JP3789079B2 - ペンタッチ座標入力装置およびタブレット視差補正方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、表示装置とタブレット等の入力装置とが一体になったペンタッチ座標入力装置およびタブレット視差補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコンやPDA(パーソナル・ディジタル・アシスタント)に代表される電子機器への入力装置として、ペン等を用いて表示画面に直接文字等を書き込む直接指示入力が一般的に採用されている。
【0003】
上記表示画面に対する直接指示入力を可能にするペンタッチ座標入力装置として、図1に示すような表示画面1と透明タブレット2とを有するものがある。通常、表示画面1における表示系の座標軸と透明タブレット2における入力系の座標軸とを一致させ、且つ、両座標軸上の位置を一致させることによって、入力操作感が向上される。そこで、表示画面1と透明タブレット2とは積層構造をとることが望ましい。
【0004】
上記透明タブレット2を実現する方法として、現状最も廉価であり且つ実用レベルにある透明抵抗膜シート方式の利用がある。上記透明抵抗膜シート方式は、通常、互いに対向して配設された2枚の透明抵抗膜シートと、両透明抵抗膜シートが接触しないように上記両透明抵抗膜シート間に配置されたスペーサーを用いる。上記2枚の透明抵抗膜シートのうちの一方にはX座標軸が割り当てられ、他方にはY座標軸に割り当てられる。
【0005】
そして、ペン等によって上記透明抵抗膜シートにタッチすると、そのタッチ部分で上下の透明抵抗膜シートが接触する。その場合に、両透明抵抗膜シートの接触位置での電圧分割値を測定し、上記透明抵抗膜シートの両電極間の全電圧に対する上記電圧分割値の比率を算出し、算出された比率と上記透明抵抗膜シートの全体サイズとに基づいて上記接触位置を求めることによって、上記接触位置をデータ化することができる。したがって、この方法をX座標軸が割り当てられた透明抵抗膜シートとY座標軸が割り当てられた透明抵抗膜シートとに当て嵌めて上記接触位置のX,Y座標を得、この得られたX,Y座標データに基づいて上記表示画面1上に点,点の羅列による線または点間を結ぶ線を表示することによって、ペンタッチ座標入力が実現するのである。
【0006】
その場合、上述したように、上記表示系の座標軸および入力系の座標軸の一致と、両座標軸上の位置の一致とを実現して、始めて入力装置としての機能を満足することになる。
【0007】
ところが、上記透明抵抗膜シートは、初期の組み立て誤差や経年変化等によって、入力座標情報と算出座標(表示座標)情報とにズレが発生する。そのために、座標グリッドの補正入力が必須となっている。ここで、上記座標グリッドの補正方法としては、以下のような方法が一般的である。
【0008】
すなわち、上記表示画面1上における予め定められた複数の基準座標に順次マーカー(点)を表示し、透明タブレット2上における上記マーカーの位置にペン入力を行う。 そして、上記基準座標とペン入力座標との差から座標変換式の定数を求め、この求めた定数を用いた座標変換式で以後の入力座標の変換を行うのである。その場合、座標グリッドの正確な補正を行うために、上記マーカーは、少なくとも表示画面1の対角の2箇所に表示される。
【0009】
上述のような座標グリッドの補正方法の場合には、順次表示される上記マーカーの位置にペンで正確にタッチする必要があり、有意なペン入力が得られるまで何度もペンタッチが要求される。したがって、ユーザに煩わしさを感じさせてしまう場合がある。
【0010】
そこで、上述のような欠点を解決するために、次のような座標グリッドの補正方法が検討がされている。すなわち、座標グリッドの補正時においては、透明タブレット2上におけるペン入力点に対応する表示画面1上における表示点(マーカー)の移動量が、上記ペン入力点の移動量に対して「−1倍」になるように設定しておく。そして、ペンタッチ点とマーカーとの位置にズレが在る場合には、透明タブレット2上でペンをそのままマーカーの位置に向ってスライドさせる。そうすると、マーカーは表示画面1上をペン位置に向って移動することになり、やがてペン入力点とマーカーとの位置が一致する。その際にペンアップを行う。そして、上記ペンタッチ点の座標(X,Y)とマーカーのスタート点の座標(X',Y')とペンの移動量ΔX,ΔYとに基づいて、上記ペンタッチ点(X,Y)とマーカー位置(X',Y')とのズレ量の補正を行うのである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の座標グリッドの補正方法では、上記ペン入力点の移動量に対する上記マーカーの移動量が「−1倍」に固定されているために、以下のような問題がある。
【0012】
(1) 上記ペンを移動させて上記マーカーと一致させる場合、マーカーのペンに対する相対移動速度はペンの移動速度の2倍になる。したがって、ペンタッチ位置とマーカーのスタート位置とのズレ量が小さい場合は、ペンを僅かに移動させてもマーカーが2倍の相対速度で接近してくるために微調整が困難である。また、ズレ量が大きい場合には、ペンを素早くマーカーと一致させようとしてペンの移動速度が大きくなる。そのために、益々微調整が困難になってしまう。
【0013】
(2) 上記ペンタッチ位置の座標とマーカーの表示座標とを一致させるためには、2個所以上の粗調整と2回以上の微調整が必要である。ところが、上記ペンの移動量に対するマーカーの移動量の比率を変更することが出来ないために、微調整も粗調整も同じ調整のし易さで行うことになる。したがって、調整の操作性については微調整主体か粗調整主体かの何れ一方になり、微調整および粗調整の何れにも高い操作性を得ることは困難である。
【0014】
(3) 上述のごとく、上記ペンとマーカーとの移動量は反対方向へ同じになるように設定されている。ところが、上記調整を行うユーザの操作性の感じ方に必ずしも一致するとは限らない。この感じ方は個人ごとに異なり、一意には決められないものである。
【0015】
そこで、この発明の目的は、座標入力精度を落とすことなくタブレット視差補正時の自由度を向上させた使い勝手のよいペンタッチ座標入力装置およびタブレット視差補正方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の発明は、タブレットと,このタブレットにおけるペンタッチ位置を表示する表示パネルとを,互いに重ね合わせて一体化されたペンタッチ座標入力装置において、タブレット視差補正時に、上記タブレット上におけるペンタッチ位置を座標として検出するペン入力位置検出手段と、上記検出されたペン入力位置に基づくペンの移動量と移動係数に基づいて,上記表示パネル上におけるペン表示位置を算出する視差補正時ペン表示位置算出手段と、上記タブレットからのペンタッチ解除時における上記タブレットの情報と上記表示パネルの情報とに基づいて,上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正する視差補正手段と、上記ペンの移動時におけるペンの移動速度に応じて,上記移動係数の値を設定する移動係数設定手段を備えたことを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、タブレット視差補正時において、タブレット上におけるペンタッチ位置と表示パネル上におけるペン表示位置とを一致させるために、上記タブレット上のペンをスライドさせると、移動係数設定手段によって、ペンの移動速度に応じて移動係数が設定される。そして、視差補正時ペン表示位置算出手段によって、ペンの移動量と上記移動係数とに基づいてペン表示位置が算出されて、上記ペン表示位置が移動される。そして、上記ペン入力位置とペン表示位置とが近づいたためにペンの速度を落すと、上記移動係数設定手段によって、低下したペンの移動速度に応じて移動係数の例えばその絶対値が小さく設定される。そうすると、上記視差補正時ペン表示位置算出手段によって、ペンの移動量と上記減少された移動係数とに基づいてペン表示位置が算出されて、上記ペン表示位置の移動速度も低下される。
