JP3776839B2 - 金属粒子担持複合酸化物焼結構造体およびその製造方法 - Google Patents

金属粒子担持複合酸化物焼結構造体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、金属粒子が担持された複合酸化物焼結体あるいはその多孔体のような複合酸化物焼結構造体およびその製造方法に関するもので、例えば、ガス改質、ガス合成、燃料電池用電極など触媒/触媒担体としての用途や、磁気機能性材料などとして有用な金属粒子担持複合酸化物焼結構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、環境汚染を引き起こす可能性の少ない燃料電池発電装置に関心が高まってきている。すなわち、燃料電池は、水素と酸素との電気化学的な反応を利用して発電を行うものであり、高いエネルギー変換効率を有し、騒音も小さく、排出されるものも水と少ない量の二酸化炭素であることから、環境に優しい発電システムとしても注目を集めている。この燃料となる水素は、炭化水素ガスと水蒸気ガスもしくは炭酸ガスから触媒上で反応させて取り出す、いわゆる‘改質’により生成することができる。この‘改質’を行うのが改質器で、主に活性物質としてのNiやCo等の触媒微粒子を担体であるアルミナ、マグネシア、シリカ等の酸化物セラミックス上に担持させた材料を用いる。これら触媒/担持体系には、できるだけ低い温度での活性度、長時間の安定性、高熱伝導等のさまざまな特性が要求されている。そして、この触媒粒子の合成は、一般には、担体となるセラミックス上に後処理によって触媒前駆体をコーティングし、還元法により微細な触媒粒子を析出させる方法により行われる。しかしながらこの方法では、触媒金属粒子の粒径は細かくすることができても、分散状態や触媒の組成を制御するのが困難であった。また、触媒と担体界面での接合強度が弱く、密着性に乏しいため、長時間の使用により触媒が脱落するという問題点があった。
【0003】
そこで、このような問題点を解決する手段として、金属触媒粒子を基材である担体から析出により作製する方法が開発されている(特開2001−278656号参照)。この方法は、難還元性の酸化物粒子と易還元性の酸化物粒子を反応・焼結させ酸化物複合固溶体を作製し、その後に還元性雰囲気下で還元することにより酸化物複合体内部から金属粒子を析出させようとするものである。この方法によれば、基材である担体と密着性が良く、かつ凝集が少なく分散性に優れた触媒金属粒子を合成できることになる。しかしながら、還元を進めると金属粒子の析出が顕著になり、特に金属酸化物同士の界面における金属粒子は、金属酸化物粒子表面における金属粒子よりも平均粒径がおよそ1.2〜3倍程度大きくなる。これは、粒子表面よりも粒界において金属成分の供給量が多くなることによるものである。したがって、強度の弱い基体ではこの現象により成形体が崩壊する恐れが生じる。
【0004】
また、このような金属粒子担持複合酸化物は、多孔体の形で用いるのがよい。多孔体化することによって表面積が大きくなり、高密度に金属粒子に被覆されたバルク体を作製可能になる。これによってシステムのコンパクト化、性能の向上が期待される。しかしその場合、気孔は開気孔で、圧損を小さく反応面積を大きくするために気孔間の壁の厚さは適度に薄く作ることが必要となるため、焼結性の低い材料では、焼結性はより深刻な問題となる。そこで、還元して生成させる触媒の効果を低下させずに複合酸化物の焼結性を向上させ、材料を強化することが望まれていた。
【0005】
一方、ガス改質やガス合成においてバルク状の多孔体を用いる場合、機械的特性のみならず、ガスとの接触面積の大きさ、圧損の低さなどが要求される。成形、焼結時に緻密化しない条件で作製したり、熱分解する物質を導入して焼成中に焼失除去したり、あるいは薬品に可溶な物質を予め入れておいて後に溶出除去したりと、さまざまな多孔質バルク体の製造法があるが、いずれも圧損が十分に低い多孔体を作製するには不適当であった。
【0006】
また、セラミックスフォーム材のような構造では、高い気孔率と大きな気孔サイズから圧損の十分に低いものが得られるが、強度の点においては十分とは言えない。さらに、ハニカム構造体は気孔が配向しているため圧損の面では十分に低いが、その幾何面積の大きさの割りには触媒の反応面積は小さく、触媒としての効率が低いという問題があった。さらに、このハニカム構造体には、配向気孔のサイズ、壁面の厚さもそれぞれ数100μm、約50μmが限度であり、十分とは言えなかった。
