JP3804107B2 - 磁気記録再生装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上ドラムと下ドラムとからなるドラムの周面の一部へ巻回された状態で走行する磁気テープに回転磁気ヘッドを用いて記録再生動作を行なうことができるようにしたヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置{ヘリカル・スキャン型のビデオ・テープ・レコーダ(VTR)}、特に往復走行する磁気テープに対する記録動作及び再生動作を行なうことができるヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上ドラムと下ドラムとからなるドラムの周面の一部へ巻回された状態の磁気テープを所定の走行速度で走行させ、回転磁気ヘッドを用いて記録再生動作を行なうようにしているヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置は、VCR(あるいはVTR)として従来から広く使用されて来ていることは周知のとおりである。そして、前記したヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置では、高密度記録を達成するための一手段として、互に逆のアジマス角度を有する磁気空隙を備えている1対の回転磁気ヘッド、すなわち、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた回転磁気ヘッドとからなる1対の回転磁気ヘッドが、180度対称の位置に設けられている上ドラムDu(図2,図3参照)を所定の回転数で回転させ、前記のドラムの周面の少なくとも一部へ斜めに巻付けられた磁気テープTの基準縁Te(図2参照)の位置が、下ドラムDd(図2,図3参照)に設けられている案内部G(図2参照)によって規制された状態で所定の走行速度で走行する磁気テープを、前記の1対の回転磁気ヘッドによって順次交互にヘリカルスキャンさせ、前記した1対の回転磁気ヘッドにおける各回転磁気ヘッドの180度毎の回転と対応して、記録対象の信号による順次の記録跡を、磁気テープ上に隣接した状態で順次に記録形成させたり、記録跡中の記録情報を再生させるようにしている。
【0003】
すなわち、前記のVTRにおいては、互に逆アジマス角度を有する磁気空隙を備えている1対の回転磁気ヘッドが、180度対称の位置に設けられている上ドラムを所定の回転数で回転させ、前記のドラムの周面の少なくとも一部へ斜めに巻付けられた磁気テープの基準縁の位置が、下ドラムに設けられている案内部によって規制された状態で所定の走行速度で走行する磁気テープに、前記の1対の回転磁気ヘッドによって順次交互にヘリカルスキャンさせて、前記した1対の回転磁気ヘッドにおける各回転磁気ヘッドの180度毎の回転と対応して、記録対象の映像信号における順次の1フィールド期間の映像信号による順次の記録跡を、磁気テープ上に隣接した状態で順次に形成させたり、記録跡中の記録情報が再生されるようにしている。
【0004】
さて、民生用のVTRでは、特定なテープ長(例えば246m)の磁気テープを用いて、例えば2時間の記録再生動作を行なうことができるような標準モード(SPモード)による記録再生動作と、前記した特定なテープ長の磁気テープを用いて、標準モードよりも長い時間(例えば6時間)にわたる記録再生動作を行なうことができるような長時間モード(EPモード)による記録再生動作との2種類の動作モードで使用できるようにされている他、高速再生、静止画再生等の各種のトリック再生動作モードでの動作も行なえるように構成されることが多い。そして、前記したEPモードでの記録再生動作時における磁気テープの走行速度は、SPモードでの記録再生動作時における磁気テープの走行速度よりも遅く設定されているとともに、前記の各モードにおいて使用されるべき回転磁気ヘッドとしても、ヘッドトラック幅を互いに異にしている各1対の回転磁気ヘッドが専用に設けられている。
【0005】
例えば、VHS(登録商標)方式におけるVTRの場合には、前記したSPモードにおける磁気テープの走行速度は毎秒33.35mm、EPモードにおける磁気テープの走行速度は毎秒11.112mmであり、また、SPモードでの記録再生動作時に使用される回転磁気ヘッド(SP用回転磁気ヘッド)は、ヘッドトラック幅が58μmで、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度のように表記する)であるような磁気空隙を備えているものと、ヘッドトラック幅が58μmで、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとが、上ドラムの周囲の180度対称の位置に設けられ、また、EPモードでの記録再生動作時に使用される回転磁気ヘッド(EP用回転磁気ヘッド)は、ヘッドトラック幅が19.3μmで、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度のように表記する)であるような磁気空隙を備えているものと、ヘッドトラック幅が19.3μmで、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとが、上ドラムにおける180度対称の位置に設けられる。
【0006】
ところで、前記した1対のSP用回転磁気ヘッドと、1対のEP用回転磁気ヘッドとの上ドラムへの配設態様として、トリックプレイ(特殊再生)時における再生画像中のノイズの低減動作にも役立てうるようにするために、従来から、SP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が+6度のものと、EP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が−6度のものとを、互いの磁気空隙間の距離が所定の微小な間隔(前記の微小な間隔としては、例えば、2水平走査期間と対応する時間中に、回転磁気ヘッドが回転軌跡中で変位する距離とされる…以下の記載においては、「2Hの距離」のように表現されることもある)だけ離れている状態の一対の回転磁気ヘッド(ダブル・アジマスヘッドのように称されることもある)に構成させ、また、SP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が−6度のものと、EP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が+6度のものとを、互いの磁気空隙間の距離が所定の微小な間隔(2Hの距離)だけ離れている状態のダブル・アジマスヘッドとして構成させ、前記の2個のダブル・アジマスヘッドを、上ドラムにおける180度対称の位置に取付けるようにすることも行なわれている。なお、前記したダブル・アジマスヘッドの構成に当っては、例えば、ダブル・アジマスヘッドを構成するのに使用されるSP用の回転磁気ヘッドよりもEP用の回転磁気ヘッドの方が、上ドラムの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置される、というような配置態様にされる。
【0007】
ところで、前記したようなヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置において、回転磁気ヘッドの回転軌跡に従って磁気テープに形成される記録跡のパターンは、ドラムの直径、回転磁気ヘッドの回転数、回転磁気ヘッドの回転方向、磁気テープの走行速度、磁気テープの走行方向、トラック角度、ヘッドトラック幅、磁気テープの記録領域幅等の諸条件によって定まるから、磁気記録再生装置の動作モードの変更によって、例えば、磁気テープの走行方向や走行速度等の条件が変化した場合には、回転磁気ヘッドによって磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡のパターンは、変化することになる。
例えば、VHS(登録商標)方式におけるVTRがSPモードの場合には、直径が62mmの回転ドラムに取付けられた回転磁気ヘッドが毎分1800回転しており、ドラムの外周の一部に巻回されている磁気テープが、毎秒33.35mmの送り速度で順方向に移送される状態として記録再生動作が行なわれるが、この状態で回転磁気ヘッドによって走行時の磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡は、磁気テープの基準縁に対して5°58’9.9”の角度となる。
【0008】
また例えば、VHS(登録商標)方式におけるVTRにおいて、直径が62mmの回転ドラムに取付けられた回転磁気ヘッドを毎分1800回転させておき、ドラムの外周の一部に巻回されている磁気テープを、毎秒66.7mmの送り速度で順方向に移送される状態として記録再生動作(順方向での2倍速再生)をした場合に、回転磁気ヘッドによって走行時の磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡は、磁気テープの基準縁に対して6°2’19.2”の角度となる。さらに例えばVHS(登録商標)方式におけるVTRにおいて、直径が62mmの回転ドラムに取付けられた回転磁気ヘッドを毎分1800回転させておき、ドラムの外周の一部に巻回されている磁気テープを、毎秒66.7mmの送り速度で逆方向に移送される状態として記録再生動作(逆方向での2倍速再生)をした場合に、回転磁気ヘッドによって走行時の磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡は、磁気テープの基準縁に対して5°54’6.2”の角度となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、オーディオ信号用の磁気記録再生装置(テープレコーダ)では、従来から自動的に往復記録再生動作を行なうためのオートリバース機構を備えて構成されていることは周知のとおりであるが、前記したVHS(登録商標)方式のVTRを含め、ヘリカル・スキャン型のVTRでは、VTRの動作モードの変更により、磁気テープの走行方向や走行速度等の条件が変化すると、前述の例からみても判かるように、回転磁気ヘッドによって磁気テープに描かれる回転軌跡のパターンが変化するために、従来の一般的な構成のままのヘリカル・スキャン型のVTRによっては往復記録再生を行なうことができない。
前記のように、従来の一般的な構成のヘリカル・スキャン型のVTRでは往復記録再生をすることができないために、例えば、磁気テープの記録内容を繰返し再生することが必要とされるような場合には、磁気テープの始端から開始されて磁気テープの終端で終了する1回毎の再生動作が終了する都度に、磁気テープを終端から始端まで巻戻さなければならないという煩雑な動作を伴なったり、また、磁気テープに記録されている情報中で再生が必要とされる情報の頭出しに時間がかかったりするという問題があった。
【0010】
それで、前記のような問題点の無い往復記録再生動作の可能なヘリカル・スキャン型のVTRが、例えば特開昭50ー85316号公報、特開昭59ー104706号公報、特開平3ー194701号公報、特公平7ー54562号公報等によって開示されたが、前記の各公報によって開示されている往復記録再生動作の可能なヘリカル・スキャン型のVTRは、往復記録再生動作を行なわせるために、従来の一般的な構成のVTRとは大きな構成上の違いがあったり、特殊な動作態様での動作を行なわせるような構成のものである点が問題になる。
そこで、本出願人会社では、従来の一般的な構成のヘリカル・スキャン型のVTRの構成上に大きな変更を加えず、また、基本的な動作態様にも大きな変更を加えないで、往復記録再生動作の可能なヘリカル・スキャン型のVTRを提供できるならば、磁気テープを実質的にエンドレスの状態として記録再生を行なうことにより、例えば、防犯、監視、教育、宣伝等の目的のために有効に活用することが容易にできるようになることから、そのようなVTRについての研究を進めた。
【0011】
ところが、上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に設けられている、互に逆のアジマス角度(以下の記載においては、+αのアジマス角度と、−αのアジマス角度とする)を有する磁気空隙を備えている第1,第2の回転磁ヘッドを順次交互に使用して、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に、前記した記録跡の記録跡幅と対応する間隔が形成されうるような走行速度で、磁気テープを順方向に走行させて記録再生動作を行ない、次に磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、前記した順方向に磁気テープが走行している状態で第1,第2の回転磁気ヘッドで磁気テープに形成された順次の記録跡の間の未記録領域に挿入されるようにして記録再生動作が行なわれるようにした場合に、往復走行によって磁気テープに形成される記録跡パターンは、(磁気空隙のアジマス角度が+αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が+αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が−αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が−αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が+αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→…というように、同一のアジマス角度の磁気空隙を有する回転磁気ヘッドによって記録形成された記録跡が隣り合う状態で2個ずつ並んでいる状態のものになる。
【0012】
前記したようなテープパターン、すなわち、隣接する2つの記録跡が、同じアジマス角度の磁気空隙を有する回転磁気ヘッドによって形成されている記録跡群が順次に磁気テープ上に配置されている状態とされている場合には、再生動作時に各回転磁気ヘッドが、それぞれ再生の対象にされている記録跡上を正確に追跡していたとしても、再生信号中には隣接する記録跡からの漏話が生じている状態のものになるために、良好な再生画像が得られないことになる。
図5に例示した記録跡パターンは、第1,第2の回転磁気ヘッドとして、それぞれの磁気空隙のヘッドトラック幅が同一であるような磁気記録再生装置を使用した場合のものであるが、実用されている民生用VCR(VTR)では、第1,第2の回転磁気ヘッドとして、例えば、第1の回転磁気ヘッドとして磁気空隙のヘッドトラック幅が58μm(この数値は一例である)のものを使用し、また第2の回転磁気ヘッドとして磁気空隙のヘッドトラック幅が46μm(この数値は一例である)のものを使用する、というように、第1,第2の回転磁気ヘッドとして、それぞれの磁気空隙のヘッドトラック幅が異なるものを使用し、第1,第2の回転磁気ヘッドによって磁気テープに記録形成される隣接する記録跡間にガードバンドが形成されるようにすることも行なわれている。
【0013】
前記のように、互に異なるヘッドトラック幅の磁気空隙を備えている第1,第2の回転磁気ヘッドを順次交互に使用して、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に、ヘッドトラック幅が大きい方の磁気空隙を備えている回転磁気ヘッド(前述の例では58μmのヘッドトラック幅の磁気空隙を備えている第1の回転磁気ヘッド)によって磁気テープに記録形成される記録跡の記録跡幅(前述の例では58μm)と対応する間隔が形成されうるような走行速度で、磁気テープを順方向に走行させて記録再生動作を行ない、次に磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、前記した順方向に磁気テープが走行している状態で第1,第2の回転磁気ヘッドで磁気テープに形成された順次の記録跡の間の未記録領域に挿入されるようにして記録再生動作が行なわれるようにした場合に、往復走行によって磁気テープに形成される記録跡パターンにおいても、同一のアジマス角度の磁気空隙を有する回転磁気ヘッドによって記録形成された記録跡が隣り合う状態で2個ずつ並んでいる状態のものになることには変わりがない。
【0014】
しかし、この場合には順方向に磁気テープが走行している状態で第1,第2の回転磁気ヘッドで磁気テープに形成された順次の記録跡の間の未記録領域に挿入される記録跡が、前記した未記録領域の幅よりも小さな幅とされているヘッドトラック幅の磁気空隙を備えている第2の回転磁気ヘッド(前述の例では46μmのヘッドトラック幅の磁気空隙を備えているものと例示してある)によって記録形成されたものの場合には、その記録跡と隣接する記録跡との間には未記録領域が残される状態になるから、第2の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間には、未記録領域が存在している状態になるが、第1の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間には、未記録領域は存在していない。
【0015】
したがって、前記の場合においても第1の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間においては、図5を参照して既述したとおりの問題が発生する。また、第2の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間には、未記録領域が存在している状態になっているが、記録済み磁気テープを作成したVTRとは別のVTRで再生した場合に、トラックキングのずれにより、再生信号中には隣接する記録跡からの漏話が生じている状態のものになることが多く、良好な再生画像が得られないことになる。
それで、前記の問題点に対する改善策が求められた。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、磁気テープを順方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に未記録領域が形成され、前記した磁気テープを逆方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより、前記した未記録領域に順次交互に記録跡を形成させうるような同一の所定の走行速度で、磁気テープを順方向及び逆方向に選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えてなる磁気記録再生装置、及び上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、通常の記録再生動作モードにおける磁気テープの走行速度の2倍の走行速度で、磁気テープを順方向と逆方向とに選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えてなる磁気記録再生装置を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の磁気記録再生装置の具体的な内容を詳細に説明する。図1は本発明の磁気記録再生装置の概略構成を示すブロック図、図2は磁気記録再生装置の磁気テープの走行系の構成例を示す斜視図、図3は磁気テープを順方向と逆方向とに走行させたときにも、回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡を、互いに平行な状態となるようにさせるための手段の1つとして採用できる構成部分の側断面図、図4は回転ドラムにおける回転磁気ヘッド等の配置を説明するための図である。
【0018】
まず、図4中においてDuは上ドラムであり、また、DAH1,DAH2は、それぞれ互いにヘッドトラック幅と、磁気空隙のアジマス角度とを異にしている2個の回転磁気ヘッドが、互いの磁気空隙間の距離が所定の微小な間隔(例えば、2水平走査期間と対応する時間中に、回転磁気ヘッドが回転軌跡中で変位する距離…「2Hの距離」)だけ離れている状態の一対の回転磁気ヘッド(ダブル・アジマスヘッド)である。
前記のダブルアジマスヘッドDAH1は、SPモードでの記録再生動作時に使用されるSP用の回転磁気ヘッドHsp1と、EPモードでの記録再生動作時に使用されるEP用の回転磁気ヘッドHep2とを、SP用の回転磁気ヘッドHsp1よりもEP用の回転磁気ヘッドHep2の方が、上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様のものとして構成されている{図4の(a),(c)参照}。
【0019】
また、前記のダブルアジマスヘッドDAH2は、SPモードでの記録再生動作時に使用されるSP用の回転磁気ヘッドHsp2と、EPモードでの記録再生動作時に使用されるEP用の回転磁気ヘッドHep1とを、SP用の回転磁気ヘッドHsp2よりもEP用の回転磁気ヘッドHep1の方が、上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様のものとして構成されている{図4の(a),(c)参照}。
【0020】
なお、前記した2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2では、SP用の回転磁気ヘッドよりもEP用の回転磁気ヘッドの方が上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様とされていたが、本発明の磁気記録再生装置の実施に当っては、前記した2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2が、EP用の回転磁気ヘッドよりもSP用の回転磁気ヘッドの方が上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様とされているものが使用されても差支えない。 図4の(a)に示されているように、前記した2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2は、一方のダブルアジマスヘッドDAH1におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1と、他方のダブルアジマスヘッドDAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp2とが、上ドラムDuの周上で180度対称の位置に在るような状態となるようにして、上ドラムDuに取付けられている。
【0021】
なお、前記の状態で上ドラムDuに取付けられた2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2における一方のダブルアジマスヘッドDAH1のEP用の回転磁気ヘッドHep2と、他方のダブルアジマスヘッドDAH2のEP用の回転磁気ヘッドHep1とは、上ドラムDuの周上で180度対称の位置に在るような状態となっている。また、図4に例示してある2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2では、SP用の回転磁気ヘッドHsp1がヘッドトラック幅が58μmで、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度)であるような磁気空隙を備えているものとされており、SP用の回転磁気ヘッドHsp2がヘッドトラック幅が58μm(46μmとされることもある)で、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとされており、EP用の回転磁気ヘッドHep1がヘッドトラック幅が26μm(または19μm)で、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度)であるような磁気空隙を備えているものとされており、EP用の回転磁気ヘッドHep2がヘッドトラック幅が26μm(または19μm)で、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとされている。