【0018】
こうして、上記ペン入力位置とペン表示位置とが大きく離れている場合には、上記ペン入力位置が素早く短時間にペン表示位置に近づけられる。そして、上記ペン入力位置とペン表示位置とが近づいた場合には、上記ペン入力位置がゆっくりペン表示位置に近づけられて、両位置が精密に一致される。そして、上記ペン入力位置とペン表示位置とが一致した時点でペンアップを行うと、上記タブレットからのペンアップ時における上記タブレットの情報と表示パネル上の情報とに基づいて、視差補正手段によって、上記タブレットと表示パネルとの視差が補正される。
【0019】
また、第1の実施例は、上記第1の発明のペンタッチ座標入力装置において、上記視差補正手段は、少なくとも2点以上の上記タブレットからのペンタッチ解除時における上記タブレットの情報と上記表示パネルの情報とに基づいて、上記視差の補正を行うようになっていることを特徴としている。
【0020】
この実施例によれば、上記タブレット上における複数箇所において粗調整と微調整とを行って、より正確に上記タブレットと表示パネルとの視差補正が行われる。
【0021】
また、第2の実施例は、上記第1の発明のペンタッチ座標入力装置において、上記視差補正時ペン表示位置算出手段は、上記ペンの移動量を上記タブレットのX軸方向移動量とY軸方向移動量と分解し、夫々の移動量に上記移動係数を乗算することによって上記ペン表示位置の移動量を算出するようになっていることを特徴としている。
【0022】
この実施例によれば、上記移動係数の絶対値を「1」にすれば、ペン表示位置の移動量がペンの移動量と同じなり、上記移動係数の絶対値を「1」より小さくすれば、ペン表示位置の移動量がペンの移動量よりも小さくなる。また、上記移動係数の絶対値を「1」より大きくすれば、ペン表示位置の移動量がペンの移動量よりも大きくなる。
【0023】
また、第3の実施例は、第2の実施例のペンタッチ座標入力装置において、上記移動係数は負の数または正の数であることを特微としている。
【0024】
この実施例によれば、上記移動係数が負の数である場合には、上記ペンをペン表示位置に向ってスライドすると、上記ペン表示位置がペンに向って移動してくる。また、上記移動係数が正の数である場合には、上記ペン表示位置の移動方向が、上記ペンのスライド方向と同一方向になる。
【0025】
また、第2の発明は、タブレットと,このタブレットにおけるペンタッチ位置を表示する表示パネルとを,互いに重ね合わせて一体化されたペンタッチ座標入力装置において、タブレット視差補正時に、上記タブレット上におけるペンタッチ位置を座標として検出するペン入力位置検出手段と、上記検出されたペン入力位置に基づくペンの移動量と移動係数とに基づいて,上記表示パネル上におけるペン表示位置を算出する視差補正時ペン表示位置算出手段と、上記タブレットからのペンタッチ解除時における上記タブレットの情報と上記表示パネルの情報とに基づいて,上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正する視差補正手段と、上記視差補正手段による上記視差の補正回数に応じて,上記移動係数の値を変更する移動係数変更手段を備えたことを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、タブレット視差補正時において、タブレット上におけるペンタッチ位置と表示パネル上におけるペン表示位置とを一致させるために、上記タブレット上のペンをスライドさせると、視差補正時ペン表示位置算出手段によって、ペンの移動量と移動係数とに基づいてペン表示位置が算出されて、上記ペン表示位置が移動される。そして、上記ペン入力位置とペン表示位置とが一致した時点でペンアップを行うと、上記タブレットからのペンアップ時における上記タブレットの情報と表示パネル上の情報とに基づいて、視差補正手段によって、上記タブレットと表示パネルとの視差が補正される。
【0027】
このようにして、n回目の視差補正処理が終了すると、移動係数変更手段によって、上記移動係数の値が視差補正処理の回数「n」に応じた値に変更される。以後、(n+1)回目の視差補正処理時には、上記変更後の移動係数の値を用いてペン表示位置が算出される。
【0028】
こうして、上記視差補正処理回数が少ないために上記ペン入力位置とペン表示位置とが大きくズレている場合には、上記ペン入力位置とペン表示位置との位置合わせが素早く短時間に行われる。そして、上記視差補正処理が繰返されて上記ペン入力位置とペン表示位置とのズレが小さくなった場合には、上記ペン入力位置がゆっくりペン表示位置に近づけられて、両位置が精密に合わせられる。
【0029】
また、第3の発明は、表示パネル上に積層されたタブレットにおけるペンタッチ位置をスライドし,上記タブレットからのペンアップ時における上記タブレットの情報と上記表示パネル上の情報とに基づいて,上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正するタブレット視差補正方法において、上記ペンタッチ位置のスライドに伴う上記ペン表示位置の移動を,上記ペン入力位置の移動量と移動係数とに基づいて算出された上記表示パネル上におけるペン表示位置の移動量に基づいて行い、上記移動係数の値を上記ペン入力位置の移動速度に応じて設定することを特徴としている。
【0030】
上記構成によれば、上記第1の発明の場合と同様に、ペンタッチ位置とペン表示位置とを一致させる際に、上記ペン入力位置とペン表示位置とが大きく離れている場合には、上記ペン入力位置が素早く短時間にペン表示位置に近づけられる。そして、上記ペン入力位置とペン表示位置とが近づいた場合には、上記ペン入力位置がゆっくりペン表示位置に近づけられて、両位置が精密に一致される。
【0031】
また、第4の発明は、表示パネル上に積層されたタブレットにおけるペンタッチ位置をスライドし,上記タブレットからのペンアップ時における上記タブレットの情報と上記表示パネル上の情報とに基づいて,上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正するタブレット視差補正方法において、上記ペンタッチ位置のスライドに伴う上記ペン表示位置の移動を,上記ペン入力位置の移動量と移動係数とに基づいて算出された上記表示パネル上におけるペン表示位置の移動量に基づいて行い、上記移動係数の値を上記視差の補正回数に応じて変更することを特徴としている。