【0007】
一方、流体圧損が低く、高い比表面積を有する多孔質体を製造する方法として、多孔質体原料スラリーの一方向凍結乾燥により配向した開気孔を有する多孔質体を作製する方法が知られている(特許第3124274号参照)。この方法は、セラミックス粉末を溶媒に分散させたスラリーを用い、一方向凍結と真空凍結乾燥によって溶媒が昇華した痕(気孔)を形成し、得られた多孔質成形体を焼結することによって一方向に配向した気孔を含むセラミックス多孔体を得ようとするものである。しかしながら、この方法によって得られた多孔質体は、前述のように優れた流体流通特性を有しているものの、触媒を担持した場合、長時間もしくは過酷な条件下の使用において触媒が脱離するという問題を解決するものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の上記問題点を鑑みてなされたものであり、難還元性酸化物と易還元性酸化物の焼結性を良くして、従来、金属粒子の還元時および多孔質化したときに問題視されていた強度面での改善を図る。また、圧損が低く、かつ触媒性能に優れた金属粒子担持複合酸化物焼結構造体を提供しようとするものである。
【0011】
の本発明は、難還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に難還元性金属酸化物となる化合物と、易還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に易還元性金属酸化物となる化合物と、これらに対して0.1〜15重量%の酸化物系焼結助剤を含有する原料を、液相で反応・固溶させて複合酸化物焼結体を作製する工程と、
前記複合酸化物焼結体を還元性雰囲気下で還元処理して、前記易還元性金属酸化物の還元生成物である金属粒子を前記焼結体表面に析出させる工程を少なくとも有することを特徴とする金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の製造方法である。
【0012】
の本発明は、難還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に難還元性金属酸化物となる化合物と、易還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に易還元性金属酸化物となる化合物と、これらに対して0.1〜15重量%の酸化物系焼結助剤を含有する原料粉末を用いてスラリーを作製する工程と、
前記スラリーを一方向から冷却し、前記スラリーを凍結する工程と、
前記スラリーの凍結物を真空凍結乾燥処理して成形体を作製する工程と、
前記成形体を焼成して液相で複合酸化物焼成体を作製する工程と、
前記複合酸化物焼成体を、還元性雰囲気下で還元処理して、前記易還元性金属酸化物の還元生成物である金属粒子を前記焼成体表面に析出させる工程を少なくとも有することを特徴とする金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の製造方法である。
前記第1及び第2の本発明において、前記酸化物系焼結助剤が、Li、B、Ba、Ca、Si、Mn、Ti、Ga、P、Al、Nb、Laから選ばれた元素の酸化物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記第1及び第2の本発明において、前記金属粒子担持複合酸化物は、希土類元素の酸化物を、前記金属粒子担持複合酸化物に対して0.1〜15重量%の割合で、さらに含有していることが触媒活性を向上させる上で好ましい。この希土類元素としては、ランタンもしくはセリウムが特に好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属粒子担持複合酸化物の実施の形態について説明する。
本発明は、難還元性金属酸化物と易還元性金属酸化物との固溶による複合酸化物を合成する上で、合成温度以下で液相を生成する酸化物系助剤を添加することにより、焼結を促進し緻密質な複合酸化物焼結体を作製しようとするものである。
【0014】
本発明における易還元性酸化物とは、室温〜1500℃の水素雰囲気下、プラズマ条件下、あるいはカーボン源が存在する不活性ガス還元性雰囲気下などで、金属へ還元され得る金属酸化物をいう。本発明において、易還元性酸化物の好ましい例としては、Cu、Co、Fe、Ni、Zn、Sn、Cd、Pd、Hg、Agなどの酸化物が挙げられる。これらのうち、ガス改質やガス合成等のための触媒として用いるのにより好ましい材料は、触媒効率の点でNiO、CoO、Fe酸化物であり、更に好ましくはNiOである。また、これらを2種以上併用することもできる。
