JP3760242B2 - 複屈折媒体の積層構造解析方法および構造解析装置,およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は,複屈折媒体の積層構造解析方法および積層構造解析装置,およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。特に,南極の氷床のレーダ観測等の地球物理的な積層構造の解析に有効なものである。
1.はじめに
アイスレーダは,氷床や氷河の表面から基盤までの厚さの観測や氷体内部の物理構造を探る目的で使用されてきた。アイスレーダ技術は,送信アンテナから氷に向けて鉛直下向きに発射された電波が,氷体内部を伝搬し,反射や散乱を経て受信アンテナに帰還するものである。氷の内部の電波の伝搬にとって,最も重要な点の一つは,電波伝搬媒体が誘電体としての氷結晶であり,周波数に対応した複素誘電率の実数部と虚数部の値によって決定づけられることである。氷結晶は,結晶学的分類では六方晶構造の分子配列をもち,「氷Ih結晶」と呼ばれている。電波の速度や減衰をはじめ,反射・散乱・複屈折などが,氷Ih結晶の誘電特性に起因してひき起こされる。氷Ih結晶の誘電特性として特徴的な点は,結晶構造がC軸を対称軸とした一軸対称性をもつことに起因して,誘電率も一軸対称の異方性をもつ。氷Ih結晶が光の周波数帯で屈折率(誘電率の平方根)に一軸対称性をもつことによって,交差偏光板にかざした氷薄片がさまざまな色を見せることは良く知られている。この現象は複屈折現象によって発生している。いっぽう,氷河や氷床は多結晶の集合構造体である。これを構成する結晶粒は,氷河や氷床で直径約1mm から数cmの大きさであるが,この集合としての方向性(軸性)を示すことにより,結晶に比べて非常に大きな波長である,メガヘルツ帯の電波伝搬の際にも,同様な複屈折現象が発生する。
複屈折現象の観測には,偏波面を相互に平行或いは垂直に保った送・受信アンテナを,鉛直軸を回転軸として,水平面内で360 度回転するような観測を実施する。誘電異方性をもった氷床に入射する直線偏波の電波は,それぞれが直交する通常成分と異常成分に分かれてそれぞれが異なる位相速度をもちつつ伝搬する。反射散乱体では独立に反射散乱し,そして再びそれぞれが異なる位相速度をもちつつ氷床表面に現れる。空気中に現れた2つの成分は楕円偏波として再合成され,それを直線偏波アンテナで受信される。電波は複屈折媒体内を伝搬した結果として,アンテナ回転方位のπ/2を一周期として強弱をもった信号として現れる。
一方,氷床や氷河は,長い年月に降り積もった雪や凝結霜の積層体である。層を構成する結晶は,その堆積時の環境に応じて異なる結晶成長や変形履歴をもつ。したがって,上で述べた多結晶の誘電異方性を持つ氷床を構成する各層位について異なった性質を持っていることが予想される。実際,氷床の内部で発生する電波の反射散乱は,この層毎の多結晶氷としての複素誘電率の差違によって発生する。アイスレーダで観測される氷床内部からの反射エコーの3大原因は,(1)密度変化,(2)酸性度変化または,(3)結晶C軸方位分布の変化であることが知られている。特に(3)のメカニズムは氷床の中層部や深層部で卓越していることが報告されている。これまでの議論から,必然的に反射係数は方位異方性をももつことが知られている。
氷床内部での電波伝搬についても,上記で述べた反射・散乱と同様に,多結晶氷の誘電異方性を考慮するが重要である。氷床は積層構造をもつ複屈折媒体であり,その各層の誘電異方性はそれぞれに微少量だけ異なる。Hargreaves(1977)は,複屈折媒体としての氷床内部のレーダ波伝搬をはじめてモデル化した(非特許文献1参照)。
図30は従来の氷床観測装置の構成を示す。図30において,120は送信機である。121はパルス変調器である。122は電力増幅器1である。123は電力増幅器2である。124はミキサである。125は179MHzの発振器である。
130は受信器である。131は線型増幅器である。132は減衰器である。133は高周波増幅器である。134はミキサである。135はローパスフィルタである。136は発振器である。137は1MHzのフィルタ増幅器である。138は4MHzのフィルタ増幅器である。139は14MHzのフィルタ増幅器である。143はLOG増幅器である。141はタイミングパルス発生器である。142はデジタルオッシロスコープである。140はデータ処理装置であって,受信データをデータ処理するものである。
Hargreaves, N D, 1977: The polarization of radio signals in the radio echo sounding of ice sheets, J. Phys. D: Appl. Phys, 10, 1285-1304。 Maeno, H., S. Fujita, K. Kamiyama, H. Motoyama, T. Furukawa, and S. Uratsuka, 1995: Relation Between Surface Ice Flow and Anisotropic Internal Radio-echoes in The East Queen Maud Land Ice Sheet, Antarctica, Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 9, 76-86.
上記のHargreavesのモデルは,氷床の厚さ全体を一つの均一層として取り扱うという特徴をもっている。これは近似的な取り扱いには適していたが,「積層構造をもつ複屈折媒体」というより現実的なモデルにするには不十分である。しかし,積層構造の複屈折のモデル化は試みられたことがなかった。本願発明は複屈折率をもつ媒体の積層構造を解析する複屈折媒体の積層構造解析方法および構造解析装置,およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的にする。
本発明は,複屈折率をもつ積層媒体の解析には,各単位層の伝搬を記述し,なおかつその積層毎の伝搬の連鎖を示すには,後述する伝搬マトリックスを用いた定式化が有効であることに着目した。一方,近年になって,氷の誘電異方性の正確な値が決定され,積層構造を持ったモデル化が可能となった。これらの条件から,本発明者は,「積層構造をもつ複屈折媒体」の完全モデル化と,氷床内部の電波伝搬シミュレータを開発し,アイスレーダのデータに含有する各層位における氷床内部で発生する結晶方位分布と,氷結晶の統計的性質を知ることを可能にした。
本発明の複屈折率媒体の解析方法は,入力装置と出力装置とCPUとメモリを備え,コンピュータ処理により,積層された複屈折媒体を解析する方法であって,送信電磁波の電界と複屈折積層媒体の電磁波の伝搬に関するパラメータと複屈折媒体を伝搬する電磁波が反射する層における電磁波の散乱に関するパラメータと電磁波の偏向面の複屈折媒体の主軸に対する角度θをパラメータとして保持し,入力した電磁波の主軸に基づく座標成分について複屈折媒体における伝搬特性および反射面における散乱特性に基づいて複屈折媒体を伝搬し,反射面で反射し,複屈折媒体を伝搬してもどってくる電磁波を求め,前記角度θおよび反射面の深さをパラメータとして変更し,前記角度θおよび反射面の深さおよび受信電磁波の関係を出力するようにした。
本発明の複屈折媒体の積層構造解析装置は,入力装置と出力装置とCPUとメモリを備え,コンピュータ処理により,積層された複屈折媒体を解析するものであって,送信電磁波の電界と複屈折積層媒体の電磁波の伝搬に関するパラメータと複屈折媒体を伝搬する電磁波が反射する層における電磁波の散乱に関するパラメータおよび電磁波の偏向面の複屈折媒体の主軸に対する角度θを保持するパラメータ保持手段と,電磁波の主軸に基づく座標成分について複屈折媒体における伝搬特性および反射面における散乱特性に基づいて複屈折媒体を伝搬し,反射面で反射し,複屈折媒体を伝搬してもどる電磁波を求める伝搬特性演算手段と,演算結果を保持する演算保持手段とを備え,前記角度θおよび反射面の深さをパラメータとして変更し,前記角度θおよび反射面の深さおよび受信電磁波の関係を出力する。
