JP3792595B2 - 極低温タンク用防熱構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、液化水素(LH2)、液化窒素(LN2)、液化酸素(LO2)、液化ヘリウム(LHe)などの極低温物質を貯蔵するための極低温タンク用防熱構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の極低温タンクでは、外気からのタンク内への熱の侵入を防止するため、その表面を防熱層で被覆する必要がある。この防熱層は、一般的に、硬質ポリウレタンやフェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなる内側防熱層部と外側防熱層部の間に網状補強材を介装し、前記合成樹脂の発泡時の自己接着作用もしくは接着剤で接着して一体にした構造からなる。なお、前記網状補強材は、主に外側防熱層部の低温割れを防止するために介装されている。
【0003】
また、タンク本体はステンレスやアルミニウム合金で形成され、タンク本体の外周面上を被覆する防熱層は、タンク本体の周面に一定の間隔をあけて植設された多数のスタッドボルト等の支持具によって支持される。特に球形タンクの場合等ではタンクの下半分で防熱層が落下するのを阻止している。それらの支持具は、通常、タンクと同質の材料であるステンレスやアルミニウム合金で形成されている。
【0004】
さらに、上記防熱層は、予め成型された硬質ウレタン、フェノール樹脂などの合成樹脂発泡体からなり、中間に網状補強材が介装され、アルミニウム合金の表面層(アルミホイル表面シート材ともいう)を有する凸形断面で定形の防熱パネルを、タンク本体の表面上に相互に隣接して取り付け、防熱パネルの突部間の目地に合成樹脂材を少なくとも充填又は発泡の一方を行って埋設した構造が一般的である。
【0005】
このような極低温タンク用防熱構造に関連する先行技術として、特開平8−233199号公報に記載の技術が知られている。
【0006】
ところで、球形のタンクの場合には、図11に示すように、タンク51が膨張・収縮する際に、その内部中心51oに向かってほぼ全体的に均等に半径方向に膨張・収縮するので、支持具としてのスタッドボルト52に作用する力は軸力だけとなり、曲げモーメントが発生することはない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、そのような球形のタンクの場合には、スタッドボルト52に曲げモーメントが発生することはないが、円筒状胴部(円筒部)の両端に半球面部を一体に備えたシリンダ形タンクの場合には、支持具としてのスタッドボルトに、曲げモーメントが発生する場合がある。
【0008】
すなわち、図12(a)に示すように、シリンダ形タンクのタンク本体1においては、それの中間部分を構成する円筒状胴部1bと、それの両側に設けられる半球面部1aとで熱収縮する際の中心が異なり、防熱パネルの厚さ方向には温度勾配が生じている。そのため、防熱層2(防熱パネル)の表面部とタンク本体1に接する内面部と両者の中間である防熱層2(内側防熱積層部2aと外側防熱積層部2bとの2層積層構造からなる)の中間部とでは、それぞれ熱収縮量が異なる。これにより、前記半球面部1aと円筒状胴部1bとの境界線付近に配置されているスタッドボルト21に最大の曲げモーメントが作用する。
【0009】
前記スタッドボルト21の下端部は、図12(b)に示すように、前記タンク本体1に溶接により固着されている。また、防熱パネル2の網状補強材3のワイヤーネット3a上に補強材3の連結用ワイヤーネット3bが跨って配置されているので、スタッドボルト21の上端部は、前記連結用ワイヤーネット3bを貫通し、ワッシャー7を挿通した上ナット8で連結部分を保持している。また、ワッシャー7は合成樹脂製で、図12(c)(d)のように、多数のピン状突起7aが外周縁部に下向きに突設されており、そのピン状突起7aにより連結用ワイヤーネット3bとワイヤーネット3aとを重ね合わせた状態で保持している。