【0015】
また、本発明における難還元性の酸化物とは、室温〜1500℃の水素などの還元性雰囲気下で、金属へ還元されない酸化物をいう。本発明において、難還元性酸化物の好ましい例としては、Al、Mg、Si、Zr、Ti、Hf、Ce等の酸化物があり、これらを2種以上併用することもできる。これらのうち、安定な固溶体を形成するという点でMgO、ZrO、CeOがより好ましく、さらに好ましくはMgOである。
【0016】
本発明における複合酸化物は、上記難還元性酸化物と上記易還元性酸化物との固溶体であり、NiO−MgO系、CoO−MgO系、FeO−MgO系などの全率固溶体であっても良く、あるいはZrO−NiO系や複合酸化物の固溶体であっても良く、特に限定されない。
【0017】
本発明に用いる金属酸化物粒子の粒径は、目的とする機能に応じて適宜決定する事ができ、特に限定されるものではないが、燃料電池用の改質に用いる場合には概ね50nm〜1μmの範囲が望ましい。
【0018】
上記難還元性酸化物と上記易還元性酸化物と焼結を促進するための酸化物系焼結助剤としては、好ましくは1500℃以下で液相を形成する酸化物で、Li、B、Ba、Ca、Si、Mn、Ti、Ga、P、Al、Nb、Laから選ばれた元素の酸化物のうち、少なくとも1種から構成されるものである。これらの酸化物は還元性雰囲気下において還元されないものであることが好ましい。また、還元後の金属粒子析出後に触媒作用を低下させるものであってはならない。これらの点から、最も好ましい酸化物系焼結助剤は、CaO−Ga系やB系である。
【0019】
この酸化物系焼結助剤による液相形成は、前記焼結助剤である酸化物同士の間に液相を形成する場合もあれば、前記酸化物と母材を構成する難還元性酸化物あるいは易還元性酸化物間に液相を形成する場合もあり、いずれであっても良い。この酸化物焼結助剤の焼結体への添加率は、好ましくは0.1〜15重量%である。添加率が15%を超えると高温での機械的特性の低下が顕著になり好ましくない。一方、添加率が0.1%を下回ると、焼結助剤添加の効果が発揮されず好ましくない。この添加率のより好ましい範囲は、1〜10重量%である。これら液相を形成する酸化物系焼結助剤は、酸化物の形態で原料に添加することもできるし、水酸化物、炭酸化物等の形で焼結体原料に添加し焼結時にこれらの熱分解により酸化物を形成するようなものであっても良い。
【0020】
難還元性の酸化物と易還元性酸化物、それと前記酸化物を添加し焼結して得られる焼結体は、液相が固溶粒子間の結合を強めるため、強固な骨格を形成する。
【0021】
また、例えば触媒金属粒子がNiの場合、ある種の酸化物の添加はNi触媒の活性を向上させるということが知られている。この種の酸化物には、希土類酸化物、特にLa、CeOなどがある。これら酸化物を前記焼結体中に0.1〜30重量%添加することによって、本発明の金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の触媒活性を改善することも可能である。この触媒活性を向上させる酸化物の添加量が30重量%を超えると複合酸化物の強度を著しく低下させるため適当ではない。一方、0.1%を下回ると、この酸化物添加の効果が発揮されない。より好ましい添加量は、1〜10重量%である。
【0022】
このように作製された複合酸化物を、水素などの還元性雰囲気において還元すると、粒子表面に微細で均一に分散した金属粒子を析出し、金属粒子担持複合酸化物を作製することができる。この構造体において、金属粒子は触媒であり、また複合酸化物はその担体となり、金属粒子は内部より析出したものであるため基体との密着性が高く、金属粒子析出過程で担体が破壊することは無い。
【0023】
本発明の金属粒子担持複合酸化物焼結構造体を、触媒等として用いる場合には、この金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の周囲を被処理流体が透過し、相互に接触させて用いることになる。この場合、この金属粒子担持複合酸化物焼結構造体と被処理流体との接触面積を大きくすることが処理効率を向上させる上で好ましく、そのためには、金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の表面積を増加させる必要がある。その手段としては、金属粒子担持複合酸化物焼結構造体に一方向に延在する単数もしくは複数の貫通孔を形成する方法や、この多金属粒子担持複合酸化物焼結構造体を開気孔を有する孔質体として成形する方法がある。
