JP3791792B2 - 排ガス処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置等から排出される排ガス中に含まれる可燃性ガスを燃焼させる排ガス処理装置に関するものであり、特に可燃性ガスが水素(H2)のときに好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造装置や液晶製造装置などの製造装置から排出され排ガスには、有毒な可燃性ガスが含まれていることが多いので、そのまま大気に放出することはできない。そこで、排ガス処理装置を使って、大気放出前に可燃性ガスを熱源によって燃焼させることが行なわれている。従来、排ガス処理装置には、熱源の種類に応じて、ガスバーナ方式(例えば、特許文献1参照)と、電気スパークの着火、燃焼方式(例えば、特許文献2参照)とがある。
【0003】
図3はガスバーナ方式を用いた排ガス処理装置を示し、(a)は装置の側面部分断面図、(a)は装置のシステム構成図である。
【0004】
図3(a)に示すように、排ガス処理装置は、可燃性ガスを燃焼させる燃焼室1を有する。燃焼室1は、冷却用の空気を取り込む空気取込口12を設けたハウジング31内に設けられる。燃焼室1には可燃性ガス導入管8と排気管11とが接続され、可燃性ガスを導入しつつ燃焼した排気ガスを排気するようになっている。燃焼室1内にはガスバーナ13が設けられ、このガスバーナ13に圧縮空気配管14からは圧縮空気を、ガスボンベ15からはプロパンガスなどの燃焼用ガスをそれぞれ供給して、ガスバーナ13で燃焼用ガスを着火・燃焼させて、炎10を形成するようになっている。燃焼室1の炎10の下流側にはハウジング31内の冷却空気を取り込む空気孔が矢印と接する箇所に設けられる。
【0005】
図3(b)に示すように、排ガス処理装置システムは、ドライポンプユニット17とハウジング31付きの排ガス処理装置と、減圧用のブロアファン16を有するスクラバユニット18とから構成される。ドライポンプユニット17によって可燃性ガス導入管8から排ガス燃焼装置へ可燃性ガスを供給するようになっている。排ガス燃焼装置で燃焼した後の排気ガスはスクラバユニット18に設けたブロアファン16によって排気管11から吸引されてスクラバによって成分調整され、大気に放出される。
【0006】
上記のように構成において、ガスバーナ13で燃焼用ガスなどを燃焼して得た炎10の中に可燃性ガスを通すことによって、可燃性ガスを燃焼させる。燃焼後の排気ガスは、矢印が接している箇所に設けられた空気孔から流入する冷却空気により冷却され、また希釈されて排気管11から大気中に放出される。
【0007】
この装置では、着火原料として可燃性ガス以外の燃焼用ガスを使用しているため、装置内のプロパンガス等の燃焼用ガスの保守が頻繁で、随時交換が必要になる。また、スクラバの下流にスクラバへ排気ガスを引き込むためのブロアファンを備える必要があるために、排ガス処理装置とは別個にスクラバユニットを必要とする。また、スクラバを介して吸引することになるブロアファンによっては可燃性ガスを燃焼室に導入できないので、可燃性ガスを燃焼室に導入するためのドライユニットポンプも必要とするために、設備コストが上がる。
【0008】
図4は電気スパーク方式を用いた排ガス処理装置を示し、(a)は装置の正断面図、(b)は装置の側断面図である。基本的構成は、図3に示すガスバーナ方式と同じである。異なる点は、着火・燃焼をガスバーナに代えて、電気スパークで行わせる点である。電気スパークの構成は、電圧を高める昇圧トランス26にバーナ電極28、28が接続され、高電圧によりスパークさせるというものである。
【0009】
