JP3812979B2 - 過渡解析方法及び記憶媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気回路の電位や電流などの状態変数の時間変化をシミュレーションする過渡解析方法及びこの方法を実行するプログラムが格納された記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
過渡解析方法は、半導体集積回路の設計及び開発を効率良く行うために用いられている。近年の半導体集積回路の高集積化及び大規模化に伴い、シミュレーション所要時間が増大しており、その短縮化が要求されている。
この要求に応えるために本発明者が提案した過渡解析方法(特開平8−77215号公報)を、図8に示す簡単な回路例を用いて説明する。
【0003】
この回路では、回路素子E01、E03、E12、E23及びE40が配線で接続されている。解析条件として、信号源Sから既知の信号が与えられ、ノードN3の電位が0Vに固定されている。
ノードN0〜N4での電位をそれぞれV(0)〜V(4)とし、ノードN0〜N4に流入する電流の合計をそれぞれU(0)〜U(4)とする。
【0004】
時点t=iΔt、i=0〜imaxでの状態変数ベクトルV=(V(0),V(1),V(2))を、過渡解析の解として求める。電位V(3)及びV(4)は解析条件として与えられるので、求めようとする状態変数ベクトルVの成分ではない。
実際には回路素子数が多いので、各時点での状態変数ベクトルVを、逐次近似法により求める。ノード電流ベクトルU=(U(0),U(1),U(2))は本来0であるが、逐次近似法で状態変数ベクトルVの解を求める場合には、ノード電流ベクトルUが0に収束するように繰り返し処理を行う。ノード電流ベクトルUはU=F(V)で表される。ここにF(V)は回路構成により定まるベクトルであり、その各成分は状態変数ベクトルVの全成分の非線形関数である。
【0005】
この逐次近似法では、各時点につき、j=0〜2の全てに対し|U(j)|≦εuが満たされるまで、例えばニュートンラプソン法により繰り返し処理を行って、状態変数ベクトルVを決定する。
各時点での状態変数ベクトルVは、その次元数が低いほど、より短時間で求めることができる。
【0006】
そこで、本発明者は、状態変数ベクトルVの各成分について、時間的変化の絶対値が小さな設定値εv以下の場合には、その成分を定数化することにより、状態変数ベクトルVの次元数を低くして計算時間を短縮し、その成分に対応するノード電流ベクトルUの成分の時間変化の絶対値が、小さな設定値εuを越えた場合には、対応する状態変数ベクトルVの成分を変数に戻す、という方法を提案した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法によれば、解析時間を短縮することができるが、変数を定数化しない場合よりも解析精度が低くなる。本発明者は、この精度低下が主に、状態変数ベクトルVの定数化された成分を変数に戻す時点が遅くなることに起因することを発見した。
【0008】
本発明の目的は、このような事実の発見に鑑み、状態変数ベクトルの成分の定数化を適宜行うことにより解析時間を短縮するとともに、状態変数ベクトルの定数化された成分の変数化をより適切に行うことにより解析精度を向上させることができる、過渡解析方法及びこの方法を実行するプログラムが格納された記憶媒体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及びその作用効果】
本発明では、コンピュータに実行させる過渡解析方法において、該コンピュータには、回路構成データファイルと解析条件データファイルと状態変数波形データファイルとが格納された記憶装置が接続されており、該コンピュータに対し、初期値から順次変化する各時点tについて、
