JP3803881B2 - 大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材及びその埋植用器具 - Google Patents
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、大腿膝蓋骨を補綴するための滑車埋植部材及び該滑車埋植部材を埋植するための器具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
非変形タイプの大腿膝蓋骨の補綴は、球面の皿を具備する膝蓋骨埋植部材が、滑車埋植部材の主としてトロイダル面に案内される技術の分野において既に発展を遂げてきた。このような補綴は、骨の切除量を減少させ、しかも補綴部材が１つ又は２つの構成部分を備える大腿脛骨の埋植部材と良好に適合するように埋植されるものであり、或いは膝の全体的埋植に置き換えられるものである。
【０００３】
このような大腿膝蓋骨の埋植には、整形外科の仕事と前記補綴の埋植を容易にするように多かれ少なかれ精巧な埋植用の補助器具が用いられる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、非変形タイプの大腿補綴における改良であり、特に補綴の安定性を向上させ、埋植技術を簡素化し、それにより大腿骨の切除量を減らし、且つ補填が配置され適合される精度を向上させることにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、膝蓋骨材を受けるために凹型に湾曲された前面と、大腿骨の遠位端に適応させて固定するための凸状後面とを具備する大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材において、前記後面には、大腿骨の滑車に機械的に形成された同一形状の溝に係合するうように細長状の梁部が突出して形成した大腿膝蓋骨補綴のための滑車埋植部材を提供することにより達成される。
【０００６】
この滑車埋植部材の細長状の梁部は、積極的な方法でその配置を決定することにより、埋植部材の埋植を極めて容易にし、補綴物の安定性を遥かに向上させることができる。
【０００７】
また、本発明の他の特徴は、前記細長状の梁部が、断面矩形状を有し、前記埋植部材は、略Ｌ字形状とされ、上部片又は“滑車（trochlea）”片及び下部片又は“顆間（inter-condyle）”片で構成され、前記細長状の梁部は、前記埋植部材の上部又は“滑車”片の全長さに亘って延びるように形成される。
【０００８】
好ましくは、埋植部材の前記凸状後面は、埋植部材全面の断面よりも小さい半円弧形状の断面を有し、前記滑車片又は顆間片は、矢状平面内で互いに鈍角をなし、その角度は、約１１５゜とされている。
【０００９】
滑車の埋植部材の前記前面又は後面の形状はまた、埋植を容易にすることになり、それにより、円弧状切削により完全に形成することができ、骨の切除を最小限にすることができる。
【００１０】
本発明は、また、前記したタイプの滑車埋植部材を埋植するための器具であって、大腿骨の顆の遠位又は後面に配置するための位置決め部材と協働して滑車の前面を削るために大腿骨の滑車の軸と略平行に切削ヘッドの軸を案内するためのガイド部材を有する第１切削ガイドと、前記切削ヘッドの軸と垂直な方向に切削ヘッドを案内するための案内部材を有するとともに前記位置決め部材と協働して滑車の前面に細長溝を切削形成するための第２切削ガイドと、前記滑車に切削形成された溝に係合するよう形成されたリブを有し、且つ、前記滑車片及び顆間片の後面同志間の角度に等しい角度となるように前記リブの軸心に対して傾斜した角度の軸心を備える切削ヘッド案内孔が穿設された長方体状の平行６面体形状の第３切削ガイドと、を有することを特徴とする。
【００１１】
本発明のより好ましい実施例は、前記第１、第２切削ガイドを位置決めするための位置決め部材が、前記顆の後面に対して耐えるための２つの平行片と、前記２つの平行片を内部接続し且つ前記顆の遠位面に対して耐えるための２つの平行な立設部材を搬送するクロスバーと、前記２つの立設部材間の搬送に案内され且つ大腿の髄管に係合されるよう形成されるロッドを案内するための手段を有するた摺動部材とを具備する。
【００１２】
第１及び第２切削ガイドの各々は、前記位置決め部材の立設部材を手動自在に係合する２つの平行摺動路と、前記立設部材上の位置に前記摺動路を固定する固定部材とを備えることが望ましい。
【００１３】
【実施例】
まず、本発明に係る滑車埋植部材について図１乃至図５を参照しつつ説明する。
【００１４】
