JP3762055B2 - ゴム組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なゴム組成物に関し、より詳しくは、自己架橋が可能で、耐熱性および耐候性に優れ、かつ用途に応じてゴムの物性を容易に調整できるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、硫黄で加硫されたゴムは、原料ゴムの組成が同一であっても、加硫剤、加硫促進剤、促進活性剤等(いわゆる加硫系)の種類や配合量を変えることによって様々な物性を有するエラストマーが得られることから、幅広い用途に利用されている。
【0003】
しかし、硫黄加硫ゴムは、硫黄原子による架橋反応点が高温条件下で分解しやすいため、耐熱性が低いという問題がある。また、加硫後もゴム分子に二重結合が残存することから、耐オゾン性が低いという問題もある。従って、硫黄加硫ゴムは、高温条件下での使用やオゾンを発生する電気機器等での使用には不適当であった。
【0004】
さらに、硫黄加硫ゴムは、加硫ゴムの表面に加硫剤、加硫促進剤、プロセス油等が析出する(いわゆるブリード、ブルーム)が生じるといった問題もある。
一方、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーは、一般に耐熱性や耐候性が優れているほか、硫黄加硫のような加硫工程が不要であるためブリードやブルームが生じないという利点を有する。
【0005】
しかしながら、上記熱可塑性エラストマーの物性はブロック共重合体の構造自体に起因しており、分子設計の段階で熱可塑性エラストマーの物性が決定されてしまうため、熱可塑性エラストマーの加工の段階で、製品の用途に応じて物性を調整するのは困難である。
さらに、熱可塑性エラストマーには、圧縮永久ひずみ等のゴム状弾性に関わる特性が硫黄加硫ゴムに比べて劣っているという問題もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、ゴムと樹脂とをグラフト共重合したり、ゴム分子に置換基を導入するなど、上記の問題を解決するためにゴムを改質する試みがなされている。
特開平2−269720号公報には、エポキシ官能基を有するα,β−エチレン性不飽和炭化水素またはマレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸でグラフト化された、エチレン−プロピレンゴム(EPM)またはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)と、反応性ポリスチレンとからなる組成物が開示されており、特開昭63−254117号公報および特公平7−42339公報には、EPDMまたはEPMと、エポキシ官能基を有するα,β−エチレン性不飽和炭化水素とのグラフト重合生成物が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記公報に記載の組成物は、いずれも単にゴム−樹脂混合時の可溶化剤あるいは熱可塑性樹脂の改質剤として使用されるものであって、単独で通常のゴムとして使用したときには、耐熱性が低くなったり、ゴム状弾性が不十分で、圧縮永久ひずみが大きくなりすぎるといった問題がある。
一方、天然ゴムをエポキシ化し、酸で変性されたゴムと反応させることにより、硫黄等の加硫剤を配合しなくても架橋できる(すなわち、自己架橋が可能な)ゴムが報告されている((1) Alex, R. et al.: J. Polym. Sci., Part C, 27(10), 261(1989). (2) 秋葉, 森田 : "日本ゴム協会誌", 68, 767(1995). (3) 秋葉, 森田 : "ポリファイル", 33(390), 56(1996). (4) Alex, R. et al.: Plast. Rubber Process, App7., 14(4), 223(1990).)。
【0008】
しかし、上記エポキシ化天然ゴムはブリードやブルームが生じるおそれがないものの、ゴム分子内に不飽和結合が残存しているために耐オゾン性が低いという問題が残る。
