JP3783746B2 - 中空形材の曲げ加工の座屈限界及びしわ形状予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金等からなる中空の角筒状の部材の曲げ加工に際しての座屈限界及びしわ形状の予測方法に関し、特に曲げ加工を多用する自動車用のバンパー部材や骨格構造部材の形材断面設計及び曲げ加工方法決定に関連するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の輸送機材の構造用部材としてアルミ形材を適用する場合、自動車の骨格形状に合わせて曲げ加工が施される場合が多く、例えばプレスベンダー、ドローベンダー等が用いられる(図18参照)。このような曲げ加工において、特に曲げ半径が小さく、また、断面の肉厚が薄い場合に、加工条件によっては、圧縮応力の加わる曲げ内側壁や突出フランジ等において座屈によるしわ等の形状不良、また引張応力の加わる曲げ外側壁には破断が生じ、そのため製品形状が制限されてしまうという問題がある。特に、しわ発生部位が他部材との接合部位となる場合は、その接合が困難となるおそれがある。
かかる曲げによるしわ発生を防止するために、例えば、肉厚を厚くするとか、また曲げ加工の際に心金を使用する等の方法がとられている。しかし前者では可及的な軽量化が求められる自動車構造部材等の要求に反している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような曲げ加工における不具合に対して、力学的見地から曲げ内側壁における座屈限界(しわ発生)及びしわ形状を理論的に予測した例は見あたらない。本発明者は、曲げ加工に際し、かかる座屈限界としわ形状が加工前に予測できれば、熟練作業者によらずとも適切な曲げ加工条件の設定、評価、また、ひいてはしわの発生予測から形材断面設計を容易ならしめる一助になることを想起し、本発明をなし得たものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁をもつ中空形材において、該曲げ内側壁を一枚の板であると仮定して、該曲げ内側壁の座屈限界応力を求め、該座屈限界応力に基づき曲げ加工における座屈曲げ半径を予測する中空形材の曲げ加工の座屈限界予測方法(請求項1)である。
【0005】
さらに、本発明は、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁をもつ中空形材において、該曲げ内側壁を一枚の板であると仮定して、該曲げ内側壁の座屈限界応力を求め、該座屈限界応力に基づき形材の座屈曲げ半径を求め、該座屈曲げ半径より小なる曲げ半径では、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁中心線上では面内歪みは増加せず、変形は全てしわにより吸収されると仮定して、曲げ内側壁に発生するしわ形状を求める中空形材の曲げ加工の座屈限界及びしわ形状予測方法(請求項2)である。
【0006】
上記座屈限界及びしわ形状予測方法は、前記しわ形状を正弦波の関数とし(請求項3)、あるいは、前記しわ形状を、曲げ内側壁を支持する壁の幅厚比(t’肉厚/b’形材長手方向に対して直角方向の板幅)が曲げ内側壁の幅厚比(t/b)の1.2倍以上であれば形材長手方向に正弦波、幅方向に1波長の正弦波、1.2倍未満であれば形材長手方向に正弦波、幅方向に半波長の正弦波の関数として表現する(請求項4)場合を含む。
【0007】
さらに具体的にいえば、上記座屈限界及びしわ形状予測方法は、以下のステップからなる方法を含む。第1ステップとして、形材の断面形状を規定するパラメータ及び材料特性で決まるパラメータに基づいて、座屈限界応力σcr及び座屈開始時のしわの波長λを算出し、第2ステップとして、該σcrに基づき座屈限界曲げ半径Rcrを算出し、第3ステップとして、曲げ半径Rが座屈限界曲げ半径Rcr以下の場合は、座屈限界歪み量εcrを算出し、第4ステップとして、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁中心線上では面内歪みは増加せず、変形は全てしわにより吸収されると仮定して、Bernoulliの仮定による歪みの釣り合い式と、曲げ中立軸から内側に発生する圧縮力と外側に発生する引張力の総計は零となる応力の釣り合い式が成立するように、曲げ外側壁に発生する歪み量εt を求め、第5ステップとして、前記εcr、前記εt、前記座屈開始時のしわ波長 λ及び断面形状を規定する前記パラメータに基づいてしわ波長λ’を算出し、第6ステップとして、前記εcr、前記εt及び断面形状を規定する前記パラメータ に加えて、該λ’に基づいてしわ深さδを算出すること(請求項5)。