図１から図３に示されているように埋植部材は実質上、鈍角のＬ字型であり上部片１０即ち”滑車片”及び下部片１２即ち”顆間片”を備える。埋植部材の前面１４は横断面が凹状であり長手方向には凸状の形状となっており、球面キャップ状の膝蓋骨埋植部材を受け入れるように成形されている。これが滑車埋植部材の前面１４の断面が円弧状になっているかの理由である。
【００１５】
滑車埋植部材の後面１６は凸形状であり、その断面の円弧の半径は埋植部材の前面の断面の弧の半径よりも小さく構成されている。
【００１６】
図２に示すように埋植部材の外側端は内側端よりも上まで延び、膝蓋骨埋植部材をよりよくガイドし、解剖学的にも元の組織により近づくように成形されている。
【００１７】
本発明において、埋植部材の後面は上部片即ち滑車片１０の全長に亘って矩形の長手方向の梁部１８を備える。２つのブラインドホール２０が、梁部１８に設けられ、”クリスマスツリー”状のアンカー釘２２を受け入れるために埋植部材の後面に対して垂直に開口している。一方、埋植部材はアンカー釘を含む一体のものとして成形されることもある。
【００１８】
滑車埋植部材の前面１４の横断面の半径は埋植部材の長手方向全体にわたり一定であり、膝蓋骨埋植部材の有する球形キャップの半径と一致する。滑車埋植部材の第１片１０の後面における横断面の半径は、例えば約２５mm程度で一定であり、滑車埋植部材の第２片１２の後面における横断面の半径は図示の例では約１０mm程度で一定である。
【００１９】
従って、本埋植部材が大腿骨の遠位部に埋植されるときに、滑車埋植部材の第１片１０及び第２片１２がそれぞれ取り付けられる滑車の前面上及び顆間溝の円筒状部分を構成する表面を加工する必要がある。
【００２０】
図６は大腿骨の遠位部を示した図であり、２４は大腿骨の前面であり、２６は大腿骨の顆の１つの輪郭であり、図６において点線で示されている２８は顆間溝の底を側面から見た状態を示したものである。
【００２１】
本発明に係る滑車埋植部材は通常以下に示すように使用される。まず、位置決め部材を構成する直角腕木３０の１組の手段により顆２６から基準が取られ、次に点線３２に沿って滑車(trochlea)の前面に第１の切削作業が施され、その成形された部分に点線３４で示される長手方向の溝が削られる。次に点線３６で示されるように顆間溝の切削が施される。その後は、図６において示される向きの大腿骨の遠位部上に埋植される場合に図１において示される向きに配置される埋植部材のアンカー釘を受け入れるために、溝３４の底に２つのアンカーホールを切削加工すれば完了する。
【００２２】
本発明に係る埋植部材と共に使用する埋植補助器具を図７乃至図１５を用いて詳細に説明する。図７から図９は、滑車の使用に際して２つのガイドを正確に位置決めするための手段から構成され、該ガイドの一方は図１０及び図１１に示され、他方は図１２及び図１３に示されている。
【００２３】
直角腕木３０は、各々の顆２６の後面に当接する平行片３８と、該平行片３８を連結するクロスバー４０と、該クロスバー４０によって支持され前記平行片３８に対して垂直に延びる平行立設部材４２とを備える。
【００２４】
スライダー４４は、立設部材４２の間で回動自在に案内され、平行片３８に平行な面内で平行片３８の長手方向の軸から約６度傾いて延びる軸４８を有するように円筒形スリーブ４６を支持する。前記の約６度というのは大腿骨の軸と滑車の軸との本来の傾きと一致する。
【００２５】
図７から図９に示すように、直角腕木３０は、図７及び図９において５２で示される横断面については対称的な形状をしており、図８において５４で示される中央平面(sagittal midplane)については非対称的な形状をしているため、例えば図８に示すような適当な表示を付して、スライダーを一方へ回せば直角腕木の片側が左大腿骨用となり、スライダーを他方へ回せば直角腕木の他の片側が右大腿骨用となるように使用することができる。
【００２６】
スリーブ４６は図６において点線５６で概略的に示される大腿骨の随溝に係止するためのまっすぐな円筒形ロッドを支持するために用いられる。
【００２７】
直角腕木３０が大腿骨の遠位部に適切に配置された後、即ち平行片が顆の背面に当接され、立設部材が顆の遠位面に当接され、円筒形ロッドがスリーブ４６の中において大腿骨の随溝に係止された後に、図１０及び図１１に示される切削ガイドが直角腕木に取り付けられる。
【００２８】
切削ガイドは、直角腕木３０の立設部材４２に嵌合する２つの平行な摺動路を備え、該摺動路は両端がプレート６２及び６４で閉ざされている半円筒形のハウジング６０を備え、該プレート６２及び６４の各々は切削ヘッド（図には示していない）の軸を案内するための軸孔を囲むリング６６を備える。ピン固定機構によりプレート６４は半円筒形ハウジング６０の一端に着脱自在に取り付けることができる。ハウジングの底半分は開口しており、上部半分はハウジングの一端から他端へ取り付けられる切削ヘッドの移動を可能にするスロット６８を備える。２つのタブ７０は斜めに開くようにハウジング６０に支持され、タブ７０の各々はハウジングを大腿骨に適切に固定するためのスパイクを受け入れるための孔を備えている。