【0010】
図13(a)は網状補強材を構成する線材の線径が0.62mmで、タンク本体およびスタッドボルトがそれぞれアルミニウム合金製でタンク本体の容量が2500m3 、スタッドボルトの外径(一定)が6.4mm(断面積:32.0mm2 、断面係数:25.7mm3 )でボルトピッチが半球面部225mm/円筒部600mmの場合、常温(外気温度30℃)でLNGをタンクに充填しタンクが収縮(熱収縮率は約0.4%)した状態を示す一部断面図、図13(b)は図13(a)の一部(境界線付近)を拡大して示す断面図である。図14はスタッドボルトの位置とボルトNoの関係を示す模式図、図15(a)〜(c)は収縮状態において各位置でスタッドボルトに作用する軸力(引張荷重)、曲げモーメントおよびせん断力をそれぞれボルトNoとの関係で示す線図である。
【0011】
これらはいずれも、1/8部分タンク模型に基づきFEM解析により算出したものである。なお、数値的には、後述する表1のMOD−2(比較例)の欄に表している。表1は本発明の実施例1,2,3(MOD−1,3,4)および比較例(MOD−2)において半球面部1aと円筒状胴部1bの境界線付近に配置されているスタッドボルトの軸力(引張荷重)、曲げモーメントおよびせん断力をFEM解析に基づき算出した各値を示す。
【0012】
以上の図12〜15および表1から明らかなように、円筒状胴部1bの長手方向の中間位置にあるスタッドボルト(No.0〜9)および半球面部1aの中心位置にあるスタッドボルト(ボルトNo.250)からそれらの境界線位置にあるスタッドボルト(ボルトNo.100〜116)にかけて曲げモーメントおよびせん断力が漸次増大する。つまり、防熱パネルをタンク本体に固定するためにスタッドボルト等の支持具を用いたシリンダ形タンクにおいては、LNG等の極低温物質を貯蔵するために、常圧・極低温下で使用する場合には、熱収縮によりタンクが収縮して、スタッドボルト等の支持具に曲げモーメント及びせん断力が発生し、特に半球面部と円筒状胴部との境界付近に位置するスタッドボルト(ボルトNo.100〜116)に大きな曲げモーメント及びせん断力が作用する。
【0013】
その結果、タンク本体1(シリンダ形タンク)においては、半球面部1aと円筒状胴部1bと境界線位置にあるスタッドボルト(ボルトNo.100〜116)の曲げモーメントは最大となり、それを原因として、スタッドボルトが根元(とくにタンク本体との溶接部付近)から折損あるいは破断に至るおそれがある。
【0014】
この発明は、かかる点に鑑みなされたものであって、熱収縮によりタンクが収縮して、スタッドボルト等の支持具に発生する曲げモーメントを減少若しくはなくすことができる(0にできる)極低温タンク用防熱構造を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明は、凸形断面で定形の防熱パネルを、タンク本体の表面上に相互に隣接して配列し、前記タンク本体に設けられた支持具により取り付け、前記防熱パネルの突部間の目地に合成樹脂材を充填又は発泡することによって前記目地間を埋設する極低温タンク用防熱構造において、前記タンク本体は、円筒状胴部の両端に半球面部を一体に連接してなり、前記支持具は、下側及び上側支持部材と、それらの上下端部を連結するワイヤーやロープなどの索条とにより構成され、前記下側支持部材の下端部が前記タンク本体に固着されていることを特徴としている。
【0016】
このようにすれば、可撓性及び屈曲性に優れる索条を主体的に用いることで、その索条の部分でもって支持具に生じようとする曲げモーメントが吸収されることとなる。よって、タンク本体が熱収縮する際に、支持具に曲げモーメントが作用するということがなくなる。その結果、従来支持具がスタッドボルトである場合にその根元(とくにタンク本体との溶接部付近)から折損あるいは破断するおそれがあったが、そのようなおそれがなくなる。
【0017】