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、中空形材の断面形状、材料特性の影響を考慮して、座屈限界(しわの発生)及びしわ形状を予測することが可能になる。以下、本発明の予測方法につき、理論及び算出アルゴリズムを説明する。
【0009】
解析対象として、肉厚がウエブ部とフランジ部で等しい中空矩形□型形材の断面形状(図1;断面全体は日型であるが、解析対象は口型部分)で説明する。ここで、bはウエブにより支持される曲げ内側壁の幅(内寸)、Hはウエブの幅(外寸)、tは板厚、Rは曲げ中心半径である。形材は、常に曲げ型との接触点で、型に沿うまでの加工を受けるとし、理論式の導出を行なった。
【0010】
(解析上の仮定)
まず、理論モデル構築に際して、解析上次の仮定を置いた。
▲1▼曲げ加工時の歪み分布は、平面が曲げ加工後も平面で残るというBernoulliの仮定が成立する。
▲2▼曲げ内側壁の変形は、座屈開始までは、全て面内ひずみで吸収される。
▲3▼曲げ内側壁の幅方向中心線上では、座屈開始後、面内歪みは増加せず、変形は全てしわにより吸収される。
▲4▼ウエブ部では、座屈は生じない。
▲5▼変形に際し、肉厚の変化は無視できる。
▲6▼材料の公称応力−公称歪曲線は次式(1)で表される。
【数1】
【0011】
▲7▼曲げ内側壁は塑性座屈し、その座屈波形は、ウエブ部の剛性に応じて以下の2通りを考える。それぞれの座屈波形の模式図を図2(a)、2(b)に示す。
・ウエブ部が低剛性の場合は、図2(a)に示すようにウエブとの交差部を支持端と考え、座屈波形wを次式(2)で仮定する。
【数2】
・ウエブが高剛性の場合は、図2(b)に示すようにウエブとの交差部を固定端と考え、座屈波形wを次式(3)で仮定する。
【数3】
ここで、δはしわの深さ、λ’はしわの波長(コード長)である。
【0012】
(座屈限界応力σcrと座屈開始時のしわの波長λの導出)
以上の▲1▼〜▲7▼の仮定を前提として、座屈限界応力σcrと座屈開始時のしわの波長λ(アーク長)を導出する。
まず、曲げ内側壁を一枚の矩形板と仮定し、それぞれの座屈形態における座屈限界応力σcr及び座屈開始時のしわの波長λの導出を行った。なお、しわの波長(コード長)λ’は、変形に伴って変化するが、仮定▲3▼より、曲げ内側壁中央のしわの線長に相当する座屈開始時のしわの波長λは不変である。また、座屈開始時はλ=λ’となる。
導出のための初期入力データは、解析対象たる中空□型形材の断面形状を規定するパラメータとして、b:ウエブにより支持される曲げ内側壁の幅(内寸)、H:ウエブの幅(外寸)、t:板厚であり、材料特性で決まるパラメータとして、材料の耐力σ0.2、K値及びn値である。
【0013】
本発明では、曲げ内側壁の座屈を塑性座屈として取り扱う必要がある。そのために、塑性状態を直交異方性体に置換して解析する
【外1】
の理論を用いる。それによれば、歪みエネルギーの釣り合いから次式(4)が成立する。
【数4】
【0014】
ここで、形材長手方向(X方向)の応力が高応力であることに着目し、Bleichによる異方性を考慮した剛性を用いると、Dx、Dy、Dxy、Dyx、Gtは 以下の式(5)で定義される。
【数5】
なお、ここで、Eは弾性率、νはポアソン比、Etは以下の式(6)に示す接 線係数である。
【数6】
【0015】
式(4)において、エネルギーが最小となる条件より、座屈限界応力σcr、座屈開始時のしわの波長λは、次式(7)、(8)のようになる。
・ウエブ部が低剛性の場合(座屈形態:図2(a))
【数7】
・ウエブ部が高剛性の場合(座屈形態:図2(b))
【数8】
【0016】
座屈限界歪み量εcrは、応力−歪み曲線の仮定から、式(7)或いは(8)と式(1)の双方を満足する解として得られる。
【0017】
(座屈限界曲げ半径Rcrの導出)
