JP3773478B2 - 樟脳油組成物とそれを使用した有害生物忌避剤、艶出し剤、蝋燭及び樟脳油由来の刺激臭を改善する方法 - Google Patents

樟脳油組成物とそれを使用した有害生物忌避剤、艶出し剤、蝋燭及び樟脳油由来の刺激臭を改善する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樟脳油組成物とそれを使用した有害生物忌避剤、艶出し剤、蝋燭及び樟脳油由来の刺激臭を改善する方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、樟脳油由来の刺激臭を改善させることができ、しかも樟脳油が有する忌避効果は損なわれない新規な樟脳油組成物及び樟脳油由来の刺激臭を改善する方法に関する。
また、樟脳油組成物を有効成分とし、床下噴霧時の作業性や保管時の取り扱い性等を向上させた有害生物忌避剤に関する。
更に、化学物質由来のものと相違して、健康や環境に悪影響を及ぼすことなく、有害生物に対して高い忌避効果を得ることができる有害生物忌避剤に関する。
【0003】
また更に、樟脳油由来の刺激臭を改善できるばかりか、床・柱材・家具等の木質材用の艶出し剤や自動車の塗膜用の艶出し剤として、あるいはアロマテラピー(芳香療法)の効果を有する蝋燭の材料等としても使用することができる樟脳油組成物とそれを使用した有害生物忌避剤、艶出し剤、蝋燭に関する。
【0004】
【従来技術】
従来より、例えばシロアリによる木造建築物の被害を防ぐため、クロルデンやディルドリン等の有機塩素系殺虫剤や、クロルピリホスやフェニトロチオン等の有機リン系殺虫剤等の有害生物忌避剤が用いられてきた。
【0005】
しかしながら、有機塩素系殺虫剤は毒性、残留毒性、環境汚染等の問題があり、その使用が禁止されている。また、有機リン系殺虫剤のクロルピリホスについても、「シックハウス症候群」の対策等を盛り込んだ建築基準法改正法(2002年7月5日の衆議院本会議で可決)により、今後その使用が禁止される。このように、化学物質由来の殺虫剤は、健康障害や環境を汚染する可能性が高く、その使用は禁止あるいは漸次規制されつつある。
【0006】
このような事情から、健康や環境への悪影響が少ない天然素材由来の新規な有害生物忌避剤(本明細書では単に「忌避剤」という場合がある)の開発が望まれている。天然素材由来のものとしては、樹木のヒバから抽出したヒバ油や、木材を乾留して得られる木酢液等が挙げられる(非特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】
“シロアリ退治 環境に配慮「低毒性」選ばれる傾向”、[online] 、毎日新聞「生活 いきいき 家庭」面2000年9月18日掲載後更新、毎日新聞、[平成14年10月3日検索]、インターネット<URL:http://www.maiko.co.jp/senior/kurashi/data/0028.html>
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ヒバ油や木酢液等を用いたものは低毒性で安全性の高いものであるが、化学物質由来のものと比べ、有害生物に対する忌避効果は十分とは言えなかった。
【0009】
そこで本発明者は、有害生物に対して優れた忌避効果を有する天然素材由来の物質はないかと考え、検討を行った。その結果、防虫効果を有することで従来より知られている樟脳油(Camphor oil)に着目した。樟脳油は、クスノキを水蒸気蒸留した際にショウノウとともに留出する精油で、ショウノウの微粒が多量に浮遊しているため、これを分別すれば黄褐色の液体として得られる。
【0010】
しかしながら、本発明者は、シロアリやゴキブリ等の有害生物の忌避剤として樟脳油の適用検討を進める中で、以下のような新たな課題に直面した。
【0011】
即ち、樟脳油は高い忌避効果を備えているが、樟脳油特有の刺激性の強い芳香を有しているため、ヒバ油や木酢液と比べて、床下噴霧時の作業性や保管時の取り扱いなどに劣り、実用化が容易ではなかった。
