本発明に係る無線通信システムの幾つかの好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
実施例を説明するに先立って本発明の基本概念を図1のブロック図を用いて説明する。
この発明に係る無線通信システムは、それぞれが所定のサービスエリアを分担する複数の基地局と、前記所定のサービスエリア内を移動可能な複数の端末と、を備えており、図1に示すように、個々の端末1と個々の基地局5との間に設定され端末1から基地局5に対して所定の情報を無線伝送するためのアップリンク回線4と、個々の端末1と個々の基地局5との間に設定され基地局5から端末1に対して所定の情報を無線伝送するためのダウンリンク回線8とを有している。
前記端末1は、前記アップリンク回線4を介して前記基地局5に対し相対的に低速の伝送速度で無線信号を送信する低速送信手段2と、前記ダウンリンク回線8を介して前記基地局5から相対的に高速の伝送速度で送られてきた無線信号を受信する高速受信手段3と、を備えている。
前記基地局5は、前記ダウンリンク回線4を介して前記端末1から相対的に低速の伝送速度で送信されてきた無線信号を受信する低速受信手段6と、前記ダウンリンク回線8を介して前記端末1に対し相対的に高速の伝送速度で無線信号を送信する高速送信手段7と、を備えている。なお、符号9は低速送信手段2と高速受信手段3とを含む端末側送受信部である。
次に、個別の実施例を順次説明する。まず、図2に示すように、第1実施例は端末(個人の所持する個人用携帯電子装置)1との通信において、(中継)基地局5から電子装置1へのダウンリンク8に広帯域信号を伝送し、電子装置1から中継基地局5へのアップリンク4には狭帯域の信号を伝送するような通信形態に用いられる。ダウンリンク8に広帯域を用いるのは画像を含む通信や、音声、ファイル編集、情報配布・広報、放送等であり、その場合のアップリンク4に用いるのはダウンリンク8を制御する情報や、チャネルの選択、マルチメディアの場合は、メディアの選択の制御信号、音声等である。
図2において、個人用携帯電子装置(端末)1は、回線4及び8を介して基地局5との間でデータの送受信を行なうものであり、その構成は、送受信部9と、この送受信部9との間で受信されたデータ及び送信すべき制御信号を処理する信号処理部10と、送信用制御信号を入力する入力部13と、伝送されてきたデータを出力する出力部16と、を備えている。信号処理部10は、送信すべきデータについてA−D変換及び符号化等を行ない受信されたデータについてD−A変換及び復号化処理等を行なうプロセッサ11と、処理すべきデータを一時的に記憶しておくメモリ12と、より構成されている。入力部13は制御情報を入力するための例えば10キー等のキーボード14と、音声を入力するマイク15と、を備え、出力部16は、伝送されてきたデータに関する音声を出力するスピーカ17と文字等の情報を表示するディスプレイ18とを備えている。
第2実施例に係る無線通信システムは、図3に示すように、放送と通信とが融合した例えば同報通信の分野に適用される。その場合、個人が所有する電子装置でも放送信号が受信可能となろう。その様な場合には、電子装置のユーザの要求に応じて中継基地局5は、複数の放送信号の内の一つを選んで電子装置1に送信する。ところで、今後の電子装置1は、放送で受け取った情報を自分の好きなように加工・利用する。この時、電子装置の要求に応じてその情報を中継基地局に記憶し、それを後述するように加工してもよい。図3は第2実施例の一例を示すものである。
上記のような無線通信システムにおける中継基地局5は、図3に示されるように、回線4及び8を介して電子機器1との間でデータの送受信を行なう送受信部20と、放送等により受信されたデータを加工・利用のために信号処理する信号処理部25と、CATV又は加入者光ケーブル又はATM網等の有線網を介して伝送されてきた情報信号を受入れる有線網終端装置28と、を備えている。送受信部20は、電子装置1からアップリンク4を介して送られてきた制御信号を受入れて伝送すべきデータをアンテナを介して電子装置1側へ出力する共用器21と、受信された無線周波数(RF)信号を所定の周波数信号に変換する受信部(Rx)22と、伝送すべきデータをRF信号に変換する送信部(Tx)23と、を含んでいる。信号処理部25は、チャンネルのデータのうちから有線網終端装置28を介して入力された種々の電子装置1のユーザの要求に応じてチャンネルを選択して所望のデータを電子装置1に伝送するための信号処理を行なうプロセッサ26と、前記ユーザの要求に応じて所望のデータを記憶しておくメモリ27と、を備えている。
なお、第2実施例においては、電子装置は個人用でなくてもよい。即ち、家庭用のように何人かの人で共用しても構わない。特に図4に示すように、中継基地局5は電柱などに取り付けられたもので、そこには光ケーブルや同軸ケーブル等で情報が伝送されてくる。家庭や車に取り付けられた電子装置1には、家庭用で用いるコードレス電話の基地局やテレビセット、VTR、家庭用ワークステーション等が接続されていてもよい。この場合、これらの宅内機器の要求に従って、電子装置1は中継基地局5に、伝送を要求する情報とそれを蓄積するか否かといった情報を伝送する。それに従って中継基地局5は情報を選択し、場合によっては蓄積しつつ電子装置1に伝送する。
第3実施例は人間が発生させる情報量が見掛け上大きく見えるときに受信した情報に加工を加えてそれをさらに再送信する場合に適用される。この第3実施例の一つを図5に示す。中継基地局5、情報量増大サーバ30、通信相手のサーバ31、情報発信源データベース32などはLANやMAN或いはATM網といったネットワーク33で相互接続されている。情報発信源データベース32は情報Aを中継基地局5によりダウンリンク8を介して電子装置1に伝送する。それと共に情報Aは情報量増大サーバ30にも伝送されている。電子装置1はその情報Aを加工する加工演算子α(x)と追加情報βを発生させる。ここで、電子装置1は加工演算子α(x)と追加情報βとをアップリンク4を介し中継基地局5経由で情報量増大サーバ30へ伝送する。この演算子や追加情報の持つ情報量は電子装置1のユーザである人間の発生する情報であり、この容量は少ない。情報量増大サーバ30では情報Aを加工演算子α(x)と追加情報βで加工し、α(A)+βを作成し、それをサーバ31に伝送する。情報量増大サーバ30は加工して得られた情報α(A)+βを中継基地局5Aを介して電子装置1Aに送って、電子装置1Aのディスプレイ18(図2参照)に表示してもよく、また電子装置内1でα(A)+βを作りディスプレイ18に表示してもよい。
上記第3実施例で説明したように、人間が発生させる情報量は見掛上大きく見えることがある。これは、受信した情報に加工を加えてそれをさらに再送信する場合である。すなわち、携帯電子装置側でAという元情報を受信し、それを加工して、あるいはそれに追加して、α(A)+(B)という形に変換して再送信する場合である。この場合α(A)+βは一見大容量の情報に見えることがある。この元情報Aが極めて大容量である場合は多い。しかしながら、人間の発生した情報量はα(X)という変換演算と、βという追加情報である。(X)という変換演算を表わすのに必要な情報量も、また、βという追加情報も人間が発生させた情報であり、その発生速度は人間の脳や体が発生させ得る情報量を越えないので、一定の速度に満たないために人間が受信できる情報の情報量に比べて低くなる。このようなときには、α(A)+βを伝送する代わりにα(X)という変換演算とβという情報のみを伝送し、それを用いて受信側でα(A)+βを作っても結果的には同様である。
このように中継基地局5は電子装置1に情報Aを送り、それと共に、中継基地局5では情報Aを記憶する。そして電子装置1ではユーザが情報Aを見つつα(X)という変換演算とβという情報のみを中継基地局に伝送する。それと同時に電子装置1ではα(A)+βを作って表示し、また中継基地局でもα(A)+βを作って通信相手に送信する。以上により、必要以上の周波数資源を用いずに、なおかつ小型少容量の蓄電池を用いて、大容量のデータの伝送を必要とするサービスに実現できる。
したがって、Aというファイルを受信し、それを加工して、あるいはそれに追加して、α(A)+βという形に変換して再送信する場合である。この場合α(A)+βは一見大容量の情報に見えることがある。しかしながら、人間の発生した情報量はα(X)という変換演算と、βという追加情報である。α(X)という変換演算を表わすのに必要な情報量も、また、βという追加情報も人間が発生させた情報であり、その発生速度は人間の脳や体が発生させ得る情報量を越えず、また、前述のように一定の速度にないため人間が受信できる情報の情報量に比べ低い。この様なときには、α(A)+βを伝送する変わりにα(X)という変換演算とβという情報のみを伝送し、それを用いて基地局でα(A)+βを作って相手に伝送する。
ファイルのエディット等の操作は、すべてこの様な操作で実現可能である。即ち、元ファイルを広帯域のダウンリンクで携帯端末に伝送し、ユーザはそれを見つつ編集を行う。個々の端末により編集しながらユーザの見る画面は編集内容に従って更新される。それと共に、編集内容を基地局に伝送し、そこでも同様に編集内容に従って元ファイルをも更新しておく。この様にすると携帯端末から基地局へは極めて少容量の伝送で編集が可能となる。
以上のような操作により無線送信帯域を削減し、無線送信電力を削減し、さらに蓄電池での効率的情報伝送を可能とする。
このような処理は以上に述べたファイル操作以外の例にも適用できる。即ちAを個人用携帯電子機器のユーザの顔や声のデータとし、基地局或いは中継局でこれらの情報を格納しておく。そして個人携帯電子装置は、話した内容や普段とのイントネーションの違いのパラメータのみを基地局に伝送する。或いはユーザの顔の表情の普段とは大幅に異なる点や、喜怒哀楽の表現パラメータのみを無線伝送する。基地局ではそれを合成して元音声や元画面伝送を再合成して伝送する。それにより、無線送信帯域を削減し、無線送信電力を削減し、さらに蓄電池での効率的情報伝送を可能とする。
さらに、このα(A)+βといった加工を行なう中継基地局5は、無線送受信装置と同一の位置に在ってもよいが、電子装置のユーザが保有する計算機内等の通信ネットワークで接続された遠隔地にあっても良く、また、通信相手の機器内に内蔵されていても良い。
なお、以上に示した中継基地局または基地局から電子装置または個人用携帯電子装置へのダウンリンクに広帯域信号を用い、電子装置から中継基地局へのアップリンクには狭帯域の信号を用いるような通信形態は図6に示される第4実施例の通信システムのように行なわれる。
第4および第5実施例は個人の所持する電子装置との通信では、中継基地局から電子装置へのダウンリンク8に広帯域信号を伝送し、電子装置から中継基地局へのアップリンク4には狭帯域の信号を伝送するような通信形態と、双方とも狭帯域の信号を伝送するような通信形態の2つの形態に適用される。ダウンリンク8に広帯域を用いるのは画像を含む通信や、ファイル編集、情報配布・広報、放送等であり、その場合のアップリンク4に用いるのは制御信号や上記変換演算子等である。一方の双方とも狭帯域の信号を伝送するような通信形態では、双方向とも音声や低速データ伝送を行う時などに用いられる。例えば図7においては、アップリンク4には狭帯域の一つのリンク、ダウンリンクとしては狭帯域と広帯域の2本のリンク8,34を備えることが極めて望ましい。この第5実施例を図7に示す。図7において、符号34は、低周波数を用いる狭帯域のダウンリンク回線である。さらに、この2つのうちのどちらのリンクを用いるかは、電子装置の要求に応じて決めるものである事が望まれる。すなわち電子装置から発呼する場合、音声通話であれば狭帯域のダウンリンク34を、また画像伝送要求であれば広帯域のダウンリンク8を要求する。