そこで、本発明の目的は、ブリードやブルームが生じず、耐熱性や耐候性に優れたゴムを得ることができるゴム組成物であって、用途に応じてゴムの物性を容易に調整することができる新規なゴム組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ化率が10%以上で、ヨウ素価が5〜50であるエポキシ変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムと、マレイン酸含有率が0.1〜20重量%である、マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴムおよび/またはマレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムとを20:80〜80:20の重量比で含有するときは、上記課題を解決できるゴム組成物が得られるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記本発明のゴム組成物によれば、エポキシ官能基とマレイン酸とのエステル化反応によって自己架橋するため、硫黄加硫等の加硫工程が不要で、ブリードやブルームが発生しない。また、本発明のゴム組成物を用いて得られるゴムは、架橋構造が前記エステル化反応によるものであることから、耐熱性に優れており、主鎖に二重結合を有しないEPDMやEPMを主体とするため耐候性(特に耐オゾン性)にも優れている。さらに、本発明のゴム組成物は、エポキシ変性EPDMと、マレイン酸変性EPMまたはマレイン酸変性EPDMとの混合比率や、EPDMやEPMのエポキシ化率、ヨウ素価およびマレイン酸含有率等を変えることにより、ゴムの物性を用途に応じて容易に調整することができる。
【0011】
また、本発明のゴム組成物は、前記エポキシ変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムと、前記マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴムおよび/またはマレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムとの総量100重量部に対し、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を0.5〜150重量部の割合で含有するものであってもよい。
【0012】
かかるゴム組成物によれば、エポキシ変性EPDMと、マレイン酸変性EPMおよび/またはEPDMが、上記例示の樹脂と容易にグラフト共重合して、種々の機能性エラストマーを得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のゴム組成物について詳細に説明する。
エポキシ変性エチレン−プロピレン−ジエンゴム(エポキシ変性EPDM)は、エチレンとプロピレンとジエン成分との三元共重合体におけるオレフィン部位をエポキシで置換したものである。
【0014】
前記ジエン成分としては、例えば5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−n−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソブチリデン−2−ノルボルネン、5−n−ブチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルブテニルノルボルネン類〔例えば、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン等)、5−(3,5−ジメチル−4−ヘキセニル)−2−ノルボルネン〕、ジシクロペンタジエン類、1,4−ヘキサジエン類等があげられ、なかでも5−エチリデン−2−ノルボルネンが最も好適に用いられる。
【0015】
エポキシ変性EPDMにおいて、エチレンとプロピレンとの重量比は特に限定されないが、10:90〜95:5、好ましくは55:45〜80:20の範囲であるのが、ゴム状弾性等の観点から適当である。ジエン成分の含有量も特に限定されないが、EPDM全体の0.1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%の範囲であるのが、ゴムの架橋密度の観点から適当である。また、エポキシ変性前のEPDMの重量平均分子量MW は10万〜80万、好ましくは20万〜50万の範囲であるのが適当である。
【0016】