よって、極低温物質の貯蔵による熱収縮により大きく収縮する極低温タンク、すなわちアルミホイル表面シート材を有し内外二層積層構造の合成樹脂発泡体からなる凸形断面で定形の防熱パネルを、タンク本体の表面上に相互に隣接して配列し、前記タンク本体に植設された支持具により取り付け、前記防熱パネルの突部間の目地に合成樹脂材を充填又は発泡することによって前記目地間を埋設し、前記目地の合成樹脂発泡体上およびその周辺の前記アルミホイル表面シート材上に跨がって、前記アルミホイル表面シート材と同一構成のアルミホイル連結シート材を全面的に接着するとともに、前記二層積層構造の内外積層部の中間位置に補強用ワイヤーネットを介装した極低温タンクに適する。
【0019】
また、シリンダ形タンクの円筒状胴部と左右の前記半球面部との境界部分および境界近傍部分だけに前記支持具(下側及び上側支持部材と、それらの上下端部を連結するワイヤーやロープなどの索条とにより構成される支持具)を使用し、そのほかの部分は従来の球形タンクに用いるスタッドボルトを支持具として使用できるので、従来構造とは異なる曲げモーメント抑制構造の使用を必要最小限にして、施工の能率を損なうことがなく、曲げモーメントを抑制することができる。
【0020】
同様に、簡単な構造で、タンク本体の熱収縮する際に支持具に生ずる曲げモーメントを抑制するために、前記索条に代えて、請求項2に記載のように、前記支持具は、上下端部を除く中間部を細径にした可撓性ボルト部材と、前記タンク本体に下端部が固着され上端部に前記可撓性ボルト部材の下端部が連結される下側支持部材とを有する構成とすることもできる。
このようにすれば、防熱パネルをタンク本体に取り付ける支持具が、タンク本体の熱収縮する際に前記支持具に生ずる曲げモーメントを抑制する曲げモーメント抑制構造を備えているため、タンク本体の半球面部と円筒状胴部の境界に位置する支持具に最大に作用する曲げモーメントが大幅に低減される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る防熱構造を備えた極低温用シリンダ形タンクの外観をその一部を切り欠いて示す正面図および右半分を省略した左側面図、図2は同中央縦断面図、図3はタンク上の防熱層の一部を拡大して示す平面図、図4(a)は図3のA−A線における断面図、図4(b)は図3のB−B線における断面図、図5(a)は図4(a)の一部拡大断面図、図5(b)は図4(b)の一部拡大断面図である。図6(a)は図5(b)の上部をさらに拡大した断面図、図6(b)は防熱パネルの実施の形態を示す斜視図である。
【0025】
図1に示すように、タンク本体1は、両端に位置する半球面部1a,1aの間に円筒状胴部1bが配置され、それらが一体に設けられたシリンダ形タンクである。本例では、タンク本体1はアルミニウム合金から形成されている。
【0026】
このタンク本体1の取付固定は、LNG輸送船のホールド内底部に一対の船体側タンク支持部材33,34を長さ方向に一定間隔をあけて立設した後、これらのタンク支持部材33,34の上にタンク側支持部材31,32を載せるように配置されている。なお、前記タンク本体1は一方のタンク側支持部材31が船体側タンク支持部材33に取り付けられたストッパーによりタンク本体1の長さ方向に固定されている。他方のタンク側支持部材32は低温熱収縮によるタンク本体1の長さ方向の変形を吸収できるようにタンク支持部材34に対してスライド可能に載置されている。
【0027】
図2〜図4に示すように、タンク本体1の外周面を被覆する防熱層2は、内側(タンク側)防熱積層部2aと外側防熱積層部2bとの2層積層構造である。前記両防熱積層部2a,2bの間に、網状補強材3のワイヤーネット3aを介装し、防熱層を形成する合成樹脂を発泡成形するときの発泡時自己接着作用あるいは接着剤にて相互に接着して一体化した構造とされる。
【0028】