座屈限界曲げ半径Rcrを座屈限界応力σcrから導出する。中空矩形□型断面形材において、Hをウエブの幅(外寸)とした場合、下記式(9)のようになる。
【数9】
【0018】
(曲げ外側壁歪み量εtの導出)
応力及び歪みの釣り合いから、曲げ外側壁歪み量εt及びしわ深さδを求める 。仮定▲1▼、▲2▼から曲げ加工時の歪み分布は、図3のようになる。ここで、Uは中立軸移動量、εwはしわによる歪み相当量である。なお、Uは重心から曲げ外側 壁への移動を正としている。
曲げ外側壁で発生する歪み量εtは次式(10)で表される。
【数10】
【0019】
また、しわによる歪み相当量εwは、座屈波形wを用いて次式(11)のよう に表される。
【数11】
仮定▲3▼より、εcは、曲げ内側壁幅方向中心線上のεwとεcrの和であり、次式(12)のようにおける。
【数12】
式(2)或いは(3)を式(11)に代入すると、曲げ内側壁中央でのεwは 以下の式(13)のようになる。
【数13】
【0020】
断面力を0とすると、応力の釣り合い式より次式(14)となる。
【数14】
曲げ外側壁歪み量εtは式(10)〜(13)を用いて式(14)をニュート ン・ラフソン法等の計算手法で計算可能である。
【0021】
(しわの波長λ’及びしわ深さδの導出)
しわの波長λ’は、座屈開始時のしわの波長λを用いて次式(15)のように表される。
【数15】
式(10)、(12)、(15)を用いると、しわの波長λ’、座屈開始時のしわの深さδはそれぞれ次式(16)、(17)のようになる。
【数16】
【数17】
【0022】
なお、上記したのは、ウエブ部とフランジ部の肉厚が一定の□型矩形断面形状を対象としたものであったが、本理論は、ウエブ部とフランジ部の肉厚が相違する場合にも適用可能である。
いずれの場合も、ウエブ部の剛性による座屈限界応力σcr及び座屈開始時のしわの波長のλの算出式(7)と(8)の使い分けは、図4に示すようにウエブ部の板厚:t’、幅(内寸):b’とし、フランジ部の板厚:t、幅(内寸)bとしたとき、ウエブ部の幅厚比(t’/b’)と曲げ内側壁の幅厚比(t/b)を比較して行えばよいが、t’/b’<1.2t/bのとき(7)式、t’/b’≧1.2t/bのとき(8)式とする。その理由は後述する。
【0023】
さらに、本理論は、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁を持つ中空形材であれば、例えば図5に示すような種々の断面形状の中空形材にも適用可能である。図5において斜線部が曲げ内側壁であり、その両側の支持部材の厚みをt’、幅をb’とし、両側の支持部材の厚みや幅が異なる(t1’、b1’、t2’、 b2’)ときは、ウエブ部の幅厚比(t’/b’)=(t1’+t2’)/(b1’+b2’)とおくとよい。
そして、この場合、ウエブ幅Hの代わりに、曲げの中立軸から曲げ内壁外面までの距離H1、曲げ外壁面までの距離H2(図4参照)を用いることで、下記(9)−2式のようにRcrは求まる。
【数18】
さらに、δ、εt、λ’を求めるためには、式(10)、式(14)の代わり にそれぞれ次の式(10)−2、(14)−2を用いる。
【数19】
【数20】
ここで、σiは任意の位置での応力、tiは任意の位置での板厚であり、座標系は図3に従うものとする。
【0024】
次に、算出式(7)と(8)の使い分けを簡単に説明する。
まず、弾性域での座屈では、板の座屈応力σcrは以下の式(18)、(19)のようにおける。
【数21】
この座屈係数kは、板端部の拘束状態、応力状態で様々に変化する。座屈係数kはTimoshenkoらによって明らかにされており、4辺単純支持、純圧縮条件(ウエブが低剛性のときに対応)での座屈係数kは4となり、2辺固定、2辺単純支持、純圧縮条件(ウエブが高剛性のときに対応)での座屈係数kは8となる。
【0025】
一方、曲げ内側壁の幅厚比をt/b、ウエブの幅厚比をt’/b’として、α=(t’/b’)/(t/b)をパラメーターとして弾性域での座屈係数kを求めると、図6のようになる。なお、図6は、解析モデルの形状を図7に示すものとし、汎用の静的陰解法ソフトABAQUSを用いた固有値解析により求めたものである。図6から、α=1.2を境界として、α≧1.2のとき座屈係数kは8により近く、α<1.2のとき4により近いことが分かる。