【0022】
図4の(c)は、上ドラムDuに前記のように設けられている2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2を水平方向に展開した状態で、各回転磁気ヘッド間の配置関係や、一方のダブルアジマスヘッドDAH1におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度、EP用の回転磁気ヘッドHep2のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度、及び他方のダブルアジマスヘッドDAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp2のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度、EP用の回転磁気ヘッドHep1のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度などの相違が容易に判かるように図示した図である。
【0023】
図4の(a)を参照して既述した回転磁気ヘッドの配置態様は、上ドラムDuに2個のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2だけを設けた場合のものであったが、図4の(b)に例示してある上ドラムDuにおける回転磁気ヘッドの配置態様は、2個のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2の他に、前記のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1,Hsp2の内の所定のものに先行し、前記のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1,Hsp2の内の所定のものに先行して消去動作を行なう消去用の2個の回転磁気ヘッドHe1,He2を備えている場合の上ドラムDuにおける回転磁気ヘッドの配置態様である。なお、先行消去用の回転磁気ヘッドのヘッドトラック幅は、消去の対象にされている記録跡の記録跡幅と対応して定められていることは周知のとおりである。
【0024】
図2は、上ドラムDuと、前記の上ドラムDuと対をなして設けられる下ドラムDd(図3を参照のこと)と、磁気テープTの基準縁Teの位置を規制する磁気テープ案内部材(リードリング)Lrとによって構成されているドラム構体DAを備えているVTRの機構部と、テープ走行系の一例の概略構成を示している斜視図であり、また、図3は回転磁気ヘッドによって磁気テープTに描かれる回転軌跡を、磁気テープTの基準縁Teに対して所定の角度となるように制御できるようにさせる機構部分の構成例を示している。図2において1は供給リール台、2は巻取りリール台であり、カセットケース3内に設けてある供給リール4及び巻取りリール19に巻回させて磁気テープTを収納してあるカセットケース3をVTRに装着すると、カセットケース3内の供給リール4は機台20に設けられている供給リール台1と連結され、またカセットケース3内の巻取りリール19は機台20に設けられている巻取りリール台2と連結される。
【0025】
磁気テープTがパラレルローディング方式のローディング機構に設けられているローディングポール(垂直ガイドローラ)9,14によってカセットケース3内から引出されると、前記の磁気テープTはテンションポール5,ガイドポール6,全幅消去ヘッド7,インピーダンスローラ8,ローディングポール(垂直ガイドローラ)9,傾斜ガイド(スラントポール)10等を経て所定の回転数で駆動回転されている上ドラムDuと、静止の状態の下ドラムDdの周面の一部に、磁気テープの基準縁Teが案内されている状態で巻回された後に、傾斜ガイド(スラントポール)13,ローディングポール(垂直ガイドローラ)14,オーディオ・コントロールヘッド15,ガイドポール16,キヤプスタン18とピンチローラ17等を経て巻取りリール19に至る磁気テープの走行路を走行できるように張設される。
【0026】
前記した上ドラムDuに設けられている回転磁気ヘッドが所定の回転数で駆動回転された状態で、磁気テープTの走行方向、及び走行速度が各種の動作モードに対応して、VTRに設けられている主制御部に設定されるのに応じて、前記の主制御部から制御情報が与えられた傾斜制御部28の制御の下に、ドラム構体DAにおける上ドラムDuと下ドラムDd(図3参照)とは、ドラム構体DAの中心軸21が、図3中の矢印29a(または29b)の方向に所定量だけ傾斜されるとともに、リードリングLrも、傾斜制御部28の制御の下に所定の方向に所定量だけ傾斜されて、回転磁気ヘッドの回転軌跡によって磁気テープTに描かれる回転軌跡のパターンが、予め定められた状態のものとなるようにされる。
【0027】
前記のようにローディング機構によるローディング動作が行なわれた後に、供給リール4から巻取りリール19までの間に設定された磁気テープの走行路を走行する磁気テープTは、テンションポール5→ガイドポール6→全幅消去ヘッド7→インピーダンスローラ8→ローディングポール(垂直ガイドローラ)9の区間の走行路中では水平な状態で走行し、次いで、傾斜ガイド(スラントポール)10によって磁気テープTの走行方向が変更されることにより、前記の磁気テープTは所定の回転数で駆動回転されている上ドラムDuと下ドラムDdとの両者に対して中心角で180度強の範囲にわたりリードリングLrに設けられている案内部Gに沿うような状態で巻付けられるのである。なお、順方向と逆方向との双方での記録再生動作が行なわれる本発明のVTRにおいては、必要に応じて、全幅消去ヘッドを、ドラム構体DAの出口側から後方の磁気テープの走行路中にも設けておくこともできる。
【0028】
前記のように上ドラムDu及び下ドラムDdに対して180度強の範囲にわたり巻付けられた磁気テープTは、次いでローディングポール(垂直ガイドローラ)14によって磁気テープTの走行方向が再び水平の状態の走行方向に戻された後に、オーディオ・コントロールヘッド15→ガイドポール16→キヤプスタン18とピンチローラ17等の区間の磁気テープの走行路を走行して巻取りリール19に巻回される。
図2中における矢印aは、上ドラムDuの回転方向であり、また、矢印bは磁気テープTの順方向における移送方向を示している。磁気テープTの逆方向における移送方向は、図2中の矢印bの方向とは反対の方向であることは、いうまでもない。
なお、図2及び図3中には図面の簡略化表示のために、上ドラムDuを所定の回転数で駆動回転させるためのドラムモータの図示を省略してあるが、前記のドラムモータとしては、例えば、前記した上ドラムDuにロータを固定させた構成のモータ(図1中のDm)を用いるようにしてもよい。前記のような構成態様のドラムモータが使用される場合には、上ドラムDuをドラム構体DAの中心軸21に対して回転自在にベアリング軸受けによって支持させればよい。
【0029】
次に、回転磁気ヘッドによって磁気テープTに描かれる回転軌跡を、磁気テープTの基準縁Teに対して、任意所定の角度となるように制御できるようにするための機構部分の構成例を示す図3において、DBはドラムベースであり、上ドラムDuと下ドラムDdとリードリングLrとからなるドラム構体DAは、前記のドラムベースDBによって支持されている。
上ドラムDuは、ドラム構体DAの中心軸21に装着されている図示していないベアリング軸受けによって、ドラム構体DAの中心軸21に対して回転自在に支持されており、また下ドラムDdは前記のドラム構体DAの中心軸21に固着されている。また磁気テープTの基準縁Teの案内部として機能するリードリングLrは、前記した下ドラムDdとは別体に構成されており、下ドラムDdの下方の外周部に近接し、かつドラムベースDB上に設けられている。
【0030】
そして、前記のリードリングLrは、前記したドラム構体DAの中心軸21の位置から、図3が描かれている紙面に垂直な方向における前記した中心軸21の両側の位置のドラムベースDBに設けられた回動支点23(23)によって回動可能に支持されており、前記したリードリングLrと、ドラムベースDBとの間には圧縮ばね25が装着されている。
また、前記の下ドラムDdは、前記したドラム構体DAの中心軸21の位置から、図3が描かれている紙面に垂直な方向における前記した中心軸21の両側の位置のリードリングLrに設けられた回動支点22(22)によって回動可能に支持されており、前記したリードリングLrと、下ドラムDdとの間には圧縮ばね24が装着されている。
【0031】
そして、前記したドラム構体DAの中心軸21の下端部は、前記したドラムベースDBに設けられた貫通孔を貫通させ、前記の中心軸21の下端部には、ばね受け板27を固着させる。そして、前記したばね受け板27とドラムベースDBの下面との間にばね26を装着させる。それにより、ドラム構体DAは前記した各ばね24〜26により、ドラムベースDBに対して圧着されるような状態で結合されて、前記した回動支点を回動中心にして傾斜できるように構成される。
【0032】
前記したリードリングLrには、ねじ30が螺合されており、また、ドラムベースDBにはねじ31が螺合されている。前記のねじ30の先端部は、下ドラムDdの底面に当接した状態にされており、また、前記のねじ31の先端部は、リードリングLrの底面に当接した状態にされている。それで、前記のねじ30を回転させて、ねじ30を進退させれば、ねじ30の先端部が底面に当接している下ドラムDdは、前記したねじ30の進(または退)につれて、リードリングLrに設けられた回動支点22(22)を回動中心にして、図3中の矢印29a(または矢印29b)の方向に傾斜し、したがってドラム構体DAの中心軸21が、前記したねじ30の進(または退)につれて、図3中の矢印29a(または矢印29b)の方向に傾斜することになる。また、前記したねじ31を回転させて、ねじ31を進退させれば、ねじ31の先端部が底面に当接しているリードリングLrは、前記したねじ31の進(または退)につれて、ドラムベースDBに設けられた回動支点23(23)を回動中心にして、図3中の矢印29a(または矢印29b)の方向に傾斜することになる。
【0033】
前記したねじ30は、ギャードモータM1の回転力が、回転軸34→歯車33→歯車32を介して伝達されることにより回転し、また、前記したねじ31は、ギャードモータM2の回転力が、回転軸37→歯車36→歯車35を介して伝達されることにより回転するものであるから、前記したギャードモータM1,M2の回転方向及び回転量を、傾斜制御部28によって所定のように制御することにより、前記したドラム構体の中心軸21の傾斜態様と、リードリングLrの傾斜の態様とが所定の状態、すなわち、回転磁気ヘッドの回転軌跡によって磁気テープTに描かれる回転軌跡のパターンを、磁気テープの走行方向と走行速度とによって予め定められた状態のものにさせることができる。
【0034】
傾斜制御部28には、図示されていない主制御部(図1中の制御部41)から、VTRの記録再生モードの情報が供給されている他に、前記したギャードモータM1に付設されているロータリエンコーダRE1からの出力信号や位置センサPS1からの出力信号、及び、前記したギャードモータM2に付設されているロータリエンコーダRE2からの出力信号や位置センサPS2からの出力信号も供給されている。
前記した位置センサPS1,PS2としては、例えば、発光素子と受光素子とが対向して配置されている光路中に、円弧状の遮光板を移動させるような構成態様のものが用いられてもよい。前記の各位置センサPS1,PS2は、それの発光素子と受光素子とが対向して配置されている光路中から円弧状の遮光板が外れる瞬間に位置センサPS1,PS2から出力される信号が、前記したドラム構体DAの中心軸21の基準位置やリードリングLrの基準位置を示す情報として用いられる。
【0035】
また、前記した位置センサPS1,PS2における遮光板の基準位置からの回動量を、前記した各ロータリエンコーダRE1,RE2からの出力パルス数の計測によって知ることにより、ドラム構体DAの中心軸21の基準位置からのずれの方向及びずれ量やリードリングLrの基準位置からのずれの方向及びずれ量を求めることができる。それで前記した傾斜制御部28としては、カウンタや比較器を含んで構成されたデジタル信号処理回路を使用できる。
【0036】
さて、本発明の磁気記録再生装置は、上ドラムDuの中心軸21を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドHsp1(またはHep1)と、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドHsp2(またはHep2)とによって、上ドラムDuと下ドラムDdとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープTに、前記の磁気テープTの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、磁気テープTを順方向(図1,図6中の矢印bの方向)に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡(図6中で符号toが付されている記録跡)における相隣る記録跡間に、所定の幅の未記録領域が形成されるように、磁気テープTを順方向及び逆方向(図6中の矢印−bの方向)に選択的に切換え走行させることができるように構成されている。
また、磁気テープTを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープTに形成される記録跡(図6中で符号tfが付されている記録跡)が、磁気テープTを順方向に走行させた状態において、磁気テープTに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせるための構成部分(例えば図3を参照して既述した機構部)を備えている。
さらに、磁気テープTの走行方向が変更された場合に、走行方向が変更される以前に磁気テープTに形成された記録跡と、走行方向が変更された後に、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドが同一である記録跡との間に、所定幅Δの未記録領域[図6の(b),(c)]が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープTに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスの位相を所定量だけ移相させて、磁気テープTの走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、記録跡間に形成させるべく予め設定された未記録領域の所定幅Δに関する情報に基づいて所定の距離だけずらすようにしている。
【0037】
本発明の磁気記録再生装置の実施の一例態様としては、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープTに、前記の磁気テープTの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、通常の記録再生動作モードにおける磁気テープTの走行速度の2倍の走行速度で、磁気テープTを順方向(図6中の矢印bの方向)と逆方向(図6中の矢印−bの方向)とに選択的に切換え走行させるようにし、磁気テープTを逆方向(図6中の矢印−bの方向)に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープTに形成される記録跡(図6中で符号tfが付されている記録跡)が、磁気テープTを順方向に走行させた状態において磁気テープTに形成される記録跡(図6中で符号toが付されている記録跡)に対して平行な状態となるように、例えば図3を参照して既述した機構部を動作させ、磁気磁気テープTの走行方向が順方向から逆方向に変更される直前に磁気テープへ記録跡を記録形成させた回転磁気ヘッドが、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドの内のどちらの回転磁気ヘッドであるのかを検出し、また、磁気テープの走行方向が順方向から逆方向に変更される直前に、磁気テープへ記録形成されていた記録跡に隣接する記録跡を、走行方向が順方向から逆方向に変更された後に記録形成するのに使用される回転磁気ヘッドが、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドの内のどちらの回転磁気ヘッドであるのかを検出し、磁気テープを順方向に走行させた状態で磁気テープに形成された記録跡の記録形成に使用された回転磁気ヘッドと、前記した順方向への磁気テープの走行時に記録形成されていた記録跡に隣接する記録跡を、磁気テープを逆方向に走行させた状態で記録形成させるのに使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡の間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、順方向に磁気ヘッドを走行させている状態における記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向が順方向から逆方向に変更された後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した第1,第2の使用回転磁気ヘッドの検出手段から得られる検出結果の情報と、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報とに基づいて所定の距離だけずらすようなものとして構成できる。
【0038】
磁気テープTを順方向に走行させた状態において順次の記録跡間に所定幅の未記録領域が設けられている状態で記録形成されている記録跡における隣接する記録跡間の所定幅の未記録領域に、磁気テープTを逆方向に走行させた状態で、前記した記録跡間の所定幅の未記録領域に順次の記録跡を記録形成させる場合に、磁気テープTが順方向に走行している状態で磁気テープTに記録形成されていた記録跡と、磁気テープTが逆方向に走行している状態で磁気テープTに記録形成される記録跡との隣接する2記録跡の記録形成に、同一の磁気回転ヘッドが使用されるときに、前記した2記録跡間に予め定められた幅の未記録領域Δが残される状態となるように、磁気テープTの走行方向を逆方向に走行させる状態で磁気テープTに記録形成される記録跡の位置を所定の距離だけずらすようにする手段としては、走行方向が変更された後に回転磁気ヘッドによって磁気テープへ形成される記録跡が、走行方向が変更される以前に回転磁気ヘッドによって磁気テープに形成されていた記録跡を形成させた回転磁気ヘッドと同一か否かに応じて、磁気テープから再生された再生コントロールパルスの位相を所定量だけ移相させ、それにより磁気テープTの走行位相を所定量だけ移相させたり、回転磁気ヘッドの回転位相(上ドラムDuの回転位相)を所定量だけ移相させたりすることによって行なうことができる。
【0039】
また、本発明の磁気記録再生装置において、上ドラムDuの中心軸21を対称中心とする180度対称の位置に配置される、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドHsp1(またはHep1)と、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドHsp2(またはHep2)としては、記録再生動作に使用される1対のものが、同一のヘッドトラック幅の磁気空隙を備えたものであっても、あるいは記録再生動作に使用される1対のものが互いに異なるヘッドトラック幅の磁気空隙を備えたものであっても、どちらでもよい。以下の記述においては、記録再生動作に使用される1対のものが、同一のヘッドトラック幅の磁気空隙を備えたものである場合を一例に挙げて説明されている。
【0040】
図1において、38は本発明の磁気記録再生装置において、記録の対象にされている映像信号の入力端子であり、また、60は本発明の磁気記録再生装置によって再生された映像信号の出力端子である。この図1には映像信号に付随する音響信号の記録再生系についての記載を省略してあるが、音響信号の記録は、磁気テープTの縁部に設けられている音声トラックに、図2中に示されているオーディオ・コントロールヘッド15におけるオーディオヘッドによって行なわれる。前記した入力端子38に供給された映像信号は、記録系の信号処理回路39によって、例えば輝度信号による周波数変調波形態の信号と、低域変換搬送色信号との周波数多重化信号形態の記録信号とされて、録再切換スイッチ47における記録側固定接点Rに供給される。前記の録再切換スイッチ47は、磁気記録再生装置が記録動作モードに設定されている場合には、制御部41(主制御部41)から与えられる切換制御信号によって、可動接点vが記録側固定接点Rの方に切換えられ、また磁気記録再生装置が再生動作モードに設定されている場合には、制御部41から与えられる切換制御信号によって、可動接点vが再生側固定接点Pの方に切換えられる。
【0041】
図1中の線57は、図示されていないヘッド切換スイッチに対して供給されるヘッド切換信号の供給線である。磁気記録再生装置が記録動作モードに設定されている場合には、記録系の信号処理回路39から前記の録再切換スイッチ47の固定接点Rと可動接点vとを介して送出された記録信号は、図示されていないヘッド切換スイッチと回転トランスを介して第1,第2の回転磁気ヘッドに供給され、また、磁気記録再生装置が再生動作モードに設定されている場合には、第1,第2の回転磁気ヘッドによって再生された再生信号が、図示されていない回転トランスと、ヘッド切換スイッチと、録再切換スイッチ47の可動接点vと固定接点Pとを介して、再生系の信号処理回路56に供給される。
【0042】
さて、図1に示す本発明の磁気記録再生装置は、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられたアジマス角度+α度を有する磁気空隙を備えているSP用の回転磁気ヘッドHsp1と、アジマス角度−α度を有する磁気空隙を備えているSP用の回転磁気ヘッドHsp2とからなる1対の回転磁気ヘッドを使用して記録再生動作を行なうようにしたり、あるいは、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられたアジマス角度+α度を有する磁気空隙を備えているEP用の回転磁気ヘッドHep1と、アジマス角度−α度を有する磁気空隙を備えているEP用の回転磁気ヘッドHep2とからなる1対の回転磁気ヘッドを使用して記録再生動作を行なうようにしたりすることができるように構成した場合の実施態様である。そして、図1に示す磁気記録再生装置は、同じテープ量(磁気テープ長)のカセットを使用した場合に、必要とされる記録再生時間に応じて、前記した2種類の回転磁気ヘッド対における何れの種類の回転磁気ヘッド対を使用して記録再生動作が行なわれるようにするかが決められる。