本発明の積層された複屈折媒体の積層構造解析するプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は,該プログラムは,送信電磁波の電界と複屈折積層媒体の電磁波の伝搬に関するパラメータと複屈折媒体を伝搬する電磁波が反射する層における電磁波の散乱に関するパラメータと電磁波の偏向面の複屈折媒体の主軸に対する角度θをパラメータとして保持し,入力した電磁波の主軸に基づく座標成分について複屈折媒体における伝搬特性および反射面における散乱特性に基づいて複屈折媒体を伝搬し,反射面で反射し,複屈折媒体を伝搬してもどってくる電磁波を求め,前記角度θおよび反射面の深さをパラメータとして変更し,前記角度θおよび反射面の深さおよび受信電磁波の関係を出力することを特徴とする。
本発明によれば,複屈折率をもつ積層構造の解析を容易に行なうことができる。また,実際の観測結果との解析結果との比較も容易に行なうことが可能である。そのため,実際の観測結果に構造解析を容易に行なうことができ,複屈折媒体の積層構造を容易に把握することができる。
例えば,積層構造をレーダにより解析した場合に応用すると,(1)結晶主軸分布の平面内での異方性分布により生じる複屈折現象を確認できる。また,(2)通常波と異常波の位相が逆転するような積層構造を確認できる。さらに,(3) (2)の現象は,電波の周波数および誘電異方性の割合に依存するので,これを解析することにより積層構造の誘電異方性の強度を解析できる。(4)さらに,一軸対称性の結晶構造をもつ積層構造の場合,散乱行列を考慮して求めた受信電力によりその異方性を確認できる。(5)電気伝導度の異方性が,偏波としての電波伝搬に与える影響は実用上小さいことが確認できる。
さらに,本発明によれば,複屈折率媒体の積層構造の解析結果と実際の観測データに基づく表示を比較することにより,解析に使用するパラメータの入力値を変更することにより解析結果と観測データを近づけ,入力パラメータを基に実際の積層構造を推定することが可能になる。
入力装置により入力された送信電磁波の電界と複屈折積層媒体の電磁波の伝搬に関するパラメータと複屈折媒体を伝搬する電磁波が反射する層における電磁波の散乱に関するパラメータと電磁波の偏向面の複屈折媒体の主軸に対する角度を入力して保持してパラメータがパラメータ保持部に保持される。入力した電磁波の主軸に基づく座標成分について複屈折媒体における伝搬特性および反射面における散乱特性に基づいて複屈折媒体を伝搬し,反射面で反射し,複屈折媒体を伝搬してもどってくる電磁波がコンピュータ処理により求められ,表示出力される。
図1(a),(b),(c),(d)は,本発明の複屈折率をもつ積層体の構造解析方法の説明図である。
図1(a)において,1は複屈折媒体であって,層1〜層Nをもつものである。11は送信波である電磁波を出力する送信アンテナであり,12は複屈折率媒体の距離(深さ)rの面で反射し,積層体を伝搬した電磁波を受信する受信アンテナである。13は基盤であって,複屈折媒体を支持する基盤である。
図1(b)は,送信波の進行方向と偏波面の座標をあらわし,xy平面は複屈折媒体の表面の面であり,r方向に送信波が進行する。送信波は楕円偏向しているが,電界のy成分は小さく,x方向の成分が大きい。
図1(c)は,送信波の座標系と複屈折媒体の主軸を表す座標系との関係を表す。図1(c)において,aは複屈折媒体1の主軸方向であり,bはその垂直方向である。
図1(d)は,送信波の座標系と散乱体の主軸を表す座標系の関係を表す。a’は主軸であり,b’はa’に垂直な軸である。
2.複屈折媒体の積層構造体
2.1.伝搬モデル
以下,アイスレーダにより氷床(南極の氷床等)の層構造を解析する場合を例として説明する。一般にアイスレーダのアンテナのビーム幅は,10数度以上あるため,例えば,氷床底面への散乱・伝搬を議論するには,斜め入射を考慮した2次元または3次元の取り扱いが必要である。しかし,水平積層氷床内部でのレーダ波の散乱・伝搬を議論する場合には,こうした効果は2次的であるため,ここでは,深さ方向(鉛直)に伝搬する1次元のモデルを構築する。鉛直方向のみの伝搬を考慮することから偏波面は,水平面内に限られるため複素誘電率(誘電率実数部および電気伝導度)の異方性も,水平面内のみに限定し,その原因としての氷結晶のC軸対称性を用いC軸平均方位が水平面内でガウス分布するという仮定を置いてモデル化する。
図1(a),(b)のように,アイスレーダアンテナの向きを中心とした(x−y−r)系と,氷床内の誘電率の方向性を元に(a−b−r) 系の2種類の座標系を設定する。r はその座標系にも共通で鉛直下向きとする。いま,氷床に入射されるアンテナからの送信電場を (ExT, EyT) とベクトルで表すことにする。
このベクトル成分は,EXT >EyTを想定し一方の偏波成分のみしか存在しない場合には,直線偏波の特性をもつアンテナの,偏波方向と垂直方向の電場成分とを考えることができるが,一般的には,(EX ,Ey )をそれぞれ複素数として楕円偏波で扱う。
次に,深さrの層において,図1(b)に示す様に,氷床の誘電率が水平面内の2軸(a, b方向と定義する)に主軸をもつような異方性をもつ伝搬路であるものとする。この時,アンテナを基準とした座標系(x,y)と,氷床の異方性誘電率の主軸による座標系(a, b)にθだけ回転しているとする。前にも述べた様に,氷床内の多結晶氷は,複屈折性を持ち,その通常成分と異常成分では,伝搬定数の大きさが異なるため,(a, b)成分には位相差が生じ,その結果,楕円偏波のパラメータが変形を受けることになる。伝搬路Tを伝搬してきた電場は,ある距離rにおいて伝搬路と同じ異方性の主軸による座標系(a',b' )にθだけ回転している散乱体Sで散乱される。散乱された電場は,同じ伝搬路を上向へと進むこととなる。以下に示すマトリックス計算では,距離r毎に計算を行い積算して受信強度を得ている。
2.2. マトリックス
氷床内での電波の伝搬を記述するために用いる電場ベクトルを以下の様にまとめて定義する。
( ExT,EyT) : 氷床直上にあるアンテナからの送信電波の強度(電場)
( Ex ,Ev ) : 深さrにある氷床内で散乱する直前の電波の強度(電場)
( Ex ' ,Ey ' ) : 深さrで散乱した直後の電波の強度(電場)
( E xR ,E yR ) : 氷床直上にあるアンテナで受信される電波の強度(電場)
次に,電場ベクトル成分の定義と,伝搬マトリックスTを用いて,レーダから散乱体への電波の往復過程を説明する。模式的に以下のように表す。
往路: ( EXT, EyT )→(T)→( ExT, EyT)→ (氷床内部散乱体での散乱)
復路: ( EXR,EyR )←(T)←( Ex ' ,Ey ' )← (氷床内部散乱体での散乱)
ただし,ここで使用する矢印は,レーダから電波が発射された後に電波に発生するイベントの順番を意味している。矢印の反転は,散乱体での散乱後に後方散乱する成分に着目することを意味している。いま,氷床表面から深さrの位置まで,電波が伝搬するときの伝搬の様子を記述する量として伝搬マトリックス(Propagation Matrix)T↓を次のように定義する。
ここでdaa, dbbは複屈折媒体内部での複屈折の主軸方向(電波の進行方向に直交する2軸)の成分であり,
と表す。ここで,k0は自由空間での伝搬定数であり,k a と kb は,a,b偏波の伝搬定数, そしてrはレーダからの距離である。k a と kb はさらに,伝搬経路での媒質の誘電率および電気伝導度の複素関数として表すことができる。