エポキシ変性EPDMのエポキシ化率は、EPDM中の二重結合がエポキシ基で置換された割合(%)を示す。本発明において、EPDMのエポキシ化率は10%以上、好ましくは20〜100%、より好ましくは40〜100%の範囲で設定される。エポキシ化率が10%を下回ると、ゴム分子中に二重結合が多数残存するため、耐オゾン性が低くなる。また、ゴムの架橋密度が低くなりすぎるおそれもある。
【0017】
エポキシ変性EPDMのヨウ素価は、エポキシ変性EPDMの不飽和度を示す指標であって、エポキシ変性EPDM100gと結合するヨウ素の量gで表される。本発明において、エポキシ変性EPDMのヨウ素価は5〜150、好ましくは10〜40である。ヨウ素価が上記範囲を下回ると、導入できるエポキシ基の量が減少し、ゴムの架橋密度が不十分になるために好ましくない。なお、ゴムの架橋密度が不十分になると、圧縮永久ひずみが大きくなったり、耐溶剤性が低下したりする等の問題が生じる。一方、ヨウ素価が上記範囲を超えると、導入されるエポキシ基の量が多くなりすぎて、架橋ゴムの相転移温度Tg が高くなるため、エラストマーとして使用できなくなる。
【0018】
エポキシ変性EPDMは、EPDMを従来公知の方法(例えば過酸化水素や、過酢酸等の有機過酸を用いる直接エポキシ化等)によってエポキシ化することによって得られる。具体的には、例えばクロロホルム、アセトン、ヘキサン等の溶媒中にEPDMを溶解し、過酸化水素水を加えて30〜60℃の温度で、4〜6時間程度反応させることによって得られる。EPDMのエポキシ化率(%)は、過酸化水素や有機過酸の配合量、反応温度および反応時間によって調整することができる。
【0019】
マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム(マレイン酸変性EPM)は、エチレンとプロピレンとの共重合体と、マレイン酸とをグラフト共重合したものある。一方、マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエンゴム(マレイン酸変性EPDM)は、エチレンとプロピレンと上記ジエン成分との三元共重合体と、マレイン酸とをグラフト共重合したものである。
【0020】
マレイン酸変性EPMにおいて、エチレンとプロピレンとの重量比は特に限定されないが、10:90〜95:5、好ましくは55:45〜80:20の範囲であるのが、ゴム状弾性等の観点から適当である。また、マレイン酸変性前のEPMの重量平均分子量MW は10万〜80万、好ましくは20万〜50万の範囲であるのが適当である。
【0021】
マレイン酸変性EPMのマレイン酸含有率は、マレイン酸変性EPM全体に対するマレイン酸の重量割合で表される。本発明では、マレイン酸変性EPMのマレイン酸含有率は0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%の範囲で設定される。マレイン酸含有率が前記範囲を下回るとゴムの架橋が不十分になり、圧縮永久ひずみが大きくなってしまう。逆にマレイン酸含有率が前記範囲を超えると、架橋ゴムの相転移温度Tg が高くなり、エラストマーとして使用できなくなってしまう。
【0022】
一方、マレイン酸変性EPDMにおいて、エチレンとプロピレンとの重量比は特に限定されないが、10:90〜95:5、好ましくは55:45〜80:20の範囲であるのが、ゴム状弾性等の観点から適当である。ジエン成分の含有量も特に限定されないが、EPDM全体の0.1〜25重量%、好ましくは2.0〜20重量%の範囲であればよい。また、マレイン酸変性前のEPDMの重量平均分子量MW は10万〜80万、好ましくは20万〜50万の範囲であるのが適当である。なお、ジエン成分には前述と同様なものがあげられる。
【0023】
マレイン酸変性EPDMのマレイン酸含有率は、マレイン酸変性EPDM全体に対するマレイン酸の重量割合で表される。本発明において、マレイン酸変性EPDMのマレイン酸含有率は0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%の範囲で設定される。マレイン酸含有率が前記範囲を外れたときの問題点は前述と同様である。
【0024】
マレイン酸変性EPDMのヨウ素価は、エポキシ変性EPDMのヨウ素価と同様に、EPDMの不飽和度を示すものである。マレイン酸変性EPDMにおいて、そのヨウ素価は特に限定されないが、通常5〜150、好ましくは10〜40の範囲にあるのが適当である。