【0032】
上記構成によれば、上記第2の発明の場合と同様に、ペンタッチ位置とペン表示位置とを一致させる際に、上記視差補正処理回数が少ないために上記ペン入力位置とペン表示位置とが大きくズレている場合には、上記ペン入力位置とペン表示位置との位置合わせが素早く短時間に行われる。そして、上記補正処理が繰返されて上記ペン入力位置とペン表示位置とのズレが小さくなった場合には、上記ペン入力位置がゆっくりペン表示位置に近づけられて、両位置が精密に合わせられる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。尚、以下の説明においては表示の解像度は320ドット×240ドットとするが便宜的なものであり、上述の解像度を限定するものではない。また、その他の数値についても説明を容易にするための便宜的なものであって、それらの値に限定されるものではない。ところで、以下説明において行う計算および数値の記憶は、図示しないCPU(中央演算処理装置)ならびにRAM(ランダム・アクセス・メモリ),ROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置によって処理される。 また、処理手順は上記記憶装置の記憶内容によって制御される。
【0034】
<第1実施の形態>
図1は、本実施の形態のペンタッチ座標入力装置におけるハードウエア構成を示す機能ブロック図である。図1において、1は表示装置の表示画面であり、2は入力装置の透明タブレットである。上記表示装置は液晶ディスプレイであり、横320ドット×縦240ドット解像度を有している。尚、表示画面1上におけるX座標は表示ドットに対応しており、表示画面1における図中左端を「0」とし右端を「319」とする。同様に、Y座標もドットに対応しており、表示画面1における図中上端を「0」とし下端を「239」とする。 以下、表示画面1における任意の位置Pの座標は、(Px,Py)で表すこととする。
【0035】
図2は、上記透明タブレット2の電気的構成を示す。透明タブレット2は、均一に形成された2枚の透明抵抗膜シート3,4を互いに対向させて配設し、両透明抵抗膜シート3,4の接触を防止するためにスペーサ(図示せず)を挟んで構成されている。そして、一方(図2においては上側)の透明抵抗膜シート3におけるX方向両端に電極3a,3bを設け、電極3aにはスイッチ5を介して電圧Vの電源に接続する一方、電極3bはスイッチ6を介して接地している。同様に、他方(図2においては下側)の透明抵抗膜シート4におけるY方向両端に電極4a,4bを設け、電極4aにはスイッチ7を介して電圧Vの電源に接続する一方、電極4bはスイッチ8を介して接地している。以下、透明抵抗膜シート3をX座標検出用シートと称する一方、透明抵抗膜シート4をY座標検出用シートと称する。
【0036】
上記構成の透明タブレット2は、以下のように動作してペン入力座標を検出する。すなわち、X座標検出時には、スイッチ5,6をオンする一方、スイッチ7,8をオフする。こうして、X座標検出用シート3に電圧を印加する一方、Y座標検出用シート4を電気的に浮いた状態にしておく。この状態でX座標検出用シート3上の任意の位置P0がペンで押圧されると、X座標検出用シート3上の点P0がY座標検出用シート4上の点P0'に接触する。したがって、X座標検出用シート3上における点P0の電圧VxとY座標検出用シート4上における点P0'の電圧とは同じになる。そこで、X座標検出用シート3上における点P0の電圧Vxを、Y座標検出用シート4の電極4bから電圧検出部9によって検出するのである。同様に、Y座標検出時にはスイッチ5,6をオフする一方、スイッチ7,8をオンする。そして、Y座標検出用シート4上における点P0'の電圧Vyを、X座標検出用シート3の電極3bから電圧検出部9によって検出するのである。
【0037】
こうして検出された各電圧値Vx,Vyに基づいて、ペン表示位置算出部10によって、表示画面1上におけるペンの表示位置Pの座標(Px,Py)を式(1)および式(2)に従って算出するのである。
Px={(Vx−Vx0)/(Vx1−Vx0)}×319 …(1)
Py={(Vy−Vy0)/(Vy1−Vy0)}×239 …(2)
ここで、Vx0:表示画面1上におけるY軸での電圧値
Vx1:表示画面1上におけるX=319での電圧値
Vy0:表示画面1上におけるX軸での電圧値
Vy1:表示画面1上におけるY=239での電圧値
したがって、透明タブレット2上における電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1を決定できれば、表示画面1上におけるペン表示位置Pの座標(Px,Py)を求めることができるのである。尚、こうして算出されたペン表示位置Pの座標(Px,Py)に基づいて、表示部11によって表示画面1上における座標(Px,Py)のドットが表示される。
【0038】
図3は、透明タブレット2上における電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1を測定する方法を示す。図3において、先ず、表示画面1における左端且つ上端の座標(0,0)の表示ドットにペンタッチして、X座標検出用シート3上の電圧VxとY座標検出用シート4上の電圧Vyとを電圧検出部9によって測定することによって、電圧値Vx0,Vy0を得る。次に、表示画面1における右端且つ下端の座標(319,239)の表示ドットにペンタッチして電圧Vx,Vyを電圧検出部9によって測定することによって、電圧値Vx1,Vy1を得るのである。そして、得られた電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1を上記RAMで構成される基準電圧格納部12に格納して置き、ペン表示位置Pの座標(Px,Py)を算出する際に使用するのである。また、必要に応じて、上述した電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の測定を行い、基準電圧格納部12の格納値を更新することによって、透明タブレット2上のペン入力位置P0とそれに対する表示画面1上のペン表示位置Pとのズレの少ないペンタッチ座標入力が可能になるのである。
【0039】
ところで、通常、上記表示画面1の座標(0,0)および座標(319,239)の表示ドットを認識してペンタッチすることは、上記透明タブレット2の厚み等に起因して困難である。そのために、本実施の形態においては、上述のようにして得られた電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の値を仮値として、ペン表示位置Pの座標(Px,Py)を算出するのである。したがって、当然ながら、上記仮値を用いて算出されたペン表示位置Pの座標(Px,Py)は、ペン入力位置P0の座標(P0x,P0y)とは一致しないことになる。
【0040】
