JP3827151B2 - 非接触受電素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として医療の介護分野での機能的電気刺激(FES/Functional Electrical Stimulation)等に用いられると共に、電力及び電気信号を同時に非接触で伝送する非接触電力伝送装置にあっての2次側コイルとして用いられる非接触受電素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療の介護分野において、例えば四肢麻痺患者への治療法として、外部から末梢神経に適切な電気刺激を加えることで患者の運動機能の補助及び再建を行うためのFESが知られている。
【0003】
このFESによる直接給電を有線で行う構成の場合、例えば給電線が断線したり、或いは給電線の皮膚との貫通部における感染対策が必要となるという問題がある他、給電線によって使用者(患者)の行動が不自由になってしまうといった様々な問題がある。
【0004】
そこで、FES用の非接触電力伝送装置を適用すれば効果的であり、具体的には体外に設置した1次側コイル(送電側)と体内に埋め込まれた電極付きの2次側コイル(受電側)とを磁気的に結合させることで電力供給して電気刺激情報を経皮的に非接触式で伝送するため、上述したような様々な問題を著しく軽減できるようになる。
【0005】
因みに、この非接触電力伝送装置における電力伝送用には、一般的に人体に及ぼす影響が小さい100kHz前後の印加磁場を使用しているが、信号伝送に際しては100kHzの印加磁場が大きなノイズ源となるため、こうしたノイズ対策として通常ローパスフィルタ等を用いている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した非接触電力伝送装置の場合、電力伝送用に要する100kHzの印加磁場が信号伝送に際して大きなノイズ源となることを対策するためにローパスフィルタ等を用いているが、こうしたローパスフィルタ等を用いた構成によれば装置全体の小型化や低コスト化の実現、或いは故障の確率の点等で不利益となってしまうという問題があり、特に2次側コイル(受電側)を構成する非接触受電素子では体内に埋め込まれる使用目的上、できるだけ小型化した上で他の部品を付与することなくノイズを打ち消して十分な電力及び電気信号を得られる高性能化が要求されているものの、現状ではこうした都合良い高性能な製品が開発されていないのが実態である。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、電力伝送用に要する印加磁場に伴う信号伝送に際してのノイズ対策を他の部品を付与することなく可能な限り小型化した上で図り得ると共に、十分な電力及び電気信号が得られる高性能な非接触受電素子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、非接触で電力及び電気信号を同時に伝送する非接触電力伝送装置にあっての2次側コイルとして用いられる非接触受電素子において、比透磁率の異なる磁性材料を直列に連結配置して成る連結磁性体における比透磁率が高い材料部分を第1の磁芯として導線を巻回して成る受電用コイルと、連結磁性体における比透磁率が低い材料部分を第2の磁芯として導線を巻回して成る第1の部分と受電用コイルを形成した第1の磁芯の該第1の部分側寄りの一端部分に導線を巻回して成る第2の部分とを含むと共に、該第1の部分及び該第2の部分が逆極性となるように該導線をそれぞれ反対向きに巻回した上で直列に配備されて成る受信用コイルとを有し、受信用コイルにおける第1の部分及び第2の部分にあっての導線部分のインダクタンスの和が電力用印加周波数ではほぼ零となるように該導線部分の巻数比が調整され、電力伝送用の印加磁場の周波数を1MHz以下とし、信号伝送用の印加磁場の周波数を1〜20MHzとすると共に、該電力伝送用の印加磁場の周波数に対して該信号伝送用の印加磁場の周波数を10倍以上として使用する非接触受電素子が得られる。
