JP3766198B2 - 油中水滴型エマルション爆薬組成物 - Google Patents
油中水滴型エマルション爆薬組成物 Download PDFInfo
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Description
【0001】
本発明は、経時安定性を改良した高威力油中水滴型エマルション爆薬組成物に関するものである。
エマルション爆薬組成物は、不連続相、連続相を乳化エネルギーと乳化剤の力を借りて結合し、これに気泡剤を添加して製造される。
気泡剤の添加されないものは、通常エマルション組成物といい、また、このエマルション組成物に気泡剤を添加してエマルション爆薬組成物という。
そこで、本明細書においては、気泡剤の添加されていないものをエマルション組成物と呼び、また、気泡剤の添加されたものをエマルション爆薬組成物と呼ぶことにする。
【従来の技術】
【0002】
一般に、産業用爆薬には、ダイナマイト、カーリットなどの従前から良く知られた爆薬以外に、硝酸アンモニウムを主成分とし、安全性を高めるために成分中に水を5重量%以上含んだ含水爆薬と、コストの極めて安価なANFO爆薬とがある。
また、含水爆薬には、水相中に燃料成分が混和されたスラリー爆薬と、これとは全く正反対に燃料成分である油相中に水相成分である酸化剤相を含んだエマルション爆薬組成物とがある。
近年の高安全化された含水爆薬は、それ自身爆薬ではない成分からなり、しかも成分中に水を含んでおり、ダイナマイトに比較してやや密度が低く、爆発威力は劣るが、非常に鈍感である。
【0003】
そこで、含水爆薬の威力増大のために、これまで取られてきた手段は、当該技術の専門家の間では公知のアルミニウムを添加することによって、爆発反応温度を上げ、爆発威力を増すという方法である。
含水爆薬にアルミニウムを添加するという技術は、昭和40年代のスラリー爆薬開発当時から行われており、エマルション爆薬組成物においては、特開昭54−110308号公報(20重量%までのアルミニウム添加)、特開平3−164489号公報(アルミニウム添加による水中爆発エネルギーの向上)、特開平6−128071号公報(水中爆発エネルギーの計測)、米国特許第3,447,978号明細書(爆轟性に鋭感な成分あるいは燃料として役立つ成分としてのアルミニウム)、米国特許第3,770,522号明細書(エネルギーを増すためあるいは鋭感剤としてのアルミニウム)、米国特許第4,110,134号明細書(15重量%までのアルミニウムのような予備燃料)などに開示されるように、比重調節剤である微小中空球体と同様に増感剤として使う以外に、基本的にはさらなる爆発力の向上のためにアルミニウムを使用することが知られている。
以上のこれら先行技術は、いずれもエマルション爆薬組成物にアルミニウムを添加することによって、主として爆発威力の向上を狙ったものである。
【0004】
エマルション爆薬組成物中のアルミニウムなどの金属発熱剤は、反応すると高温度を発生し、爆発温度の増大に大きく寄与する。
一般に、威力を表す方法にはいろいろあるが、通常熱力学計算から得られる静的威力に火薬の力fと言われるファクターがある。
これは、f∝PVTで表され、静的威力の指標である火薬の力f(atm・l/kg)は爆発温度T(゜K)に比例して増大する。従って、エマルション爆薬組成物成分中に金属発熱成分を添加すれば、静的威力が増大することは自明である。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これら従前の発明は、爆薬の爆発エネルギー増大のためにアルミニウムなどの金属発熱剤の添加量あるいは酸素バランスについては言及するも、経時安定性の向上については何ら言及していない。
エマルション爆薬組成物は、酸化剤溶液からなる不連続相をワックスなどの燃料である連続相で包み込み、これら2相の間を比重調節剤である微小中球体、例えばガラスマイクロバルーンなどの不活性物質が介在する構造となっている。
もし、これら2相間に不活性でない物質、例えば硝酸塩、過塩素酸塩あるいはアルミニウム、庶糖などの固形物質を添加すると、経時安定性が大きく損なわれる。これは、酸化剤相中の液体成分と固形物質との反応あるいは状態変化によって生ずるものである。添加する物質がガラスマイクロバルーンのように不活性物質であるならば、経時安定性を損なうようなことはない。
【0006】
そこで、エマルション爆薬組成物の爆発威力増大のために添加するアルミニウム自体を不活性化するために、鋭意研究した結果、ある種のワックスなどの親油物質または不活性物質でアルミニウム自体を被覆することが経時安定性向上に有効であることが分かり本発明に至ったものである。
