JP3768393B2 - レ−ザ/プラズマ複合の加工装置 - Google Patents

レ−ザ/プラズマ複合の加工装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接,切断,穴開け,加熱,溶融等の加工を行なうレ−ザ加工装置に関し、特に、レーザとプラズマを複合した加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばレーザ溶接は、低歪,高速溶接が可能であるが、レーザ光はスポット径が小さいことから突合わせ溶接においてギャップ裕度が少なく、溶接材の高い突合わせ精度が要求される。特開平2−52183号公報には、突合わせ精度が粗くてもCO2レーザによる突合わせ溶接を実現するために、CO2レーザの照射に先行して付き合わせ部をプラズマ溶接するプラズマアーク併用のレーザ溶接方法が開示されている。
【0003】
この方法によれば、ギャップ裕度が大きくなりレーザ突合わせ溶接の品質が向上する。しかし、レーザ溶接の能率は、あまり向上しない。ここで能率とは、レーザパワーに対する、溶接対象材の厚み×溶接速度、である。
【0004】
特開平10−180479号公報には、レーザトーチの先端部に、プラズマ発生用のリング状又は円錐筒状のプラズマ電極とノズル部材を備えて、レーザ光を該プラズマ電極の中央の開口に通して、溶接対象材の同一点に同時にプラズマジェットとレーザ光を照射する溶接トーチが開示されている。プラズマジェットの中心を通って収束するレーザ光が、プラズマジェットにそれを絞るように作用して、溶接対象材に作用するプラズマジェット密度(エネルギ密度)が高くなって溶接能率が向上する、と説明されている。
【0005】
しかしながら、リング状又は筒状のプラズマ電極は、一周の全点でアークを発生することができるが、アークが一点に留まってそこが消耗して電極形状が乱れて放電特性が不安定になりやすいと考えられる。つまり、プラズマ電極の安定動作時間が短いと推察される。
【0006】
特開平10−216979号公報には、レーザトーチの先端部に、下端のノズルに連なる円錐状の空間を形成し、そこにリング状又は円錐筒状の陰極電極と陽極電極を上下に設けて、それらの間にプラズマアーク電流を流す、非移行式プラズマ併用のレーザ加工ヘッドが開示されている。しかしながらこれにおいても、アークが一点に留まってそこが消耗して電極形状が乱れて放電特性が不安定になりやすいと考えられる。つまり、プラズマ電極の安定動作時間が短いと推察される。また、非移行式プラズマ発生であるので、ヘッドと溶接対象材との距離裕度が非常に小さいと考えられる。
【0007】
特開平5−69165号公報には、レーザトーチの先端部に、TIG溶接用の筒状電極を備えて、レーザ光を該電極の中央の開口に通して、溶接対象材に照射するレーザ併用のTIG溶接トーチが開示されている。これにおいても、アークが一点に留まってそこが消耗して電極形状が乱れて放電特性が不安定になりやすいと考えられる。
【0008】
特開平9−122950号公報には、レーザ光の集光用レンズ群の光軸位置にTIG溶接電極を配置した複合溶接ヘッドが開示されている。このTIG溶接電極は丸鉛筆の中実棒状の電極であり、その下端の尖端にTIGアークが集中し、アークが安定であると推察される。しかしTIG下端部がトーチ外に露出し、電極の尖端直下にレーザ光が収束するので、溶接ヒュームによってレーザがさえぎられ、溶接能率の改善は低いと推察される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加工能率が高く、しかもプラズマ発生が安定するレ−ザ/プラズマ複合の加工装置を提供することを第1の目的とする。小出力のYAGレーザで高出力のYAGレーザと同等の加工性能を得ることを第2の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)円周面に冷却水流路 (4) がある小径円柱が下端の外フランジから上方に突出し、前記外フランジの下端面に開きレ−ザ光束(21)の光軸(22)が貫通するノズル(2)があって、該ノズル (2) と連続しそれより大きい開口で前記小径円柱の上端面に開いた空間 (3) がある、ノズル部材(1);
丸穴を有しそこに前記小径円柱を受け入れて前記ノズル部材(1)を支持する絶縁部材(6)
尖端を有する中実棒状のプラズマ電極(18);
前記ノズル (2) に向かうレ−ザ光束 (21) が通る開口 (13) を有し、前記プラズマ電極(18)を、それが前記光軸(22)に対して傾斜しかつ該光軸(22)より退避した位置から尖端が前記空間 (3) を通して前記ノズル(2)に指向する姿勢および位置に保持する、前記絶縁部材(6)に結合された電極支持部材(12,14);および、
前記レーザ光束(21)を放射するレーザヘッド(17)に前記電極支持部材(12,14)を結合する手段(16);
を備えるレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
【0011】
なお、理解を容易にするためにカッコ内には、図面に示し後述する実施例の対応要素又は対応事項の符号を、参考までに付記した。以下も同様である。