【0043】
図1に示す磁気記録再生装置は、記録再生動作に際して、前記した2種類の回転磁気ヘッド対における何れの種類の回転磁気ヘッド対を使用して記録再生動作が行なわれた場合でも、磁気テープTに形成される順次の記録跡の相互の位置関係の状態は同一となるから、以下の記述においては、記録再生動作に使用される1対の回転磁気ヘッド、すなわち上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられたアジマス角度+α度を有する磁気空隙を備えている回転磁気ヘッドと、アジマス角度−α度を有する磁気空隙を備えている回転磁気ヘッドとを、回転磁気ヘッドH1,H2[回転磁気ヘッドH1は、既述したSP用の回転磁気ヘッドHsp1(またはEP用の回転磁気ヘッドHep1)を示し、回転磁気ヘッドH2は、既述したSP用の回転磁気ヘッドHsp2(またはEP用の回転磁気ヘッドHep2)を示す]のように記載して説明する。
【0044】
図5は本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを順方向(各図中の矢印bの方向)、及び逆方向(各図中の矢印bとは反対の方向)とに、それぞれ所定の走行速度で走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡の状態を図示説明するための図である。そして、前記した磁気テープTの所定の走行速度とは、走行する磁気テープTに、第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に記録跡を形成させた場合に、磁気テープTに形成された順次の記録跡における相隣る記録跡間に、前記した記録跡の記録跡幅と対応する間隔が形成されうるような走行速度を意味する。
【0045】
前記した所定の走行速度について、具体的な例を示して説明すると次のとおりである。ヘリカルスキャン型の磁気記録再生装置において、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられた回転磁気ヘッドH1,H2により、走行する磁気テープTに順次に形成される記録跡における順次の相隣る記録跡間の間隔(トラックピッチ)は、磁気テープTの走行速度、回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡の径、回転磁気ヘッドH1,H2の回転数、磁気テープTの走行方向と回転磁気ヘッドH1,H2の回転方向との関係、等によって定まることは周知である。
【0046】
そして、VHS(登録商標)方式のVTR(VCR)においては、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられた回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡の直径を62mm、回転磁気ヘッドH1,H2の回転数を毎分1800回転、回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅を58μm、回転磁気ヘッドH1,H2の回転方向と磁気テープTの走行方向とを、図5の(a)中のa,bとしたときに、磁気テープTの走行速度を毎秒33.35mmとすると、前記した回転磁気ヘッドH1,H2により磁気テープTに順次に形成される記録跡のトラックピッチTPは58μmとなり、この場合における隣接する記録跡間には未記録領域が生じない。
また、前記の諸条件中において磁気テープTの走行速度だけを2倍にした場合に、磁気テープTに回転磁気ヘッドH1,H2により記録形成される順次の記録跡のトラックピッチは(58μm×2)となり、磁気テープTに記録形成される順次の記録跡における相隣るものの間には、58μmの幅の未記録領域(ガードバンド)が形成される。
【0047】
図5の(a)は、本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを順方向(図中の矢印b方向)に、所定の走行速度で走行させた状態とし、1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なっている場合に、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成される順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…を示している。前記の記録跡の図面符号において、toは磁気テープTが順方向に走行している際に磁気テープTに形成される記録跡であることを示す記号である。なお、磁気テープTが逆方向に走行している際に磁気テープTに形成される記録跡については、後述のようにtfの記号が用いられている。また、(h11),(h12)…、(h21),(h22)…において、h1は回転磁気ヘッドH1によって形成された記録跡であることを示し、h2は回転磁気ヘッドH2によって形成された記録跡であることを示しており、前記のh1,h2に続く数字は、形成された記録跡の順番を示している。
【0048】
回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成される順次の記録跡to(h11)→to(h21)→to(h12)→to(h22)…として図5の(a)に示してある記録跡は、各回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅が共にTwである場合についてのものである。そして、前記した順次の記録跡における相隣る記録跡間には、それぞれ前記した磁気空隙のヘッドトラック幅Twと同一の幅の未記録領域が形成されている。
そして、磁気テープTが順方向に走行している状態において、記録再生動作に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、磁気テープTに記録された順次の記録跡における互いに相隣るものは、アジマス角度が異なる回転磁気ヘッドによって記録形成されたものになっている。
【0049】
次に、図5の(b)は、本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを逆方向(図中の矢印−b方向)に走行させた状態とし、1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なっている場合に、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成される順次の記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を示している。図5の(b)に示してある記録跡も、各回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅が共にTwである場合についてのものであり、前記した順次の記録跡における相隣る記録跡間には、それぞれ前記した磁気空隙のヘッドトラック幅Twと同一の幅の未記録領域が形成されている。また、記録再生動作に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、磁気テープTに記録された順次の記録跡における互いに相隣るものは、アジマス角度が異なる回転磁気ヘッドによって記録形成されたものになっている。
【0050】
図5の(c)は、磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた状態における図5の(a)に例示した記録跡パターン(トラックパターン)と、磁気テープTを逆方向に所定の走行速度で走行させた状態における図5の(b)に例示した記録跡パターン(トラックパターン)とを、互いの未記録領域中に、他方の記録跡が位置するような状態で重ね合わせた状態におけるトラックパターンを例示した参考図であり、この図5の(c)に示されているトラックパターンでは、磁気テープTに密接状態で順次に記録形成されている記録跡は、同アジマスの回転磁気ヘッドによって記録形成された記録跡が2本ずつ隣接している状態になっている。それで、この図5の(c)に示されているトラックパターンを有する磁気テープTから再生された再生信号は、既述のように隣接の記録跡からの漏話により品質の悪い再生画像しか得られないことになる。なお、図5の(c)では磁気テープTを順逆の両方向に走行させて記録形成させた順次の記録跡における隣り合うもの同士間に、重なり合いが生じていない理想的な状態を示しているが、トラッキングずれにより順次の記録跡における隣り合うもの同士間に、重なり合いが生じている場合には、再生画像中にビートが生じて、見るに耐えないものになることは周知のとおりである。
【0051】
それで本発明の磁気記録再生装置では、磁気テープTを順方向(あるいは逆方向)に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅Twと対応する幅を有する図5の(a)[あるいは図5の(b)]中の未記録領域に、磁気テープTを逆方向(あるいは順方向)に所定の走行速度で走行させた状態で磁気テープTに記録形成されるべき順次の記録跡を記録する際に、前記した磁気テープTの順逆両方向での記録動作によって最終的に得られる順次の記録跡における隣接する記録跡の内で、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間には、前記した磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅Twと対応する幅を有する図5の(a),(b)中の未記録領域の一部が、後述の図6の(b),(c)中の幅Δの部分で示すように残されている状態として記録するようにしているのである。
【0052】
なお、図5を参照して行なわれた前述の説明では、説明及び理解を容易にするために、記録再生に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2として、それらの磁気空隙におけるヘッドトラック幅が同一のものであるとされていたが、本発明の実施に当っては、記録再生に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2における磁気空隙におけるヘッドトラック幅が、例えば58μm、46μmというように異なっている場合であっても、磁気テープTを順方向(あるいは逆方向)に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅と対応する幅を有する未記録領域に、磁気テープTを逆方向(あるいは順方向)に所定の走行速度で走行させた状態で磁気テープTに記録形成されるべき順次の記録跡を記録する際に、前記した磁気テープTの順逆両方向での記録動作によって最終的に得られる順次の記録跡における隣接する記録跡の内で、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、前記した磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅の未記録領域の一部が残されている状態となるようにして記録させるようにして本発明を実施できるのである。
【0053】
図6の(a)は本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを順方向(図中の矢印b方向)に所定の走行速度で走行させた状態で、互いに同一のヘッドトラック幅を有する1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なって、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成させた順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…による記録跡パターンであり、前記の記録跡パターンは図5の(a)と同じである。
また、図6の(b),(c)は、磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた状態で、前記した1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、図6の(a)に示されるような記録跡パターンとなるような順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…を記録した磁気テープTを、逆方向(図中の矢印−b方向)に前記した所定の走行速度で走行させるとともに、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、幅がΔの未記録領域が残されるような状態で、逆方向の走行時における回転磁気ヘッドによる順次の記録跡が磁気テープTに記録されるように、本発明の磁気記録再生装置による記録動作が行なわれた場合に得られる記録跡パターンを例示した図である。
【0054】
図6の(b)に示されている記録跡パターンと、図6の(c)に示されている記録跡パターンとは、ともに、磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた状態で、前記した1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、磁気テープTに形成させた順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…に対して、磁気テープTを逆方向(図中の矢印−b方向)に前記した所定の走行速度で走行させた状態で前記した1対の回転磁気ヘッドH1,H2により磁気テープTに順次に記録される記録跡が、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、幅がΔの未記録領域が残されるような状態で磁気テープTに記録されている点においては同じであるが、磁気テープTに残される幅がΔの未記録領域の形成位置が互いにずれている。なお前記した磁気テープTに残すべき未記録領域の幅Δは、関連する諸条件と対応して定められるのである。
【0055】
本発明の磁気記録再生装置において、磁気テープTを順方向(または逆方向)と逆方向(または順方向)とに所定の走行速度で走行させた状態で、互いに同一のヘッドトラック幅を有する1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なって、磁気テープT上に前記した図6の(b),(c)に示すような記録跡パターンを形成させうる順次の記録跡を記録させるのには、磁気テープTの順逆両方向での記録動作において、磁気テープTの走行方向が変更される直前に磁気テープTに記録された記録跡が、第1の回転磁気ヘッドH1によって記録されたものであるのか、あるいは第2の回転磁気ヘッドH2によって記録されたものであるのかを、例えばコントロールパルスの時間位置を基準として検出する。
【0056】
そして、磁気テープTの走行方向の変更後に所定の走行速度で走行させた状態において、前記した磁気テープTの走行方向が変更される直前に磁気テープTに記録されていた記録跡に隣接して記録される記録跡の記録動作に用いられる回転磁気ヘッドが、前記した磁気テープTの走行方向が変更される直前に磁気テープTに記録された記録跡の形成に使用された回転磁気ヘッドと同一のものであった場合と、異なるものであった場合とに応じて、磁気テープTの走行方向が変更された後に所定の走行速度で走行される磁気テープTの走行位相を、それぞれ所定量だけ移相させる。
【0057】
すなわち、磁気テープTの走行方向が変更される以前に磁気テープTに形成されていた順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…に対して、磁気テープTの走行方向が変更された以後に、磁気テープTに順次に記録形成される記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…が、例えば図6の(b),(c)に示されている記録跡パターンのように、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、幅がΔの未記録領域が残される状態で磁気テープTに記録されるように、磁気テープTの走行方向が変更される以前に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLを再生して得た再生コントロールパルスの位相を所定量だけ移相させて、磁気テープの走行制御が行なわれるようにする。
【0058】
さて、図1に示す磁気記録再生装置は、操作部40に対して入力された動作モードの情報に対応した所定の動作態様で動作する。すなわち、操作部40から入力された動作モード情報が制御部41に与えられることにより、制御部41では磁気記録再生装置の各構成部分が、操作部40から入力された動作モードに従った動作を行なうことができるように、制御信号発生部42に指令を与えて、制御信号発生部42から、磁気記録再生装置の各構成部分に対して、それぞれ所定の制御信号を供給させる。
図1に示す磁気記録再生装置がアナログ信号形態の映像信号の記録動作を行なう場合には、入力端子38に供給された記録の対象にされている複合信号が、記録信号処理部39によって磁気記録に適した記録信号とされて、それが記録増幅器で増幅されて記録信号処理部39から出力され、また、図1に示す磁気記録再生装置が、デジタルデータのビットストリームの記録動作を行なう場合には、入力端子38に供給された記録の対象にされているデジタルデータのビットストリームが、記録信号処理部39によって磁気記録に適した記録信号とされ、それが記録増幅器で増幅されて記録信号処理部39から出力される。
【0059】
前記の磁気記録再生装置がアナログ信号形態の映像信号の記録動作を行なう記録動作モードに設定された場合には、記録信号処理部39中に設けられている同期信号分離回路で分離された垂直同期信号が供給されている制御信号発生部42で発生された基準信号が、ドラム回転制御回路43に供給され、また、前記の磁気記録再生装置がデジタルデータのビットストリームの記録動作を行なう記録動作モードに設定された場合には、記録信号処理部39中でデジタルデータから抽出された時刻基準参照値の情報に基づいて発生された時刻基準信号が供給される制御信号発生部42で発生された基準信号が、ドラム回転制御回路43に供給される。
【0060】
そして、前記のドラムモータ回転制御回路43には、ドラムモータDmの回転軸に取付けられた信号発生器59における周波数発電機で発生されたFG信号が、増幅器46で増幅された後に供給されているとともに、前記した信号発生器59における回転基準信号発生器で発生された回転パルス(回転基準信号)PGが増幅器45で増幅された後に供給されている。また、前記した増幅器45,46からの出力信号は、制御信号発生部42にも供給されていて、制御信号発生部42ではDFF信号(ドラム回転基準位相信号)、その他必要なタイミング信号を発生する。
【0061】
前記のドラムモータ回転制御回路43では、周波数数発電機で発生された信号FGや、前記した制御信号発生部42で発生された基準信号を基準の信号として、ドラムモータDmの回転数と回転位相とが所定の状態となるようなドラムモータ駆動信号を発生する。前記のドラムモータ駆動信号は、駆動増幅器44で増幅されてドラムモータDmに供給される。それにより前記のドラムモータDmによって駆動される上ドラムDuと一体的に回転する回転磁気ヘッドは所定の回転数,位相で回転する状態にされる。
【0062】
また、磁気テープTは操作部40に設定された記録動作モードで必要とされる走行速度で連続走行している状態となるように、制御部41の制御動作の下に、キャプスタンモータ53によって駆動されるキャプスタン18とピンチローラ17(図2参照)とによって駆動される。
記録動作時における磁気テープTの走行状態の制御動作は、入力端子38に供給された信号中の同期信号が記録信号処理部39で同期分離された後に、前記の同期信号に基づいて制御信号発生部42で発生された所定周期の信号が、基準信号として与えられるテープ速度信号発生回路50と、速度制御回路51と、駆動増幅器52と、キャプスタンモータ53と、キャプスタンモータ53の回転軸に取付けられた信号発生器54とによって自動制御系を構成している回路配置によって行なわれる。
【0063】
前記したテープ速度信号発生回路50では、磁気テープTの走行速度を所定の走行速度にさせるための基準信号を速度制御回路51に供給する。前記の速度制御回路51には、キャプスタンモータ53の回転軸に取付けられた信号発生器54中で発生されたFG信号(信号発生器54中の周波数発電機で発生されたFG信号)が供給されている。また、切換スイッチ48の可動接点vが固定接点P側に切換えられている動作状態においては、前記した速度制御回路51に対してコントロールヘッド15で再生された再生コントロールパルスが供給される。
【0064】
速度制御回路51では、前記したテープ速度信号発生回路50で発生されたテープ速度の基準信号と対応して、各動作モードにおいて必要とされる走行速度で磁気テープを走行させるとともに、記録の対象にされている映像信号における垂直同期信号の時間位置、あるいはデジタルデータのビットストリーム中から抽出された時刻基準参照値の情報に基づいて発生された時刻基準信号の時間位置に関して所定の位相関係となるように、キャプスタンモータ53の回転状態を制御するための制御信号(誤差信号)を発生し、それを駆動増幅器52に供給する。そして、前記した駆動増幅器52からの出力信号によりキャプスタンモータ53が駆動回転されることにより、磁気テープTは設定された各動作モードにおいて必要とされる走行速度で磁気テープを図中の矢印bの方向または矢印bとは逆の方向(−b)に走行される。例えば、磁気記録再生装置がVHS(登録商標)方式のVTRの場合に、回転磁気ヘッドH1,H2を毎秒30回転させ、磁気テープTを毎秒66.70mmで走行させる。
【0065】
磁気記録再生装置が磁気テープTを順方向に走行させた状態で磁気テープTに対して記録再生動作が行なわれる場合には、制御部(主制御部)41から傾斜制御部28に対して、磁気テープTを順方向に所定速度で走行させる状態と対応して設定されている傾斜制御情報を与える。また、磁気記録再生装置が記録動作モードとされた場合で、かつ磁気テープTを順方向に走行させて磁気テープTに対して初めて記録が行なわれる場合には、制御信号発生部42で発生されたコントロールパルスCTLを、録再切換スイッチ48の固定接点Rと可動接点vを介してコントロールヘッド15に供給して、図中の矢印bの方向に走行されている磁気テープTにおける基準縁Te近傍に形成されているコントロールトラックに対して記録する。記録動作モード時に記録信号処理部39から出力され、録再切換スイッチ47の固定接点Rと可動接点vと図示されていないロータリートランスとを介して、記録動作に用いられるべき回転磁気ヘッドに供給された記録信号は、回転磁気ヘッドH1,H2によって、所定の走行速度で連続走行している状態の磁気テープTに記録され、磁気テープTには平行な順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…[図6の(a)参照]が順次に記録形成される。図中の57は図示されていないヘッド切換スイッチに対して切換制御信号を与える線であり、また58は基板である。