【0024】
一般的に言えば、多孔質体は、孔を有していない緻密体と比較して機械的強度を大きくすることは困難であるが、上述の方法にて作製される金属粒子担持複合酸化物は、多孔体を構成しても骨格部の焼結が進んでいるために壊れにくいという利点がある。開気孔の形成には、一方向配向型、3次元網目構造型とがあるが、いずれも気孔率が高く圧損が小さいことが好ましい。
【0025】
本発明による金属粒子担持複合酸化物焼結構造体は、一方向に配向する貫通気孔を有する多孔体であることが好ましい。この多孔体は、以下の方法によって作られる。すなわち、前述の難還元性酸化物と易還元性酸化物、および酸化物系焼結助剤としての前記酸化物を溶媒中に分散させ、スラリーを作製する。このスラリーを、例えば熱伝導性容器に注入し、一方向から凍結させ、凍結した溶媒とセラミックス混合粒子の分相した柱状組織を形成する。得られた凍結体を真空凍結乾燥することによって溶媒部を昇華除去し、一方向に気孔の配向した多孔質成形体を得る。この成形体を加熱により反応・固溶させ、さらには前記酸化物系焼結助剤にて緻密化を進め、一方向に配向した気孔を含む複合酸化物焼結体を得る。また、予め所定の組成で反応・固溶させた焼結体を粉砕して原料粉末とし、これをスラリー化して前記凍結乾燥による手法を適用して多孔体を作製しても構わない。このようにして得られた焼結体を水素などの還元性雰囲気にて還元処理することにより金属粒子を析出させ、配向気孔を有する金属粒子担持複合酸化物多孔体を得る。この多孔体は、気孔の配向方向に低い圧損を有し、かつ気孔内壁面に触媒となる金属粒子が均一に担持された構造となる。
【0026】
以下に、本発明の金属粒子担持複合酸化物の製造方法について具体的に説明する。
本発明の製造方法に関する第1の形態は、(1)原料粉末の調整工程、(2)固溶、焼成工程、(3)還元処理工程により金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の製造を行うものである。
【0027】
第1の製造方法
(1)原料粉末の調整工程
難還元性酸化物粉末と易還元性酸化物粉末、さらに焼結助剤あるいは触媒活性剤となる酸化物粉末、もしくは、これらの酸化物に代えて加熱することによって熱分解し酸化物を生成する炭酸化物、水酸化物等の化合物の粉末を均一に混合し、原料粉末を作製する。これらの混合は、乾式でも湿式によるものでも差し支えなく、ボールミル等の周知の混合手段を用いて行うことができる。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、難還元性酸化物と易還元性酸化物の粉末混合比をモル比で難還元性酸化物を50mol%以上にする。これにより、水素還元により析出する金属量を適量に抑えられ、金属粒子同士の合体や粒成長を抑止できる。粉末混合後、乾燥、通篩し、原料粉末を得る。
【0029】
(2)固溶・焼成工程
本発明においては、前記工程で得られた原料粉末を、所定温度に加熱し固溶反応を行わせる。加熱温度等の条件については原料粉末や目的とする性質に応じて適宜決定する。一般には、PVA(ポリビニルアルコール)等のバインダーを加えて成形した原料粉末成形体を、加熱して脱脂した後、1000℃以上の高温で加熱し焼結させることが好ましい。この際、成形体に一方向に延在する貫通孔を機械的に形成すると、成形体の比表面積を増加させ担持する金属粒子の体積当たりの密度を増加させることができると共に、流体流通圧損の少ない成形体を実現することができる。
【0030】
(3)還元処理工程
本発明の製造方法においては、前記工程で作製された固溶焼結体を水素ガス等の雰囲気下で還元処理を行うことにより、金属粒子を複合酸化物表面および粒界界面に析出させる。例えば、NiO−MgOの場合にあっては、固溶体の一部である易還元性であるNi粒子が還元され、複合酸化物表面に析出する。このNi粒子は分散性が良く、かつ基材である複合酸化物内から析出により生成しているため基材との密着性が良い。本発明による還元処理は、焼結体を水素ガスを導入した炉内に入れて加熱して行う。還元性雰囲気は、例えば、カーボン源が存在する不活性ガス雰囲気下においても作られ、特に限定されるものではない。還元処理の温度は、用いる材料により適宜選択をする。例えば、NiO−MgO系の場合、500〜1000℃とするのが好ましい。還元温度が高すぎると金属粒子の成長が必要以上に進行して凝集や粒界部での破壊を引き起こしたり、触媒性能を低下するため好ましくない。また、温度が低すぎると熱処理に時間がかかり過ぎるため、工業的に好ましくない。