ここで、板端部の拘束状態、応力状態と座屈係数kの関係は、弾性域、塑性域を問わず変化しないと考えられる。つまり、上記の結果は塑性域にも適用されると考えられるから、本発明において、α≧1.2のとき高剛性の式(8)を使用し、α<1.2のとき低剛性の式(7)を使用するとよい。これは後述する実施例の結果とも一致する。
【0026】
以上の算出理論をフローチャートで示すと、図8及び図9のようになる。
【0027】
【実施例】
上述の理論式の算出結果と、実際にドローベンダーによる曲げ加工試験結果とを比較した。曲げ加工試験及び算出には、ウエブ部とフランジ部で板厚一定の中空矩形断面形状を有する日型断面のアルミ合金形材を使用した。具体的には、以下に示す。
【0028】
(曲げ加工試験)
曲げ加工試験は、表1に示す実験条件で、一般的なアルミ押出用合金である6N01−T1合金を用い、30゜まで曲げ加工を行った。供試材は、日型断面形材であり、100mm長の面が曲げ外側壁(引張側)及び曲げ内側壁となるように、曲げ中心半径180mm及び280mmの2パターンの試験を行った。ここで、曲げ外側壁の歪み量は、予め曲げ外側壁に添付した5mmピッチのスクライブドスクエアを用いて測定した。この試験結果を表2に示す。なお、心金は用いていない。
【表1】
【表2】
【0029】
(計算)
一方、計算の方は、図8及び図9に示したフローチャートに基づいてプログラミングし、表1に示す材料の引張特性及び断面形状に基づくデータと、式(1)で使用するσ0.2、K値、n値を入力して、曲げ外側歪み量εt、しわ深さδ及び波長λ’を算出した。
ここで、式(1)で使用する係数K、nについては、しわの深さには、座屈変形後の応力−歪み関係が大きく影響すると考えられるので、高歪み領域までの公称応力−公称歪み関係が、平均的に一致するように決定した。その結果、σ0.2 =128.38MPa、K=166.6、n=0.26とした。供試材(6N0 1−T1)の公称応力−公称歪み曲線(実験曲線)と計算に用いる応力−歪み曲線を図10に示す。
【0030】
(計算結果と実験結果の比較)
座屈限界曲げ半径Rcr以下の曲げ半径の領域である曲げ中心半径Rが100〜300mmの範囲で、しわの波長λ’と曲げ中心半径Rとの関係を算出し、これを実測値と比較した。
図11は、しわの波長λ’を曲げ内側壁の幅bで無次元化した無次元しわ波長λ’/bと曲げ中心半径Rの関係を、幅厚比(t/b)を0.025、0.050、0.075、0.100とした4パターンにつき算出したものである。なお、算出にあたっては、本断面ではt’/b’<1.2t/bであり、この計算ではウエブを低剛性と仮定して行った。
図11をみると、表1の供試材(t/b=0.052)に近いt/b=0.050の場合の計算結果と実測値は略一致している。
【0031】
さらに、上記と同じ4パターンの幅厚比(t/b)につき、εt及びδと曲げ 中心半径Rとの関係を算出し、これを実測値と比較した。なお、この計算でもウエブを低剛性と仮定した。結果を図12及び図13に示す。ここで、曲げ中心半径Rは、ウエブの曲げ内側壁から曲げ中立軸までの距離H/2(外寸)で除して無次元化している。この2R/Hを無次元曲げ半径と呼ぶ。
【0032】
図12は、曲げ外側壁の歪み量εtと無次元曲げ半径2R/Hとの関係を示す ものである。εtは、t/bにほぼ影響を受けず、t/bに無関係にほぼ一本の 曲線にまとめられ、実測値とも良好に一致する。(なお、曲げ中立軸がウエブ幅の中心にない場合でも、一般に、εtとH2/R(H2:図4参照)の関係をとれ ば、t/bに無関係にほぼ一本の曲線にまとめられる。)
図12をみれば、実用的な範囲で、曲げ外側壁の歪み量εtを2R/H(ある いはH2/R)で決定しても問題がないといえる。
【0033】
図13は、しわの深さδを曲げ加工内側壁の幅bで除したδ/b(無次元しわ深さという)と無次元曲げ半径2R/Hの関係を示す。実験値としては、表2に示す供試材の実測値に加えて、6N01−T1の供試材と耐力、加工硬化特性が類似していると考えられるアルミ合金6061−O材の正方形□型断面形材(外寸40mm×40mm、肉厚一定)に関する公知のしわ深さデータA及びBも図13に併記した。
