JP3810729B2 - 海上探索システム、及び、海上探索方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海上探索システム、及び、海上探索方法に関し、特に、遭難者、遭難船、不審船のような海上浮遊物体を探索するレーダを装備する海上探索システム、及び、海上探索方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
海上遭難者又は海上遭難船は、船舶により探索される。目視探索を補充するためにレーダ探索が行われる。船舶に搭載され画像を動画として形成するレーダは、結果的には双眼鏡の目視探索である。レーダにより走査的に静止画像を形成する技術は知られている(参照:後掲特許文献1)。得られた画像を処理する技術は知られている(参照:後掲特許文献2)。
【0003】
探索は、広範囲を短時間で行われることが求められる。レーダを船体に対して旋回させて船体の周囲を探索する技術では、その船体が高速になれば、探索していない領域であるブラインド領域の発生が生じる恐れがある。
【0004】
ブラインド領域がなく探索目標の全領域を確実に探索することができる技術の確立が求められる。そのような技術では、その探索時間の最短化とその最短化のための船速が確実に知られることが重要である。同じ領域の探索の回数が多いことがより好ましい。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−188747号
【特許文献2】
特開2002−063575号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、探索領域の探索を確実にすることができる海上探索システムを提供することにある。
本発明の他の課題は、探索のための船体条件を確実に求めることができる海上探索システムを提供することにある。
本発明の更に他の課題は、探索行為の円滑化のためにマンマシンインタフェースを確立することができる海上探索システムを提供することにある。
本発明の別な課題は、探索不可能領域の存否の判定により探索を確実化する技術を確立する海上探索方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
その課題を解決するための手段が、下記のように表現される。その表現中に現れる技術的事項には、括弧()つきで、番号、記号等が添記されている。その番号、記号等は、本発明の実施の複数の形態又は複数の実施例のうちの少なくとも1つの実施の形態又は複数の実施例を構成する技術的事項、特に、その実施の形態又は実施例に対応する図面に表現されている技術的事項に付せられている参照番号、参照記号等に一致している。このような参照番号、参照記号は、請求項記載の技術的事項と実施の形態又は実施例の技術的事項との対応・橋渡しを明確にしている。このような対応・橋渡しは、請求項記載の技術的事項が実施の形態又は実施例の技術的事項に限定されて解釈されることを意味しない。
【0008】
本発明による海上探索システムは、計算器(6)と、表示画面(8)とから構成されている。表示画面(8)は、船速が入力される速度設定領域(21)と、レーザレーダ(1)の光軸の角速度が入力される角速度設定領域(22)と、探索範囲を設定する探索範囲設定領域(28)と、探索可能又は探索不可能を表示する探索判定表示領域(23)とから形成されている。計算器(6)は、船速と角速度と探索範囲とに基づいて探索可能又は探索不可能を計算により求めて、探索可能又は探索不可能を前記探索判定表示領域(28)に表示する。探索不可能はレーザレーダの探索信号が届かないブラインド領域が存在することである。ブラインド領域は、計算器(6)により瞬時的に計算され得る。
【0009】
画面をマンマシーンインタフェースとして対話的に固定パラメータと変数が入力され、その計算結果がそのマンマシーンインタフェースに表示され、緊急を要する探索が円滑に実行される。ブラインド領域が計算により求められるので、公知技術に比べて探索精度は完全である。
【0010】
