JP3803354B2 - C型肝炎ウイルス関連疾患の治療のための組成物および方法 - Google Patents

C型肝炎ウイルス関連疾患の治療のための組成物および方法 Download PDF

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この発明は、インビボまたはインビトロでC型肝炎ウイルスの複製を阻止しC型肝炎ウイルス関連疾患を治療するための投与することのできるアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計および合成に関する。これら化合物は、予防的かまたは治療的に用いてC型肝炎ウイルスに関連する疾患の重篤度を減少させることができる。RNA標的に特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドが開示される。
輸血の結果として現在認められている肝炎の主要な形態は、これまでに特徴付けられているA型肝炎ウイルスともB型肝炎ウイルスとも関係せず、非A非B肝炎(NANBH)と呼ばれている。NANBHは、現在、輸血後肝炎の症例の90%以上を占めている。輸血を受ける人におけるNANBHの頻度の推定値は、ボランティアの血液では5%〜13%、市販の血液では25〜54%である。
急性のNANBHはA型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスによって引き起こされる急性疾患に比べてしばしば重篤ではないが、時折重篤なまたは劇症の肝炎に導く。一層懸念されることには、慢性肝炎への進行はNANBH後ではA型肝炎またはB型肝炎のいずれかの感染後よりもはるかに一般的である。慢性NANBHは、感染個体の10%〜70%で報告されている。この形態の肝炎は無症候性の患者からでさえも伝播し、しばしば肝硬変や肝細胞癌などの悪性の疾患へと進行する。慢性活動性肝炎(肝硬変を伴うまたは伴わない)は、輸血後肝炎症例の44%〜90%で認められる。肝硬変をきたした患者のうち約1/4が肝不全のために死亡する。
慢性活動性NANBHは、血液製剤に依存する血友病患者にとって深刻な問題である;5%〜11%の血友病患者が慢性の末期肝臓疾患で死亡している。血液または血液製剤を原因とする以外のNANBHの症例は、しばしば病院に置かれること、誤って注射針を刺すこと、またはいれずみに伴うものである。親密な個人的接触によっても伝播は起こるが、これはB型肝炎に比べればNANBHでは一般的ではない。
NANBHの大部分の病原因子は最近になって同定され、現在、C型肝炎ウイルス(HCV)と呼ばれる。ヒュートン(Houghton)ら(特許文献1)およびチュー(Choo)ら(非特許文献1)。組換えDNA法により作製した抗原を用いた血清学的研究によって、いまやHCVが輸血後NANBHの殆どの症例の病原因子であることが明らかである。濃縮ウイルス粒子から単離した核酸から調製したcDNAのクローンは、もともとNANBH患者の血清と反応するポリペプチドをコードする能力に基づいて単離されたものである。これらクローンは、感染した肝臓組織から単離したRNAとはハイブリダイズするがDNAとはハイブリダイズせず、RNAゲノムの存在を示していた。これらcDNAクローンのハイブリダイゼーション分析およびシークエンシングにより、感染した肝臓および粒子中に存在するRNAが該cDNAのコード鎖と同じ極性を有することが明らかとなった;言い換えれば、このウイルスのゲノムはポジティブまたはプラス鎖RNAゲノムである。特許文献1(ヒュートンら)は、HCV−1の部分ゲノム配列を開示しており、HCV配列およびHCVポリペプチドのクローニングおよび発現の組換えDNA法、HCV免疫診断の技術、HCVプローブ診断法、抗HCV抗体、および新規HCV配列の単離法を教示している。ヒュートンらはまた、別のHCV配列をも開示しており、これら配列およびポリペプチドの免疫診断法、プローブ診断法、抗HCV抗体の製造、PCR法および組換えDNA法における応用を教示している。ウイルス複製のインヒビターとしてのアンチセンスポリヌクレオチドの使用の概念が開示されているが、特定の標的については何ら教示されていない。開示された配列に基づくオリゴマープローブおよびオリゴマープライマーもまた提供されている。ミヤムラ(Miyamura)ら(特許文献2)は、新規なHCV単離物であるJ1およびJ7、およびHCV−1配列とは異なる配列のスクリーニングおよび診断への使用を開示している。
慢性NANBHの治療のために有効であることが示されている唯一の治療戦略は、インターフェロン−αである。殆どのNANBH患者でインターフェロン療法の間の臨床兆候の改善が示されているが、治療を中断したときに患者の少なくとも半分で再発が観察されている。それゆえ、抗ウイルス療法における有意な改善が大いに期待されている。
EP公開318,216号公報 EP公開419,182号公報 チュー(Choo)ら、Science, 1989, 244, p.359-362
HCVのRNAとハイブリダイズして該RNAの合成または機能を阻害しうるオリゴヌクレオチドを提供することがこの発明の目的である。
HCVのRNAとハイブリダイズして該ウイルスの複製を阻害しうるオリゴヌクレオチドを提供することがこの発明の別の目的である。
ウイルスRNAとのアンチセンス相互作用によりHCVの発現を調節しうるオリゴヌクレオチドを提供することがこの発明の他の目的である。
急性または慢性のHCV感染の予防、診断および治療法を提供することがこの発明のさらに別の目的である。
この発明の他の目的は、HCV関連疾患の予防、診断および治療法を提供することである。
HCVまたはHCV RNAを含有していると思われる試料中の該HCVまたはHCV RNAの存在または不在を検出するための方法、材料およびキットが本発明の他の目的である。
これらおよび他の目的は、本明細書および添付の請求の範囲を参照すれば当業者には明らかとなるであろう。
本発明によれば、HCV感染の効果を調節する(modulating)ための組成物および方法が提供される。HCV RNAの選択された配列に相補的で特異的に結合しうるオリゴヌクレオチドが提供される。HCVの5'末端ヘアピンループ、5'末端6塩基対繰り返し、5'末端非翻訳領域、ポリタンパク質翻訳開始コドン、コアタンパク質コード領域、ORF3翻訳開始コドン、3'非翻訳領域、3'末端パリンドローム領域、R2配列および3'末端ヘアピンループが好ましい標的である。HCV関連疾患を有すると思われる動物に、単独または薬理学的に許容しうる担体とともにオリゴヌクレオチドを投与することによる疾患状態の診断または治療方法も提供される。
標的RNAと該標的の少なくとも一部に相補的で特異的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドとの関係を一般に「アンチセンス」と表示している。これらオリゴヌクレオチドは、ウイルスRNAの複製、mRNAへの転写、タンパク質への翻訳、ウイルス粒子へのパッケージングまたは全体的な生物学的機能に必要な他の活性を妨害することにより該ウイルスRNAの機能を阻害することができる。RNAがその機能をすべてまたは一部行うことができないと、ウイルスの正常なライフサイクルのすべてまたは一部が行えない結果となる。
ウイルスを標的として設計したアンチセンスオリゴヌクレオチドはウイルス感染を減少させるのに有効であることがわかっている。オリゴヌクレオチドは約5〜約50ヌクレオチドユニットを有するのが好ましい。これらオリゴヌクレオチドはまた、HCVの5'末端ヘアピンループ、5'末端6塩基対繰り返し、5'末端非翻訳領域、ポリタンパク質翻訳開始コドン、コアタンパク質コード領域、ORF3翻訳開始コドン、3'非翻訳領域、3'末端パリンドローム領域、R2配列および3'末端ヘアピンループと特異的にハイブリダイズしうることも好ましい。オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼに対する耐性を高め、その有効性を高めるために修飾することができる。
好ましい態様によれば、ウイルスRNAはHCV感染および/またはHCV複製を阻害するに充分な程度に妨害される。それゆえ、HCV RNAの一部と相互反応しうるオリゴヌクレオチドが包含される。HCV関連疾患を有すると思われる動物を本発明に従って調製したオリゴヌクレオチドと接触させる。とりわけ、本発明は、急性および慢性のHCV感染およびHCV関連疾患の処置に予防および治療の両面で有効であると思われる。