具体的には、樟脳油を有害生物忌避剤として床下等に噴霧した場合、作業者は樟脳油特有の刺激臭を吸い込むことになり、長時間の作業は困難である。
また、樟脳油を噴霧した家屋の住人に対しても、樟脳油由来の不快な刺激臭を感じさせることになる。
更に、樟脳油組成物を保管する場合でも、臭いが外部に漏れないように厳重に管理する必要がある。
【0012】
そこで本発明者は鋭意研究を更に進めた結果、樟脳油を珪藻土またはパーライトで処理することによって、樟脳油特有の刺激臭を改善することができ、しかも樟脳油が有する忌避効果は損なわれない新規な樟脳油組成物の開発に成功した。
【0013】
また、樟脳油を蝋に混ぜることにより、上記したように樟脳油特有の刺激臭を改善できるばかりか、床・柱材・家具等の木質材用の艶出し剤または自動車の塗膜用の艶出し剤、あるいはアロマテラピー(芳香療法)の用途としても使用可能な蝋燭の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
(発明の目的)
そこで本発明の目的は、樟脳油由来の刺激臭を改善させることができ、しかも樟脳油が有する忌避効果は損なわれない新規な樟脳油組成物及び樟脳油由来の刺激臭を改善する方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、樟脳油組成物を有効成分とし、床下噴霧時の作業性や保管時の取り扱い性等を向上させた有害生物忌避剤を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、化学物質由来のものと相違して、健康や環境に悪影響を及ぼすことなく、有害生物に対して高い忌避効果を得ることができる有害生物忌避剤を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、樟脳油由来の刺激臭を改善して有害生物忌避剤として使用できるばかりか、床・柱材・家具等の木質材用の艶出し剤や自動車の塗膜用の艶出し剤として、あるいはアロマテラピー(芳香療法)の効果を有する蝋燭の材料等としても使用することができる樟脳油組成物とそれを使用した有害生物忌避剤、艶出し剤、蝋燭を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は樟脳油由来の刺激臭を改善した樟脳油組成物であって、樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去してなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明は樟脳油由来の刺激臭を改善した樟脳油組成物であって、樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた該珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去したものを蝋と混ぜてなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係る有害生物忌避剤は、上記樟脳油組成物を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係る艶出し剤は、上記樟脳油組成物を用い、有害生物忌避効果を備えていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係る蝋燭は、上記樟脳油組成物を用い、有害生物忌避効果を備えていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明は樟脳油由来の刺激臭を改善する方法であって、樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去することを特徴とするものである。
【0025】