船速と角速度とが独立に、単独に、又は同時的に入力され、多様な探索態様が探索者により最適切に選択され得る。計算器には座標系が設定され、座標系の極座標表示では回転方向座標はθで表され、探索範囲の最小半径はd1で表され、探索範囲の最大半径はd2で表され、角速度はωで表され、探索範囲の内縁は、x1=cosθ・d1,y1=sinθ・d1+vt
で表され、探索範囲の外縁は、
y2=cosθ・d2,y2=sinθ・d2+vt
で表される。探索範囲は、極座標系として表示され、探索可能範囲と探索不可能範囲が一目瞭然に表示される。レーザレーダの存在の高さ位置に対応して、レーザ光軸の半径方向の走査が実行され得る。
【0011】
計算器(6)は、探索回数が1回である第1探索範囲部分と探索回数が2回である第2探索範囲部分を計算により求めることができる。表示画面はその第1探索範囲部分とその第2探索範囲部分を識別して表示し、不可能範囲と可能範囲が一目瞭然である。探索可能である場合、探索範囲の探索時間が計算され、探索の現実的有効性が判断される。表示画面は、その探索時間を表示する。
【0012】
本発明による海上探索システムは、計算器(6)と、表示画面(8)とから構成されている。表示画面(8)は、船速が表示される速度表示領域(26)と、レーザレーダ(1)の光軸の角速度が表示される角速度表示領域(27)と、探索範囲を設定する探索範囲設定領域(28)と、船速が入力される速度設定領域(21)と、光軸の角速度が入力される角速度設定領域(22)とから形成されている。計算器は探索範囲を探索することができる船速と角速度とを計算する。速度表示領域(26)は、計算器により計算される船速を表示し、角速度表示領域(27)は、計算器(6)により計算される角速度を表示する。
【0013】
探索範囲を指定することにより、探索のために必要である船速と角速度が計算され、その船速と角速度が表示される。その表示領域をクリックすれば、その船速と角速度が実線のプロペラとレーザレーダの走査機構に制御信号として入力される。計算結果を自動的に制御信号として用いることは有効である。表示画面(8)は、探索範囲を探索することができる時間を表示する探索時間表示領域(29)を形成する。計算器(8)は、計算により求められた船速と計算により求められた角速度に基づいて探索時間を計算する。探索時間表示領域(29)は、計算器により求められた探索時間を表示する。
【0014】
本発明による海上探索方法は、船体(2)に固定される運動座標系で規定される距離d1に基づく内縁曲線とその運動座標系で規定される距離d2に基づく外縁曲線の間の進行方向幅でレーダ信号を海面に送信するステップと、船速とレーダ信号の走査の角速度とに基づいて内縁曲線と外縁曲線とを求めるステップと、第j巡目の外縁曲線と第(j+1)巡目の内縁曲線との交点(C)の存否を求めるステップと、交点(C)の存否に対応して監視不可能領域の存否を判定するステップとから構成されている。監視不可能領域の存否の判定は、人命救助又は重要浮遊物体の高精度探知のために顕著に重要である。
【0015】
進行方向に向く座標軸を地球座標系にy軸として設定するステップと、y軸に直交するx軸上でy軸から規定される距離の範囲にある有効探索幅xsを設定するステップと、交点のx座標の絶対値xcと有効探索幅xsとの大小関係を比較するステップとが更に追加的に構成される。基準探索幅の設定は、有効な探索と探索時間の短縮を調和させることができる。このような設定は、探索時間が規定される場合に有効である。
【0016】
その判定するステップは、xc>xsであれば、探索不可能領域無しを判定するステップを形成することが特に有効である。
【0017】