本発明はかかる知得に基づいてなされたもので、その目的は、経時安定性の良好な高威力油中水滴型エマルション爆薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の油中水滴型エマルション爆薬組成物は、硝酸アンモニウムと、その他の硝酸塩または過塩素酸塩と、有機アミン硝酸塩と、水とからなる酸化剤溶液、または、硝酸アンモニウムと、その他の硝酸塩または過塩素酸塩と、水とからなる酸化剤溶液で構成される不連続相と、炭素質燃料成分の連続相とからなるエマルションマトリックスに、油中水滴型乳化剤と、ガラス微小中空球体からなる比重調節剤と、アルミニウムとを含む油中水滴型エマルション爆薬組成物において、前記アルミニウムがマイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびカルナウバワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種の被覆剤で被覆され、前記被覆剤の量が前記アルミニウム全重量に対して1〜5重量%であることを特徴とする。
請求項2記載の油中水滴型エマルション爆薬組成物は、請求項1記載の油中水滴型エマルション爆薬組成物において、前記被覆剤で被覆されたアルミニウムは、前記油中水滴型エマルション爆薬組成物全重量に対して3〜7重量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明において、不連続相は、硝酸アンモニウムと、その他の硝酸塩または過塩素酸塩と、有機アミン硝酸塩と、水とからなる酸化剤溶液、または、硝酸アンモニウムと、その他の硝酸塩または過塩素酸塩と、水とからなる酸化剤溶液で構成される。
また、その他の硝酸塩または過塩素酸塩としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸リチウムなどの硝酸塩、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸リチウムなどの過塩素酸塩がある。
また、有機アミン硝酸塩としては、硝酸モノメチルアミン、硝酸モノエタノールアミン、硝酸モノエチレングリコール、2硝酸エチレンジアミン、硝酸ヒドロキシルアミンなどがある。硝酸ヒドラジンおよびこれらは一般的に水溶性であって、含水爆薬中における酸化剤相として有効なものである。
【0009】
また、連続相は、ワックスなどの炭素質燃料成分で構成される。
この炭素質燃料成分としては、例えば、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、石油精製鉱油、潤滑油、流動パラフィン、あるいは、ニトロ炭化水素等の炭化水素誘導体等の燃料油および/または石油から誘導される未精製もしくは精製マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなど、あるいは鉱物性ワックスであるモンタンワックス、オゾケライトなど、動物性ワックスである鯨ロウ、昆虫ワックスである密ロウなどのワックス類など、従来からW/O型爆薬の連続相に使用される炭化水素系物質の何れをも含み、これらを単独もしくは混合物として用いることができる。
【0010】
また、爆薬にとっては燃料成分ではなく不純物であるガラスマイクロバルーンのような比重調節剤が、エマルション爆薬組成物の比重調整と爆発感度向上のために添加される。
また、比重調節剤の他に、不連続相と連続相とを結合するための油中水滴型乳化剤が添加される。
この乳化剤としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル型の乳化剤がある。
【0011】
また、被覆剤としては、エマルションを構成する連続相と相溶性のある親油物質があり、また不連続相成分とは不活性の物質である、ワックス類などが良好である。
また、ワックス類であれば、融点の高・低に拘わらず、マイクロクリスタリンワックスが、一方、パラフィンワックスであれば、高融点ワツクスが良好である。
また、天然ワックスであるカルナウバワックスも有効である。
被覆剤の量は、アルミニウムの全重量の5重量%以下が好ましく、これより多いと、被覆剤のためにアルミニウムの爆薬成分中における発熱剤としての機能低下をきたし、弾動臼砲比(TNT%)で表わされる爆発性能の低下となる。
一方、この被覆剤の量がアルミニウム全重量の1重量%未満になると、被覆剤としての被覆効果が弱く、経時安定性の向上が望めなくなる。
【0012】
エマルション爆薬組成物は、例えば、爆薬比重が約l.10の一定条件では低温感度は−30℃で完爆し、JlS爆速は約5800m/secと非常に高性能の産業爆薬である。
しかし、殉爆感度と静的威力の指標である弾動臼砲比は、それぞれ約2径倍、約100%と、日本工機株式会社製のスラリー爆薬のそれぞれ約4径倍、115%に遠く及ばない。
一般的に、混合爆薬である含水爆薬は、比重が高くなると、低温感度、殉爆感度とも低下し、一方、爆速は比重が1.28程度のところまで上昇するが、それより高くなると急激に低下し、終いには爆発しなくなる。
すなわち、爆薬比重の増大とともに、爆発感度が低下し、それに応じて反応率も低下する。
さらに、実際の発破現場のボアホールは、一般的に水があり、その水の比重は繰り粉の混ざった泥水であるために1.l0以上になっている。このような泥水中においては、爆薬を装填しようにも浮いてしまって充填しにくいなどの問題、また爆薬比重が低いと、爆薬の集中効果が悪く、硬岩あるいは拘束条件の厳しい孔底近傍あるいはまたトンネル発破では、孔尻が残り、爆発威力が弱いという不評を買ってしまう。