本発明のゴム組成物は、ゴム中のエポキシ基、あるいはカルボキシル基を反応基として、汎用されている他の樹脂と容易にグラフト共重合させることができる。これによって、他の樹脂を改質して種々の機能性エラストマーを得ることが可能になる。
【0025】
この場合において、グラフト共重合する他の樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等があげられる。
上記例示の他の樹脂の配合量は、エポキシ変性EPDMと、マレイン酸変性EPMおよび/またはマレイン酸変性EPDMとの総量100重量部に対し、0.5〜150重量部、好ましくは1〜100重量部が適当である。他の樹脂成分の配合量が上記範囲を下回ると改質効果が充分ではなく、逆に上記範囲を超えるとゴム硬度の上昇、耐水性の低下が起こるために好ましくない。
【0026】
なお、上記例示の他の樹脂のうち、ナイロン等のポリアミド樹脂におけるアミノ基や、ポリアミド樹脂、不飽和または飽和ポリエステル、アクリル樹脂等におけるカルボキシル基は、エポキシ変性EPDMのエポキシ基と反応し得る。また、ナイロン等のポリアミド樹脂におけるアミノ基、エポキシ樹脂におけるエポキシ基および不飽和または飽和ポリエステルにおける水酸基は、マレイン酸変性EPMまたはマレイン酸変性EPDMにおけるカルボキシル基と反応し得る。また、ポリウレタン樹脂のイソシアナート基は、エポキシ変性EPDMと、マレイン酸変性EPMまたはマレイン酸変性EPDMとの架橋反応で生成する水酸基と反応し得る。
【0027】
本発明のゴム組成物は、上記エポキシ変性EPDMと、上記マレイン酸変性EPMおよび/またはマレイン酸変性EPDMとを所定の割合で混合し、オープンロールやバンバリーミキサー等で素練りを行った後、必要に応じて充填剤、補強剤等の添加剤を配合して混練される。次いで、プレス加硫や缶加硫にて120〜220℃で0.1〜3時間程度加熱されて、架橋ゴムとして実用に供される。
【0028】
また、本発明のゴム組成物と、上記樹脂成分とのグラフト共重合は、150〜220℃で加熱することによって容易に進行し、こうして種々の機能性エラストマーとして実用に供される。
本発明のゴム組成物は、耐熱性および耐候性を有し、さらにブルームやブリードが生じないという非汚染性を有することから、特に電子式複写機における給紙ローラ、転写ベルト、転写ドラム用ゴム等の原料として好適に用いられる。
【0029】
【実施例】
参考例1
(エポキシ変性EPDMの作製)
EPDMをヘキサンに溶解し、ギ酸を加える。次いで、濃度30重量%の過酸化水素水を所定量滴下し、所定の条件で反応した。反応液を放冷後、水酸化ナトリウムの希釈溶液で洗浄し、さらに蒸留水で洗浄して乾燥し、エポキシ変性EPDMを得た。
【0030】
エポキシ変性EPDMのエポキシ化率は、EPDM100gに対する過酸化水素(H2 2 )水の滴下量(ml)、反応温度および反応時間によって調整した。また、エポキシ変性EPDMのヨウ素価は、EPDMにおけるエチレンとプロピレンとの重量比と、EPDM中のジエン成分(5−エチリデン2−ノルボルネン)の含有量とによって調整した。
【0031】
参考例1で得られたエポキシ変性EPDMにおけるエポキシ化率(%)とヨウ素価とを、エポキシ変性前のEPDMにおけるエチレンとプロピレンとの重量比、ジエン成分の含有量(重量%)および重量平均分子量MW と、エポキシ化の反応条件とともに表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003762055
【0033】
なお、エポキシ化率は、 1H−NMRを用いて、ビニル基のプロトンとエポキシ基のプロトンとの比率を測定することによって算出した。一方、ヨウ素価は、ウィス(Wijs)法の手法に準じて、一塩化ヨウ素とゴム試料とを冷暗所で反応させ、一塩化ヨウ素の反応量を測定することによって算出した。
参考例2
(マレイン酸変性EPMの作製)
EPM(住友化学工業(株)製の商品名「エスプレン201」、エチレンとプロピレンとの重量比=50:50、重量平均分子量MW =31万)100重量部に対して所定量の無水マレイン酸と、ジベンゾチアジルジスルフィド1.0重量部を混合して混練し、200℃で1時間加熱処理して、マレイン酸変性EPMを得た。
【0034】