交点(C)が存在しない場合に、第(j+1)巡目の外縁曲線の終端点と第(j+1)巡目の内縁曲線の終端点とを結ぶ直線(EF)を求めるステップと、直線(EF)と第j巡目の外縁曲線との交点のx座標xdを求めるステップとが更に追加的に構成される。このステップは、有効探索幅xdを確定的にすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図に対応して、本発明による海上探索システムは、船体にレーザレーダが搭載されている。そのレーザレーダ1は、船体2の高位部に支持されている。船体2の高位部として、マストの頂部又は船橋の高位部が好適に例示される。レーザレーダ1は、2軸旋回自在に船体に支持されている。その2軸旋回位置を示す2つの角度θとβとは、基準姿勢(揺れがなく完全に静止している状態姿勢)の船体に対して、特には、その状態の船体の縦方向中心線(船体の進行方向)に対して定義され、角度θは水平面上の極座標系で定義されるレーザレーダ1の光軸の角度座標であり、角度βは鉛直面に対するレーザレーダ1の光軸の角度座標である。ここで、レーザレーダ1は、波長が855nmのレーザ光(夜間と昼間に、霧中と雨中で有効に使用可能である波長のレーザであり距離測定用の信号が載せられる光)に最大感度を有するCCDを用いたCCDカメラ(その光軸が既述の光軸)であるレーザ受信器と、その波長のレーザを広域的領域、又は、自動焦点制御機構を持ち局所領域を走査的に照射するレーザを発信するレーザ発振器を内蔵するレーザ発振器とから形成されるレーザ送受信器である。日中には、可視光TVカメラが併用され得る。
【0019】
図2は、本発明による海上探索システムの計算器を示している。その計算器3は、初期値4を入力する入力用画面5と、求める値を計算する計算器6と、初期値4と計算結果7とを表示し計算の条件を設定して計算器6の計算を操作する操作用画面8とから構成されている。入力用画面5と操作用画面8は、同一の画面として形成されることが好ましい。
【0020】
図3は、船体2の運動と実探索領域の幾何学的関係を示している。その実探索領域は、レーザレーダ1の水平面上の旋回角度θの関数である。船体2の特定点、特に、レーザレーダ1に設定される有効基準点が、極座標系(x,y)の原点として定められる。z軸は、後述される。入力用画面5から計算器6に入力される初期値4は、探索開始点A1とA2の座標である。探索開始点A1と探索開始点A2とは、探索範囲境界を示す2つの半径方向線のうちの1つの半径方向線に載っている。その半径方向線上で、両探索開始点A1とA2の間の距離は、(d2−d1)である。レーザレーダ1は、極座標系上で角度θ1と角度θ2の間で往復運動的に旋回する。その旋回速度(第1角速度)は、ω1(=dθ/dt)で表される。ω1が零である場合に任意の半径方向線を含む1鉛直面の上で、レーザレーダ1の光軸は第2角速度ω2で半径d1の円と半径d2の円との間で往復運動的に旋回する。
【0021】
ステップS1:
入力用画面5により計算器6に初期値4が、図3に示される座標系上で設定される。初期値4として下記固定パラメータが例示される。
水平面上の回転方向探索範囲:
θ1(初期角度)=30゜,θ2(初期角度)=150゜
レーザレーダ1の原点からの高さH(z軸座標):8m
水平面上の半径方向探索範囲:
d1(初期距離)=1km,d2=2km
船速v:
初期設定値=20(ノット)又は任意値
第1角速度ω1:
初期設定値ω1=0又は任意値(上限値あり)
【0022】
ステップS2:
次に、変動パラメータが指定される。変動パラメータとして、船速v(ノット)と第1角速度ω2が例示される。船速v(ノット)と第1角速度ω1とは独立変数であるが、第2角速度ω2は第1角速度ω1の従属変数である。光軸と海面の交点にレーザレーダ1の焦点が計算的に自動制御される。その焦点を中心とする画像取得可能半径はaで表される。半径方向座標rがより大きくなれば画像取得可能半径aはより大きくなるが、画像取得可能半径は近似的に一定であると妥当的に仮定される。時刻列tjの隣り合う2つの時刻点の間は、一定時間間隔Δtに設定される。
【0023】
ステップS3:
変動パラメータは、下記式で変化する。:
v=v−(n−1)Δv,nの初期値=1
ω1=ω1−(m−1)Δω,mの初期値=1
ここで、mは、nがnに到達する度に1だけ増加する。
【0024】
ステップS4:
レーザレーダ1の光軸と海面とが交わる交点(焦点位置)の座標の変動(交点軌跡)が時系列tjで計算される。高さHが零mであれば、第2角速度ω2は第1角速度ω1に独立に零に設定される。半径方向線上の2点の撮影により下記式で表される内縁と外縁の間の領域は撮影可能範囲(探索可能範囲)であることが仮定される。図3に示されるように、交点軌跡に基づくレーザレーダ1の撮影可能範囲の内縁座標(x1,y1)とその撮影可能範囲の外縁座標(x2,y2)は、下記式で計算される。:
x1=cosθ・d1,y1=sinθ・d1+vt
y2=cosθ・d2,y2=sinθ・d2+vt
θ=ω1・t
ここで時間の変数tは、順序数である時刻列tjの集合である。
θが150゜に到達すればθは30度まで順次に一定角度幅Δθで減少し、θが30゜に到達すればθは150度まで順次に一定角度幅Δθで増大する。項vtがなければ、両縁は円であるが、船体2のvノットの前進により、両円は円ではなく、円の中心点が時刻列上で増大する一定半径円の包絡線9,10である。
【0025】
ステップS5:
両縁の半径方向間は探索可能領域であるが、多数組の両縁で挟まれる複数領域である探索可能領域は海面の規定角度範囲の全領域を被覆する場合は、今の計算は全面探索可能であることを数学的に証明している。その探索可能領域がその規定角度範囲の全領域を被覆しない場合には、全面探索不可能を証明している。このような全面探索可能又は全面探索不可能が判定される。全面探索可能はブラインド領域の不存在に同義であり、全面探索不可能はブラインド領域の存在に同義である。ブラインド領域が存在しない場合には、その時の探索可能船速v(今の場合20ノット)12と探索可能第1角速度ω13が操作用画面8に送信される。
【0026】
ステップS6:
ブラインド領域が存在する場合には、ステップS3に戻り、船速vは、(v−Δv)に減少的に再設定される。船速vが20ノットから5ノットまで3段階で減速される。nが4の時の判定が行われてその時の探索可能船速v12と探索可能第1角速度ω13が出力され、又は、nが4の時の判定が行われて探索可不可能であれば、プロセスはステップS3に戻り、n=1に設定が維持されて、第1角速度ω1の値が減少的に再設定される。第1角速度ω1が走査されて最小値に設定されて、判定が行われれれば、ステップS3でn=2が設定される。for(n=1 to 4)for(m=1 to m)が二重に繰り返される。このように、船速vと第1角速度ω1のあらゆる組合わせによる判定が行われる。
【0027】
レーザレーダ1の高さHが考慮される場合には、第2角速度ω2が零でない値に設定される。交点座標は、次式に変更される。
x=cosθ・d(t),y1=sinθ・d(t)+v・t
包絡線を形成する円の半径は一定ではなく、半径dは時間の関数d(t)で表される。このような関数d(t)に基づいて、ステップS3〜ステップS5が繰り返される。
【0028】
図4は、操作用画面8の詳細を示している。操作用画面8は、探索対象物体の撮影像を表示する探索対象物体表示部位14を有する。探索対象物体表示部位14に画像化されている探索領域15は、極座標で表示されている。探索領域15は、探索領域表示画面16で表されている。探索領域表示画面16は、多数の部分探索領域17に分割されている。部分探索領域17に物体が存在することは、画像処理により高精度化されて判定される。図4には、500m前方の海面近傍に存在する鳥が領域17−1に存在することが例示的に示され、又は、1000m前方の海面に存在する不審船が領域17−2に存在することが例示的に示されている。
【0029】
操作用画面8は、計算用船速vを設定する計算用速度設定領域18と計算用第1角速度を設定する計算用第1角速度設定領域19とを更に有している。部分探索領域17と計算用第1角速度設定領域19のクリック領域をそれぞれにクリックすることにより、設定領域を選択することができる。設定値設定欄21,22には、それぞれに入力用画面5を介して計算用船速vと第1角速度ωが設定される。既述の計算に基づいて判定される探索可能と探索不可能は、探索判定表示領域23に選択的に表示される。計算器6は、そのような設定の度に計算することができ、又は、両設定値と判定のテーブルを準備していて、計算なしに判定することができる。
【0030】