【００２９】
プレート６２はハウジングの骨側（近位側）の一端を閉ざすと共に、大腿骨の前面に当接する下部スパイク７４を備える。前記スパイク７４とハウジング６０の軸との間隔が調整可能とされるのが望ましい。縦断面においてハウジング６０の軸と摺動路５８の軸との間の角度は約９５度の鈍角であり、これにより、大腿骨の骨側（近位側）へ若干上に向いている凹所を滑車の前面に作ることができる。
【００３０】
図１０及び図１１に示されている切削ガイドは以下のように使用する。直角腕木３０を大腿骨の遠位部に適切に配置して、切削ガイドの摺動路５８が直角腕木の立設部材４２に嵌合され、ガイドの垂直方向の位置が円筒状ロッドを備えたジグ手段によって調節される。前記ロッドはハウジング６０のリング６６に通され、滑車の切削量を減じるために使用される切削ヘッドと同径のディスクを支持している。摺動路に設けられた固定ねじ（図には示していない）により直角腕木上の切削ガイドの高さを固定でき、アーム７０の孔７２に係止されるスパイクにより切削ガイドは大腿骨の上で適切な場所に固定される。
【００３１】
その後、ジグを取り去り埋め込まれる埋植部材に相当する直径を有する切削ヘッドを取り付けるためにプレート６４を取り外し、プレート６４を元に戻し、切削ヘッドのシャフトをリング６６に通す。
【００３２】
切削ヘッドを回転させハウジング６０の中で大腿骨末端側（遠位側）から大腿骨側（近位側）に移動させることにより、滑車埋植部材の第１片１０の後面の面積と同じ面積を有する円筒形凹所を滑車の前面にくりぬくことができる。
【００３３】
その後図１０及び図１１の切削ガイドは直角腕木を残して取り除かれ、図１２及び図１３の切削ガイドが直角腕木に取り付けられ、滑車埋植部材の梁部を受け入れるために、長手方向の溝が前記凹所内に成形される。
【００３４】
図１０及び図１１のガイドと同様に、図１２及び図１３に示される切削ガイドは、腕木の立設部材に嵌合するように設けられた２つの摺動路５８と、大腿骨の上で固定するためのスパイクを通す孔７２を有するタブ７０とを備える。
【００３５】
摺動路５８の上端は四角形のフレーム７６を支持し、フレーム７６は摺動路５８に対して９５度の角度を有する面内にある。前記フレーム７６は図１２の点線で示されフレーム７６の面に対して垂直な軸を有する切削ヘッド７８を支持するために設けられている。切削ヘッド７８の円筒形下端の直径は、切削加工された面に溝を付ける幅、即ち滑車埋植部材の梁部１８の幅に相当する。
【００３６】
フレームの一端にはプレート８０があり、プレート８０は大腿骨の前面に当接するスパイクを備え、スパイクとフレーム７６との間隔を任意に調節できるようになっている。
【００３７】
この２つ目の切削ガイドは以下のように使用する。摺動路５８が腕木の立設部材に嵌合され、ガイドの高さはフレーム７６に配置され埋め込まれる埋植部材の大きさと使用される切削ヘッドの大きさによって決まるジグによって調整され、切削ガイドは摺動路５８を貫通する固定ねじによって腕木上に固定され、２つのスパイクがタブ７０の孔７２に通され、切削ヘッド７８が図１２に示すようにフレーム７６に取り付けられ、切削ヘッドがフレームの一端から他端へ移動して滑車の前面に成形されている円筒形凹所に長手方向の溝を削る。
【００３８】
その後２つ目の切削ガイドが取り除かれ、腕木３０も取り除かれて図１４及び図１５に示すような３つ目の切削ガイドが成形されたばかりの溝に配置される。
【００３９】
３つ目の切削ガイドは各側面が矩形の平行六面体であり、１側面に滑車埋植部材の梁部１８に相当する矩形リブ８２を備える。ガイド本体とリブ８２を貫いて孔８４が斜めに設けられている。孔８４の中心軸線はガイド本体の長手方向軸に対して１１５度の角度を付けて設けられ、この角度は滑車埋植部材の２片の間の角度と同じである。
【００４０】
３つ目の切削ガイドは以下のように使用する。ガイドのリブ８２は、滑車の前面にくりぬかれたばかりの溝に嵌合し、孔８４によって内側顆と外側顆の間にある大腿骨の溝に穴を開けるように長手方向に配置される。ジグは、孔８４と同じ直径を有する部分とより小さい直径を有する部分を備えた（２つの部分の半径の差が切除される骨の量に等しい）円筒形ロッドによって構成され、切削ガイドの長手方向の位置を正確に決めるために孔８４に嵌合される。ガイド本体の斜めの孔に係合されているスパイクにより、ガイドが大腿骨の上で所望の位置に固定され、その後切削ヘッドが孔８４に挿入され、外側顆と内側顆の間の間に円筒形凹所をくりぬく。成形された凹所の大きさは埋植される埋植材の第２片１２の後面の大きさに一致する。
【００４１】