本発明は樟脳油由来の刺激臭を改善する方法であって、樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去したものに蝋を混ぜることを特徴とするものである。
【0026】
忌避対象となる有害生物としては、例えばシロアリ、クロアリ、ゴキブリ、ナメクジ、ムカデ、ダニ、ノミ、蚊、ハエ、蜂、蛾、蛇、ネズミ等を挙げることができる。
【0027】
本発明で使用する樟脳油は、天然物あるいは合成物を問わない。ただし、樟脳の微粒が多く溶け込んだ天然物の方が有害生物に対する忌避効果が高く、また自然の木の香りがするため、より好ましい。
【0028】
本明細書にいう「珪藻土または/及びパーライト」には、珪藻土またはパーライトのいずれか一方を含む場合もあるし、あるいは珪藻土及びパーライトの両方(例えば混合して使用する等)を含む場合もある。
【0029】
樟脳油を珪藻土または/及びパーライト(以下、珪藻土等という場合がある)と接触させる方法としては、樟脳油に珪藻土等を混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた珪藻土等を濾過して除去する手順が挙げられる。このように、樟脳油を珪藻土等と接触させることにより、樟脳油由来の刺激臭を改善させることができ、しかも樟脳油が有する忌避効果は損なわれない新規な樟脳油組成物を得ることができる。これにより、有害生物忌避剤として使用した場合の床下噴霧時等の作業性や保管時の取り扱いが容易になる。
この珪藻土等による処理は、黄褐色の樟脳油が透明な薄黄色になるまで繰り返し行うことが望ましい。
冬場等、気温が低い場合はショウノウが結晶化して析出しやすいので、樟脳油を加熱しながら(例えば50〜60℃)、珪藻土等と接触させることが望ましい。
またパーライトに比べ、珪藻土の方が樟脳油由来の刺激臭を改善する効果や脱色させる効果や高いので、より好ましい。
【0030】
使用する珪藻土等の量は、樟脳油の性状や精製純度によっても異なるが、好ましくは樟脳油に対して3〜10重量%であり、更に好ましくは5〜8重量%である。3重量%未満では、樟脳油由来の刺激臭を十分に改善することが難しく、10重量%を越えると珪藻土等の効果があまり変わらず、使用量が多いと珪藻土等が無駄になるため好ましくない。
【0031】
得られた樟脳油組成物を有害生物忌避剤として用いれば、化学物質由来のものと相違して、健康や環境に悪影響を及ぼすことなく、有害生物に対して高い忌避効果を得ることができる。
得られた樟脳油組成物を有害生物忌避剤として木造建築物の床下等に噴霧する場合は、樟脳油を水で20倍〜30倍に希釈することが望ましい。例えば、シロアリが既に発生しその駆除として噴霧する場合は20倍程度の希釈で良く、発生する前の予防として噴霧する場合では30倍程度の希釈で足りる。
【0032】
樟脳油組成物を水で希釈した場合、棒材等を用いて良く撹拌すれば30分程度は樟脳油が水に均一に分散しており、油分と水は分離しない。よって、噴霧作業を30分以上行う場合は、油分と水とが分離する恐れもあるので、薬剤を適宜撹拌することが望ましい。また、噴霧作業を長時間行う場合は、薬剤を撹拌しながら噴霧作業が行える動力噴霧機等を使用することが望ましい。
【0033】
樟脳油を蝋と混ぜれば、蝋によって樟脳油の匂い成分が揮発しにくくなるため、樟脳油由来の刺激臭を改善することができる。しかも、上記したものと同様に、樟脳油が有する忌避効果は損なわれない。このことは、以下に述べる実施例と同様に、10名のパネラーによる匂いについての官能試験とボウフラ及びシロアリに対する殺虫効果試験を行い、確認している。
更に、珪藻土等と接触させた樟脳油を用いれば、刺激臭の改善効果は極めて高い。また、蝋と混ぜることにより、樟脳油に粘り気をもたせることができるので、有害生物忌避剤として木造建築物の床下の基礎部分等に厚く塗ることができる。これにより、忌避剤を床下に噴霧する場合と比べて、忌避効果を長期間持続させることが可能である。
【0034】