この第5実施例に係る無線通信システムの基本構成を図8に示す。図8に示される構成が、図1の構成と異なる点は、基地局5に設けられる低速送信手段35と、端末1に設けられる低速受信手段36と、これら低速送信手段35及び受信手段36間の前記ダウンリンク回線34と、である。
端末1(電子装置)から通信を開始する場合には、まず狭帯域のアップリンク4を用いてどの様な通信を行うのか、基地局5或いは中継基地局に伝送し、その伝送信号に基づいてダウンリンクとして2本の内のどちらを選択するか設定し、双方向リンクを開くのが合理的である。また、電子装置1宛ての通信が中継基地局5に達した時、狭帯域と広帯域の2本のダウンリンクが備えられている場合にはまず、狭帯域リンクを用いて電子装置1あて着呼が在った旨を電子装置1に伝送し、それに応じて電子装置1が基地局にその呼とのリンクを用いて受けるか伝送し、対応するリンクの割り当てを受ける。
この場合、狭帯域リンク4及び34はそれ自体で独立して動作する狭帯域双方向伝送手段であってもよい。例えばTDMA/TDD(Time DMsion Multiple Access /Time Division Duplex)方式を用いた伝送方式であってもよい。
第6実施例はアップリンクとダウンリンクの帯域が大幅に異なると周波数配置上の問題点が生ずる場合に適用される。すなわち、これをFDMA/FDD(Frequency Division Multiple Access/Frequency Division Duplex )で実現しようとする場合、端末の共用器の仕様を全ての端末で同一にするならば、アップリンク周波数とダウンリンク周波数の周波数間隔を同一にすることが望ましい。その時、狭帯域のアップリンクでは、隣接チャネルとの周波数差がアップリンクの帯域幅より遥かに広くなり、多くの周波数帯が未利用のままとなり、極めて不都合である。従って、アップリンクを疑似ランダム信号系列で帯域拡散し、ダウンリンクとほぼ同じ帯域幅に直して伝送する。拡散比が大きければ、このアップリンク用の周波数は他のシステムと共有することができる。
第7および第8実施例は高速のダウンリンクはマルチパスの影響を受けやすいので遠距離の伝送ができない場合に適用される。ここで、帯域は狭くとも遠方まで伝送したいという要求が並存することが在る。その様な時には、遠方まで届かせたい信号には長い周期の疑似ランダム系列で信号を拡散してから伝送し、また近距離大容量のものでは、短い周期の疑似ランダム系列で拡散してから伝送することで、双方の要求を満たすことができる。さらに、電子機器の存在位置に応じて系列を選ぶことで自由に伝送速度を選ぶことができるために、様々な帯域の信号が混在するような場合に高い柔軟性をもって通信を行うことが可能となる。あるいは、元々データレートが異なる無線回路が共存する場合、それぞれの回線を、拡散後の帯域が同程度となるような系列長の疑似ランダム系列によって拡散することで柔軟であり周波数帯域の有効利用のできる無線通信システムを提供することができる。
さらに、このような帯域拡散方式を用いた場合には、複数のリンクに同一の周波数帯を用いることができるため、基地局や中継基地局の設備ならびに個人用携帯電子機器や電子機器を小型計量化することが容易にできる。
第9実施例は、送受信タイミグを送信と受信で変えてやり、双方が同時に行われないような通信方式にすれば、アップリンクとダウンリンクの周波数を自由に選択することが可能となり、周波数のよりいっそうの有効利用が図れるようになる場合に適用される。
第10実施例は無線LANに対応するように、アップリンクをランダムアクセスにすれば、ネットワークに接続されたサーバやデータベースヘのアクセスが容易な手順で行われるようになり、多くの利点を生む場合に適用される。
第11及び第12実施例を図9及び図10に基づいて説明する。図9は本発明が適用されたSDLシステムの構成を示す第11実施例ブロック図である。図示の様に情報提供局41と基地局5の間にメモリ42を設け、通信回線43を通して得られた情報はこのメモリ中に蓄えられる。携帯電子装置1は無線通信により基地局にアクセスするが、多くの携帯電子装置が欲している情報はほぼメモリの中に蓄えられており、情報のやりとりの多くは接続線44を介するだけで実行可能である。
無線通信ポストとメモリは対としても機能するが、本発明の別の実施例として1つのメモリに対して複数の無線通信ポストを接続することも可能である。図10は本発明の第11実施例のシステムにおけるメモリの状態を説明するための図である。メモリ内には情報提供局から得られた情報47,48を蓄えておく。この情報をアクセス頻度によってレベル分けし、新たな情報のアクセスがあった場合アクセス頻度の低い情報23から格納内容を廃棄し、新情報46をメモリ空間45に書き込む。
別の実施例として、メモリ空間が情報量に対して充分大きい場合には、全情報を予めメモリ内に書き込んでおくことも可能である。
さらに別の実施例として、新聞や週刊誌などのように情報に有効期限がある場合には、期限が来た時点でメモリ内の情報を消去または新たな情報をオーバーライトすることが可能である。
図11は、第12実施例に係るSDLシステムによる情報提供サービスの様子を示す図である。情報提供局32は新聞、雑誌、画像、音声、交通情報あるいは個人情報を提供する。この情報提供局は通信回線49により基地局5に接続されている。基地局5は駅、建築物や道路などに設置され、携帯電子装置1からの要求に応じで情報を伝送する。あるいは基地局からは常に何らかの情報が伝送されている。
上述した第1ないし第12実施例に係る無線通信システムは、図2の概念図に示されたSDLシステムに関するものであった。無線回線は基地局から個人携帯端末子装置への広帯域のダウンリンクと、端末から基地局への狭帯域のアップリンクで構成される。これらの実施例ではアップリンクとダウンリンクの伝送速度の非対称性のみかが提案されているに過ぎず、周波数配置や変調方式にまでは言及されていなかった。
従来の周波数配置例は、図67に示されている。日本のデジタル方式自動車電話システムRCR STD−27Bを例とする。このシステムではダウンリンク、アップリンク共に同一の伝送速度であり、無線周波数帯域としては800MHz帯と1.5GHz帯のシステムがある。どちらの周波数帯においてもアップリンクとダウンリンクは同一の周波数帯で構成される。800MHz帯では810MHz〜826MHzにダウンリンクが、940MHz〜956MHzにアップリンクが配置されている。従来システムでは同一の伝送速度のダウンリンク・アップリンクを想定しているため、同一の周波数帯で送受を行っているが、SDLシステムヘの適用を考えた場合には問題点が発生する。
SDLシステムでは広帯域のダウンリンクを想定しているため、800MHz帯などの低い周波数帯では、その広い帯域幅の確保や周波数有効利用の点から実現が困難である。例えば100MHz程度の伝送を試みようとした場合、1ユーザーで800MHz帯で100MHzの帯域を確保することは不可能と言っても良い。このため、数GHz程度の準ミリ波帯から数十GHz程度のミリ波帯での伝送が必要となってくる。
本発明に係る無線通信システムを60GHz帯のSDLシステムにより構成した場合の周波数配置の例を図12に示す。
一方、人間の発生させ得る情報の容量には人間の能力から上限がある。それに対して人間の感知し得る情報量は人間の発生させ得る情報量に比べて遥かに大である。人間が発生し得る情報は、音声、ジェスチャ、キーボードやマウスによる入力、顔の表情その他全ての情報を加算しても限界がある。人間の音声の情報量は64kbpsに遥かに満たない。キーボードやマウス等の様々な人間機械間の情報伝送手段を用いても、それらは全ての個々の人間の脳や体の諸器官の発生させる情報量を越える事は無い、人間の発生する情報量すべてを合わせても平均100kbpsを越えることは無いと考えられる。
それに対して人間の受信可能な情報量は極めて大である。人間は音声や画像や雰囲気や触覚や嗅覚などの複数のメディアから様々な情報を、個々に独自に動き得る知覚器官で受け取る。さらに人間の脳や体の諸器官は、様々な知覚器官から得られた情報から、脳や体の諸器官で処理し得る容量の情報のみを個々の人間の履歴と処理の優先度に応じて、得られた情報から抽出し、処理する。また、日常生活を通じて個々の人間が発生させる情報より遥かに大きな情報を受信している。そして受信情報に従ってどの情報を受け取るか、といった情報受信手段に帰還を掛けている。この帰還の掛け方は各々の個人によって異なっており、従って多くの人間が同一の情報を受け取ってもその処理の仕方は大きく異なっている。即ち、人間は個々の人間の脳や体の諸器官が処理できる情報量に比べ遥かに大きな情報を受け取ることができる。
これは人間の脳の情報受信を司る部分と情報の発信を司る部分との大きさの差によっても分かる。脳の視聴覚野は極めて大きい。それに対して言語の発生に関する部分はそれ程大きくない。体の隅々にまで神経が張り巡らされており、様々な情報が脳や脊髄に集められている。この情報量は極めて多いのに対し、脳が発生する情報は音声とわずかなジェスチャに限られている。体の中の情報伝送路である神経の太さにしても、最も太いのは視覚情報の受信を司る視神経である。
この事は工学的応用からも理解できる。即ち、人間が受信する画像情報を作る場合に、人間が自然であると感ずるような画像情報を作り出すためには一般に一秒間に数メガビット以上の情報を必要とする。それ以下の情報で作られた動画は、人間が動きや形の不自然さを容易に見付けることができる。そして、人間は、それに対応した量の画像情報を発生する事は出来ない。人間の表情のもつ情報は、人間の目が一般に感知している画像情報に比べると遥かに小さい。これは、人間の表情を加味して画像の帯域圧縮を行なうと極め圧縮率が高いことからも類推される。この人間の表情を加味した画像の帯域圧縮は東京大学の原島教授らによって詳しく研究されており、その極めて大きな圧縮率が知られている。人間の表情の持つ情報は極めて小容量であり、音声にしてもほぼ同様である。現在の帯域圧縮技術を用いると、音声情報は一秒間に4キロビット程度にまで圧縮できるので情報量は少ない。
音声ではなく楽器の演奏により情報を発生させた場合も情報の量は限られている。ピアノの演奏で発生する情報量を考えると、ピアノには88の鍵が設けられており、その中の1つの鍵を弾くと7ビット弱の情報が発生する。一秒間に早い人で10のキーを押すことができ、指は10本、さらにその音のレベルが1000段階(10ビット)に変わるものとすると、7*10*10*10=7000となり一秒当たり高々7キロビットであり、これはピアノの機種や音色によって変わるものでは無い。ピアノ演奏をレコーディングするときに一般に必要とする情報速度は毎秒100キロビット程であるが、この中で、演奏者が発生させている情報量は上記した毎秒1000ビットに過ぎない。楽器の演奏で一見多くの情報量が発生されている様にも見えるが、楽器から発生する情報は、楽器の音色や個性の持つ情報を人間の発生させている情報で変調しているためにこの様に大きな情報になっているように見えるに過ぎない。
一方情報を受信する場合には、人間は極めて大容量の情報を受信し、処理することが可能である。150人の演奏者が情報を発生するオーケストラで、たった1人が演奏を誤っても、それは容易に聞き分けることができる。また、各々の楽器から発生される楽器固有の情報は演奏者の発生する情報により変調されて極めて大容量となった情報を聞分け、それらの特徴を認識・抽出することは、人間は常に行っていることである。