となる。ただし,ε0 とμ0 は真空中での誘電率と透磁率,εaa,εbb,σaa,σbbは,それぞれの偏波方向での,比誘電率と電気伝導度成分である。これらによって決定されるk a ,kb の実数部である kareal ,kbreal はそれぞれ位相回転をあらわし kaimaginary,kbimaginaryは減衰を表す。εa とεb とは,複屈折現象の記述にとって最も重要な部分である(誘電率はテンソルである)。氷多結晶の場合には,単位として考える氷の体積中を構成する結晶粒のもつ結晶方位とその誘電異方性をもとに,アンサンブル平均としてのテンソル量を求めることになる。すなわち,氷床氷のもつ結晶ファブリックから決まる。先にも述べた様に,座標系としてのa軸,b軸は,計算の便利のため,氷床の平面内での異方性の主軸に合わせる。
まず,送信アンテナでの電波発信から,散乱体へ入射するときの,偏波成分の変化は伝搬マトリックスを用いて次の様に定式化される。
ここでθ1 はアンテナ偏波面座標と氷床の誘電率テンソルの主軸座標のなす角であり,R( θ1 )は座標回転角である。
氷床内部では一般には多層に積層し,かつ,その伝搬マトリックスTは深さ方向に変化すると考えることができる。この場合には,深さ毎にT1,T2,T3,... TN といった複数のマトリックスに分解して,それぞれに固有の値を取ることで現実的なモデルの生成が可能である。この場合,第i層での電界は次のように表すことができる。
この計算式は,第i層は,第i−1層から出力される電波を入力信号として前述の伝搬式により電波伝搬を計算することを表わす。回転角θは各層で同じであるとしてθ1 とした。
次に,入射に続く散乱体での散乱プロセスは,以下のように表現することができる。
Sは,以下に示す,散乱マトリックスである。θ2 はアンテナ偏波面と散乱マトリックスの主軸のなす角である。
散乱される深さからアンテナまでの電波の伝搬は,一般に下向きの伝搬と特性の異なるマトリックスT↑を用いて次のように表現できる。
反射した電磁波が多層構造を伝搬する式は次のように表すことができる。
ここで,rは散乱面からの距離である。Ti 散乱面から表面に向かって数える。
a’,b’は,先のアンテナの方位や氷床の誘電テンソルの主軸とは本来独立である。しかしながら,現実の氷床においては,氷床の誘電テンソルは,C軸分布の対称性をもった選択的異方性によって発生する。伝搬マトリックスも散乱マトリックスも,共にC軸分布の異方性によって生じるので,通常は平面内での主軸は共通であるとみなせる。また,散乱マトリックスが回転対称である場合,Sb a ’,Sa b ’は等しい。マトリックスの主軸を選択すれば,これらは共にゼロである。Sa a ’とSb b ’の大きさに関しては,氷床内部での電波散乱に異方性がない場合には,Sa a ’とSb b ’がほぼ等しいとみなすことができる。氷の内部反射の三大原因(密度揺らぎ,酸性度揺らぎ,結晶主軸方位揺らぎ)のうち,前者2つに起因する反射にはこれがあてはまる。
前述したように, θ2 はアンテナ偏波面と散乱マトリックスの主軸とのなす角であり, 氷床のような場合には, 通常θ1 とθ2 は一致する。例外的に一致しないケースとしては,結晶主軸分布が,何らかの側方からのねじりの力によって層位毎に微少量主軸方位を変えてしまうようなケースを考えることができる。
本来,多層構造で揺らぎながら徐々に変動する伝搬マトリックスを仮定する場合,実際の電波伝搬において「揺らぎ」は,電波の散乱を発生するが,位相の急激な変化等を発生することはないので,本実施例1で伝搬マトリックスTを一定において近似する。逆に,複数のマトリックスTi 用いて多層化する数層程度のモデル計算でも,伝搬モデルの各要素がどのようなふるまいをするかを実証することが優先される。こうした多層の場合で,それぞれの層で異なる伝搬マトリックスをとる場合にもそれぞれの層での合成となるので,本実施例1では現実の氷床の記述に最も基本的なモデルとして,Tが深さ方向に変化しない単層の場合について説明する。
次に散乱される深さからアンテナまでの電波の伝搬は,一般に下向きの伝搬と特性の異なるマトリックスT↑を用いて以下のように表現できる。
一方,これまで述べてきた様な複屈折の原因を考慮すると,上向きと下向きとは双方性(reciprocity) が成立し,T=T↓=T↑,かつ,θ=θ1 =θ2 として考えても,大きな矛盾を持たない。このとき,
と合成することにより,送信ベクトルから受信ベクトルを求める定式化が可能となる。
2.3 現実に氷床・氷河内部で発生しうる複素誘電率テンソルの範囲の評価
2.3.1 散乱体の異方性
氷Ih結晶が光の周波数帯で屈折率に一軸対称性をもつことによって,交差偏光板にかざした氷薄片がさまざまな色を見せる事は前述した。これは,氷床や氷河に通常発生する応力形状(圧縮,引っ張り,純粋剪断,単純剪断)に対しても,発生する結晶C軸の選択的配向もやはり「一軸対称性」をもつと言える。こういった物理的な応力が発生すると散乱体の構造自体も異方性を持つことが推定できる。散乱体である結晶構造集合体が電波の波長に対して十分な体積散乱を起こす構造であるとすると,散乱体の構造が他の異方性を生じさせる要素にくらべ電波伝搬にどの程度反映するかモデル計算を行う必要性がある。本実施例1では,散乱体の異方性の割合を決めるために,基盤または氷床の内部からの反射強度の異方性が約6 dBから10 dB であったとの報告があるので,計算にはこの値を採用した。
2.3.2 偏波成分の割合
一般的にモデル上では任意の楕円偏波を取り扱う事が可能であるが,ここでは最も単純な場合として,ExT>E yT とする。一般的なアンテナの交差偏波成分の比は,−30dB以上とされている。アイスレーダに用いられる八木アンテナは,この条件を満たすが,より現実的なパラメータとしてアンテナ自体が完全に1方向の偏波成分で無いことやアンテナ近傍に雪上車の筐体等があることを考慮してExTに対してEyTに−25dB偏波成分があるものとした。
2.3.3 誘電率実数部の異方性とそれにより生じる複屈折強度
誘電体中での電波の伝搬速度Ve は,誘電率実数部ε' の関数として次式のように近似できる。
ここで,cは,光の速度である。すなわち,誘電率実数部に異方性をもつ氷床が存在するとすれば伝搬速度の違いによる電界強度の変化が予想される。すなわち,複屈折を生じる結果となることが予想される。実施例1では単層モデルとして南極氷床の鉛直方向(深さ方向)の誘電率実数部の異方性を仮定し,θ方向にはねじれを持たず一定の方位角を保っているとする。現実の氷床の中で発生する複屈折の強度は,水平面内の誘電率テンソル成分の差によって以下のように表現できる。
ここで,φは,正常成分と異常成分の位相差である。fは電波の周波数,c は真空中の電波の速度である。この式は,任意の2つの深度z1とz2間の電波の往復伝搬の間に,位相差がどれだけ出現するかを表した式である。この式により,レーダに使用する電波の周波数が高いほど,φは大きく現れることがわかる。具体例として,上の式に典型的な数字を当てはめてみると,φの具体的範囲がわかる。例えば,氷の誘電率を3.15とし,誘電異方性を0.034という単結晶の値とする。観測周波数は,日本の観測隊が使用をしているVHF帯の179MHzとすると,1,000mの区間の電磁波の往復に対してのφは,22.8πとなる。実際の氷床の内部での誘電異方性は,多結晶内部の伝搬であることから,φはこの1/3程度以下になる。また,もし,レーダの周波数を変更する場合には,φと周波数の比例関係を考慮して見積もる必要がある。
2.3.4 電気伝導度の異方性
一般的に誘電体の電気伝導度は誘電率虚数部と相関があり,減衰係数を示す要素として扱われる。また,減衰係数には,温度依存性がある。しかし,これまでの氷床の誘電率虚数部の研究の中で氷床の水平面内に電気伝導度の異方性が存在することは,証明されていない。加えて,氷がそのようなふるまいをするかどうかは,物理的に証明されていない。しかし,本発明の実施例1のモデルは,電気伝導度の異方性を排除することなく計算可能であるので,本実施例1では,電気伝導度の異方性が20%までの異方性を考慮してどの程度の受信強度に異方性を生じるかについての検討も行った。