図1は、本発明の非接触受電素子の基本構成を示した外観斜視図である。この非接触受電素子は、非接触で電力及び電気信号を同時に伝送する非接触電力伝送装置にあっての2次側コイルとして用いられるもので、比透磁率の異なる磁性材料を直列に連結配置して成る連結磁性体1における比透磁率が高い材料部分を第1の磁芯2として導線を巻回して成る受電用コイルCAPと、連結磁性体1における比透磁率が低い材料部分を第2の磁芯3として導線を巻回して成る第1の部分C1と受電用コイルCAPを形成した第1の磁芯2の第1の部分C1側寄りの一端部分に導線を巻回して成る第2の部分C2とを含むと共に、第1の部分C1及び第2の部分C2が逆極性となるように導線をそれぞれ反対向きに巻回した上で直列に配備されて成る受信用コイルCASとを有して構成されている。但し、ここでは受信用コイルにおける第1の部分及び第2の部分にあっての導線部分のインダクタンスの和が電力用印加周波数ではほぼ零となるように導線部分の巻数比が調整され、電力伝送用の印加磁場の周波数を1MHz以下とし、信号伝送用の印加磁場の周波数を1〜20MHzとすると共に、電力伝送用の印加磁場の周波数に対して信号伝送用の印加磁場の周波数を10倍以上として使用するようになっている。
【0009】
又、本発明によれば、上記非接触受電素子において、連結磁性体にあっての第1の磁芯用の磁性材料における比透磁率に対する第2の磁芯用の磁性材料における比透磁率の比は、0.5以下である非接触受電素子が得られる。
【0010】
更に、本発明によれば、上記非接触受電素子において、電力伝送用に要する100kHz前後の印加磁場に対して連結磁性体にあっての受電用コイルは2次側電力の出力として100mW以上を取得可能であると共に、受信用コイルは2次側信号の出力として1V以上を取得可能である非接触受電素子が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。最初に、本発明の非接触受電素子の技術的概要を簡単に説明する。
【0012】
図1は、本発明の非接触受電素子の基本構成を示した外観斜視図である。この非接触受電素子は、非接触で電力及び電気信号を同時に伝送する非接触電力伝送装置にあっての2次側コイルとして用いられるもので、比透磁率の異なる磁性材料を直列に連結配置して成る連結磁性体1における比透磁率が高い材料部分を第1の磁芯2として導線を巻回して成る受電用コイルCAPと、連結磁性体1における比透磁率が低い材料部分を第2の磁芯3として導線を巻回して成る第1の部分C1と受電用コイルCAPを形成した第1の磁芯2の第1の部分C1側寄りの一端部分に導線を巻回して成る第2の部分C2とを含むと共に、第1の部分C1及び第2の部分C2が逆極性となるように導線をそれぞれ反対向きに巻回した上で直列に配備されて成る受信用コイルCASとを有して構成され、更に、電力伝送用に要する印加磁場の周波数に対して信号伝送用の印加磁場の周波数を10倍以上として使用するようになっている。
【0013】
又、この非接触受電素子において、連結磁性体1にあっての第1の磁芯2用の磁性材料における比透磁率に対する第2の磁芯用の磁性材料における比透磁率の比は、0.5以下であり、こうした条件下で電力伝送用に要する100kHz前後の印加磁場に対して連結磁性体1にあっての受電用コイルCAPは2次側電力の出力として100mW以上を取得可能としていると共に、受信用コイルCASは2次側信号の出力として1V以上を取得可能としている。
【0014】
即ち、この非接触受電素子では、電力伝送用に要する印加磁場に伴う信号伝送に際してのノイズをキャンセルする方法として、透磁率及び長さの異なる2つのフェライトを接続して連結磁性体1を構成しているが、これらのフェライトは形状(寸法比)や比透磁率及び周波数によって実効透磁率が異なる。
【0015】
そこで、より低周波で動作させる受電用コイルCAPには比透磁率が高いフェライト材料を長手方向の寸法比を大きくして第1の磁芯2用の磁性材料として使用し、より高周波で動作させる受信用コイルCASにおける第1の部分C1には、比透磁が低いフェライト材料を長手方向の寸法比を小さくして第2の磁芯3用の磁性材料として使用している。これにより、両者のコイルが有効に機能する周波数帯を有効に分離することができる。
【0016】