排気管11から吸引することにより、多数の空気取込口12から燃焼室1内に空気を取り込み、燃焼室1内に常時空気を流しておく。空気が常時流れている燃焼室1内に着火用ガス配管24から水素(H2)ガスを流し、電気的スパークのエネルギーにより大気中の酸素と反応させて水素を着火させる。着火後、可燃性ガス導入管8から排ガスを燃焼室1内に流して大気中の酸素と混合させ、着火による炎により、排ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させ、排ガスの燃焼処理を行なう。
【0010】
ところが、着火出来ない時に電気スパークが繰り返しスパークしてしまい、着火した時に可燃性ガスの濃度が異常に高い濃度に達していれば、不具合が発生する場合がある。また、バーナ電極25の劣化によって確実に電気スパークされず着火できないこともある。着火後の炎10は、排気管11の圧力によってふらつき、燃焼効率が不安定になる。さらに、減圧にすると着火用ガスが着火するために、必要な空気中の酸素が足りなくり、着火ができないという問題がある。
【0011】
【特許文献1】
特開昭62−134414号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平6−129627号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術には次のような問題点があった。ガスバーナ方式では、保守が頻繁であり、減圧するために燃焼装置とは別のユニットを追加する必要があることで設備投資コストがかかっている。また、電気スパーク方式は、減圧できないという欠点があった。排ガス処理装置において、一般的には、燃焼室を減圧することは燃焼に不利であるが、燃焼室の減圧はユーザの要請であり、この要請に応える排ガス処理装置の実現が望まれている。
【0014】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、メンテナンスを容易にし、減圧するために別ユニットを必要とせず、減圧しても着火不具合が生じないようにした排ガス処理装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段および作用】
第1の発明は、燃焼室と、燃焼室内に可燃性ガスを含む排ガスを導入するための可燃性ガス導入管と、燃焼室内を排気する排気管と、燃焼室内に大気を取り込むための空気取込口と、前記排気管に設けられ、前記燃焼室内を吸引して前記燃焼室内に前記可燃性ガス導入管から可燃性ガスを導入し、前記空気取込口から大気を導入するガス吸引手段と、前記燃焼室内に設けられ前記排ガス中に含まれる可燃性ガスを着火・燃焼させる多重熱源と、前記燃焼室及び前記排気管間に設けられ、燃焼により生じた高温の排気ガスを冷却する冷却手段とを備え、前記多重熱源が、前記可燃性ガス導入管の導出口に連通した筒状の第1熱源部と、筒状の第1熱源部に設けられた第1電熱ヒータと、前記第1熱源部の筒内に挿入されて、筒状の第1熱源部との間にガス流路を形成する第2熱源部と、前記第2熱源部に設けられた第2電熱ヒータと、前記第1熱源部に設けられ前記空気取込口から前記燃焼室内に取り込まれた空気を前記ガス流路に導入する空気孔とを有するものである排ガス処理装置である。
【0016】
熱源を多重熱源構造にすることにより、燃焼室を減圧しても、可燃性ガスの燃焼効率が落ちるのを防止できる。また、電熱ヒータによる熱源を用いているので、ガスバーナ方式のようにガスボンベの頻繁な交換を必要とせず、メンテナンスが容易になる。また、多重熱源によるエネルギーと空気とによりガス流路内で直接可燃性ガスに着火させることができるので、着火用のガス設備を必要とせず装置を簡素化できる。さらに、冷却手段で燃焼後の排気ガスを冷却して不必要な成分を冷却手段によって取り除くので、スクラバなしに燃焼ガスを大気に放出することができる。スクラバが不要となるので、ドライポンプユニットを必要とせずに、ガス吸引手段によって可燃性ガスを燃焼室に導入できる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、前記燃焼室及び前記排気管間に、燃焼室の上部から燃焼室に沿って下降して、燃焼室と並行に起立した排気管に接続する蛇行状に曲げ加工した接続管を設け、該接続管に前記冷却手段を設けた排ガス処理装置である。蛇行状に曲げ加工した接続管に冷却手段を設けるので、冷却長を十分に取ることができ、高温になった燃焼ガスを有効に冷却できる。また、接続管を蛇行させたので、装置高を抑えることができる。