図2は本発明のシステム構成の実施例1を示す図である。図2において,21はCPU,22はメモリ,23は各種演算手段であって,メモリにロードされたプログラムを表す。24は入出力インタフェースである。25は入力装置であって,キーボード等である。26はディスプレイである。27はプリンタである。28は外部記録媒体入力装置であって,磁気ディスク,磁気テープの磁気記憶媒体,CDROM,DVD等の光記憶媒体等の記録データを入力するための装置である。30は観測データ記録媒体であって,レーダ装置等により実際に観測した複屈折媒体の観測データを記録するものであり,磁気記録媒体,CDROM等の光記録媒体である。
各種演算手段23において,41は送信波マトリックス生成手段であり,送信波の電界成分のマトリックスを生成するものである。42は伝搬マトリックス生成手段であって送信波および反射波が複屈折媒体中を伝搬する状態を表す伝搬マトリックスを生成する手段である。43は散乱マトリックス生成手段であって,電磁波が反射される面の散乱マトリックスを生成するものである。44は回転マトリックス生成手段であって,送信波のXY座標軸と複屈折誘電体表面の主軸の座標軸(a,b)との座標軸の作る角度に基づく座標回転を表す回転マトリックスを生成するものである。45は受信波マトリックス生成手段である。46は伝搬特性演算手段であって,送信マトリックス,回転マトリックス,散乱マトリックス,伝搬マトリックス等に基づいて複屈折媒体中を伝搬して,受信される電磁波の特性を演算する手段である。
47はその他の演算手段であって,各種図表を生成するための演算手段等である。48は複屈折率強度演算手段である。
図3は本発明の送信波マトリックス生成,伝搬マトリックス生成,散乱マトリックス生成,回転マトリックス生成,受信波マトリックス生成の構成を示す図である。図3において,25は入力装置であって,各種パラメータ(送信波(ET),送信角周波数(ω)等)を入力するものである。50は入力パラメータ保持部であって,入力装置25から入力されたパラメータを保持するものである(メモリ上の領域)。41は送信波マトリックス生成手段であって,送信波のパラメータに基づいて送信波のマトリックス〔ET〕=〔ExT,EyT〕(二行一列の行列であるが,便宜的にこのように表す)の配列を生成するものである。42は伝搬マトリックス生成手段であって,伝搬マトリックスの要素(daa,0,0,dbb)の配列を生成するものである。43は散乱マトリックス生成手段であって,入力パラメータに基づいて散乱マトリックスS=(Saa,Sab,Sba,Sbb)の配列を生成するものである(散乱マトリックスは二行二列の行列であるが,便宜的にこのように表す)。44は回転マトリックス生成手段であって,XY座標軸とab座標軸のなす角θに基づく回転マトリックスR(θ)=(cosθ,−sinθ,sinθ,cosθ),回転マトリックスR(−θ)=(cosθ,sinθ,−sinθ,cosθ)を生成するものである(R(θ),R(−θ)はいずれも二行二列のマトリックスであるが,便宜的にこのように表す)。45は受信波マトリックス生成手段であって,演算で求められた受信波の成分(ExR,EyR)を要素とするマトリックスの配列を生成するものである。
51は送信波マトリックス保持部であって,送信波マトリックス生成手段41の生成した送信マトリックスを保持するものである。52は伝搬マトリックス保持部であって,伝搬マトリックス生成手段42の保持した伝搬マトリックスを保持するものである。53は散乱マトリックス保持部であって,散乱マトリックス生成手段43の生成した散乱マトリックスを保持するものである。54は回転マトリックス保持部であって,回転マトリックス生成手段44の生成した回転マトリックスを保持するものである。55は受信波マトリックス保持手段であって,受信波マトリックス生成手段45の生成した受信波マトリックスを保持するものである。
図4は本発明の伝搬マトリックス要素生成手段の構成である。60は伝搬マトリックス要素生成手段である。61はk演算部であって,伝搬マトリックスの生成に必要な電磁波のa方向の偏向成分,b方向の偏向成分の伝搬定数を演算するものである。50は入力パラメータ保持部である。62はka 演算部であって,入力パラメータ(ε0 ,μ0 ,εa ,σa ,ω)に基づいてka を演算するものである。63はkb 演算部であって,入力パラメータ(ε0 ,μ0 ,εb ,σb ,ω)に基づいてkb を演算するものである。
65は位相回転保持部であって,ka 演算部62とkb 演算部63の演算したka とkb の実部である(kareal ,kbreal )を保持するものである。ka 演算部62とkb 演算部63の演算したka とkb の虚部である(kaimaginary,kbimaginary)を保持するものである。42は伝搬マトリックス生成手段であって,伝搬マトリックス(daa,0,0,dbb)を演算するものである(伝搬マトリックスは二行二列の行列であるが,便宜的にこのように表す)。52は伝搬マトリックス保持部であって,伝搬マトリックス生成手段42の求めた伝搬マトリックス(daa,0,0,dbb)を保持するものである。65は位相回転保持部であって,k演算部61の生成したka とkb の実数部(kareal ,kbreal )を保持するものである。66は減衰率保持部であって,k演算部61の生成したka とkb の虚数部(kaimaginary,kbimaginary)を保持するものである。
図4において,ka 演算部62は,入力パラメータ保持部の保持するパラメータ(ε0 ,μ0 ,εa ,σa ,ω)に基づいて,
によりka を演算し,ka の実部および虚部を求める。また,kb 演算部63は,入力パラメータ保持部の保持する入力パラメータ(ε0 ,μ0 ,εb ,σb ,ω)に基づいて,
を演算し,kb の実部および虚部を求める。求められたka の実部kareal とkb の実部kbreal は位相回転保持部65に保持される。また,求められたka の虚部kaimaginaryとkb の虚部kbimaginaryは減衰率保持部66に保持される。
伝搬マトリックス生成手段42は位相回転保持部65の保持する(kareal ,kbreal )と減衰率保持部66の保持する(kaimaginary,kbimaginary)を入力し,さらにda =exp(−jk0 r+jka r)とdb =exp(−jk0 r+jkb r)およびka =kareal +jkaimaginary,およびkb =kareal +jkbimaginaryに基づいて伝搬マトリックス(daa,0,0,dbb)を求める。伝搬マトリックス(daa,0,0,dbb)は伝搬マトリックス保持部52に保持される。
図5は本発明の実施例の伝搬特性演算するための構成を示す。図5において,25は入力装置であって,演算に必要な各パラメータに設定値(シミュレーションするための具体的な数値)を入力するものである。46は伝搬特性演算手段である。50は入力パラメータ保持部であって,各パラメータに設定された設定値を保持するものである。41は送信波マトリックス生成手段である。42は伝搬マトリックス生成手段である。43は散乱マトリックス生成手段である。44は回転マトリックス生成手段である。45は受信波マトリックス生成手段である。51は送信波マトリックス保持部である。52は伝搬マトリックス保持部である。53は散乱マトリックス保持部である。54は回転マトリックス保持部である。55は受信波マトリックス保持部である。
71は演算結果保持部であって,伝搬特性演算手段46の演算結果を保持するものである。73は受信波出力換算手段であって,マトリックス成分(ExR,EyR)受信電力に換算するものである。80は各種図表生成手段であって,演算結果をもとに表示する各種図表を生成するものである。91は複屈折強度演算部であって,前述の式(11)を演算するものである。