異なる株および株内の異なるタイプからのHCVのRNAにおいて差異が存在することが予測される。それゆえ、たとえば、種々のHCV株の領域はそれぞれの株に対して本質的に同じ機能を果たし、遺伝情報の発現に対する妨害は種々の株において同様の結果をもたらすであろうと思われる。このことは、株間でヌクレオチド配列に差異が存在する場合でもそうであると思われる。
従って、本明細書に開示するヌクレオチド配列は、記載した特定の株の代表として理解されるであろう。HCVの異なる株に対する相同または類似配列はこの発明の範囲に包含される。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、多くのヒト疾患の治療のための治療剤として大いに有望である。殆どの場合、特定のRNA標的配列に相補的なオリゴヌクレオチドは、ワトソン−クリック塩基対形成により前駆体mRNAまたは成熟mRNAに結合し、DNAからタンパク質への遺伝情報の流れを阻害する。HCVなどのRNAウイルスの場合は、オリゴヌクレオチドはウイルスのゲノムRNA、mRNA、または複製性中間体RNAに特異的にハイブリダイズするように設計され、該RNAの機能を妨害してウイルスの複製またはタンパク質の発現が変調されるようにする。
数多くの最近の研究は、標的タンパク質を研究するための生化学的手段としてのアンチセンスオリゴヌクレオチドの有用性の証拠を提示している。ローゼンバーグ(Rothenberg)ら、J. Natl. Cancer Inst., 1989、81、1539〜1544;ゾン(Zon)、G. Pharmaceutical Res., 1987、5、539〜549。オリゴヌクレオチド化学の最近における進歩、ヌクレアーゼ抵抗性のオリゴヌクレオチドの合成、および増加した細胞取り込みを示すタイプのオリゴヌクレオチドを利用できることのため、今や新たな形態の治療薬としてのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を考慮することが可能である。
治療薬として、HCV感染またはHCV関連疾患を有すると思われる動物にこの発明によるオリゴヌクレオチドを投与して処置する。オリゴヌクレオチドは医薬組成物として処方することができ、該組成物には該オリゴヌクレオチドに加えて担体、増量剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、界面活性剤などが含まれていてよい。医薬組成物にはまた、オリゴヌクレオチドに加えて、たとえば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1または2以上の活性成分が含まれていてもよい。
上記医薬組成物は、局所処置かまたは全身処置を希望するかによって、および処置する部位によって、多くの仕方で投与することができる。投与は、局所的(眼、膣、直腸、鼻内を含む)、経口、吸入、または非経口、たとえば静脈内点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射によるものであってよい。
局所投与のための処方物としては、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、座剤、噴霧剤、液剤および散剤が挙げられる。通常の医薬担体、水性、粉末もしくは油状の基剤、増量剤などが必要もしくは望ましい。コーティングしたコンドームもまた有用である。
経口投与のための組成物としては、散剤または顆粒剤、水中または非水性媒体中の懸濁剤または液剤、カプセル剤、サシェ剤(sachets)、または錠剤が挙げられる。増量剤、香料、希釈剤、乳濁化剤、分散補助剤または結合剤が望ましい。
非経口投与のための処方物としては、滅菌水溶液(緩衝液、希釈剤および他の適当な添加剤を含有していてよい)が挙げられる。
投薬は処置しようとする病的状態の重篤度および応答性(responsiveness)に依存するが、通常、1日当たり1または2以上投与であり、処置は数日から数カ月または治癒が現れるか疾患状態が軽減されるまで続ける。投与量および頻度は、たとえば患者の体重および投与経路に応じて変わるであろう。個々の投与量は、通常、約0.001mg〜500mgの範囲であるが、それより高くても低くてもよい。当業者であれば最適の投与量、投与法および反復度(repetition rate)を容易に決定することができる。
本発明では、HCVのアンチセンス阻害のためにHCV RNAの特定の領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いる。この発明に関しては、「オリゴヌクレオチド」なる術語は、リボ核酸またはデオキシリボ核酸のオリゴマーまたはポリマーをいう。この術語には、天然に存在する塩基、糖および糖間(バックボーン)結合からなるオリゴマー並びに同様に機能する天然に存在しない部分を含むオリゴマーを包含する。そのような修飾したまたは置換したオリゴヌクレオチドは、たとえば細胞取り込みの促進やヌクレアーゼの存在下での安定性の増加などの特性のため、天然形態のものよりもしばしば好ましい。
この発明で考えられる幾つかの好ましいオリゴヌクレオチドの特定の例としては、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、直鎖アルキルまたはシクロアルキル糖間結合または短鎖ヘテロ原子またはヘテロ環状糖間結合が挙げられる。最も好ましいのは、CH2−NH−O−CH2、CH2−N(CH3)−O−CH2、CH2−O−N(CH3)−CH2、CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2およびO−N(CH3)−CH2−CH2バックボーン(ホスホジエステルはO−P−O−CH2である)を有するものである。モルホリノバックボーン構造を有するオリゴヌクレオチドもまた好ましい。サマートン(Summerton, J. E.)およびウエラー(Weller, D. D.)、米国特許第5,034,506号。タンパク質−核酸(PNA)バックボーンなどの他の好ましい態様において、オリゴヌクレオチドのホスホジエステルバックボーンをポリアミドバックボーンで置換してよく、塩基は該ポリアミドバックボーンのアザ窒素原子に直接または間接に結合していてよい。ニールセン(P. E. Nielsen)、エグホルム(M. Egholm)、ベルグ(R. H. Berg)、ブヒャルト(O. Buchardt)、Science 1991、254、1497。他の好ましいオリゴヌクレオチドには、2'位に以下の一つを有するアルキル、ハロゲンまたはその他で置換された糖残基を含有していてよい:OH、SH、SCH3、F、OCN、O(CH2nNH2またはO(CH2nCH3(式中、nは1〜約10);C1〜C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリール(alkaryl)またはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O−、S−もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA開裂基;結合体(conjugate);レポーター基;挿入剤(intercalator);オリゴヌクレオチドの薬物動力学的特性を改善する基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善する基および同様の特性を有する他の置換基。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖疑似物(mimetics)を所有していてもよい。修飾したまたは異常な塩基を用いることもできる;これらのうち最も好ましいのはイノシンであり、これはA、C、GまたはTのいずれともワトソン−クリック対を形成できる「普遍塩基(universal base)」である。他の普遍塩基も好ましい。それゆえ、この発明のオリゴヌクレオチドは、一つの態様において、HCV RNA中のHCV株間で変化するヌクレオチドに相補的な位置に普遍塩基を有する。
HCV RNAと有効にハイブリダイズするように機能する限り、そのようなオリゴヌクレオチドはすべてこの発明に包含される。この発明によるオリゴヌクレオチドは、約5〜約50核酸塩基ユニットを含むのが好ましい。そのようなオリゴヌクレオチドは、約8〜30核酸塩基ユニットを含むのが一層好ましく、約14〜26核酸塩基ユニットを含むのがさらに一層好ましい。理解されるであろうように、核酸塩基ユニットは、ホスホジエステル結合または他の結合によって隣接する核酸塩基ユニットに適切に結合した塩基−糖の組み合わせである。