そこで、上記ペン表示位置Pの座標(Px,Py)とペン入力位置P0の座標(P0x,P0y)とのズレ量に基づいて、以下のようにして電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の真の値を得るのである。
【0041】
上述したように、上記透明タブレット2上においてペン入力があると、上記式(1)および式(2)によって、表示画面1上におけるペン表示位置Pの座標(Px,Py)が算出される。ここで、ペン表示位置Pの座標(Px,Py)と透明タブレット2上における電圧値Vx,Vyとの対応が正しい(つまり、ペン表示位置Pとペン入力位置P0とにズレは無い)とすれば、2つのペン入力位置P01,P02に関して、透明タブレット2上の電圧値を(VxP1,VyP1),(VxP2,VyP2)とし、表示画面1上のペン表示位置P1,P2の座標を(Px1,Py1),(Px2,Py2)とすると、これらの値を上記式(1),(2)に代入することによって式(3)が得られる。
Px1={(VxP1−Vx0)/(Vx1−Vx0)}×319
Py1={(VyP1−Vy0)/(Vy1−Vy0)}×239 …(3)
Px2={(VxP2−Vx0)/(Vx1−Vx0)}×319
Py2={(VyP2−Vy0)/(Vy1−Vy0)}×239
この式(3)をVx0,Vy0,Vx1,Vy1に関して解くことによって、上記電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の真の値が得られるのである。
【0042】
ところで、上述したように、上記式(3)が成立するには、ペン表示位置Pの座標(Px,Py)と上記電圧値Vx,Vyとの対応が正しく、ペン表示位置Pとペン入力位置P0とが一致する必要がある。そこで、2つのペン入力位置P01,P02に関する上記電圧値(VxP1,VyP1),(VxP2,VyP2)とペン表示座標(Px1,Py1),(Px2,Py2)を得る場合には、ペン入力位置P01,P02に対してズレているペン表示位置P1,P2の座標(Px1,Py1),(Px2,Py2)を、ペン入力位置P01,P02側に近づけるのである。
【0043】
その場合、上記ペン表示位置Pを何れの方向に移動させればよいのかが不明であるため、上記ペンをペン表示位置Pに向けてスライドさせ、その際におけるペン表示位置Pの移動方向を上記ペンのスライド方向とは逆方向であるとする。すなわち、ペン入力位置検出部13の検出結果に基づいて、視差補正時ペン表示位置算出部14によってペン入力位置P0の移動量ΔX,ΔYを算出する。そして、移動量ΔX,ΔYに負の係数k(<0)を乗算した値kΔX,kΔYだけ移動したペン表示位置Pを求めて表示部11に出力するのである。この動作を繰返すことによって、ペン入力位置P0とペン表示位置Pとは互いに近づいて一致するので、そのときペンアップを行う。そして、このペンアップ時における電圧検出部9からの電圧値(Vx,Vy)と視差補正時ペン表示位置算出部14からのペン表示座標(Px,Py)とに基づいて、上記視差補正部15によって上記電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の真の値を求めるのである。
【0044】
ここで、上記ペン表示位置Pの移動量を、ペン入力位置P0のスライド量(移動量)に対して「−1倍(k=−1)」に固定すると、従来の座標グリッドの補正方法の場合と同様に、ペン入力位置P0とペン表示位置Pとの一致動作におけるペン操作性上の問題が生ずる。そこで、本実施の形態においては、ペン入力位置P0の単位時間当りの移動量(速度)に応じてペン表示位置Pの速度を変更可能にするのである。
【0045】
上記ペン入力位置P0とペン表示位置Pとの差が大きい場合には、操作者にはペン表示位置Pの移動速度を大きくしたという意思が働く。したがって、ペン入力位置P0の移動速度が大きくなる。これに対して、ペン入力位置P0とペン表示位置Pとの差が小さい場合には、ペン表示位置Pの移動速度を小さくしてペン入力位置P0とペン表示位置Pとの精密な一致を図りたいという意思が働く。したがって、ペン入力位置P0の移動速度が小さくなる。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、k設定部16によって、上記ペン入力位置検出部13の検出結果に基づいて、ペン入力位置P0の単位時間t当りの移動量ΔXが50mm/秒以上の場合には係数kを「−1」とする。以下、ペン入力位置P0の単位時間当りの移動量ΔX/tが、40mm/秒〜50mm/秒,30mm/秒〜40mm/秒,20mm/秒〜30mm/秒,10mm/秒〜20mm/秒,10mm/秒以下と低下するに連れて、係数kも「−0.9」,「−0.8」,「−0.7」,「−0.6」,「−0.5」と低下させるのである。尚、上記ペン入力位置P0の移動量を得る際の単位時間tは、透明タブレット2上における電圧値(Vx,Vy)の検出タイミング(つまり、スイッチ5〜8の切り換えタイミング)と同じ時間とする。また、設定された係数kは、k格納部17に格納される。
【0047】
こうすることによって、上記ペン表示位置Pの移動速度を、上述したようなペン操作者の意思に則して変更することができ、タブレット視差補正時の自由度を向上させて使い勝手のよいペンタッチ座標入力を可能にするのである。以下、上記係数kを、「ペン表示位置Pの移動係数」と称することにする。
【0048】
図4は、上記ペン入力位置P0の速度に応じたペン表示位置Pの速度設定を踏まえたタブレット視差補正処理動作のフローチャートである。また、図5は、図4に示すタブレット視差補正処理動作のフローチャートにおけるステップS7において実行される移動係数k設定サブルーチンのフローチャートである。以下、図4および図5に従って、本実施の形態におけるタブレット視差補正処理動作について説明する。
【0049】
図4において、ステップS1で、上記Y座標検出用シート4の電極4bの電圧に基づいてペンタッチか否かが判別される。その結果、ペンタッチであればステップS2に進む。ステップS2で、上記ペンタッチに起因する透明タブレット2上における電圧Vx,Vyが検出され、この電圧値Vx,Vyを用いて式(1)および式(2)に従ってペン表示位置Pの座標(Px,Py)が算出される。そして、得られた座標(Px,Py)が表示部11内の表示メモリ等に記憶される。ステップS3で、表示画面1における座標(Px,Py)のドットが表示される。
【0050】
ステップS4で、上記Y座標検出用シート4の電極4bの電圧に基づいてペンアップか否かが判別される。その結果、ペンアップであればステップS10に進む。一方、そうでなければステップS5に進む。ステップS5で、前回座標(Px,Py)を算出してから単位時間tが経過したか否かが判別される。その結果、単位時間tが経過するとステップS6に進む。ステップS6で、上記ステップS2の場合と同様にしてペン入力位置P0の電圧Vx,Vyが検出される。そして、前回の検出電圧Vx,Vyとの差に基づいて、ペン入力位置P0の単位時間当りの移動量ΔX/t,ΔX/tが求められる。ステップS7で、求められたペン入力位置P0の単位時間当りの移動量ΔX/tに基づいて、ペン表示位置Pの移動係数kが設定される。
【0051】