前記防熱層2は、凸形断面で定形の多数の防熱パネル5(図6(b)参照)をタンク本体1の外周面上に相互に隣接し、従来のスタッドボルト方式ではなく、本発明の特徴とする索条4Aを含む支持具4にて固定される。この索条4Aとしては、可撓性及び屈曲性に優れるワイヤーやロープなどが用いられ、これを用いることによって、支持具4が、前記タンク本体1が熱収縮する際に前記支持具4に生ずる曲げモーメントを抑制する曲げモーメント抑制構造を備えている。
【0029】
この索条4Aの下端部は、図5(b)に示すように、タンク本体1に溶接により固着された下側支持部材4Bの先端環状係止部4Baが係止される一方、上端部は、ワッシャー7及びナット8によって取り付けられる上側支持部材4Cの下端環状係止部4Caに係止されている。
【0030】
前記防熱パネル5は、図1及び図6(b)に示すように、定形(本例では円筒状胴部1bが長辺1.2m×短辺0.9m、半球面部1aが長辺0.9m×短辺0.6m(×厚さ:330mm、この厚さは所要防熱性能の大小に応じて増減され得るものである。))の凸形断面で、内側防熱積層部2a(厚さ210mm)と、凸状の外側防熱層部2b(厚さ120mm)との間に、網状補強材3の一部を構成する平織金網のワイヤーネット3aを一体に介装した構造からなる。内側防熱積層部2aはガラス繊維、天然繊維、化学繊維などで強化された硬質ウレタン樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体などから選択されるが、本例ではフェノール樹脂発泡体からなる。また、外側防熱層部2bは、硬質ウレタン樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、スチレン樹脂発泡体などから選択されるが、本例ではポリウレタン発泡体からなる。
【0031】
前記防熱パネル5の表面は、アルミホイル表面シート材6(アルミニウム合金による表面シート材)により被覆されている。この表面シート材6は、図6(a)に一部を示すように、厚さ25μmのアルミホイル(アルミ箔)6aを主体として、このアルミホイル6aの表面に、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム6bをラミネーティングあるいはコーティングにより一体に積層し、アルミホイル6aの裏面(内面)に、厚さ100μmほどの不織布6cを一体に積層した構造からなる。
【0032】
図4(b)及び図5(b)に示すように、タンク本体1の外周面には、先端に環状係止部4Baを有する下側支持部材4Bの下端部が、一定の間隔(本例では、半球面部1a:225mmm又は450mm、円筒状胴部1b:600mm)をあけて、溶接により固着されている。また、この下側支持部材4Bの環状係止部4Baには、索条4Aの下端部が係止されている。索条4Aは、内側防熱積層部2aに対応する一定の長さを有し、それの上端部は上側支持部材4Cの下端の環状係止部4Caに係止されている。
【0033】
そして、前記防熱パネル5のワイヤーネット3a上には網状補強材3の連結用ワイヤーネット3bが跨がって配置されているので、前記上側支持部材4Cの雄ねじ部4Cbは、前記連結用ワイヤーネット3bを貫通し、ワッシャー7を挿通したうえナット8で締め付けるとともに、ワッシャー7(ピン状突起7a)により連結用ワイヤーネット3bとワイヤーネット3aとを重ね合わせた状態で保持している。このワッシャー7及びナット8による取り付けは、従来の支持具であるスタッドボルトの上端部の取り付けと同じである(図12(b)参照)。
【0034】
前記索条4Aは、可撓性及び柔軟性に優れるので、タンク本体1の熱収縮の際に、曲げモーメントが作用しようとしても、それを吸収する方向に変形し、結果として曲げモーメントは作用しない。ここで、前記索条4Aは、下側支持部材4Bを介してタンク本体1に取り付けるようにしているが、索条4Aの下端部をタンク本体1の外周面に溶接により直接に固着することもできる。
【0035】