5人の人間が互いに真剣に会議をしている状況を考える。各々の人間は自分の意見主張を相手に伝送すべくあらゆる努力を払っている他の4人からの情報を受信している。他の4人からの情報はすべて受信した人間の脳で処理されてはいないが、少なくとも、その人間の知覚器官を通じて受信されている。会議の後になっても、参加者は誰がなにをいったかを大体把握している。これは4人の他者からの情報を受信し、そのうちの必要な部分を脳で処理しているためにできることである。一方、情報の発信については、他の4人が平均的に発生させる情報の総和を越える情報を1人の人間が平均的に発生させることは一般に不可能である。したがって、人間が発生させる情報と受信できる情報の量には大きな差り、人間が発生させる情報の量は人間が受信可能な情報の量に比べて極めて小さい。
従来の個人用携帯電子機器の送信情報量はこの1人の人間が発生させることのできる情報量に比べて小さく、高々音声程度の伝送でしがなかった。したがって、人間が本来発生し得る情報の量よりも明らかに低い伝送容量しかなかった。しかしながら、より広帯域の無線伝送が将来可能になってくると、人間の受信可能な情報伝送速度よりも低く、人間の発生可能な情報発生速度よりも高い送受信伝送速度での無線伝送が可能になってくる。このとき、従来のように送受信速度を同一にすると周波数有効利用が図れない。
従来はダウンリンク・アップリンクとも同一の変調方式を用いる場合が一般的であった。例えば日米のTDMAを用いた狭帯域のデジタル自動車電話システムではダウンリンク・アップリンクともにπ/4DQPSK方式が採用されている。変調方式をダウリンク・アップリンクで違うものを採用しようという提案はCDMAを用いた米国デジタル自動車電話規格(IS−95)になされている。上りがOQPSK(Offset Quadrature Phase Shift Keyin −オフセット4位相偏移変調−)であり、下りがQPSK(Quadvature Phase Shift Keying −4位相偏移変調−)である。しかしながら、情報伝送速度は同一であり、SDLシステムとは構成が明らかに異なるものである。また、同じPSKを採用しているため、その性質は非常に似通ったものである。性質の全く異なる変調方式を伝送速度の全く異なるダウンリンク・アップリンクのシステムで採用した例はない。
本発明の第13の実施例を図13に示す。有線網に接続されている無線通信端末101と携帯無線端末102の間での通信が行われる。この通信での無線周波数帯と伝送速度の関係を図14に示した。
無線通信端末101から携帯端末102への無線回線(ダウンリンク)では60GHz帯の無線周波数f1で伝送速度R1の伝送を行う。本実施例では変調方式としては2値の変調であるBSPKを用いているために、伝送速度と使用帯域幅を同一として記載している。R1は100Mbpsの伝送速度であり、60GHz帯で行うことにより100MHzの帯域を確保することが可能となり広帯域の伝送が実現される。
携帯端末102から無線通信端末101への無線回線(アップリンク)は800MHz帯の周波数f2を用いてR1よりも低い伝送速度R1での伝送を行う。携帯端末102で発生する情報はキーによる入力や音声による入力信号が主であると考えられるので、数10kbps程度の伝送速度があれば十分に情報伝送が行える。本実施例では30kbpsとする。30kbpsの伝送であるならば800MHz帯でも帯域幅が十分確保できるのでこの帯域での伝送が可能である。
また、端末での無線周波数帯が低いため、空間での電波伝搬損が少なく、それほど強い電力で送信しなくても良い。また、伝送する帯域幅が小さいため、トータルの電力も小さくて済む。そのため、低消費電力化が可能となり、バッテリーの再充電や交換することなしに連続通話のできる時間を長くすることができる。
さらに、800MHz帯のデバイスは自動車電話などに広く用いられており、安価なデバイスが広く普及しており、デバイスの小型化も進んでいる・アップリンクを800MHz帯とすることで、端末の低価格化・小型化が可能となる。
本発明の第14の実施例を図15に示す。
有線網に接続された無線通信端末301と携帯無線端末302の間での通信が行われる。このときの無線周波数配置と伝送速度の関係を図16に示す。
無線通信端末301から携帯端末302への無線回線(ダウンリンク)は60GHz帯の無線周波数f1を用いてR1の伝送速度で行われる。R1は例えば100Mbpsの高速な回線である。それと共に800MHz帯のf2’でR2(例え:30kbps)の伝送速度でもう1回線のダウンリンクが張られる。携帯端末302から無線通信端末301への無線回線(アップリンク)は800MHz帯の無線周波数f2でR2の伝送速度で行われる。
第13実施例との相異はf2・R2でもう1つのダウンリンクが張られることである。60GHz帯のダウンリンクは、その周波数帯の特性から遮蔽物の影響を受けやすい。遮蔽物によるシャドウイングにより通信回線の切断が発生する。本実施例ではダウンリンクにもう1つのf2’でのリンクを設置することで、ダウンリンクの全面的な切断を防ぐことが可能となる。800MHz帯の無線周波数f2’は60GHz帯の無線周波数f1と比較した場合、伝搬損失が少なく、シャドウイングの影響が受けにくいため、回線切断の可能性が少なくなる。例えば、このf2’・R2のダウンリンクに制御チャネルを割り当てておくことで、f1・R1のダウンリンクが遮断されてしまった場合においても完全な切断が行われず、終了時のプロトコル・上状態保持のプロトコル・中断のプロトコルなどを制御チャネルを通じて実行することで無線端末301と携帯端末302のリンクが保持される。この場合、携帯無線端末302ではf2’・R2の受信装置を新たに持つことになるが、60GHz帯の受信装置に比較すれば、追加部分は消費電流・容積・価格とも無視できるほど小さくて低い。本実施例の無線周波数帯・伝送速度システム構成をとることで、高機能の携帯端末が小形・低消費電力・安価で実現できる。
本発明の第15実施例を図17に示す。有線網に接続された無線基地局501と複数の携帯無線端末502の間での通信を行う。本実施例の無線周波数帯と伝送速度の関係を図18に示す。無線基地局501から各携帯端末502へは(ダウンリンク)60GHz帯のf1、f1’、f1”という周波数で、R1の伝送速度で伝送される。各携帯端末502から無線基地局501へは(アップリンク)2.4GHz帯のf2、f2’、f2”という周波数で、R2の伝送速度で伝送される。R1は100MHz、R2は2MHzである。ここでは、1基地局と複数の端末間でダウンリンクにミリ波での広帯域の伝送を行い、アップリンクでは2.4GHz帯での比較的狭帯域の伝送を行っている。各端末での周波数配置は、図18に示すようにf1にf2が、f1’にf2’が順番に対応するよう構成されている。
本実施例では、アップリンク・ダウンリンクともに周波数多重方式を用いて多重されているが、時分割多重方式、符号分割多重方式、アロハ方式などのアクセス方式により多重することも可能である。本第15実施例ではアップリンクの伝送速度を2MHzと比較的高速とするため、2.4GHz帯を用いる。2.4GHz帯では800MHz帯に比べると伝搬損失は大きいが、60GHz帯に比べればその伝搬損失は非常に少なく、同じ60GHz帯でアップリンク・ダウンリンクを構成した場合に比べ、端末の送信パワーも小さく抑えることが可能となる。端末の人体へ与える影響は少なく、低消費電流・小形・安価な端末を構成することが出来る。
本発明の第16実施例を図19に示す。有線網に接続されている無線基地局701と複数の携帯端末702間での通信が行われる。本第17実施例の無線周波数配置と伝送速度の関係を図20に示す。ダウンリンクは19GHz帯の周波数f1・広帯域の伝送速度R1で行われる。ここでR1は50Mbpsである。もう1つのダウンリンクを400MHz帯の周波数f3で狭帯域の伝送速度R2(例:2kbps)で構成する。アップリンクは400MHz帯の周波数f2で狭帯域の伝送速度R2で構成する。周波数の配置は図20に示すように、端末1が用いる周波数はf1,f2,f3、端末2が用いる周波数はf1!,f2’,f3’と順番になるようにする。このような配置をすると、400MHz帯の狭帯域のアップリンクとダウンリンクの無線周波数の間隔を一定とすることが出来、端末での周波数の同期をとることが容易となる。19GHz帯にダウンリンクを配置することで、下り回線の広帯域化が実現し、400MHz帯に狭帯域のアップリンクとダウンリンクを配置することで、完全なる切断の確率が低く抑えられ、安定した制御が可能となる。400MHz帯のダウンリンク用の受信機は非常に簡易に構成することが出来るため、端末トータルの規模にはさほど影響を与えることなく実現できる。アップリンクを400MHz帯と低い周波数および低伝送速度で構成することで、簡易な携帯無線端末を提供することが可能となる。
本発明の第17実施例を図21に示す。本第17実施例は第13および第15実施例の無線通信システムに適用する携帯無線端末の無線部(無線装置)に関するものである。第17実施例の無線装置はf1,R1の無線信号を受信するためのアンテナ901、受信装置、f2,R2の無線信号を送信するためのアンテナ903、送信装置と携帯端末のその他の部分とのインターフェース906と制御装置905より構成される。ここでf1は高い周波数帯(例:60GHz帯)であり、R1は広帯域(例:100Mbps)であり、f2は低い周波数帯(例:800MHz帯)であり、R2は狭帯域(例:30kbps)である。受信・送信は周波数帯・帯域幅とも異なるため、独立のアンテナを持ち、送信・受信を行う。受信装置には無線のRF帯の周波数の信号からデジタル信号への復調を行うための周波数変換装置や復調装置を含んでいる。送信装置にはディタル信号を無線周波RF(Radio Frequency )信号へ変換するデジタル変調装置や周波数変換装置を含んでいる。制御装置は送信および受信の周波数・伝送速度の同期の送受信のタイミングをとる機能を備える。このような構成の無線装置を携帯端末に備えることで、第13及び第15実施例の無線通信システムに適用可能な携帯端末を構成することが可能である。
本発明の第18実施例を図22に示す。本第18実施例は第12・第14の実施例の無線通信システムに適用する携帯無線端末の無線部(無線装置)に関するものである。図15の実施例と違う部分は低い周波数帯の周波数f2(例:800MHz帯)で狭帯域(例:30kbps)信号を受信する受信装置1004と、f2の送信信号と受信信号を1つのアンテナに収容する送受共用器(デュプレクサー)1006を備えるところである。800MHz帯の送信1005および受信装置1004は60GHz帯の受信装置に比べ安価であり、小型化が容易である。また、送信が低い周波数・狭帯域で行えるため、送信のパワーが小さくて済む。人体への影響の少ない携帯無線端末を構成することが可能である。このような構成の無線装置を携帯端末に備えることで、第12及び第14実施例の無線通信システムに適用可能な携帯端末を構成することが可能である。
本発明の第19実施例を図23に示す。本第19実施例は第13・第15の実施例の無線通信システムに適用する無線装置および無線基地局に関するものである。本実施例では無線基地局を例にとり説明する。基地局は第1の周波数帯であるミリ波帯(例:60GHz帯)の無線周波数f1で伝送速度R1(例:100Mbps)の送信を行う送信装置1101と、f1よりも低い周波数帯(例:800MHz帯)の無線周波数f2でR1よりも低い伝送速度R2(例:30kbps)の受信を行う受信装置1102を備える。この他に制御部や有線系との接続を行う信号処理部やインターフェース部を備える。
周波数帯と伝送速度の異なる送信装置および受信装置を備えることで、実施例1および3の無線通信システムに適用可能な無線装置および無線基地局を構成することが可能である。