ステップS8で、上記ステップS6において算出された前回のペン入力位置P0からの移動量ΔX,ΔYに、上記ステップS7において設定されたペン表示位置Pの移動係数kが乗算されて、ペン表示位置Pの移動量kΔX,kΔYが算出される。そして、移動後のペン表示位置Pの座標(Px+kΔX,Py+kΔY)によって上記表示メモリの記憶内容(Px,Py)が更新される。ステップS9で、表示画面1における更新後の座標(Px,Py)のドットが表示される。こうして、ペン表示位置Pが移動される。そうした後、上記ステップS4に戻り、ペンアップであると判別されればステップS10に進む。
【0052】
ステップS10で、上記ペンアップ時における透明タブレット2上の電圧値(Vx,Vy)と表示画面1上のペン表示位置Pの座標(Px,Py)とが、上記RAM等に記憶される。こうして、1点に関する測定が終了する。ステップS11で、2点以上の測定が終了したか否かが判別される。その結果、2点以上の測定が終了していればステップS12に進み、そうでなければ上記ステップS1に戻って2点目に関する測定に移行する。
【0053】
ステップS12で、上記記憶されている1点目に関する測定結果(VxP1,VyP1),(Px1,Py1)および2点目に関する測定結果(VxP2,VyP2),(Px2,Py2)に基づいて、式(3)に従って透明タブレット2における電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の真の値が算出される。ステップS13で、上記電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1が基準電圧格納部12に格納される。そうした後、タブレット視差補正処理動作を終了する。
【0054】
次に、図5に示す移動係数k設定のサブルーチンについて説明する。図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS6において、ペン入力位置P0の単位時間当りの移動量ΔX/tが求められると、移動係数k設定のサブルーチンがスタートする。
【0055】
ステップS21で、上記ペン入力位置P0の単位時間当りの移動量ΔX/tは、50mm/秒以上であるか否かが判別される。その結果、50mm/秒以上であればステップS22に進み、そうでなければステップS23に進む。ステップS22で、ペン表示位置Pの移動係数kが「−1」に設定される。そうした後、図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS8にリターンする。
【0056】
ステップS23で、上記単位移動量ΔX/tは、40mm/秒〜50mm/秒であるか否かが判別される。その結果、40mm/秒〜50mm/秒であればステップS24に進み、そうでなければステップS25に進む。ステップS24で、移動係数kが「−0.9」に設定される。そうした後、図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS8にリターンする。
【0057】
ステップS25で、上記単位移動量ΔX/tは、30mm/秒〜40mm/秒であるか否かが判別される。その結果、30mm/秒〜40mm/秒であればステップS26に進み、そうでなければステップS27に進む。ステップS26で、移動係数kが「−0.8」に設定される。そうした後、図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS8にリターンする。
【0058】
ステップS27で、上記単位移動量ΔX/tは、20mm/秒〜30mm/秒であるか否かが判別される。その結果、20mm/秒〜30mm/秒であればステップS28に進み、そうでなければステップS29に進む。ステップS28で、移動係数kが「−0.7」に設定される。そうした後、図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS8にリターンする。
【0059】
ステップS29で、上記単位移動量ΔX/tは、10mm/秒〜20mm/秒であるか否かが判別される。その結果、10mm/秒〜20mm/秒であればステップS30に進み、そうでなければステップS31に進む。ステップS30で、移動係数kが「−0.6」に設定される。そうした後、図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS8にリターンする。ステップS31で、移動係数kが「−0.5」に設定される。そうした後、図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS8にリターンする。
【0060】
以上の結果、上記ペン表示位置Pの移動係数kの値が、ペン入力位置P0の速度に応じて、最大「−1」から最小「−0.5」までの範囲内で自動的に設定されるのである。図6は、透明タブレット2上におけるペンの移動量と表示画面1上における表示点の移動量との関係を示し、図6(a)はペンのX方向への操作速度が50mm/秒以上の場合であり、図6(b)はペンのX方向への操作速度が50mm/秒よりも遅い場合である。
【0061】
以上のごとく、上記透明タブレット2上におけるペン入力位置P0の電圧Vx,電圧Vyを検出し、この検出された電圧値Vx,Vyを上記式(1)および式(2)に代入することによって、表示画面1上におけるペン表示位置Pの座標(Px,Py)が算出される。その際に、式(1)および式(2)中における電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1を正確に設定することは困難であり、算出されたペン表示位置Pの座標(Px,Py)は、ペン入力位置P0の座標(P0x,P0y)とは一致しない。
【0062】
そこで、本実施の形態におけるタブレット視差補正処理時には、上記表示画面1上におけるペン表示位置Pの移動量を、ペン入力位置P0の移動量ΔX,ΔYの移動係数k(<0)倍とする。そして、ペンをペン表示位置Pに向けて移動させ、ペン入力位置P0とペン表示位置Pとが一致した点における電圧値(Vx,Vy)とペン表示座標(Px,Py)とを2回求め、その値を用いて上記式(3)によって電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の真の値を算出するようにしている。
【0063】
そして、その場合に、上記移動係数kの値を上記ペン入力位置P0のX方向への速度(50mm/秒以上,40mm/秒〜50mm/秒,30mm/秒〜40mm/秒,20mm/秒〜30mm/秒,10mm/秒〜20mm/秒,10mm/秒以下)に応じて、−1,−0.9,−0.8,−0.7,−0.6,−0.5に変更可能にしている。
【0064】
したがって、上記ペン入力位置P0とペン表示位置Pとのズレ量が大きい場合の粗調整時には、移動係数kを−1にして、迅速にペンをペン表示位置に接近させることができる。また、ペン入力位置P0とペン表示位置Pとのズレ量が小さい微調整時には、移動係数kをペンの速度に応じて自動的に−1よりも小さくして、容易に微調整を行うことができる。すなわち、操作者の意思に則して、微調整および粗調整の何れにも高い操作性を得ることができるのである。
【0065】