隣接する防熱パネル5の外側防熱層部2bの間は目地(空隙)になっており、この目地に外側防熱層部2bと基本的には同一種類の合成樹脂材を少なくとも充填又は発泡の一方を行うことにより、本例では、ポリウレタン発泡体9によって目地を埋めている。
【0036】
このポリウレタン発泡体9の表面上には、図6(a)に示すように両側の防熱パネル5のアルミホイル表面シート材6の外縁部上から、アルミホイル連結シート材11を接着している。このアルミホイル連結シート材11は、前記アルミホイル表面シート材6の外縁部上に連続して(浮かせずに)貼着される両面接着のブチルラバーシート11a(厚さが例えば500μm)と、このラバーシート11a上に全面的に貼着又は接着される厚さ25μmのアルミホイル(アルミ箔)11bと、このアルミホイル11bの表面に、ラミネーティングあるいはコーティングにより一体に積層した厚さ50μmほどのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム11cとの積層構造からなる。
【0037】
以上のようにして防熱層2によりタンク本体1の外周面が被覆され、本例の防熱構造が構成される。そして、従来の構造では、支持具として、同一径のスタッドボルト21(図12(b)参照)を使用しているが、それに代えて、本発明においては、ロープやワイヤーなどの索条4Aを利用した支持具4を用いているので、タンクの熱収縮により、曲げモーメントは作用せず、従来の曲げモーメントの発生による支持具4の損傷などの問題がなくなる。
【0038】
次の表1におけるMOD−1は、本発明の実施例のFEM解析結果を表す数値であり、図7(a)〜(c)は熱収縮状態で、各位置の索条に作用する軸力、曲げモーメント及び剪断力をボルトNo(位置)との関係で順に示している。図8(a)(b)はMOD−1における防熱パネルの状態から熱収縮した状態を示す部分断面図及びその一部拡大図である。
【0039】
【表1】
この表1及び図7より明らかなように、索条4Aを用いた支持具4とすれば、軸力が作用するだけで、曲げモーメント及び剪断力は、半球面部−円筒部(円筒状部)との境界部分を含めて全体に亘って作用せず、0となる。
【0040】
本発明は、以上説明した実施の形態に制限されることなく、次のように変更することも可能である。
(1)前記実施の形態においては、前記支持具4を、索条4A、下側支持部材4B及び上側支持部材4Cでもって構成しているが、それに代えて、図9に示すように、上下両端部を除き中間部分を細くしたボルト部材を使用する支持具とすることも可能である。
【0041】
この支持具14は、タンク本体1と同質のアルミニウム合金製の下側支持部材15と、ステンレス製の可撓性ボルト部材16とから構成される。前記支持部材15は、雌ねじ孔部15aと、タンク本体1に溶接により固着される根元部15bとが一体に形成されている。前記可撓性ボルト部材16は、例えば、上下両端部が雄ねじ部16a,16bで、中間部分が雄ねじ部16a,16bより外径が小さい細径部16cとされ、中間部分において曲がりやすくしている。前記可撓性ボルト部材16の下側の雄ねじ部16bは支持部材15の雌ねじ部15aに螺合することで取り付けられ、上側の雄ねじ部16aは、従来のスタッドボルトと同様に、ワッシャー7やナット8を用いて取り付けられる。
【0042】
そして、鉄製のワイヤーネット3aの線径について、半球面部1aのワイヤーネット3aを0.70mmとし、円筒状胴部1bのワイヤーネット3aの線径を0.62mmにし、タンク本体1における半球面部1aの半径が約4500mm、円筒状胴部1bの長さが約14000mmなど、支持具14の構成以外は、MOD−1と構成部材および固定ピッチなどがそれぞれ共通する。可撓性ボルト部材16の上下両端部(雄ねじ部16a,16b)を外径6.0mm、中間部分(細径部16b)を外径4.0mm、あるいは4.5mmの細径とすると(MOD−3,MOD−4)、可撓性ボルト部材16に作用する軸力はMOD−2(比較例)の場合とほとんど変化がないが、曲げモーメントについては、MOD−2に比べてさらに低減されており、可撓性ボルト部材16による曲げモーメントの低減効果が十分にあるものと認められる(表1のMOD−3,MOD−4参照)。
