JP3823327B2 - N−ホスホノメチルグリシンの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、除草剤または除草剤の原料などとして有用なN−ホスホノメチルグリシンの改良された製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
N−ホスホノメチルグリシンおよびその塩、例えばグリホサ−ト、グリホサ−ト・ナトリウム塩、グリホサ−ト・アンモニウム、グリホサ−ト・モノジメチルアミン(Glyphosate-monodimethylamine) 、グリホサ−ト・トリメシウム塩、グリホサミン(Glyphosamine)などは生物的に分解され、また少量の使用で除草剤として有効であり、広く使用されているか、あるいはその有効性が検討されてきている。
【0003】
N−ホスホノメチルグリシンの製造方法は多数知られているが、本発明に関連する技術として、原料にアミノメチルホスホン酸類を使用するN−ホスホノメチルグリシンの製造方法もいくつか知られている。
例えば、グリオキザール水溶液中にアミノメチルホスホン酸を40〜45℃で添加したのち加熱する方法(特開昭62−61992号)、同じくアミノメチルホスホン酸とグリオキザールを原料として二酸化硫黄の存在下に反応させる方法(欧州特許第81459号及び米国特許第4369142号)、アミノメチルホスホン酸とグリオキシル酸を反応させた後にパラジウム触媒の存在下で水素還元する方法(欧州特許第186648号)、アミノメチルホスホン酸とクロロ酢酸を水酸化ナトリウムなどの酸受容体の存在下に80〜120℃程度に加熱する方法(ポーランド特許第120759号及びスペイン特許第504479号)、アミノメチルホスホン酸と臭化マロン酸ジエチルをアルカリ性条件下で反応させた後、硫酸酸性下で加水分解する方法(スペイン特許第545456号)が知られているが、これらの方法は取扱いにくい気体を使用したり、反応操作が繁雑であったり、反応の収率が充分でなかったり、必ずしも満足なものとは言えない。
【0004】
さらに、米国特許第4221583号にはアミノメチルホスホン酸とアミノメチルホスホン酸のモノ塩を形成するのに必要なアルカリ存在下でホルムアルデヒドを反応させ、アミノメチルホスホン酸をN−メチロール体とした後、pH7〜10の間でシアン化カリウムを反応させるN−ホスホノメチルグリシノニトリル、あるいはそのモノ塩の製造方法が開示されている。また、同特許中には、その方法で合成されたN−ホスホノメチルグリシノニトリルを加水分解することによりN−ホスホノメチルグリシンが得られることが記載されている。しかし、同特許の実施例の記載によれば、N−ホスホノメチルグリシノニトリルは最も収率良く得られた場合でも66%と低く、しかもアミノメチルホスホン酸の転化率を上げるためには、アミノメチルホスホン酸に対して、2.4倍モルという大過剰のシアン化カリウムが必要である。また、N−ホスホノメチルグリシノニトリルの加水分解の収率も、実施例によれば最高でも90%であるから、アミノメチルホスホン酸を基準とするN−ホスホノメチルグリシンの収率は60%程度となる。
【0005】
特開平04−279595号ではアミノメチルホスホン酸とグリコロニトリルをアルカリ金属水酸化物の存在下、60℃以下反応させたのち、さらにアルカリ金属水酸化物を加えて加水分解することを特徴とするN−ホスホノメチルグリシンの製造方法が開示されている。同特許の実施例によれば反応収率はアミノメチルホスホン酸及びグリコロニトリルを基準とした場合95%と極めて高い。また、反応操作が非常に容易であり、N−ホスホノメチルグリシンの優れた製造法の一つと位置づけられる。本特許は同特許に関連した特許に属するものである。
原料であるアミノメチルホスホン酸の製造法は従来よりいくつか知られている。
例えば、クロロメチルホスホン酸とアンモニアを高温、加圧下反応させる方法(ドイツ特許第2315886号)、N−ベンジルアミノメチルホスホン酸を水素化分解する方法(Phosphorus Sulfur 7(3),337−9(1979))、ジベンジルアミンと亜燐酸ジエステル及びホルムアルデヒドを塩酸水溶液存在下反応した後、得られたN−ジベンジルホスホン酸を水素化分解する方法(ポーランド特許第107626号)、トリアジンエステル化合物と亜燐酸ジエステルをルイス酸存在下反応させ、その後酸加水分解する方法(米国特許第4368162号)、N−イソプロピルアミノメチルホスホン酸を高温アルカリ水溶液で処理を行う方法(欧州特許第199702号)、尿素と亜燐酸及びホルマリンを反応させた後、加水分解する方法(東独特許第251259号)が知られているが、これらの方法は、出発物質の入手が困難であったり、反応操作が繁雑であったり、反応の収率が充分でなかったりと、必ずしも満足なものとは言えない。