【0066】
また、前記のように磁気テープTを順方向に走行させた状態で磁気テープTに図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に例えば毎秒66.70mmで走行させた状態にして、回転磁気ヘッドH1,H2によって、順次の記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を記録形成させて、図6の(b)または図6の(c)に例示されているような記録跡パターンを形成させる場合には、既述のように、磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡と、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、未記録領域の一部が残されている状態となるようにして記録するために、逆方向に走行する磁気テープTの走行位相を所定の位相に設定することが必要とされる。
【0067】
そのため、前記のように順方向に走行させた状態で磁気テープTに図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に走行させて記録動作を行なう場合には、 ▲1▼磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡が、回転磁気ヘッドH1,H2の何れのものによって記録形成されたのかを、制御部41においてコントロールパルスの時間位置を基準として判断する。
また、▲2▼制御部(主制御部)41では、磁気テープTが逆方向に走行された状態において、回転磁気ヘッドH1,H2により磁気テープTに記録形成されるべき順次の記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を、前記した順方向に走行させた状態において磁気テープTに記録形成されている順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…に対して平行な状態にさせるようにするための制御情報を傾斜制御部28に与える。
【0068】
▲3▼磁気テープTを逆方向に走行させた状態で、磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡に隣接して記録される記録跡を、回転磁気ヘッドH1,H2の内のどちらの回転磁気ヘッドによって行なうのかを制御部41で決定し、それに応じて磁気テープTを逆方向に走行させる場合の磁気テープTの走行位相の移相量を決定して、その情報と対応する制御信号を制御信号発生部42で発生させ、それをテープ速度信号発生回路50を介して速度制御回路51に供給させる。 ▲4▼制御部41では制御信号発生部42に、録再切換スイッチ48に対する切換制御信号を発生させて、前記の切換制御信号により、前記の録再切換スイッチ48における可動接点vを、固定接点R側から固定接点P側に切換える。 ▲5▼磁気テープTを逆方向に所定の走行速度で走行させるようにするための制御信号を、制御信号発生部42からテープ速度信号発生回路50に供給させる。
【0069】
それで磁気記録再生装置は、順方向に走行させた状態で磁気テープTに対して、図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に走行させた状態での記録動作を行なうときは、マイクロプロセッサやリードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ等を含んで構成されている前記した制御部41による制御動作の下に、磁気記録再生装置の各構成部分が、それぞれ所定の動作を行なって、図6の(a)に示されている順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録されている磁気テープTに、順次の記録跡記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を、図6の(b),(c)に示されているような状態に記録させる。
【0070】
すなわち、前記のように順方向に走行させた状態で磁気テープTに対して、図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に走行させた状態として記録動作を行ない、前記の磁気テープTに対して順次の記録跡記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を記録させ、最終的に図6の(b),(c)に示されているような記録跡パターン有するような記録済み磁気テープを作成する場合の磁気記録再生装置は、既述のように制御部41の制御の下に所定の制御信号を発生する制御信号発生部42が、磁気テープTを逆方向へ走行させるための制御信号を、テープ速度信号発生回路50に与え、テープ速度信号発生回路50で発生されたテープ速度信号による速度制御回路51の動作によって、キャプスタンモータ53が逆転を行なうようにされ、キャプスタン18とピンチローラ17(図2参照)とに挟着されて走行する磁気テープTを、図中の矢印bとは反対の方向に走行するようにさせる。
【0071】
また制御部41では磁気テープTを逆方向に走行させた状態で、磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡に隣接して記録される記録跡を、回転磁気ヘッドH1,H2の内のどちらの回転磁気ヘッドによって行なうのかを決定し、それに応じて磁気テープTを逆方向に走行させる場合の磁気テープTの走行位相の移相量を決定して、その情報と対応する制御信号を制御信号発生部42で発生させ、それをテープ速度信号発生回路50を介して速度制御回路51に供給させる。また前記の速度制御回路51には、磁気テープTのコントロールトラックからコントロールヘッド15により再生されたコントロールパルスCTLが、録再切換スイッチ48の可動接点vと固定接点Pとを介して供給されているから、速度制御回路51では前記のようにテープ速度信号発生回路50を介して、制御信号発生部42から供給された前記の制御信号による制御の下に、磁気テープTのコントロールトラックから再生された前記のコントロールパルスCTLの位相を所定量だけ移相させて、磁気テープTの走行位相が所定の移相量だけ移相された状態で走行する状態に、磁気テープTの走行状態を制御する。
【0072】
ところで、前記した磁気テープTの走行位相の移相量は、前記した磁気テープTの走行方向が変更される以前に記録形成された記録跡と、磁気テープTの走行方向が変更された後に、前記の記録跡に隣接して磁気テープに記録される記録跡とが同一の回転磁気ヘッドが使用されるか否かの区別、及び、磁気テープTの走行方向が変更された後に、未記録領域のままの状態で残すべき未記録領域の幅Δの値、等によって、それぞれ異なる値に設定されることが必要である。
【0073】
前記した磁気テープTの走行方向が変更される以前に磁気テープに記録形成されていた記録跡と、磁気テープTの走行方向が変更された後に、前記の記録跡に隣接して磁気テープに記録形成される記録跡とが、同一の回転磁気ヘッドによって記録形成されるか否かの情報は、磁気テープTの走行方向が変更される以前における記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLの記録位置を基準にして得ることができる。
磁気テープTの走行方向が変更された後に、磁気テープTの走行方向の変更の直前に記録形成された記録跡に隣接する記録跡を磁気テープTに記録形成させるのに使用される回転磁気ヘッドが、第1,第2の回転磁気ヘッドH1,H2の何れのものであるのかの区別の情報も、磁気テープTの走行方向が変更される以前における記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLを再生して得た再生コントロールパルスの時間位置を基準にして得ることができる。また、磁気テープTの走行方向が変更された後に、未記録領域のままの状態で残すべき未記録領域の幅Δの値は、磁気記録再生装置の構成に当って予め定めておくべき値であって既知の値である。
【0074】
したがって、磁気テープTの走行方向の変更後に、磁気テープTの走行位相を所定の位相量だけ移相させるための制御情報は、例えばルック・アップ・テーブル(ロム・テーブル)を用いることによって容易に得ることができる。すなわち、磁気テープTの走行方向の変更の直前の記録跡を記録形成させた回転磁気ヘッドの区別の情報と、磁気テープTの走行速度の変更の直前に記録形成された記録跡に隣接する記録跡を磁気テープTに記録形成させるのに使用された回転磁気ヘッドの区別の情報と、磁気テープTの走行方向が変更された後に、未記録領域のままの状態で残すべき未記録領域の幅Δの値とを、アドレス情報としてルック・アップ・テーブルに与えるようにし、前記のルック・アップ・テーブルから、前記したアドレス情報に対応して、磁気テープTが順方向に走行している状態で磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLを再生して得た再生コントロールパルスの位相を移相させて、磁気テープTの走行位相を所定の位相量だけ移相させることができるような制御情報を出力できるルック・アップ・テーブルを用いればよいのである。
【0075】
磁気テープTの走行方向と走行速度、走行方向の変更などの諸動作は、操作部40に入力された記録再生モードの情報と対応して行なわれる制御部41の制御動作の下に、制御信号発生部42、テープ速度信号発生回路50、速度制御回路51等の動作によって行なわれることは既述のとおりであるが、前記の諸動作は、操作部40に入力された記録再生モードの情報に応じて、磁気記録再生装置が、例えば、磁気テープTをそれの巻初めから巻終りまで順方向に走行させ、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの巻終りから巻初めまでの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行ない、磁気テープTの巻初め位置で磁気テープTの走行を停止させるようにしたり、あるいは、磁気テープTの途中の位置から磁気テープTを順方向に走行させた状態で、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの途中で磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの途中の位置から途中の位置までの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なって、前記の所定の区間に対する往復記録動作が終了したときに走行を停止させるようにしたり、その他の各種の動作態様により磁気記録再生装置を動作させる。
【0076】
また、磁気記録再生装置が、例えば、磁気テープTをそれの巻初めから巻終りまで順方向に走行させ、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの巻終りから巻初めまでの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行ない、磁気テープTの巻初め位置で磁気テープTの走行を変更して、磁気テープTをそれの巻初めから巻終りまで順方向に走行させ、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの巻終りから巻初めまでの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行ない、磁気テープTの巻初め位置で磁気テープTの走行を変更して、以下前述と同様な記録動作を繰返し行なう、すなわち、磁気記録再生装置によって、所謂、エンドレステープに対する記録動作態様と同様な記録動作を行なう場合には、2回目以降の往復記録時に消去ヘッドHe1,He2によって先行消去を行なう。また、1回目の復路記録時以降における磁気テープTの走行位相の制御は、1回目の順方向の走行状態での記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLの再生信号を用いて行なわれる。
【0077】
磁気テープTの途中の位置(例えば第1の位置とする)から磁気テープTを順方向に走行させた状態で、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの途中の位置(例えば第2の位置とする)で磁気テープTの走行方向を変更して、磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの途中の第2位置位置から第1の位置までの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なう。 前記の所定の区間に対する往復記録動作が終了した後に、前記した第1の位置で磁気テープTの走行を変更して磁気テープを順方向に走行させるようにし、前記した第1の位置から磁気テープTの途中の第2の位置まで、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なって行く。
【0078】
磁気テープTの途中の第2の位置において磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの途中の第2の位置から前記の第1の位置までの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なう、というように、磁気テープの途中の特定な2つの位置(前述の第1,第2の位置)間について、記録動作を繰返して行なう場合においても、2回目以降の往復記録時には消去ヘッドHe1,He2によって先行消去を行なう。
【0079】
なお、前記した先行消去動作に使用される先行消去用の回転磁気ヘッドHe1,He2としては、記録動作に使用される第1,第2の回転磁気ヘッドのヘッドトラック幅と同一のヘッドトラック幅を備えているものが使用される。また、2回目以降の往復記録時における磁気テープTの走行位相の制御は、1回目の順方向の走行状態での記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLの再生信号を用いて行なわれる。
【0080】
磁気テープTの走行方向の変更の情報は、例えば操作部40に入力された記録再生モードの種類に応じて、制御部41内において自動的に発生される他、操作者が、操作部40から磁気テープTの走行方向の変更情報を入力することによっても行なわれる。
また、磁気記録再生装置に、磁気テープTの途中位置からから別の途中位置までに設定された所定の区間について、往復記録動作を行なわせる場合には、例えば、磁気テープTのコントロールトラック、または音声トラックに、前記の往復動作が行なわれる区間の両端部を示す識別信号を記録しておき、前記の識別信号を用いて磁気記録再生装置が所定の記録再生動作を行なうようにするとよい。
【0081】
図1に示す磁気記録再生装置の再生動作に際しては、複数種類の再生モードの内から選択した希望の再生モードの情報を操作部40に入力する。それにより制御部41では、前記した操作部40に入力された再生モード情報で指定された再生モードにおいて、装置の各構成部分で行なわれべき所定の動作に必要な各種の制御信号が、制御信号発生部42で発生されるように、前記した制御信号発生部42を制御する。
磁気記録再生装置が再生動作を行なう場合に、回転磁気ヘッドの回転数は、制御部41の制御動作によって、記録済み磁気テープを作成する際の回転磁気ヘッドの回転数と同一の回転数に設定される。また、記録済み磁気テープTの走行速度及び走行方向ならびに走行位相は、前記した選択された再生モードとそれぞれ対応して定まる所定の走行速度及び走行方向ならびに走行位相に設定される。
そして、記録済み磁気テープの走行状態、すなわち、再生動作時における記録済み磁気テープTの走行速度や走行方向,走行位相は、前記の設定された走行速度や走行方向,走行位相となるように、キャプスタンサーボ系によって制御される。
【0082】
再生動作時において、前記の記録済み磁気テープTの走行状態を制御するキャプスタンサーボ系には、選択された再生モードと対応して制御信号発生部42に発生した基準信号や、走行位相についての情報等が、テープ速度信号発生回路50に与えられているとともに、コントロールヘッド15によって再生されたコントロール信号が、録再切換スイッチ49の固定接点Pと可動接点vとを介して速度制御回路51に与えられている他に、信号発生器54で発生されたFG信号が速度制御回路51に与えられている。
それで、キャプスタンモータ53によって回転されるキャプスタン18と、図示されていないピンチローラとによって挟着されて駆動走行する記録済み磁気テープTは、前記した選択された再生モードと対応して定められた走行方向及び走行速度ならびに走行位相を示す所定の走行状態で走行する。
【0083】
これまでの説明においては、記録再生に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2として、磁気空隙のヘッドトラック幅Twの同一なものを用い、また、磁気テープTを順方向に走行させたときに、磁気テープTに順次に記録形成される記録跡によって、図6の(a)に示されている記録跡パターンのように、隣接する記録跡間にTwの幅の未記録領域が形成されるような走行速度を、所定の走行速度であるとして、磁気テープTを前記した所定の走行速度により順逆方向に走行させた状態で、記録再生動作を行なうようにした場合の実施例について記述して来た。
【0084】
しかし、本発明の磁気記録再生装置の実施に当っては、記録再生動作時に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2として、磁気空隙のヘッドトラック幅が互いに異なっているものを用いたり、磁気テープの所定の走行速度として、磁気テープTを順方向に走行させたときに、磁気テープTに順次に記録形成される記録跡における隣接する記録跡間に形成される未記録領域の幅が、記録再生に使用される回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のヘッドトラック幅Twよりも大きくなるような走行速度、あるいは、前記した隣接する記録跡間に形成される未記録領域の幅が、記録再生に使用される回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のヘッドトラック幅Twよりも小さくなるような走行速度を所定の走行速度として、前記の所定の走行速度で順逆両方向に磁気テープTを走行させた状態で記録再生動作が行なわれるようにした場合でも、磁気テープTを順逆両方向に走行させて記録動作を行なった結果として磁気テープTに形成される順次の記録跡における同一の回転磁気ヘッドによって記録形成された隣接する記録跡間に、所定幅Δの未記録領域が存在している状態となるようにして本発明が実施されてもよい。
【0085】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したところから明らかなように、本発明の磁気記録再生装置は、上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、磁気テープを順方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に未記録領域が形成され、前記した磁気テープを逆方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより、前記した未記録領域に順次交互に記録跡を形成させうるような同一の所定の走行速度で、磁気テープを順方向及び逆方向に選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えて構成したものであるから、従来構成の磁気記録再生装置に大幅な構成の変更を加えることなく、良好な再生画像が得られるオートリバース方式の磁気記録再生装置を容易に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録再生装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】磁気記録再生装置のテープ走行系を示す斜視図である。
【図3】傾斜制御部の一例構成を示す側断面図である。
【図4】回転磁気ヘッドの配置例を示す平面図である。
【図5】磁気テープの記録跡を説明するための図である。
【図6】磁気テープの記録跡パターンを説明するための図である。
【符号の説明】
DB…ドラムベース、Dd…下ドラム、Du…上ドラム、DA…ドラム構体、Hsp1,Hsp2,Hep1,Hep2…回転磁気ヘッド、T…磁気テープ、Te…磁気テープの基準縁、1…供給リール台、2…巻取りリール台、3…カセットケース、4…供給リール、5…テンションポール、6,16…ガイドポール、7…全幅消去ヘッド、8…インピーダンスローラ、9,14…ローディングポール(垂直ガイドローラ)、10,13…傾斜ガイド(スラントポール)、15…コントロールヘッド、17…ピンチローラ、18…キヤプスタン、19…巻取りリール、39…記録信号処理部、40…操作部、41…制御部、42…制御信号発生部、43…ドラム回転制御回路、45,46,55…増幅器、44,52…駆動増幅器、47〜49…録再切換スイッチ、50…テープ速度信号発生回路、51…速度制御回路、53…キャプスタンモータ、54,59…信号発生器、56…再生信号処理部、
【発明の属する技術分野】
本発明は、上ドラムと下ドラムとからなるドラムの周面の一部へ巻回された状態で走行する磁気テープに回転磁気ヘッドを用いて記録再生動作を行なうことができるようにしたヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置{ヘリカル・スキャン型のビデオ・テープ・レコーダ(VTR)}、特に往復走行する磁気テープに対する記録動作及び再生動作を行なうことができるヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上ドラムと下ドラムとからなるドラムの周面の一部へ巻回された状態の磁気テープを所定の走行速度で走行させ、回転磁気ヘッドを用いて記録再生動作を行なうようにしているヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置は、VCR(あるいはVTR)として従来から広く使用されて来ていることは周知のとおりである。そして、前記したヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置では、高密度記録を達成するための一手段として、互に逆のアジマス角度を有する磁気空隙を備えている1対の回転磁気ヘッド、すなわち、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた回転磁気ヘッドとからなる1対の回転磁気ヘッドが、180度対称の位置に設けられている上ドラムDu(図2,図3参照)を所定の回転数で回転させ、前記のドラムの周面の少なくとも一部へ斜めに巻付けられた磁気テープTの基準縁Te(図2参照)の位置が、下ドラムDd(図2,図3参照)に設けられている案内部G(図2参照)によって規制された状態で所定の走行速度で走行する磁気テープを、前記の1対の回転磁気ヘッドによって順次交互にヘリカルスキャンさせ、前記した1対の回転磁気ヘッドにおける各回転磁気ヘッドの180度毎の回転と対応して、記録対象の信号による順次の記録跡を、磁気テープ上に隣接した状態で順次に記録形成させたり、記録跡中の記録情報を再生させるようにしている。