本発明の第20実施例を図24に示す。本実施例は第14、第16の実施例の無線通信システムに適用する無線装置および無線基地局に関するものである。本実施例の無線装置は第1のミリ波帯の周波数f1で高速の伝送速度R1の送信装置1201とf1よりも低い周波数帯の無線周波数f2で低速の伝送速度R2で送信を行なう送信装置1202とf2,R2で受信を行う受信装置1203を備える。
周波数帯と伝送速度の異なる送信装置および受信装置を備えることで、第14および第16の実施例に係る無線通信システムに適用可能な無線装置および無線基地局を構成することが可能である。
本発明の第21実施例を図25に示す。本第21実施例は基地局1301と端末1302により構成される無線通信システムである。基地局は赤外線で伝送速度R1の送信を行う送信機1303と無線周波数f2で伝送速度R2の受信を行う受信機1304とその他の制御を有線系とのインターフェースを行う信号処理部から構成される。端末は赤外線の受信機1305と無線の送信機1306とその他の部分とのインターフェースや制御を行う信号処理部により構成される。基地局から端末への送信(ダウンリンク)は赤外線を用いて伝送速度R1で行われる。端末から基地局への送信(アップリンク)は無線を用いてR1よりも低い伝送速度R2で行われる。
下り回線を電波による無線回線とする場合、伝送速度に対応する帯域を確保しなければならない。高速の伝送を行なう場合には、広い帯域を確保しなければならず、ミリ波帯などの未利用の高い周波数帯を開拓する必要があった。しかし、本実施例では広い帯域を必要とするダウンリンクを赤外線とすることで、無線周波数帯域幅の確保という制約なしにシステムを構成することが可能となる。また、ミリ波帯などを用いるデバイスは高価であり、容積も大きいが、赤外線デバイスは安価・小容積であり、端末、基地局ともに小型・低価格のものを実現することが可能である。
本発明の第22実施例を図26に示す。基地局の無線装置1401は第1の無線周波数帯(例:60GHz)の周波数f1で高速な伝送速度R1(100Mbps)の送信を行なう送信装置と、f1よりも低い無線周波数帯(例:800MHz)の周波数f2でR1よりも低速な伝送速度R2(例:30kbps)の信号の受信を行なう受信装置とからなる。端末の無線装置部はf1,R1の信号の受信を行う受信装置とf2,R2の信号の送信を行う送信装置からなる。
ここで、f1,R1の送信とf2,R2の送信は、異なる変調方式で行なわれている。f1がミリ波帯であり、R1が100Mbps程度であるとすると、ミリ波帯でこれだけの広い帯域にわたって線形なデバイスを得ることは困難である。したがってダウンリンクでは非線形な変調方式が望まれる。ミリ波帯ではその電波伝搬特性から伝搬損失が大きく電波の到達距離が短いことからゾーン設計による周波数利用効率の改善が有効である。またミリ波帯は比較的帯域に余裕があるため、周波数軸上での利用効率は従来のマイクロ波ほど厳しくはない。そのため、伝送速度に比較して帯域幅を有する程度大きくとる変調方式が許される。この2つの理由により変調方式は非線形変調であり、帯域幅をある程度必要とする変調指数0.5以上のFSKが最も実施に適している。
一方、アップリンクで用いられる信号の周波数f2の周波数帯は、マイクロ波であり、伝送速度も数10kbps程度であるので、線形の低価格・小形の部品が得られやすく、線形性の問題は無くなる。しかし、この周波数帯では割り当てられる周波数の帯域幅が小さいことから周波数の有効利用が周波数軸上ではかられなければならない。そのため、周波数利用効率の優れた変調方式が望まれる。線形変調ではあるが、周波数利用効率の優れたπ/4DQPSKやオフセットQPSKなどが、また、やや効率では劣るもののGMSKなどが実施に適している。
また、別の観点では高速のダウンリンクではその伝送速度の速さから、1シンボルで多数の情報が送れるQAMが最適である。アップリンクでは伝送速度は遅いが、その情報は制御情報などの重要な情報が主であるため、QAM(Quadrature Amplitude Modulation −4位相増幅変調)などに比べて誤りに強いBPSKなどが最も実施に適している。
以上のようにSDLシステムでは、アップリンク・ダウンリンクの伝送速度や送信周波数帯が異なるため、それぞれの変調方式を異なるものとすることでそれぞれに品質の良い回線を得ることが可能となる。
本発明の第23実施例を図27に示す。本実施例に示した基地局・端末はそれぞれ図26に示したものである。基地局1501から各端末1502へのダウンリンクは60GHz帯の周波数f1で伝送速度R1(100Mbps)、変調方式1(符号多重変調:CDM)で送信され、各端末から基地局へのアップリンクは800MHz帯の周波数f2で伝送速度R2(8kbps)、変調方式2(GMSK)で送信される。アップリンク、ダウンリンクを伝送速度、周波数帯、変調方式を変えることがそれぞれに品質の良い回線を得ると共に端末の小型化、低消費電力化をはかることが可能となる。
本発明の第24実施例を図28に示す。基地局1601は準ミリ波帯(19GHz)の無線周波数f1で伝送速度R1の送信装置1603を用いて伝送を行なう。伝送速度R1は固定ではなく、1Mbps〜15Mbpsの可変伝送速度である。変調方式1は4値FSKである。端末では同様の周波数f1、伝送速度R1、変調方式1の受信装置1606を備え受信を行う。この広帯域のダウンリンクでは主に画像などの広帯域を必要とするデータ伝送を行う。基地局、端末ではこのダウンリンクとは別に周波数f2(1.9GHz)、伝送速度R2(384kbps)、π/4DQPSKの送受信器を備える。f2の周波数での伝送では時分割多元接続/時分割多重(TDMA/TDD)方式をとっているため同一の周波数としている。図29は図28の基地局、端末を用いたシステム構成を示した概念図である。基地局1701は、各端末1702へのダウンリンクに変調方式1、f1,R1のダウンリンクを持つと供に、変調方式1、f2,R2のアップリンク、ダウンリンクを持つ。このような構成をとることで、それぞれに品質の良い回線を得ると供に、シャドウイングによる瞬断の少ないシステムを構成することが可能となる。
本第24実施例ではf2でのアップリンク、ダウンリンク共に同一の伝送速度R2を用いている。ここで、アップリンクでは伝送速度R2、ダウンリンクでは伝送速度R2’とすることも考えられる。f2でのアップリンク、ダウンリンクでは主に制御情報の伝送が行われるのであるが、アップリンクでは単なる制御情報の他にf1でのダウンリンクデータが誤っていた場合の再送制御やアップリンクでのデータ伝送が行われる。ダウンリンクのデータ伝送はf1の高速ダウンリンクで行われるため、f2でのダウンリンクは制御データのみが伝送されることになる。従って、f2でのアップリンク、ダウンリンクにおいても情報量の非対称性が生じる。従来の無線通信システムは情報の非対称性を考慮しておらず、アップリンク、ダウンリンクで同一の帯域を割り当てていた。主に制御情報を伝送するf2の回線において、アップリンクとダウンリンクで異なった伝送速度を与えることで、より効率的な周波数利用を図ることが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明における第25実施例を説明する。まず、この発明の第25実施例に関するデジタル無線通信方式を図30に従い説明する。
基地局と複数の携帯電子装置から構成され、基地局から携帯電子装置に情報を伝送するダウンリンク回線と携帯電子装置から基地局へ情報を伝送するアップリンク回線が具備されている。ダウンリンク回線及びアップリンク回線としては、例えば、第1ないし第12実施例に示すSDL−Netが挙げれる。SDL−Netでは、高速なダウンリンク回線のカバーするエリアを狭域とし、低速なアップリンク回線のカバーするエリアを広域として、さらに、アップリンク回線の信号伝送速度をダウンリンク回線の信号伝送速度よりも低速とすることによって、携帯電子装置の小型化を考慮している。
図31にSDL−Netで用いられる携帯電子装置の構成例を示す。携帯電子装置から基地局に対して伝送されるデジタル信号は、デジタル部で誤り訂正符号化、波形整形および変調が行なわれ、D−Aコンバータ(DAC)および補間フィルタ(LPF)によりアナログ信号に変換され、ミキサに入力される。ミキサでは、DACから出力された信号を搬送波信号発生器(発振周波数f1)から出力される信号と乗算し、周波数変換を行なう、ミキサ出力は、帯域通過フィルタ(BPF)によって乗算後のイメージが抑圧され、RFアンプによって増幅され、アンテナより出力される。一方、基地局から伝送されるダウンリンク回線信号は、アンテナで受信され、帯域通過フィルタ(BPF)で帯域制限されて、その後にLNA(ローノイズアンプ)で増幅される。LNA出力は、ミキサに入力され、搬送波信号発生器(発振周波数f2)から出力される信号と乗算され、周波数変換される。ミキサ出力は、LPFによって乗算後のイメージが抑圧され、その後に、A−Dコンバータ(ADC)によりデジタル信号に変換される。ADC出力(デジタル信号)は、デジタル部で復調される。
SDL−Netにおいては、アップリンクの信号伝送速度とダウンリンクの信号伝送速度とが異なっている(ダウンリンクの信号伝送速度がアップリンクの信号伝送速度に比べて高速)、つまり、タイミングクロックがアップリンクとダウンリンクで異なっている。本発明によれば、アップリンクのデジタル部に供給するクロックは、ダウンリンクで用いるクロックを1/nの分周装置を介して接続することで済み、回路構成を簡素化することができる。
図31に示す分周装置(1/n)は、図32に示すようなn進カウンタと移相器によって構成される。これにより、アップリンクとダウンリンクで信号伝送速度が異なり、ダウンリンクの信号伝送速度よりもアップリンクの信号伝送速度がシステムにおいて、システムのクロック発生器を共通化することが出来、回路構成を簡素化することが可能となる。また、図32の回路構成をとることで、任意の位相タイミングでアップリンク回線のクロックを生成することができる。この動作を図33により説明すると、ダウンリンク回線のクロックはn進カウンタにより分周され、移相器により任意の位相タイミングに移相される。以上の構成をとることで、アップリンクとダウンリンクの伝送信号を同期させることができる。
次に、この発明の第26実施例に係るデジタル無線通信システムを図34に従い説明する。第26実施例にかかる無線通信方式は、PHS回線と高速なダウンリンク回線が存在し、有線ネットワークに接続された情報サービス基地局と前記情報サービス基地局に接続されたPHS基地局と高速ダウンリンク回線基地局から構成される。情報サービス基地局から携帯電子装置に対して伝送される信号は、PHS回線もしくは高速なダウンリンク回線により伝送される。携帯電子装置から情報サービス基地局に対して伝送される信号は、PHS回線によって伝送される。
図35に図34の無線通信システムで使用される携帯電子装置の無線部及びモデム部の構成を示す。1種類のアップリンク回線と2種類のダウンリンク回線に接続するため、それぞれの送信部、受信部を一体化した構成となっている。受信した無線信号は、無線部及びモデム部で復調され、制御部及びメモリに転送される。また、制御部及びメモリから出力されるデジタル信号は無線部及びモデム部に転送され、無線信号として送出される。
無線信号を復調する場合には、受信した信号からキャリア(搬送波)及びタイミングクロックを再生しなければならない。図36は、キャリア再生及びタイミング再生を行う際の、受信機の構成を示している。アンテナで受信した無線信号は、RFアンプで増幅される(以下、RFアンプ出力をRF信号とする)。キャリア再生回路は、RF信号から基準キャリアを再生し、再生された基準キャリアは乗算器に入力される。同時にミキサにはRF信号が入力され、周波数変換がなされる。乗算器の出力は、周波数変換によるイメージ信号を除去するためにLPFに入力される(以下、LPF出力をベースバンド信号とする)。タイミング再生回路では、ベースバンド信号から、タイミングクロックを再生する。従って、図34に示した無線通信システムで用いる携帯電子装置では、2種類の異なる信号伝送速度の無線信号を受信するために、図36のようなタイミング再生回路が2つ必要となる(図37)。つまり、図37に示すように、ベースバンド信号1からタイミングクロックを再生するタイミング再生回路1、及びベースバンド信号2からタイミングクロックを再生するタイミング再生回路2が必要となる。