【0018】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、ガス吸引手段を制御するガス吸引制御手段を設け、前記空気取込口から燃焼室内に取り込まれる空気取込量を調整可能としたことを特徴とする。空気取込口から燃焼室内に取り込まれる空気取込量を調整することにより、可燃性ガスの燃焼効率を向上できる。
【0019】
第4の発明は、第1ないし第3の発明において、前記ガス吸引手段により減圧される燃焼室内の圧力が大気圧〜−1500Paであることを特徴とする。燃焼室内の圧力が大気圧〜−1500Paの範囲でも、可燃性ガスを安定して燃焼することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は実施の形態による排ガス処理装置を示し、(a)は正断面図、(b)は側面図である。
【0022】
排ガス処理装置は、燃焼室1と、燃焼室1を収容するハウジング31と、ハウジング31の下部に設けられた制御室21とを備える。制御室21には、電源や温度コントローラ、吸引手段コントローラなどが収納される。ハウジング31にはハウジング31内を大気雰囲気とするめに、外気と連通する開口部(図示せず)が設けられている。
【0023】
燃焼室1には、燃焼室1内に可燃性ガスを含む排ガスを導入するためにハウジング31を介して挿入した可燃性ガス導入管8が設けられる。燃焼室1の下部に大気を取り込むための空気取込口12が設けられる。
【0024】
また、燃焼室1内に電熱ヒータで加熱される多重熱源30が設けられ、排ガス中に含まれる可燃性ガスに着火して可燃性ガスを燃焼させるようになっている。この多重熱源30は、可燃性ガス導入管8の導出口に連通した筒状の第1熱源部(多重熱源30の外観として現われている)と、第1熱源部の筒内に挿入されて、筒状第1熱源部との間にガス流路(図示せず)を形成する第2熱源部(図示せず)と、第1熱源部に設けられ、燃焼室1の空気取込口12から取り込まれた空気をガス流路に導入する空気孔4とを有する。
【0025】
また、燃焼室1は燃焼室1内の雰囲気ガスを排出する排気管11と連通している。排気管11の手前に燃焼後の排気ガスを冷却する冷却手段として例えば冷却用ラジエータ19が設けられ、燃焼により生じた高温の燃焼ガスを含むガスを冷却するようになっている。冷却用ラジエータ19は、排気管11と燃焼室1との間に配設される接続管22に設けられる。接続管22は、蛇行状に曲げ加工されている。すなわち、接続管22は、燃焼室1の上部から燃焼室1に沿って燃焼室1とは離間させて下降させ、燃焼室1と並行に起立した排気管11の下部に接続されるようになっている。排気管11の下部ないし途中に減圧するためのガス吸引手段としてのブロアファン20が設けられ、接続管22を介して燃焼室1内を吸引して燃焼室1内に可燃性ガス導入管8から可燃性ガスを導入するとともに、空気取込口12から大気を導入するようになっている。ブロアファン20は制御室21内に設けた吸引手段コントローラによって空気取込量を調整可能としている。
【0026】
上記燃焼室1、冷却用ラジエータ19、ブロアファン20などは、複数の支持脚23によって制御室21の上に支持されている。
【0027】