【0003】
すなわち、前記のVTRにおいては、互に逆アジマス角度を有する磁気空隙を備えている1対の回転磁気ヘッドが、180度対称の位置に設けられている上ドラムを所定の回転数で回転させ、前記のドラムの周面の少なくとも一部へ斜めに巻付けられた磁気テープの基準縁の位置が、下ドラムに設けられている案内部によって規制された状態で所定の走行速度で走行する磁気テープに、前記の1対の回転磁気ヘッドによって順次交互にヘリカルスキャンさせて、前記した1対の回転磁気ヘッドにおける各回転磁気ヘッドの180度毎の回転と対応して、記録対象の映像信号における順次の1フィールド期間の映像信号による順次の記録跡を、磁気テープ上に隣接した状態で順次に形成させたり、記録跡中の記録情報が再生されるようにしている。
【0004】
さて、民生用のVTRでは、特定なテープ長(例えば246m)の磁気テープを用いて、例えば2時間の記録再生動作を行なうことができるような標準モード(SPモード)による記録再生動作と、前記した特定なテープ長の磁気テープを用いて、標準モードよりも長い時間(例えば6時間)にわたる記録再生動作を行なうことができるような長時間モード(EPモード)による記録再生動作との2種類の動作モードで使用できるようにされている他、高速再生、静止画再生等の各種のトリック再生動作モードでの動作も行なえるように構成されることが多い。そして、前記したEPモードでの記録再生動作時における磁気テープの走行速度は、SPモードでの記録再生動作時における磁気テープの走行速度よりも遅く設定されているとともに、前記の各モードにおいて使用されるべき回転磁気ヘッドとしても、ヘッドトラック幅を互いに異にしている各1対の回転磁気ヘッドが専用に設けられている。
【0005】
例えば、VHS(登録商標)方式におけるVTRの場合には、前記したSPモードにおける磁気テープの走行速度は毎秒33.35mm、EPモードにおける磁気テープの走行速度は毎秒11.112mmであり、また、SPモードでの記録再生動作時に使用される回転磁気ヘッド(SP用回転磁気ヘッド)は、ヘッドトラック幅が58μmで、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度のように表記する)であるような磁気空隙を備えているものと、ヘッドトラック幅が58μmで、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとが、上ドラムの周囲の180度対称の位置に設けられ、また、EPモードでの記録再生動作時に使用される回転磁気ヘッド(EP用回転磁気ヘッド)は、ヘッドトラック幅が19.3μmで、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度のように表記する)であるような磁気空隙を備えているものと、ヘッドトラック幅が19.3μmで、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとが、上ドラムにおける180度対称の位置に設けられる。
【0006】
ところで、前記した1対のSP用回転磁気ヘッドと、1対のEP用回転磁気ヘッドとの上ドラムへの配設態様として、トリックプレイ(特殊再生)時における再生画像中のノイズの低減動作にも役立てうるようにするために、従来から、SP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が+6度のものと、EP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が−6度のものとを、互いの磁気空隙間の距離が所定の微小な間隔(前記の微小な間隔としては、例えば、2水平走査期間と対応する時間中に、回転磁気ヘッドが回転軌跡中で変位する距離とされる…以下の記載においては、「2Hの距離」のように表現されることもある)だけ離れている状態の一対の回転磁気ヘッド(ダブル・アジマスヘッドのように称されることもある)に構成させ、また、SP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が−6度のものと、EP用の回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のアジマス角度が+6度のものとを、互いの磁気空隙間の距離が所定の微小な間隔(2Hの距離)だけ離れている状態のダブル・アジマスヘッドとして構成させ、前記の2個のダブル・アジマスヘッドを、上ドラムにおける180度対称の位置に取付けるようにすることも行なわれている。なお、前記したダブル・アジマスヘッドの構成に当っては、例えば、ダブル・アジマスヘッドを構成するのに使用されるSP用の回転磁気ヘッドよりもEP用の回転磁気ヘッドの方が、上ドラムの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置される、というような配置態様にされる。
【0007】
ところで、前記したようなヘリカル・スキャン型の磁気記録再生装置において、回転磁気ヘッドの回転軌跡に従って磁気テープに形成される記録跡のパターンは、ドラムの直径、回転磁気ヘッドの回転数、回転磁気ヘッドの回転方向、磁気テープの走行速度、磁気テープの走行方向、トラック角度、ヘッドトラック幅、磁気テープの記録領域幅等の諸条件によって定まるから、磁気記録再生装置の動作モードの変更によって、例えば、磁気テープの走行方向や走行速度等の条件が変化した場合には、回転磁気ヘッドによって磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡のパターンは、変化することになる。
例えば、VHS(登録商標)方式におけるVTRがSPモードの場合には、直径が62mmの回転ドラムに取付けられた回転磁気ヘッドが毎分1800回転しており、ドラムの外周の一部に巻回されている磁気テープが、毎秒33.35mmの送り速度で順方向に移送される状態として記録再生動作が行なわれるが、この状態で回転磁気ヘッドによって走行時の磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡は、磁気テープの基準縁に対して5°58’9.9”の角度となる。
【0008】
また例えば、VHS(登録商標)方式におけるVTRにおいて、直径が62mmの回転ドラムに取付けられた回転磁気ヘッドを毎分1800回転させておき、ドラムの外周の一部に巻回されている磁気テープを、毎秒66.7mmの送り速度で順方向に移送される状態として記録再生動作(順方向での2倍速再生)をした場合に、回転磁気ヘッドによって走行時の磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡は、磁気テープの基準縁に対して6°2’19.2”の角度となる。さらに例えばVHS(登録商標)方式におけるVTRにおいて、直径が62mmの回転ドラムに取付けられた回転磁気ヘッドを毎分1800回転させておき、ドラムの外周の一部に巻回されている磁気テープを、毎秒66.7mmの送り速度で逆方向に移送される状態として記録再生動作(逆方向での2倍速再生)をした場合に、回転磁気ヘッドによって走行時の磁気テープに描かれる回転磁気ヘッドの回転軌跡は、磁気テープの基準縁に対して5°54’6.2”の角度となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、オーディオ信号用の磁気記録再生装置(テープレコーダ)では、従来から自動的に往復記録再生動作を行なうためのオートリバース機構を備えて構成されていることは周知のとおりであるが、前記したVHS(登録商標)方式のVTRを含め、ヘリカル・スキャン型のVTRでは、VTRの動作モードの変更により、磁気テープの走行方向や走行速度等の条件が変化すると、前述の例からみても判かるように、回転磁気ヘッドによって磁気テープに描かれる回転軌跡のパターンが変化するために、従来の一般的な構成のままのヘリカル・スキャン型のVTRによっては往復記録再生を行なうことができない。
前記のように、従来の一般的な構成のヘリカル・スキャン型のVTRでは往復記録再生をすることができないために、例えば、磁気テープの記録内容を繰返し再生することが必要とされるような場合には、磁気テープの始端から開始されて磁気テープの終端で終了する1回毎の再生動作が終了する都度に、磁気テープを終端から始端まで巻戻さなければならないという煩雑な動作を伴なったり、また、磁気テープに記録されている情報中で再生が必要とされる情報の頭出しに時間がかかったりするという問題があった。
【0010】
それで、前記のような問題点の無い往復記録再生動作の可能なヘリカル・スキャン型のVTRが、例えば特開昭50ー85316号公報、特開昭59ー104706号公報、特開平3ー194701号公報、特公平7ー54562号公報等によって開示されたが、前記の各公報によって開示されている往復記録再生動作の可能なヘリカル・スキャン型のVTRは、往復記録再生動作を行なわせるために、従来の一般的な構成のVTRとは大きな構成上の違いがあったり、特殊な動作態様での動作を行なわせるような構成のものである点が問題になる。
そこで、本出願人会社では、従来の一般的な構成のヘリカル・スキャン型のVTRの構成上に大きな変更を加えず、また、基本的な動作態様にも大きな変更を加えないで、往復記録再生動作の可能なヘリカル・スキャン型のVTRを提供できるならば、磁気テープを実質的にエンドレスの状態として記録再生を行なうことにより、例えば、防犯、監視、教育、宣伝等の目的のために有効に活用することが容易にできるようになることから、そのようなVTRについての研究を進めた。
【0011】
ところが、上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に設けられている、互に逆のアジマス角度(以下の記載においては、+αのアジマス角度と、−αのアジマス角度とする)を有する磁気空隙を備えている第1,第2の回転磁ヘッドを順次交互に使用して、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に、前記した記録跡の記録跡幅と対応する間隔が形成されうるような走行速度で、磁気テープを順方向に走行させて記録再生動作を行ない、次に磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、前記した順方向に磁気テープが走行している状態で第1,第2の回転磁気ヘッドで磁気テープに形成された順次の記録跡の間の未記録領域に挿入されるようにして記録再生動作が行なわれるようにした場合に、往復走行によって磁気テープに形成される記録跡パターンは、(磁気空隙のアジマス角度が+αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が+αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が−αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が−αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→(磁気空隙のアジマス角度が+αの回転磁気ヘッドによる記録跡)→…というように、同一のアジマス角度の磁気空隙を有する回転磁気ヘッドによって記録形成された記録跡が隣り合う状態で2個ずつ並んでいる状態のものになる。
【0012】
前記したようなテープパターン、すなわち、隣接する2つの記録跡が、同じアジマス角度の磁気空隙を有する回転磁気ヘッドによって形成されている記録跡群が順次に磁気テープ上に配置されている状態とされている場合には、再生動作時に各回転磁気ヘッドが、それぞれ再生の対象にされている記録跡上を正確に追跡していたとしても、再生信号中には隣接する記録跡からの漏話が生じている状態のものになるために、良好な再生画像が得られないことになる。
図5に例示した記録跡パターンは、第1,第2の回転磁気ヘッドとして、それぞれの磁気空隙のヘッドトラック幅が同一であるような磁気記録再生装置を使用した場合のものであるが、実用されている民生用VCR(VTR)では、第1,第2の回転磁気ヘッドとして、例えば、第1の回転磁気ヘッドとして磁気空隙のヘッドトラック幅が58μm(この数値は一例である)のものを使用し、また第2の回転磁気ヘッドとして磁気空隙のヘッドトラック幅が46μm(この数値は一例である)のものを使用する、というように、第1,第2の回転磁気ヘッドとして、それぞれの磁気空隙のヘッドトラック幅が異なるものを使用し、第1,第2の回転磁気ヘッドによって磁気テープに記録形成される隣接する記録跡間にガードバンドが形成されるようにすることも行なわれている。
【0013】
前記のように、互に異なるヘッドトラック幅の磁気空隙を備えている第1,第2の回転磁気ヘッドを順次交互に使用して、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に、ヘッドトラック幅が大きい方の磁気空隙を備えている回転磁気ヘッド(前述の例では58μmのヘッドトラック幅の磁気空隙を備えている第1の回転磁気ヘッド)によって磁気テープに記録形成される記録跡の記録跡幅(前述の例では58μm)と対応する間隔が形成されうるような走行速度で、磁気テープを順方向に走行させて記録再生動作を行ない、次に磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、前記した順方向に磁気テープが走行している状態で第1,第2の回転磁気ヘッドで磁気テープに形成された順次の記録跡の間の未記録領域に挿入されるようにして記録再生動作が行なわれるようにした場合に、往復走行によって磁気テープに形成される記録跡パターンにおいても、同一のアジマス角度の磁気空隙を有する回転磁気ヘッドによって記録形成された記録跡が隣り合う状態で2個ずつ並んでいる状態のものになることには変わりがない。
【0014】
しかし、この場合には順方向に磁気テープが走行している状態で第1,第2の回転磁気ヘッドで磁気テープに形成された順次の記録跡の間の未記録領域に挿入される記録跡が、前記した未記録領域の幅よりも小さな幅とされているヘッドトラック幅の磁気空隙を備えている第2の回転磁気ヘッド(前述の例では46μmのヘッドトラック幅の磁気空隙を備えているものと例示してある)によって記録形成されたものの場合には、その記録跡と隣接する記録跡との間には未記録領域が残される状態になるから、第2の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間には、未記録領域が存在している状態になるが、第1の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間には、未記録領域は存在していない。
【0015】
したがって、前記の場合においても第1の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間においては、図5を参照して既述したとおりの問題が発生する。また、第2の回転磁気ヘッドによって磁気テープに隣接して記録される2本の記録跡間には、未記録領域が存在している状態になっているが、記録済み磁気テープを作成したVTRとは別のVTRで再生した場合に、トラックキングのずれにより、再生信号中には隣接する記録跡からの漏話が生じている状態のものになることが多く、良好な再生画像が得られないことになる。
それで、前記の問題点に対する改善策が求められた。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、磁気テープを順方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に未記録領域が形成され、前記した磁気テープを逆方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより、前記した未記録領域に順次交互に記録跡を形成させうるような同一の所定の走行速度で、磁気テープを順方向及び逆方向に選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えてなる磁気記録再生装置、及び上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、通常の記録再生動作モードにおける磁気テープの走行速度の2倍の走行速度で、磁気テープを順方向と逆方向とに選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えてなる磁気記録再生装置を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の磁気記録再生装置の具体的な内容を詳細に説明する。図1は本発明の磁気記録再生装置の概略構成を示すブロック図、図2は磁気記録再生装置の磁気テープの走行系の構成例を示す斜視図、図3は磁気テープを順方向と逆方向とに走行させたときにも、回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡を、互いに平行な状態となるようにさせるための手段の1つとして採用できる構成部分の側断面図、図4は回転ドラムにおける回転磁気ヘッド等の配置を説明するための図である。
【0018】
まず、図4中においてDuは上ドラムであり、また、DAH1,DAH2は、それぞれ互いにヘッドトラック幅と、磁気空隙のアジマス角度とを異にしている2個の回転磁気ヘッドが、互いの磁気空隙間の距離が所定の微小な間隔(例えば、2水平走査期間と対応する時間中に、回転磁気ヘッドが回転軌跡中で変位する距離…「2Hの距離」)だけ離れている状態の一対の回転磁気ヘッド(ダブル・アジマスヘッド)である。
前記のダブルアジマスヘッドDAH1は、SPモードでの記録再生動作時に使用されるSP用の回転磁気ヘッドHsp1と、EPモードでの記録再生動作時に使用されるEP用の回転磁気ヘッドHep2とを、SP用の回転磁気ヘッドHsp1よりもEP用の回転磁気ヘッドHep2の方が、上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様のものとして構成されている{図4の(a),(c)参照}。
【0019】
また、前記のダブルアジマスヘッドDAH2は、SPモードでの記録再生動作時に使用されるSP用の回転磁気ヘッドHsp2と、EPモードでの記録再生動作時に使用されるEP用の回転磁気ヘッドHep1とを、SP用の回転磁気ヘッドHsp2よりもEP用の回転磁気ヘッドHep1の方が、上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様のものとして構成されている{図4の(a),(c)参照}。
【0020】
なお、前記した2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2では、SP用の回転磁気ヘッドよりもEP用の回転磁気ヘッドの方が上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様とされていたが、本発明の磁気記録再生装置の実施に当っては、前記した2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2が、EP用の回転磁気ヘッドよりもSP用の回転磁気ヘッドの方が上ドラムDuの回転方向について、2Hの距離だけ先行して配置させてあるというような配置態様とされているものが使用されても差支えない。 図4の(a)に示されているように、前記した2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2は、一方のダブルアジマスヘッドDAH1におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1と、他方のダブルアジマスヘッドDAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp2とが、上ドラムDuの周上で180度対称の位置に在るような状態となるようにして、上ドラムDuに取付けられている。
【0021】
なお、前記の状態で上ドラムDuに取付けられた2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2における一方のダブルアジマスヘッドDAH1のEP用の回転磁気ヘッドHep2と、他方のダブルアジマスヘッドDAH2のEP用の回転磁気ヘッドHep1とは、上ドラムDuの周上で180度対称の位置に在るような状態となっている。また、図4に例示してある2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2では、SP用の回転磁気ヘッドHsp1がヘッドトラック幅が58μmで、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度)であるような磁気空隙を備えているものとされており、SP用の回転磁気ヘッドHsp2がヘッドトラック幅が58μm(46μmとされることもある)で、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとされており、EP用の回転磁気ヘッドHep1がヘッドトラック幅が26μm(または19μm)で、アジマス角度が時計まわり方向に6度(+6度)であるような磁気空隙を備えているものとされており、EP用の回転磁気ヘッドHep2がヘッドトラック幅が26μm(または19μm)で、アジマス角度が反時計まわり方向に6度(−6度)であるような磁気空隙を備えているものとされている。
【0022】
図4の(c)は、上ドラムDuに前記のように設けられている2つのダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2を水平方向に展開した状態で、各回転磁気ヘッド間の配置関係や、一方のダブルアジマスヘッドDAH1におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度、EP用の回転磁気ヘッドHep2のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度、及び他方のダブルアジマスヘッドDAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp2のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度、EP用の回転磁気ヘッドHep1のヘッドトラック幅や磁気空隙のアジマス角度などの相違が容易に判かるように図示した図である。
【0023】