該回路構成データファイルに含まれる回路素子の特性データ及び素子間接続データ、並びに、該解析条件データファイルに含まれる、外部から与えられる電位や電流の波形に基づき、時点tでの回路の状態変数ベクトルVを逐次近似法により算出し、該逐次近似法では、該状態変数ベクトルVの各成分に対応する成分を含み該状態変数ベクトルVと所定の関係にあり且つ本来定数ベクトルであるべき評価ベクトルUが、該定数ベクトルに収束したと判定されるまで繰り返し処理を行って該状態変数ベクトルVを決定し、該状態変数ベクトルVを該状態変数波形データファイルに格納する状態変数ベクトル算出ステップを実行させ、
該状態変数ベクトル算出ステップはさらに、
時点tでの該状態変数ベクトルVの成分が時間Δt前の値から、予め定められた第1設定値εv以上ずれていないときに、該状態変数ベクトルVの該成分を定数化して該状態変数ベクトルVの成分から除外する定数化ステップと、
定数化された該成分に対応する、時点tでの該評価ベクトルUの成分が、時間Δt前の値から、予め定められた第2設定値εuを越えてずれているときに、定数化された該成分を該状態変数ベクトルVの成分に復帰させる変数復帰ステップと、
定数化された該成分に対応する該評価ベクトルUの成分が時間Δt前の値から該第2設定値εu以下である第3設定値εwを越えてずれているときに、該評価ベクトルUの成分の時間Δt前の値からの変化に応じて、該評価ベクトルUの成分に対応した該状態変数ベクトルVの成分の値を補正する補正ステップと、
を有する。
【0010】
本発明によれば、補正ステップでの状態変数ベクトルVの成分の値を補正により、定数化された状態変数ベクトルVの成分の変数化の遅延が低減されて、状態変数ベクトルVの解の精度が向上するという効果を奏する。
本発明の第1態様では、上記補正ステップの上記第3設定値εwは、上記第2設定値εvに等しい。
【0011】
この第1態様によれば、評価ベクトル成分の変化が比較的小さいものについては、これに対応した状態変数ベクトル成分の補正が無視され、変数復帰条件を満たすもののみについてこの補正が行われるので、(解の精度向上量)/(補正計算時間の増加)が小さくなるのを防止することができるという効果を奏する。
本発明の第2態様では、上記補正ステップで上記状態変数ベクトルVの成分の値を補正した場合、補正された該状態変数ベクトルVを用いて再度該補正ステップを実行する。
【0012】
この第2態様によれば、評価ベクトル成分の補正の効果が隣のノードに伝播して、補正がより正確に行われるという効果を奏する。
本発明の第3態様では、上記補正ステップで補正された上記状態変数ベクトルVを該状態変数ベクトルの解とする。
この第3態様によれば、状態変数ベクトルの解の精度が、補正前の状態変数ベクトルを解とする場合よりも向上するという効果を奏する。
【0013】
本発明の第4態様では、上記状態変数ベクトルVの成分は全てノード電位であり、上記評価ベクトルUの成分は全てノード電流であり、
上記補正ステップでは、状態変数ベクトルVの第i成分V(i)を、
V(i)=V(i)−(U(i)−UB(i))/Giiと補正し、
ここに、U(i)は時点tでの評価ベクトルUの、V(i)に対応した第i成分であり、UB(i)は時点(t−Δt)での評価ベクトルの、V(i)に対応した第i成分であり、Giiは、ベクトルU=F(V)におけるベクトルF(V)のヤコビの関数行列の第i行第i列成分である。ベクトルF(V)は、その各成分がベクトルVの成分の関数であり、一般に非線形関数である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
過渡解析装置のハードウエア概略構成は、図3に示す如く、一般的なコンピュータシステムであり、コンピュータ10にコンソール11及び外部記憶装置が接続されている。この外部記憶装置には、回路構成データファイル12と、解析条件データファイル13と、状態変数波形データファイル14と、過渡解析プログラム15とが格納されている。
【0016】
以下の説明において、次のような変数を用いる。
状態変数ベクトルV、ノード電流ベクトルU及びこれらの成分は、図8についての上記説明と同様である。
V=(V(0),V(1),・・・,V(n−1))
状態変数ベクトルVには定数化された状態変数V(j)(定数化成分)が含まれず、k次元(k≦n)であるとする。定数化成分を含ませてn次元にしたものをV’で表す。