このような構成によれば、熱源30を多重熱源構造にすることにより一方の熱源が断線による機能停止をした場合でも、他方の熱源が機能を継続できる。また、可燃性ガスが確実に熱源部に触れることにより、確実に着火でき、高効率な燃焼ができる。また、多重熱源30によるエネルギーと空気とによりガス流路内で直接可燃性ガスに着火させることができるので、着火用のガス設備を必要とせず装置を簡素化できる。さらに、高温の燃焼ガスを冷却用ラジエータ19で冷却するので、燃焼ガスを高温のまま大気に放出するのを防止できる。また、冷却した燃焼ガスを排気管11から放出するので、排気管11が高温加熱されるのを防止でき、安全性を高めることができる。
【0028】
また、蛇行状に曲げ加工した接続管22に冷却用ラジエータ19を設けるので、冷却長を十分に取ることができ、高温になった燃焼ガスを有効に冷却できる。また、接続管22を蛇行させたので、燃焼装置の装置高を抑えることができる。
【0029】
図2は、ハウジング31に収容された燃焼室1及びその周辺の詳細図を示す。燃焼室1は、燃焼室1内に2個以上設けられて、可燃性ガスを着火させるとともに燃焼させるための熱エネルギーを放出する熱源30と、熱源30の温度を検知する温度検知手段(図示せず)と、検知温度に基づいて熱源30を制御する制御部としての温度コントローラ7とを備える。
【0030】
燃焼室1は、例えばステンレスなどの耐熱性金属部材で構成され、内部で可燃性ガスを燃焼させるようになっている。燃焼室1の下部から燃焼室1内に可燃性ガス導入管8が挿入されて、燃焼室1内に可燃性ガスを含む排ガスを導入するようになっている。可燃性ガス導入管8は垂直部8aと水平部8bとを有し、その垂直部8aの上部が燃焼室1内に挿入され、その水平部8bが図示しない半導体製造装置の排気口と連結され、半導体製造装置から排出される可燃性ガスを含む排ガスを燃焼室1内に導入するようになっている。ここで、半導体製造装置から排出される可燃性ガスは、例えば、H2ガスである。
【0031】
燃焼室1の上部に排気管11が設けられ、可燃性ガスを燃焼した排ガスを含む燃焼室1内の雰囲気を大気中に放出するようになっている。
【0032】
可燃性ガス導入管8が挿入された燃焼室1の下部の外周に、複数の空気取込口12が設けられ、燃焼室1の外部から燃焼室1内に支燃性ガスとしての大気(空気)を取り込めるようになっている。
【0033】
燃焼室1の炎10が発生する上部内側壁にこれを覆う冷却ユニット9が設けられ、燃焼により炎10に晒されて加熱される側壁を冷却できるようになっている。冷却ユニット9は、例えば水等の冷媒を循環させて壁面を冷却する冷却ジャケットで構成しても、または単に断熱材を内側壁にコーティングするだけで構成してもよい。なお、冷却ユニット9は燃焼室1の全周内壁、または外壁に設けてもよい。
【0034】
熱源30は、2個以上の熱源部2、3から構成される。ここでは、第1の熱源部2と第2の熱源部3とから構成され、同軸的に配置された2重熱源構造としている。
【0035】
外側に配置される第1の熱源部2は、可燃性ガス導入管8と同径の円筒状をしており、可燃性ガス導入管8の直上に設けられ、導出口8c(水平線を引いて示す)と連通している。筒状の第1熱源部2の部内には、第1電熱ヒータ(図示せず)が設けられ、第1熱源部2を加熱できるようになっている。第1電熱ヒータを筒内に設けるには、筒内に電熱ヒータを埋め込むか、または第1熱源部2内に空洞を形成し、その空洞内に電熱ヒータを配設するようにしてもよい。電熱ヒータはこれに供給される電力量によって第1熱源部2の温度をコントロールできるようになっている。ここで、電熱ヒータは、例えばカンタル線で構成される。
【0036】