尚、上記ペン入力位置P0の速度と移動係数kの関係は、説明のために便宜的に設定したがそれらの値に限定する必要はない。また、移動係数kは負の値であるとしたが、これについても便宜的に設定したにすぎず、正の値であっても構わない。移動係数kを正の値にした場合には、ペン表示位置の移動方向とペンのスライド方向とが同になる。したがって、移動係数k(>1)の値をペン入力位置の速度の低下に応じて「1」に向って減少するように設定すれば、ペン入力位置が透明タブレット2の縁部に在るためにペン表示位置が表示画面1外に在る(表示されていない)場合に、ペンを透明タブレット2の内側にスライドさせてペン表示位置を表示画面1内に呼び込むことによって、ペン入力位置とペン表示位置とを一致させることができる。
【0066】
こうして、上記移動係数kの符号やその絶対値の増減方向を適宜使い分けることによって、タブレット視差補正時の自由度を向上させて、使い勝手のよいペンタッチ座標入力を可能にするのである。
【0067】
<第2実施の形態>
上記第1実施の形態においては、上記移動係数kの値をペン入力位置P0のX方向への速度の低下に応じて、「−1」〜「−0.5」まで低下させるようにしている。本実施の形態は、上記移動係数kの値をタブレット視差補正処理の回数の増加に応じて低下させるものである。
【0068】
本実施の形態におけるペンタッチ座標入力装置におけるハードウエア構成は、上記第1実施の形態のハードウエア構成におけるk設定部16に代えて、視差補正部15の補正終了毎に移動係数kの値を変更するk変更部(図示せず)を設けたものであり、詳細な説明は省略する。したがって、以下の説明においては、必要に応じて図1〜図3を用いることにする。
【0069】
上記タブレット視差補正処理の回数が少ない場合には、ペン入力位置P0とペン表示位置Pとのズレが大きいため、ペン表示位置Pの移動速度を大きくした方が少ないペンの移動量でペン入力位置P0とペン表示位置Pとの差を縮めることができる。これに対して、タブレット視差補正処理の回数が増加するに連れて、ペン入力位置P0とペン表示位置Pとのズレが小さくなるため、ペン表示位置Pの移動速度を小さくした方が精密な一致が可能になる。
【0070】
そこで、本実施の形態においては、上記タブレット視差補正処理の回数が1回目の場合には移動係数kを「−1」とする。以下、タブレット視差補正処理の回数が、2回,3回,4回,5回,6回と増加するに連れて、移動係数kも「−0.9」,「−0.8」,「−0.7」,「−0.6」,「−0.5」と低下させるのである。こうすることによって、上記ペン表示位置Pの移動速度を、上述したようなペン操作者の意思に則して変更することができ、タブレット視差補正時の自由度を向上させて使い勝手のよいペンタッチ座標入力を可能にする。
【0071】
図7は、上記タブレット視差補正処理の回数に応じたペン表示位置Pの速度変更を踏まえたタブレット視差補正処理動作のフローチャートである。また、図8は、図7に示すタブレット視差補正処理動作のフローチャートにおけるステップS54において、上記k変更部によって実行される移動係数k変更サブルーチンのフローチャートである。以下、図7および図8に従って、本実施の形態におけるタブレット視差補正処理動作について説明する。
【0072】
図7において、ステップS41〜ステップS46で、図4に示すタブレット視差補正処理動作のフローチャートにおけるステップS1〜ステップS6と同様にして、ペンタッチの判別、ペン表示位置Pの座標(Px,Py)の算出と記憶、表示画面1における座標(Px,Py)の表示、ペンアップの判別、単位時間tの経過判別、前回のペン入力位置P0からの移動量ΔX,ΔYの算出が行われる。
【0073】
ステップS47で、ステップS46において算出された前回のペン入力位置P0からの移動量ΔX,ΔYに、k格納部17に格納されているペン表示位置Pの移動係数k(初回はデフォルト値)が乗算されて、ペン表示位置Pの移動量kΔX,kΔYが算出される。そして、移動後のペン表示位置Pの座標(Px+kΔX,Py+kΔY)によって表示部11の表示メモリの記憶内容(Px,Py)が更新される。
【0074】
ステップS48〜ステップS52で、図4に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS9〜ステップS13と同様にして、更新後の座標(Px,Py)の表示、ペンアップ時における電圧値(Vx,Vy)と座標(Px,Py)との記憶、2点以上測定終了の判別、電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の算出、電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の記憶が行われる。
【0075】
ステップS53で、操作者等からの指示等によって、タブレット視差補正処理動作を終了するか否かが判別される。その結果、終了であればタブレット視差補正処理動作を終了し、そうでなければステップS54に進む。ステップS54で、1回分のタブレット視差補正処理が終了したので、移動係数kの絶対値が1ステップ小さい値に変更される。そうした後、上記ステップS41に戻る。そして、上記ステップS53において終了であると判別されると、タブレット視差補正処理動作を終了する。
【0076】
次に、図8に示す移動係数k変更のサブルーチンについて説明する。図7に示すタブレット視差補正処理動作における上記ステップS52,S53において、上記電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1の記憶が行われて処理続行が指示されると、移動係数k変更のサブルーチンがスタートする。
【0077】
ステップS61で、上記終了したタブレット視差補正処理は、初回の処理であるか否かが判別される。その結果初回であればステップS62に進み、そうでなければステップS63に進む。ステップS62で、移動係数kが「−1」に設定される。そうした後、図7に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS41にリターンする。ステップS63で、移動係数kの値は「−0.5」であるか否かが判別される。その結果、「−0.5」であれば図7に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS41にリターンする。一方、「−0.5」でなければステップS64に進む。ステップS64で、移動係数kの値に「0.1」が加算される。そうした後に、図7に示すタブレット視差補正処理動作におけるステップS41にリターンする。
【0078】
以上の結果、上記ペン表示位置Pの移動係数kの値が、上記タブレット視差補正処理の回数に応じて、最大「−1」から最小「−0.5」までの範囲内で自動的に設定されるのである。図9は、透明タブレット2上におけるペンの移動量と表示画面1上における表示点の移動量との関係を示し、図9(a)はタブレット視差補正処理の回数が1回の場合であり、図9(b)はタブレット視差補正処理の回数が2回以上の場合である。
【0079】