【0006】
比較的、容易にかつ収率の良いアミノメチルホスホン酸の製造方法にN−アシルアミノメチルホスホン酸の加水分解による方法がある。
N−アシルアミノメチルホスホン酸類を製造する方法は、従来より種々知られている。
Synthetic Communications,16,(7),733-739(1986) ではN−メチロ−ルベンズアミドを三塩化燐及び亜燐酸トリメチルの混合物と反応させることによりN−ベンゾイルアミノメチルホスホン酸ジメチルエステルを製造する方法が開示されている。米国特許第2328358号及び米国特許第2304156号ではN−メチロ−ルアミドを三ハロゲン化燐と無溶媒にて反応せしめた後、過剰の水と接触させてN−アシルアミノメチルホスホン酸を製造する方法が開示されている。特開平02−262585号ではアセトアミドとパラホルムアルデヒドを酢酸中で処理した後、三塩化燐を添加して反応せしめ、得られたN−アセチルアミノメチルホスホン酸を酸又はアルカリ加水分解することによりアミノメチルホスホン酸を製造する方法が開示されており、またポ−ランド特許第117780号でもN−メチロ−ルベンズアミドを酢酸中で三塩化燐と反応させ、得られたN−ベンゾイルアミノメチルホスホン酸を加水分解することによりアミノメチルホスホン酸を製造する方法が開示されている。特開平5−112586号には、N−メチロールアミド化合物と三ハロゲン化燐を一定量の水存在下非プロトン性溶媒中反応せしめた後、過剰の水と接触させてN−アシルアミノメチルホスホン酸を製造する方法が開示されている。これらの方法は特許中の実施例によれば、高いもので90%を越える。
【0007】
N−アシルアミノメチルホスホン酸は酸もしくはアルカリの存在下、加水分解を行うことにより、アミノメチルホスホン酸もしくはアミノメチルホスホン酸アルカリ塩に変換することができるが、原因は不詳だが、酸加水分解は、アルカリ加水分解に比較して、収率が低いという問題点がある。例えば、特開平02−262585号の実施例1、2によれば、得られたN−アセチルアミノメチルホスホン酸を塩酸水溶液中で加水分解した場合、水酸化ナトリウム水溶液中で加水分解したときと比較し、アミノメチルホスホン酸の収率は約16%低い。本発明者らが特開平5−112586号の実施例16に基づき、N−アセチルアミノメチルホスホン酸を製造した後、加水分解反応を実施したところ、アルカリ加水分解でのアミノメチルホスホン酸の収率が95%であったのに対し、酸加水分解では85%と約10%ほど低かった。
【0008】
しかし、上記に示したような比較的収率の良いアルカリ加水分解よって得られるアミノメチルホスホン酸アルカリ塩をアミノメチルホスホン酸とするためには中和する必要がある。特にハロゲン化燐を用いて製造されたN−アシルアミノメチルホスホン酸はハロゲン化燐に起因すると思われる酸を反応液中に含むためその加水分解には理論量以上のアルカリが必要となり加水分解後に中和するためには、アミノメチルホスホン酸に対し、少なくとも3倍当量以上、現実的には約4倍当量以上のアルカリが必要であり、中和塩が大量に副生する。その上、ここで得られた粗アミノメチルホスホン酸はさらなる精製を場合によっては繰り返し行う必要があり、N−アシルアミノメチルホスホン酸からのアミノメチルホスホン酸の総収率は大幅に減少してしまうという問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アミノメチルホスホン酸を経由するN−ホスホノメチルグリシンを製造する方法において反応工程を単純化し副生する中和塩も少なく高収率でN−ホスホノメチルグリシンを製造できる工業的に優れた方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはアミノメチルホスホン酸とグリコロニトリルの反応がアルカリ性条件下で行われることに着目し、N−アシルアミノメチルホスホン酸のアルカリ加水分解によって得られたアミノメチルホスホン酸アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をアミノメチルホスホン酸に変換することなく、グリコロニトリルと好ましくは60℃以下の温度で反応させた後、必要に応じてアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物をさらに加えて加水分解することにより、反応工程を単純化し、アミノメチルホスホン酸のアルカリ塩の中和工程がないため副生する中和塩の量を大幅に減少でき、しかも高収率でN−ホスホノメチルグリシンが製造され得ることを見いだした。
【0011】