又、受信用コイルCASは、図1に示されるように、第1の部分C1とは導線の巻回方向を逆にして受電用コイルCAPが形成されたフェライト磁芯(第1の磁芯2)の一端部分に形成された第2の部分C2を含んでおり、これらの第1の部分C1,第2の部分C2が互いに極性を異なるように直列接続されて構成されている。但し、受信用コイルCASの形成に際しては、電力伝送用周波数でそれぞれのコイルに誘起される電圧が打ち消し合い、結果として出力が小さくなるようにそれぞれの導線の巻回数を設定する必要がある。
【0017】
このように、より高周波で動作させる方が有効な受信用コイルCASの場合、導線の巻回数を少なくすることが有用となるが、受電用コイルCAPを形成した第1の磁芯2の透磁率は受信用コイルCASの動作周波数にあって、できるだけ低くなるようにすることが望ましい。
【0018】
更に、本発明の非接触受電素子の場合、受信用コイルCASの2次側信号の出力(電圧信号出力)におけるS/N比を改善するための観点により、受電用コイルCAPに使用された第1の磁芯2の磁性材料における比透磁率に対する受信用コイルCASの第1の部分C1に使用された第2の磁芯3の磁性材料における比透磁率の比が0.5以下となる領域を有用としている。
【0019】
以下は、本発明の非接触受電素子について、具体的な実施の形態を挙げてより詳細に説明する。
【0020】
先ず、第1の実施の形態では、比透磁率が約2000で縦×横×長さの寸法が0.7×0.7×8(mm)の角棒形状のNi−Zn系フェライト磁芯(第1の磁芯2)に対し、直径0.05mmの導線を反時計回りで400ターン巻回することで受電用コイルCAPを形成した後、比透磁率が約200で縦×横×長さの寸法が0.7×0.7×2(mm)の角棒形状のNi−Zn系フェライト磁芯(第2の磁芯3)に対し、直径0.05mmの導線を反時計回りで37ターン巻回することで第1の部分C1を形成すると共に、これと極性が逆となるように受電用コイルCAPを形成した比透磁率が約2000の角棒形状のNi−Zn系フェライト磁芯(第1の磁芯2)の第1の部分C1側寄りの一端部分に直径0.05mmの導線を時計回りで17ターン直列に巻回することで第2の部分C2を形成して成る受信用コイルCASを受電用コイルCAPに長手方向で接続するように結合配置することにより、非接触受電素子となる2次側コイル(受電及び受信用のコイル)を作製した。
【0021】
そこで、この第1の実施の形態に係る非接触受電素子(2次側コイル)に対し、100kHzで1.5mTの磁場と8.5MHz(VP-P =20V)の正弦波とを同時に伝送したところ、受電用コイルCAPには2次側電力の出力として100kHzで120mWの値が得られ、受信用コイルCASには2次側信号の出力として8.5MHzで1.2Vの値が得られ、2次側信号のS/N比が約23dBという具合いに良好な結果が得られることが判った。
【0022】
因みに、比透磁率が約2000のNi−Zn系フェライトは約1MHzを超えると比透磁率が著しく減少し、同様に比透磁率が約200のNi−Zn系フェライトは約20MHzを超えると比透磁率が著しく減少する。
【0023】
次に、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の場合と同様に、受電用コイルCAPを形成した角棒形状のNi−Zn系フェライト磁芯(第1の磁芯2)の比透磁率を2000とすると共に、受信用コイルCASの第1の部分C1を形成した角棒形状のNi−Zn系フェライト磁芯(第2の磁芯3)の比透磁率を100,200,500,700,1000,1500,2000という具合いに選択的に変更した上、逆極性となる第2の部分C2との間におけるそれぞれの導線の巻回数を出力電圧が1V以上となるように調整した条件下で総計7種類の試作品を作製し、これらの各試作品について、受電用コイルCAP(A)を形成したNi−Zn系フェライト磁芯(第1の磁芯2)の比透磁率に対する受信用コイルCAS(B)の第1の部分C1を形成したNi−Zn系フェライト磁芯(第2の磁芯3)の比透磁率の比(B/A)と、受信用コイルCAS(B)における2次側信号(信号用出力)のS/N比とを測定したところ、表1に示すような結果となった。