【0013】
本発明はかかる爆薬比重が低いという欠点を解消するため、爆薬比重を1.18±0.03を目標とし、特定のアルミニウムを添加することによって低温感度、殉爆感度を従来通り以上の性能に維持しながら、爆薬の経時安定性を大きく損なうことなく、静的爆発威力の指標である弾動臼砲比を大きく向上するためになされたものである。
これら最近の含水爆薬は、成分中にそれ自身火薬である爆発性物質は含まず、水または水分を5重量%以上含め、安全性を追求した高安全性爆薬であり、これにはスラリー爆薬とエマルション爆薬組成物とがある。
これらの爆薬の爆発および爆発伝播も含めた爆発性の維持原理は、成分中に分散した気泡の断熱圧縮によるものである。
このような爆薬は、ある一定比重を超えると、気泡の断熱圧縮源となるべきホットスポットの容積中に占める割合が減少し、結局静的威力は向上しても、爆薬の低温起爆性あるいは砂上殉爆感度などが著しく低下し、劣悪な製品となってしまう。
前述したように、エマルション爆薬組成物にアルミニウムを添加して威力増大するという技術は、公知の技術であるが、ただ単に添加したのでは経時安定性が劣悪になってしまい、製造後2年間以上もの長い間製品性能を保証しなければならない日本では製品として製造できない。
【0014】
そこで、常温常圧の雰囲気において、威力増大のために添加したアルミニウムとエマルション組成物そのものとが反応しないようにするため、アルミニウム表面をエマルション雰囲気に対して相溶性・親油性であり、かつ不活性な物質でアルミニウムそのものを被覆する方法が考えられる。
そのための材料としては、一般的に知られている、例えば、ステアリン酸のカルシウム塩あるいはアルミニウム塩のような脂肪酸塩がある。
そこで、硝酸アンモニウムおよびその他の硝酸塩を主とするエマルション爆薬組成物に、ステアリン酸アルミニウムで表面被覆処理した粉状アルミニウムを添加したエマルション爆薬組成物については、表面処理していない粉状アルミニウムを添加したエマルション爆薬組成物と比較して、経時安定性は向上する。
しかし、硝酸アンモニウム以外の威力向上のために用いる、その他の酸化性塩として、特に有機アミン硝酸塩を含むエマルション爆薬組成物に対しては、同様な表面被覆処理した粉状アルミニウムを添加しても、十分な経時安定性の効果が得られない。
【0015】
そこで、アルミニウムの表面被覆処理剤について鋭意検討した結果、使用時の表面処理剤の性状は、低粘性の液体で、好ましくは低比重である方が同一量での被覆効果が大きいことが分った。
この条件を満たす被覆剤としては、ワックス類などであり、具体的には使用時に液体である材料の方が被覆効果が大きい。中でもマイクロクリスタリンワックスがエマルション爆薬組成物の経時安定性に最も有効であることが分かった。
【0016】
以上の結果から、アルミニウムのコーティング剤としては以下のように解釈できる。
(1)コーティング剤は、コーティング効果を上げるために、液体であることが望ましい。
(2)コーティング剤は、エマルションの表面相である連続相に、相溶性の親油物質が望ましい。
(3)コーティング剤は、捏和温度以上の融点を持つものが望ましい。
(4)静的威力を増大するという目的から判断すると、アルミニウムの粒度は平均粒径で200μm以下が最も良好であることを確認している。
(1)の理由から、被覆工程中に液状体を呈するものがよく、例えば、常温では固体であっても、ある温度では液体状の性質を呈するワックスなども該当する。
(2)の理由から、エマルション組成物の連続相を構成するワックス成分が最も良好で、中でもマイクロクリスタリンワックスが非晶質微細であることから良好である。
(3)の理由からは、マイクロクリスタリンワックスであっても、捏和時の温度でコーティング剤が溶出しない、または経時安定性を損なわない程度に少量しか溶出しない高融点ワックスが望ましい。
【0017】
高融点ワックスとしては、日本精蝋株式会社製のHimic 2095、Himic 3090、Himic 1080(いずれも商品名)、モービル石油株式会社製のMobil−190Y、Mobil−180(いずれも商品名)、日本石油株式会社製のマイクロワックス180(商品名)などがあり、中でも高融点のものほど経時安定性が良好である。
【0018】
これまで、含水爆薬の低温感度、殉爆感度あるいは弾動臼砲比などの性能を向上するためになされる常套手段は、有機アミン酸化性塩、例えば、その硝酸塩または過塩素酸塩を用いる方法と、硝酸ヒドラジン、硝酸尿素、硝酸グアニジンなどのそれ自身爆発性を有する化合物を用いる方法とが知られている。
よく知られた有機アミン酸化性塩には、硝酸モノメチルアミン、硝酸モノエタノールアミン、硝酸モノエチレングリコール、2硝酸エチレンジアミンなどがあり、またこれらの過塩素酸塩が使われることもある。
また、前述の硝酸ヒドラジン、硝酸尿素、硝酸グアニジンなどのそれ自身爆発性を有する化合物を用いる方法およびニトロ基を3個以上有するそれ自身爆薬である化含物を用いる方法についても、これらの添加剤が易水溶性であるならば、上記有機アミン酸化性塩を用いる方法と同じく、酸化剤溶液中に溶かして使用することにより、高性能なエマルション爆薬組成物が得られる。