【0017】
V(i):状態変数としての、時点tでのノードiの電位、i=0〜n−1
VB(i):時点(t−Δt)でのノードiの電位
FV(i):変数フラグであり、‘1’のとき、状態変数V(i)が変数であることを示し、‘0’のとき、状態変数V(0)が定数化されていることを示す。
【0018】
FA(i):変数化決定フラグであり、‘1’のとき、定数化されている状態変数V(i)の変数化が決定されていることを示し、‘0’のとき、この決定がされていないことを示す。
FP:変数化処理中フラグであり、‘1’のとき変数化処理未了であることを示し、‘0’のとき変数化処理終了であることを示す。
【0019】
U=(U(0),U(1),・・・,U(n−1))
ノード電流ベクトルUには定数化された状態変数V(j)に対応するノード電流U(j)が含まれず、k次元(k≦n)であるとする。定数化成分を含ませてn次元にしたものをU’で表す。
U(i):時点tでノードiに流入する電流の合計(ノード電流)
UB(i):時点(t−Δt)でノードiに流入する電流の合計
F(V):各成分がベクトルVの成分の関数、すなわち、F(V)=(F1,F2,・・・,Fk−1)と表すと、成分F1,F2,・・・,Fk−1はいずれもV(1)〜V(k−1)の関数、一般に非線形関数であり、回路構成により定まり、ベクトル式U=F(V)が成立する。
U=F(V)に対応したU’とV’の関係をU’=F’(V’)で表す。
【0020】
G:ベクトルF(V)のヤコビの関数行列であり、k行k列のコンダクタンス行列であって、その第i行第j列成分は、FiのV(j)に関する偏微分∂Fi/∂V(j)である。列ベクトルVが時間Δt後に列ベクトルV+ΔVになるとすると、F(V+ΔV)=F(V)+GΔVの関係が成立する。V’及びU’に対応したn行n列のコンダクタンス行列をG’で表す。
【0021】
次に、図1及び図2を参照して、コンピュータ10で実行される過渡解析プログラムの内容を説明する。図2は、図1中のステップ22の詳細フローチャートである。以下、括弧内の数値は、図中のステップ識別番号である。
(20)回路構成データファイル12及び解析条件データファイル13からそれぞれ回路構成データ及び解析条件データを入力する。回路構成データは、モデル化された回路素子の特性データと素子間接続データとからなる。解析条件は、既知の条件であって、外部から与えられる電位や電流の波形等である。
【0022】
変数フラグFV(0)〜FV(n−1)にそれぞれ初期値1を代入し、時点tに初期値0を代入する。
(21)上述のように例えばニュートンラプソン法を用いて、時点tでの状態変数ベクトルVを求める。
(22)後述のように、状態変数ベクトルVの定数化成分について変数化条件を満たすものを変数に復帰させる。最初は定数化成分が存在しないので、変数化されない。
【0023】
(23)i=0〜n−1の各々について、FV(i)=‘1’のとき、|V(i)−VB(i)|<εvであれば、すなわち電位V(i)が定数化条件を満たせば、変数フラグFV(i)に‘0’を代入する。ここにεvは、予め設定された小さな第1設定値である。
例えば図5(A)において、t=t4で状態変数V(i)が定数化される。
【0024】
(24)i=0〜n−1の各々について、FV(i)=‘0’かつFA(i)=‘1’ならば、すなわち、状態変数V(i)が定数化されており、かつ、ステップ22でその変数化が決定しておれば、変数フラグFV(i)に‘1’を代入する。変数化決定フラグFA(i)の初期化は、ステップ21〜28のループの次の繰り返し処理、すなわちΔt後のステップ22において、後述のように行われる。
【0025】
変数化処理であるステップ22と本ステップ24との間に、定数化処理であるステップ23を置いているのは、ステップ22で変数化が決定しても、ステップ22での後述の電位補正処理により、ステップ23で定数化される場合を考慮したことによる。
(25)状態変数ベクトルVを図3の状態変数波形データファイル14に書き込む。
【0026】