【0024】
【表1】
【0025】
表1からは、比(B/A)が0.5以下である場合の各試作品は、2次側信号(信号用出力)のS/N比が良好な値となっており、好ましい結果が得られていることが判る。
【0026】
【発明の効果】
以上に述べた通り、本発明の非接触受電素子によれば、比透磁率の異なる磁性材料を直列に連結配置して成る連結磁性体における比透磁率が高い材料部分を第1の磁芯として導線を巻回して成る受電用コイルと、連結磁性体における比透磁率が低い材料部分を第2の磁芯として導線を巻回して成る第1の部分と受電用コイルを形成した第1の磁芯の第1の部分側寄りの一端部分に導線を巻回して成る第2の部分とを含むと共に、第1の部分及び第2の部分が逆極性となるように導線をそれぞれ反対向きに巻回した上で直列に配備されて成る受信用コイルとを有する基本構成とし、更に、受信用コイルにおける第1の部分及び第2の部分にあっての導線部分のインダクタンスの和が電力用印加周波数ではほぼ零となるように導線部分の巻数比が調整され、電力伝送用の印加磁場の周波数を1MHz以下とし、信号伝送用の印加磁場の周波数を1〜20MHzとすると共に、電力伝送用の印加磁場の周波数に対して信号伝送用の印加磁場の周波数を10倍以上として使用する規格とし、連結磁性体にあっての第1の磁芯用の磁性材料における比透磁率に対する第2の磁芯用の磁性材料における比透磁率の比を適性な0.5以下のものを選定することで、電力伝送用に要する100kHz前後の印加磁場に対して連結磁性体にあっての受電用コイルから2次側電力の出力として100mW以上が取得されると共に、受信用コイルから高S/N比の2次側信号の出力として1V以上が取得されるようにしているので、結果として、従来では困難視されていた電力伝送用に要する印加磁場に伴う信号伝送に際してのノイズ対策を他の部品を付与することなく可能な限り小型化した上で図り得るようになると共に、十分な電力及び高S/N比の電気信号が得られる高性能な非接触受電素子が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非接触受電素子の基本構成を示した外観斜視図である。
【符号の説明】
1 連結磁性体
2,3 磁芯
CAP 受電用コイル
CAS 受信用コイル
Claims (3)
- 非接触で電力及び電気信号を同時に伝送する非接触電力伝送装置にあっての2次側コイルとして用いられる非接触受電素子において、比透磁率の異なる磁性材料を直列に連結配置して成る連結磁性体における比透磁率が高い材料部分を第1の磁芯として導線を巻回して成る受電用コイルと、前記連結磁性体における比透磁率が低い材料部分を第2の磁芯として導線を巻回して成る第1の部分と前記受電用コイルを形成した前記第1の磁芯の該第1の部分側寄りの一端部分に導線を巻回して成る第2の部分とを含むと共に、該第1の部分及び該第2の部分が逆極性となるように該導線をそれぞれ反対向きに巻回した上で直列に配備されて成る受信用コイルとを有し、更に、前記受信用コイルにおける前記第1の部分及び前記第2の部分にあっての前記導線部分のインダクタンスの和が電力用印加周波数ではほぼ零となるように該導線部分の巻数比が調整され、電力伝送用の印加磁場の周波数を1MHz以下とし、信号伝送用の印加磁場の周波数を1〜20MHzとすると共に、該電力伝送用の印加磁場の周波数に対して該信号伝送用の印加磁場の周波数を10倍以上として使用することを特徴とする非接触受電素子。
- 請求項1記載の非接触受電素子において、前記連結磁性体にあっての前記第1の磁芯用の磁性材料における比透磁率に対する前記第2の磁芯用の磁性材料における比透磁率の比は、0.5以下であることを特徴とする非接触受電素子。
- 請求項2記載の非接触受電素子において、電力伝送用に要する100kHz前後の印加磁場に対して前記連結磁性体にあっての前記受電用コイルは2次側電力の出力として100mW以上を取得可能であると共に、前記受信用コイルは2次側信号の出力として1V以上を取得可能であることを特徴とする非接触受電素子。
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