図4の(a)を参照して既述した回転磁気ヘッドの配置態様は、上ドラムDuに2個のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2だけを設けた場合のものであったが、図4の(b)に例示してある上ドラムDuにおける回転磁気ヘッドの配置態様は、2個のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2の他に、前記のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1,Hsp2の内の所定のものに先行し、前記のダブルアジマスヘッドDAH1,DAH2におけるSP用の回転磁気ヘッドHsp1,Hsp2の内の所定のものに先行して消去動作を行なう消去用の2個の回転磁気ヘッドHe1,He2を備えている場合の上ドラムDuにおける回転磁気ヘッドの配置態様である。なお、先行消去用の回転磁気ヘッドのヘッドトラック幅は、消去の対象にされている記録跡の記録跡幅と対応して定められていることは周知のとおりである。
【0024】
図2は、上ドラムDuと、前記の上ドラムDuと対をなして設けられる下ドラムDd(図3を参照のこと)と、磁気テープTの基準縁Teの位置を規制する磁気テープ案内部材(リードリング)Lrとによって構成されているドラム構体DAを備えているVTRの機構部と、テープ走行系の一例の概略構成を示している斜視図であり、また、図3は回転磁気ヘッドによって磁気テープTに描かれる回転軌跡を、磁気テープTの基準縁Teに対して所定の角度となるように制御できるようにさせる機構部分の構成例を示している。図2において1は供給リール台、2は巻取りリール台であり、カセットケース3内に設けてある供給リール4及び巻取りリール19に巻回させて磁気テープTを収納してあるカセットケース3をVTRに装着すると、カセットケース3内の供給リール4は機台20に設けられている供給リール台1と連結され、またカセットケース3内の巻取りリール19は機台20に設けられている巻取りリール台2と連結される。
【0025】
磁気テープTがパラレルローディング方式のローディング機構に設けられているローディングポール(垂直ガイドローラ)9,14によってカセットケース3内から引出されると、前記の磁気テープTはテンションポール5,ガイドポール6,全幅消去ヘッド7,インピーダンスローラ8,ローディングポール(垂直ガイドローラ)9,傾斜ガイド(スラントポール)10等を経て所定の回転数で駆動回転されている上ドラムDuと、静止の状態の下ドラムDdの周面の一部に、磁気テープの基準縁Teが案内されている状態で巻回された後に、傾斜ガイド(スラントポール)13,ローディングポール(垂直ガイドローラ)14,オーディオ・コントロールヘッド15,ガイドポール16,キヤプスタン18とピンチローラ17等を経て巻取りリール19に至る磁気テープの走行路を走行できるように張設される。
【0026】
前記した上ドラムDuに設けられている回転磁気ヘッドが所定の回転数で駆動回転された状態で、磁気テープTの走行方向、及び走行速度が各種の動作モードに対応して、VTRに設けられている主制御部に設定されるのに応じて、前記の主制御部から制御情報が与えられた傾斜制御部28の制御の下に、ドラム構体DAにおける上ドラムDuと下ドラムDd(図3参照)とは、ドラム構体DAの中心軸21が、図3中の矢印29a(または29b)の方向に所定量だけ傾斜されるとともに、リードリングLrも、傾斜制御部28の制御の下に所定の方向に所定量だけ傾斜されて、回転磁気ヘッドの回転軌跡によって磁気テープTに描かれる回転軌跡のパターンが、予め定められた状態のものとなるようにされる。
【0027】
前記のようにローディング機構によるローディング動作が行なわれた後に、供給リール4から巻取りリール19までの間に設定された磁気テープの走行路を走行する磁気テープTは、テンションポール5→ガイドポール6→全幅消去ヘッド7→インピーダンスローラ8→ローディングポール(垂直ガイドローラ)9の区間の走行路中では水平な状態で走行し、次いで、傾斜ガイド(スラントポール)10によって磁気テープTの走行方向が変更されることにより、前記の磁気テープTは所定の回転数で駆動回転されている上ドラムDuと下ドラムDdとの両者に対して中心角で180度強の範囲にわたりリードリングLrに設けられている案内部Gに沿うような状態で巻付けられるのである。なお、順方向と逆方向との双方での記録再生動作が行なわれる本発明のVTRにおいては、必要に応じて、全幅消去ヘッドを、ドラム構体DAの出口側から後方の磁気テープの走行路中にも設けておくこともできる。
【0028】
前記のように上ドラムDu及び下ドラムDdに対して180度強の範囲にわたり巻付けられた磁気テープTは、次いでローディングポール(垂直ガイドローラ)14によって磁気テープTの走行方向が再び水平の状態の走行方向に戻された後に、オーディオ・コントロールヘッド15→ガイドポール16→キヤプスタン18とピンチローラ17等の区間の磁気テープの走行路を走行して巻取りリール19に巻回される。
図2中における矢印aは、上ドラムDuの回転方向であり、また、矢印bは磁気テープTの順方向における移送方向を示している。磁気テープTの逆方向における移送方向は、図2中の矢印bの方向とは反対の方向であることは、いうまでもない。
なお、図2及び図3中には図面の簡略化表示のために、上ドラムDuを所定の回転数で駆動回転させるためのドラムモータの図示を省略してあるが、前記のドラムモータとしては、例えば、前記した上ドラムDuにロータを固定させた構成のモータ(図1中のDm)を用いるようにしてもよい。前記のような構成態様のドラムモータが使用される場合には、上ドラムDuをドラム構体DAの中心軸21に対して回転自在にベアリング軸受けによって支持させればよい。
【0029】
次に、回転磁気ヘッドによって磁気テープTに描かれる回転軌跡を、磁気テープTの基準縁Teに対して、任意所定の角度となるように制御できるようにするための機構部分の構成例を示す図3において、DBはドラムベースであり、上ドラムDuと下ドラムDdとリードリングLrとからなるドラム構体DAは、前記のドラムベースDBによって支持されている。
上ドラムDuは、ドラム構体DAの中心軸21に装着されている図示していないベアリング軸受けによって、ドラム構体DAの中心軸21に対して回転自在に支持されており、また下ドラムDdは前記のドラム構体DAの中心軸21に固着されている。また磁気テープTの基準縁Teの案内部として機能するリードリングLrは、前記した下ドラムDdとは別体に構成されており、下ドラムDdの下方の外周部に近接し、かつドラムベースDB上に設けられている。
【0030】
そして、前記のリードリングLrは、前記したドラム構体DAの中心軸21の位置から、図3が描かれている紙面に垂直な方向における前記した中心軸21の両側の位置のドラムベースDBに設けられた回動支点23(23)によって回動可能に支持されており、前記したリードリングLrと、ドラムベースDBとの間には圧縮ばね25が装着されている。
また、前記の下ドラムDdは、前記したドラム構体DAの中心軸21の位置から、図3が描かれている紙面に垂直な方向における前記した中心軸21の両側の位置のリードリングLrに設けられた回動支点22(22)によって回動可能に支持されており、前記したリードリングLrと、下ドラムDdとの間には圧縮ばね24が装着されている。
【0031】
そして、前記したドラム構体DAの中心軸21の下端部は、前記したドラムベースDBに設けられた貫通孔を貫通させ、前記の中心軸21の下端部には、ばね受け板27を固着させる。そして、前記したばね受け板27とドラムベースDBの下面との間にばね26を装着させる。それにより、ドラム構体DAは前記した各ばね24〜26により、ドラムベースDBに対して圧着されるような状態で結合されて、前記した回動支点を回動中心にして傾斜できるように構成される。
【0032】
前記したリードリングLrには、ねじ30が螺合されており、また、ドラムベースDBにはねじ31が螺合されている。前記のねじ30の先端部は、下ドラムDdの底面に当接した状態にされており、また、前記のねじ31の先端部は、リードリングLrの底面に当接した状態にされている。それで、前記のねじ30を回転させて、ねじ30を進退させれば、ねじ30の先端部が底面に当接している下ドラムDdは、前記したねじ30の進(または退)につれて、リードリングLrに設けられた回動支点22(22)を回動中心にして、図3中の矢印29a(または矢印29b)の方向に傾斜し、したがってドラム構体DAの中心軸21が、前記したねじ30の進(または退)につれて、図3中の矢印29a(または矢印29b)の方向に傾斜することになる。また、前記したねじ31を回転させて、ねじ31を進退させれば、ねじ31の先端部が底面に当接しているリードリングLrは、前記したねじ31の進(または退)につれて、ドラムベースDBに設けられた回動支点23(23)を回動中心にして、図3中の矢印29a(または矢印29b)の方向に傾斜することになる。
【0033】
前記したねじ30は、ギャードモータM1の回転力が、回転軸34→歯車33→歯車32を介して伝達されることにより回転し、また、前記したねじ31は、ギャードモータM2の回転力が、回転軸37→歯車36→歯車35を介して伝達されることにより回転するものであるから、前記したギャードモータM1,M2の回転方向及び回転量を、傾斜制御部28によって所定のように制御することにより、前記したドラム構体の中心軸21の傾斜態様と、リードリングLrの傾斜の態様とが所定の状態、すなわち、回転磁気ヘッドの回転軌跡によって磁気テープTに描かれる回転軌跡のパターンを、磁気テープの走行方向と走行速度とによって予め定められた状態のものにさせることができる。
【0034】
傾斜制御部28には、図示されていない主制御部(図1中の制御部41)から、VTRの記録再生モードの情報が供給されている他に、前記したギャードモータM1に付設されているロータリエンコーダRE1からの出力信号や位置センサPS1からの出力信号、及び、前記したギャードモータM2に付設されているロータリエンコーダRE2からの出力信号や位置センサPS2からの出力信号も供給されている。
前記した位置センサPS1,PS2としては、例えば、発光素子と受光素子とが対向して配置されている光路中に、円弧状の遮光板を移動させるような構成態様のものが用いられてもよい。前記の各位置センサPS1,PS2は、それの発光素子と受光素子とが対向して配置されている光路中から円弧状の遮光板が外れる瞬間に位置センサPS1,PS2から出力される信号が、前記したドラム構体DAの中心軸21の基準位置やリードリングLrの基準位置を示す情報として用いられる。
【0035】
また、前記した位置センサPS1,PS2における遮光板の基準位置からの回動量を、前記した各ロータリエンコーダRE1,RE2からの出力パルス数の計測によって知ることにより、ドラム構体DAの中心軸21の基準位置からのずれの方向及びずれ量やリードリングLrの基準位置からのずれの方向及びずれ量を求めることができる。それで前記した傾斜制御部28としては、カウンタや比較器を含んで構成されたデジタル信号処理回路を使用できる。
【0036】
さて、本発明の磁気記録再生装置は、上ドラムDuの中心軸21を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドHsp1(またはHep1)と、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドHsp2(またはHep2)とによって、上ドラムDuと下ドラムDdとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープTに、前記の磁気テープTの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、磁気テープTを順方向(図1,図6中の矢印bの方向)に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡(図6中で符号toが付されている記録跡)における相隣る記録跡間に、所定の幅の未記録領域が形成されるように、磁気テープTを順方向及び逆方向(図6中の矢印−bの方向)に選択的に切換え走行させることができるように構成されている。
また、磁気テープTを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープTに形成される記録跡(図6中で符号tfが付されている記録跡)が、磁気テープTを順方向に走行させた状態において、磁気テープTに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせるための構成部分(例えば図3を参照して既述した機構部)を備えている。
さらに、磁気テープTの走行方向が変更された場合に、走行方向が変更される以前に磁気テープTに形成された記録跡と、走行方向が変更された後に、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドが同一である記録跡との間に、所定幅Δの未記録領域[図6の(b),(c)]が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープTに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスの位相を所定量だけ移相させて、磁気テープTの走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、記録跡間に形成させるべく予め設定された未記録領域の所定幅Δに関する情報に基づいて所定の距離だけずらすようにしている。
【0037】
本発明の磁気記録再生装置の実施の一例態様としては、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープTに、前記の磁気テープTの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、通常の記録再生動作モードにおける磁気テープTの走行速度の2倍の走行速度で、磁気テープTを順方向(図6中の矢印bの方向)と逆方向(図6中の矢印−bの方向)とに選択的に切換え走行させるようにし、磁気テープTを逆方向(図6中の矢印−bの方向)に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープTに形成される記録跡(図6中で符号tfが付されている記録跡)が、磁気テープTを順方向に走行させた状態において磁気テープTに形成される記録跡(図6中で符号toが付されている記録跡)に対して平行な状態となるように、例えば図3を参照して既述した機構部を動作させ、磁気磁気テープTの走行方向が順方向から逆方向に変更される直前に磁気テープへ記録跡を記録形成させた回転磁気ヘッドが、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドの内のどちらの回転磁気ヘッドであるのかを検出し、また、磁気テープの走行方向が順方向から逆方向に変更される直前に、磁気テープへ記録形成されていた記録跡に隣接する記録跡を、走行方向が順方向から逆方向に変更された後に記録形成するのに使用される回転磁気ヘッドが、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドの内のどちらの回転磁気ヘッドであるのかを検出し、磁気テープを順方向に走行させた状態で磁気テープに形成された記録跡の記録形成に使用された回転磁気ヘッドと、前記した順方向への磁気テープの走行時に記録形成されていた記録跡に隣接する記録跡を、磁気テープを逆方向に走行させた状態で記録形成させるのに使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡の間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、順方向に磁気ヘッドを走行させている状態における記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向が順方向から逆方向に変更された後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した第1,第2の使用回転磁気ヘッドの検出手段から得られる検出結果の情報と、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報とに基づいて所定の距離だけずらすようなものとして構成できる。
【0038】
磁気テープTを順方向に走行させた状態において順次の記録跡間に所定幅の未記録領域が設けられている状態で記録形成されている記録跡における隣接する記録跡間の所定幅の未記録領域に、磁気テープTを逆方向に走行させた状態で、前記した記録跡間の所定幅の未記録領域に順次の記録跡を記録形成させる場合に、磁気テープTが順方向に走行している状態で磁気テープTに記録形成されていた記録跡と、磁気テープTが逆方向に走行している状態で磁気テープTに記録形成される記録跡との隣接する2記録跡の記録形成に、同一の磁気回転ヘッドが使用されるときに、前記した2記録跡間に予め定められた幅の未記録領域Δが残される状態となるように、磁気テープTの走行方向を逆方向に走行させる状態で磁気テープTに記録形成される記録跡の位置を所定の距離だけずらすようにする手段としては、走行方向が変更された後に回転磁気ヘッドによって磁気テープへ形成される記録跡が、走行方向が変更される以前に回転磁気ヘッドによって磁気テープに形成されていた記録跡を形成させた回転磁気ヘッドと同一か否かに応じて、磁気テープから再生された再生コントロールパルスの位相を所定量だけ移相させ、それにより磁気テープTの走行位相を所定量だけ移相させたり、回転磁気ヘッドの回転位相(上ドラムDuの回転位相)を所定量だけ移相させたりすることによって行なうことができる。
【0039】
また、本発明の磁気記録再生装置において、上ドラムDuの中心軸21を対称中心とする180度対称の位置に配置される、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドHsp1(またはHep1)と、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドHsp2(またはHep2)としては、記録再生動作に使用される1対のものが、同一のヘッドトラック幅の磁気空隙を備えたものであっても、あるいは記録再生動作に使用される1対のものが互いに異なるヘッドトラック幅の磁気空隙を備えたものであっても、どちらでもよい。以下の記述においては、記録再生動作に使用される1対のものが、同一のヘッドトラック幅の磁気空隙を備えたものである場合を一例に挙げて説明されている。
【0040】
図1において、38は本発明の磁気記録再生装置において、記録の対象にされている映像信号の入力端子であり、また、60は本発明の磁気記録再生装置によって再生された映像信号の出力端子である。この図1には映像信号に付随する音響信号の記録再生系についての記載を省略してあるが、音響信号の記録は、磁気テープTの縁部に設けられている音声トラックに、図2中に示されているオーディオ・コントロールヘッド15におけるオーディオヘッドによって行なわれる。前記した入力端子38に供給された映像信号は、記録系の信号処理回路39によって、例えば輝度信号による周波数変調波形態の信号と、低域変換搬送色信号との周波数多重化信号形態の記録信号とされて、録再切換スイッチ47における記録側固定接点Rに供給される。前記の録再切換スイッチ47は、磁気記録再生装置が記録動作モードに設定されている場合には、制御部41(主制御部41)から与えられる切換制御信号によって、可動接点vが記録側固定接点Rの方に切換えられ、また磁気記録再生装置が再生動作モードに設定されている場合には、制御部41から与えられる切換制御信号によって、可動接点vが再生側固定接点Pの方に切換えられる。
【0041】
図1中の線57は、図示されていないヘッド切換スイッチに対して供給されるヘッド切換信号の供給線である。磁気記録再生装置が記録動作モードに設定されている場合には、記録系の信号処理回路39から前記の録再切換スイッチ47の固定接点Rと可動接点vとを介して送出された記録信号は、図示されていないヘッド切換スイッチと回転トランスを介して第1,第2の回転磁気ヘッドに供給され、また、磁気記録再生装置が再生動作モードに設定されている場合には、第1,第2の回転磁気ヘッドによって再生された再生信号が、図示されていない回転トランスと、ヘッド切換スイッチと、録再切換スイッチ47の可動接点vと固定接点Pとを介して、再生系の信号処理回路56に供給される。
【0042】
さて、図1に示す本発明の磁気記録再生装置は、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられたアジマス角度+α度を有する磁気空隙を備えているSP用の回転磁気ヘッドHsp1と、アジマス角度−α度を有する磁気空隙を備えているSP用の回転磁気ヘッドHsp2とからなる1対の回転磁気ヘッドを使用して記録再生動作を行なうようにしたり、あるいは、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられたアジマス角度+α度を有する磁気空隙を備えているEP用の回転磁気ヘッドHep1と、アジマス角度−α度を有する磁気空隙を備えているEP用の回転磁気ヘッドHep2とからなる1対の回転磁気ヘッドを使用して記録再生動作を行なうようにしたりすることができるように構成した場合の実施態様である。そして、図1に示す磁気記録再生装置は、同じテープ量(磁気テープ長)のカセットを使用した場合に、必要とされる記録再生時間に応じて、前記した2種類の回転磁気ヘッド対における何れの種類の回転磁気ヘッド対を使用して記録再生動作が行なわれるようにするかが決められる。
【0043】
図1に示す磁気記録再生装置は、記録再生動作に際して、前記した2種類の回転磁気ヘッド対における何れの種類の回転磁気ヘッド対を使用して記録再生動作が行なわれた場合でも、磁気テープTに形成される順次の記録跡の相互の位置関係の状態は同一となるから、以下の記述においては、記録再生動作に使用される1対の回転磁気ヘッド、すなわち上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられたアジマス角度+α度を有する磁気空隙を備えている回転磁気ヘッドと、アジマス角度−α度を有する磁気空隙を備えている回転磁気ヘッドとを、回転磁気ヘッドH1,H2[回転磁気ヘッドH1は、既述したSP用の回転磁気ヘッドHsp1(またはEP用の回転磁気ヘッドHep1)を示し、回転磁気ヘッドH2は、既述したSP用の回転磁気ヘッドHsp2(またはEP用の回転磁気ヘッドHep2)を示す]のように記載して説明する。
【0044】
図5は本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを順方向(各図中の矢印bの方向)、及び逆方向(各図中の矢印bとは反対の方向)とに、それぞれ所定の走行速度で走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡の状態を図示説明するための図である。そして、前記した磁気テープTの所定の走行速度とは、走行する磁気テープTに、第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に記録跡を形成させた場合に、磁気テープTに形成された順次の記録跡における相隣る記録跡間に、前記した記録跡の記録跡幅と対応する間隔が形成されうるような走行速度を意味する。
【0045】