また、樟脳油を蝋と混ぜてなる樟脳油組成物を例えば柱材・床面・家具等の木質材の艶出し剤として用いれば、樟脳油の作用によって蝋が軟化して伸びが良くなるので、単に蝋だけを使用したものに比べて蝋引き時の作業性が極めて高い。更に、樟脳油の忌避効果により、柱材や床面に塗布した場合ではシロアリ等の予防効果が得られ、タンス等に塗布した場合では中に入れた服に虫が付きにくい。
【0035】
また更に、樟脳油を蝋と混ぜてなる樟脳油組成物を自動車の塗膜用の艶出し剤として用いれば、樟脳油の効果により付着した汚れも簡単に落とすことができる。この理由は定かではないが、樟脳油の油成分による効果であると思われる。
【0036】
また、樟脳油を蝋と混ぜてなる樟脳油組成物を蝋燭の材料等として使用すれば、火を灯すことによって樟脳油の忌避効果が部屋全体に拡がり、蚊取線香等を使用しなくても部屋の中に蚊が入りにくい。また、珪藻土等と接触させたものを用いれば、樟脳油由来の刺激臭が大幅に改善され、逆に木の香りをもたせることができるので、アロマテラピー(芳香療法)の用途としても使用できる。
【0037】
樟脳油を混ぜて使用する蝋は、天然物、合成物を問わない。
天然物としては、例えば、木蝋、密蝋、カルナバ蝋、キャンデリラ蝋、イボタ蝋、ミクロワックス、セラック蝋、米糖ワックス等を挙げることができるが、特にこれらに限定されない。
合成物としては、パラフィン(パラフィン蝋、石蝋とも称される)を挙げることができるが、特にこれに限定されない。
【0038】
クスノキから得られた天然の樟脳油を使用する場合は、蝋との混ざりやすさから、天然物から採取される蝋を使用することが好ましい。
特に木蝋を使用した場合では、空気に触れても固まりにくい、触っても手がかぶれにくい、香りが良い等の点で優れている。
樟脳油と蝋の配合割合は特に限定するものではなく、樟脳油の作用を高めたい場合はその配合割合を多くすれば良い。ただし、樟脳油と蝋を混ぜた全量に対して、蝋が10重量%未満になると樟脳油と蝋とが分離して均一に混合させることが困難となるため、好ましくない。
【0039】
例えば木造建築物の床下の基礎部分等に直接塗布して忌避効果を得る場合は、樟脳油と蝋を混ぜた全量に対して、蝋は30〜50重量%が好ましい。
木質材等の艶出し剤として使用する場合では、全量に対し、蝋は20〜40重量%が好ましい。
自動車の塗膜用保護剤として使用する場合では、全量に対し、蝋は10〜30重量%が好ましい。蝋の配合量を少な目にすることで、塗膜用保護剤ののびが良くなり、作業性は向上する。
蝋燭の形態とする場合では、全量に対し、蝋は50〜90重量%が好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]<樟脳油組成物>
容量25Lのポリ容器中に樟脳油20kg(容量約20L)を入れ、更に珪藻土1kgを加えた。撹拌羽根をシャフト先端に備えた撹拌機(商品名「立て型、スーパー撹拌機」、トヨキ工業株式会社製)を用い、ポリ容器中の樟脳油と珪藻土を約15分間撹拌した。これにより、樟脳油特有の刺激性の強い芳香と樟脳油に含まれるタール成分を珪藻土に吸着させた。
【0041】
撹拌後、静置して珪藻土を沈殿させた。次いで、フィルタープレスを用いて濾過し、珪藻土を取り除いた。この吸着処理により、最初に黄褐色を呈していた樟脳油はその色味が薄くなり、樟脳油に含まれる特有の刺激性の強い芳香は軽減されていた。
【0042】
更に、樟脳油が透明な薄黄色になるまで上記吸着処理を繰り返し、目的とする樟脳油組成物(収量 約19.5L)を得た。
【0043】
(匂い試験)
上記のようにして得られた樟脳油組成物(実施例1)について、匂いについての官能試験を10名のパネラーにより行った。比較例として、珪藻土で処理をしていない樟脳油(比較例1)、樟脳油を水で単に30倍に希釈したもの(比較例2)を用いた。
【0044】
【表1】
Figure 0003773478
【0045】