従って、エマルション爆薬組成物の鋭感剤またはエネルギー増強剤の一原料として、上述のような成分を添加する場合は、一般的にその原料そのものが水溶性であることが望ましい。
【0019】
前述の有機アミン硝酸塩は、正味5重量%以上の含有量であれば、それ相応の添加効果が得られる。
ところが、アルミニウムのない油中水型エマルション爆薬組成物においては、酸素バランスが負の有機アミンを多く入れすぎると、最終的に得られる爆薬の酸素バランスが大きく負になり、爆発性能もやや低下するばかりか、これが爆発すると、人体に有害な生成ガスが多量に発生するため、トンネル発破などの換気設備が不十分な現場では使用しがたい。
そこで、得られる爆薬の酸素バランスをできる限り零付近に設計すると、どうしても添加すべき上述の有機アミンは数重量%程度の添加量となり、この量では殆ど爆発威力増大効果が得られない。
しかし、これらの有機アミン酸化性塩の中では、硝酸塩、例えばモノエタノールアミンが正味3〜5重量%と少ない添加量で、最も爆発威力向上に有効であることが分かった。
【0020】
ここで、酸素バランスと後ガスとの関係について得られた知見を明記する。
一般に、含水爆薬には、前述の通りスラリー爆薬とエマルション爆薬組成物とがあり、火薬成分を用いないスラリー爆薬は、殆どすべてアルミニウム入りであり、酸素バランスが零付近で、最も後ガスの良好なしかも高性能な爆発性能を示す。
スラリー爆薬において、一般にアルミニウムは、鱗片状アルミニウムのような微粉状アルミニウムを使用するが、これは爆発エネルギーと起爆感度の増大に大きく寄与する。
一方、エマルション爆薬組成物にも、アルミニウム入りエマルション爆薬組成物とアルミニウムのないエマルション爆薬組成物とがあり、アルミニウムの粒度によっては爆発エネルギーの増大に大きく寄与する。
一般的に、アルミニウムの粒度が小さければ反応しやすく、そのエネルギー増大効果は絶大である。このような微粒子状アルミニウムは、反応性に富み、含水爆薬の爆轟反応においては成分中の水がアルミニウムの酸化剤の役割をなす。
従って、アルミニウムのないエマルション爆薬組成物では、酸素バランスが零付近で高性能を発揮するが、アルミニウム入りエマルション爆薬組成物では、アルミニウムのない状態のエマルション爆薬組成物の酸素バランスがほぼ零に設計されていれば、アルミニウムの添加によって、その酸素バランスが大きく負になっても、前述のようにエマルション爆薬組成物中の水が酸化剤で、アルミニウムが還元剤なる酸化還元反応を起こし、爆薬系全体としては酸素過不足なく反応し、高爆発温度となる。
従って、爆発生成ガス中には、人体に有害なガスは殆ど増えず、これまで考えられている酸素バランスが負の時はCOのような有害な後ガスが発生するという現象が現れないことが分かった。
【0021】
エマルション爆薬組成物にアルミニウムを添加すると、前述のように爆発性能、特に静的威力が増大することは、前述の米国特許第3,770,522号明細書および米国特許第4,110,134号明細書に明記されており、またスラリー爆薬の製造技術の上から公知である。
それにも拘わらず、エマルション爆薬組成物が上市されてから10数年後にやっと、アルミニウム入りエマルション爆薬組成物が市場に出回ったことは、それだけ経時安定性の確保が困難であったことに他ならない。
本発明者も、アルミニウム入りエマルション爆薬組成物の経時安定性を改良しつつ高性能爆薬を開発するため、鋭意研究した結果、親油物質、例えば特定のワックスなど、あるいは不活性物質でアルミニウムそのものをコーティングすることによって経時安定性の極めて良好な高性能エマルション爆薬組成物を開発することができ本発明に至った。
【0022】
アルミニウム表面を不活性物質でコーティングする技術は、産業爆薬技術分野に拘わらず種々公知である。
例えば、アルミニウム表面をステアリン酸およびまたはステアリン酸塩でコーティングすることによって、アルミニウムと水の反応を抑える技術として、特開平6−128071号公報にその記載がある。
またさらに、過塩素酸ソーダを主とする2成分流動性爆薬組成物として、米国特許第5,007,973号明細書には、アルミニウムコーティング剤としてのオクチルトリメトキシ(またはエトキシ)シランの記載がある。
これらは、爆薬中に添加したアルミニウムと産業爆薬の一成分である水などの溶媒との反応を抑制することによって、経時安定性の向上を目的になされている。
【0023】
アルミニウムは、一般的に以下の水との反応によって、不活性化される。
2Al+6H2O→2Al(OH)3+3H2・・・(1)
2Al(OH)3→Al2O3+3H2O・・・(2)
爆薬系内に水があるうちは、(1)の反応が徐々に進み、アルミニウムは表面が水酸化アルミニウムとなって白い結晶質に変化し、安定して行く。
(1)の段階になってしまうと、爆薬成分としては還元剤(発熱剤)としての作用効果は失われ、エマルション構造自体も部分的に破壊されてしまうであろう。また、(2)の反応は、水酸化アルミニウムそのものが非常に安定であるため、爆薬系内では殆ど起こらないものと想像される。