内側に配置される第2の熱源部3は、棒状ないし円柱状(以下、単に棒状という)をしており、第1熱源部2の筒内から、これに連通している可燃性ガス導入管8の垂直部8aにわたって挿入され、筒状第1熱源部2及び可燃性ガス導入管8の垂直部8aとの間にガスを流す円筒形のガス流路27を形成している。第2熱源部3の上端は第1熱源部2の筒口(ガス流路口)から少しはみ出すように配置しても、はみ出さずに同じ高さにしてもよく、下端は可燃性ガス導入管8の垂直部8aから管外に取り出すようにしている。棒状の第2熱源部3の部内には、第1電熱ヒータと同様の第2電熱ヒータ(図示せず)が設けられ、第2熱源部3を加熱できるようになっている。第2電熱ヒータを棒内に設けるには、棒内に電熱ヒータを埋め込むか、または第2熱源部3内に空洞を形成し、その空洞内に電熱ヒータを配設するようにしてもよい。棒状の第2熱源部3の発熱部は、第2熱源部の全長としてもよいが、少なくとも第1熱源部2と重なっている上部だけでよい。この場合、電熱ヒータは、第2熱源部3の上部にのみ配設すればよく、上部のみが実質的な第2熱源部3を構成する。
【0037】
また、第1熱源部2の筒壁下部に空気孔4が設けられ、燃焼室1下部に設けた空気取込口12から燃焼室1内に取り込まれた空気を、第1熱源部2と第2熱源部3との間に形成されたガス流路27内に取り込んで、可燃性ガス導入管8を通ってガス流路27に導入される排気ガスに混合するようになっている。この排気ガスとの混合を容易にするために、空気孔4は第1熱源部2の筒壁の外周に沿って複数設けるようにする。
【0038】
第1熱源部2の内周壁と第2熱源部3の外周壁の間のガス流路27に流れる可燃性ガスの圧力は、空気孔4の外周圧力より低くなるために、燃焼室1内の空気が第1熱源部2の内周壁と第2熱源部3の外周壁との間のガス流路27に流れる。
【0039】
温度検知器(図示せず)は、第1熱源部2の温度を検知する第1温度検知器(図示せず)と、第2熱源部3の温度を検知する第2温度検知器(図示せず)とから構成される。第1温度検知器及び第2温度検知器は、例えば熱電対で構成されて、それぞれ第1熱源部2内及び第2熱源部3内に埋め込まれる。
【0040】
第1熱源部2の第1電熱ヒータに電力を供給する2本の電源ケーブル6a、6bは筒状の第1熱源部2の上部と下部とから引き出されて燃焼室1の下部を通して温度コントローラ7に接続される。第2熱源部3の第2電熱ヒータに電力を供給する2本の電源ケーブル26a、26bは、共に第2熱源部3の下端から引き出されて温度コントローラ7に接続される。
【0041】
第1温度検知器の温度検知信号を伝えるケーブル5aは、第1熱源部2内に埋め込んだ熱電対から空気孔4を介して引き出し燃焼室1の下部を通して温度コントローラ7に接続される。第2温度検知器の温度検知信号を伝えるケーブル6bは棒状第2熱源部3の下端から引き出して温度コントローラ7に接続される。
【0042】
温度コントローラ7は、第1熱源部2及び第2熱源部3が設定温度になるように、第1温度検知器及び第2温度検知器の検知温度に基づいて、第1電熱ヒータ及び第2電熱ヒータへの電力を制御するようになっている。
【0043】
次に上述したように構成した排ガス処理装置の動作について説明する。
【0044】
燃焼室1内の雰囲気を排気管11からブロアファン20により吸引して、燃焼室1の下部に設けた空気取込口12からハウジング31内の空気を燃焼室1内に取り込むことにより、燃焼室1内に風量を制御された空気が常時流れるようにする。吸引手段コントローラでブロアファン20の風量を制御することにより燃焼室1内に所望の減圧状態を作り出す。
【0045】
第1熱源部2及び第2熱源部3の各電熱ヒータに電流を流し、温度コントローラ7による制御によって、第1熱源部2及び第2熱源部3を前述した設定温度になるように加熱する。加熱温度は、第1熱源部2及び第2熱源部3間に形成されるガス流路27を流れる混合ガスが、水素などの着火ガスを必要とすることなく、可燃性ガス導入管8から導入される可燃性ガスが直接着火するのに十分な温度とする。
【0046】