【0031】
さらに、還元処理の時間は、低温焼成においては、より長時間の加熱が必要であり、高温加熱においては、比較的短時間の加熱で充分焼成することができ、任意に制御することができるが、一般的には、10分から30分間の範囲で行うことができる。
このように、上記第1の製造方法の(1)〜(3)の工程により、簡単な工程で、容易に金属粒子担持複合酸化物焼結構造体を得ることができる。
【0032】
第2の製造方法
本発明による製造方法の第2の形態は、(a)原料粉末の調整工程、(b)スラリー作製工程、(c)一方向凍結および凍結乾燥工程、(d)固溶、焼成工程、(e)還元処理工程により金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の製造を行うものである。図1に、本実施の形態の製造工程を示す。
【0033】
(a)原料粉末の調整工程
原料粉末の調整は、前述の第1の製造方法の工程と同様に行うことができる。また、予め、この原料粉末を焼結して所望の固溶体を作製しておき、これを粉砕して原料粉末としても良い。
【0034】
(b)スラリー作製工程
本実施の形態の製造方法においては、前記工程で作製した原料粉末を水またはアルコールなどの溶媒中で混合し、粉末を均一に分散させたスラリーを作製する。この場合、原料粉末の粒径が、微細であると、溶媒への原料粉末の分散が困難になり、均一なスラリーの形成が困難になる。一方、原料粉末の粒径が粗大であると、溶媒に分散した原料粉末が分離沈降しやすく、安定なスラリーを得ることができない。従って、最適な平均粒径範囲は、0.1〜1μmである。この原料粉末の混合は、ボールミルなど公知の混合機により行う。この場合、溶媒に対する粉末の量は体積分率で10〜50vol%が好ましい。スラリー濃度が50体積%を越えると粘度が上がり、スラリー化しなくなる。一方、スラリー濃度が10%より低いと、成形体の密度が低くなりすぎるため、機械的強度が低下して、後の工程の乾燥処理で保形性のよい成形体が得られなくなる。スラリー濃度は、好ましくは15〜30体積%程度とするのがよい。
【0035】
(c)一方向凍結および凍結乾燥工程
本実施の形態の製造方法においては、前記工程で作製されたスラリーを一方向から冷却し、凍結させる。この凍結させる方法としては、例えば、スラリーを、底部が熱伝導性の良い金属材料、側面部を樹脂系材料で構成した特殊容器に入れ、底部のみを冷媒に浸漬して上方への凍結を進めることによって、スラリーを一方向からのみ冷却し凍結させることができる。この場合に、容器の上下方向につけられた温度勾配にしたがって結晶成長した柱状組織の凍結体を得ることができる。この場合の冷却速度は、おもに溶媒の種類やスラリー量、および温度勾配等によって相違する。この一方向への凍結の手法は一例であって、本発明においては、他の手法を採用することに何らの制約があるわけではない。また、この凍結工程において、冷媒としては、冷凍機で温度を制御したアルコールやドライアイスを投入したアルコール液などを用いることができる。このように一方向に凍結を進め、溶媒の結晶が一方向に配向した凍結体では、溶媒とセラミックス粒子が相分離し、互いに柱状の組織を形成する。そこで、前記凍結体を真空凍結乾燥機にて凍結乾燥を行うと、この過程で、溶媒は昇華により気化し、柱状の昇華痕が気孔となって形成された多孔質成形体を得ることができる。この方法により作製される配向型貫通気孔のサイズは5〜50μm程度である。このより具体的な方法については、特許第3124274号に詳細に記載されており、本発明においても採用することができる。
【0036】
(d)固溶・焼成工程
本実施の形態の製造方法においては、前記工程で得られた多孔質成形体を容器から取り出して炉に入れ、所定温度に加熱し固溶反応を行わせる。加熱温度等の条件については前述の第1実施の形態の製造方法の(b)工程に準じて行うことができる。この結果、一方向に気孔の配向した複合酸化物多孔体が得られる。この方法により作製される多孔体の気孔は全て開気孔である。
【0037】
(e)還元処理工程