(26)t≧teであれば処理を終了し、そうでなければステップ27へ進む。ここにteは、時間tの範囲の上限値であり、予め設定されている。
(27)i=0〜n−1の各々について、FV(i)=‘0’であれば、U’=F’(V’)からノード電流U(i)を算出し(ノード電流ベクトルUにはノード電流U(i)が含まれていないのでU=F(V)からノード電流U(i)を求めることはできない。)、これをUB(i)に代入する。但し、ステップ22中の後述のステップ224で、既にノード電流U(i)が算出されていれば、ここで再度ノード電流U(i)を算出することなく、このU(i)をUB(i)に代入する。
【0027】
このUB(i)は、ステップ21〜28のループの次の繰り返し処理、すなわちΔt後のステップ22中の後述のステップ225及び226において、用いられる。
(28)時点tにΔtを加えて、上記ステップ21へ戻る。
次に、上記ステップ22の変数化処理の詳細を説明する。
【0028】
(221)変数化決定フラグFA(0)〜FA(n−1)に初期値0を代入する。
(222)変数化処理中フラグFP及びノードiに初期値0を代入する。
(223)FV(i)=‘0’かつFA(i)=‘0’であれば、すなわち定数化されている状態変数V(i)の変数化が決定されていなければ、ステップ224へ進み、そうでなければステップ227へ進む。
【0029】
(224)U’=F’(V’)からノード電流U(i)を算出する。
(225)|U(i)−UB(i)|>εuであれば、すなわち変数化条件を満たせば、ステップ226へ進み、そうでなければステップ227へ進む。ここにεuは、予め設定された小さな第2設定値である。εuの値は、図1のステップ23のεvと独立に設定することができる。
【0030】
例えば図5(B)において、t=t7で状態変数V(i)が変数化条件を満たす。
(226)変数化処理中フラグFP及び変数化決定フラグFA(i)に1を代入する。
ΔVi=(U(i)−UB(i))/Giiを算出し、V(i)からΔViだけ差し引く。ここに、Giiは、コンダクタンス行列Gの第i行第i列の成分である。
【0031】
次に、図4を参照して、状態変数V(i)をこのように補正する理由を説明する。
図4(A)に示す如く、回路素子E12の一端側のノードN1の電位V(1)が変数であり、回路素子E12と回路素子E23との間のノードN2の電位V(2)及び回路素子E23の、ノードN2と反対側のノードN3の電位V(3)が定数化されているとする。回路素子E12及びE23に流れる電流を、図示のようにI12及びI23とすると、U(2)=−I12+I23となる。
【0032】
図4(B)〜(D)はそれぞれ電位V(1)〜V(3)のt=t1及びt=t2での値を示し、図4(E)〜(G)はそれぞれノード電流U(1)〜U(3)のt=t1及びt=t2での値を示す。図4(B)〜(G)中、実線は補正前である。t=t2を現時点とし、t=t1を現時点から時間Δt前の時点とする。Δt前から、電位V(1)が変化しているので、電流I12も変化しており、ノード電流U(2)がΔt前からΔU(2)=U(2)−UB(2)=−ΔI12+ΔI23だけ変化している。電位V(2)及びV(3)はΔt前から変化していないので、電流I23の変化ΔI23は0であり、ΔU(2)=−ΔI12となる。
【0033】
電位V(2)は定数化されているので、Δt前と同一であるが、より正確には、電流変化量ΔI12により、電位V(2)がΔt前からΔV(2)=−ΔI12/G22だけ低下、すなわちΔI12/G22だけ上昇すると考えられる。
そこで、電位V(2)を、
V(2)−ΔV(2)=V(2)−(U(2)−UB(2))/G22
と補正する。図4(C)中の一点鎖線はこの補正後を示している。
【0034】
|U(2)−UB(2)|が比較的小さいものは補正量ΔV(2)を無視することができるので、ステップ225で変数化条件|U(i)−UB(i)|>εuを満たすもののみについてこの補正を行うことにより、(解の精度向上量)/(補正計算時間の増加)が小さくなるのを防止している。