その後３つ目のガイドは除去されテスト用の補綴が大腿骨の切削加工された部分に配置される。テスト用の補綴はアンカー釘２２の代わりに加工用の孔を備え、アンカー釘の受け入れ孔が滑車に加工されている溝の底にくりぬかれる。その後に、できた受け入れ孔にアンカー釘を押し入れて、図１から図５に示されるような滑車埋植部材が取り付けられる。
【００４２】
本滑車埋植部材はセメントを使用せずに埋植することができる。このことは、骨に結合している埋植部材の後面に多孔性のコーティング及び／又はハイドロキシアパタイトコーティング又は骨の再生を容易にする任意の物質のコーティングを設けることができるという利点につながる。
【００４３】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材及びその埋植用器具によれば、大腿骨の滑車の軸を決定し、その滑車の決められた深さ及び長さにわたって前面を切削し、その後、前記滑車の切削された面に決められたサイズの溝を形成し、さらにその後、顆間の空間を決められた方向に切削することができ、該方向は、前記埋植部材の上部片と下部片との間の角度に正確に一致する溝の軸と傾斜した角度となる。
【００４４】
また、安定性を確保することができるので、全膝補綴によって連続的に取り替えるのに適したセメントを使用することなく埋植することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材の一実施例を示す正面図である。
【図２】図１の左側面図である。
【図３】図２のＩＩＩ−ＩＩＩ線に沿う縦断面図である。
【図４】図１のＩＶ−ＩＶ線に沿う縦断面図である。
【図５】本発明に係る大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材の一実施例を示す斜視図である。
【図６】埋植部材の埋植のために大腿骨の遠位端上に施された３種の機械加工操作を示説明図である。
【図７】切削ガイドのための位置決め部材の一実施例を示す正面図である。
【図８】図１の位置決め部材を示す側面図である。
【図９】図１の位置決め部材を示す平面図である。
【図１０】滑車のための第１切削ガイドの一実施例を示す長手方向縦断面図である。
【図１１】図１０の第１切削ガイドを示す平面図である。
【図１２】第２切削ガイドの一実施例を示す長手方向縦断面図である。
【図１３】図１２の第２切削ガイドを示す平面図である。
【図１４】第３切削ガイドの一実施例を示す正面図である。
【図１５】図１４の第切削ガイドを下方から見た底面図である。
【符号の説明】
１０ 滑車片
１２ 顆間片
１４ 前面
１８ 梁部
２２ アンカー釘
２６ 顆
３０ 位置決め部材
３４ 溝
３８ 平行片
４０ クロスバー
４２ 立設部材
４４ 摺動部材
４６ 案内部
５８ 平行案内路
６６ ガイド部材
７０ 案内部材
７８ 切削ヘッド
８２ リブ
８４ 切削ヘッド案内孔
【産業上の利用分野】
本発明は、大腿膝蓋骨を補綴するための滑車埋植部材及び該滑車埋植部材を埋植するための器具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
非変形タイプの大腿膝蓋骨の補綴は、球面の皿を具備する膝蓋骨埋植部材が、滑車埋植部材の主としてトロイダル面に案内される技術の分野において既に発展を遂げてきた。このような補綴は、骨の切除量を減少させ、しかも補綴部材が１つ又は２つの構成部分を備える大腿脛骨の埋植部材と良好に適合するように埋植されるものであり、或いは膝の全体的埋植に置き換えられるものである。
【０００３】
このような大腿膝蓋骨の埋植には、整形外科の仕事と前記補綴の埋植を容易にするように多かれ少なかれ精巧な埋植用の補助器具が用いられる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、非変形タイプの大腿補綴における改良であり、特に補綴の安定性を向上させ、埋植技術を簡素化し、それにより大腿骨の切除量を減らし、且つ補填が配置され適合される精度を向上させることにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、膝蓋骨材を受けるために凹型に湾曲された前面と、大腿骨の遠位端に適応させて固定するための凸状後面とを具備する大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材において、前記後面には、大腿骨の滑車に機械的に形成された同一形状の溝に係合するうように細長状の梁部が突出して形成した大腿膝蓋骨補綴のための滑車埋植部材を提供することにより達成される。
【０００６】
この滑車埋植部材の細長状の梁部は、積極的な方法でその配置を決定することにより、埋植部材の埋植を極めて容易にし、補綴物の安定性を遥かに向上させることができる。