このように、本実施の形態においては、上記移動係数kの値を上記タブレット視差補正処理の回数(1回,2回,3回,4回,5回,6回以上)に応じて、−1,−0.9,−0.8,−0.7,−0.6,−0.5に変更可能にしている。
【0080】
したがって、上記タブレット視差補正処理の回数が少なくてペン入力位置P0とペン表示位置Pとのズレ量が大きい場合には、移動係数kを−1にして、迅速に少ない操作量でペンをペン表示位置に一致させることができる。また、タブレット視差補正の回数が増加してペン入力位置P0とペン表示位置Pとのズレ量が小さくなった場合には、移動係数kを上記回数に応じて自動的に小さくして、容易に且つ精密に微調整を行うことができる。すなわち、操作者の意思に則して、微調整および粗調整の何れにも高い操作性を得ることができるのである。
【0081】
尚、上記タブレット視差補正処理の回数と移動係数kの関係は、説明のために便宜的に設定したがそれらの値に限定する必要はない。また、移動係数kは負の値であるとしたが、これについても便宜的に設定したにすぎず、正の値であっても構わない。
【0082】
ところで、上記各実施の形態におけるペン入力位置検出部13,視差補正時ペン表示位置算出部14,視差補正部15,k設定部16およびk変更部による上記ペン入力位置検出手段,視差補正時ペン表示位置算出手段,視差補正手段,移動係数設定手段および移動係数変更手段としての機能は、プログラム記録媒体に記録されたタブレット視差補正処理プログラムによって実現される。上記各実施の形態における上記プログラム記録媒体は、上記ROMでなるプログラムメディアである。あるいは、外部補助記憶装置に装着されて読み出されるプログラムメディアであってもよい。尚、何れの場合においても、上記プログラムメディアからタブレット視差補正処理プログラムを読み出すプログラム読み出し手段は、上記プログラムメディアに直接アクセスして読み出す構成を有していてもよいし、上記RAMに設けられたプログラム記憶エリア(図示せず)にダウンロードし、上記プログラム記憶エリアにアクセスして読み出す構成を有していてもよい。尚、上記プログラムメディアからRAMの上記プログラム記憶エリアにダウンロードするためのダウンロードプログラムは、予め本体装置に格納されているものとする。
【0083】
ここで、上記プログラムメディアとは、本体側と分離可能に構成され、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピーディスク,ハードディスク等の磁気ディスクやCD(コンパクトディスク)‐ROM,MO(光磁気)ディスク,MD(ミニディスク),DVD(ディジタルビデオディスク)等の光ディスクのディスク系、IC(集積回路)カードや光カード等のカード系、マスクROM,EPROM(紫外線消去型ROM),EEPROM(電気的消去型ROM),フラッシュROM等の半導体メモリ系を含めた、固定的にプログラムを坦持する媒体である。
【0084】
また、上記各実施の形態におけるペンタッチ座標入力装置は、モデムを備えてインターネットを含む通信ネットワークと接続可能な構成を有する場合には、上記プログラムメディアは、通信ネットワークからのダウンロード等によって流動的にプログラムを坦持する媒体であっても差し支えない。尚、その場合における上記通信ネットワークからダウンロードするためのダウンロードプログラムは、予め本体装置に格納されているものとする。あるいは、別の記録媒体からインストールされるものとする。
【0085】
尚、上記記録媒体に記録されるものはプログラムのみに限定されるものではなく、データも記録することが可能である。
【0086】
【発明の効果】
以上より明らかなように、第1の発明のペンタッチ座標入力装置は、タブレット視差補正時において、視差補正時ペン表示位置算出手段がペンの移動量に基づいてペン表示位置を算出する際に用いる移動係数の値を、移動係数設定手段によってペンの移動速度に応じて設定するので、上記ペン入力位置とペン表示位置とが大きく離れている場合には、上記ペンのスライド速度を早くしてペン表示位置の移動速度を大きく設定することによって、より迅速にペン表示位置をペン入力位置に接近させることができる。また、ペン入力位置とペン表示位置との距離が近づくに連れて両位置を一致させようとして必然的にペンの移動速度が小さくなり、それに応じてペン表示位置の移動速度を小さく設定することによって、ペン入力位置とペン表示位置との位置合わせを正確に且つ容易に行うことができる。
【0087】
このように、上記ペン表示位置の速度制御が、上記ペン入力位置をペン表示位置に一致させようとする操作者の無意識のペン操作に応じて、自動的に且つ滑らかに行われる。したがって、操作者に余計な負担を強いることなく、容易に短時間に視差補正処理の操作を行うことができる。
【0088】
また、第1の実施例のペンタッチ座標入力装置は、上記視差補正手段を、少なくとも2点以上の上記タブレットからのペンタッチ解除時における上記タブレットの情報と表示パネルの情報とに基づいて上記視差の補正を行うようにしたので、上記タブレット上における複数箇所において粗調整と微調整とを行って、より正確に上記タブレットと表示パネルとの視差補正を行うことができる。
【0089】
また、第2の実施例のペンタッチ座標入力装置は、上記視差補正時ペン表示位置算出手段を、上記ペンのX軸方向への移動量とY軸方向への移動量とに上記移動係数を乗算して上記ペン表示位置の移動量を算出するようにしたので、上記移動係数の絶対値を「1」にすれば、ペン表示位置の移動量をペンの移動量と同じにできる。また、「1」より小さくすればペンの移動量よりも小さくでき、「1」より大きくすればペンの移動量よりも大きくできる。
【0090】
また、第3の実施例のペンタッチ座標入力装置は、上記移動係数を負の数または正の数としたので、上記移動係数を負の数とした場合には、上記ペンをペン表示位置に向ってスライドした際に上記ペン表示位置をペンに向って移動させるようにできる。したがって、上記移動係数の絶対値をペン入力位置の速度の低下に応じて低めるように設定すれば、ペン入力位置をペン表示位置に一致させる場合における操作者のペン操作性の感じ方に則した、視差補正動作を実現できる。
【0091】
さらに、上記移動係数を正の数とした場合には、上記ペン表示位置の移動方向を上記ペンのスライド方向と同にできる。したがって、上記移動係数の値をペン入力位置の速度の低下に応じて「1」に向って減少するように設定すれば、ペン入力位置がタブレットの縁部にあるためにペン表示位置が表示パネルの表示領域外に在る場合に、ペンをタブレットの内側にスライドさせることによってペン表示位置を上記表示領域内に呼びこんで、ペン入力位置とペン表示位置とを一致させることができる。
【0092】
また、第2の発明のペンタッチ座標入力装置は、タブレット視差補正時において、視差補正時ペン表示位置算出手段がペンの移動量に基づいてペン表示位置を算出する際に用いる移動係数の値を、移動係数変更手段によって視差補正回数に応じて変更するので、視差補正開始直後であって上記ペン入力位置とペン表示位置とが大きくズレている場合には、上記ペン表示位置の移動速度を大きく設定することによって、より迅速にペン表示位置とペン入力位置との位置合わせを行うことができる。また、視差補正処理が繰り返されてペン入力位置とペン表示位置とのズレが小さい場合には、上記ペン表示位置の移動速度を小さく設定することによって、ペン入力位置とペン表示位置との位置合わせを正確に且つ容易に行うことができる。