従って、少なくとも商品保証期間中である2年間は、(1)の反応が生じないように、あるいはもし生じても、性能に著しい劣化を起こさない程度に抑制するように、(1)の反応を遅らせることである。
このために、鋭意研究した結果、アルミニウム表面を特定のワックスなどの親油物質、不活性物質で被覆することによって解決できることを見い出したものである。
エマルション組成物に用いた石油質炭素燃料成分と相溶性の高いワックス、あるいはその他の不活性物質のうち、マイクロクリスタリンワックス、例えば、日本精蝋株式会社製のHimic2095(商品名)を用いてアルミニウム表面を被覆したものは、微細な酸化剤液滴を包み込む炭素質燃料、例えばHimic2065(商品名)と相溶性が高く、その液滴または炭素質燃料と不活性であるために、エマルション組成物の経時安定性に悪影響を与えないばかりか、アルミニウムとエマルション組成物(エマルションマトリックス)中の水との反応も抑えられ経時安定性効果が高くなるものと判断する。
【0024】
一方、マイクロクリスタリンワックスよりも結晶質の大きなノルマルパラフィンを主成分とするパラフィンワックスの場合も、エマルション爆薬組成物中に添加するアルミニウムの被覆剤として良好な経時安定性効果が認められる。
この被覆効果は、高融点ワックスであればあるほど有効なのはいうまでもない。
従って、一般的には、パラフィンワックスよりも融点の高いものが多いマイクロクリスタリンワックスの方がより有効である。
しかし、高融点ワックスであっても、エマルション爆薬組成物の乳化に用いたマイクロクリスタリンワックスと相溶性の悪い、例えば、日本精蝋株式会社製の合成ワックスWeissenT−40、FT−100(いずれも商品名)などでアルミニウムを被覆しても、エマルション爆薬組成物の良好な経時安定性は得られないばかりか、被覆剤のないアルミニウムを添加したエマルション爆薬組成物よりも経時安定性が損なわれることがある。
これらの諸現象について、種々検討した結果、エマルション爆薬組成物の乳化に用いたワックスと同種類の石油質炭素燃料成分であるワックスであれば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの種類を問わず、エマルション爆薬組成物に添加するアルミニウムの被覆剤として有効であって、融点の高低にはさほど影響がないことが判明した。
これら石油質炭化水素燃料であるワックスの中では、好ましくはワックス主成分がイソパラフィンから成る微晶質なマイクロクリスタリンワックスが最も目的に叶っていることが判明した。
【0025】
その他のワックスの効果を確かめるために、天然ワックスであるカルナウバワックス、セレシンあるいは合成ワックスであるパラノック205(日本石油株式会社製)、酸化ワックスであるOX1949(日本精蝋株式会社製)などを用いて経時安定性試験に供したところ、カルナウバワックスは極めて良好な経時安定性効果が得られたが、セレシンは有効ではなく、またパラノツク205、OXl949および乳化安定性ワックスであるペトロナウバーCは、先のマイクロクリスタリンワツクスに比べ経時安定性効果の弱いものしか得られなかった。
ここで、高融点ワックスとは、当該エマルション爆薬組成物の捏和温度と同等かそれよりも融点の高いワックスをいい、その被覆方法はこれを予め融点以上に加温し溶融した後、ほぼ被覆剤の融点より数℃高い温度に加温した当該アルミニウムと2分間以上混和し被覆するか、高温状態の溶融ワックスを当該アルミニウムに一定量攪拌しながらスプレーして被覆するという方法も可能である。
【0026】
その他の不活性物質も、前記ワックス類と同様に常温で液体のものはそのままの状態で、一方、常温で固体のものは加熱により液化し、前記の通り所定時間攪拌混合することによって当該アルミニウムに被覆処理した。被覆されるアルミニウムは、その粒度が小さいほど多くの被覆剤量を必要とした。
これらの被覆剤は、常温常圧付近ではエマルション爆薬組成物中の水または水分あるいは酸化性溶液に対して安定であるので、エマルション爆薬組成物の経時安定性の向上に大きく寄与し、一方、エマルション爆薬組成物の爆轟反応時の高温超高圧には被覆剤の効果は無に等しく、何ら爆発性能を劣化するようなことはないものと判断される。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明に関連する比較例と実施例を説明する。これらの成分および性能を表1、2に示した。
(比較例1〜7)
比較例1、2は、本発明の被覆剤を使用しないものについて性能を示した。
比較例1は、有機アミン硝酸塩を含まないエマルション爆薬組成物である。
比較例2〜7は、有機アミン硝酸塩としてモノエタノールアミン硝酸塩を含むエマルション爆薬組成物である。
比較例1から、威力向上のために単に公知のアルミニウムを添加するだけでは製品としての経時安定性が悪く生産に耐えないことが分かる。