図5の構成の動作を説明する。入力装置25により構造解析に必要な各パラメータに設定する数値を入力する。各パラメータの数値は入力パラメータ保持部に設定される。送信波マトリックス生成手段41は,送信波のマトリックスの要素ExTとEyTに入力された値を設定する。k演算部61において入力パラメータ(ε0 ,μ0 ,εa ,σa ,ω)の入力値に基づいてka を演算し,kb 演算部において入力パラメータ(ε0 ,μ0 ,εb ,σb ,ω)の設定値に基づいてkb を演算する。ka とkb の実部は位相回転保持部65に保持され,虚部は減衰率保持部66に保持される。伝搬マトリックス生成手段42は位相回転保持部65に保持されている位相回転と減衰率保持部66に保持されている減衰率に基づいて伝搬マトリックスの要素(daa,0,0,dbb)の値を演算し,伝搬マトリックスを生成する。散乱マトリックス生成手段は散乱マトリックスの要素(Saa,Sab,Sba,Sbb)に入力された設定値を設定し,散乱マトリックスを生成し,散乱マトリックス保持部43に保持する。回転マトリックス生成部は回転各θの入力値に基づいて,sinθ,cos(θ)を演算し,回転マトリックスR(θ)とR(−θ)を演算し,回転マトリックス要素に設定する。その回転マトリックスを回転マトリックス保持部54に保持される。
伝搬特性演算手段46は,送信波マトリックス保持部51,伝搬マトリックス保持部52,散乱マトリックス保持部53および回転マトリックス保持部54に保持されているそれぞれのマトリックスを入力し,
を演算して受信波の電界成分ExR,EyRを求め,演算結果保持部71に保持する。受信波マトリックス生成手段45は電界成分ExR,EyRを要素とする受信波マトリックスを生成し受信波マトリックス保持部55に保持する。
受信波出力換算手段73は演算結果保持部71に保持されている演算結果の受信電界をもとに,
xR=20logExR (dB) (12)
yR=20logEyR (dB) (13)
を演算し,受信波マトリックス生成手段45はその換算された電力に基づいた受信波マトリックスを生成し,演算結果保持部71に保持する。また,必要ならば,複屈折強度演算部91は,
に従って複屈折強度φを求め,演算結果保持部71に保持する。各種図表生成手段80は出力する形式のグラフを作成し,演算結果出力部82により出力する。
受信波出力換算手段73は受信波の各要素の電界を電力に換算する。各種図表生成手段80は受信電力に関する図表を作成し,演算結果出力部82により作成した図表を表示出力する。
図6は本発明の入力パラメータ保持部の構成を示す。メモリ上に保持される入力パラメータを示す。図6は入力パラメータ群A,入力パラメータ群B,入力パラメータ群Cが保持されている場合を示している。
図7は本発明の演算結果保持部の構成を示す。図7(a)は受信電界保持部の構成を示す。受信電界は入力パラメータ群と角度θ0 ,θ1 ,θ2 ,・・・θn 毎に深さr1 ,r2 ,・・・rn 毎の式(9)の演算結果を保持する。図7(a)ではパラメータ群Aのみに対する受信電界を示しているが,必要に応じて,他のパラメータ群の演算結果を保持することもできる。
図7(b)は正常成分と異常成分の位相差φについての演算式(11)の演算結果を保持する位相差保持部を示している。パラメータ群毎に深さの差毎にφを保持する(図7(b)では深さr1から深さr2での差を示している)。
図8(a)は本発明の送信波マトリックス生成手段のフローチャートである。送信波マトリックスの生成は,まず送信波の電界パラメータ(ExT,EyT)を入力する(S1)。その電界パラメータにおける電界の成分(ExT,EyT)を要素とする送信波マトリックスの配列を生成する(S2)。生成した送信波マトリックスを保持する(S3)。
図8(b)は散乱マトリックス生成手段のフローチャートである。散乱マトリックスのパラメータ(Saa,Sab,Sba,Sbb)を入力する(S1)。散乱マトリックス(Saa,Sab,Sba,Sbb)の要素の配列を生成する(S2)。生成した散乱マトリックスを保持する(S3)。
図9(a)は回転マトリックス生成手段のフローチャートである。回転マトリックスのパラメータθを入力する(S1)。回転マトリックスの要素(cosθ,−sinθ,sinθ,cosθ)を要素とする配列を生成する(S2)。生成した回転マトリックスR(θ,R(−θ)を保持する(S3)。
図9(b)はk演算部のフローチャートである。パラメータ(ε0 ,μ0 ,εa ,σa ,ω)の入力する(S1)。式(3a)によりkareal ,kaimaginaryを求め,位相回転保持部,減衰率保持部に保持する(S2)。パラメータ(ε0 ,μ0 ,εb ,σb ,ω)を入力する(S3)。式(3b)を演算し,てkbreal ,kbimaginaryを求め,位相回転保持部,減衰率保持部に保持する(S4)。
図10は伝搬マトリックス保持部のフローチャートである。伝搬マトリックスの要素(daa, 0,0,dbb)の配列を生成する(S1)。ka (kareal ,kaimaginary)およびka (kbreal ,kbimaginary)を位相回転保持部および減衰率保持部から入力して保持する(S2)。式(2a),式(2b)により伝搬マトリックス要素daaとdbbを求める(S3)。生成した伝搬マトリックス(daa,0,0,dbb)を保持する(S4)。
図11は,本発明の伝搬特性演算手段のフローチャートAである。入力装置により入力された各パラメータの設定値を入力パラメータ保持部に保持し,電界成分の値により,送信波の電界マトリックスの各要素の配列に電界値を設定する(S1)。入力された散乱マトリックスの各要素の設定値を,散乱マトリックス要素の配列に設定する(S2)。角度θに従って,cosθ,sinθを求め,回転マトリックスの各要素の配列に設定する(S3)。k演算部においてka 演算部は,パラメータ(ε0 ,μ0 ,εa ,σa ,ω)の設定値を入力し,ka を演算する(S4)。さらに,計算されたkareal ,kaimaginaryを位相回転保持部,減衰率保持部に保持する(S5)。また,kb 演算部は,パラメータ(ε0 ,μ0 ,εb ,σb ,ω)の設定値を入力し,kb を計算する(S6)。計算されたkbreal ,kbimaginaryを位相回転保持部,減衰率保持部に保持する(S7)。伝搬特性演算部は位相回転保持部に保持されているkareal ,kbreal ,減衰率保持部ち保持されているkaimaginary,kbimaginaryを入力し,伝搬マトリックスの要素daaとdbbを求め,伝搬マトリックス(daa,0,0,dbb)の配列に設定する(S8)。各要素に設定された各マトリックス要素(daaとdbb)に基づいて式(9)により受信波のx座標成分とy座標成分を求め,受信波マトリックスを生成し,保持する(S9)。
図12は本発明の伝搬特性演算手段のフローチャートBであって,図11の伝搬特性演算手段のフローチャートAのステップS9の動作の詳細フローチャートである。図12は深さri を変更することによりそれぞれの深さで反射する受信電界を求めるフローチャートである。
図12のS1において,送信電界(ExT,EyT),角度(θ),深さ(r)の初期設定をする。S2で座標回転角度θi を定める。S3,S4で入力電界(ExTi yTi ),測定する反射面の深さri を定める。S5においてその条件で伝搬式(9)を演算する。S6で演算結果を保持する。S7で伝搬特性の演算処理を終了するか判断して,終了しないなら,送信電界、深さ、角度を入力する。その際それぞれの値を変更するなら,変更した値を入力し,変更しないなら前回の値より,S2以降の処理を繰り返す。入力値に基づき深さri+1 で反射した受信電界を求める。S7で処理を終了するなら伝搬特性演算の処理を終了する。
図13は本発明の実施例2であって,複屈折媒体の伝搬マトリックスが層毎に異なるとして計算する場合の構成を示す。50は入力パラメータ保持部で,層毎に誘電率,電気伝導度等のパラメータを保持する。42は伝搬マトリックス生成手段である。52は伝搬マトリックス保持部であって,層毎に伝搬マトリックスを保持する。521は層1の伝搬マトリックス,522は層2の伝搬マトリックス,523は層Nの伝搬マトリックスである。