操作用画面8は、霧、雨、晴天の気象条件を選択する第1モード選択欄24と、昼間、夜間のような光量条件を選択する第2モード選択欄25を有している。これらのモードに基づいて、レーザレーダ1の照射立体角度又は距離的探索範囲が自動的に決定される。操作用画面8は、実船速vと実第1角速度ωを設定する実速度設定領域26と実第1角速度設定領域27とを更に有している。操作用画面8は、探索範囲を規定する半径方向範囲d1,d2と、回転方向範囲θ1,θ2とを設定する探索範囲設定領域28を更に有している。探索範囲設定領域28による設定に基づいて、探索領域15が探索領域表示画面16に表示される。
【0031】
入力された条件、特に、判定が探索可能である実速度設定領域26と実第1角速度設定領域27とに基づいて、計算器6は、設定範囲の探索のために必要である探索時間と、同じ領域について探索される探索回数を計算することができる。その計算の結果である探索時間と探索回数は、探索時間表示領域29と探索回数表示領域31にそれぞれに表示される。
【0032】
図5と図6は、探索可能な場合の探索回数を示している。図5は、船速が20ノットである場合の探索回数分布を示している。領域Iは探索回数が1であり、領域IIは探索回数が2であり、領域IIIは探索回数が3である。図6は、船速が5ノットである場合の探索回数分布を示している。領域Iは探索回数が1であり、領域IIは探索回数が2であり、領域IIIは探索回数が3である。船速がより遅くなれば、探索精度が向上する。
【0033】
図7は、立体的視野範囲の規定のための計算方法を示している。パラメータが下記のように設定される。
h:カメラ高さ(m)
α:カメラ俯角(deg)
β:カメラ画角(deg)(CCD配列比4:3の影響は無視)
v:船速:m/sec
ω:カメラ旋回速度
φ:カメラ旋回範囲
d:カメラ視野中央点までの水平距離
d1:カメラ視野下端までの水平距離
d2:カメラ視野上端までの水平距離
【0034】
図から分かるように、
d=h/tan(α)
d1=h/tan(α+β/2)
d2=h/tan(α−β/2)
パラメータα,β,d(d1又はd2)のうちの2つが定まれば残りの1つは算出され得る。d2とβが規定されれば、αは一意に定まる。
【0035】
図8は、船体が直進しながらカメラを旋回(sweep)させれ得られる監視領域の計算方法を示している。その極座標系で、基準時刻から時間tが経過した後の船体から見たカメラの光軸の角度座標はθで表される。カメラ旋回角度位置θは、旋回角速度ωと旋回範囲φと、基準位置のカメラ旋回角度位置に基づいて計算され得る。カメラは、θ=ωtとして、旋回範囲の両端角度位置でターンする。初期旋回角度位置として、θ=90+φが規定されている。カメラ視野上下端座標の軌跡は、内縁点がpで表され外縁点がqで表されて、次式で記述される。
xp=d1cosθ
yp=d1sinθ+vt
xq=d2cosθ
yp=d2sinθ+vt・・・(1)
【0036】
(v,ω,φ,β)のパラメータの組合せによれば、図9に示されるように、1巡目の上端曲線と1巡目の下端曲線とで挟まれる領域Aは監視可能領域であるが、1巡目の上端曲線と2巡目の下端曲線とで挟まれる領域Bは監視不可能領域である。船速vに対して(1)旋回速度ωが遅すぎる場合、(2)旋回範囲φが広過ぎる場合、又は、(3)既述の画角βが小さ過ぎる場合には、監視不可能領域が存在する。
【0037】
図10は、監視不可能領域存否の判定を行う存否判定計算方法を示している。監視可能領域の境界線上ある2点A,Bが着目される。
A:2巡目の旋回走査(sweep)が完了した時点の内縁点
B:1巡目の外縁走査の途中で点Aと同じx座標を持つ点
点Aの座標:(xa,ya)
点Bの座標:(xa,yb)
点Cの座標(xc,yc)が下記のように定義される。
点C:1巡目の走査の外縁と2巡目の走査の内縁の交点
点Aの座標(xa,ya)は、時刻が既知であるから、式(1)により計算により求められる。点Bの座標:(xa,yb)のy座標ybは、1巡目の外縁の走査の途中でx座標xaが既知であるから、式(1)より計算により求められ得る。このように、点Aの座標(xa,ya)と点Bの座標(xa,yb)は、算出可能である。
【0038】