この補正により、電位V(2)がΔV(2)低下すると、電流I23が増加するので、図4(G)中の一点鎖線で示すようにノード電流U(3)がΔt前から減少し、ΔU(3)≠0となる。すなわち、電位補正の効果が隣のノードに伝播して電流補正を促すことになる。この電流補正により、ステップ225で変数化条件を補正前に満たさなかったものが満たすようになるものも考えられ、以下同様にして電位及び電流の補正の効果が伝播する。
【0035】
このようにすることにより、状態変数ベクトルVの定数化成分の変数化の遅延が低減されて、状態変数ベクトルVの解の精度が向上する。
図6(A)及び(B)は、図4(A)における電位V(1)及びV(2)の変化を示し、図6(C)は上記補正量ΔV(i)を考慮しなかった従来例での電位V(2)の変化を示す。
【0036】
(227)ノードiを1だけインクリメントする。
(228)i<nであればステップ222へ戻り、i=nとなればステップ229へ進む。
(229)FP=‘1’であれば、すなわちステップ226の電位補正がi=1〜n−1の少なくとも1つについて行われた場合には、上記補正の効果の伝播を行わせるために、ステップ222へ戻る。その後のステップ224では、補正後の電位V(i)を用いることにより、上記のように電位補正の効果が隣のノードに伝播して、このノードの電流補正が行われることになる。
【0037】
FP=‘0’であれば、すなわち、補正の効果の伝播が終了した場合には、変数化処理を終了する。
なお、上記補正を、ステップ22でのみ用い、すなわち変数化遅延を低減するためだけに用い、他のステップで補正前の状態変数ベクトルVを用いても、変数化遅延低減の効果は得られる。
【0038】
次の第2実施形態は、第1実施形態がこのような補正の限定的使用であると仮定している。
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態の過渡解析方法において図1のフローのステップ22とステップ23との間に挿入されるステップ29を示す。
【0039】
このステップ29は、上記補正をステップ22以外の処理でも用いるようにするためのものである。
ステップ22では、i=0〜n−1の各々について、FV(i)=‘0’かつFA(i)=‘1’であれば、すなわち、定数化されてる状態変数V(i)の変数への復帰がステップ22で決定された場合には、ステップ22での補正の前の電位V(i)から、ステップ22での上記ΔViを差し引くことにより、電位V(i)を補正されたものにする。
【0040】
これにより、電位V(i)がより正確になり、状態変数ベクトルVの解の精度がより向上する。
なお、本発明には外にも種々の変形例が含まれる。
例えば、図2のステップ225の処理を、|U(i)−UB(i)|>εwを判定する第1処理と|U(i)−UB(i)|>εuを判定する第2処理とに分け、第2設定値εuを第3設定値εwよりも大きい設定値とし、さらに、図2のステップ226の処理を、フラグFA(i)に1を代入する第3処理と、残りの第4処理とに分け、
第1処理で肯定判定されたときに第4処理を実行し、次に第2処理を実行し、第2処理で肯定判定されたときに第3処理を実行し、次にステップ227へ進み、第1処理又は第2処理で否定判定された場合にステップ227へ進むようにしてもよい。このようにすれば、計算量が増加するが、補正がより正確に行われ、変数化遅延低減効果が向上する。
【0041】
また、電流と電位とは所定の関係にあるので、状態変数ベクトルVの成分は電位に限定されず、状態変数ベクトルVの全成分又はその一部は電流であってもよい。但し、この電流は回路素子を流れる電流であって、本来0であるノード電流ではない。
評価ベクトルUはノード電流を成分とするベクトルに限定されず、時点tでの状態変数ベクトルVの解の収束を判定できるものであればよく、状態変数ベクトルVと所定の関係にあり且つ本来定数ベクトルになるものであればよい。
【0042】
さらに、図1のステップ23のVB(i)及び図2のステップ225及び226のUB(i)は、時点tより少し前の時点でのものであればよく、例えば時点(t−2Δt)でのものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の過渡解析方法を示すフローチャートである。