【0093】
また、第3の発明のタブレット視差補正方法は、ペン入力位置の移動量に基づくペン表示位置算出の際に用いる移動係数の値を、上記ペン入力位置の移動速度に応じて設定するので、上記第1の発明の場合と同様に、上記ペン入力位置とペン表示位置との距離が大きい場合には、上記ペンのスライド速度を早くしてペン表示位置の移動速度を大きく設定することによって、より迅速にペン表示位置をペン入力位置に接近させることができる。また、上記距離が近づくに伴ってペンの移動速度を小さくしてペン表示位置の移動速度を小さく設定することによって、ペン入力位置とペン表示位置との位置合わせを正確に且つ容易に行うことができる。
【0094】
また、第4の発明のタブレット視差補正方法は、ペン入力位置の移動量に基づくペン表示位置算出の際に用いる移動係数の値を、上記視差補正処理の回数に応じて変更するので、上記第2の発明の場合と同様に、視差補正開始直後であって上記ペン入力位置とペン表示位置とのズレが大きい場合には、上記ペン表示位置の移動速度を大きくすることによって、より迅速にペン表示位置とペン入力位置との位置合わせを行うことができる。また、視差補正処理が繰り返されてペン入力位置とペン表示位置とのズレが小さい場合には、上記ペン表示位置の移動速度を小さく設定することによって、ペン入力位置とペン表示位置との位置合わせを正確に且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のペンタッチ座標入力装置におけるブロック図である。
【図2】 図1における透明タブレットの電気的構成を示す図である。
【図3】 図2に示す透明タブレット上における電圧値Vx0,Vy0,Vx1,Vy1を測定する方法の説明図である。
【図4】 ペン入力位置の移動速度に応じてペン表示位置の移動速度を設定するタブレット視差補正処理動作のフローチャートである。
【図5】 図4に示すタブレット視差補正処理動作において実行される移動係数k設定サブルーチンのフローチャートである。
【図6】 図5に示す移動係数k設定処理の結果に基づくペンの移動量と表示点の移動量との関係を示す図である。
【図7】 タブレット視差補正処理の回数に応じてペン表示位置の移動速度を変更するタブレット視差補正処理動作のフローチャートである。
【図8】 図7に示すタブレット視差補正処理動作において実行される移動係数k変更サブルーチンのフローチャートである。
【図9】 図8に示す移動係数k変更処理の結果に基づくペンの移動量と表示点の移動量との関係を示図である。
【符号の説明】
1…表示画面、
2…透明タブレット、
3…X座標検出用シート、
3a,3b,4a,4b…電極、
4…Y座標検出用シート、
5,6,7,8…スイッチ、
9…電圧検出部、
10…ペン表示位置算出部、
11…表示部、
12…基準電圧格納部、
13…ペン入力位置検出部、
14…視差補正時ペン表示位置算出部、
15…視差補正部、
16…k設定部、
17…k格納部。
Claims (7)
- タブレットと、このタブレットにおけるペンタッチ位置を表示する表示パネルとを、互いに重ね合わせて一体化されたペンタッチ座標入力装置において、
タブレット視差補正時に、
上記タブレット上におけるペンタッチ位置を座標として検出するペン入力位置検出手段と、
上記検出されたペン入力位置に基づくペンの移動量と移動係数とに基づいて、上記表示パネル上におけるペン表示位置を算出する視差補正時ペン表示位置算出手段と、
上記タブレットからのペンタッチ解除時における上記タブレットの情報と上記表示パネルの情報とに基づいて、上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正する視差補正手段と、
上記ペンの移動時におけるペンの移動速度に応じて、上記移動係数の値を設定する移動係数設定手段を備えたことを特徴とするペンタッチ座標入力装置。 - 請求項1に記載のペンタッチ座標入力装置において、
上記視差補正手段は、少なくとも2以上の上記タブレットからのペンタッチ解除時における上記タブレットの情報と上記表示パネルの情報とに基づいて、上記視差の補正を行うようになっていることを特徴とするペンタッチ座標入力装置。 - 請求項1あるいは請求項2に記載のペンタッチ座標入力装置において、
上記視差補正時ペン表示位置算出手段は、上記ペンの移動量を上記タブレットのX軸方向移動量とY軸方向移動量と分解し、夫々の移動量に上記移動係数を乗算することによって上記ペン表示位置の移動量を算出するようになっていることを特徴とするペンタッチ座標入力装置。 - 請求項3に記載のペンタッチ座標入力装置において、
上記移動係数は負の数または正の数であることを特微とするペンタッチ座標入力装置。 - タブレットと、このタブレットにおけるペンタッチ位置を表示する表示パネルとを、互いに重ね合わせて一体化されたペンタッチ座標入力装置において、
タブレット視差補正時に、
上記タブレット上におけるペンタッチ位置を座標として検出するペン入力位置検出手段と、
上記検出されたペン入力位置に基づくペンの移動量と移動係数とに基づいて、上記表示パネル上におけるペン表示位置を算出する視差補正時ペン表示位置算出手段と、
上記タブレットからのペンタッチ解除時における上記タブレットの情報と上記表示パネルの情報とに基づいて、上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正する視差補正手段と、
上記視差補正手段による上記視差の補正回数に応じて、上記移動係数の値を変更する移動係数変更手段を備えたことを特徴とするペンタッチ座標入力装置。 - 表示パネル上に積層されたタブレットにおけるペンタッチ位置をスライドし、上記タブレットからのペンアップ時における上記タブレットの情報と上記表示パネル上の情報とに基づいて、上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正するタブレット視差補正方法において、
上記ペンタッチ位置のスライドに伴う上記ペン表示位置の移動を、上記ペン入力位置の移動量と移動係数とに基づいて算出された上記表示パネル上におけるペン表示位置の移動量に基づいて行い、
上記移動係数の値を、上記ペン入力位置の移動速度に応じて設定することを特徴とするタブレット視差補正方法。 - 表示パネル上に積層されたタブレットにおけるペンタッチ位置をスライドし、上記タブレットからのペンアップ時における上記タブレットの情報と上記表示パネル上の情報とに基づいて、上記タブレット上におけるペン入力位置と上記表示パネル上におけるペン表示位置との視差を補正するタブレット視差補正方法において、
上記ペンタッチ位置のスライドに伴う上記ペン表示位置の移動を、上記ペン入力位置の移動量と移動係数とに基づいて算出された上記表示パネル上におけるペン表示位置の移動量に基づいて行い、
上記移動係数の値を、上記視差の補正回数に応じて変更することを特徴とするタブレット視差補正方法。
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