【0012】
これによれば、ノズル(2)を通って収束するレーザ光が、プラズマ電極下部に発生するプラズマジェットを通過してそれに作用し、溶接対象材に作用するプラズマジェット密度(エネルギ密度)が高くなって溶接能率が向上する。プラズマ電極(18)が尖った先端を有する中実棒状であるので、プラズマアークが該尖った先端に集中してそこに留まり、安定する。従って、プラズマ照射の安定動作時間が長い。プラズマジェットがヒュームを排斥するので、それらによるエネルギの遮断が少なく、この点からも、溶接能率が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
(2)前記冷却水流路 (4) は前記小径円柱の首部にある;上記(1)に記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
【0014】
(3)前記レーザヘッド (17) は、プラズマガス注入ポート (24) を有し、該ポート (24) に供給されるプラズマガスを前記電極支持部材 (12,14) の前記開口 (13) に案内する;上記(1)又は(2)に記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
【0015】
(4)前記レーザヘッドの内部から、前記電極支持部材 (12,14) 前記開口 (13) に伸び該開口部で最小径であって、その内部を前記レーザ光束 (21) が通過し、外部を前記プラズマガス注入ポート (24) から注入されたプラズマガスが流下する裁頭錐筒;を更に備える上記(3)に記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
【0016】
(4a)前記裁頭錐筒の下端部においてその外を流下するプラズマガスの流れを、前記プラズマ電極の先端部の周りに集中させる手段 (26) ;を更に備える上記(4)に記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
【0017】
(5)レーザはYAGレーザである。YAGレーザは金属材料の光吸収率がCO2レーザの数倍であるので、効率の良い溶接が可能である。また、波長がCO2レーザの1/10であるので、溶接時に発生するプラズマの影響を受けにくい。YAGレーザはフレキシブルな光フアイバで伝送できるので、ハンドリングが容易で多関節ロボットの利用も可能である。また、100m程度までの離れた場所への伝送が可能である。一方、YAGレーザは、イニシャルコストが高いので、自動車生産ラインのように複数台の設備を導入する場合には、設備費が膨大なものとなるが、レーザ光を時間分割(タイムシェアリング)、空間分割(パワーシェアリング)で、複数の加工ステーションに分配伝送して加工に用いることができ、高い利用効率を得られる。
【0018】
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【0019】
【実施例】
−第1実施例−
図1に本発明の第1実施例の主要部を示す。YAGレーザヘッド17のYAGレーザ光束21の光軸22を中心としたノズル2を有するノズル部材1の外フランジが、図示しない複数のねじ(光軸22を中心に90度ピッチで分布する4本)によってノズル受け6に固着されている。ノズル部材1の小径円柱は、ノズル受け6の丸穴に挿入されて円柱外周面がOリング7を圧縮している。また、前記図示しない複数のねじ止めにより、ノズル部材1の外フランジがOリング5を圧縮している。ノズル部材1の小径円柱の首部にはリング状の冷却水流路4があり、この流路4が、Oリング5と7で気密にシールされている。なお、ノズル受け6には、この流路4に冷却水を供給するための注入ポートおよび流路4から冷却水を排水するための排出ポートがあるが、それらの図示は省略した。
【0020】
ノズル部材1の小径円柱の内端面には、ノズル2を底としそれに連続する円錐面3があり、これが円錐空間を規定している。
【0021】
ノズル受け6の上に、電極ホルダ12があり、電極ホルダ12には図に示すように、尖った先端を有する中実棒状(丸鉛筆状)のプラズマ電極18を、それが光軸(トーチ軸)22に対して傾斜しかつ光軸22より退避した位置からノズル2に指向する姿勢に受け入れる通し穴があり、その穴をプラズマ電極18が貫通している。電極ホルダ12にはその外周面から通し穴に至るねじ穴があり、このねじ穴にねじ込まれた留めねじ19の締めつけによって、プラズマ電極18が電極ホルダ12に固定されている。20はロックナットである。
【0022】
電極ホルダ12には絶縁台14が載せられている。絶縁台14,電極ホルダ12,ブラケット10およびノズル受け6は、それらを貫通しノズル受け6にねじ込まれた複数個のボルト15(光軸22を中心に120度ピッチで分布する3本)で一体に固着されている。
【0023】
YAGレーザヘッド17の下端外周の雄ねじに、フランジ付き雌ねじ筒16がねじ結合しており、この雌ねじ筒16に、そのフランジのねじ通し穴を貫通し絶縁台14にねじ込まれた複数のねじ(光軸22を中心に120度ピッチで分布する3本)で、絶縁台14が固着されている。