(2)また、図10に示すように、前記可撓性ボルト部材16に代えて、フック部17Aa,17Baを有する上側部材17Aと下側部材17Bとで構成されるボルト部材17を用いることも可能である。この場合は、フック部17Aa,17Ba同士を互いに相対回転可能に結合し、両部材17A,17Bをあたかもユニバーサルジョイントで結合したようになる。上側部材17A及び下側部材17Bの雄ねじ部17Ab,17Bbの取り付けは、前記可撓性ボルト部材16の場合と同様である。
(3)前記実施の形態では、索条を用いる支持具(曲げモーメント抑制構造)をすべての支持具に対して適用するようにしているが、本発明はそれに制限されるものではなく、そのような支持具を、特に作用する曲げモーメントが大きくなる前記タンク本体の円筒状胴部と左右の前記半球面部との境界部分および境界近傍部分において使用し、そのほかの部分は全長にわたり同一径のスタッドボルト(従来の支持具)を使用することも可能である。
(4)本発明の対象とする極低温タンクは、主として円筒状胴部の両端に半球面部を一体に連接したシリンダ形タンクであるが、球形などの曲率を有するものであれば適用可能で、地上に設置されるものだけでなく、たとえば、船舶に搭載されるものを含む。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、この発明の極低温タンク用防熱構造には、次のような優れた効果がある。
【0044】
請求項1の発明は、防熱パネルをタンク本体に取り付ける支持具を、下側及び上側支持部材と、それらの上下端部を連結するワイヤーやロープなどの索条とにより構成するので、その索条で曲げモーメントを吸収することができ、タンク本体が熱収縮する際に、前記支持具に曲げモーメントが作用するということがなくなる。よって、従来支持具がスタッドボルトである場合にはその根元(とくにタンク本体との溶接部付近)から折損あるいは破断するという事態が生ずるおそれがあったが、それを回避することができる。
【0045】
特に、前記下側及び上側支持部材と、それらの上下端部を連結するワイヤーやロープなどの索条とにより構成される支持具は、前記タンク本体の円筒状胴部と左右の前記半球面部との境界部分および境界近傍部分に使用し、そのほかの部分は全長にわたり同一径のスタッドボルトを使用するので、従来構造とは異なる曲げモーメント抑制構造の使用を必要最小限にして、施工の能率を損なうことがなく、曲げモーメントを抑制することができる。
【0046】
また、請求項2の発明は、前記索条に代えて、前記支持具を、上下端部を除く中間部を細径にした可撓性ボルト部材と、前記タンク本体に下端部が固着され上端部に前記可撓性ボルト部材の下端部が連結される下側支持部材とを有する構成とすることでも、簡単な構造で、タンク本体が熱収縮する際に支持具に生ずる曲げモーメントを抑制することができる。
【0047】
そして、前記可撓性ボルト部材を、前記タンク本体の円筒状胴部と左右の前記半球面部との境界部分および境界近傍部分に使用し、そのほかの部分は全長にわたり同一径のスタッドボルトを使用するので、請求項1の発明と同様に、施工の能率を損なうことがなく、曲げモーメントを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防熱構造を備えた極低温用シリンダ形タンクの外観をその一部を切り欠いて示す正面図および右半分を省略した左側面図である。
【図2】図1のタンクの概要を示す中央縦断面図である。
【図3】図1のタンク上の防熱層の一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図4(a)は図3のA−A線における断面図、図4(b)は図3のB−B線における断面図である。
【図5】図5(a)は図4(a)の一部拡大断面図、図5(b)は図4(b)の一部拡大断面図である。