本発明によれば、2つのタイミング再生回路の内の低速な方を図32に示した分周器および移相器により置き換えることが可能となり、回路構成を簡素化することができる。さらに、高速なダウンリンク回線とPHS回線の伝送タイミングを同期させることが可能となる。
なお、第26実施例では、信号伝送速度が等しい無線通信システムの例としてPHSを挙げているが、これは、自動車電話などの他の無線通信システムでも構わない。
次に、この発明の第27実施例にかかるデジタル無線通信方式を説明する。図37に示した携帯電子装置の構成では、2種類のキャリア再生回路とクロック再生回路が必要である。これを簡単に表現すると図38のようになる。RF信号1及びRF信号2、ベースバンド信号1及びベースバンド信号2を用いて、それぞれキャリア再生及びタイミング再生を行なう。図31に示すように本発明によれば、他方のクロック発生源を分周器及び移相器で置き換えることにより、回路構成を簡素化することが可能である。さらに本発明は、クロック再生回路だけでなく、キャリア再生回路にも適用可能である。本発明をキャリア再生回路に適用した場合の例を図39に示す。
図39に示す基準信号発生回路は、RF信号1及びRF信号2、ベースバンド信号1及びベースバンド信号2入力に対して、これらの入力信号からキャリア及びタイミングクロックを生成し出力する6キャリア再生回路もしくはタイミングクロック再生回路では、入力信号からPLLなどの高選択度(高いQ)のフィルタにより、キャリア成分もしくはクロック成分を抽出することによって、キャリア再生もしくはタイミングクロックを再生する。つまり、入力される信号の誤差成分をフィルタにより取り除くことによってキャリア再生もしくはタイミングクロック再生がなされる。
図38に示したキャリア再生回路及びクロック再生回路では、それぞれ単一の入力信号からキャリアもしくはタイミングクロックを再生するが、図39に示す基準信号発生回路では、複数の入力信号からキャリアもしくはタイミングクロックを再生するため、複数の誤差情報を得ることができる。そのため、再生されるキャリアもしくはタイミングクロックの周波数精度を向上させることが可能となる。
次に、この発明の第28実施例にかかるデジタル無線通信システムを説明する。図30もしくは図34に示した無線通信方式において、基地局から携帯電子装置もしくは携帯電子装置から基地局へ情報を伝送する際には、連続する複数のビット信号によってフレームを構成し、フレーム単位で伝送を行なう。伝送信号をフレーム単位で扱うことで、誤り訂正やARQなどを容易に適用することができる。図40は、復調されたビットデータ列からフレームタイミングクロック再生するフレームタイミング検出回路のブロックを示している。ここでは、図2に示す受信機の構成を想定している。前記デジタル部において復調されたビッドデータ列は、ビットタイミングクロックとともに相関器に入力される。相関器は、従属接続されたD型フリップフロップ(シフトレジスタ)と比較器か構成される。比較器には、ビットタイミングクロックにより遅延されたシフトレジスタ出力とフレーム検出のために予め伝送信号に装入されている既知信号が入力され、両者の比較結果が出力される。相関器出力は、PLLに入力され、フレームタイミングクロックが生成される。異なる信号伝送速度、フレーム周期を持つ通信系を2種類以上備える無線通信方式では、図40に示したフレームタイミング検出回路が2つ以上必要となる。
前述したように本発明によれば、発振源は、分周器及び移相器に置き換えることが可能である。したがって、1種類のPLLで2種類以上のフレーム同期回路を代替することができ、回路構成を簡素化することが可能である。分収器及び移相器によりフレームタイミング検出回路を構成することが可能である。分周器及び移相器によりフレームタイミング検出回路を構成する例を図41に示す。
図41において、復調ビット列1およびビットタイミングクロック1は、相関器1に入力されて、フレームタイミングのトリガ信号が検出される。相関器1の出力は、位相比較器、ループフィルタ、電圧制御可変周波数発振器、m進カウンタから構成されるPLLに入力される。電圧制御可変周波数発信器の出力の一方は、図32に示す分周装置に入力される。移相器の移相量は、相関器2の出力により制御する。
さらに、フレームタイミングは、ビットタイミングクロックを分周して生成することができるため、バットタイミングクロック再生回路とフレームタイミング再生回路を共用化することができる。図42は、クロック信号生成回路を示したものである。RF信号やベースバンド信号などの複数の入力(入力信号数i)から誤差信号を検出して電圧制御可変周波数発信器を制御し、nk進カウンタ,移相器によって希望のクロック(出力信号数k)を得る。以上の構成とすることで回路構成を簡素化することが可能である。
次に、この発明の第29実施例に係る無線通信システムを図43に従い説明する。図43は、PHS基地局と有線ネットワークおよびSDL−Net基地局から構成される。SDL−Netは、PHSに比べて高速のダウンリンク回線を用いて主にデータ伝送を行ない、PHS回線を用いて位置登録を行なう。
前述したように、異なる伝送方式が2種類以上混在するシステムでは、一方のクロック再生回路を分周装置及び移相器に置き換えることで回路構成を簡素化することができる。しかしながらそのためには、異なる伝送方式のクロック同士が同期している必要がある。図43は、その例として、ネットワークを介して、PHS回線とSDL−Net回線とを同期させる方法を示している。ネットワーク側には、基準信号発信器が備えられる。PHS基地局では、ネットワーク側の基準信号に同期した信号を同期回路で生成する。携帯電子装置と通信を行なう際には、この同期信号を元に信号を伝送する。同様にして、SDL−Net基地局でもネットワーク側の基準信号に同期した信号を同期回路で生成し、この同期信号をもとにして携帯電子装置に情報を伝送する。同期回路は、PLLなどのクロック再生回路で構成されるが、前述したように、分周器と移相器で構成することも可能である。
次に、この発明の第30実施例に係る無線通信システムを説明する。前述の図43の様に、PHS基地局、有線ネットワーク、SDL−Net基地局から構成される無線通信システムでは、PHSのサービスエリアとSDL−Netのサービスエリアが一致しない場合が想定される。つまり、図44に示すようにPHSのサービスエリアの中にSDL−Netのサービスエリアが包含される。SDL−Netのサービスエリアが複数存在することが考えられる。
以上説明したSDLシテムには、狭帯域の上り無線チャネル(アップリンク)と広帯域の下り無線チャネル(ダウンリンク)を有するシステムと、狭帯域の上下の無線チャネル(アップリンク,ダウンリンク)と広帯域の下り無線チャネル(ダウンリンク)を有するシステムが存在するが、本発明が対象とするシステムは後者のシステムであるため、これ以降、後者のシステムをSDLシステムと呼ぶことにする。SDLシステムでは、下り無線チャネルにおいて高速伝送を実現するために、広帯域無線基地局は高い周波数を利用するが、高い周波数は電波の減衰が激しいため、そのサービスエリアを広くすることは困難である。また、帯域幅を広くすればするほど、符号間干渉による伝送歪みが増加すると共に、熱雑音による影響も大きくなるため、広帯域無線基地局のサービスエリアは、狭帯域無線基地局のサービスエリアよりも狭くなる。そのため、狭帯域無線基地局のサ一ビスエリアと広帯域無線基地局のサービスエリアは異なるエリア構成となってしまう。
したがって、SDLシステムでは、無線移動局の移動に伴い接続可能な狭帯域無線基地局は同じままで、接続可能な広帯域無線基地局が変わる場合があるため、無線移動局が接続可能な基地局として、狭帯域無線基地局と広帯域無線基地局の双方を認識していなければならない。無線移動局がどの狭帯域無線基地局のサービスエリアに位置しているかを認識する方法に関しては、狭帯域無線基地局と無線移動局との間は上下の無線チャネルが用意されているため、従来の携帯電話サービスで用いられている方法と同様な手順を用いることができる。携帯電話サービスで用いられている手順とは、無線基地局が下りチャネルで自局を示す識別信号を報知し、その信号を受信した無線移動局が、その無線基地局に対し、上りチャネルを介して自局を示す識別信号を伝送する。これにより、無線移動局がどの無線基地局のサービスエリア内に位置しているのかを認識するものである。
一方、無線移動局がどの広帯域無線基地局のサービスエリアに位置しているかを認識する方法に関して上述の説明の中には具体的な手法は述べられていなかった。したがって、本発明が対象とするようなシステムでは、無線移動局がどの広帯域無線基地局のサービスエリアに位置しているかを認識する方法に関しては、存在しなかったといえる。このように、通信サービスの提供を開始するうえで必要不可欠の無線移動局がどの広帯域無線基地局のサービスエリアに位置しているかを認識する手法が存在しなかったため、その結果、SDLシステムのような、広帯域の上り無線チャネルを持たない無線移動局をその構成要素に含むシステムではサービスの提供を行なうための通信が開始できなかった。さらに、サービスを提供している状況のもとで、無線移動局が他の無線基地局のサービスエリアに移動する場合のサービスの維持、すなわち、ハンドオーバーもできなかった。
第31ないし第39実施例に係る無線通信システムは、図45の概念図に示されるように、無線移動局51が、前記広帯域無線基地局52から無線回線を介して報知される前記広帯域無線基地局52を識別するための信号を受信し、該受信信号から接続に適している広帯域無線基地局52を解釈する接続最適局解釈手段61と、前記無線移動局51が、接続に適している前記特定の広帯域無線基地局52を、前記狭帯域無線基地局53を介して前記サーバー56に伝える最適基地局通知手段62と、前記サーバー56が、前記無線移動局に対して、接続が適していると判定されている前記特定の広帯域無線基地局52を介して前記所定サービスを開始するサービス開始手段63と、を備えている。
また、ハンドオーバーを行なう必要がある場合には、第31〜第39実施例に係る無線通信システムは、上記各手段に加えて、前記無線移動局が、接続に適している前記特定の広帯域無線基地局を介して前記所定のサービスを受けている時に、前記特定の広帯域無線基地局とは別の前記広帯域無線基地局から無線回線を介して報知される前記広帯域無線基地局を識別するための信号を受信し、該受信信号から接続の切替え先として適している広帯域無線基地局を解釈する手段と、前記無線移動局が、接続の切替え先として適している前記特定の広帯域無線基地局を、前記狭帯域無線基地局を介して前記サーバーに伝える手段と、前記サーバーは、前記無線移動局に対して、接続の切替え先として適していると判定されている前記特定の広帯域無線基地局を介するように接続を切替えて前記所定サービスを継続して提供する手段とを備えている。