本実施の形態の製造方法においては、前記工程で得られた複合酸化物多孔体を還元処理して酸化物多孔体表面に金属粒子を析出させる。詳細は、前述の第1の製造方法における(C)工程と同じである。
このように、上記第2の製造方法の(a)〜(e)の工程により、緻密な一方向配向気孔を有する金属粒子担持複合酸化物からなる多孔体である焼結構造体を得ることができる。
【0038】
【実施例】
本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3
平均粒径1μmのNiO粉末と、平均粒径0.5μmのMgO粉末とを、モル比で1:2となるように秤量し、これにB粉末を全粉末量に対して0.5重量%、2重量%、および10重量%になるように加えて、乳鉢にて粉砕・混合した。得られた混合粉末を篩いに通して原料粉末とした。原料粉末をφ6mmの円柱状に成形し熱収縮挙動を測定した。昇温速度は5℃/minとした。1200℃、1300℃でのそれぞれの熱収縮率を算出した。
また、Bを0.5、2、10重量%含む混合粉末を金型プレスにて980.7MPa(1ton/cm)の圧力で成形し、成形体を得た。この成形体を大気炉に投入して、1300℃で5時間焼結した。この焼結体より3mm×4mm×40mmの試料を切り出しスパン30mmの3点曲げ試験による曲げ強度を測定した。
さらに、Bを2重量%含む焼結体を水素炉に入れ、純度99.9%のガスを毎分1リットル流しながら毎分20℃の速度で900℃まで昇温し、10分間還元を行った。その後、炉冷して、本発明の金属粒子担持複合酸化物を得た。
【0039】
実施例4〜6
焼結助剤として、Bの代わりに、B−Laを使用したこと以外は、実施例1とほぼ同様にして、金属粒子担持複合酸化物焼結体を作製した。BとLaの混合比はモル比で3:1とした。
【0040】
実施例7〜9
焼結助剤として、Bの代わりに、SiO−LiCOを使用したこと以外は、実施例1とほぼ同様にして、金属粒子担持複合酸化物焼結体を作製した。LiCOは熱分析の結果、500℃前後で熱分解し、Li酸化物となった。SiOとLiCOとの混合比はLiO換算でSiO:LiOが重量比80%:20%となるようにした。
【0041】
実施例10〜12
焼結助剤として、Bの代わりに、CaCO−Gaを使用したこと以外は、実施例1とほぼ同様にして、金属粒子担持複合酸化物焼結体を作製した。CaCOは熱分析の結果、約800℃付近で熱分解し、Ca酸化物となった。CaCOとGaの混合比はCaO換算でCaO:Gaの重量比が90%:10%となるようにした。
【0042】
実施例13
実施例1に示した材料に、さらにLaを2重量%添加したこと以外はほぼ同様にして、金属酸化物担持複合酸化物焼結体を作製した。
【0043】
比較例1
NiO粉末とMgO粉末のみから成る混合粉末を作製し、実施例1と同様にプレス成形して熱収縮挙動を測定した。また、室温での3点曲げ試験による曲げ強度を測定した。また、実施例1と同じ条件にて水素還元し、Ni金属を表面に析出させた金属粒子担持複合酸化物を得た。
【0044】
いずれの試料も比較例1に比べ、緻密化が促進されている。例えば、実施例1では、助剤として添加したBはMgOとともに1150℃付近にて液相を生成する。強度も何も添加の無い比較例に比べ向上した。特に実施例11では飛躍的な強度の向上が見られた。CaO−Ga系では若干量のCaOはMgO中に固溶し、それを超えた分が粒界に液相を形成し、焼結性を向上させたものと考えられる。いずれの場合も添加量の増加とともに強度の低下がみられ、添加量が15重量%を越えると強度が大きく低下した。また、いずれの試料も還元処理後にNi粒子を析出しており、そのサイズは数10nm程度であった。比較例1において還元温度を高くした場合に界面での破壊が観察されたが、実施例の複合酸化物に関しては特に目立った割れは認められなかった。
さらに、実施例13では、Laを添加することにより比較例に比べて、よりメタンの改質効率を高めることができることがわかった。また、改質時にカーボンが粒子表面に析出するコーキング現象も比較例に比べ、抑えられる効果があることがわかった。
【0045】
実施例10
次に、実施例1に示した組成で、モル比1:2のNiO−MgOに焼結助剤としてのBを2重量%添加した混合粉末を水を溶媒としてボールミルにより作製した。粉末と溶媒に対する混合比を体積比で20%とした。分散性を良くするため、ポリカルボン酸アンモニウム塩を分散剤として少量添加した。この混合粉末からなるスラリーを−50℃で0.5時間かけて、一方向に凍結し、凍結体を真空凍結乾燥して溶媒を昇華させた。得られた成形体を大気中、1300℃で5時間焼結を行った。焼結後、実施例1に示したのと同じ条件にて還元処理を行い、Ni粒子を表面に析出させた。