表1の結果から明らかなとおり、珪藻土で処理した樟脳油組成物(実施例1)では、樟脳油特有の刺激性の強い芳香が無くなっており、逆に木の香りがすることが分かる。得られた樟脳油組成物(実施例1)は、柑橘系の香りにも似た柔らかな木の香りがするものであった。これに対し、珪藻土で処理していないもの(比較例)では、水で30倍に希釈しても樟脳油特有の不快な芳香が残っていた。
【0046】
(ボウフラに対する殺虫効果試験)
上記のようにして得られた樟脳油組成物(実施例1)を有害生物忌避剤として用い、ボウフラに対する殺虫効果を以下のように確認した。
500mL容量のビーカーに忌避剤2mLを入れ、水で250倍に希釈した。その中にボウフラ約200匹を入れ、静置した。
【0047】
比較例1として殺虫剤2g(商品名「ザーテル」、三共株式会社製、成分:クロルピリホスメチル)を水500mLで希釈したもの、比較例2としてヒバ油2mLを水で250倍に希釈したもの、比較例3として木酢液(原料木:ナラ)2mLを水で250倍に希釈したものを用い、実施例1と同量のボウフラを入れ、静置した。
以上のように静置後、死虫率100%に要した時間を求めた。その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 0003773478
【0049】
表2の結果から明らかなとおり、樟脳油を有効成分とする本品(実施例1)を加えたものは約1時間で全てのボウフラが死滅した。これに対し、クロルピリホスメチルを有効成分とする殺虫剤(比較例1)を加えたものでは、全てのボウフラが死滅するために約2時間を要し、ヒバ油(比較例2)や木酢液(比較例3)を使用したものでは約3時間を要した。
【0050】
(シロアリに対する殺虫効果試験)
上記のようにして得られた樟脳油組成物(実施例1)を水で30倍に希釈したものを有害生物忌避剤として用い、シロアリに対する殺虫効果を以下のように確認した。
【0051】
20cm×20cmのベニヤ板上に、スプレーガンで高さ30cmの距離から忌避剤を100ml散布した。風乾後、温度25℃下で処理面上にイエシロアリの職蟻20頭を放ち、小さな穴を開けたプラスチック製のカバーで覆った状態で、死虫率100%に要した時間を求めた。
【0052】
なお、対照として忌避剤を散布していないもの(ブランク)、殺虫剤(商品名「ザーテル」、三共株式会社製、成分:クロルピリホスメチル)を水で30倍に希釈したもの(比較例1)、ヒバ油を30倍に希釈したもの(比較例2)、木酢液を30倍に希釈したもの(比較例3)を用い、実施例1と同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
Figure 0003773478
【0054】
その結果、死虫率0%のブランクに対し、樟脳油を有効成分とする本品(実施例1)とクロルピリホスメチルを有効成分とする殺虫剤(比較例1)では、約30分で全てのシロアリが死滅した。これに対し、ヒバ油(比較例2)や木酢液(比較例3)を使用したものでは約3時間を要した。
【0055】
[実施例2]<樟脳油組成物>
ビーカーに入れた木蝋30重量部(融点48〜54℃)を湯煎により熱を加えて融かし、実施例1の樟脳油組成物70重量部を撹拌しながら少しずつ加え、均一に混合した。
【0056】
以上のようにして混合して得られた混合物を速やかに冷蔵庫の冷凍室(約−15℃)に入れ、約10分間冷やし、蝋と忌避剤の分離を防いだ。次いで、混合物を冷凍室から取り出して室温に戻し、ペースト状(半練り状)の目的とする樟脳油組成物を得た。得られた樟脳油組成物は、樟脳油特有の刺激性の強い芳香は感じられず、逆にほのかな木の香りがした。
【0057】
(艶出し剤としての使用試験)
以上のようにして得られた樟脳油組成物を木質材の艶出し剤として、全長約2mの木製の柱材(断面12cm×12cm)に蝋引きし、その作業性についての試験を行った。即ち、適量の樟脳油組成物(以下、本実施例では艶出し剤という)を刷毛で柱材に塗布し、乾燥後、乾拭きした。
対照として、樟脳油を加えていない通常の木蝋を用い、同様に蝋引きを行った。
【0058】