図から容易に分かるように、yb>yaであれば監視不可能領域開始点Cが存在する。上縁曲線と下縁曲線は既知であるから、両曲線の交点Cの座標は解析的に求められ得る。交点Cが存在し、且つ、交点Cが船体の真正面前方(y軸)より右に存在すれば、左舷側は完全に監視不可能領域である。交点Cが存在し、且つ、交点Cが船体の真正面前方より左に存在すれば、右舷側は完全に監視可能領域であるが、左舷側の一部は監視不可能領域である。今、y軸から遠ざかる点の領域幅が最低有効探索幅として設定されxsで表される。xsは、十分に大きい値に設定されている。以下、xcは絶対値で表される。xc<xsであれば、計算器6によりステップS5で、監視不可能領域が存在すると判定される。xc>xsであれば、僅かに監視不可能領域が存在する場合にも、計算器6はステップS5で監視不可能領域無しの判定を行う。図10は、y軸に対して左右対称であるから、最低有効探索幅は2xsに設定される。
【0039】
ya<=ybであれば、点Cは存在しない。既述の点Aは、点Fで表されている。1巡目の走査の外縁の開始点がGで表され、2巡目の走査の外縁曲線の終了点はEで表されている。2巡目の内縁曲線と直線EFの交点は、Dで表されている。点Dのx座標は、計算により求められる。Dのx座標の絶対値は、xdで表される。有効探索幅2xdの監視領域の任意の監視点は、監視可能である。
【0040】
図12は、既述の監視不可能領域の存否判定の計算方法のフローを示している。
ステップS6:yaとybの大小関係の判定
ステップS8:ya>ybであれば、交点Cの座標の算出
ステップS9:xs>xcの判定
ステップS10:xs>xcであれば、監視不可能領域有りの判定
ステップS11:xs<=xcであれば、探索幅2xcで監視不可能領域無しの判定
ステップS12:ya<=ybであれば、点Dの座標の算出
ステップS13:有効探索幅2xdで監視不可能領域無しの判定
【0041】
図13は、片側有効探索幅と探索角度範囲の関係を船速をパネルラメータとして示している。画角は2度に設定され、旋回速度は2度に設定されている。船速が遅い場合には、片側有効探索幅は広く、且つ、探索角度範囲は広い。船速が速い場合には、片側有効探索幅は狭く、且つ、探索角度範囲は狭い。
【0042】
図14は、10km四方探索時間と探索角度範囲の関係を船速をパネルラメータとして示している。画角は2度に設定され、旋回速度は2度に設定されている。船速が遅い場合には、探索角度範囲が広くなれば探索時間は短くなる。船速が速い場合には、探索角度範囲が広くなれば探索時間は極端に長くなる。
【0043】
【発明の効果】
本発明による海上探索システム、及び、海上探索方法は、探索精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による海上探索システムの適用を示す正面断面図である。
【図2】図2は、本発明による海上探索システムの実施の形態を示す回路図である。
【図3】図3は、座標系を示す平面図である。
【図4】図4は、表示画面を示す正面図である。
【図5】図5は、探索回数を示すグラフである。
【図6】図6は、他の探索回数を示すグラフである。
【図7】図7は、視野範囲を計算する計算方法を示すグラフである。
【図8】図8は、監視能領域を示すグラフである。
【図9】図9は、監視不可能領域の存在を示すグラフである。
【図10】図10は、監視不可能領域の存否の計算方法を示すグラフである。
【図11】図11は、監視可能領域の探索幅の計算方法を示すグラフである。
【図12】図12は、監視不可能領域の存否の判定方法を示す計算フロー図である。
【図13】図13は、探索幅と探索角度範囲の関係を示すグラフである。
【図14】図14は、探索時間と探索角度範囲の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…レーザレーダ
2…船体
6…計算器
8…表示画面
21…速度設定領域
22…角速度設定領域
23…探索判定表示領域
26…速度表示領域
27…角速度表示領域
28…探索範囲設定領域
29…探索時間表示領域
Claims (13)
- 計算器と、
表示画面とを構成し、
前記表示画面は、