【０００７】
また、本発明の他の特徴は、前記細長状の梁部が、断面矩形状を有し、前記埋植部材は、略Ｌ字形状とされ、上部片又は“滑車（trochlea）”片及び下部片又は“顆間（inter-condyle）”片で構成され、前記細長状の梁部は、前記埋植部材の上部又は“滑車”片の全長さに亘って延びるように形成される。
【０００８】
好ましくは、埋植部材の前記凸状後面は、埋植部材全面の断面よりも小さい半円弧形状の断面を有し、前記滑車片又は顆間片は、矢状平面内で互いに鈍角をなし、その角度は、約１１５゜とされている。
【０００９】
滑車の埋植部材の前記前面又は後面の形状はまた、埋植を容易にすることになり、それにより、円弧状切削により完全に形成することができ、骨の切除を最小限にすることができる。
【００１０】
本発明は、また、前記したタイプの滑車埋植部材を埋植するための器具であって、大腿骨の顆の遠位又は後面に配置するための位置決め部材と協働して滑車の前面を削るために大腿骨の滑車の軸と略平行に切削ヘッドの軸を案内するためのガイド部材を有する第１切削ガイドと、前記切削ヘッドの軸と垂直な方向に切削ヘッドを案内するための案内部材を有するとともに前記位置決め部材と協働して滑車の前面に細長溝を切削形成するための第２切削ガイドと、前記滑車に切削形成された溝に係合するよう形成されたリブを有し、且つ、前記滑車片及び顆間片の後面同志間の角度に等しい角度となるように前記リブの軸心に対して傾斜した角度の軸心を備える切削ヘッド案内孔が穿設された長方体状の平行６面体形状の第３切削ガイドと、を有することを特徴とする。
【００１１】
本発明のより好ましい実施例は、前記第１、第２切削ガイドを位置決めするための位置決め部材が、前記顆の後面に対して耐えるための２つの平行片と、前記２つの平行片を内部接続し且つ前記顆の遠位面に対して耐えるための２つの平行な立設部材を搬送するクロスバーと、前記２つの立設部材間の搬送に案内され且つ大腿の髄管に係合されるよう形成されるロッドを案内するための手段を有するた摺動部材とを具備する。
【００１２】
第１及び第２切削ガイドの各々は、前記位置決め部材の立設部材を手動自在に係合する２つの平行摺動路と、前記立設部材上の位置に前記摺動路を固定する固定部材とを備えることが望ましい。
【００１３】
【実施例】
まず、本発明に係る滑車埋植部材について図１乃至図５を参照しつつ説明する。
【００１４】
図１から図３に示されているように埋植部材は実質上、鈍角のＬ字型であり上部片１０即ち”滑車片”及び下部片１２即ち”顆間片”を備える。埋植部材の前面１４は横断面が凹状であり長手方向には凸状の形状となっており、球面キャップ状の膝蓋骨埋植部材を受け入れるように成形されている。これが滑車埋植部材の前面１４の断面が円弧状になっているかの理由である。
【００１５】
滑車埋植部材の後面１６は凸形状であり、その断面の円弧の半径は埋植部材の前面の断面の弧の半径よりも小さく構成されている。
【００１６】
図２に示すように埋植部材の外側端は内側端よりも上まで延び、膝蓋骨埋植部材をよりよくガイドし、解剖学的にも元の組織により近づくように成形されている。
【００１７】
本発明において、埋植部材の後面は上部片即ち滑車片１０の全長に亘って矩形の長手方向の梁部１８を備える。２つのブラインドホール２０が、梁部１８に設けられ、”クリスマスツリー”状のアンカー釘２２を受け入れるために埋植部材の後面に対して垂直に開口している。一方、埋植部材はアンカー釘を含む一体のものとして成形されることもある。
【００１８】
滑車埋植部材の前面１４の横断面の半径は埋植部材の長手方向全体にわたり一定であり、膝蓋骨埋植部材の有する球形キャップの半径と一致する。滑車埋植部材の第１片１０の後面における横断面の半径は、例えば約２５mm程度で一定であり、滑車埋植部材の第２片１２の後面における横断面の半径は図示の例では約１０mm程度で一定である。
【００１９】
従って、本埋植部材が大腿骨の遠位部に埋植されるときに、滑車埋植部材の第１片１０及び第２片１２がそれぞれ取り付けられる滑車の前面上及び顆間溝の円筒状部分を構成する表面を加工する必要がある。
【００２０】
図６は大腿骨の遠位部を示した図であり、２４は大腿骨の前面であり、２６は大腿骨の顆の１つの輪郭であり、図６において点線で示されている２８は顆間溝の底を側面から見た状態を示したものである。
【００２１】
本発明に係る滑車埋植部材は通常以下に示すように使用される。まず、位置決め部材を構成する直角腕木３０の１組の手段により顆２６から基準が取られ、次に点線３２に沿って滑車(trochlea)の前面に第１の切削作業が施され、その成形された部分に点線３４で示される長手方向の溝が削られる。次に点線３６で示されるように顆間溝の切削が施される。その後は、図６において示される向きの大腿骨の遠位部上に埋植される場合に図１において示される向きに配置される埋植部材のアンカー釘を受け入れるために、溝３４の底に２つのアンカーホールを切削加工すれば完了する。