以上の構成によれば、広帯域無線基地局から報知される広帯域無線基地局を識別するための信号を受信した無線移動局は、その受信信号を解釈することにより、接続が適している広帯域無線基地局を判定する。無線移動局は、無線移動局から狭帯域無線基地局への上り無線チャネルを用いて、自局がどの広帯域無線基地局に接続しているかを狭帯域無線基地局に伝える。狭帯域無線基地局とサーバーはネットワークを介して接続しているため、狭帯域無線基地局は、無線移動局がどの広帯域無線基地局に接続が適しているかの情報をネットワークを介してサーバーに伝えることができる。このようにすると、無線移動局から広帯域無線基地局への上り無線チャネルがなくても、無線移動局がどの広帯域無線基地局に接続が適しているかをサーバーに認識させることができるので、サーバーは、無線移動局に対して、無線移動局が接続に適していると判定されている広帯域無線基地局を介して所定サービスを開始することが可能となる。
また、何れかの広帯域無線基地局を介して所定サービスを提供している状況のもとで、無線移動局が他の広帯域無線基地局のサービスエリアに移動する場合のサービスの維持についても、本発明の第31〜第39実施例によれば、広帯域無線基地局から無線回線を介して報知される広帯域無線基地局を識別するための信号を受信し、その受信信号を解釈することにより、接続の切替え先として適している広帯域無線基地局を判定する。そして、無線移動局はどの広帯域無線基地局が接続の切替え先として適しているかを狭帯域無線基地局を介してサーバーに伝える。このようにすることにより、無線移動局から広帯域の無線基地局への上り無線チャネルがなくても、どの広帯域無線基地局が接続の切替え先として適しているかをサーバーに認識させることができるため、サーバーは無線移動局に対して、接続の切替え先として適していると判定されている広帯域無線基地局を介するように接続を切替えて所定サービスを継続して提供することが可能となる。
まず、本発明の第31〜39実施例の対象とする無線通信システムの構成を説明する。図46は本発明に係るシステムの構成を示す概念図である。図46において51は無線移動局、52及び53は無線基地局、56はデータサーバー、57はネットワークである。無線基地局52は、広帯域の情報伝送を行なうための送信手段を有する(以下、広帯域無線基地局52と呼ぶ)。これに対して、無線基地局53は、狭帯域の情報伝送を行なうための送受信手段を有する(以下、狭帯域無線基地局53と呼ぶ)。無線移動局51は、この広帯域無線基地局52または狭帯域無線基地局53との間で情報伝送を行なう端末である。また、広帯域無線基地局52と無線移動局51との間の無線チャネルのことを広帯域の無線チャネルと呼び、狭帯域無線基地局53と無線移動局51との間の無線チャネルのことを狭帯域の無線チャネルと呼ぶ。
なお、図46では、便宜上、広帯域無線基地局52と狭帯域無線基地局53とを区別しているが、図47で示すように、1つの無線基地局58が狭帯域の情報伝送のための送受信手段と広帯域の情報伝送のための送信手段の双方を備えていても構わない。この場合、無線基地局58のコストは高くなるものの、システム全体の無線基地局の総数を削減できる。また、狭帯域の情報伝送のための送受信手段と広帯域の情報伝送のための送信手段との間で制御を行なう必要があった場合に、その制御が容易となる。以下では、広帯域無線基地局52と狭帯域無線基地局53を別の無線基地局とした図46を用いて本発明の第31〜39実施例を説明する。
第31の実施例:本第31実施例は、無線移動局51が図48(a)に示すエリアに位置する場合、すなわち、無線移動局51が広帯域無線基地局52と接続可能な場合に、無線通信を開始する手順を説明する。図49に本第31実施例に係る最も基本的なフローチャートを示す。ステップST1では、無線移動局51がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを解釈する。ステップST2では、ステップST1で解釈された情報を、狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。これにより、データサーバー56は無線移動局51がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを認識できる。ステップST3では、無線移動局51に対し、ステップST1で解釈された広帯域無線基地局52を介したサービスの提供を開始する。また、実際にサービスを開始する場合、上述したフローチャートを基本とした様々な手順が考えられ、図50にその一例を示す。ステップST11では、無線移動局51がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを解釈する。ステップST12では、ユーザからのサービス要求があるか否かを判断する。ユーザからのサービス要求がある場合はステップST13に進み、要求がない場合はステップST11を繰り返す。ステップST13では、広帯域の下り無線チャネルを利用してサービスを受けるか否か選択する。広帯域の下り無線チャネルを利用してサービスを受ける場合はステップST14に進み、受けない場合はステップST16に進む。ステップST14では、ステップST11で解釈された情報を、狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。ステップST15では、無線移動局51に対し、ステップST11で解釈された広帯域無線基地局52を介したサービスの提供を開始する。一方、ステップST13において、広帯域の下り無線チャネルを利用したサービスを受けないことを選択した場合、すなわち、狭帯域の下り無線チャネルを利用したサービスを受けることを選択した場合、ステップST16において、無線移動局51は下りチャネルとして狭帯域の下り無線チャネルを利用することをサーバー56に伝える。ステップST17では、無線移動局51に対し、狭帯域無線基地局53を介したサービスの提供を開始する。
また、上記第31実施例では、ステップST13で広帯域の下り無線チャネルを利用したサービスを受ける場合に、ステップST14を実施する例を示しているが、ステップST14はステップST11の後であれば、サービス要求の有無に関わらず実施しても構わない。つまり、ユーザからのサービス要求が無くても、ステップST11で解釈された情報を、狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝えても構わない。この場合、ユーザからのサービス要求の有無に関わらず、サーバー56は無線移動局51がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを認識することができる。また、ステップST12をステップST11の前に実施する、すなわち、ユーザからのサービス要求がある場合にのみステップST11以降を実施する手順もある。この場合、ユーザからの要求がない場合、無線移動局51は自局がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを解釈しなくて良いため、消費電力が軽減される。また、さらなる低消費電力化のため、広帯域の情報伝送のための受信手段の電源をオフにしておくことも可能である。
次に図51を用いて、第31実施例に係る無線通信システムの通信開始手順のシーケンス図を説明する。無線移動局51は、広帯域無線基地局52から報知される無線基地局を識別するための信号511を受信し、その受信信号から自局がどの広帯域の無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを判断することができる。このような状況のもとでサービス要求が生じた場合、ユーザはサーバー固有の電話番号をダイヤルアップ510し、無線移動局51からサーバー56への狭帯域無線基地局53を介した通信回線を獲得する。無線移動局51からサーバー56への通信回線が獲得された後に、無線移動局51はデータ伝送要求メッセージ202と自局が接続できる広帯域無線基地局52を識別するための信号513を、サーバー56に伝送する。サーバー56はユーザから伝送されたデータ要求メッセージ512と信号513を解釈し、信号513で指定された広帯域無線基地局52を介して、ユーザの要求する情報514を伝送する。
第32の実施例:本第32実施例は、無線移動局51が図48(b)に示すエリアに位置する場合、すなわち、広帯域無線基地局52と接続できない場合に、無線通信を開始する手順を説明する。図52に本実施例に係る最も基本的なフローチャートを示す。ステップST21では、無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置していないこと、つまり、広帯域無線基地局52に接続できないことを解釈する。ステップST22では、無線移動局51は下りチャネルとして狭帯域の下り無線チャネルを利用することを狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。ステップST23では、無線移動局51に対し、狭帯域無線基地局53を介したサービスの提供を開始する。サービスを開始する場合、上述したフローチャートを基本とした様々な手順が考えられる。
図53に一例を示す。ステップST31では、無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置していないこと、つまり、広帯域無線基地局52に接続できないことを解釈する。ステップST32では、狭帯域の下り無線チャネルを利用したサービス要求があるか否かを判断する。ユーザからのサービス要求がある場合はステップST33に進み、サービス要求がない場合はステップST31を繰り返す。ステップST33では、無線移動局51は下りチャネルとして狭帯域の下り無線チャネルを利用することを狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。ステップST34では、無線移動局51に対し、狭帯域の無線基地局53を介したサービスの提供を開始する。また、上記実施例では、ステップST31で無線移動局51が広帯域無線基地局52に接続できないことを解釈した後、すなわち、広帯域無線基地局52に接続できるか否かを判定した後に、ステップST32でユーザからのサービス要求の有無を判定する例を示したが、第31の実施例で示したように、ユーザからの要求の有無を判定してから、ステップST31を実施しても構わない。
次に図54を用いて、第32実施例における通信開始手順のシーケンス図を説明する。無線移動局51は、広帯域無線基地局52から報知される無線基地局を識別するための信号541を受信することはできない。仮に受信できたとしても、サービスを提供されるために必要十分な信号強度が得られない。従って、無線移動局51は自局が広帯域無線基地局のサービスエリア外に位置していることを解釈する。つまり、無線移動局51は狭帯域の下り無線チャネルを用いたサービスしか受けられないことを認識する。このような場合ユーザは狭帯域の下り無線チャネルを用いたサービスを受けるか否かの選択を行なう。狭帯域の下り無線チャネルを用いたサービスを受ける場合、ユーザはサーバー固有の電話番号をダイヤルアップ540し、無線移動局51からサーバー56への狭帯域無線基地局53を介した通信回線を獲得する。無線移動局51からサーバー56への通信回線が獲得された後に、無線移動局51はデータ伝送要求メッセージ542と自局が接続できる狭帯域無線基地局53を識別するための信号543を、サーバーに伝送する。通常、下り無線チャネルで利用される狭帯域無線基地局53は、上り無線チャネルで利用される狭帯域の無線基地局53と同一なので、信号543は広帯域の下り無線チャネルを使えないことを、サーバー56に伝えるだけの情報でもよい。サーバー56はユーザから伝送されたデータ要求メッセージ542と信号543を解釈し、信号543で指定された狭帯域無線基地局53、もしくは、上り無線チャネルで利用している狭帯域無線基地局53を介して、ユーザの要求する情報544を伝送する。