以下に本発明の方法について更に詳細に説明する。本発明に於ける最も重要な要件の一つは、アミノメチルホスホン酸を経由するN−ホスホノメチルグリシンを製造する方法において、N−アシルアミノメチルホスホン酸のアルカリ加水分解によって得られたアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形で含む反応液をそのまま次のグリコロニトリルとの反応に用いることである。
【0012】
本発明者らは、グリコロニトリルを用いたN−ホスホノメチルグリシンの製造方法を種々検討したところ、驚くべきことに、N−アシルアミノメチルホスホン酸のアルカリ加水分解によって得られたアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形で含む反応液を特に精製等の操作を施すことなくそのまま次のグリコロニトリルとの反応に使用してもほとんど収率の低下が見られないことを発見した。これは、N−アシルアミノメチルホスホン酸のアルカリ加水分解により得られたアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形で含む反応液からアミノメチルホスホン酸を単離した場合と比較し、次のような大きな利点がある。前述のようにハロゲン化燐を用いて製造されたN−アシルアミノメチルホスホン酸をアルカリにより加水分解する場合、N−アシルアミノメチルホスホン酸に対して少なくとも3倍当量以上、現実的には4倍当量以上のアルカリが必要となる。ここで得られたアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形で含む溶液を中和することでアミノメチルホスホン酸として単離する場合、大量の塩が副生する。さらに、ここで得られた粗アミノメチルホスホン酸はさらなる精製を場合によっては繰り返し行う必要があり、N−アシルアミノメチルホスホン酸からのアミノメチルホスホン酸の総収率は大幅に減少してしまう。その上さらに、得られたアミノメチルホスホン酸をグリコロニトリルと反応させる際には再び、アルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ土類水酸化物をpH10.5以上になるまで加えることになる。
【0013】
しかしながら、N−アシルアミノメチルホスホン酸のアルカリ加水分解によって得られたアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形で含む反応液をそのまま次のグリコロニトリルとの反応に用いれば、アミノメチルホスホン酸としての単離精製工程を除去することが可能となり、操作が簡略化されるばかりか、N−アシルアミノメチルホスホン酸の製造からN−ホスホノメチルグリシンまでの工程を総合的に見ると、発生する中和塩の量は大幅に減少し、N−アシルアミノメチルホスホン酸の単離操作によるロスも少ないため収率も大幅に向上することになる。
【0014】
原料として使用されるN−アシルアミノメチルホスホン酸は、特に製造方法に制限はないが、従来の技術の欄において示したような既知の方法で製造される。その代表的な化合物の例を例示すれば、N−ホルミルアミノメチルホスホン酸、N−アセチルアミノメチルホスホン酸、N−プロピオニルアミノメチルホスホン酸、N−(i−又はn−)ブチリルアミノメチルホスホン酸、N−(t−,i−又はn−)バレリルアミノメチルホスホン酸、N−ベンゾイルアミノメチルホスホン酸、N−(o−,m−又はp−)トルオイルアミノメチルホスホン酸、N−(o−,m−又はp−)メトキシベンゾイルアミノメチルホスホン酸、N−(o−,m−又はp−)エトキシベンゾイルアミノメチルホスホン酸、N−(o−,m−又はp−)クロロベンゾイルアミノメチルホスホン酸、N−(o−,m−又はp−)ニトロクロロベンゾイルアミノメチルホスホン酸等が挙げられる。その中で実用的な見地からN−ホルミルアミノメチルホスホン酸、N−アセチルアミノメチルホスホン酸、N−プロピオニルアミノメチルホスホン酸、N−(i−又はn−)ブチリルアミノメチルホスホン酸、N−ベンゾイルアミノメチルホスホン酸、N−(o−,m−又はp−)トルオイルアミノメチルホスホン酸、N−(o−,m−又はp−)メトキシベンゾイルアミノメチルホスホン酸が好ましく、中でも特にN−ホルミルアミノメチルホスホン酸、N−アセチルアミノメチルホスホン酸、N−ベンゾイルアミノメチルホスホン酸が好ましい。
【0015】
N−アシルアミノメチルホスホン酸は反応生成物より単離精製してから反応に供しても良いが、反応溶媒を留去した後の未精製のものを直接用いても良い。