なお、マレイン酸の配合量は、マレイン酸変性EPMにおけるマレイン酸含有率が表2〜3の値となるように調整した。また、前記マレイン酸含有率の測定には、赤外線吸収スペクトルを使用し、ゴム試料における波数1785cm-1での酸無水物の吸収と、波数725cm-1でのメチレン基の吸収との吸光度の比を測定し、検量線に基づく補正を施したうえで算出した。
【0035】
参考例3
(マレイン酸変性EPDMの作製)
EPDM(住友化学工業(株)製の商品名「エスプレン586」、エチレンとプロピレンとの重量比=80:20、ジエン成分(5−エチリデン2−ノルボルネン)の含有割合12.6重量%、重量平均分子量MW =40万)100重量部に対して所定量の無水マレイン酸と、ジクミルペルオキシド0.1重量部を混合して混練し、160〜180℃で加熱処理して、マレイン酸変性EPDMを得た。
【0036】
なお、マレイン酸の配合量は、マレイン酸変性EPDMにおけるマレイン酸含有率が表2に示す値となるように調整した。マレイン酸含有率の測定方法は前記と同じである。
実施例1〜4、6および比較例1〜6
(エポキシ変性EPDMとマレイン酸変性EPMとの架橋反応)
前記参考例1で得られたエポキシ変性EPDMと、前記参考例2で得られたマレイン酸変性EPMとを表2〜3に示す比率で混合し、オープンロールで混練した。次いで、170℃、100kgf/cm2 でプレス成形することにより、架橋ゴムのシートを得た。
【0037】
実施例5
(エポキシ変性EPDMとマレイン酸変性EPMとの架橋反応物のウレタン変性)
前記参考例1で得られた、エポキシ化率80%、ヨウ素価12のエポキシ変性EPDMと、前記参考例2で得られた、マレイン酸含有率15重量%のマレイン酸変性EPMとを50:50の重量比で混合し、オープンロールで混練した。この混合物100重量部に対して、ウレタン樹脂(住友バイエルウレタン(株)製の商品名「スミジュールE21−2」)40重量部を添加し、再度オープンロールで混練した。次いで、170℃、100kgf/cm2 でプレス成形することにより、架橋ゴムのシートを得た。
【0038】
実施例7
(エポキシ変性EPDMとマレイン酸変性EPDMとの架橋反応)
前記参考例1で得られたエポキシ変性EPDMと、前記参考例3で得られたマレイン酸変性EPDMとを表2に示す比率で混合し、オープンロールで混練した。次いで、170℃、100kgf/cm2 でプレス成形することにより、架橋ゴムのシートを得た。
【0039】
比較例7
(EPDMの硫黄加硫)
ヨウ素価12のEPDM(住友化学工業(株)製の商品名「エスプレン501A」、エチレンとプロピレンとの重量比=50:50、ジエン成分(5−エチリデン2−ノルボルネン)の含有割合4.1重量%、重量平均分子量MW =32万)100重量部に対し、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸1重量部、加硫促進剤TS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)1.5重量部、加硫促進剤M(メルカプトベンゾチアゾール)0.5重量部および硫黄1.5重量部を添加し、混練した。次いで、160℃、100kgf/cm2 でプレス成形して、加硫ゴムのシートを得た。
【0040】
ゴムシートの物性評価
実施例1〜7、比較例1〜7で得られたゴムシートについて、相転移温度Tg (℃)と圧縮永久ひずみ率CS(%)とを測定し、ブリードおよびブルームの有無と耐オゾン性とを評価した。さらに、実施例4および5で得られたゴムシートについては、その体積固有抵抗ρ(Ω・cm)を測定した。測定方法および評価基準は次のとおりである。
【0041】
(相転移温度Tg
相転移温度Tg (℃)を示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製の型番「DSC200」)で測定した。相転移温度Tg は0℃以下であればよい。Tg が0℃を超えるものは、ゴム状弾性の観点から実用上不適当である。
(圧縮永久ひずみ率CS)
JIS K 6301−10.「圧縮永久ひずみ試験」に記載の方法に従って測定した。圧縮永久ひずみ率CSは60%以下であればよい。CSが60%を超えるものは、ゴム状弾性の観点から実用上不適当である。
【0042】
(ブリードおよびブルームの有無)
ゴムシートを60℃、室温(25℃)および−10℃の3つの条件にてそれぞれ1ヶ月ずつ放置した後、表面を目視で観察した。ブリートまたはブルームが生じなければ(表面に析出物がなければ)使用可能(〇)であって、析出物が観察されたものは使用不可(×)とした。