加熱後、可燃性ガス導入管8のバルブ(図示せず)を開いて、図示しない半導体製造装置の排気口と可燃性ガス導入管8とを連通させて、ブロアファン20の吸引により半導体製造装置から排出される排ガスを可燃性ガス導入管8に導入する。燃焼室1が圧力が制御された減圧状態となっているので、ドライポンプなしに、可燃性ガスを燃焼室1内に導入できる。可燃性ガス導入管8を経て熱源30内のガス流路27を上昇してくる排気ガスは、途中で、第1熱源部2に設けた空気孔4から風量が制御されて引き込まれる燃焼室1内の空気と混合されて、温度コントローラ7で温度コントロールされた2重熱源30の熱エネルギーにより加熱されたガス流路27を通過する際、可燃性ガスが確実に熱源部2、3に触れるため、燃焼温度に高められる。このため、着火装置を別個に要することなく、可燃性ガスは減圧状態にあるガス流路27内で燃焼反応が起き、着火して燃焼する。可燃性ガスは、2重熱源30による高熱エネルギーと空気孔4から入る空気の酸素とにより燃焼するので、排気ガスに含まれ可燃性ガスが低濃度でも効率良く燃焼できる。
【0047】
濃度の高い可燃性ガスは、空気孔4からガス流路27内に取り込まれる酸素だけでは反応できず、未燃ガスとして第1熱源部2の導出口2aから出てくるが、その導出口2a近傍には、空気取込口12から燃焼室内に取り込まれた十分な空気が存在しているため、濃度の高い可燃性ガスは空気と十分に混合される。しかも、導出口2a近傍では、第1熱源部2及び第2熱源部3によって高温になっているばかりか、ガス流路27内の燃焼して流路口から出る炎によっても加熱されているため、濃度の高い可燃性ガスであっても容易に燃焼することになる。
【0048】
可燃性ガス導入管8から燃焼室1内に導入する排ガスの可燃性ガスと不燃性ガスとの混合ガス流量は、5〜200L/minの範囲であれば安定した燃焼を実現できる。
【0049】
この燃焼による炎10の熱によって、燃焼室1の上部内側壁は、高温に晒されるが、実施の形態では、上部内側壁に冷却ユニット9を設けているので、冷却ユニット9が熱を遮断して内側壁が高温に晒されるのを防ぐために、燃焼室1の側壁は熱から有効に保護される。
【0050】
燃焼によって発生した高温排ガスや当初から排ガス中に含まれていた高温非可燃性ガス、そして余剰の高温空気は、燃焼室1上部の接続管22から排出される過程で、接続管22に設けられた冷却用ラジエータ19によって冷却される。この冷却によって200℃程度のガス温度が40℃程度に冷却され、不必要なガス成分は接続管22の内壁に固着されるので、排気ガスは希釈される。冷却されたガスは排気管11から大気中に放出される。
【0051】
ここで、筒状の第1熱源部2と棒状の第2熱源部3との隙間は2〜20mmの範囲が燃焼を有効にするために適当である。隙間が2mm未満の場合には、空気が十分に取り込まれず燃焼が不完全になる。逆に20mmを超えると、圧力差が生じなくなって空気がガス流路27内に取り込まれなくなり、燃焼しなくなる。
【0052】
また、筒状の第1熱源部2の全長は30〜300mmの範囲が適当である。全長が30mm未満の場合には、ガス流路27に引き込まれた空気の加熱が不十分であるので、燃焼が不完全になる。逆に300mmを超えると、大型化するため好ましくない。
【0053】
また、温度コントローラ7によって制御される第1熱源部2及び第2熱源部3の設定温度は650〜1000℃の範囲が適当である。650℃未満の場合には、燃焼が不完全になり、H2とO2とが反応しない。また、1000℃を超える温度を作る熱源やその温度に耐える燃焼室構造を実現するのが難しい。
【0054】
また、排ガスの可燃性ガスと不燃性ガスとの混合ガス流量は5〜200L/minの範囲が適当である。混合ガス流量が5L/min未満であると、燃焼効率が悪い。逆に200L/minを超えると不完全燃焼するため好ましくない。
【0055】
上述したように実施の形態によれば、熱源としてガスボンベを頻繁に交換する必要のあるガスバーナ方式に代えて、燃焼用ガスのためのガスボンベを必要としない電熱ヒータ2重熱源方式を採用したので、ガスバーナ方式と比較してメンテナンスサイクルを向上することができる。