蝋引き試験は、15名のパネラーごとに計15本の柱材(対照と併せると計30本)について行い、作業を行った直後に下記の評価基準で作業性についての聞き取り調査をした。また併せて、蝋引き作業に要した時間について確認した。
【0059】
評価基準
A:実施例2に係る艶出し剤の方が伸びが良く、作業性が極めて高い。
B:特に差はない。
C:対照である木蝋の方が作業しやすい。
【0060】
結果は、実施例2に係る艶出し剤に関して「A:作業性が極めて高い」と回答した者が15名中、14名であった。これに対し「B:特に差はない」と回答した者は1名で、「C:対照の方が作業しやすい」と回答した者はいなかった。
【0061】
また塗布時間に関しては、実施例2に係る艶出し剤は伸びが良いため平均が約15分であるのに対し、対照である木蝋を使用した場合では平均が約2時間と長時間を要した。
塗布後の磨き作業についても、実施例2に係る艶出し剤では平均が約10分と短時間であるのに対し、対照である木蝋を使用した場合では平均が約2.5時間と長時間を要した。
以上のように、本実施例に係る艶出し剤は、蝋引きを行う際の作業性が極めて良いことが分かる。
【0062】
更に、艶出し剤を塗布した柱材は、樟脳油の成分が発するほのかな木の香りが6ヶ月間持続した。これは、樟脳油を木蝋に混ぜることにより、樟脳油の匂い成分が揮発しにくくなるからだと思われる。
【0063】
また、建築材として使用する木材は、長時間乾燥させるために木の香りがしなくなっているものがあるが、本品を塗布することにより、そういった木材にもほのかな木の香りを与えることができる。
【0064】
(自動車の塗膜用の艶出し剤としての使用試験)
以上のようにして得られた実施例2に係る樟脳油組成物を自動車の塗膜用の艶出し剤として、自動車のボディー面に塗布し、完全に乾燥させない状態で拭き取り作業を行った。得られた艶出し剤は自動車用としても被膜性が高く、光沢があり、樟脳油の効果により付着した汚れも簡単に落とすことができた。
更に、艶出し剤は有害生物に対して忌避効果を有しているため、艶出し剤を塗布した車には、ゴキブリやハエ等の衛生害虫も寄り付きにくい。したがって、魚や果物などの行商を車で行ったり、パンや食肉などの配送を車で行う者等、車の衛生管理を重要視する者にとって、特に有用である。更に、蚊や蛇等も寄り付きにくいため、オートキャンプ場に停めた車の中でキャンプをする場合等にも有用である。
【0065】
[実施例3]<蝋燭>
ビーカーに入れた木蝋80重量部(融点48〜54℃)を湯煎で熱を加えて融かし、実施例1の樟脳油組成物20重量部を撹拌しながら少しずつ加え、均一に混合した。それを容量100mLのガラス製の容器に移し、いぐさや和紙を灯心とする蝋燭を常法により作製した。
【0066】
得られた蝋燭に火を灯すと、樟脳油特有の刺激臭はなく木の香りを穏やかに感じることができた。これにより、本品をアロマテラピー(芳香療法)の用途としても使用できることが分かる。また、樟脳油の忌避効果により、蚊取線香等を使用しなくても、部屋の中に蚊が入りにくいという衛生的な効果も得られた。
【0067】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。
【0068】
【発明の効果】
(a)本発明によれば、樟脳油を珪藻土または/及びパーライトと接触させることにより、樟脳油由来の刺激臭を改善させることができ、しかも樟脳油が有する忌避効果は損なわれない新規な樟脳油組成物を得ることができる。これにより、得られた樟脳油組成物を有害生物忌避剤として床下等に噴霧した場合でも、作業者は樟脳油特有の刺激臭を吸い込むことはないので、長時間であっても作業を円滑に進めることができる。
また、有害生物忌避剤を使用した家屋の住人に対しても、樟脳油由来の不快な刺激臭を感じさせることはない。
更に、樟脳油由来の刺激臭は抑えられているので、樟脳油組成物を保管する場合でも、臭いが外部に漏れるような恐れはなく、保管・管理がしやすい。
以上のように、本発明によれば、樟脳油組成物を有害生物忌避剤として使用した場合の作業性や保管時の取り扱い等は容易になる。