入力パラメータ保持部50に保持されている層1パラメータにより伝搬マトリックス生成手段42は層1の伝搬マトリックスを生成し,伝搬マトリックス保持部52に保持する。層2パラメータにより伝搬マトリックス生成手段42は層2の伝搬マトリックスを生成し,伝搬マトリックス保持部53に保持する。層Nパラメータにより伝搬マトリックス生成手段42は層Nの伝搬マトリックスを生成し,伝搬マトリックス保持部52に保持する。
図14は本発明の実施例2の伝搬特性演算のためのシステム構成を示す。図14の構成の動作を説明する。伝搬特性演算手段46において,送信波マトリックス,散乱マトリックス,回転マトリックス,層毎の伝搬マトリックスにより,伝搬特性の演算式A(5−1),演算式B(6),演算式C(8−1)により送信電界に対する受信電界を演算する。伝搬特性演算手段46において,461は演算式A保持部であって,演算式(5−1)を保持するものである。462は演算式B保持部であって,演算式(6)を保持するものである。463は演算式C保持部であって,演算式(8−1)を保持するものである。
711は演算式Aの演算結果を保持する演算式A演算結果保持部である。712は演算式Bの演算結果を保持する演算式B演算結果保持部である。713は演算式Cの演算結果を保持する演算式C演算結果保持部である。81は受信電界保持部であって,演算で求められた受信結果を保持するものである。82は演算結果出力部であって,演算結果を保持するものである。図14においては,図5にある各種図表生成手段80,複屈折強度演算部91,受信波出力換算手段73等は図示を省略されている。
図15は本発明の実施例2の演算式Aの演算のフローチャートであって,下向きの送信波の電界を求めるフローチャートである(層1に入力されて各層を伝搬して反射面で反射するまで伝搬する電磁波の電界を求めるフローチャート)。S1において,初期設定をする。S2において,各種パラメータを設定する。S3において,θの変更をする(前述の説明ではθは各層においてθ1 で一定であるとしたが,本実施例2では各層毎にθ(X軸と主軸の間の角度)を変更できるようにしてある。S4で,層iの伝搬マトリックス,回転マトリックスを求める。S5で層i−1の演算結果を演算式A演算結果保持部から求め,演算式Aの送信電界とする。S6で演算式Aにより層iを伝搬する電界を演算する。S7で層iの演算結果を演算式A保持部に保持する。S8で層Nまで演算したか判定する。層Nまで演算をしていなければS10でi+1をiとして演算対象の層を次の層にし,S3以降の処理を繰り返す。
図16は本発明の実施例2の演算式Bの演算のフローチャートであって,反射面で散乱される電磁波の電界を求めるフローチャートである。S1で初期設定をする。S2で各種パラメータを設定する。S3で散乱マトリックス,回転マトリックスを求める。S4で層N−1の演算結果を演算式A演算結果保持部から入力する。S5で演算結果A保持部から入力した電界を送信電界として演算式B(式(6))の演算をする。S6で演算結果を演算式B保持部に保持する。
図17は本発明の実施例2の演算式Cの演算のフローチャートであって,層Nで反射してから各層を伝搬する電磁波の電界を求めるフローチャートである。層Nから表面に向かって層を数えるものとする。S0において,初期設定をする。S1において,各種パラメータを設定する。S2において,θの変更をする(前述の説明ではθは各層においてθ1 で一定であるとしたが,本実施例2では各層毎にθ(x軸と主軸の間の角度)を変更できるようにしてある。S3で,層Nから数えてi番目の層の伝搬マトリックスを求める。S4で層Nから数えてi−1番目の演算結果を演算式C結果保持部から求め,送信電界とする(反射した後の最初の層の送信電界は演算結果B保持部の値を送信電界とする)。S5で演算式Cを演算する。S6で層iの演算結果Cを保持する。層Nで反射してから層1まで伝搬した電磁波の電界を求めたか判定する。層1まで求まっていなかったらiをi+1としてS2以降の処理を繰り返す。S8で層1まで求まっていたら処理を終了する。
図18は,本発明のシステム構成の実施例3の構成を示す。図18は,パラメータ入力により演算した複屈折積層媒体の解析結果と該観測データに基づく観測データを表示出力し,観測データと本発明の装置による解析結果を比較して入力パラメータを変更し,実際の複屈折積層媒体の積層構造を解析することができるようにしたものである。
図18において,25は入力装置である。46は伝搬特性演算手段である。58は各種マトリックス生成手段であって,入力パラメータをもとに送信波マトリックス,伝搬マトリックス,散乱マトリックス,回転マトリックス,受信波マトリックスを生成するものである。50は入力パラメータ保持部である。71は演算結果保持部である。72は出力データ作成部である。80は各種図表生成手段である。96は観測データ入力装置であって,レーダ等により氷床等の実際の複屈折媒体の層に電磁波を照射して観測した観測データを保持する磁気記録媒体である。97は観測データ保存部であって,実際の観測データを保持するものである。
100は観測データとシミュレーション結果の比較処理であって,オペレータ判断を表す。101は入力パラメータ変更の処理であり,入力装置25により入力パラメータを変更する操作を表す。
図18の構成の動作を説明する。最初にシミュレーションの動作について説明する。入力装置25によりシミュレーションに必要なパラメータを入力する。入力されたパラメータは入力パラメータ保持部50に保持される。各種マトリックス生成手段58は送信波マトリックス,伝搬マトリックス,散乱マトリックス,回転マトリックス,受信波マトリックスを生成する(伝搬マトリックスはk演算部の演算結果をもとにマトリックス要素の配列に演算値が設定され,受信波マトリックスは演算結果がでた時点でマトリックス要素に具体的な値が設定される)。伝搬マトリックス要素生成手段60は回転位相,減衰率を求める。伝搬特性演算手段46は送信波マトリックス,伝搬特性マトリックス,散乱マトリックス,回転マトリックスに基づいて前述の各式(式(5−1),(6),(8−1),式(9)等)の演算をして,受信波の電界x成分,y成分を求め,演算結果保持部71に保持する。出力データ作成部72は受信波を電力に換算し,各種図表生成手段80は,各種図表を生成する。出力装置98は解析結果に基づく各種図表を表示出力する。
次に,観測データの表示方法について説明する。実際の観測で得られた観測データを保持する記録媒体をもとに観測データ入力装置96により観測データを入力する。観測データは入力インタフェース241観測データ保存部97に保持される。出力データ作成部72は観測データを表示する図表を作成する。その図表は出力インタフェース242を介して出力装置98に送られ,出力装置98により観測データが表示される。
オペレータは観測結果の図表の表示と解析結果の表示を比較し,解析結果が観測結果にできるだけ近づくようにパラメータを変更する等の操作をする。入力装置25により変更するパラメータを入力し,そのパラメータに基づくシミュレーションが再度なされ,表示され,実際の観測結果と比較される。
図19は図18の構成の動作のフローチャートである。S0で解析処理(シミュレーション)をするか,観測データの処理をするか選択する。解析による処理をする場合には,解析処理が開始され(S1),パラメータを入力する(S2)。入力されたパラメータが保持される(S3)。さらに,伝搬マトリックス要素が演算され(S4)。各種マトリックス要素が生成され(S5),伝搬特性が演算される(S6)。演算結果を保持する(S7)。出力データを作成し,各種図表を生成する(S8,S9)。
S0で観測データの処理を選択した場合には,観測データに基づく処理が開始される(S11)。観測データを入力し,観測データを保持する(S12,S13)。出力する観測データを選択する(S14)。選択した観測データに基づく各種図表を作成し,出力する(S15,S16)。