ここで、データAは、第44回塑性加工春期講演論文集(1993)、P.475のうち、板厚比(t/b)が0.040、0.056、0.088、曲げ中心半径R=150の値を用い、データBは、同論文集、P.481のうち、t/bが0.088、R=170、220、270、320のデータから、引張曲げであるため張力が最も小さい場合(19.6MPa)の値を用いた。
【0034】
図13をみると、t/bを0.050とした計算値と、t/bがこれに近い実測値(図中○、△、□)は、比較的よく一致している。また、t/bを0.075とした計算値と、t/bがこれに近い実測値(図中の×、+)は、比較的よく一致している。
従って、この図13は、アルミ軟質合金の矩形断面一般でしわ深さδの予測図として十分に使用可能であり、しわ深さの簡易予測図として利用できる。
また、図13で示した曲げ加工時のしわ深さδを調査した実験結果は、曲げ中立軸がウエブ中心上となる断面形状をした中空形材を曲げ加工した際に得られるものであるため、横軸を2R/Hで整理しているが、前記一般式(10)−2、(14)−2を用いて計算し、2R/Hの代わりに曲げ中心軸から曲げ内側壁までの距離H1を用いてR/H1とすることで、図5に示すような形材のしわ深さδの予測図として利用可能となる。
【0035】
また、曲げ外側壁の歪量εtについても、同様に前記一般式(10)−2を用 いて計算し、図12の2R/Hの代わりに曲げ中心軸から曲げ外側壁までの距離H2を用いてR/H2とすることで、図5に示すような形材の曲げ外側壁の歪量εtの予測図として利用可能となる。
【0036】
以上の計算及び試験とも心金は使用していないが、心金の使用を想定した座屈限界曲げ半径Rcr及びしわ形状(深さδ、波長λ’)の予測も可能である。
例えば、図14に、ドローベンダーで周知のナイフ型の心金を使用して曲げ加工試験を行ったときの実測値と、心金を使用しないで曲げ加工試験を行ったときの実測値を、無次元しわ深さδ/bと無次元曲げ半径R/H1の関係として示す 。なお、試験に用いた供試材は図15(d)〜(f)及び図16(j)に示す断面形状をもつ6N01−T1アルミ押出形材である。
【0037】
図14をみると、心金を使用した場合に発生するしわの深さδは、心金を使用しない場合の約15〜20%となっている。前記のとおり、心金を使用しない場合のしわ深さの計算値は実測値に比較的よく一致するのであるから、心金を使用した場合のしわ深さの予測値については、心金を使用しないことを前提とした計算値の約15〜20%になると予測できる。
【0038】
また、図17には、心金を使用した場合と使用しない場合の曲げ外側壁の歪量εt(最大値)の実測値とR/H2の関係を示す。なお、試験に用いた供試材は図15及び図16に示す断面形状をもつ6N01−T1アルミ押出形材である。
図17をみると、心金を使用した場合に曲げ外壁側に発生する歪量εtは、心 金を使用しない場合の約1.2〜1.5倍となっている。前記のとおり、心金を使用しない場合の歪量εtの計算値は実測値によく一致するのであるから、心金 を使用した場合の曲げ外壁側歪量εtの予測値については、心金を使用しないこ とを前提とした計算値の約1.2〜1.5倍になると予測できる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁をもつ中空形材の曲げ加工に際し、曲げ内側壁における座屈限界としわ形状を曲げ加工前に予測することができ、適切な曲げ加工条件の設定、評価、また、しわの発生予測から形材断面設計を有利に進めることができる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 解析対象の形材の形状を説明する図である。
【図2】 しわの波形を模式的に示すもので、(a)は低剛性ウエブ、(b)は高剛性ウエブの場合である。
【図3】 曲げ加工時における曲げ内側壁、ウエブ及び曲げ外側壁のひずみ分布を示す図である。
【図4】 解析対象の形材の形状(フランジとウエブの肉厚が同一でない場合)を説明する図である。
【図5】 本発明方法を適用可能な形材の断面形状の例である。(斜線部が曲げ内側壁の座屈部位。)
【図6】 座屈係数kと幅厚比(α)の関係を解析した結果を示す図である。
【図7】 その解析に用いたモデルの形状を示す図である。
【図8】 本発明方法のフローチャートである。