得られたN−アシルアミノメチルホスホン酸はその後アルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ土類水酸化物を加えて、加水分解を行う。アルカリ金属水酸化物の代表的な例は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、アルカリ土類金属化合物の代表的な例は水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムである。加えるアルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ土類水酸化物の量はN−アシルアミノメチルホスホン酸に対して、それぞれ少なくとも3倍当量以上好ましくは3.5〜4.5倍モル、1.5倍モル以上好ましくは1.75〜2.25倍モル用いる。反応温度は室温でも構わないが、場合によっては高温もしくは、低温で行っても構わない。低温で行うと反応収率は若干向上するが、反応速度が低下する。逆に高温で行うと反応速度は向上するが、若干反応収率が低下する。反応収率と反応速度の兼ね合いから40℃から70℃が好ましいといえる。反応は常圧行っても構わないが、場合によっては加圧もしくは減圧下で行っても構わない。
【0016】
得られたアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形で含む加水分解反応後の粗溶液をそのまま、反応溶媒を留去した後の未精製のものを直接、あるいはアミノメチルホスホン酸アルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩として簡単に精製したものを次のグリコロニトリルとの反応に用いても構わない。アミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩として単離する場合は、一度反応溶媒を留去した後水から再結晶を行うことや、反応液を濃縮して得られた粗アミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩を単に水洗することにより、容易に実施できる。
【0017】
反応に供するグリコロニトリルの量については、アミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩に対し、1:1で良いが、いずれか一方を若干過剰に用いることは何等差し支えない。但し、アミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩に対しグリコロニトリルが多い場合には過剰量のグリコロニトリルが副反応の原因になり、少ない場合には比較的高価なアミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩が、未反応のまま残るので、共に避けることが好ましい。このような理由からグリコロニトリルはアミノメチルホスホン酸アルカリ金属化合物に対して0.5〜1.5倍モルの範囲、さらに好ましくは0.8〜1.2倍モルの範囲で反応に供されることが望ましい。反応液のpHは原料仕込濃度及び反応温度によっても変化するため一概には言えないが、N−アシルアミノメチルホスホン酸の加水分解におけるアルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ金属土類水酸化物の使用量が、N−アシルアミノメチルホスホン酸に対し4倍当量以上使用して加水分解反応を行った際には、一般的に10.5以上になる。アルカリ性が高すぎる場合は、アミノメチルホスホン酸アルカリ塩水溶液を塩酸などの鉱酸を加えてpHを調整してから反応に供しても何等差し支えない。
【0018】
反応の方式には特に制限はないが、通常はアミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の水溶液に、グリコロニトリルの水溶液を滴下した後、さらに攪拌を続けて、反応を完結させる。アミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩とグリコロニトリルの反応温度は60℃以下が望ましい。温度が高すぎる場合は副反応を生じ、収率が低下する。一方、余り低い温度では反応が遅くなるので、通常0〜60℃、好ましくは10〜40℃が適当である。また、反応に要する時間は温度によって異なるが30分〜3時間程度である。
【0019】
アミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩とグリコロニトリルを反応した後、必要に応じて、アルカリを加え、加水分解を行う。加えるアルカリとしては、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類水酸化物が挙げられる。反応系内に存在するアルカリの量が少ない場合には加水分解反応は進行し難いし、また、過剰に加えると、生成物であるN−ホスホノメチルグリシンの酸析による単離の際に塩の生成量が多くなるため避けることが好ましい。この加水分解反応は温度による制限はないが通常は60℃から反応液の沸点までの範囲で行われる。反応時間は温度によるが通常は1〜3時間程度である。なお、反応を反応液の沸点以下で行う際には、加水分解反応により生成するアンモニアを除去するため、反応終了前に少なくとも一度反応液を煮沸することが望ましい。
