JP3781331B2 - 血管再狭窄予防用キセノンー133の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冠動脈の動脈硬化に対して行う血管形成術に関するものであり、血管再狭窄の予防が可能な放射性ステントおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
即ち、本発明は、133Xeを円筒状のステントにイオン注入法によって注入したβ線、γ線およびこのγ線のγ遷移による内部転換電子を放出する放射性ステント、並びにその製造方法に関するものである。そして、この放射性ステントは、血管内に植え込まれて血管の平滑筋細胞の異常増殖を抑止することにより血管の再狭窄を防止することができるものである。更に、本発明の放射性ステントは、バルーンや通常の非放射性ステントによる血管形成術後の再狭窄を防止するだけでなく、バルーンや通常の非放射性ステントによる血管形成術の代わりに133Xe放射性ステントを用いて血管形成術を行うものである。
【0003】
【従来の技術】
冠動脈の動脈硬化の治療法としてバルーンおよびステントを用いた血管形成術が用いられるが、治療法としてバルーンおよびステントを用いた場合、再狭窄が、それぞれ、30−40%および10−30%の割合で生じる。再狭窄は主に平滑筋細胞の異常増殖によって起こると考えられており、これに対する予防法として血管内照射法が有効であることがわかってきた〔Waksman R.et al.Circulation,91,(1995)1533−1539〕。
【0004】
この血管内照射法の1つとしてステント自身を放射化して使用する方法が注目されつつあるが、イオン注入により得られた放射性ステントに関しては、32Pをイオン注入することにより得られたβ線を放出する放射ステントに関する報告があるのみであり〔Hehrlein C.et al.Circulation,93,(1996)641−645〕、他には報告されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術として32Pをステント表面にイオン注入する方法が報告されているが、32Pは半減期が14.3日と比較的長く、32Pから放射されるβ線の照射時間が長期になるため血管内皮の再生を阻害して血栓形成を誘発する可能性がある。したがって、より半減期の短い放射性同位元素を用いて、血管内皮の再生を阻害せずに再狭窄予防が行える放射性ステントの開発が必要とされている。
【0006】
また、血管再狭窄はステント全表面に相当する部分で起こることから、ステント全表面に均一に放射性同位元素をイオン注入する必要がある。さらに、現在の動脈硬化の患者数を考えると、放射性ステントの大量生産も重要である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ステントにイオン注入する核種として32Pより半減期が短く、β線最大エネルギーの低い133Xeを用いて放射性ステントを製造するものである。また、イオン注入において、均一照射装置を用いることによりステント表面への均一なイオン注入が可能となる。さらに、133Xeは核分裂生成物であるので原子炉にイオン注入器を接続すれば、連続的に133Xeのイオン注入ができ、放射性ステントの大量生産が可能となる。
【0008】
即ち、本発明の第1の発明は、円筒状のステントの全表面に133Xeをイオン注入法で注入することにより、その注入された133Xeから放出されるβ線及び内部転換電子によって血管平滑筋の増殖を抑制する血管再狭窄予防用の133Xe放射性ステントである。
【0009】
また、本発明の第2の発明は、イオン注入器内にステント均一照射部を設け、この照射部に配置されたステントに133Xeをイオン注入し、ステントの全表面に133Xeが均一に注入された血管再狭窄予防用の133Xe放射性ステントを製造する方法である。
【0010】
更にまた、本発明の第3の発明は、ステントに注入される133Xe源として、原子炉内の燃料棒の235Uに中性子が照射された際に発生する核分裂生成物である133Xeを利用し、この133Xeを配管を介してイオン注入器に供給してステントへのイオン注入を連続的に行うことにより、血管再狭窄予防用の133Xe放射性ステントを大量生産をする方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
133 Xe放射性ステントについて
133Xeは半減期が5.25日でβ壊変し、その壊変時に最大350keVのβ線、および81keVのγ線とこのγ遷移による内部転換電子とを放出する。したがって、血管内照射にはβ線とともに内部転換電子の寄与が期待できる。また、β線はエネルギーが低いため、その照射は血管内膜部分に限定され、他の部分には影響を与えない。さらに、133Xeがガスであるので、取扱が容易であり、イオン注入器によるイオン注入では、32Pよりも133Xeのほうがイオン化効率が高く効率的にイオン注入ができる。
【0012】
イオン注入器によるイオン注入について