次に、以下の第33〜第36の各実施例ではハンドオーバーに関する手順を説明する。これらの実施例で取り扱うハンドオーバーとは、無線移動局51が、ある特定の狭帯域の無線基地局53のサービスエリア内を移動する場合に生じるハンドオーバーに限定する。なぜなら、狭帯域無線基地局53は上下の無線チャネルを有するため、狭帯域の無線基地局53間のハンドオーバーは従来のハンドオーバーの手順でも十分に対応できるからである。通信を開始する時の手順は、第31および第32実施例で示したので、第33〜第36実施例ではサービスを提供されている状態以降におけるハンドオーバーの手順を説明する。
第33の実施例:本第33実施例は、無線移動局51が図48(c)に示すような移動を行なった場合、すなわち、無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア内でサービスを受けている時に、他の広帯域無線基地局52のサービスエリア内に移動した場合のハンドオーバーの手順について説明する。
図55に本実施例に関わる最も基本的なフローチャートを示す。ステップST41で、サービスを提供している広帯域無線基地局52とは別の広帯域無線基地局52から報知された信号を無線移動局51が受信可能か否か判断する。受信可能な場合は、その信号の受信電界強度と、現在サービスを提供している広帯域無線基地局52から送信される信号の受信電界強度との比較が行なわれ、比較した結果から、無線移動局51がハンドオーバー先の広帯域無線基地局52を解釈する。従って、現在サービスを提供している広帯域無線基地局52から送信される信号の受信電界強度が十分の場合は,無線基地局の切替えを行なわずに、サービスが継続される。また、接続の切替えを行なうか否かの選択の尺度は、提供しているサービスが要求する通信品質に応じて異なる。例えば、音声通信サービスの場合、要求する通信品質がそれほど高くないため、無線移動局51の移動に伴い、通信品質が少々劣化した場合であっても、無線基地局の切替えを行なわない。一方、データ通信サービスの場合、要求する通信品質は音声通信サービスよりも高いため、少しでも通信品質が良くなるように無線基地局の切替えを行なう。ステップST42では、ステップST41で解釈された情報を、狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。これによりサーバー56はハンドオーバー先の広帯域無線基地局52を認識できる。ステップST43では、ハンドオーバー先であると判定されている広帯域無線基地局を介するように接続を切替えるようにして、継続してサービスを提供する。
次に、図56を用いて、第33実施例におけるハンドオーバーのシーケンス図を説明する。無線移動局51が図48(c)に示すような移動を行なった場合、広帯域無線基地局52から伝送されていた情報データ565の受信時における信号強度は劣化するため、情報を正しく受信できなくなる。一方、無線移動局51は他の広帯域無線基地局52のサービスエリア内へと移動しているため、他の広帯域無線基地局52から報知される無線基地局を識別するための信号566を受信できるようになり、その受信信号から自局がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内へと移動しているかを判断することができる。無線移動局51は情報信号565と信号566の受信時の信号強度の関係から、ハンドオーバーをすべきか否かの判断を行なう。ハンドオーバーを行なう必要がなければ、そのまま情報データ565の受信を継続する。
ハンドオーバーを行なう必要が生じた場合は、無線移動局51はサーバー56に対し、ハンドオーバー要求メッセージ567とハンドオーバー先の広帯域無線基地局52を識別するための信号558を伝送する。サーバー56はハンドオーバー要求メッセージ567と信号568を解釈すると、通信中の広帯域無線基地局52に対し回線切断要求メッセージ569を送る。回線切断後、サーバーは、信号568で指定された広帯域無線基地局52を介して、情報データ570を伝送する。これにより、ユーザは移動によるサービスエリアの変更が生じた場合でも、提供されていたサービスを継続して受けることが可能となる。
第34の実施例:本第34実施例は、無線移動局51が図48(d)に示すような移動を行なった場合、すなわち、無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア内でサービスを受けている時に、広帯域無線基地局52のサービスエリア外に移動した場合のハンドオーバーの手順について図57を用いて説明する。無線移動局51は広帯域無線基地局52のサービスエリア外へと移動しているため、現在サービスを提供している広帯域無線基地局52から送信される信号の受信電界強度が劣化する。また、サービスを提供している広帯域無線基地局52とは別の広帯域無線基地局52から報知された信号も受信できない。従って、ステップST51において、無線移動局51は広帯域無線基地局52と接続できないことを解釈する。ステップST52では、無線移動局51は自局が広帯域無線基地局52に接続できないこと、つまり、下りチャネルの伝送として、狭帯域無線基地局53を介した伝送を行なうことを狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。ステップST53では、サーバー56は、狭帯域無線基地局53を介するよう接続を切替え、継続してサービスの提供を行なう。
また、上記実施例では、所定サービスを受けている時に、無線移動局51が広帯域無線基地局52と接続できなくなった場合、狭帯域無線基地局53を介した接続に切替えることを前提とした例を示したが、ステップST51の次のステップとして、狭帯域の下り無線チャネルを利用して提供されているサービスを継続するのか、もしくは、提供されているサービスを停止するか、の選択を行なうステップを加えても良い。サービスの継続を選択した場合は、ステップST52に進む。サービスの停止を選択する場合については、第35の実施例で詳しく説明する。
次に図58を用いて、第34実施例におけるハンドオーバーのシーケンス図を説明する。無線移動局51が図48(d)に示すような移動を行なった場合、広帯域無線基地局52から伝送されていた情報データ585の受信時における信号強度は劣化するため、情報を正しく受信できなくなる。一方で、無線移動局51は広帯域無線基地局52のサービスエリア外へと移動しているため、他の広帯域無線基地局52から報知される無線基地局を識別するための信号586を受信することができない。仮に受信できたとしても、サービスを提供されるために必要な十分な信号強度が得られない。従って、無線移動局51は自局が広帯域無線基地局52のサービスエリア外に位置していることを解釈する。つまり、無線移動局51は狭帯域の下り無線チャネルを用いたサービスしか受けられないことを認識する。そのため、以下の手順により、狭帯域の下り無線チャネルに接続を切替え、提供されているサービスの継続を行なう。無線移動局51はハンドオーバー要求メッセージ587とハンドオーバー先の狭帯域無線基地局53を識別するための信号588を、サーバー56に伝送する。
通常、下り無線チャネルで利用される狭帯域無線基地局53は、上り無線チャネルで利用される狭帯域の無線基地局53と同一なので、信号588は広帯域の下り無線チャネルを使えないことを、サーバー56に伝えるだけの情報でもよい。サーバー56はハンドオーバー要求メッセージ587と信号588を解釈すると、通信中の広帯域無線基地局52に対し回線切断要求メッセージ589を送る。回線切断後、サーバー56は信号588で指定された狭帯域無線基地局53を介して、もしくは、上り無線チャネルで利用している狭帯域無線基地局53を介して、ユーザの要求する情報590を伝送する。これにより、ユーザは移動によるサービスエリアの変更が生じた場合でも、提供されていたサービスを継続して受けることが可能となる。
第35の実施例:本第35実施例は、無線移動局51が図48(d)に示すような移動を行なった場合、すなわち、無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア内でサービスを受けている時に、広帯域無線基地局52のサービスエリア外に移動した場合のサービスを停止する手順、つまり、回線切断の手順について図59を用いて説明する。
無線移動局51は広帯域無線基地局52のサービスエリア外へと移動しているため、現在サービスを提供している広帯域無線基地局52から送信される信号の受信電界強度が劣化する。また、サービスを提供している広帯域無線基地局52とは別の広帯域無線基地局52から報知された信号も受信できない。従って、ステップST61では、無線移動局51は広帯域無線基地局52と接続できないことを解釈する。ステップST62では、無線移動局51は自局が広帯域無線基地局52に接続できないこと、つまり、無線移動局51は提供されているサービスを停止することを狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。ステップST63において、サーバー56は、提供していたサービスの停止を行ない、広帯域無線基地局52から無線移動局51への通信回線を切断する。また、第34の実施例で述べたように、狭帯域の下り無線チャネルを利用して提供されているサービスを継続するのか、もしくは、提供されているサービスを停止するか、の選択を行なうステップを加える場合、該ステップはステップST61の次に続き、該ステップにて、提供されているサービスを停止することを選択した場合、ステップST62に進む。
次に、図60を用いて、第35実施例におけるハンドオーバーのシーケンス図を説明する。無線移動局51が図48(d)に示すような移動を行なった場合、広帯域無線基地局52から伝送されていた情報データ605の受信時における信号強度は劣化するため、情報を正しく受信できなくなる。一方で、無線移動局51は広帯域無線基地局52のサービスエリア外へと移動しているため、他の広帯域無線基地局52から報知される無線基地局を識別するための信号606を受信することができない。仮に受信できたとしても、サービスを提供されるために必要な十分な信号強度が得られない。従って、無線移動局51は自局が広帯域無線基地局52のサービスエリア外に位置していることを解釈する。つまり、無線移動局51は広帯域の下り無線チャネルを用いたサービスを受けられないことを認識する。そのため、提供されているサービスを停止する手順を実行する。無線移動局51は通信切断要求メッセージ607をサーバー56に伝送する。サーバー56は通信切断要求メッセージ607を解釈すると、無線移動局51に対し、通信中の広帯域無線基地局52を介して回線切断メッセージ608を送る。これにより、無線移動局51の移動によりサービスエリアを離れた場合に、提供されていたサービスをユーザの意志で速やかに停止することが可能となる。
第36の実施例:本実施例は、無線移動局51が図48(e)に示すような移動を行なった場合、すなわち、無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア外で、狭帯域の下り無線チャネルを利用してサービスを受けている時に、広帯域無線基地局52のサービスエリア内に移動した場合のハンドオーバーの手順について図61を用いて説明する。