【0056】
また、2重熱源を用いたことにより燃焼室の小型化を図り、またハウジング内に蛇行状に冷却用ラジエータ19を設けることにより、ハウジング内のスペースに余裕をもたせるようにしたので、大型化することなく、ハウジング31内に減圧用のブロアファン20を設けることができる。
【0057】
また、燃焼後の排気ガスを冷却して排気ガス中の不必要な成分を排気管内壁に固着させるようにして、スクラバの設置を省略できるようにしたので、スクラバ用のブロアファンが不要となる。したがって、排ガス処理装置内にブロアファンを設けることが可能となり、減圧するためのユニットを別途追加する必要がない。また、排ガス処理装置内に設けたブロアファンによって、ドライポンプユニットを要することなく、可燃性ガスを燃焼室内に導入できる。したがって、装置の簡素化を図ることができ、装置コストを低減できる。
【0058】
また、着火設備を必要とする電気スパーク方式に代えて、着火設備を必要としない2重熱源方式を採用しているので、減圧にしても着火用ガスが着火して可燃性ガスの燃焼に必要な空気中の酸素が足りなくなるという不具合がなくなり、減圧状態でも低濃度の可燃性ガスを効率よく燃焼できる。
【0059】
また、実施の形態によれば、2重熱源で高温加熱される狭いガス流路27内で可燃性ガスを空気と混合して燃焼させるようにしたので、水素などの助燃ガスを用いる着火用のガス設備なしで、ダイレクトに排ガス中に含まれる可燃性ガスを着火、燃焼させることができる。したがって、大気以外の支燃性ガスや着火用ガス設備が不要となるので、装置構成を大幅に簡素化できる。
【0060】
また、熱源を、独立して電力制御できる2重熱源30としたので、単一熱源方式と異なり、一方の熱源が断線しても、残った他方の熱源で熱供給ができるので、燃焼を継続できる。したがって、熱源に一部に断線が生じても、未燃ガスは生じず、危険な未燃ガスが排気管11から大気中に放出されることを有効に防止できる。
【0061】
また、熱源30を、内部にガス流路27を形成した2重熱源としたので、燃焼領域がガス流路27と熱源30上部との二ヶ所に設けられることになり、一方のガス流路27では濃度の低い可燃性ガスを燃焼でき、他方の熱源30上部では濃度の高い可燃性ガスを燃焼させることができる。したがって、可燃性ガス濃度にかかわらず、排ガス中に含まれる可燃性ガスを有効に燃焼させることができる。また、燃焼室1を減圧しても着火・燃焼の不具合が生じない。
【0062】
また、2重熱源30により生じる炎10から燃焼室周壁に放射される高熱を冷却ユニット9で遮断するようにしたので、燃焼室1を高温から有効に保護することができる。したがって、高温燃焼による燃焼室1の周壁の劣化や高温燃焼による反応熱で燃焼室1内の熱源体となる電熱ヒータが断線しずらく、使用温度範囲も限定されるということもなくなり、上限は前述したように1000℃まで可能である。
【0063】
また、電気スパークの方式では、着火した時に可燃性ガスの濃度が危険濃度に達していれば、不具合現象が発生する問題があったが、実施の形態では、着火を確実に行うことができるので、そのような問題は生じなくなる。また、バーナ電極を用いないので、電極の劣化によって電気スパークされず着火できないというような不具合も生じなくなる。さらに、たとえ排気管11の圧力によって熱源30上部で形成されている炎10がふらついても、上述したように炎10が出ている1箇所のみで燃焼しているのではなく、他の箇所であるガス流路内でも可燃性ガスは燃焼しているので、燃焼効率も安定する。
【0064】
以上述べたように、本実施の形態によれば、燃焼室内の圧力を大気圧〜−1500Paに減圧しても水素H2の燃焼を安定に維持できるので、ユーザからの減圧要請に十分に応えることができる。
【0065】