【００２２】
本発明に係る埋植部材と共に使用する埋植補助器具を図７乃至図１５を用いて詳細に説明する。図７から図９は、滑車の使用に際して２つのガイドを正確に位置決めするための手段から構成され、該ガイドの一方は図１０及び図１１に示され、他方は図１２及び図１３に示されている。
【００２３】
直角腕木３０は、各々の顆２６の後面に当接する平行片３８と、該平行片３８を連結するクロスバー４０と、該クロスバー４０によって支持され前記平行片３８に対して垂直に延びる平行立設部材４２とを備える。
【００２４】
スライダー４４は、立設部材４２の間で回動自在に案内され、平行片３８に平行な面内で平行片３８の長手方向の軸から約６度傾いて延びる軸４８を有するように円筒形スリーブ４６を支持する。前記の約６度というのは大腿骨の軸と滑車の軸との本来の傾きと一致する。
【００２５】
図７から図９に示すように、直角腕木３０は、図７及び図９において５２で示される横断面については対称的な形状をしており、図８において５４で示される中央平面(sagittal midplane)については非対称的な形状をしているため、例えば図８に示すような適当な表示を付して、スライダーを一方へ回せば直角腕木の片側が左大腿骨用となり、スライダーを他方へ回せば直角腕木の他の片側が右大腿骨用となるように使用することができる。
【００２６】
スリーブ４６は図６において点線５６で概略的に示される大腿骨の随溝に係止するためのまっすぐな円筒形ロッドを支持するために用いられる。
【００２７】
直角腕木３０が大腿骨の遠位部に適切に配置された後、即ち平行片が顆の背面に当接され、立設部材が顆の遠位面に当接され、円筒形ロッドがスリーブ４６の中において大腿骨の随溝に係止された後に、図１０及び図１１に示される切削ガイドが直角腕木に取り付けられる。
【００２８】
切削ガイドは、直角腕木３０の立設部材４２に嵌合する２つの平行な摺動路を備え、該摺動路は両端がプレート６２及び６４で閉ざされている半円筒形のハウジング６０を備え、該プレート６２及び６４の各々は切削ヘッド（図には示していない）の軸を案内するための軸孔を囲むリング６６を備える。ピン固定機構によりプレート６４は半円筒形ハウジング６０の一端に着脱自在に取り付けることができる。ハウジングの底半分は開口しており、上部半分はハウジングの一端から他端へ取り付けられる切削ヘッドの移動を可能にするスロット６８を備える。２つのタブ７０は斜めに開くようにハウジング６０に支持され、タブ７０の各々はハウジングを大腿骨に適切に固定するためのスパイクを受け入れるための孔を備えている。
【００２９】
プレート６２はハウジングの骨側（近位側）の一端を閉ざすと共に、大腿骨の前面に当接する下部スパイク７４を備える。前記スパイク７４とハウジング６０の軸との間隔が調整可能とされるのが望ましい。縦断面においてハウジング６０の軸と摺動路５８の軸との間の角度は約９５度の鈍角であり、これにより、大腿骨の骨側（近位側）へ若干上に向いている凹所を滑車の前面に作ることができる。
【００３０】
図１０及び図１１に示されている切削ガイドは以下のように使用する。直角腕木３０を大腿骨の遠位部に適切に配置して、切削ガイドの摺動路５８が直角腕木の立設部材４２に嵌合され、ガイドの垂直方向の位置が円筒状ロッドを備えたジグ手段によって調節される。前記ロッドはハウジング６０のリング６６に通され、滑車の切削量を減じるために使用される切削ヘッドと同径のディスクを支持している。摺動路に設けられた固定ねじ（図には示していない）により直角腕木上の切削ガイドの高さを固定でき、アーム７０の孔７２に係止されるスパイクにより切削ガイドは大腿骨の上で適切な場所に固定される。
【００３１】
その後、ジグを取り去り埋め込まれる埋植部材に相当する直径を有する切削ヘッドを取り付けるためにプレート６４を取り外し、プレート６４を元に戻し、切削ヘッドのシャフトをリング６６に通す。
【００３２】
切削ヘッドを回転させハウジング６０の中で大腿骨末端側（遠位側）から大腿骨側（近位側）に移動させることにより、滑車埋植部材の第１片１０の後面の面積と同じ面積を有する円筒形凹所を滑車の前面にくりぬくことができる。
【００３３】
その後図１０及び図１１の切削ガイドは直角腕木を残して取り除かれ、図１２及び図１３の切削ガイドが直角腕木に取り付けられ、滑車埋植部材の梁部を受け入れるために、長手方向の溝が前記凹所内に成形される。
【００３４】
図１０及び図１１のガイドと同様に、図１２及び図１３に示される切削ガイドは、腕木の立設部材に嵌合するように設けられた２つの摺動路５８と、大腿骨の上で固定するためのスパイクを通す孔７２を有するタブ７０とを備える。