【0046】
作製された複合酸化物は気孔率65%で、一方向に配向する気孔を含む多孔体であった。水銀圧入法による細孔分布測定の結果、配向する気孔サイズはおよそ20μmであることがわかった。このサイズは、おもに凍結するときの温度に依存し、温度が低ければ低いほど気孔サイズが小さく、組織が微細であった。気孔間の壁の厚さも気孔サイズとほぼ同等であったが、特に破壊は観察されなかった。配向方向の圧力損失は10m/minの透過速度に対して1kPaを下回る値を示し、同等の気孔率、気孔径を有する一般的なセラミックス多孔体に比べ十分小さい値を示した。一方、NiO−MgOのみで、凍結乾燥法により作製した多孔体は強度の維持が難しく、少しの力で容易に壊れてしまった。これは、気孔率が高くなるほど顕著であった。
【0047】
【表1】
Figure 0003776839
【0048】
前記表1に見られるように、焼結助剤を用いて、液相焼結を行う本発明の方法によれば、焼結体の3点曲げ強度が71.3MPa以上であり、焼結助剤を用いない固相焼結を行った比較例1と比べると、強度が0.8MPa向上していた。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、焼結助剤となる酸化物を添加して難還元性酸化物と易還元性酸化物とを焼結すれば、容易に焼結性が向上し、複合酸化物における粒子界面の強化が図られる。また、これを還元してなる金属粒子担持複合酸化物の触媒特性には何ら影響を与えることがない。さらに、焼結性が良くなるため、多孔体化して用いることも可能になる。特に、原料粉末のスラリーから一方向凍結および真空凍結乾燥を用いて作製した複合酸化物は配向気孔を有し圧損が低く、これを還元して成る金属担持複合酸化物多孔体は、触媒活性の面でも有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第2の実施の形態である製造方法の工程図

Claims (3)

  1. 難還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に難還元性金属酸化物となる化合物と、易還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に易還元性金属酸化物となる化合物と、これらに対して0.1〜15重量%の酸化物系焼結助剤を含有する原料を、液相で反応・固溶させて複合酸化物焼結体を作製する工程と、
    前記複合酸化物焼結体を還元性雰囲気下で還元処理して、前記易還元性金属酸化物の還元生成物である金属粒子を前記焼結体表面に析出させる工程を少なくとも有することを特徴とする金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の製造方法。
  2. 難還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に難還元性金属酸化物となる化合物と、易還元性金属酸化物もしくは加熱により容易に易還元性金属酸化物となる化合物と、これらに対して0.1〜15重量%の酸化物系焼結助剤を含有する原料粉末を用いてスラリーを作製する工程と、
    前記スラリーを一方向から冷却し、前記スラリーを凍結する工程と、
    前記スラリーの凍結物を真空凍結乾燥処理して成形体を作製する工程と、
    前記成形体を焼成して液相で複合酸化物焼成体を作製する工程と、
    前記複合酸化物焼成体を、還元性雰囲気下で還元処理して、前記易還元性金属酸化物の還元生成物である金属粒子を前記焼成体表面に析出させる工程を少なくとも有することを特徴とする金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の製造方法。
  3. 前記酸化物系焼結助剤が、Li、B、Ba、Ca、Si、Mn、Ti、Ga、P、Al、Nb、Laから選ばれた元素の酸化物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属粒子担持複合酸化物焼結構造体の製造方法。
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