オペレータは,パラメータに基づく演算結果と観測データに基づく結果を比較し,パラメータを変更するか判断する(S17,S18)。S19でパラメータを変更する場合には変更パラメータを入力するS2以降の処理を繰り返す。パラメータを変更しないのであればS20で表示する観測データを変更するか判断し,変更するのであれば,保持されている観測データの中から,表示するデータを選択し,S14以降の処理を繰り返す。入力する観測データを変更するのであればS12以降の処理を繰り返す。
3.伝搬モデルによる構造解析の例
3.1 構造解析の条件
以下,本発明の実施例1の解析装置により解析した結果の例を示す。深さrの面で散乱層があるとして,二層の場合について,散乱層の深さおよび,送信電界の主軸に対する方位角を変えながら,様々な誘電異方性の場合に受信電界の強度を求めた。
表1(図28)は,送信波の偏波成分(ExT,EyT)および氷床の持つ電気的な性質をもつ要素(誘電率実数部,電気伝導度,散乱体の構造)に具体的なパラメータを与える場合分けについて示したものである。表1に従って(1)全く異方性の無い場合,(2)誘電率実数部に異方性を持たせた場合について基本的な複屈折計算を行った。さらに,(3)散乱体に異方性を与えた場合,(4)誘電率実数部と散乱体に異方性がある場合,(5)偏波成分の割合を変えた場合,(6)電気伝導度に異方性を持たせた場合について構造解析を行った。表1の計算番号の先頭または2番目数字の1から6までは,上記のそれぞれの場合を意味する。また,末尾のx,yは,受信電界の成分ExR,EyRを意味する。図17,20,21,22は,表1に従って計算を行った代表的な結果を示す。ここでは,本発明者等が実際に観測したアイスレーダで用いられた周波数179MHzでのレスポンスを求めた。各図において縦軸には氷床表面からの深さ,横軸に電波の偏波面を回転させた方位角θを示す。また,受信電力PRは,次式のとおり受信電界強度ERから求めたものを表示した。
xR=20logExR (dB) (12)
yR=20logEyR (dB) (13)
3.2 異方性がない場合
図26は,異方性のない場合に本発明の解析装置う使用して複屈折媒体を解析した結果を示す。1xは,送信波のy成分が0の直線偏波で誘電率実数部,電気伝導度,散乱体の異方性が無い場合である。この時,氷床とアンテナの向きの関数であるθを変化させてもx成分の受信電力は変化しないことが,この計算からも確認される。送信波のxとyの偏波成分に1と0.055(−25dB)の割合を持たせた51xの場合であっても異方性は生じていない。もともとy偏波成分のない1Yにおいてy偏波成分で受信した電界では,受信信号が0,すなわち交差偏波は生じない事が確認できる。いっぽう,51yは,送信波にy成分があるため受信感度があったが,これはもとのy成分によるものである。
図27は,1xで示す1方位角における深さ方向での減衰の様子を示したものである。ここでは,周波数,誘電率実数部を変化させても全く同じ変化を示す。これらの結果から,モデルがこれまでの偏波を考慮しない場合のアイスレーダの受信強度の説明と矛盾しない結果を示している。
3.3 誘電率実数部に異方性がある場合
図20の2X,2Y,52X,52Yは,a方向とb方向の誘電率実数部の値にわずかな異方性すなわち3.15,0.148とした場合の計算である。2Xでは,約750mと約2250mの深さで受信電力が大きく低下する現象(ディップ)が現れた。このディップは,1Xの場合の受信強度に比べ約50dB低い値を示した。また,出現する方位角は,45°,135°,225°であって,90°間隔である。図21は,周波数毎にこのディップがどう出現するか誘電率実数部の値を,取りうる最大の異方性の差0.034を与え計算を行った。ここでは電気伝導度は,一定とした。周波数が高くなるにつれディップの深さ方向の間隔diは,狭くなる。図22は,周波数とディップの間隔の関係について誘電率実数部の差の値を0.008,0.017,0.034と変えて計算を行った結果である。周波数が高くなるほどdiは狭くなり,誘電率の異方性の差が大きいほどdiは狭くなる。図20の2Yは,y面の受信電力PyRの分布を示した。0°,90°,180°,270°に約−300dBの大きな受信電力PyRの低下がおきる。このため他の角度分布がわかりにくいが4極の異方性を持つ構造を持っている。また,約1,500mの深度の全方位角に約−150dBの受信電力の低下が見られる。x偏波成分に対しy偏波成分を−25dB低下させた偏波成分を持たせた場合の異方性計算の結果は,52X,52Yで示す。52X,52Yは,2Xと比較するとディップの電力低下量が変化する。例えば,2xの750m付近のディップでは,約75dBの受信電力の低下が52Xでは約24dBとなる。52Yでは,2Yのような極端な特性に対し両偏波成分が干渉した分布状態を示している。
図22は誘電異方性がある場合に,誘電異方性の強さの異なる場合において,送信電波の周波数とディップdiを生じる深さの関係を求めたものである。
3.4 散乱体に異方性がある場合
図23は散乱マトリックスに異方性がある場合に,本発明の解析装置で解析した結果を示す。散乱マトリックスSの異方性が等方的ではなく一軸対称性であるとして,その設定を表の531X, 531Y, 532X, 532YのようにそれぞれSaaに対してSbbを10dB程度(0.3)と6dB程度(0.5)の低い値の異方性を持つ散乱体を想定して計算した。送信波の偏波成分を表1の様に与えた。図23の531Xは,10dB程度の異方性を持たせた場合であるが,受信電力PxRは,0 °方位と90°方位の受信強度の絶対値が約10dBの異方性として出力された。532Xは,6dB程度の異方性を持たせた場合で,同様に,受信電力PXRは,約6dBの異方性として出力された。531Yは,4極構造に近い分布となっているが,180°,360°の受信電力の低下する角がやや90°,170°に接近している。この影響は,偏波成分の割合と散乱体の異方性の影響である。532Yは,受信電力の低下の影響が和らいだ4極構造である。
3.5 誘電率実数部と散乱体の異方性を組み合わせた場合
ここでは,3.3節と3.4節の計算で示した複屈折の効果と散乱体異方性を組み合わせた。表1の541X, 541Y, 542X, 542Yの様に各要素を設定し計算を行った。送信波も表1の様に偏波成分を与えた。図24の541Xは,やや散乱体の異方性の効果が強く750m付近に複屈折によるディップがあらわれているが,全体的には2極の方位角依存性を持っている。また,図20の2Xに比較してディップの方位角の45°と135°がそれぞれ60°と105°になり,225°と315°が240°と285°となっている。542Xは,図20の2Xにやや近い分布を示しており,複屈折の影響が大きく4極構造を示している。また,541X,542Xは,散乱体の一軸対称性の割合が異なるためディップの方位分布が異なる。541Y,542Yは,531Y,52Yに近い受信電力の分布を示している。
3.6 電気伝導度に異方性を持たせた場合
図25は電気伝導度に異方性のある場合に本発明の解析装置を使用した得た演算結果の例である。電気伝導度の異方性の割合を20%程度,σa に4.8×10-6,σb に4×10-6を与えて計算を行った。誘電率実数部の異方性は無く,偏波成分はxのみ,散乱体の異方性は無く等方的とした。図25の6Xは,0 °の方位の減衰係数が0.0074dB/mで90°方向の減衰係数は0.0088dB/mの2極の異方性を示した。この場合は,減衰量の絶対値は,変化せず減衰係数のみ変化した。6Yは,4極構造を示した。
4.観測データとの比較
実際のアイスレーダアンテナから発射される電波は,アンテナの形状,垂直面および水平面指向特性,偏波特性,アンテナ近傍の状況(雪上車筐体や空気と氷床の境界面)によって,放射される電界に様々な影響を及ばせると考えられる。また,受信電界は,鉛直下向きの電界を受信するものとして計算している。よって,指向性のあるアンテナでは,斜めから散乱して返ってくる成分も合わせて受信することとなる。また,空気と氷床表面からの強力な電波反射により氷床内部からの散乱にも影響を及ぼす。ただし,指向性範囲内の氷床の反射面は,起伏がなく一様に平坦であると考えられるので,本モデルの様な平面波仮定が成り立つものと考える。また,氷床の温度特性の影響や地域性もあり,鉛直下向きに散乱帯等の構造が一定ではなく,水平面に対して深さ毎にねじれたり,急激な異方性の構造変化が生じている事も考えられる。本発明の構造解析装置は,異方性の効果を確認するために基本的な応答を求めたものであるが,アンテナの偏波,氷床の誘電率により現実的なパラメータを設定することにより,現実的な現象を説明することが可能である。