【００３５】
摺動路５８の上端は四角形のフレーム７６を支持し、フレーム７６は摺動路５８に対して９５度の角度を有する面内にある。前記フレーム７６は図１２の点線で示されフレーム７６の面に対して垂直な軸を有する切削ヘッド７８を支持するために設けられている。切削ヘッド７８の円筒形下端の直径は、切削加工された面に溝を付ける幅、即ち滑車埋植部材の梁部１８の幅に相当する。
【００３６】
フレームの一端にはプレート８０があり、プレート８０は大腿骨の前面に当接するスパイクを備え、スパイクとフレーム７６との間隔を任意に調節できるようになっている。
【００３７】
この２つ目の切削ガイドは以下のように使用する。摺動路５８が腕木の立設部材に嵌合され、ガイドの高さはフレーム７６に配置され埋め込まれる埋植部材の大きさと使用される切削ヘッドの大きさによって決まるジグによって調整され、切削ガイドは摺動路５８を貫通する固定ねじによって腕木上に固定され、２つのスパイクがタブ７０の孔７２に通され、切削ヘッド７８が図１２に示すようにフレーム７６に取り付けられ、切削ヘッドがフレームの一端から他端へ移動して滑車の前面に成形されている円筒形凹所に長手方向の溝を削る。
【００３８】
その後２つ目の切削ガイドが取り除かれ、腕木３０も取り除かれて図１４及び図１５に示すような３つ目の切削ガイドが成形されたばかりの溝に配置される。
【００３９】
３つ目の切削ガイドは各側面が矩形の平行六面体であり、１側面に滑車埋植部材の梁部１８に相当する矩形リブ８２を備える。ガイド本体とリブ８２を貫いて孔８４が斜めに設けられている。孔８４の中心軸線はガイド本体の長手方向軸に対して１１５度の角度を付けて設けられ、この角度は滑車埋植部材の２片の間の角度と同じである。
【００４０】
３つ目の切削ガイドは以下のように使用する。ガイドのリブ８２は、滑車の前面にくりぬかれたばかりの溝に嵌合し、孔８４によって内側顆と外側顆の間にある大腿骨の溝に穴を開けるように長手方向に配置される。ジグは、孔８４と同じ直径を有する部分とより小さい直径を有する部分を備えた（２つの部分の半径の差が切除される骨の量に等しい）円筒形ロッドによって構成され、切削ガイドの長手方向の位置を正確に決めるために孔８４に嵌合される。ガイド本体の斜めの孔に係合されているスパイクにより、ガイドが大腿骨の上で所望の位置に固定され、その後切削ヘッドが孔８４に挿入され、外側顆と内側顆の間の間に円筒形凹所をくりぬく。成形された凹所の大きさは埋植される埋植材の第２片１２の後面の大きさに一致する。
【００４１】
その後３つ目のガイドは除去されテスト用の補綴が大腿骨の切削加工された部分に配置される。テスト用の補綴はアンカー釘２２の代わりに加工用の孔を備え、アンカー釘の受け入れ孔が滑車に加工されている溝の底にくりぬかれる。その後に、できた受け入れ孔にアンカー釘を押し入れて、図１から図５に示されるような滑車埋植部材が取り付けられる。
【００４２】
本滑車埋植部材はセメントを使用せずに埋植することができる。このことは、骨に結合している埋植部材の後面に多孔性のコーティング及び／又はハイドロキシアパタイトコーティング又は骨の再生を容易にする任意の物質のコーティングを設けることができるという利点につながる。
【００４３】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材及びその埋植用器具によれば、大腿骨の滑車の軸を決定し、その滑車の決められた深さ及び長さにわたって前面を切削し、その後、前記滑車の切削された面に決められたサイズの溝を形成し、さらにその後、顆間の空間を決められた方向に切削することができ、該方向は、前記埋植部材の上部片と下部片との間の角度に正確に一致する溝の軸と傾斜した角度となる。
【００４４】
また、安定性を確保することができるので、全膝補綴によって連続的に取り替えるのに適したセメントを使用することなく埋植することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材の一実施例を示す正面図である。
【図２】図１の左側面図である。
【図３】図２のＩＩＩ−ＩＩＩ線に沿う縦断面図である。
【図４】図１のＩＶ−ＩＶ線に沿う縦断面図である。
【図５】本発明に係る大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材の一実施例を示す斜視図である。
【図６】埋植部材の埋植のために大腿骨の遠位端上に施された３種の機械加工操作を示説明図である。
【図７】切削ガイドのための位置決め部材の一実施例を示す正面図である。
【図８】図１の位置決め部材を示す側面図である。
【図９】図１の位置決め部材を示す平面図である。
【図１０】滑車のための第１切削ガイドの一実施例を示す長手方向縦断面図である。