【0020】
かくして得られる反応液中から、場合によっては反応液を適宜希釈あるいは濃縮した後,N−ホスホノメチルグリシンを酸析によって容易に単離することが出来る。あるいは、例えばイオン交換樹脂のような他の常法の手段を単独で、あるいは併用して単離精製することができるし、再結晶によってさらに精製することもできる。
【0021】
また得られたN−ホスホノメチルグリシンから常法により、除草剤として有効なN−ホスホノメチルグリシンの塩、例えばグリホサ−ト、グリホサ−ト・ナトリウム塩、グリホサ−ト・アンモニウム、グリホサ−ト・モノジメチルアミン(Glyphosate-monodimethylamine) 、グリホサ−ト・トリメシウム塩、グリホサミン(Glyphosamine)を製造することができる。
【0022】
本発明の方法によれば、容易な操作で副生する塩も少なく高収率でN−ホスホノメチルグリシンを得ることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明によるN−ホスホノメチルグリシンの製造方法について代表的な例を示し具体的に説明する。但し、これらは本発明についての理解を容易にするための例示であり、本発明はこれのみに限定されないのは勿論のこと、これによって何ら限定的に解釈されるものではない。
【0024】
比較例1
100mlフラスコにアセトアミド17.90g(0.30モル)、95%パラホルムアルデヒド9.48g(0.30モル)、水酸化ナトリウム40%水溶液0.20g(0.002モル)及び1,4−ジオキサン30mlを入れた。この混合物を60℃,1.5時間加熱し、一様な溶液とした後冷却してN−メチロールアセトアミド溶液とした。
水氷浴上で約20℃以下に保った500mlのフラスコ中で40mlの1,4−ジオキサンに三塩化燐45.32g(0.33モル)を溶解した液に,先に調製したN−メチロールアセトアミド溶液を30mlの1,4−ジオキサンに溶解した液を、全体の温度が30℃を越えないように攪拌下に徐々に加え、更に水7.02g(0.39モル)を20mlの1,4−ジオキサンに溶解した液を上記と同様に温度が30℃を越えないように攪拌下滴下した。滴下終了後フラスコを油浴中で100℃まで徐々に昇温し、その温度で2時間保った。反応終了後、室温まで冷却し、水を100mlを徐々に滴下し、室温のまま30分攪拌した後、溶媒を留去してN−アシルアミノメチルホスホン酸を得た。HPLCによる分析の結果、N−アセチルアミノメチルホスホン酸の収率はアセトアミドを基準とした場合86%であった。
【0025】
得られたN−アシルアミノメチルホスホン酸に水酸化ナトリウム25%水溶液を239.98g(1.5モル)加え、70℃、3時間反応させることにより、アミノメチルホスホン酸ナトリウム塩溶液を得た。HPLCから求めた収率は、アセトアミドを基準とした場合、82%であった。得られた生成物を濃塩酸で酸性化し、濃縮して白色固体を得た。この固体を濃塩酸300mlの中に入れ、生成した食塩をろ過して取り除いた。ろ液を濃縮し、残った化合物に水140mlを加え100℃で加熱溶解した後、室温まで冷却し、さらにメタノール95mlを加え5℃まで冷却し再結晶を行った。得られた、アミノメチルホスホン酸の収率はアセトアミドを基準とした場合、70%(23.31g、98%純度)であった。
【0026】
300mlのフラスコに、110gの水、上記で調製したアミノメチルホスホン酸23.31g(0.210モル),48%水酸化ナトリウム水溶液33.60g(0.420モル)を入れ、攪拌した。この時のpHは13.1であった。(pH7の緩衝液で20℃において更正したpHメーターで測定した。以下同じ)
反応液を氷水浴中で冷却し反応液を5℃以下に保ちながら29.95gの40%グリコロニトリル溶液(0.210モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、5℃以下で30分、室温に戻して1時間攪拌した。この時のpHは11.0であった。次いで,16.80gの48%水酸化ナトリウム水溶液(0.210モル)を加え、2時間加熱還流させた。反応終了後の液をHPLCで分析したところ、N−ホスホノメチルグリシンを0.197モル含んでいた。反応収率は原料アミノメチルホスホン酸に対して94%であり、アセトアミドを基準とした場合、66%であった。
反応液を濃塩酸によりpH2まで中和した後、一晩放置しN−ホスホノメチルグリシンをろ別することができた。