船速が入力される速度設定領域と、
レーザレーダの光軸の角速度が入力される角速度設定領域と、
探索範囲を設定する探索範囲設定領域と、
探索可能又は探索不可能を表示する探索判定表示領域とを形成し、
前記計算器は、前記船速と前記角速度と前記探索範囲とに基づいて探索可能又は探索不可能を計算により求めて、探索可能又は探索不可能を前記探索判定表示領域に表示し、
前記探索不可能は前記レーザレーダの探索信号が届かないブラインド領域が存在することである
海上探索システム。 - 前記船速は可変的に設定される
請求項1の海上探索システム。 - 前記角速度は可変的に設定される
請求項1の海上探索システム。 - 前記船速と前記角速度はともに可変的に設定される
請求項1の海上探索システム。 - 前記計算器には座標系が設定され、前記座標系の極座標表示では回転方向座標はθで表され、前記探索範囲の最小半径はd1で表され、前記探索範囲の最大半径はd2で表され、前記角速度はωで表され、前記探索範囲の内縁は、
x1=cosθ・d1,y1=sinθ・d1+vt
で表され、前記探索範囲の外縁は、
y2=cosθ・d2,y2=sinθ・d2+vt
で表され、ここでθがωtで表される
請求項1〜4から選択される1請求項の海上探索システム。 - 前記d1と前記d2は時間の関数である
請求項5の海上探索システム。 - 前記計算器は、
探索回数が1回である第1探索範囲部分と探索回数が2回である第2探索範囲部分を計算により求め、前記表示画面は前記第1探索範囲部分と前記第2探索範囲部分を識別して表示する
請求項1〜6から選択される1請求項の海上探索システム。 - 前記計算器は、前記探索範囲の探索時間を計算し、
前記表示画面は前記探索時間を表示する
請求項1〜7から選択される1請求項の海上探索システム。 - 計算器と、
表示画面とを構成し、
前記表示画面は、
船速が表示される速度表示領域と、
レーザレーダの光軸の角速度が表示される角速度表示領域と、
探索範囲を設定する探索範囲設定領域と、
船速が入力される速度設定領域と、
前記光軸の角速度が入力される角速度設定領域とを形成し、
前記計算器は前記探索範囲を探索することができる船速と角速度とを計算し、
前記速度表示領域は、前記計算器により計算される船速を表示し、
前記角速度表示領域は、前記計算器により計算される角速度を表示する
海上探索システム。 - 前記表示画面は、
前記探索範囲を探索することができる時間を表示する探索時間表示領域を形成し、
前記計算器は、前記計算により求められた船速と前記計算により求められた角速度に基づいて前記探索時間を計算し、
前記探索時間表示領域は前記計算器により求められた探索時間を表示する
請求項9の海上探索システム。 - 船体に固定される運動座標系で規定される距離d1に基づく内縁曲線と前記運動座標系で規定される距離d2に基づく外縁曲線の間の進行方向幅でレーダ信号を海面に送信するステップと、
船速と前記レーダ信号の走査の角速度とに基づいて前記内縁曲線と前記外縁曲線とを求めるステップと、
第j巡目の前記外縁曲線と第(j+1)巡目の前記内縁曲線との交点の存否を求めるステップと、
前記交点の存否に対応して監視不可能領域の存否を判定するステップ
とを構成する海上探索方法。 - 進行方向に向く座標軸を地球座標系にy軸として設定するステップと、
前記y軸に直交するx軸上で前記y軸から規定される距離の範囲にある有効探索幅xsを設定するステップと、
前記交点のx座標の絶対値xcと前記有効探索幅xsとの大小関係を比較するステップとを更に構成し、
前記判定するステップは、xc>xsであれば、探索不可能領域無しを判定するステップを形成する
請求項11の海上探索方法。 - 前記交点が存在しない場合に、第(j+1)巡目の前記外縁曲線の終端点と第(j+1)巡目の前記内縁曲線の終端点とを結ぶ直線を求めるステップと、
前記直線と第j巡目の前記外縁曲線との交点のx座標xdを求めるステップとを更に構成し、
前記xdは有効探索幅であると規定される
請求項11又は12の海上探索方法。
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