好ましい態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、HCV RNAの5'非翻訳領域のループB領域またはループC領域の少なくとも一部に相補的でありハイブリダイズすることができる。特に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえば、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:44、およびSEQ ID NO:45を包含する。
好ましい態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、HCV RNAの5'末端非翻訳領域のループF領域の少なくとも一部に相補的でありハイブリダイズすることができる。特に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドはSEQ ID NO:62を包含する。
好ましい態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、HCVゲノムの5'非翻訳領域に存在する下記ヌクレオチド配列(A)、または該ヌクレオチド配列(A)と1または2の塩基ユニットのみが異なる該ヌクレオチド配列に非常に相同なヌクレオチド配列とハイブリダイズしうる:
(A)GCCUCCAGGACCCC
そのようなオリゴヌクレオチドは、少なくとも14ヌクレオチドの長さであり、好ましくは14〜26ヌクレオチドの長さである。それゆえ、これらオリゴヌクレオチドは、該ヌクレオチド配列(A)に対するアンチセンスヌクレオチド配列を少なくとも含有している。
さらに好ましいオリゴヌクレオチドは、該ヌクレオチド配列にハイブリダイズしうるヌクレオチド配列を有し、さらに、HCVゲノムに由来するHCV RNAの5’末端非翻訳領域のヌクレオチド104〜129を包含する下記ヌクレオチド配列(B)に相補的な、または該ヌクレオチド配列(B)内の約20merの連続したヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含有する:
CGUGCAGCCUCCAGGACCCCCCCUCC
(下線を付した領域は上記配列(A)に等しい)。
他の好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは、ポリタンパク質翻訳開始コドンの少なくとも一部またはコアタンパク質コード領域の少なくとも一部とハイブリダイズしうる。さらに好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは、HCVのゲノムのヌクレオチド配列AUCC(ポリタンパク質翻訳開始コドンの近傍のコアタンパク質コード領域中のヌクレオチド352〜355に存在する)またはその近傍に特異的にハイブリダイズしうるアンチセンスヌクレオチド配列GGATを含有する。ポリタンパク質翻訳開始コドンの少なくとも一部とハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドの適当な例は、SEQ ID NO:81、SEQ ID NO:82、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80であり、HCV RNAのコアタンパク質コード領域の少なくとも一部とハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドの適当な例は、SEQ ID NO:84、SEQ ID NO:85、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:87、SEQ ID NO:88、SEQ ID NO:89、SEQ ID NO:90、およびSEQ ID NO:91である。加えて、HCV DNAのヌクレオチドNo.352〜355(AUCC)のヌクレオチド配列またはその近傍にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドの適当な例は、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:84、SEQ ID NO:85、SEQ ID NO:86およびSEQ ID NO:87である。
この発明に従って用いるオリゴヌクレオチドは、よく知られた固相合成法により都合よく日常的に調製することができる。そのような合成のための装置は、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)を含む幾つかの販売者によって売られている。そのような合成のための他のいかなる手段も用いることができるが、オリゴヌクレオチドの実際の合成は充分に型どおりの仕事をする人の能力の範囲である。ホスホロチオエートやアルキル化誘導体などの他のオリゴヌクレオチドを調製するために同様の技術を使用することもよく知られている。
この発明によれば、当業者は、メッセンジャーRNAが3文字遺伝コードを用いてタンパク質をコードするための配列情報のみならず、5'非翻訳領域、3'非翻訳領域、および5'キャップ領域として当業者に知られる領域を形成する関連リボヌクレオチド、並びに種々の二次構造を形成するリボヌクレオチドをも包含することを理解するであろう。それゆえ、コードリボヌクレオチドと同様にこれら関連リボヌクレオチドの全体または一部を標的とするオリゴヌクレオチドをこの発明に従って処方することができる。好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは、HCVの5'末端ヘアピンループ、5'末端6塩基対繰り返し、ORF3翻訳開始コドン(すべて5'非翻訳領域中に含まれる)、ポリタンパク質翻訳開始コドン、コアタンパク質コード領域、3'非翻訳領域、R2領域、3'ヘアピンループまたは3'末端パリンドローム領域に特異的にハイブリダイズしうる。
HCVゲノムのサイズは約9400ヌクレオチドであり、その後プロセシングを受けて幾つかの構造または非構造タンパク質となるポリタンパク質をコードする単一の翻訳読み取り枠を有する。
HCVゲノムの幾つかの領域が、本発明においてアンチセンス標的として同定されている。配列の利用性およびヌクレオチドの番号付け方式は株毎に異なることに注意すべきである。HCVの5'非翻訳領域は、ポリタンパク質翻訳開始コドンの上流の約350ヌクレオチドからなる。ゲノム(HCV−1)の5'末端のヌクレオチド1〜22に存在するヘアピンループ(本明細書において「5'末端ヘアピンループ」として同定される)は、ウイルスレプリカーゼまたはヌクレオキャプシドタンパク質の認識シグナルとして機能していると思われる。ハン(Han)ら、Proc. Natl. Acad. Sci., 1991、88、1711〜1715。5'非翻訳領域は、ループA〜Fとして示される6つのステム−ループ構造を含む二次構造を有すると思われる。ループAはおよそヌクレオチド13〜50に存在し、ループBはおよそヌクレオチド51〜88に存在し、ループCはおよそヌクレオチド100〜120に存在し、ループDはおよそヌクレオチド147〜162に存在し、ループEはおよそヌクレオチド163〜217に存在し、ループFはおよそヌクレオチド218〜307に存在する。ツキヤマ−コハラ(Tsukiyama−kohara)ら、J. Virol., 1992、66、1476〜1483。これら構造は、2つの主要なHCVグループ間でよく保存されている。
3つの小さな(各12〜16アミノ酸)読み取り枠(ORF)が、HCV RNAの5'非翻訳領域中に位置している。これらORFは翻訳の制御に関与しているかもしれない。本明細書において示すORF3翻訳開始コドンは、ハンら(Proc. Natl. Acad. Sci.1991、88、1711〜1715)の方式によればヌクレオチド215〜217において認められ;チューら(Proc. Natl. Acad. Sci., 1991、88、2451〜2455)の方式によればヌクレオチド−127〜−125において認められる。
本明細書において示すポリタンパク質翻訳開始コドンは、ハンら(Proc. Natl. Acad. Sci., 1991、88、1711〜1715)によればHCV−1のヌクレオチド342〜344に位置し、チューら(Proc. Natl. Acad. Sci., 1991、88、2451〜2455)のHCV−1番号付け方式に従えばヌクレオチド1〜3に位置するAUG配列である。ポリタンパク質AUGから下流方向(3'末端の方へ)に広がるのは、コアタンパク質コード領域である。