【0069】
(b)更に、本発明に係る樟脳油組成物を有害生物忌避剤として用いることにより、化学物質由来のものと相違して、健康や環境に悪影響を及ぼすことはなく、有害生物に対して高い忌避効果を得ることができる。
【0070】
(c)また本発明によれば、樟脳油を蝋と混ぜることにより、蝋によって樟脳油の臭い成分が揮発しにくくなるため、樟脳油由来の刺激臭を改善することができる。しかも、上記したものと同様に、樟脳油が有する忌避効果は損なわれない。これにより、上記したものと同様に、有害生物忌避剤として使用した場合の作業性や保管時の取り扱いが容易になる。
また、珪藻土または/及びパーライトと接触させたものを用いれば、刺激臭の改善効果は極めて高い。
更に蝋と混ぜることにより、樟脳油に粘り気(粘性)をもたせることができるので、木造建築物の床下の基礎部分等に厚く塗ることができる。これにより、忌避剤を床下に噴霧する場合と比べて、忌避効果を長期間持続させることができる。
【0071】
(d)樟脳油を蝋と混ぜてなる樟脳油組成物を例えば柱材・床面・家具等の艶出し剤として用いれば、樟脳油の作用によって蝋が軟化して伸びが良くなるので、単に蝋だけを使用したものに比べて蝋引き時の作業性が極めて高いという効果が得られる。更に、樟脳油の忌避効果により、柱材や床面に塗布した場合ではシロアリ等の予防効果が得られ、タンス等に塗布した場合では中に入れた服に虫が付きにくい。
【0072】
(e)樟脳油を蝋と混ぜてなる樟脳油組成物を自動車の塗膜用の艶出し剤として用いれば、樟脳油の効果により付着した汚れも簡単に落とすことができる。更に、樟脳油組成物の忌避効果により、車に蚊や蛇等の有害生物が寄り付きにくいという利点もある。
【0073】
(f)樟脳油を蝋と混ぜてなる樟脳油組成物を用いた蝋燭では、火を灯すことによって樟脳油の忌避効果が部屋全体に拡がり、蚊取線香等を使用しなくても部屋の中に蚊が入りにくいという衛生的な効果が得られる。また、珪藻土または/及びパーライトと接触させたものを用いれば、樟脳油由来の刺激臭が大幅に改善され、逆に木の香りをもたせることができるので、アロマテラピー(芳香療法)の用途としても使用できる。

Claims (7)

  1. 樟脳油由来の刺激臭を改善した樟脳油組成物であって、
    樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去してなることを特徴とする、
    樟脳油組成物。
  2. 樟脳油由来の刺激臭を改善した樟脳油組成物であって、
    樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた該珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去したものを蝋と混ぜてなることを特徴とする、
    樟脳油組成物。
  3. 請求項1または2記載の樟脳油組成物を有効成分とすることを特徴とする、
    有害生物忌避剤。
  4. 請求項1または2記載の樟脳油組成物を用い、有害生物忌避効果を備えていることを特徴とする、
    艶出し剤。
  5. 請求項1または2記載の樟脳油組成物を用い、有害生物忌避効果を備えていることを特徴とする、
    蝋燭。
  6. 樟脳油由来の刺激臭を改善する方法であって、
    樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去することを特徴とする、
    樟脳油由来の刺激臭を改善する方法。
  7. 樟脳油由来の刺激臭を改善する方法であって、
    樟脳油に珪藻土または/及びパーライトを混ぜ入れて撹拌し、静置後、沈降させた珪藻土または/及びパーライトを濾過して除去したものに蝋を混ぜることを特徴とする、
    樟脳油由来の刺激臭を改善する方法。
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