタノール等のアルコール中に水酸化カリウム等のアルカリを溶解した溶液中に浸漬することによって、行うことができる。
基材の形状には特に制限はなく、例えば板状体、管状体等任意の形状の基材を使用することができる。また、基材の表面は平滑なものだけではなく、平滑でないものも使用することができる。
【0017】
本発明の球状微粒子は、親水性を有する基材を浸漬した化合物Aの水溶液を、酸性雰囲気、好ましくはpH4〜6程度の弱酸性雰囲気中に保持することによって、基材表面に析出、成長させることができる。
親水性を有する基材を浸漬した化合物Aの水溶液を、酸性雰囲気中に保持するには、例えば図1にみられるように、基材1を浸漬した化合物Aの水溶液2を入れた容器3を、酢酸等の酸性水溶液4を収容した容器5中に配置し、この容器5に蓋6をして系全体を密閉することによって行うことができる。
基材表面に析出した微粒子は、超音波或いは機械的な手段によって基材から剥離し、回収することができる。
【0018】
【実施例】
つぎに、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
一般式Aにおいて、X=2、Y=10でRがイソプロピル基である化合物を、2等量の水酸化ナトリウム水溶液を用いて濃度が1mM/Lになるように溶解させ、該化合物の水溶液を得た。
基材となる硝子基板を洗剤に3時間浸漬した後、超純水(Milli-Q)を用いて20分×4回超音波洗浄を行った。次にExtran MA-02(青ラベル、neutral)の2%水溶液で20分超音波洗浄した後に、超純水(Milli-Q)を用いて20分×4回超音波洗浄した。この基材を、エタノール700 mlに対して水酸化カリウム60gを溶解した溶液に4時間浸漬後、超純水を用いて20分×4回超音波洗浄することによって親水性処理基材を調製した。
【0019】
上記化合物の水溶液中に、この親水処理硝子基材を浸漬した容器を、図1にみられるように、5%酢酸水溶液(v/v)からなる弱酸性水溶液を収容した容器に入れて蓋をし、系全体を酸性雰囲気下に放置した。
室温又は冷所に2〜3日放置すると基材表面に球状の微粒子が析出し、基材が白濁するのが肉眼で確認出来た。この基材を超音波で処理することによって、球状の微粒子を回収した。
得られた微粒子は、粒径5〜15μmの粒径の揃った球状体であった。この微粒子を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル下で球体に十字模様を確認することが出来た。そして、対象物を回転させても十字模様の向きは変化せず、均等に配向していること(点転傾を有する同芯球状の分子配向を有すること)が確認出来た。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、一般式Aで表される化合物からなる分子配向の揃った球状微粒子を特別な装置や、複雑な工程を必要とせずに、安価に製造することができる。 本発明で得られる球状微粒子は、生体適合材料として医療、薬剤分野に、また有効成分を担持する担体等として、薬剤、化粧品、染料等のファインケミカル分野において使用することができる。さらに、その偏光特性を利用して、各種の光学材料、機能性材料等として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分子配向の揃った球状微粒子を製造する工程を説明する模式図である。
【図2】本発明の球状微粒子の分子配向の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 親水処理基材
2 化合物Aを含む水溶液
3 化合物Aを含む水溶液を収容した容器
4 酸性水溶液
5 酸性水溶液を収容した容器
6 蓋

Claims (2)

  1. 次の一般式Aで表される化合物からなり、偏光顕微鏡で観察したときに、クロスニコル下で球体に十字模様を示し、対象物を回転させても十字模様が変化しないことを特徴とする分子配向の揃った粒径が0.01〜100μmである球状微粒子。
    【式1】
    Figure 0003837521
    (式中、Xは1〜3の整数;Yは8〜20の整数;そしてRは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)
  2. 上記請求項1に記載された一般式Aで表される化合物のアルカリ金属塩の水性溶液に親水性を有する基材を浸漬させて、pH5〜6の酸性雰囲気下で微粒子を析出させることを特徴とする請求項1に記載の球状微粒子の製造方法。
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