【0024】
YAGレーザヘッド17には、プラズマガス注入ポート24を設けており、そこからヘッド17内にプラズマガスを供給する。ヘッド17に入ったプラズマガスは、ノズル2に向かう軸流となってヘッド17を流下してノズル2から外に噴出する。この過程で、ノズル2と電極18下端の間のアークで電離されてプラズマとなる。
【0025】
この実施例では、プラズマ電極18の尖つた先端にアーク放電の電界を集中させ、電極の先端部以外への電解集中を避けるように、電極ホルダ12を導電体(銅製)とし、これに伴って、電極ホルダ12の絶縁のために、ノズル受け6および台14を絶縁体(セラミック)とした。ノズル部材1は導電体(銅製)である。
【0026】
プラズマ電極18とノズル部材1には、パイロット電源PSp,高周波高電圧のトリガ回路HFおよびパイロットスイッチSWpを含むパイロット電源回路が接続されており、プラズマ電極18と突合わせ溶接対象材OB1には、メインプラズマ電源PSmおよびメインスイッチSWmを含むメインプラズマ電源回路が接続されている。
【0027】
冷却水およびプラズマガスの供給を開始し、必要に応じてレーザヘッド17においてもレーザ集束のためのレンズをパージするガスの供給を開始し、パイロットスイッチSWpをオンにしそしてトリガ回路HFを駆動してノズル部材1/プラズマ電極18間に電気放電をトリガする。これによりパイロットプラズマが着火すると、トリガ回路HFはオフにしてメインスイッチSWmをオンにする。これにより溶接対象材OB1/プラズマ電極18間にメインプラズマアークが発生し、プラズマ溶接動作状態になる。ここでYAGレーザ光束21の射出を開始すると、レ−ザ/プラズマ複合の、高能率の突合わせ溶接動作状態になる。
【0028】
−第実施例−
に本発明の第実施例の主要部を示す。この第実施例では、第実施例にガス流路区画用のコーン25を加えてレーザ光束を覆って、ヘッド17内かつコーン25の外の空間を通して、プラズマガスをノズル受け6の内空間に供給するようにした。絶縁台14内に、半円形の平板リング半体である邪魔板26があり、この邪魔板26が、プラズマガス流を電極18の周りに集中させるために、コーン25の外の、中心穴13の右半分を閉じている。その他の構造は、第実施例と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例の主要部を示す縦断面図である。
【図2】 本発明の第2実施例の主要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1:ノズル部材 2:ノズル
3:円錐面 4:冷却水流路
5:Oリング 6:ノズル受け
7:Oリング 13:中心穴
14:絶縁台 15:ボルト
16:雌ねじ筒 17:YAGレーザヘッド
18:プラズマ電極 19:留めねじ
20:ロックナット 21:YAGレーザ光束
22:光軸 23:ガス通流空間
24:ガス注入ポート 25:コーン
26:邪魔板

Claims (5)

  1. 円周面に冷却水流路がある小径円柱が下端の外フランジから上方に突出し、前記外フランジの下端面に開きレ−ザ光束の光軸が貫通するノズルがあって、該ノズルと連続しそれより大きい開口で前記小径円柱の上端面に開いた空間がある、ノズル部材;
    丸穴を有しそこに前記小径円柱を受け入れて前記ノズル部材を支持する絶縁部材;
    尖端を有する中実棒状のプラズマ電極;
    前記ノズルに向かうレ−ザ光束が通る開口を有し、前記プラズマ電極を、それが前記光軸に対して傾斜しかつ該光軸より退避した位置から尖端が前記空間を通して前記ノズルに指向する姿勢および位置に保持する、前記絶縁部材に結合された電極支持部材;および、
    前記レーザ光束を放射するレーザヘッドに前記電極支持部材を結合する手段;
    を備えるレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
  2. 前記冷却水流路は前記小径円柱の首部にある;請求項1に記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
  3. 前記レーザヘッドは、プラズマガス注入ポートを有し、該ポートに供給されるプラズマガスを前記電極支持部材の前記開口に案内する;請求項1又は2に記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
  4. 前記レーザヘッドの内部から、前記電極支持部材の前記開口に伸び該開口部で最小径であって、その内部を前記レーザ光束が通過し、外部を前記プラズマガス注入ポートから注入されたプラズマガスが流下する裁頭錐筒;を更に備える請求項3に記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
  5. レーザはYAGレーザである、請求項1,請求項2,請求項3又は請求項4記載のレ−ザ/プラズマ複合の加工装置。
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