無線移動局51は移動に伴って、広帯域の無線基地局52から報知される無線基地局を識別するための信号を受信できるようになる。そこで、ステップST71では、無線移動局51は自局がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内へと移動しているかを解釈する。ステップST72では、ステップST71で解釈した情報を、狭帯域無線基地局53を介してサーバー56に伝える。これにより、サーバー56は無線移動局51がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内へと移動しているかを認識できる。ステップST73では、ステップST71で解釈された広帯域無線基地局52を介するように接続を切替え、継続してサービスを提供する。ところで、このようなハンドオ一一を行なうためには、無線移動局51は、狭帯域の無線チャネルを利用している場合であっても、常に、広帯域無線基地局52が報知する信号の受信待機状態でなければならない。なぜなら、広帯域無線基地局52のサービスエリア内に入った時は、狭帯域無線基地局53を介した信号の受信状態が良い場合であっても、ハンドオーバーを行なうことがあるからである。
上記実施例では、ステップST71で無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア内に移動したことを解釈できると、直ちに、ハンドオーバーを実施する例を説明したが、ハンドオーバーを行なう前に、ユーザがハンドオーバーを行なうか否かを選択するステップを加えても良い。なぜなら、先に述べたように、狭帯域無線基地局53を介した信号の受信状態は、必ずしも悪い状態ではなく、また、音声通信サービスのような高速伝送を必要としないサービスの場合、必ずしもハンドオーバーの必要はないからである。該ステップの追加場所は3通りあり、それぞれ以下の特徴を持つ。まず、該ステップをステップST72の次に加えた場合、ハンドオーバーを行なうか否かに関わらず、サーバー56は無線移動局51がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを認識できる。次に、該ステップをステップST71の次に加えた場合、ハンドオーバーを行なわない時は、無線移動局51がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかをサーバーに伝えないため、無線移動局51とサーバー56間のトラフィック量が削減される。最後に、該ステップをステップST71の前に加えた場合、無線移動局51は自局がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内に位置しているかを解釈しなくて良いため、消費電力が軽減される。この場合、広帯域の情報伝送のための受信手段の電源をオフにしておくことにより、さらなる低消費電力化が可能となる。
次に図62を用いて、第6実施例のシステムにおけるハンドオーバーのシーケンス図を説明する。無線移動局51が図48(e)に示すような移動を行なった場合、無線移動局51は広帯域無線基地局52から報知される無線基地局を識別するための信号625を受信できるようになり、その受信信号から自局がどの広帯域無線基地局52のサービスエリア内へと移動しているかを判断することができる。この時、先に述べたように、無線移動局51が受信している情報データ624の信号強度は必ずしも悪いわけではない。従って、ハンドオーバーを行なうか否かの選択はユーザの意志により行なう。もしくは、あらかじめ、広帯域無線基地局52のサービスエリア内に入った時にハンドオーバーを行なうか否かを設定しておく。ハンドオーバーを行なわないように設定した場合は、無線移動局51は広帯域の情報伝送のための受信機の電源をオフにしておいても良い。無線移動局51が広帯域無線基地局52のサービスエリア内に入った時にハンドオーバーを行なわない場合は、そのまま狭帯域無線基地局53を介して、情報データ624の受信を継続する。
ハンドオーバーを行なう場合は、無線移動局51はサーバー56に対し、ハンドオーバー要求メッセージ626とハンドオーバー先の広帯域無線基地局52を識別するための信号627を伝送する。サーバー56はハンドオーバー要求メッセージ626と信号627を解釈すると、通信中の狭帯域無線基地局53に対し下り無線チャネルの回線切断メッセージ628を送る。回線切断後、サーバー56は信号627で指定された広帯域の無線基地局52を介して、情報データ629を伝送する。これにより、ユーザは移動によるサービスエリアの変更が生じた場合でも提供されていたサービスを継続して受けることが可能となる。
第37の実施例:サーバー56に固有の論理番号を割り当てる。ネットワーク上に複数のサーバーが存在する場合の論理番号は全サーバー共通に1つとする。ユーザはサービスを受けたい時、サーバー56に対して発呼する。発呼の方法は、ユーザが直接論理番号をダイヤルアップする方法(図63(a))と、ユーザが無線移動局51に表示されているSDLサービスの項目を選択する方法がある(図63(b))。ここで、SDLサービスとは、SDLシステムを用いて提供されるサービスのことをいう。この方法の場合、SDLサービスの項目と論理番号との対応づけがされており、ユーザがSDLサービスの項目を選択すると、自動的にダイヤルアップされる。いずれの方法であっても、サーバー56に対して発呼すると、まず、無線移動局51から狭帯域無線基地局53への通信回線が獲得される。
次に、狭帯域無線基地局53はサーバー56との接続を行なう。ネットワーク57上に1つのサーバー56しかない場合は、狭帯域無線基地局53からサーバー56への通信回線が獲得される。また、ネットワーク57上に複数のサーバー56が存在する場合は、狭帯域無線基地局53が接続するサーバー56の選択を行なう。選択の方法は4通りある。
第1に各狭帯域無線基地局53があらかじめ自局の接続すべきサーバー56を認識しており、常にそのサーバー56を選択する方法がある。通常、接続されるサーバー56は狭帯域無線基地局53に隣接したものである。第2にサーバー56の負荷が軽いサーバー56を選択する方法がある。この方法は、狭帯域の無線基地局53がサーバー56の負荷を観測し、負荷の小さいサーバー56を選択するものである。第3にネットワーク57の負荷が軽いサーバー56を選択する方法がある。この方法は、狭帯域無線基地局53とサーバー56間の通信路として、トラヒックの少ないものを利用しようとする方法である。また、第4の方法として、上記3方法の中から、少なくとも2っ以上の方法を組み合わせた方法が挙げられる。この方法として、例えば、狭帯域無線基地局53がサーバー56の負荷を観測し、負荷がある一定値よりも小さいサーバー56の中から、最も狭帯域無線基地局53に隣接したサーバー56を選択する方法などがある。以上のような選択方法を用いてサーバー56の選択が行なわれた後、狭帯域無線基地局53からサーバー56への通信回線が獲得され、これにより、無線移動局51からサーバー56への通信回線が獲得される。
第38実施例:図63(c)に示すように、サービス毎に特定の論理番号を割り当てておいて、ユーザは受けたいサービスに対応する論理番号により発呼する。発呼の方法は、ユーザが直接論理番号をダイヤルアップする方法と、ユーザが無線移動局51に表示されているサービスの項目を選択する方法がある。この方法を第38実施例に係るシステムとして説明する。この方法の場合、ユーザが一サービスを選択するとそれに対応する論理番号に対し、自動的にダイヤルアップされる。いずれの方法であっても、サーバー56に対し発呼されると、まず、無線移動局51から狭帯域無線基地局53への通信回線が獲得される。
次に、狭帯域無線基地局53はサーバー56との接続を行なう。所望するサービスを提供するサーバー56が、ネットワーク57上に1つしかない場合は、狭帯域無線基地局53からそのサーバー56への通信回線が獲得される。また、所望するサービスを提供するサーバー56が、ネットワーク57上に複数存在する場合は、狭帯域無線基地局53が接続するサーバー56の選択を行なう。選択の方法は次の第39の実施例と同じなので、ここでは省略する。サーバー56の選択が行なわれると、狭帯域無線基地局53からサーバー56への通信回線が獲得され、これにより、無線移動局51からサーバー56への通信回線が獲得される。
第39の実施例:無線移動局51は無線基地局と通信可能であるかを表示する。具体的には、自局が狭帯域無線基地局53と通信可能であるか否か、と自局が広帯域無線基地局52と通信可能であるか否か、の双方を表示する。表示方法としては、それぞれの基地局からの電波の信号強度を段階的に表示する方法(図64(a))や通信可能か否かを2値的に表示する方法(図64(b))などがある。また、上述した表示を行なうために、無線移動局51は、広帯域無線基地局52から伝送される信号を受信した時の受信電界強度を測定し、その測定結果を人間が認識できる表現方法で表示する手段と、狭帯域無線基地局53から伝送される信号を受信した時の受信電界強度を測定し、その測定結果を人間が認識できる表現方法で表示する手段と、の双方を備えている。
本39実施例により、ユーザは自分がどのようなサービスを受けられるかを認識することが可能となる。つまり、ユーザは狭帯域の下り無線チャネルを利用したサービスを受けられるが、広帯域の下り無線チャネルを利用したサービスを受けられない状態であることを認識できたり、また、移動により、広帯域の下り無線チャネルを利用したサービスを受けることが可能となったこと等を認識できるようになる。従って、例えば、ユーザが広帯域無線基地局52のサービスエリア外に位置する場合に、現地点ではサービスを受けずに広帯域無線基地局52のサービスエリア内に移動した後に広帯域の下り無線チャネルを利用した高速無線伝送のサービスを受ける、もしくは、現時点で狭帯域の下り無線チャネルを利用した低速無線伝送のサービスを受ける、のどちからをユーザの意志で選択することが可能となる。また、広帯域無線基地局52から伝送される信号に関する2ステップ(無線移動局51が広帯域無線基地局52から無線回線を介して伝送される第1の信号を受信した時に、前記第1の信号の受信電界強度を測定するステップと、前記第1の信号の受信電界強度を人間が認識できる表現方法で表示するステップ)と、狭帯域無線基地局53から伝送される信号に関する以下の2ステップ(無線移動局51が狭帯域無線基地局から無線回線を介して伝送される第2の信号を受信した時に、前記第2の信号の受信電界強度を測定するステップと、前記第2の信号の受信電界強度を人間が認識できる表現方法で表示するステップ)とはそれぞれ独立したステップである。従って、ユーザが、無線移動局51に対し、広帯域無線基地局52を介した高速伝送サービスを受けないことを、あらかじめ設定した場合には、広帯域無線基地局52から伝送される信号に関する2ステップを行なわない方法も考えられる。この場合、無線移動局51の消費電力を軽減させることができる。
以上説明したように、本発明の第31ないし第39実施例により、SDLシステムのような広帯域の上り無線チャネルを持たない無線移動局をその構成要素に含むシステムであっても、サーバーが無線移動局がどの広帯域無線基地局と接続可能であるかを認識することができ、サービスの提供が可能となる。また、無線移動局の移動に伴い・ハンドオーバーを行なう必要が生じた場合であっても、サーバーがハンドオーバー先の広帯域無線基地局を認識することができ、継続してサービスを提供することが可能となる。
図65は、図43と同様に、PHS基地局、有線ネットワーク、SDL−Net基地局から構成される第40実施例の無線通信システムを示している。図43とは、SDL−Net基地局にPHS受信器が具備されていることと、ネットワーク側に基準発信器がない点が異なる。図44の様にSDL−Net基地局は、PHSのサービスエリアの内部に存在する。そのため、PHS受信器により受信した信号を同期回路に入力することによってPHSとSDL−Netのクロックを同期させることが可能である。
図66は、この発明に係る無線通信システムが適用される全体構成としての第41実施例を示している。ネットワークを介して所定の通信サービスエリアを有する複数の基地局BSと、複数のデータベースと通信衛星CSとが通信可能に接続されている。