前記した所定の走行速度について、具体的な例を示して説明すると次のとおりである。ヘリカルスキャン型の磁気記録再生装置において、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられた回転磁気ヘッドH1,H2により、走行する磁気テープTに順次に形成される記録跡における順次の相隣る記録跡間の間隔(トラックピッチ)は、磁気テープTの走行速度、回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡の径、回転磁気ヘッドH1,H2の回転数、磁気テープTの走行方向と回転磁気ヘッドH1,H2の回転方向との関係、等によって定まることは周知である。
【0046】
そして、VHS(登録商標)方式のVTR(VCR)においては、上ドラムDuにおける180対称の位置に設けられた回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡の直径を62mm、回転磁気ヘッドH1,H2の回転数を毎分1800回転、回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅を58μm、回転磁気ヘッドH1,H2の回転方向と磁気テープTの走行方向とを、図5の(a)中のa,bとしたときに、磁気テープTの走行速度を毎秒33.35mmとすると、前記した回転磁気ヘッドH1,H2により磁気テープTに順次に形成される記録跡のトラックピッチTPは58μmとなり、この場合における隣接する記録跡間には未記録領域が生じない。
また、前記の諸条件中において磁気テープTの走行速度だけを2倍にした場合に、磁気テープTに回転磁気ヘッドH1,H2により記録形成される順次の記録跡のトラックピッチは(58μm×2)となり、磁気テープTに記録形成される順次の記録跡における相隣るものの間には、58μmの幅の未記録領域(ガードバンド)が形成される。
【0047】
図5の(a)は、本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを順方向(図中の矢印b方向)に、所定の走行速度で走行させた状態とし、1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なっている場合に、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成される順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…を示している。前記の記録跡の図面符号において、toは磁気テープTが順方向に走行している際に磁気テープTに形成される記録跡であることを示す記号である。なお、磁気テープTが逆方向に走行している際に磁気テープTに形成される記録跡については、後述のようにtfの記号が用いられている。また、(h11),(h12)…、(h21),(h22)…において、h1は回転磁気ヘッドH1によって形成された記録跡であることを示し、h2は回転磁気ヘッドH2によって形成された記録跡であることを示しており、前記のh1,h2に続く数字は、形成された記録跡の順番を示している。
【0048】
回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成される順次の記録跡to(h11)→to(h21)→to(h12)→to(h22)…として図5の(a)に示してある記録跡は、各回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅が共にTwである場合についてのものである。そして、前記した順次の記録跡における相隣る記録跡間には、それぞれ前記した磁気空隙のヘッドトラック幅Twと同一の幅の未記録領域が形成されている。
そして、磁気テープTが順方向に走行している状態において、記録再生動作に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、磁気テープTに記録された順次の記録跡における互いに相隣るものは、アジマス角度が異なる回転磁気ヘッドによって記録形成されたものになっている。
【0049】
次に、図5の(b)は、本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを逆方向(図中の矢印−b方向)に走行させた状態とし、1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なっている場合に、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成される順次の記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を示している。図5の(b)に示してある記録跡も、各回転磁気ヘッドH1,H2の磁気空隙のヘッドトラック幅が共にTwである場合についてのものであり、前記した順次の記録跡における相隣る記録跡間には、それぞれ前記した磁気空隙のヘッドトラック幅Twと同一の幅の未記録領域が形成されている。また、記録再生動作に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、磁気テープTに記録された順次の記録跡における互いに相隣るものは、アジマス角度が異なる回転磁気ヘッドによって記録形成されたものになっている。
【0050】
図5の(c)は、磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた状態における図5の(a)に例示した記録跡パターン(トラックパターン)と、磁気テープTを逆方向に所定の走行速度で走行させた状態における図5の(b)に例示した記録跡パターン(トラックパターン)とを、互いの未記録領域中に、他方の記録跡が位置するような状態で重ね合わせた状態におけるトラックパターンを例示した参考図であり、この図5の(c)に示されているトラックパターンでは、磁気テープTに密接状態で順次に記録形成されている記録跡は、同アジマスの回転磁気ヘッドによって記録形成された記録跡が2本ずつ隣接している状態になっている。それで、この図5の(c)に示されているトラックパターンを有する磁気テープTから再生された再生信号は、既述のように隣接の記録跡からの漏話により品質の悪い再生画像しか得られないことになる。なお、図5の(c)では磁気テープTを順逆の両方向に走行させて記録形成させた順次の記録跡における隣り合うもの同士間に、重なり合いが生じていない理想的な状態を示しているが、トラッキングずれにより順次の記録跡における隣り合うもの同士間に、重なり合いが生じている場合には、再生画像中にビートが生じて、見るに耐えないものになることは周知のとおりである。
【0051】
それで本発明の磁気記録再生装置では、磁気テープTを順方向(あるいは逆方向)に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅Twと対応する幅を有する図5の(a)[あるいは図5の(b)]中の未記録領域に、磁気テープTを逆方向(あるいは順方向)に所定の走行速度で走行させた状態で磁気テープTに記録形成されるべき順次の記録跡を記録する際に、前記した磁気テープTの順逆両方向での記録動作によって最終的に得られる順次の記録跡における隣接する記録跡の内で、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間には、前記した磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅Twと対応する幅を有する図5の(a),(b)中の未記録領域の一部が、後述の図6の(b),(c)中の幅Δの部分で示すように残されている状態として記録するようにしているのである。
【0052】
なお、図5を参照して行なわれた前述の説明では、説明及び理解を容易にするために、記録再生に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2として、それらの磁気空隙におけるヘッドトラック幅が同一のものであるとされていたが、本発明の実施に当っては、記録再生に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2における磁気空隙におけるヘッドトラック幅が、例えば58μm、46μmというように異なっている場合であっても、磁気テープTを順方向(あるいは逆方向)に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅と対応する幅を有する未記録領域に、磁気テープTを逆方向(あるいは順方向)に所定の走行速度で走行させた状態で磁気テープTに記録形成されるべき順次の記録跡を記録する際に、前記した磁気テープTの順逆両方向での記録動作によって最終的に得られる順次の記録跡における隣接する記録跡の内で、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、前記した磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた場合に、磁気テープTに形成される記録跡幅の未記録領域の一部が残されている状態となるようにして記録させるようにして本発明を実施できるのである。
【0053】
図6の(a)は本発明の磁気記録再生装置が、磁気テープTを順方向(図中の矢印b方向)に所定の走行速度で走行させた状態で、互いに同一のヘッドトラック幅を有する1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なって、回転磁気ヘッドH1,H2の回転軌跡に従って磁気テープT上に記録形成させた順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…による記録跡パターンであり、前記の記録跡パターンは図5の(a)と同じである。
また、図6の(b),(c)は、磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた状態で、前記した1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、図6の(a)に示されるような記録跡パターンとなるような順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…を記録した磁気テープTを、逆方向(図中の矢印−b方向)に前記した所定の走行速度で走行させるとともに、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、幅がΔの未記録領域が残されるような状態で、逆方向の走行時における回転磁気ヘッドによる順次の記録跡が磁気テープTに記録されるように、本発明の磁気記録再生装置による記録動作が行なわれた場合に得られる記録跡パターンを例示した図である。
【0054】
図6の(b)に示されている記録跡パターンと、図6の(c)に示されている記録跡パターンとは、ともに、磁気テープTを順方向に所定の走行速度で走行させた状態で、前記した1対の回転磁気ヘッドH1,H2により、磁気テープTに形成させた順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…に対して、磁気テープTを逆方向(図中の矢印−b方向)に前記した所定の走行速度で走行させた状態で前記した1対の回転磁気ヘッドH1,H2により磁気テープTに順次に記録される記録跡が、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、幅がΔの未記録領域が残されるような状態で磁気テープTに記録されている点においては同じであるが、磁気テープTに残される幅がΔの未記録領域の形成位置が互いにずれている。なお前記した磁気テープTに残すべき未記録領域の幅Δは、関連する諸条件と対応して定められるのである。
【0055】
本発明の磁気記録再生装置において、磁気テープTを順方向(または逆方向)と逆方向(または順方向)とに所定の走行速度で走行させた状態で、互いに同一のヘッドトラック幅を有する1対の回転磁気ヘッドH1,H2を順次交互に使用して磁気テープTに記録動作を行なって、磁気テープT上に前記した図6の(b),(c)に示すような記録跡パターンを形成させうる順次の記録跡を記録させるのには、磁気テープTの順逆両方向での記録動作において、磁気テープTの走行方向が変更される直前に磁気テープTに記録された記録跡が、第1の回転磁気ヘッドH1によって記録されたものであるのか、あるいは第2の回転磁気ヘッドH2によって記録されたものであるのかを、例えばコントロールパルスの時間位置を基準として検出する。
【0056】
そして、磁気テープTの走行方向の変更後に所定の走行速度で走行させた状態において、前記した磁気テープTの走行方向が変更される直前に磁気テープTに記録されていた記録跡に隣接して記録される記録跡の記録動作に用いられる回転磁気ヘッドが、前記した磁気テープTの走行方向が変更される直前に磁気テープTに記録された記録跡の形成に使用された回転磁気ヘッドと同一のものであった場合と、異なるものであった場合とに応じて、磁気テープTの走行方向が変更された後に所定の走行速度で走行される磁気テープTの走行位相を、それぞれ所定量だけ移相させる。
【0057】
すなわち、磁気テープTの走行方向が変更される以前に磁気テープTに形成されていた順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…に対して、磁気テープTの走行方向が変更された以後に、磁気テープTに順次に記録形成される記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…が、例えば図6の(b),(c)に示されている記録跡パターンのように、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、幅がΔの未記録領域が残される状態で磁気テープTに記録されるように、磁気テープTの走行方向が変更される以前に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLを再生して得た再生コントロールパルスの位相を所定量だけ移相させて、磁気テープの走行制御が行なわれるようにする。
【0058】
さて、図1に示す磁気記録再生装置は、操作部40に対して入力された動作モードの情報に対応した所定の動作態様で動作する。すなわち、操作部40から入力された動作モード情報が制御部41に与えられることにより、制御部41では磁気記録再生装置の各構成部分が、操作部40から入力された動作モードに従った動作を行なうことができるように、制御信号発生部42に指令を与えて、制御信号発生部42から、磁気記録再生装置の各構成部分に対して、それぞれ所定の制御信号を供給させる。
図1に示す磁気記録再生装置がアナログ信号形態の映像信号の記録動作を行なう場合には、入力端子38に供給された記録の対象にされている複合信号が、記録信号処理部39によって磁気記録に適した記録信号とされて、それが記録増幅器で増幅されて記録信号処理部39から出力され、また、図1に示す磁気記録再生装置が、デジタルデータのビットストリームの記録動作を行なう場合には、入力端子38に供給された記録の対象にされているデジタルデータのビットストリームが、記録信号処理部39によって磁気記録に適した記録信号とされ、それが記録増幅器で増幅されて記録信号処理部39から出力される。
【0059】
前記の磁気記録再生装置がアナログ信号形態の映像信号の記録動作を行なう記録動作モードに設定された場合には、記録信号処理部39中に設けられている同期信号分離回路で分離された垂直同期信号が供給されている制御信号発生部42で発生された基準信号が、ドラム回転制御回路43に供給され、また、前記の磁気記録再生装置がデジタルデータのビットストリームの記録動作を行なう記録動作モードに設定された場合には、記録信号処理部39中でデジタルデータから抽出された時刻基準参照値の情報に基づいて発生された時刻基準信号が供給される制御信号発生部42で発生された基準信号が、ドラム回転制御回路43に供給される。
【0060】
そして、前記のドラムモータ回転制御回路43には、ドラムモータDmの回転軸に取付けられた信号発生器59における周波数発電機で発生されたFG信号が、増幅器46で増幅された後に供給されているとともに、前記した信号発生器59における回転基準信号発生器で発生された回転パルス(回転基準信号)PGが増幅器45で増幅された後に供給されている。また、前記した増幅器45,46からの出力信号は、制御信号発生部42にも供給されていて、制御信号発生部42ではDFF信号(ドラム回転基準位相信号)、その他必要なタイミング信号を発生する。
【0061】
前記のドラムモータ回転制御回路43では、周波数数発電機で発生された信号FGや、前記した制御信号発生部42で発生された基準信号を基準の信号として、ドラムモータDmの回転数と回転位相とが所定の状態となるようなドラムモータ駆動信号を発生する。前記のドラムモータ駆動信号は、駆動増幅器44で増幅されてドラムモータDmに供給される。それにより前記のドラムモータDmによって駆動される上ドラムDuと一体的に回転する回転磁気ヘッドは所定の回転数,位相で回転する状態にされる。
【0062】
また、磁気テープTは操作部40に設定された記録動作モードで必要とされる走行速度で連続走行している状態となるように、制御部41の制御動作の下に、キャプスタンモータ53によって駆動されるキャプスタン18とピンチローラ17(図2参照)とによって駆動される。
記録動作時における磁気テープTの走行状態の制御動作は、入力端子38に供給された信号中の同期信号が記録信号処理部39で同期分離された後に、前記の同期信号に基づいて制御信号発生部42で発生された所定周期の信号が、基準信号として与えられるテープ速度信号発生回路50と、速度制御回路51と、駆動増幅器52と、キャプスタンモータ53と、キャプスタンモータ53の回転軸に取付けられた信号発生器54とによって自動制御系を構成している回路配置によって行なわれる。
【0063】
前記したテープ速度信号発生回路50では、磁気テープTの走行速度を所定の走行速度にさせるための基準信号を速度制御回路51に供給する。前記の速度制御回路51には、キャプスタンモータ53の回転軸に取付けられた信号発生器54中で発生されたFG信号(信号発生器54中の周波数発電機で発生されたFG信号)が供給されている。また、切換スイッチ48の可動接点vが固定接点P側に切換えられている動作状態においては、前記した速度制御回路51に対してコントロールヘッド15で再生された再生コントロールパルスが供給される。
【0064】
速度制御回路51では、前記したテープ速度信号発生回路50で発生されたテープ速度の基準信号と対応して、各動作モードにおいて必要とされる走行速度で磁気テープを走行させるとともに、記録の対象にされている映像信号における垂直同期信号の時間位置、あるいはデジタルデータのビットストリーム中から抽出された時刻基準参照値の情報に基づいて発生された時刻基準信号の時間位置に関して所定の位相関係となるように、キャプスタンモータ53の回転状態を制御するための制御信号(誤差信号)を発生し、それを駆動増幅器52に供給する。そして、前記した駆動増幅器52からの出力信号によりキャプスタンモータ53が駆動回転されることにより、磁気テープTは設定された各動作モードにおいて必要とされる走行速度で磁気テープを図中の矢印bの方向または矢印bとは逆の方向(−b)に走行される。例えば、磁気記録再生装置がVHS(登録商標)方式のVTRの場合に、回転磁気ヘッドH1,H2を毎秒30回転させ、磁気テープTを毎秒66.70mmで走行させる。
【0065】
磁気記録再生装置が磁気テープTを順方向に走行させた状態で磁気テープTに対して記録再生動作が行なわれる場合には、制御部(主制御部)41から傾斜制御部28に対して、磁気テープTを順方向に所定速度で走行させる状態と対応して設定されている傾斜制御情報を与える。また、磁気記録再生装置が記録動作モードとされた場合で、かつ磁気テープTを順方向に走行させて磁気テープTに対して初めて記録が行なわれる場合には、制御信号発生部42で発生されたコントロールパルスCTLを、録再切換スイッチ48の固定接点Rと可動接点vを介してコントロールヘッド15に供給して、図中の矢印bの方向に走行されている磁気テープTにおける基準縁Te近傍に形成されているコントロールトラックに対して記録する。記録動作モード時に記録信号処理部39から出力され、録再切換スイッチ47の固定接点Rと可動接点vと図示されていないロータリートランスとを介して、記録動作に用いられるべき回転磁気ヘッドに供給された記録信号は、回転磁気ヘッドH1,H2によって、所定の走行速度で連続走行している状態の磁気テープTに記録され、磁気テープTには平行な順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…[図6の(a)参照]が順次に記録形成される。図中の57は図示されていないヘッド切換スイッチに対して切換制御信号を与える線であり、また58は基板である。
【0066】
また、前記のように磁気テープTを順方向に走行させた状態で磁気テープTに図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に例えば毎秒66.70mmで走行させた状態にして、回転磁気ヘッドH1,H2によって、順次の記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を記録形成させて、図6の(b)または図6の(c)に例示されているような記録跡パターンを形成させる場合には、既述のように、磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡と、同アジマスの回転磁気ヘッドによって磁気テープT上に記録される記録跡間に、未記録領域の一部が残されている状態となるようにして記録するために、逆方向に走行する磁気テープTの走行位相を所定の位相に設定することが必要とされる。
【0067】
そのため、前記のように順方向に走行させた状態で磁気テープTに図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に走行させて記録動作を行なう場合には、 ▲1▼磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡が、回転磁気ヘッドH1,H2の何れのものによって記録形成されたのかを、制御部41においてコントロールパルスの時間位置を基準として判断する。
また、▲2▼制御部(主制御部)41では、磁気テープTが逆方向に走行された状態において、回転磁気ヘッドH1,H2により磁気テープTに記録形成されるべき順次の記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を、前記した順方向に走行させた状態において磁気テープTに記録形成されている順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…に対して平行な状態にさせるようにするための制御情報を傾斜制御部28に与える。
【0068】