プロセス全体から発生した食塩の量は124.48g(2.13モル)であった。
【0027】
実施例1
比較例1と同様にアミノメチルホスホン酸ナトリウム塩溶液を調製した。
300mlのフラスコに、調製した粗アミノメチルホスホン酸ナトリウム塩溶液(0.246モル)を入れ、攪拌した。その時のpHは13.9であった。反応液を氷水浴中で冷却し反応液を5℃以下に保ちながら35.09gの40%グリコロニトリル溶液(0.246モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、5℃以下で30分、室温に戻して1時間攪拌した。この時のpHは13.6であった。次いで、2時間加熱還流させた。反応終了後の液をHPLCで分析したところ、N−ホスホノメチルグリシンを0.229モル含んでいた。反応収率は原料アミノメチルホスホン酸に対して94%であり、アセトアミドを基準とした場合、77%であった。
反応液を濃塩酸によりpH2まで中和した後、一晩放置しN−ホスホノメチルグリシンをろ別することができた。
プロセス全体から発生した食塩の量は87.66g(1.50モル)であった。
【0028】
実施例2
比較例1と同様にアミノメチルホスホン酸ナトリウム塩溶液を調製した。この溶媒を留去した後、水を75ml加え、ろ別することにより、粗アミノメチルホスホン酸ナトリウム塩とした。HPLCで分析したところ、アミノメチルホスホン酸ナトリウム塩の収率はアセトアミドを基準として75%であった。
【0029】
300mlのフラスコに、110gの水、調製した粗アミノメチルホスホン酸ナトリウム塩(0.225モル)を入れ、攪拌した。その時のpHは13.1であった。反応液を氷水浴中で冷却し反応液を5℃以下に保ちながら32.09gの40%グリコロニトリル溶液(0.225モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、5℃以下で30分、室温に戻して1時間攪拌した。この時のpHは11.1であった。次いで、18.75gの48%水酸化ナトリウム水溶液(0.225モル)を加え2時間加熱還流させた。反応終了後の液をHPLCで分析したところ、N−ホスホノメチルグリシンを0.214モル含んでいた。反応収率は原料アミノメチルホスホン酸に対して95%であり、アセトアミドを基準とした場合、71%であった。
反応液を濃塩酸によりpH2まで中和した後、一晩放置しN−ホスホノメチルグリシンをろ別することができた。
プロセス全体から発生した食塩の量は101.11g(1.73モル)であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明の方法により、アミノメチルホスホン酸を経由するN−ホスホノメチルグリシンを製造する方法において反応工程を単純化し副生する中和塩も少なく、しかも高収率でN−ホスホノメチルグリシンを製造できる。
Claims (5)
- N−アシルアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物によって加水分解を行い、得られたアミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、アミノメチルホスホン酸に変換することなく、グリコロニトリルと反応させることを特徴とするN−ホスホノメチルグリシンの製造方法。
- N−アシルアミノメチルホスホン酸をアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物によって加水分解を行い、得られたアミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、アミノメチルホスホン酸に変換することなく、グリコロニトリルと反応させ、加水分解反応を行うことを特徴とするN−ホスホノメチルグリシンの製造方法。
- グリコロニトリルとの反応を60℃以下でpH10.5以上で行う請求項1〜2に記載のN−ホスホノメチルグリシンの製造方法。
- グリコロニトリルとの反応をアミノメチルホスホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩のアミノ基に対して、0.5〜1.5倍モルのグリコロニトリルを使用して行う請求項1〜3に記載のN−ホスホノメチルグリシンの製造方法。
- グリコロニトリルと反応させ、加水分解反応を行う際に、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を加える請求項2〜4に記載のN−ホスホノメチルグリシンの製造方法。
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