【図2】図1のステップ22の詳細を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態の過渡解析装置概略構成を示すブロック図である。
【図4】定数化された状態変数の変数化を説明する図である。
【図5】ノードiでの電位及び電流の変化と状態変数の定数化及び変数化を示す図である。
【図6】定数化された状態変数の変数化が従来よりも適正に行われることを示す線図である。
【図7】本発明の第2実施形態の過渡解析方法において図1のフローに挿入されるステップを示す図である。
【図8】解析対象の簡単な例を示す回路図である。
【符号の説明】
10 コンピュータ
12 回路構成データファイル
13 解析条件ファイル
14 状態変数波形ファイル
Claims (5)
- コンピュータに実行させる過渡解析方法において、該コンピュータには、回路構成データファイルと解析条件データファイルと状態変数波形データファイルとが格納された記憶装置が接続されており、該コンピュータに対し、初期値から順次変化する各時点tについて、
該回路構成データファイルに含まれる回路素子の特性データ及び素子間接続データ、並びに、該解析条件データファイルに含まれる、外部から与えられる電位や電流の波形に基づき、時点tでの回路の状態変数ベクトルVを逐次近似法により算出し、該逐次近似法では、該状態変数ベクトルVの各成分に対応する成分を含み該状態変数ベクトルVと所定の関係にあり且つ本来定数ベクトルであるべき評価ベクトルUが、該定数ベクトルに収束したと判定されるまで繰り返し処理を行って該状態変数ベクトルVを決定し、該状態変数ベクトルVを該状態変数波形データファイルに格納する状態変数ベクトル算出ステップを実行させ、
該状態変数ベクトル算出ステップはさらに、
時点tでの該状態変数ベクトルVの成分が時間Δt前の値から、予め定められた第1設定値εv以上ずれていないときに、該状態変数ベクトルVの該成分を定数化して該状態変数ベクトルVの成分から除外する定数化ステップと、
定数化された該成分に対応する、時点tでの該評価ベクトルUの成分が、時間Δt前の値から、予め定められた第2設定値εuを越えてずれているときに、定数化された該成分を該状態変数ベクトルVの成分に復帰させる変数復帰ステップと、
定数化された該成分に対応する該評価ベクトルUの成分が時間Δt前の値から該第2設定値εu以下である第3設定値εwを越えてずれているときに、該評価ベクトルUの成分の時間Δt前の値からの変化に応じて、該評価ベクトルUの成分に対応した該状態変数ベクトルVの成分の値を補正する補正ステップと、
を有することを特徴とする過渡解析方法。 - 上記補正ステップの上記第3設定値εwは、上記第2設定値εvに等しい、
ことを特徴とする請求項1記載の過渡解析方法。 - 上記補正ステップで上記状態変数ベクトルVの成分の値を補正した場合、補正された該状態変数ベクトルVを用いて再度該補正ステップを実行する、
ことを特徴とする請求項2記載の過渡解析方法。 - 上記補正ステップで補正された上記状態変数ベクトルVを該状態変数ベクトルの解とする、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の過渡解析方法。 - 上記状態変数ベクトルVの成分は全てノード電位であり、上記評価ベクトルUの成分は全てノード電流であり、
上記補正ステップでは、状態変数ベクトルVの第i成分V(i)を、
V(i)=V(i)−(U(i)−UB(i))/Giiと補正し、
ここに、U(i)は時点tでの評価ベクトルUの、V(i)に対応した第i成分であり、UB(i)は時点(t−Δt)での評価ベクトルの、V(i)に対応した第i成分であり、Giiは、ベクトルU=F(V)におけるベクトルF(V)のヤコビの関数行列の第i行第i列成分である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の過渡解析方法。
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