▲3▼磁気テープTを逆方向に走行させた状態で、磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡に隣接して記録される記録跡を、回転磁気ヘッドH1,H2の内のどちらの回転磁気ヘッドによって行なうのかを制御部41で決定し、それに応じて磁気テープTを逆方向に走行させる場合の磁気テープTの走行位相の移相量を決定して、その情報と対応する制御信号を制御信号発生部42で発生させ、それをテープ速度信号発生回路50を介して速度制御回路51に供給させる。 ▲4▼制御部41では制御信号発生部42に、録再切換スイッチ48に対する切換制御信号を発生させて、前記の切換制御信号により、前記の録再切換スイッチ48における可動接点vを、固定接点R側から固定接点P側に切換える。 ▲5▼磁気テープTを逆方向に所定の走行速度で走行させるようにするための制御信号を、制御信号発生部42からテープ速度信号発生回路50に供給させる。
【0069】
それで磁気記録再生装置は、順方向に走行させた状態で磁気テープTに対して、図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に走行させた状態での記録動作を行なうときは、マイクロプロセッサやリードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ等を含んで構成されている前記した制御部41による制御動作の下に、磁気記録再生装置の各構成部分が、それぞれ所定の動作を行なって、図6の(a)に示されている順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録されている磁気テープTに、順次の記録跡記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を、図6の(b),(c)に示されているような状態に記録させる。
【0070】
すなわち、前記のように順方向に走行させた状態で磁気テープTに対して、図6の(a)に示すような記録跡パターンによる順次の記録跡to(h11),to(h21),to(h12),to(h22)…が記録形成されている磁気テープTを、逆方向に走行させた状態として記録動作を行ない、前記の磁気テープTに対して順次の記録跡記録跡tf(h11),tf(h21),tf(h12),tf(h22)…を記録させ、最終的に図6の(b),(c)に示されているような記録跡パターン有するような記録済み磁気テープを作成する場合の磁気記録再生装置は、既述のように制御部41の制御の下に所定の制御信号を発生する制御信号発生部42が、磁気テープTを逆方向へ走行させるための制御信号を、テープ速度信号発生回路50に与え、テープ速度信号発生回路50で発生されたテープ速度信号による速度制御回路51の動作によって、キャプスタンモータ53が逆転を行なうようにされ、キャプスタン18とピンチローラ17(図2参照)とに挟着されて走行する磁気テープTを、図中の矢印bとは反対の方向に走行するようにさせる。
【0071】
また制御部41では磁気テープTを逆方向に走行させた状態で、磁気テープTの順方向での記録動作によって最終的に得られた記録跡に隣接して記録される記録跡を、回転磁気ヘッドH1,H2の内のどちらの回転磁気ヘッドによって行なうのかを決定し、それに応じて磁気テープTを逆方向に走行させる場合の磁気テープTの走行位相の移相量を決定して、その情報と対応する制御信号を制御信号発生部42で発生させ、それをテープ速度信号発生回路50を介して速度制御回路51に供給させる。また前記の速度制御回路51には、磁気テープTのコントロールトラックからコントロールヘッド15により再生されたコントロールパルスCTLが、録再切換スイッチ48の可動接点vと固定接点Pとを介して供給されているから、速度制御回路51では前記のようにテープ速度信号発生回路50を介して、制御信号発生部42から供給された前記の制御信号による制御の下に、磁気テープTのコントロールトラックから再生された前記のコントロールパルスCTLの位相を所定量だけ移相させて、磁気テープTの走行位相が所定の移相量だけ移相された状態で走行する状態に、磁気テープTの走行状態を制御する。
【0072】
ところで、前記した磁気テープTの走行位相の移相量は、前記した磁気テープTの走行方向が変更される以前に記録形成された記録跡と、磁気テープTの走行方向が変更された後に、前記の記録跡に隣接して磁気テープに記録される記録跡とが同一の回転磁気ヘッドが使用されるか否かの区別、及び、磁気テープTの走行方向が変更された後に、未記録領域のままの状態で残すべき未記録領域の幅Δの値、等によって、それぞれ異なる値に設定されることが必要である。
【0073】
前記した磁気テープTの走行方向が変更される以前に磁気テープに記録形成されていた記録跡と、磁気テープTの走行方向が変更された後に、前記の記録跡に隣接して磁気テープに記録形成される記録跡とが、同一の回転磁気ヘッドによって記録形成されるか否かの情報は、磁気テープTの走行方向が変更される以前における記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLの記録位置を基準にして得ることができる。
磁気テープTの走行方向が変更された後に、磁気テープTの走行方向の変更の直前に記録形成された記録跡に隣接する記録跡を磁気テープTに記録形成させるのに使用される回転磁気ヘッドが、第1,第2の回転磁気ヘッドH1,H2の何れのものであるのかの区別の情報も、磁気テープTの走行方向が変更される以前における記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLを再生して得た再生コントロールパルスの時間位置を基準にして得ることができる。また、磁気テープTの走行方向が変更された後に、未記録領域のままの状態で残すべき未記録領域の幅Δの値は、磁気記録再生装置の構成に当って予め定めておくべき値であって既知の値である。
【0074】
したがって、磁気テープTの走行方向の変更後に、磁気テープTの走行位相を所定の位相量だけ移相させるための制御情報は、例えばルック・アップ・テーブル(ロム・テーブル)を用いることによって容易に得ることができる。すなわち、磁気テープTの走行方向の変更の直前の記録跡を記録形成させた回転磁気ヘッドの区別の情報と、磁気テープTの走行速度の変更の直前に記録形成された記録跡に隣接する記録跡を磁気テープTに記録形成させるのに使用された回転磁気ヘッドの区別の情報と、磁気テープTの走行方向が変更された後に、未記録領域のままの状態で残すべき未記録領域の幅Δの値とを、アドレス情報としてルック・アップ・テーブルに与えるようにし、前記のルック・アップ・テーブルから、前記したアドレス情報に対応して、磁気テープTが順方向に走行している状態で磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLを再生して得た再生コントロールパルスの位相を移相させて、磁気テープTの走行位相を所定の位相量だけ移相させることができるような制御情報を出力できるルック・アップ・テーブルを用いればよいのである。
【0075】
磁気テープTの走行方向と走行速度、走行方向の変更などの諸動作は、操作部40に入力された記録再生モードの情報と対応して行なわれる制御部41の制御動作の下に、制御信号発生部42、テープ速度信号発生回路50、速度制御回路51等の動作によって行なわれることは既述のとおりであるが、前記の諸動作は、操作部40に入力された記録再生モードの情報に応じて、磁気記録再生装置が、例えば、磁気テープTをそれの巻初めから巻終りまで順方向に走行させ、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの巻終りから巻初めまでの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行ない、磁気テープTの巻初め位置で磁気テープTの走行を停止させるようにしたり、あるいは、磁気テープTの途中の位置から磁気テープTを順方向に走行させた状態で、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの途中で磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの途中の位置から途中の位置までの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なって、前記の所定の区間に対する往復記録動作が終了したときに走行を停止させるようにしたり、その他の各種の動作態様により磁気記録再生装置を動作させる。
【0076】
また、磁気記録再生装置が、例えば、磁気テープTをそれの巻初めから巻終りまで順方向に走行させ、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの巻終りから巻初めまでの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行ない、磁気テープTの巻初め位置で磁気テープTの走行を変更して、磁気テープTをそれの巻初めから巻終りまで順方向に走行させ、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの巻終りから巻初めまでの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行ない、磁気テープTの巻初め位置で磁気テープTの走行を変更して、以下前述と同様な記録動作を繰返し行なう、すなわち、磁気記録再生装置によって、所謂、エンドレステープに対する記録動作態様と同様な記録動作を行なう場合には、2回目以降の往復記録時に消去ヘッドHe1,He2によって先行消去を行なう。また、1回目の復路記録時以降における磁気テープTの走行位相の制御は、1回目の順方向の走行状態での記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLの再生信号を用いて行なわれる。
【0077】
磁気テープTの途中の位置(例えば第1の位置とする)から磁気テープTを順方向に走行させた状態で、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なった後に、磁気テープTの途中の位置(例えば第2の位置とする)で磁気テープTの走行方向を変更して、磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの途中の第2位置位置から第1の位置までの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なう。 前記の所定の区間に対する往復記録動作が終了した後に、前記した第1の位置で磁気テープTの走行を変更して磁気テープを順方向に走行させるようにし、前記した第1の位置から磁気テープTの途中の第2の位置まで、磁気テープTに図6の(a)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なって行く。
【0078】
磁気テープTの途中の第2の位置において磁気テープTの走行方向を変更して磁気テープTを逆方向の走行状態とし、磁気テープTの途中の第2の位置から前記の第1の位置までの間に、磁気テープTに図6の(b)または図6の(c)に例示してあるような記録跡パターンを形成させる記録動作を行なう、というように、磁気テープの途中の特定な2つの位置(前述の第1,第2の位置)間について、記録動作を繰返して行なう場合においても、2回目以降の往復記録時には消去ヘッドHe1,He2によって先行消去を行なう。
【0079】
なお、前記した先行消去動作に使用される先行消去用の回転磁気ヘッドHe1,He2としては、記録動作に使用される第1,第2の回転磁気ヘッドのヘッドトラック幅と同一のヘッドトラック幅を備えているものが使用される。また、2回目以降の往復記録時における磁気テープTの走行位相の制御は、1回目の順方向の走行状態での記録動作時に磁気テープTのコントロールトラックに記録されていたコントロールパルスCTLの再生信号を用いて行なわれる。
【0080】
磁気テープTの走行方向の変更の情報は、例えば操作部40に入力された記録再生モードの種類に応じて、制御部41内において自動的に発生される他、操作者が、操作部40から磁気テープTの走行方向の変更情報を入力することによっても行なわれる。
また、磁気記録再生装置に、磁気テープTの途中位置からから別の途中位置までに設定された所定の区間について、往復記録動作を行なわせる場合には、例えば、磁気テープTのコントロールトラック、または音声トラックに、前記の往復動作が行なわれる区間の両端部を示す識別信号を記録しておき、前記の識別信号を用いて磁気記録再生装置が所定の記録再生動作を行なうようにするとよい。
【0081】
図1に示す磁気記録再生装置の再生動作に際しては、複数種類の再生モードの内から選択した希望の再生モードの情報を操作部40に入力する。それにより制御部41では、前記した操作部40に入力された再生モード情報で指定された再生モードにおいて、装置の各構成部分で行なわれべき所定の動作に必要な各種の制御信号が、制御信号発生部42で発生されるように、前記した制御信号発生部42を制御する。
磁気記録再生装置が再生動作を行なう場合に、回転磁気ヘッドの回転数は、制御部41の制御動作によって、記録済み磁気テープを作成する際の回転磁気ヘッドの回転数と同一の回転数に設定される。また、記録済み磁気テープTの走行速度及び走行方向ならびに走行位相は、前記した選択された再生モードとそれぞれ対応して定まる所定の走行速度及び走行方向ならびに走行位相に設定される。
そして、記録済み磁気テープの走行状態、すなわち、再生動作時における記録済み磁気テープTの走行速度や走行方向,走行位相は、前記の設定された走行速度や走行方向,走行位相となるように、キャプスタンサーボ系によって制御される。
【0082】
再生動作時において、前記の記録済み磁気テープTの走行状態を制御するキャプスタンサーボ系には、選択された再生モードと対応して制御信号発生部42に発生した基準信号や、走行位相についての情報等が、テープ速度信号発生回路50に与えられているとともに、コントロールヘッド15によって再生されたコントロール信号が、録再切換スイッチ49の固定接点Pと可動接点vとを介して速度制御回路51に与えられている他に、信号発生器54で発生されたFG信号が速度制御回路51に与えられている。
それで、キャプスタンモータ53によって回転されるキャプスタン18と、図示されていないピンチローラとによって挟着されて駆動走行する記録済み磁気テープTは、前記した選択された再生モードと対応して定められた走行方向及び走行速度ならびに走行位相を示す所定の走行状態で走行する。
【0083】
これまでの説明においては、記録再生に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2として、磁気空隙のヘッドトラック幅Twの同一なものを用い、また、磁気テープTを順方向に走行させたときに、磁気テープTに順次に記録形成される記録跡によって、図6の(a)に示されている記録跡パターンのように、隣接する記録跡間にTwの幅の未記録領域が形成されるような走行速度を、所定の走行速度であるとして、磁気テープTを前記した所定の走行速度により順逆方向に走行させた状態で、記録再生動作を行なうようにした場合の実施例について記述して来た。
【0084】
しかし、本発明の磁気記録再生装置の実施に当っては、記録再生動作時に使用される1対の回転磁気ヘッドH1,H2として、磁気空隙のヘッドトラック幅が互いに異なっているものを用いたり、磁気テープの所定の走行速度として、磁気テープTを順方向に走行させたときに、磁気テープTに順次に記録形成される記録跡における隣接する記録跡間に形成される未記録領域の幅が、記録再生に使用される回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のヘッドトラック幅Twよりも大きくなるような走行速度、あるいは、前記した隣接する記録跡間に形成される未記録領域の幅が、記録再生に使用される回転磁気ヘッドにおける磁気空隙のヘッドトラック幅Twよりも小さくなるような走行速度を所定の走行速度として、前記の所定の走行速度で順逆両方向に磁気テープTを走行させた状態で記録再生動作が行なわれるようにした場合でも、磁気テープTを順逆両方向に走行させて記録動作を行なった結果として磁気テープTに形成される順次の記録跡における同一の回転磁気ヘッドによって記録形成された隣接する記録跡間に、所定幅Δの未記録領域が存在している状態となるようにして本発明が実施されてもよい。
【0085】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したところから明らかなように、本発明の磁気記録再生装置は、上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、磁気テープを順方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に未記録領域が形成され、前記した磁気テープを逆方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより、前記した未記録領域に順次交互に記録跡を形成させうるような同一の所定の走行速度で、磁気テープを順方向及び逆方向に選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えて構成したものであるから、従来構成の磁気記録再生装置に大幅な構成の変更を加えることなく、良好な再生画像が得られるオートリバース方式の磁気記録再生装置を容易に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録再生装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】磁気記録再生装置のテープ走行系を示す斜視図である。
【図3】傾斜制御部の一例構成を示す側断面図である。
【図4】回転磁気ヘッドの配置例を示す平面図である。
【図5】磁気テープの記録跡を説明するための図である。
【図6】磁気テープの記録跡パターンを説明するための図である。
【符号の説明】
DB…ドラムベース、Dd…下ドラム、Du…上ドラム、DA…ドラム構体、Hsp1,Hsp2,Hep1,Hep2…回転磁気ヘッド、T…磁気テープ、Te…磁気テープの基準縁、1…供給リール台、2…巻取りリール台、3…カセットケース、4…供給リール、5…テンションポール、6,16…ガイドポール、7…全幅消去ヘッド、8…インピーダンスローラ、9,14…ローディングポール(垂直ガイドローラ)、10,13…傾斜ガイド(スラントポール)、15…コントロールヘッド、17…ピンチローラ、18…キヤプスタン、19…巻取りリール、39…記録信号処理部、40…操作部、41…制御部、42…制御信号発生部、43…ドラム回転制御回路、45,46,55…増幅器、44,52…駆動増幅器、47〜49…録再切換スイッチ、50…テープ速度信号発生回路、51…速度制御回路、53…キャプスタンモータ、54,59…信号発生器、56…再生信号処理部、
Claims (4)
- 上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、磁気テープを順方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡における相隣る記録跡間に未記録領域が形成され、前記した磁気テープを逆方向に走行させた状態のときに、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより、前記した未記録領域に順次交互に記録跡を形成させうるような同一の所定の走行速度で、磁気テープを順方向及び逆方向に選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において、前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えてなる磁気記録再生装置。
- 上ドラムの中心軸を対称中心とする180度対称の位置に、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第1の回転磁気ヘッドと、磁気空隙のアジマス角度が記録跡の幅方向に対して反時計まわりに90度以下の所定の角度に設定されている磁気空隙を備えた第2の回転磁気ヘッドとによって、上ドラムと下ドラムとの周面の一部に巻回された状態で走行する磁気テープに、前記の磁気テープの走行方向に対して斜交する状態の順次の記録跡を平行に形成させるようにしたヘリカル型磁気記録再生装置において、通常の記録再生動作モードにおける磁気テープの走行速度の2倍の走行速度で、磁気テープを順方向と逆方向とに選択的に切換え走行させる手段と、磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドにより順次交互に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡に対して平行な状態となるようにさせる手段と、磁気テープの走行方向の変更後に、磁気テープの走行方向が変更される以前に磁気テープに形成された記録跡と、前記の記録跡に隣接する記録跡の記録形成に使用される回転磁気ヘッドとが同一である記録跡との間に、所定幅の未記録領域が残される状態となるように、走行方向が変更されるまでの記録動作中に磁気テープに記録されていたコントロールパルスを再生して得た再生コントロールパルスを基準として、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を、前記した記録跡間に形成させるべく設定された未記録領域の所定幅に関する情報に基づいて所定の距離だけずらす手段とを備えてなる磁気記録再生装置。
- 磁気テープを逆方向に走行させた状態において前記した第1,第2の回転磁気ヘッドによって順次に磁気テープに形成される記録跡が、磁気テープを順方向に走行させた状態において磁気テープに形成される記録跡と平行な状態にさせる手段として、上ドラムと、前記した上ドラムにおける磁気テープの摺接面の延長面上に位置する磁気テープの摺接面を備えているとともに、上ドラムと同軸的に設けられている下ドラムと、前記した上,下ドラムとは別体構成で、かつ、前記した下ドラムの下部に接近した状態に配置されていて、磁気テープの基準縁の位置を規制する磁気テープ案内部材と、前記した上,下ドラムの中心軸の傾斜状態と磁気テープ案内部材との傾斜状態を変化させる手段とを備えているドラム構体と、磁気テープの走行方向が変更されても、回転磁気ヘッドの回転軌跡が、所定のビデオトラック角度を有するビデオトラックに一致している状態となるように、前記した上,下ドラムの中心軸の傾斜状態と磁気テープ案内部材との傾斜状態とを制御する手段とを備えて構成されたものを用いた請求項1または請求項2の磁気記録再生装置。
- 同一の回転磁気ヘッドによって形成される隣接する記録跡間に、所定幅の未記録領域が形成されるように、走行方向の変更後に磁気テープに記録される記録跡の位置を所定の距離だけずらすのに、走行方向が変更された後に回転磁気ヘッドによって磁気テープへ形成される記録跡が、走行方向が変更される以前に回転磁気ヘッドによって磁気テープに形成されていた記録跡を形成させた回転磁気ヘッドと同一か否かに応じて、磁気テープから再生された再生コントロールパルスの位相を所定量だけ移相させるようにした請求項1または請求項2の磁気記録再生装置。
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