一方、比較例2のように、有機アミン硝酸塩を用いたエマルション爆薬組成物であっても、威力向上のためにただ単にアルミニウムを添加しただけでは、経時安定性が有機アミン硝酸塩を含まない比較例1よりもさらに悪くなる傾向が高いことが分かる。
ここで、経時安定性が悪いとは、具体的には経時変化とともに主として低温爆発感度が悪くなっていき、本発明者が目標とする2年後でも−20℃の低温爆発感度を維持させることは困難であることを意味する。
また、温度サイクルとは、本発明者の経時変化試験結果より求めた加速試験であって、温度サイクル試験での1サイクルとは+50℃に24時間保温後、次の24時間は−15℃に保温するもので、1サイクルが実時間で約1ケ月に相当することが分かっている。
【0028】
比較例3〜7は、比較例2と基本的に同じであり、比較例3〜6は、アルミニウムの被覆剤として、通常考えられている脂肪酸を被覆したものであり、比較例6、7は高融点ワックスを用いたものである。
比較例1〜6は、アルミニウムの添加量が5重量%相当であるのに対して、比較例7はその添加量が10重量%相当であることを示す。
これらは、いずれも、製造直後の低温爆発感度は優れているが、経時変化とともに主として低温爆発感度が劣化していく様子が分かる。
比較例中においては、2年後(温度サイクル試験で24サイクルに相当)において、−20℃の温度で完爆するものは得られない。
すなわち、爆薬に限らず組成物の経時安定性を改良するために取られる手段で、被覆剤(コーティング剤)として脂肪酸を用いる技術は公知であるが、この方法が特に有機アミン硝酸塩を用いたエマルション爆薬組成物の経時安定性改良には有効ではないことが分かった。
【0029】
【表1】
【0030】
表1において、(1)は酸化剤相、(2)は燃料、(3)は乳化剤、(4)は気泡剤、(5)は他の燃料、(6)は被覆剤、(7)は爆薬性能を表す。
また、70%MEAは三井東圧化学株式会社製のモノエタノールアミン、67%硝酸は日本化成株式会社製の工業用硝酸、酢酸ナトリウムは大東化学株式会社製の工業用酢酸ナトリウム、硝酸アンモニウムは三菱化成株式会社製の工業用粒状硝安、硝酸ナトリウムは三菱化成株式会社製の工業用硝酸ナトリウム、Himic2065は日本精蝋株式会社製のマイクロクリスタリンワックス、Luvax2191は日本精蝋株式会社製のマイクロクリスタリンワックス、レオドールAO−15は花王株式会社製のソルビタンセスキオレート、レオドールSP−010は花王株式会社製のソルビタンモノオレート、エトマールNSは日本乳化剤株式会社製のソルビタンポリオール、ガラスバルーンK−15−300は住友3M株式会社製のグラスバブルス、アルミニウムCap420SはComalco Alumi,Ltd.製のCapco#Atomised Powder、アルミニウムAC0220は東洋アルミニウム株式会社製の粒状アルミニウム、アルミニウムAB1700は東洋アルミニウム株式会社製のアルミニウムパウダー、オレイン酸は関東化学株式会社製の試薬鹿一級、ステアリン酸は関東化学株式会社製の試薬鹿一級、パラフィンT−40は日本精蝋株式会社製の改質パラフィンワックス、パラフィンFT−100は日本精蝋株式会社製の高融点合成炭化水素ワックスを表す。
また、爆薬密度の単位はg/cc、カートリッジ爆速の単位はm/s、弾動臼砲比の単位はTNT%、針入度の単位は10-1mm、低温爆発感度(MIT:Minimum Initiation Temperature)の単位は℃で表す。
【0031】
(考察)
そこで、種々の被覆剤となり得る化合物を鋭意研究した結果、エマルション爆薬組成物の被覆剤としては、一般的に以下の条件のものが有効であることが分かった。
(1)脂肪酸は被覆効果が弱く、ワックスは脂肪酸より有効である。
(2)ワックスの中では、パラフィンワツクスよりマイクロクリスタリンワックスがより有効である。
(3)マイクロクリスタリンワックスの中では、融点が高ければより有効である。
(4)その他、経時安定化に有効な特定のコーティング剤がある。
さらに、有機アミン酸化性塩として、例えば、モノエタノールアミン硝酸塩を含むエマルション爆薬組成物へ添加するアルミニウムの被覆剤として有効なものは上記の記述以外に、
(5)天然ワックスであるカルナウバワックスが有効である。
【0032】
さらに、一般的には、被覆されるアルミニウムは、微粒子になればなるほど比表面積が大きくなるため、同一被覆剤量で効率よく被覆するためには、爆発性能に悪影響が生じない限り粗粒品の方が好ましい。
本発明者の確認試験では、爆発性能、特に静的威力の簡便な指標である弾動臼砲比の増大に大きく寄与するアルミニウムの粒度分布は、JlS標準櫛で36メッシュ以下の範囲のものである。もっと好ましくは、65メッシュ以下である。この範囲より粗いと、同じ約5重量%のアルミニウムを添加してもアルミニウムの反応性が悪いため爆発反応に寄与せず、弾動臼砲比の大きな向上は認められなくなる。
一方、細かいと、前述の通り同じ被覆剤量を用いた場合に、比表面積が大きいために被覆効果が相対的に完全ではなくなり、経時安定性が低下する要因となるが、爆発性能に悪影響を与えない範囲で被覆剤量を増量すればよいことはいうまでもない。