本明細書において示す3'非翻訳領域は、ポリタンパク質翻訳終止部位(チューらによればヌクレオチド9037で終止し;ハンおよびインチャウスプ(Inchauspe)の方式によればヌクレオチド9377で終止する)の下流にあるヌクレオチドからなる。3'非翻訳領域内のゲノムの3'末端におけるヌクレオチド9697〜9716(HCV−Hに対するインチャウスプの番号付け方式)は、本明細書において3'ヘアピンループとして同定される安定なヘアピンループ構造に構成され得る。該3'ヘアピンのすぐ上流にあり(HCV−Hのヌクレオチド9691〜9696)本明細書において「R2配列」として示される短いヌクレオチドの広がり(R2)は、おそらくヌクレオチド23〜28および38〜43にある同じ配列の5'末端6塩基対繰り返しと共同してウイルスRNAの環形成において役割を有すると思われる(インチャウスプら、Proc. Natl. Acad. Sci., 1991、88、10292〜10296;本明細書で「5'末端6塩基対繰り返し」として同定される)。ゲノムの3'末端近くに存在するパリンドローム配列(タカミザワ(Takamizawa)ら(J. Virol., 1991、65、1105〜1113)によればヌクレオチド9312〜9342)は、安定な二次構造を形成することができる。これは、本明細書では3'末端パリンドローム領域と称する。
本発明において有用なオリゴヌクレオチドは、HCV RNAに相補的である。それゆえ、表1に配列を示したオリゴヌクレオチドがHCVに対して有用であると思われる。これらオリゴヌクレオチド、または上記のようにその有効な部分、またはHCV感染の調節のための好ましいアンチセンス標的に関する知見から当業者が調製することのできる同様なオリゴヌクレオチドのいずれを用いることも好ましい。
表1:HCVのRNA配列標的およびアンチセンスオリゴヌクレオチド[配列はHCV−1(米国)およびHCV−J(日本)からのもの]
Figure 0003803354
この発明のオリゴヌクレオチドは、診断、治療において、および研究試薬およびキットとして用いることができる。この発明のオリゴヌクレオチドはHCVからのRNAにハイブリダイズするので、この事実を探求するためにサンドイッチアッセイや他のアッセイを容易に構築することができる。HCVまたはHCV RNAを含有すると思われる試料中に存在するHCVまたはHCV RNAとのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出するための手段の提供も日常的に達成できる。そのような提供には、酵素の結合、放射性標識または他のあらゆる適当な検出系が含まれていてよい。HCVの存在または不在を検出するためのキットも調製することができる。
以下の特定の実施例は、例示の目的のためにのみ与えられるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
オリゴヌクレオチドの合成:
ヨウ素によって酸化する標準ホスホロアミダイト化学を用い、非修飾DNAオリゴヌクレオチドを自動DNA合成機(アプライド・バイオシステムズモデル380B)で合成した。β−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイトをアプライド・バイオシステムズ(フォスターシティー、カリフォルニア州)から購入した。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドについては、亜リン酸エステル結合の段階的硫黄化(thiation)のために標準酸化ボトルをアセトニトリル中の3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン1,1−ジオキシドの0.2M溶液で置換した。硫黄化サイクル待機(wait)工程を68秒まで延ばし、ついでキャッピング(capping)工程を行った。
2'−O−メチルオリゴヌクレオチドの合成は、テトラゾールおよび塩基のパルスデリバリー(pulse delivery)の後の待機工程を360秒に延ばした他は、2'−O−メチルβ−シアノエチルジイソプロピル−ホスホロアミダイト(ケムジェンズ(Chemgenes)、ニーダム、マサチューセッツ州)および非修飾オリゴヌクレオチドの標準サイクルを用いて行った。合成の開始に使用した3'−塩基は2'−デオキシリボヌクレオチドであった。
2'−O−プロピルオリゴヌクレオチドは、スプロート(B. S. Sproat)ら(Nucleic Acids Research 18:41〜49(1990))およびイノウエ(H. Inoue)ら(Nucleic Acids Research 15:6131〜6148(1987))によって記載された文献記載の方法の変法により調製した核酸塩基A、G、U(T)、およびCの2'−デオキシ−2'−O−プロピルリボシドから調製した。
CPG(controlled pore glass)カラム(アプライド・バイオシステムズ)から開裂し、濃水酸化アンモニウム中、55℃で18時間脱ブロッキングした後、2.5容量のエタノールを用いた0.5M NaClから2回沈殿させることによりオリゴヌクレオチドを精製した。分析的ゲル電気泳動を、20%アクリルアミド、8M尿素、45mMトリス−ホウ酸緩衝液(pH7.0)中で行った。
実施例2
遺伝子操作した細胞中でのHCV RNAの転写および翻訳:
哺乳動物細胞中でHCV遺伝子を発現しうる組換えDNAベクターを標準遺伝子工学法を用いて構築する。HCV mRNAまたはゲノム転写産物を示すcDNA断片を、HCV cDNAの転写が適当なヌクレオチド位置で始まるような仕方でマウス哺乳動物腫瘍ウイルスからのLTRなどの誘導性真核プロモーターの後ろに置く。該遺伝子の3'末端には適当なヌクレオチド位置で終止することを確実にするためにポリ(A)シグナルが導入されている。インフレームのレポータードメイン(たとえば、ホタルのルシフェラーゼ遺伝子の酵素的に活性なドメイン)の挿入によりコード配列を修飾するのが有利であるかもしれず、かかるレポータードメインは、融合タンパク質の発現の検出手順を簡単にすることができる。ベクターにはまた、ネオマイシン耐性などの1または2以上の選択遺伝子マーカーが含まれていてよい。
上記ベクターを標準塩化カルシウムトランスフェクション法を用いて哺乳動物細胞中に導入する。トランスフェクションしたDNAを含有する細胞は、ネオマイシンなどの選択剤の存在下で増殖させることによって同定され、限界希釈法によりクローニングする。クローニングしたトランスフェクション体中でのHCV RNAの発現は、ノーザンブロッティング、RNA複製連鎖反応またはヌクレアーゼ保護などの多くのアッセイの一つを用いて確かめることができる。タンパク質の発現は、ウエスタンブロッティングまたは特異的なHCV抗体を用いた免疫沈降を用い、またはアッセイしうるレポータードメインの導入の結果得られる検出可能な酵素活性の存在についてモニターすることにより確かめることができる。MMTV LTRなどの誘導性プロモーターを用いてベクターを構築した場合には、遺伝子発現を誘導するためにアッセイ前にトランスフェクションした細胞にデキサメタゾンなどのグルココルチコイドインデューサーを添加すべきである。
実施例3
遺伝子操作した細胞からのHCV遺伝子発現に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害の評価:
実施例2に記載したものなどの発現ベクターでトランスフェクションした哺乳動物細胞を、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する培地中で一夜インキュベートする。オリゴヌクレオチド処理の後、HCV遺伝子産物の発現を誘導するために細胞をデキサメタゾンで処理する。適当なインキュベーション期間(4〜24時間)の後、細胞を回収し、特定のHCVポリペプチドの発現を、ウエスタンブロッティングにおいて特異的な抗血清を用いて免疫学的にまたは免疫沈降アッセイにより検出することができる。HCVポリタンパク質にインフレームで融合したホタルのルシフェラーゼなどのようなレポータードメインを含むベクターを細胞が含有している場合には、細胞抽出物を回収し、該レポータードメインの酵素活性について評価することができる。
実施例4
細胞質ウイルスベクターからのHCV RNAの転写および翻訳:
HCV mRNAまたはゲノム転写産物を表示するcDNA断片を、該HCV cDNAの転写が適当なヌクレオチド位置で開始されるような仕方でワクシニアウイルスプロモーターの後ろに置く。該遺伝子の3'末端には、適当なヌクレオチド位置での終止が確実となるように、ポリ(A)シグナルを導入する。幾つかの場合にはインフレームのレポータードメイン(たとえば、ホタルのルシフェラーゼ遺伝子の酵素的に活性なドメイン)の挿入によりコード配列を修飾するのが有利であり、該レポータードメインは、融合タンパク質の発現のための検出手順を簡単にすることができる。
ワクシニアなどの細胞質複製性DNAウイルスのゲノム中への発現ユニットの導入は、該発現ユニットの上流および下流に該ワクシニアウイルスゲノムに相同な配列を含めることによって容易になる。ワクシニアウイルス感染した哺乳動物細胞中へのコトランスフェクションの結果、ワクシニアとのベクターの相同組換えが起こり得る。該ウイルス中の適当な組換え部位にβ−ガラクトシダーゼなどの適当な酵素マーカーが存在しておれば、適当な基質条件下での発色の欠如により組換えプラークを同定することができる。クローニングしたウイルスは適当な宿主哺乳動物細胞株中で増殖し、HCV遺伝子産物の発現は実施例2と同様にして確かめることができる。
実施例5
哺乳動物細胞中での細胞質ウイルスベクターからのHCV遺伝子の発現に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害の評価:
哺乳動物細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する培地中で一夜インキュベートする。オリゴヌクレオチド処理の後、HCV遺伝子産物を発現する組換えワクシニアウイルスで細胞を感染させる。適当なインキュベーション期間(4〜24時間)の後、細胞を回収し、特定のHCVポリペプチドの発現をウエスタンブロッティングにおいて特異的な抗血清を用いてまたは免疫沈降アッセイにより免疫学的に検出することができる。HCVポリタンパク質にインフレームで融合したホタルのルシフェラーゼなどのようなレポータードメインを含むベクターを細胞が含有している場合には、細胞抽出物を回収し、該レポータードメインの酵素活性について評価することができる。
実施例6
HCV遺伝子でトランスフェクションしたまたはHCV遺伝子を発現する細胞質ウイルスベクターを感染させた細胞におけるHCV粒子集合に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害の評価:
HCVゲノムRNAおよびタンパク質は、HCV cDNA発現ベクターでトランスフェクションした細胞中、またはHCV cDNAを発現するワクシニアウイルスベクターを感染させた細胞中で発現される。RNAゲノムおよびタンパク質は会合してHCV様粒子を形成するであろうと思われる。これら粒子の存在は、電子顕微鏡を用いて確かめることができる。粒子集合に対する該ウイルスRNAの推定パッケージングシグナルに相補的なオリゴヌクレオチドの効果を評価するため、HCV核酸とタンパク質との両方を含有する細胞外粒子の出現を測定するための特定の生化学的アッセイを開発することができる。
実施例2に記載したような発現ベクターでトランスフェクションした哺乳動物細胞を、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する培地中で一夜インキュベートする。オリゴヌクレオチド処理の後、HCV遺伝子産物の発現を誘導するために細胞をデキサメタゾンで処理する。適当なインキュベーション期間(4〜24時間)の後、処理細胞からの細胞外流体を回収し、超遠心分離でペレット化することにより粒子を濃縮する。タンパク質および核酸をペレットから抽出し、実施例4および5に記載するように、それぞれノーザンブロッティング分析およびウエスタンブロッティング分析により定量する。HCVポリタンパク質を発現する組換えワクシニアウイルスによる細胞の感染の結果としてのウイルス粒子の集合に対するオリゴヌクレオチド処理の効果をモニターするためにも、同様の手順を用いることができた。
実施例7
インビトロ翻訳アッセイによるオリゴヌクレオチドのスクリーニング:
1.インビトロでの翻訳に用いるためのHCV RNAの調製:
HCV遺伝子ヌクレオチド配列の塩基番号1〜686に相同な配列を有するRNAを以下の仕方で調製した。その際、終止コドン(TGA)を3'末端に付加した。
(1)複製連鎖反応(PCR)のための鋳型HCV−cDNAの調製:
C型肝炎の日本人患者の血清からクローニングすることにより本発明者らが調製したcDNAヌクレオチド配列(該cDNAは、おそらく完全長のHCVアミノ酸配列をコードすると思われる)に基づき、HCV遺伝子の完全長の5'非翻訳領域(341ヌクレオチド配列)とそれに続くコア領域(345ヌクレオチド配列)を含む686ヌクレオチド配列を含有するcDNAを公知方法によりクローニングし、該クローンを下記(3)のPCR手順の鋳型として用いた。このcDNA配列のヌクレオチド番号は、ハンらのヌクレオチド番号(Proc. Natl. Acad. Sci., 1991、88、1711〜1715)とよく対応することがわかった。
(2)PCRのためのプライマーの調製:
EcoRI開裂部位を含む7塩基、T7プロモーターとしての機能を有する20塩基およびHCVヌクレオチド配列の14塩基(ヌクレオチド番号1〜14)を5'末端からこの順序で含有する41ヌクレオチド配列を含むセンスプライマー、およびEcoRI開裂部位を含む9塩基、終止コドン(TGA)に相補的な3塩基およびHCVヌクレオチド配列の塩基番号672〜686の領域に相補的な15塩基を5'末端からこの順序で含有する27ヌクレオチド配列を含むアンチセンスプライマーを、サイクロンプラスDNA合成機(ミリジェン/バイオサーチ(MilliGen/Biosearch)製)を用いて固相ホスホアミダイト法により調製した。
(3)PCRによるRNAの合成のための鋳型DNAの調製:
上記(1)で得たcDNAを鋳型として用い、上記(2)のプライマーを用いてPCR(20サイクル)を行った。PCRは、変性:94℃で1分間、アニーリング:55℃で2分間、ポリメラーゼ反応:72℃で2分間の条件で行った。かくして得られたDNA断片をEcoRIで処理し、pUC19のEcoRI部位に挿入し、得られた組換えプラスミドで大腸菌JM109株を常法により形質転換した。かくして得られたコロニー中の複数のクローンに関して組換えプラスミドが挿入された部分をジデオキシ法によりシークエンシングすることにより、すべてのクローンからのプラスミドにより挿入されたHCV由来の686ヌクレオチド配列が鋳型cDNAの対応領域とよく適合することが確認された。これらクローンの一つから得られたプラスミドを「pUIA1」と称した。
(4)HCV遺伝子のヌクレオチド配列の一部を有するRNAの調製:
pUIA1をEcoRIで処理することにより上記ヌクレオチド配列が挿入された断片をpUIA1から取り出し、該断片を鋳型として用いることにより、MEGAscript インビトロ転写キット(アンビオン(Ambion)製)でRNAを合成し、それにより、HCVヌクレオチド配列の1〜686ヌクレオチド配列部分、終止コドン(UGA)およびEcoRI開裂部位を含む9塩基を5'末端からこの順序で含有する698ヌクレオチド配列を有するRNA断片を得た。この断片を「R−IA−1」と称した。該R−IA−1中のHCV由来の686塩基のヌクレオチド配列を添付の図1に示す。
2.無細胞翻訳系におけるHCVコアタンパク質の合成:
ウサギ網状赤血球溶解液を用いることにより、HCVコアタンパク質をR−IA−1から無細胞系において翻訳し、発現をELISAにより以下のようにして確認した。
(1)HCVコアタンパク質の定量的決定のためのELISA系の構築:
HCVのコア領域を常法により大腸菌中で直接発現させた。かくして得られた発現タンパク質でマウスを免疫し、常法で処理することにより2種のモノクローナル抗体(RJC4−1(IgMタイプ)およびRJC4−2(IgGタイプ))を得た。該モノクローナル抗体RJC4−1を10mM PBSで希釈し、希釈したRJC4−1(濃度50μg/ml、50μl)をマクシソープ(MaxiSorp)F8プレート(ヌンク)の各ウエルに加え、4℃で一夜放置することにより固定し、その後、ウエルから吸入することにより残留する抗体溶液を除去した。1%ウシ血清アルブミンを含有するPBS(150μl)を各ウエルに加え、4℃で一夜放置して抗体のブロッキングを行い、ついで洗浄に供した。ウサギ網状赤血球抽出物を用いて上記で調製した試験すべきコアタンパク質を、1%ウシ血清アルブミンを含有するPBSで適当な濃度に希釈し、希釈したコアタンパク質(50μl)を各ウエルに加え、混合物を室温にて2時間反応させ、ついで洗浄に供した。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合した抗体RJC4−2(50μl)を各ウエルに加え、混合物を37℃で1時間反応させ、ついで洗浄に供した。最後に3,3',5,5'−テトラメチルベンジジンの水溶液(50μl)を各ウエルに加え、混合物を室温で15分間反応させ、ついで反応液を1N硫酸で冷却した。直ちに反応混合物の吸光度を450nmで測定した。その結果、HCVコアタンパク質はELISAにより定量的に測定できることがわかった。