なお、実施の形態では、熱源を2重熱源で構成したが、多重熱源で構成してもよい。例えば、第1熱源部2の筒内に挿入される第2熱源部3の本数を1本ではなく、2本以上配設することにより多重化しても、あるいは第1熱源部2の筒を2本以上同軸的に配設することにより多重化してもよい。また、熱源30を構成する一方の第1熱源部2の形状を円筒形としたが、筒状第1熱源部2の形状は六角形または八角形などの多角形で構成してもよい。
【0066】
また、実施の形態では、空気取込口12を燃焼室1の底部に設けたが、燃焼室1の外周部、又は燃焼室の底部及び外周部の両方に設けてもよい。外周部にも設ける場合には、外周部に設ける空気取込口12をガス流路27の出口に対応する部分に設けるとよい。また、燃焼室に減圧状態を作り出す吸引手段としてブロアファンを用いて説明したが、これに限定されず、減圧ポンプや真空ポンプなどを用いてもよい。また、冷却ユニットを冷却用ラジエータで構成したが、接続管にコイル状の銅パイプを巻いて、これに冷媒を流すようにしたもので構成してもよい。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、メンテナンスを容易にし、減圧するために別ユニットを必要とせず、減圧しても着火不具合が生じずないようにすることができる。したがって、確実な着火及び高効率な燃焼を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態による多重熱源を用いた排ガス処理装置の全体断面図である。
【図2】実施の形態による燃焼室及びその周辺の詳細図である。
【図3】従来例のガスバーナ方式を用いた排ガス処理装置の部分断面図である。
【図4】従来例の電気スパーク方式を用いた排ガス処理装置の説明図であって、(a)は部分正断面図、(b)は部分側断面図である。
【符号の説明】
1 燃焼室
4 空気孔
8 可燃性ガス導入管
11 排気管
12 空気取込口
19 冷却用ラジエータ(冷却手段)
20 ブロアファン(ガス吸引手段)
30 多重熱源
Claims (4)
- 排ガス中に含まれる可燃性ガスを燃焼させるための燃焼室と、
燃焼室内に可燃性ガスを含む排ガスを導入するための可燃性ガス導入管と、
燃焼室内を排気する排気管と、
前記燃焼室及び前記排気管の間に設けられ、燃焼により生じた高温の排気ガスを冷却する冷却手段と
燃焼室内に空気を取り込むための空気取込口と、
前記排気管に設けられ、前記燃焼室内を吸引により減圧して前記燃焼室内に前記可燃性ガス導入管から可燃性ガスを導入し、前記空気取込口から大気を導入するガス吸引手段と、
前記燃焼室内に設けられ前記排ガス中に含まれる可燃性ガスを着火・燃焼させる多重熱源と、
を備え、
前記多重熱源が、前記可燃性ガス導入管の導出口に連通した筒状の第1熱源部と、筒状の第1熱源部に設けられた第1電熱ヒータと、前記第1熱源部の筒内に挿入されて、筒状の第1熱源部との間にガス流路を形成する第2熱源部と、前記第2熱源部に設けられた第2電熱ヒータと、前記第1熱源部に設けられ前記空気取込口から前記燃焼室内に取り込まれた空気を前記ガス流路に導入する空気孔とを有するものである排ガス処理装置。 - 前記燃焼室及び前記排気管の間に、燃焼室の上部から燃焼室の側壁に沿って下降して、燃焼室と並行に起立した排気管まで延在する蛇行状に曲げ加工した接続管を設け、該接続管に前記冷却手段を設けた請求項1に記載の排ガス処理装置。
- ガス吸引手段を制御するガス吸引制御手段を設け、前記空気取込口から燃焼室内に取り込まれる空気取込量を調整可能とした請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
- 前記ガス吸引手段により減圧される燃焼室内の圧力が大気圧〜−1500Paである請求項1ないし3のいずれかに記載の排ガス処理装置。
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