図1および図2に示されるように、ステンレス、タンタルまたは合金等からなる円筒状のステント2の表面に均一にイオン注入するためには、イオン注入器8内に均一照射部10を設置して真空中でイオン注入を行う。このとき、イオンビーム径はステントに対して小さいので、ステント全面に均一に照射できるように、回転および上下動等の機能を持った回転台3を備えた均一照射部を用いる必要がある。
【0013】
原子炉とイオン注入器の接続について
133Xeは核分裂生成物であるため、原子炉の燃料体で235Uの中性子照射による核分裂により絶え間なく生成されてる。この燃料体からイオン注入器のイオン源9まで配管することにより、燃料体で生成された133Xeガスは配管を通ってイオン注入器のイオン源まで移送できる。この133Xeをイオン注入器で連続的にステントにイオン注入することにより、放射性ステントの大量生産が可能となる。
【0014】
即ち、原子炉4内で、その燃料棒5の235Uに中性子が当たると、235Uが核分裂して133Xeガスが発生する。この発生133Xeガスは配管6を介してXe精製装置7に導入され、そこで精製された133Xeガスが配管6を介してイオン注入器8内に設けられたイオン源9に供給される。このイオン源に供給された133Xeガスはイオン化されてイオンビームとされる。このイオンビームは、イオン注入器内に設けられた照射部10に導入され、照射部の上下動可能な回転台3の上に配置されたステントに向けて照射される。この回転台は、その軸を中心に回転すると同時に上下動も可能であるので、その上に立てられて配置されたステントはイオンビームが均一に照射される。その結果、ステント表面には133Xeが均一に注入される。
【0015】
以下に本発明の具体的な実施例を示す。
【0016】
【実施例】
133Xeガス40MBqを真空ラインにより3.8リットル試料ボンベに移送した。質量分離における質量の指標として約3cm3129Xe濃縮同位体も同じボンベに充填した。このボンべをイオン注入器のNielsen型イオン源に接続し、40keVまたは60keVでステンレス製の複数のステント(長さ14mm×外径1.4mm)に133Xeをイオン注入した。このとき、各ステント表面に均一に照射するために、イオン注入器内に上下駆動式回転照射装置(図1)を設置してイオン注入を行った。軌道が固定した133Xeイオンビーム1に対して、回転台3は上下動及び回転をするので、133Xeイオンビーム1は回転台3に立てられた8本のステンレス製ステント2の表面に均一に当たる。
【0017】
上記製造方法で作製した放射性ステントをGe半導体検出器によって133Xe注入ステントの放射能を測定した結果を表1に示す。この表から、β線源である133Xeのイオン注入により、最大98kBqの放射能を有するステントが作成されている。
【0018】
【表1】
Figure 0003781331
【0019】
また、上記の製造方法で作製した放射性ステントを家兎の腹部大動脈に4週間留置したところ、血管平滑筋の増殖を抑制することが確認された。
【0020】
133Xe放射性ステントの大量生産を可能とする原子炉とイオン注入器との接続についての概略を図2に示した。133Xeは原子炉4内にある燃料棒5から配管6により131Iなどを除去するキセノン精製装置7を通ってイオン注入器8のイオン源9に移送され、イオン化及び加速されて、イオン注入器のステント照射部10に設置した均一照射装置に立てたステントにイオン注入される。
【0021】
【発明の効果】
本発明によって製造された133Xe放射性ステントにより、家兎の腹部大動脈の血管平滑筋増殖の抑制が確認された。したがって、この133Xe放射性ステントを動脈硬化を伴った患者に用いた場合も血管平滑筋の増殖は抑制され、再狭窄を予防することができる。また、原子炉とイオン注入器を接続し、均一照射装置を用いることにより、均一でしかも大量に放射性ステントを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】上下駆動式の回転照射装置の照射部分を示す図である。
【図2】原子炉とイオン注入器との接続を示した図である。
【符号の説明】
1…Xe−133イオンビーム
2…ステント
3…回転台
4…原子炉
5…燃料棒
6…原子炉とイオン注入器との配管
7…キセノン精製装置
8…イオン注入器
9…イオン注入器のイオン源
10…イオン注入器のステント照射部

Claims (1)

  1. 原子炉内で燃料棒235Uに中性子が当たる際に235Uが核分裂して発生する133Xeガスを配管を介して原子炉外に設けられたXe精製装置に導入し、そこで精製された133Xeガスを133Xeイオン注入器に設けられた133Xeイオン源に供給し、イオン源に供給された133Xeガスをイオン化して133Xeイオンビームを形成し、このイオンビームをイオン照射部に導入し、イオン照射部に設けられた上下動可能な回転台に配置された複数のステントに133Xeイオンビームを照射することにより、各ステント表面に133Xeを均一に注入することからなる、血管再狭窄予防用キセノンー133の製造方法。
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