(2)ウサギ網状赤血球溶解液を用いたHCVコアタンパク質の発現:
TE(10μl)中のR−IA−1(20ピコモル)の溶液およびRNAを含有しないTE(10μl)をそれぞれメチオニンの水溶液(2μl)(メチオニンの最終濃度、10μM)と混合した。各混合物(12μl)にウサギ網状赤血球溶解液(インビトロトランスレーションキット、ストラタジーン(STRATAGENE)製、20μl)を加え、混合物を30℃で2時間インキュベートした。反応混合物を倍希釈し、ついでコアタンパク質をELISAにより定量的に測定した。その結果、HCVコアタンパク質は陽性コントロールでは合成されるが陰性コントロールではHCVコアタンパク質が認められないことが確認された。
3.アンチセンス化合物の標的領域の探索:
HCVコアタンパク質のインビトロでの翻訳を阻害する能力について、5'非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドを以下のようにしてスクリーニングした。
(1)合成アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドの合成:
実施例1と同様の固相ホスホアミダイト法により(「IA−」と表示するオリゴヌクレオチド)またはサイクロンプラスDNA合成機(ミリジェン/バイオサーチ製)(「CAS−」と表示するオリゴヌクレオチド)を用い、アンチセンスオリゴヌクレオチドを調製した。かくして得られた生成物をフェノール処理し、エタノール沈殿に供した。この沈殿を以下の手順に用いるために10mMトリス−HCl(pH8.0)−1mM EDTA溶液に溶解した。
上記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さがそれぞれ20ヌクレオチドであった。各配列を称するのに用いる「CAS−」または「IA−」番号は、添付の図1に示す対応HCV RNA標的配列の最も5'側のヌクレオチドの番号を示す。
(2)アンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害活性の評価:
R−IA−1(20ピコモル)および試験しようとするアンチセンスDNA(100ピコモル)をTE(最終容量、10μl)中で混合し、混合物を室温で10分間放置した。この溶液に10mMメチオニン水溶液(2μl)を加え、この混合物(12μl)にさらにウサギ網状赤血球溶解液(インビトロトランスレーションキット、ストラタジーン製、20μl)を加え、混合物を30℃で2時間インキュベートした。反応完了後、反応混合物で製造されたコアタンパク質をELISAにより定量的に測定し、アンチセンスDNAを含有しないTEで製造されたコアタンパク質の量に対する該反応混合物中のコアタンパク質の量の比を計算した。阻害活性(%)は、上記で得た比を1から差し引き、得られた結果をパーセントで表示することにより計算した。
(3)HCVの増殖の阻害に有効な標的領域のスクリーニング:
HCV RNAの5’非翻訳領域中のヌクレオチド1〜339から10ヌクレオチド間隔で位置する標的配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成した。CAS−1からCAS−320までのこれらオリゴヌクレオチドの配列を表2に示す。
表2:HCVに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド
Figure 0003803354
HCVインビトロコアタンパク質翻訳アッセイを用い、これらアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害活性を試験した。ループCの部分に相補的なオリゴヌクレオチドCAS−110は80%以上の阻害を起こし、最も好ましい。これらの結果を図2に示す。
(4)塩基番号100〜130付近での一層詳細な分析:
HCV RNAのヌクレオチド100〜140(ループC領域を含む)からの領域に相補的なオリゴヌクレオチドをさらに合成し、上記と同様に試験した。これらオリゴヌクレオチドを表2に示す。図2に示すように、オリゴヌクレオチドCAS−104、CAS−106、およびCAS−108はHCVコアタンパク質翻訳をインビトロで70%またはそれ以上阻害し、好ましい。ヌクレオチド104〜129からのHCV RNAの26塩基領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5'非翻訳領域の他の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドに比べてHCV−RNAの翻訳に対して強い阻害活性を示した。それゆえ、この領域とハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドが好ましい。
(5)塩基番号119がイノシンで置換されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの評価:
ループC領域中の位置119にあるヌクレオチドはHCV株間で高い変異率を示すので、この位置のアデノシンを「普遍塩基」イノシンで置換した種々のアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、これら置換オリゴヌクレオチドが種々のウイルス株の阻害に有効かどうかを以下のようにして評価した。
CAS−110のヌクレオチド配列のうち、ヌクレオチド番号119のアデノシンに対応するチミジンをイノシンで置換してCAS−110−I−119を得た。参照のため、該チミジンをグアノシンで置換して人工的なミスマッチを作製したCAS−110−G−119も調製した。これらの配列を表2に示す。これらオリゴヌクレオチドの阻害活性を上記のようにして評価した。その結果、CAS−110−I−119はCAS−110と同様に70%以上の阻害活性を示したが、CAS−110−G−119は遥かに低い活性を示した。それゆえ、CAS−110−I−119が好ましい。この結果から、チミジンをイノシンで置換することにより得られる化合物は、位置119のアデノシンが他のヌクレオチドで置換された他のウイルス株に対しても有効であると思われる。
(6)2'−O−メチルアンチセンスオリゴヌクレオチドの評価:
アンチセンスオリゴヌクレオチドの標的配列に対する結合アフィニティーは、該アンチセンスオリゴヌクレオチド中の糖残基の2'−位のメトキシ化により高められる。表2に示す配列を有する2'−O−メチル化オリゴヌクレオチド(イノシンで置換された2つのもの以外に)を調製し、その阻害活性を評価した。たいていの場合、2'−O−メチル化オリゴヌクレオチドは非修飾の対応物と阻害活性が同様であった。幾つかのオリゴヌクレオチド(CAS−80、CAS−360)では2'−O−メチル化したときに活性が落ちるように思われるが、ループFにハイブリダイズするCAS−260は2'−O−メチル化したときに有意に活性が上昇したと思われ、75%以上の阻害を示した。それゆえ、この配列が好ましい。幾つかの試験したオリゴヌクレオチドの活性を図3に示す。
実施例8
ポリタンパク質翻訳開始コドンの周辺にありコアタンパク質コード領域に隣接するヌクレオチド配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害活性の評価:
(1)HCV−RNAの翻訳開始コドン(ヌクレオチド番号342〜344)の周辺にありコアタンパク質コード領域に隣接するヌクレオチド配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害活性を評価するため、ヌクレオチド320からヌクレオチド379の領域に相補的な一連の20merのアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製した。これらのうち、CAS−324〜CAS−344は、AUG終止コドン自体に相補的な配列CATのすべてまたは一部を含有している。これらアンチセンスオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を下記表3に示す。