【図9】 本発明方法のフローチャート(続き)である。
【図10】 実験に用いた供試材の公称応力−公称歪み曲線と計算に用いた応力−歪み曲線を示す図である。
【図11】 曲げ半径Rと無次元化したしわの波長(λ’/b)の関係(計算結果と実測値)を示す図である。
【図12】 無次元曲げ半径(2R/H)と曲げ外側壁の歪み量εtの関係 (計算結果と実測値)を示す図である。
【図13】 無次元曲げ半径(2R/H)と無次元しわ深さ(δ/b)の関係(計算結果と実測値)を示す図である。
【図14】 心金を使用した場合としなかった場合の曲げ加工において、無次元曲げ半径(R/H1)と無次元しわ深さ(δ/b)の関係(実測値)を示す 図である。
【図15】 曲げ加工に使用した形材の断面形状である(いずれも左辺が曲げ内側壁)。
【図16】 曲げ加工に使用した形材の断面形状である(同上)。
【図17】 心金を使用した場合としなかった場合の曲げ加工において、R/H2と曲げ外側壁の歪み量εtの関係(実測値)を示す図である。
【図18】 代表的な曲げ加工方法を示す図である。
【符号の説明】
b ウエブにより支持される曲げ内側壁の幅(内寸)
t その板厚
H ウエブの幅(外寸)
R 曲げ中心半径
εt 曲げ外側壁歪み量
λ’しわ波長
δ しわ深さ
2R/H 無次元曲げ半径
δ/b 無次元しわ深さ
Claims (6)
- 曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁をもつ中空形材において、該曲げ内側壁を一枚の板であると仮定して、該曲げ内側壁の座屈限界応力を求め、該座屈限界応力に基づき曲げ加工における座屈限界曲げ半径を予測する中空形材の曲げ加工の座屈限界予測方法
- 曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁をもつ中空形材において、該曲げ内側壁を一枚の板であると仮定して、該曲げ内側壁の座屈限界応力を求め、該座屈限界応力に基づき形材の座屈限界曲げ半径を求め、該座屈限界曲げ半径より小なる曲げ半径では、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁中心線上では面内歪みは増加せず、変形は全てしわにより吸収されると仮定して、曲げ内側壁に発生するしわ形状を求める中空形材の曲げ加工の座屈限界及びしわ形状予測方法。
- 前記しわ形状を正弦波の関数とした請求項2に記載の中空形材の曲げ加工の座屈限界及びしわ形状予測方法。
- 前記しわ形状を、曲げ内側壁を支持する壁の幅厚比(肉厚t’/形材長手方向に対して直角方向の板幅b’)が曲げ内側壁の幅厚比(t/b)の1.2倍以上であれば形材長手方向に正弦波、幅方向に1波長の正弦波、1.2倍未満であれば形材長手方向に正弦波、幅方向に半波長の正弦波の関数として表現した請求項2又は3に記載の中空形材の曲げ加工の座屈限界及びしわ形状予測法。
- 第1ステップとして、形材の断面形状を規定するパラメータ及び材料特性で決まるパラメータに基づいて、座屈限界応力σcr及び座屈開始時のしわの波長λを算出し、第2ステップとして、該σcrに基づき座屈限界曲げ半径Rcrを算出し、第3ステップとして、曲げ半径Rが座屈限界曲げ半径Rcr以下の場合は、座屈限界歪み量εcrを算出し、第4ステップとして、曲げ中立軸に対して平行となる曲げ内側壁中心線上では面内歪みは増加せず、変形は全てしわにより吸収されると仮定して、Bernoulliの仮定による歪みの釣り合い式と、曲げ中立軸から内側に発生する圧縮力と外側に発生する引張力の総計は零となる応力の釣り合い式が成立するように、曲げ外側壁に発生する歪み量εtを求 め、第5ステップとして、前記εcr、前記εt、前記座屈開始時のしわ波長λ及 び断面形状を規定する前記パラメータに基づいてしわ波長λ’を算出し、第6ステップとして、前記εcr、前記εt及び断面形状を規定する前記パラメータに加 えて、該λ’に基づいてしわ深さδを算出する中空形材の曲げ加工の座屈限界及びしわ形状予測方法。
- 前記中空形材は、中空矩形断面を有する中空形材である請求項1〜5のいずれか1つに記載の中空形材の曲げ加工の座屈限界及びしわ形状予測方法。
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