従って、エマルション爆薬組成物の爆発威力を増大するために添加するアルミニウムは、上述のような特定の不活性な被覆剤を用いることによって経時安定性の良好な高爆発威力エマルション爆薬組成物が得られる。
【0033】
アルミニウムを添加することによる高威力化によって、産業用爆薬の実用感度である砂上殉爆感度も向上すると同時に爆発温度も上がり、反応効率が上がるほか、前述のようにアルミニウムは成分中に含まれる水または水分との酸化還元反応により、人体に有害な後ガスの発生が抑えられるものと理解される。
通常、産業用爆薬は、爆発時に有害なガス(後ガス)が発生しないように酸素バランスを零付近に調整している。従来の含水爆薬であるスラリー爆薬では、酸素バランスを調整することによって有害ガスの発生を抑えているが、同じ含水爆薬でもエマルション爆薬組成物では、燃料と酸化剤の接触表面積がスラリー爆薬に比べて格段に大きく、そのため反応効率が極めて高い。
通常、この反応効率は、水中爆発試験によって得られたショックエネルギーとバブルエネルギーから計算される全水中爆発エネルギーA0と理論的な熱化学的平衡計算による爆発反応熱Qとの比A0/Qから知ることができ、スラリー爆薬では最大でも90%であるが、エマルション爆薬組成物では95〜100%の間になる。
以上の通り、エマルション爆薬組成物においては、反応効率が非常に高く、そのために爆発反応による有害ガスの発生が極めて少ない要因にもなっている。
このような高反応効率を呈するエマルション爆薬組成物にアルミニウムを添加すると、酸素バランスが大きく負になったとしても、前述のように成分中の水または水分とアルミニウムの酸化還元反応によって有害な爆発後ガスの発生が極めて少なくなる。
【0034】
(実施例1〜6)
実施例1、2は、有機アミン硝酸塩を有しないエマルション爆薬組成物で、実施例3〜6は有機アミン酸化性塩の一例としてモノエタノールアミン硝酸塩(70%MEA)を用いたエマルション爆薬組成物の例である。
また、実施例1〜4までは、気泡剤として3M社のグラスマイクロバルーンK−15−300を2.5重量%用いたのに対して、実施例5、6は同社のグラスマイクロバルーンK−25−750を4.0重量%用いて比重をほぼ同程度に維持した。
【0035】
本発明の主目的は、エマルション爆薬組成物に添加するアルミニウムがエマルション組成物そのものと反応して経時劣化を起こさないようにするためのアルミニウム被覆剤に関する発明である。
そこで、被覆剤の効果に影響を及ぼす因子について触れながら、各実施例の詳細を説明する。
実施例1は、アルミニウムの被覆剤として天然ワックスであるカルナウバワックスを用いた例を示す。
実施例2は、カルナウバワックスの代わりに低融点マイクロクリスタリンワックスである日本精蝋株式会社製のHimic2045を用いた例を示す。
実施例3は、カルナウバワックスの代わりに高融点マイクロクリスタリンワックスである日本精蝋株式会社製のHimic2095を用いた例を示す。
実施例4は、アルミニウムの被覆剤として先に示した低融点マイクロクリスタリンワックスを用いた例であるが、その被覆剤量を2倍にした例を示す。
実施例5は、アルミニウムの被覆剤として高融点マイクロクリスタリンワックスである日本精蝋株式会社製のHimic2095を用いた例を示す。
実施例6は、アルミニウムの被覆剤として2種の低融点マイクロクリスタリンワックスである日本精蝋株式会社製のHimic2045と高融点マイクロクリスタリンワックスである日本精蝋株式会社製のHimic2095とを共用した例を示す。
【0036】
製造方法については、実施例1〜6まで同じであるので、それらの代表例として実施例1について説明する。
(実施例1の製造方法)
先ず、アルミニウムの被覆剤であるカルナウバワックス0.1重量%を、その融点以上の温度に加熱し溶融する。同時に被覆される粉状アルミニウム4.9重量%も、被覆剤の融点以上に攪拌加温しておく。溶融したカルナウバワックスを、攪拌加温したアルミニウムに注入し更に5分間混ぜる。その後、加温を止め、使用した被覆ワックスの融点より10℃低い温度になるまでゆっくりと攪拌し続ける。以後、攪拌を止め、紙上に広げて室温まで下げる。
こうして得られた被覆アルミニウム5重量%を、従来技術で得られるエマルション組成物92.5重量%に所定量のガラスマイクロバルーン2.5重量%と同時に添加して、アルミニウム入りエマルション爆薬組成物100重量%を得た。
この爆薬組成物は、比重が1.16で、カートリッジ爆速は5180m/sであった。本試料1回当たり10gを用いて弾動臼砲試験を実施したところ、112.3%と本発明者が目標とする110%(TNT比)を楽に超えた。
また、低温爆薬感度は、製造直後で−20℃で完爆し、温度サイクル数24後(2年後)でも−20℃で完爆した。同温度サイクル36後(3年後)にやや低温感度が低下し、−15℃での完爆温度であった。
以上の如く、アルミニウムをワックスで被覆することによって、極めて経時安定性の良好なエマルション爆薬組成物が得られた。
それらの結果を、表2の実施例中に示した。