表3:HCVに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド
Figure 0003803354
これら21のアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害活性を、40ピコモルのアンチセンスオリゴヌクレオチド濃度にて上記と同様の仕方で評価した。表3に示すように、アンチセンスオリゴヌクレオチドCAS−328、CAS−336、CAS−338、CAS−340、CAS−342、CAS−344、CAS−346、CAS−348、CAS−350、CAS−352、CAS−354、CAS−356、CAS−358およびCAS−360は70%以上の阻害活性を示し、好ましい。これらのうち、CAS−336、CAS−338、CAS−340、CAS−342、CAS−344、CAS−346、CAS−348、CAS−350およびCAS−352は95%以上の極めて高い阻害活性を示し、最も好ましい。これらのうち、CAS−346〜CAS−360は、翻訳開始コドンのすぐ隣のコアタンパク質コード領域にハイブリダイズするがAUG自体には相補的ではなく、それでも極めて高い阻害活性を示した。一方、6つのアンチセンスオリゴヌクレオチドCAS−324、CAS−326、CAS−328、CAS−330、CAS−332、およびCAS−334は翻訳開始コドンに相補的であるが、上記9つの最も活性なアンチセンス配列よりも低い阻害活性を示した。
上記9つの最も活性なアンチセンスオリゴヌクレオチドに相補的なHCV標的配列領域は、ポリタンパク質翻訳開始コドンの近くのコアタンパク質コード領域中に番号352〜355の4つのヌクレオチドを共通に有する。それゆえ、翻訳を阻害するにはこれら4つの塩基ユニットを含ませることが有用であると示唆される。従って、配列GGATを含むオリゴヌクレオチドは本発明の好ましい態様である。
(2)株間で変異することが知られているヌクレオチドをイノシンで置換したアンチセンスオリゴヌクレオチドの評価:
翻訳開始コドンの近くのコアタンパク質コード領域中のヌクレオチド配列で、株間の変異がヌクレオチド350、351、352、356および362でしばしば起こることが知られている。この知見に基づき、これら塩基を「普遍塩基」イノシンで置換することが種々のウイルスの阻害に有効であるかどうかを研究した。
CAS−344中の塩基番号350の塩基をイノシンで置換することによりアンチセンスDNAを調製し、これをCAS−344−i1と称した。同様に、塩基番号350、356および362の3つの塩基をイノシンで置換することによりアンチセンスDNAを調製し、CAS−344−i3と称し、塩基番号350、351、352、356、および362の5つの塩基をイノシンで置換することによりアンチセンスDNAを調製し、CAS−344−i5と称した。これらオリゴヌクレオチドの阻害活性を上記(1)と同様にして評価した。その結果、CAS−344−i1およびCAS−344−i3は高い阻害活性を示し、配列CAS−344のおよそ3つまでのイノシン置換を有するオリゴヌクレオチドは高い阻害活性を示すことが示唆された。これらのオリゴヌクレオチドは好ましい。これらの阻害活性は表3に示してある。
実施例9
HCVコアタンパク質発現細胞中でのアンチセンスDNAの評価:
(1)ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの調製:
配列CAS−110、CAS−260、およびCAS−344がホスホジエステル(P=O)としてインビトロ翻訳試験において高い阻害活性を示したので、対応するホスホロチオエート(P=S)オリゴヌクレオチドを調製した。これらオリゴヌクレオチドは、「CAS−110S」、「CAS−260S」などのように、各親オリゴヌクレオチドの名前の後に「S」を付加することにより称した。陰性コントロールとして、ランダム配列を有するオリゴヌクレオチドを調製した。
(2)肝細胞形質転換体の調製:
発現プラスミドの調製は、HCV遺伝子の5'NCR−コア−env領域をコードする遺伝子(1.3kbp)を挿入することにより常法により行った。
かくして調製した発現プラスミドを、リポフェクチン法によりヒト肝細胞株(H8Ad17)中にトランスフェクションした。該発現プラスミド中に挿入した化学耐性マーカー遺伝子(G418)に基づいて化学耐性株を選択し、それにより、HCVコアタンパク質を発現する所望の肝細胞形質転換体が得られた。
(3)肝細胞形質転換体によって発現されたコアタンパク質の検出系:
抗HCVコア−マウスモノクローナル抗体を固相抗体として;抗HCVヒトポリクローナル抗体を一次抗体として;およびHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合抗ヒトIgGマウスモノクローナル抗体を二次抗体として用い、肝細胞形質転換体によって発現されたコアタンパク質をELISA法により検出した。この検出系を用いることにより、肝細胞形質転換体によって発現されたコアタンパク質を測定した。
(4)アンチセンスオリゴヌクレオチドの評価:
肝細胞形質転換体(2.5×105細胞)を6−ウエルプレート上に接種し、細胞を固定した。各プレートに上記で得た5つのアンチセンスオリゴヌクレオチド(各濃度は5μM)を加えた。2日後、細胞を回収し、カウントした。細胞を1回洗浄し、細胞溶解剤で溶解し、ついで阻害活性をELISA法により測定した。
阻害率0%がアンチセンス化合物を添加しなかった場合のコアタンパク質の量に対応するとして、上記5つのP=Sアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害活性を計算した。その結果、CAS−110S、CAS−260S、CAS−344SおよびCAS−345Sのすべてがこのインビボアッセイにおいて約30〜45%の阻害活性を示した。これらアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞毒性についても調べた。その結果、これらアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれにおいても細胞毒性は認められなかった。
実施例10
改変インビトロコアタンパク質翻訳アッセイにおけるオリゴヌクレオチドの評価:
T7−HCV−コア−env融合プラスミドを構築することにより、実施例7に記載したアッセイを改変してPCR増幅工程を省いた。HCVの5'非コード領域−コア配列を含有するHindIII−BamHI断片をプラスミドpGEM4Z中に挿入してT7発現プラスミドを構築した。得られたプラスミドをBamHIで線状にし、T7RNAポリメラーゼで転写した。35S−標識したインビトロ翻訳産物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。翻訳アッセイに用いるT7RNA転写産物の最適量は、反応当たり約2.2ピコモルのRNAと決定した。異なるサイズのHCV RNAのインビトロ翻訳によっても、期待されるサイズの生成物が得られた。
実施例7に記載したようにしてすでに評価したものと等価ないくつかのホスホジエステル(非修飾)オリゴヌクレオチドを改変インビトロ翻訳アッセイで評価した。オリゴヌクレオチドを再合成し、20:1のモル比で試験した。図4に示すように、オリゴヌクレオチドIA−80、IA−110、IA−140およびIA−360(それぞれ、すでに試験したCAS−80、CAS−110、CAS−140およびCAS−360と同じ;「IA」または「CAS」なる接頭辞は異なる装置で合成した異なるロットを示す)は、上記実施例に記載したものに匹敵する活性を改変アッセイにおいて示した。オリゴヌクレオチドIA−140、IA−260およびIA−300(上記で試験したCAS−140、CAS−260およびCAS−300配列と同じ)は、このアッセイでは良好な阻害を示さなかった。IA−110およびIA−360は最良の活性を示し、IA−80配列もこのアッセイにおいて阻害を示したが、このオリゴヌクレオチドで認められた阻害の程度はアッセイで使用したRNA鋳型の影響を受けた。
2'−O−メチル修飾を有するオリゴヌクレオチド:
上記で非修飾ホスホジエステル(P=O)化合物として試験したオリゴヌクレオチド配列を均一な2'−O−メチル/P=Oとして合成し、改変インビトロ翻訳アッセイにおいて試験した。結果を図5に示す。オリゴヌクレオチドIA−110、112、260、325および340は、P=Oオリゴヌクレオチドで得られた上記結果と一致する阻害活性を示し、好ましい。もともとのアッセイ系を用いて認められたように、オリゴヌクレオチド260は、非修飾ホスホジエステルとしてよりも2'−O−メチル/P=O形態において一層活性であった。
ループC配列に相補的な均一に2'−O−メチル化したホスホジエステルオリゴヌクレオチドのパネルを修飾インビトロ翻訳アッセイを用いて評価し、最大の阻害活性を有するオリゴヌクレオチドを同定した。ポリタンパク質開始コドン領域に相補的な2'−O−メチル化ホスホジエステルオリゴヌクレオチドの第二のパネルについても試験した。これらアッセイの結果を図5および6に示す。これら結果から、ループC(ヌクレオチド110の周辺)およびポリタンパク質翻訳開始コドン(ヌクレオチド340の周辺)に相補的でコアタンパク質コード領域に隣接するアンチセンスオリゴヌクレオチドが良好な阻害活性を示すことが確認された。そのようなオリゴヌクレオチドが好ましい。
ホスホロチオエート(P=S)オリゴヌクレオチドの評価:
ともに2'−O−メチル修飾したホスホロチオエートオリゴヌクレオチドIA−110およびIA−340を改変インビトロ翻訳アッセイを用いて評価した。ホスホロチオエート(P=S)、ホスホジエステル(P=O)、2'−O−me/P=Sおよび2'−O−me/P=Oオリゴヌクレオチドの阻害活性の比較も行った。ランダム化したオリゴヌクレオチド(P=S R、2'−O−Me/P=S R、2'−O−Me/P=O R)もアッセイに含めて特異性を調べた。すべてのIA−110オリゴヌクレオチドが、修飾にもかかわらずHCVコアタンパク質の翻訳を阻害する同様の能力を示した。ランダム化した110配列も匹敵しうる阻害活性を示したが、この配列中の20ヌクレオチドのうち13がGであったのでランダム化は絶対的なものではなかった。ランダム化した340オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドに比べてかなり低い阻害活性を示したので、オリゴヌクレオチド340はHCVコアタンパク質の翻訳に対して配列特異的な阻害を示した。P=O、2'−O−Me/P=Oまたは2'−OMe/P=Sオリゴヌクレオチド(340配列)は、図7に示すように、HCVコアタンパク質の翻訳に対して同様のほぼ完全な減少(濃度依存性である)を示した。
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは上記アッセイにおいてインビトロ翻訳のある程度非特異的な阻害を示す傾向があるので、幾つかのホスホロチオエートをアッセイにおいて再スクリーニングし、その際、インビトロ翻訳の前にRNアーゼH処理を行った。2.2ピコモルのRNA、4.4ピコモルのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび0.23単位のRNアーゼHを、RNアーゼH緩衝液(40mMトリスHCl、pH8.0、20mM MgCl2、200mM KCl、および10%ショ糖からなる)中で全容量4μlに混合した。37℃で30分間反応を行った。インビトロ翻訳およびSDS−PAGEを上記実施例と同様にして行った。RNアーゼHは、オリゴヌクレオチドが標的RNAとハイブリダイズしている場合にのみ活性化されて該標的RNAを開裂する。P=OおよびP=Sの両方のオリゴヌクレオチドがRNAのRNアーゼH開裂を活性化することができるが、2'−O−メチルオリゴヌクレオチドは活性化することができない。開裂されたRNAはタンパク質に翻訳されない。それゆえ、このアッセイにおける翻訳の阻害は、オリゴヌクレオチドが標的RNAに首尾よく結合したことを示していた。ランダム化したP=Sコントロール配列はこのアッセイにおいて活性を示さず、これら配列がRNA標的に結合しないことを示していた。結果を図8に示す。
実施例11
2'−O−プロピルおよび他の別のオリゴヌクレオチド:
表4に示すP=S、P=Oおよび2'−修飾したオリゴヌクレオチドをさらに合成した。2'−O−プロピルオリゴヌクレオチドを修飾インビトロ翻訳アッセイにおいて試験し、同じ配列を有する2'−O−メチルオリゴヌクレオチドと比較した。図9に示すように、殆どの場合において、2'−O−プロピルオリゴヌクレオチドは2'−O−メチル対応物とおよぼ同じ程度にHCVコアタンパク質の翻訳を阻害した。最も活性な配列はIA−110、IA−260およびIA−340であった;これらは本発明の好ましい態様である。IA−340の場合は、2'−O−プロピルオリゴヌクレオチドは2'−O−メチル態様よりも高い阻害活性を有していた。
Figure 0003803354
Figure 0003803354
全5'−非翻訳領域(ヌクレオチド1〜341)および145−ヌクレオチドのコア領域配列を含むヌクレオチド1〜686の配列である。
HCV RNAのヌクレオチド1〜350からの領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドによる、HCVコアタンパク質翻訳の阻害を示す棒グラフである。
2'−O−メチル化したアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび同配列の選択した非修飾オリゴヌクレオチドによる、HCVコアタンパク質翻訳の阻害を示す棒グラフである。
インビトロにおけるHCVコアタンパク質翻訳に対するオリゴヌクレオチドIA−80、IA−110、IA−140、IA−260、IA−300およびIA−360の阻害活性を示すオートラジオグラフである。
HCV RNAのヌクレオチド1〜371からの領域に相補的なオリゴヌクレオチドによる、改変インビトロ翻訳アッセイにおけるHCVコアタンパク質翻訳の阻害を示す棒グラフである。
ループC領域およびAUGコドン/コアタンパク質コード領域の周辺の2'−O−メチル/P=OアンチセンスオリゴヌクレオチドによるHCV翻訳の阻害を示す棒グラフである。
IA−340のP=O、P=S、P=O/2'−O−MeおよびP=S/2'−O−Me態様による、HCVコアタンパク質翻訳の用量依存性の阻害を示す折れ線グラフである。
RNアーゼHで処理した後のインビトロ翻訳アッセイによる、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのスクリーニングの結果を示す棒グラフである。
2'−O−プロピルオリゴヌクレオチドおよび2'−O−メチルオリゴヌクレオチドの阻害活性を示す棒グラフである。

Claims (6)

  1. HCVゲノムRNAまたはメッセンジャーRNAの少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を有し、該RNAとハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドであって、SEQ ID NO:33SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:81、SEQ ID NO:82SEQ ID NO:85、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:87、SEQ ID NO:88、SEQ ID NO:89、SEQ ID NO:90、SEQ ID NO:91SEQ ID NO:94、SEQ ID NO:95およびSEQ ID NO:96よりなる群から選ばれたヌクレオチド配列からなることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
  2. 化学的に修飾した化合物である請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
  3. 少なくとも一つのホスホロチオエート結合を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
  4. すべてのインターヌクレオシド結合がホスホロチオエート結合である、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
  5. 少なくとも一つの糖残基の2'位に−O−アルキル修飾を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
  6. 該−O−アルキル修飾が−O−メチルまたは−O−プロピル修飾である請求項5に記載のオリゴヌクレオチド。
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