【図6】図6(a)は図5(b)の上部をさらに拡大した断面図、図6(b)は防熱パネルの実施の形態を示す斜視図である。
【図7】図7(a)〜(c)は表1におけるMOD−1(実施例1)の熱収縮状態でタンク各位置の支持具に作用する軸力、曲げモーメントおよびせん断力をボルトNo(位置)との関係で順に示す線図である。
【図8】図8(a)(b)はMOD−1(実施例1)における防熱パネルの常態から熱収縮した変形状態を示す部分断面図とその一部拡大断面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態を示す要部正面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態を示す要部正面図である。
【図11】球形タンクの常態と熱収縮時とを示す断面図である。
【図12】図12(a)はシリンダ形タンクの常態と熱収縮時とを示す断面図、図12(b)は従来のスタッドボルトの取付状態の説明図、図12(c)はワッシャーの平面図、図12(d)の左半分は同正面図・右半分は同断面図である。
【図13】図13(a)(b)はMOD−2(比較例)における防熱パネルの常態から熱収縮した変形状態を示す部分断面図とその一部拡大断面図である。
【図14】シリンダ形タンクにおけるスタッドボルトの位置とボルトNoの関係を1/8部分モデルにおいて示す模式図である。
【図15】図15(a)〜(c)は表1におけるMOD−2(比較例)の熱収縮状態においてタンク各位置のスタッドボルトに作用する軸力、曲げモーメントおよびせん断力をボルトNo(位置)との関係で順に示す線図である。
【符号の説明】
1 タンク本体
1a 半球面部
1b 円筒状胴部(円筒部)
2 防熱層
2a 内側防熱積層部
2b 外側防熱積層部
3 網状補強材
4,14 支持具
4A 索条
4B 下側支持部材
4C 上側支持部材
5 防熱パネル
15 下側支持部材
16 ボルト部材
17 ボルト部材
17A 上側部材
17Aa フック部
17Ab 雄ねじ部
17B 下側部材
17Ba フック部
17Bb 雄ねじ部
Claims (2)
- 凸形断面で定形の防熱パネルを、タンク本体の表面上に相互に隣接して配列し、前記タンク本体に設けられた支持具により取り付け、前記防熱パネルの突部間の目地に合成樹脂材を充填又は発泡することによって前記目地間を埋設する極低温タンク用防熱構造において、
前記タンク本体は、円筒状胴部の両端に半球面部を一体に連接してなり、
前記支持具は、下側及び上側支持部材と、それらの上下端部を連結するワイヤーやロープなどの索条とにより構成され、前記下側支持部材の下端部が前記タンク本体に固着され、
前記下側及び上側支持部材と、それらの上下端部を連結するワイヤーやロープなどの索条とにより構成される支持具は、前記タンク本体の円筒状胴部と左右の前記半球面部との境界部分および境界近傍部分に使用し、そのほかの部分は全長にわたり同一径のスタッドボルトを使用することを特徴とする極低温タンク用防熱構造。 - 凸形断面で定形の防熱パネルを、タンク本体の表面上に相互に隣接して配列し、前記タンク本体に設けられた支持具により取り付け、前記防熱パネルの突部間の目地に合成樹脂材を充填又は発泡することによって前記目地間を埋設する極低温タンク用防熱構造において、
前記タンク本体は、円筒状胴部の両端に半球面部を一体に連接してなり、
前記支持具は、上下端部を除く中間部を細径にした可撓性ボルト部材と、前記タンク本体に下端部が固着され上端部に前記可撓性ボルト部材の下端部が連結される下側支持部材とを有し、
前記可撓性ボルト部材は、前記タンク本体の円筒状胴部と左右の前記半球面部との境界部分および境界近傍部分に使用し、そのほかの部分は全長にわたり同一径のスタッドボルトを使用することを特徴とする極低温タンク用防熱構造。
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