表中、針入度とは、製造する上での硬さの指標であると同時に経時安定性にも影響するファクターであるが、エマルション爆薬組成物においてはこの値が80〜160×10-1mmの範囲で経時安定性には悪影響がないことは分かっている。
【0037】
【表2】
【0038】
表2において、(1)は酸化剤相、(2)は燃料、(3)は乳化剤、(4)は気泡剤、(5)は他の燃料、(6)は被覆剤、(7)は爆薬性能を表す。
また、70%MEAは三井東圧化学株式会社製のモノエタノールアミン、67%硝酸は日本化成株式会社製の工業用硝酸、酢酸ナトリウムは大東化学株式会社製の工業用酢酸ナトリウム、硝酸アンモニウムは三菱化成株式会社製の工業用粒状硝安、硝酸ナトリウムは三菱化成株式会社製の工業用硝酸ナトリウム、Himic2065は日本精蝋株式会社製のマイクロクリスタリンワックス、Luvax2191は日本精蝋株式会社製のマイクロクリスタリンワックス、レオドールAO−15は花王株式会社製のソルビタンセスキオレート、レオドールSP−010は花王株式会社製のソルビタンモノオレート、エトマールNSは日本乳化剤株式会社製のソルビタンポリオール、ガラスバルーンK−15−300は住友3M株式会社製のグラスバブルス、ガラスバルーンK−25−750は住友3M株式会社製のグラスバブルス、アルミニウムCap420SはComalco Alumi,Ltd.製のCapco Atomised Powder、アルミニウムAC0220は東洋アルミニウム株式会社製の粒状アルミニウム、アルミニウムAB1700は東洋アルミニウム株式会社製のアルミニウムパウダー、カルナウバワックスは天然ワックス、Himic2045は日本精蝋株式会社製のマイクロクリスタリンワックス、Himic2095は日本精蝋株式会社製のマイクロクリスタリンワックスを表す。
また、爆薬密度の単位はg/cc、カートリッジ爆速の単位はm/s、弾動臼砲比の単位はTNT%、針入度の単位は10-1mm、低温爆発感度(MIT:Minimum Initiation Temperature)の単位は℃で表す。
【0039】
(Al量と弾動臼砲比(TNT%)との関係)
図1は、アルミニウム量と弾動臼砲比(TNT%)との関係を示したものである。ここで、油中水滴型エマルション爆薬組成物の成分は、実施例3に基づいている。
実施例3において、アルミニウムの添加量は、4.90重量%である。この場合の弾動臼砲比(TNT%)は、116.8である。
この実施例3におけるアルミニウム以外の組成を固定し、アルミニウムの添加量を、3,5,7,9,11,13,15重量%と変えると、図1に示すように、アルミニウムの添加量とともに弾動臼砲比(TNT%)が増大する。
しかし、アルミニウム添加量が7重量%を超えると、アルミニウム量に見合って直線的に弾動臼砲比(TNT%)が増大するのではなく、ある一定値に近づくが如く漸近することが分かる。
従って、最大でも7重量%を超えてアルミニウムを添加しても、それに見合っただけの弾動臼砲比で代表される静的威力の増大にならないために、本発明者はアルミニウムの添加量の上限を7重量%に限定した方がコストメリットが大きいと判断している。
しかし、特殊な用途の配合組成物では、アルミニウムが10重量%のものも当然必要になるであろう。
なお、図1においては、実施例3に基づいてAl量と弾動臼砲比(TNT%)との関係を示したが、実施例4〜6においても同様の結果を得ることが可能である。
【0040】
請求項1および請求項2によれば、エマルションマトリックスに相溶性のある親油物質または特定の被覆剤で被覆したアルミニウムを添加することによって、経時安定性の優れた高威力エマルション爆薬組成物を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Al量と弾動臼砲比(TNT%)との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 硝酸アンモニウムと、その他の硝酸塩または過塩素酸塩と、有機アミン硝酸塩と、水とからなる酸化剤溶液、または、硝酸アンモニウムと、その他の硝酸塩または過塩素酸塩と、水とからなる酸化剤溶液で構成される不連続相と、炭素質燃料成分の連続相とからなるエマルションマトリックスに、油中水滴型乳化剤と、ガラス微小中空球体からなる比重調節剤と、アルミニウムとを含む油中水滴型エマルション爆薬組成物において、
前記アルミニウムがマイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびカルナウバワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種の被覆剤で被覆され、前記被覆剤の量が前記アルミニウム全重量に対して1〜5重量%である
ことを特徴とする油中水滴型エマルション爆薬組成物。 - 請求項1記載の油中水滴型エマルション爆薬組成物において、
前記被覆剤で被覆されたアルミニウムは、前記油中水滴型エマルション爆薬組成物全重量に対して3〜7重量%である
ことを特徴とする油中水滴型エマルション爆薬組成物。
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