【図１１】図１０の第１切削ガイドを示す平面図である。
【図１２】第２切削ガイドの一実施例を示す長手方向縦断面図である。
【図１３】図１２の第２切削ガイドを示す平面図である。
【図１４】第３切削ガイドの一実施例を示す正面図である。
【図１５】図１４の第切削ガイドを下方から見た底面図である。
【符号の説明】
１０ 滑車片
１２ 顆間片
１４ 前面
１８ 梁部
２２ アンカー釘
２６ 顆
３０ 位置決め部材
３４ 溝
３８ 平行片
４０ クロスバー
４２ 立設部材
４４ 摺動部材
４６ 案内部
５８ 平行案内路
６６ ガイド部材
７０ 案内部材
７８ 切削ヘッド
８２ リブ
８４ 切削ヘッド案内孔
Claims (9)
- 膝蓋骨材を受けるために凹型に湾曲された前面と、大腿骨の遠位端に適応させて固定するための凸状後面とを具備する大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材において、
前記後面には、大腿骨の滑車に機械的に形成された同一形状の溝に係合するように細長状の梁部が突出して形成されており、
前記細長状の梁部上には、該梁部に対して垂直に延びるアンカー釘が設けられており、
前記細長状の梁部は、前記埋植部材の滑車片の全長に亘って延びていることを特徴とする大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材。 - 前記細長状の梁部は、断面矩形状とされていることを特徴とする請求項１に記載の大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材。
- 前記埋植部材は、略Ｌ字形状とされ、滑車片と、顆間片とを有することを特徴とする請求項１又は２に記載の大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材。
- 埋植部材の前記凸状後面は、埋植部材前面の断面よりも小さい半円弧形状の断面とされていることを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載の大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材。
- 前記滑車片又は顆間片は、矢状平面（sagittal plane）内で互いに鈍角をなし、その角度は、約１１５゜に設定されていることを特徴とする請求項３から４のいずれかに記載の大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材。
- 前記滑車片の側縁部が、滑車片の中心部よりも高い位置に形成されていることを特徴とする請求項３から５のいずれかに記載の大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材。
- 大腿骨の顆の遠位又は後面に配置するための位置決め部材と協働して滑車の前面を削るために大腿骨の滑車の軸と略平行に切削ヘッドの軸を案内するためのガイド部材を有する第１切削ガイドと、
前記切削ヘッドの軸と垂直な方向に切削ヘッドを案内するための案内部材を有するとともに前記位置決め部材と協働して滑車の前面に細長溝を切削形成するための第２切削ガイドと、
前記滑車に切削形成された溝に係合するよう形成されたリブを有し、且つ、前記滑車片及び顆間片の後面同志間の角度に等しい角度となるように前記リブの軸心に対して傾斜した角度の軸心を備える切削ヘッド案内孔が穿設された各側面が矩形の平行６面体（rectangular parallelepiped）形状の第３切削ガイドと、を有することを特徴とする大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材の埋植用器具。 - 前記第１、第２切削ガイドを位置決めするための位置決め部材が、大腿骨の内側顆及び外側顆の各後面に当接される２つの平行片と、前記２つの平行片を連結し且つ前記顆の遠位面に載置される２つの平行な立設部材が立設されたクロスバーと、前記２つの立設部材間に並進移動可能に案内され且つ大腿の髄溝に係止されるようにロッドを案内するための案内部を設けた摺動部材とを有することを特徴とする請求項７に記載の大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材の埋植用器具。
- 前記第１及び第２切削ガイドの各々が、前記位置決め部材の立設部材を摺動自在に係合する２つの平行案内路と、前記立設部材上の位置に前記摺動路を固定する固定部材とを有することを特徴とする請求項８に記載の大腿膝蓋骨補綴用滑車埋植部材埋植用器具。
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