【0043】
(耐オゾン性)
ゴムシートをダンベル状1号形(JIS K 6251−4.1)、厚さ2mmの試験片にカットし、この試験片を40℃、オゾン濃度50pphmの雰囲気下にて20%の伸張を与えて96時間放置した。放置後、試験片に生じた亀裂を肉眼で確認した。亀裂が見られない場合は耐オゾン性が良好で、使用可能(〇)である。一方、亀裂が見られた場合は耐オゾン性が低く、使用不可(×)とした。
【0044】
(体積固有抵抗ρ)
実施例4および5のゴムシートを用いて10cm×10cm、厚さ2mmのゴム板(試験片)を作製し、この試験片に150V×φ50mmの電圧をかけて、体積固有抵抗ρ(Ω・cm)を求めた。
以上の結果を表2〜3に示す。
【0045】
【表2】
Figure 0003762055
【0046】
【表3】
Figure 0003762055
【0047】
表2〜3より明らかなように、実施例1〜7で得られたゴムシートは、いずれも相転移温度が0℃以下で、圧縮永久ひずみ率CSが60%以下であった。また、ブリードやブルームが生じず、耐オゾン性も良好であった。
これに対し、エポキシ変性EPDMのヨウ素価とマレイン酸変性EPDMのマレイン酸含有率がともに高すぎる比較例1と、マレイン酸含有率が高すぎる比較例4とでは、ともに相転移温度Tg が高く、圧縮永久ひずみCSが大きくなった。比較例2では、マレイン酸変性EPDMの割合が多過ぎるため、圧縮永久ひずみCSが大きくなった。
【0048】
エポキシ変性EPDMのエポキシ化率が低すぎる比較例3では、圧縮永久ひずみCSが大きくなった。
エポキシ変性EPDMのヨウ素価が低すぎる比較例5では、相転移温度Tg が高く、圧縮永久ひずみ率CSが大きくなった。逆に、ヨウ素価が高すぎる比較例6では、相転移温度Tg が高くなりすぎ、圧縮永久ひずみ率CSが大きくなった。
【0049】
比較例7はエポキシ変性EPDMを硫黄加硫したものであるため、ブリードまたはブルームが生じた。
従って、比較例1〜7は、いずれも実用上不適当であった。
実施例5で得られた架橋ゴムの体積固有抵抗は3.7×109 Ω・cmであり、実施例4で得られた架橋ゴムの体積固有抵抗6.4×1012Ω・cmよりも導電性が向上した。この実施例5で得られた架橋ゴムは、導電性ゴム組成物としても使用可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のゴム組成物によれば、自己架橋により架橋されるため、硫黄加硫に起因するブリードやブルームが発生せず、非汚染性を有している。また、耐熱性や耐候性が良好であるとともに、さらにゴム組成物の組成を変えることによりゴムの物性を自由に調整できる。
【0051】
従って、本発明のゴム組成物は、電子式複写機における給紙ローラ、転写ベルト、転写ドラム用ゴムのほか、種々のゴム製品の製造に好適に用いられる。

Claims (2)

  1. エポキシ化率が10%以上で、ヨウ素価が5〜50であるエポキシ変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムと、マレイン酸含有率が0.1〜20重量%である、マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴムおよび/またはマレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムとを20:80〜80:20の重量比で含有することを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記エポキシ変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムと、前記マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴムおよび/またはマレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムとの総量100重量部に対し、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を0.5〜150重量部の割合で含有する請求項1記載のゴム組成物。
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