図29は,ドームF(DF80)(緯度77°22’,経度39°36’(南極)の地点)で実測した複屈折によるディップを示す。本発明者が実際に観測したデータに基づくものである(非特許文献2参照)。
偏波観測は,22.5度ずつ16方位について測定し,受信強度の深さ分布を示した。図29(a)Tx||Rxは,送受信アンテナを平行に維持した平行偏波での方位角毎の受信強度を,受信機の検出限界−115dBmを考慮して−70dBmからおよそ−115dBmまでの観測結果を示した。深さにして600mから2000mまでを示した。図29(b)Tx⊥Rxは送受信アンテナを90°偏波面の方位角を変えた交差偏波での方位角毎の受信強度の観測結果を同様に示す。周波数は179MHz,パルス幅は150nsec(実測地)を使用し,受信機感度は1dBm単位で求めた。D1,D2は,受信電力が低下するディップの位置を示す。D1 は,深さ1250mから1500mで方位角22.5°,112.5°,229.5°に分布している。D2は,深さ1000m以下から検出限界まで広く分布し,方位角は67.5°,157.5°,247.5°,337.5°に分布している。
次に伝搬モデルデータと比較する。伝搬モデル計算を行なった結果と実際の偏波観測で同様の結果が示されれば伝搬モデルの妥当性が証明されたことになり,氷床の誘電特性が特定できる。観測結果は平行偏波,交差偏波のいずれにもディップが発生している。このディップの分布の特徴は,図29(a)のD1 の場合,一定の深さにディップが位置し,D1の方位とは45°ずれて出現する。この結果は,D2 は,深さにあまり依存せず,D1の方位とは45°ずれて出現する。この結果は,Hargreves (1977)(非特許文献1参照)が反射率に異方性を生じる場合,90°毎に最小値が出現すると示している事実と同様であり,伝搬モデルで計算した複屈折の効果を示す結果(異方性がある場合の演算結果を示す図17等)とも類似している。これらは,本発明の解析装置の有効性を示すものである。
本発明によれば,複屈折率をもつ積層媒体の構造解析を容易に行なうことができる。特に,氷床の構造解析に応用した場合には,鉛直方向に伝搬する電波が,氷媒体の誘電率実数部の設定,電気伝導度の設定,散乱体の構造にどう反応するかを計算して評価することが可能であり,構造解析により,例えば,以下のようなことを評価する等が可能になる。(1)結晶主軸分布の平面内での異方性により氷床を構成する多結晶のマクロ的な誘電異方性が生じ,複屈折現象を起こすこと。(2)通常波と異常波の位相が逆転する際には,電波が互いにうち消し合い,レーダ波強度が大きく低下する現象が発生すること。(3) (2)の現象は,電波の周波数および誘電異方性の割合に依存し,これを調査すれば氷床の誘電異方性の強度を遠隔探査できる。(4)一軸対称性の結晶構造をもつ氷床の散乱行列を計算することにより一義的に強い受信電力の異方性を示すこと。また,(5)電気伝導度の異方性が偏波としての電波伝搬に与える影響は実用上小さい値であったことが確認された。これらの結果を用いて実際の南極氷床における偏波観測の説明を試み矛盾なく説明できる。
本発明の原理説明図である。 本発明のシステム構成の実施例1を示す図である。 本発明の各種マトリックス生成のための構成の実施例を示す図である。 本発明の伝搬マトリックス要素生成手段の構成を示す図である。 本発明の伝搬特性を求めるための構成を示す図である。 本発明の入力パラメータ保持部の構成を示す図である。 本発明の演算結果保持部の構成を示す図である。 本発明の送信波マトリックス生成手段と散乱マトリックス生成手段のフローチャートを示す図である。 本発明の回転マトリックス生成手段とk演算部のフローチャートを示す図である。 本発明の伝搬マトリックス生成手段のフローチャートを示す図である。 本発明の伝搬特性演算手段のフローチャートAを示す図である。 本発明の伝搬特性演算手段のフローチャートBを示す図である。 本発明の実施例2を示す図である。 本発明の実施例2の伝搬特性演算のためのシステム構成を示す図である。 本発明の実施例2の演算式A演算のフローチャートを示す図である。 本発明の実施例2の演算式B演算のフローチャートを示す図である。 本発明の演算式Cの演算のフローチャートを示す図である。 本発明のシステム構成の実施例2を示す図である。 本発明の実施例3のフローチャートを示す図である。 誘電率実数部に異方性がある場合のシミュレーションの結果を示す図である。 周波数毎にこのディップがどう出現するか誘電率実数部の値を,取りうる最大の異方性の差0.034 を与えたシミュレーションの結果を示す図である。 周波数とディップの間隔の関係について誘電率実数部の差をパラメータとしてシミュレーションを行なった結果を示す図である。 散乱体に異方性がある場合のシミュレーションの結果う示す図である。 誘電率実数部と散乱体に異方性がある場合のシミュレーションの結果を示す図である。 電気伝導度に異方性がある場合のシミュレーションの結果を示す図である。 異方性のない場合のシミュレーションの結果を示す図である。 異方性のない場合に,周波数を変えてある方位角における深さ方向での減衰の様子をシミュレーションした結果を示す図である。 表1を示す図である。 観測データにおける複屈折のディップを示す図である。 従来の観測装置の構成を示す図である。
符号の説明
21:CPU
22:メモリ
23:各種演算手段(メモリ)
24: 入出力インタフェース
25: 入力装置
26:ディスプレイ
27:プリンタ
28:外部記録媒体入力装置
29:シミュレーションプログラム記録媒体 30:観測データ記録媒体
41: 送信波マトリックス生成手段
42:伝搬マトリックス生成手段
43:散乱マトリックス生成手段
44:回転マトリックス生成手段
45:受信波マトリックス生成手段
46:伝搬特性演算手段
47:その他の演算手段
48:複屈折率強度演算手段

Claims (7)

  1. 入力装置と出力装置とCPUとメモリを備え,コンピュータ処理により,積層された複屈折媒体を解析する積層構造解析方法において,
    送信電磁波の電界と複屈折積層媒体の電磁波の伝搬に関するパラメータと複屈折媒体を伝搬する電磁波が反射する層における電磁波の散乱に関するパラメータと電磁波の偏向面の複屈折媒体の主軸に対する角度θをパラメータとして保持し,
    入力した電磁波の主軸に基づく座標成分について複屈折媒体における伝搬特性および反射面における散乱特性に基づいて複屈折媒体を伝搬し,反射面で反射し,複屈折媒体を伝搬してもどる電磁波を求め,前記角度θおよび反射面の深さをパラメータとして変更し,前記角度θおよび反射面の深さおよび受信電磁波の関係を出力することを特徴とする積層構造解析方法。
  2. 入力電磁波の成分を要素とする送信波マトリックスの生成手段と,該電磁波の複屈折媒体中の伝搬特性を表す伝搬マトリックスを生成する手段と,性質の異なる媒体層の界面における散乱マトリックスを生成する手段と,性質の異なる界面で反射して該複屈折媒体を伝搬して受信される電磁波の成分を要素とするマトリックスを生成する手段とを備え,
    送信電磁波の電界を( ExT, EyT) ,深さrで反射して受信される受信電磁波の電界を( ExR,EyR )として,
    各層の伝搬マトリックスをT,回転マトリックスをR(θ),反射面の散乱マトリックスをSとし,
    送信電磁波と受信電磁波の関係を
    で求めることを特徴とする請求項1に記載の積層された積層構造解析方法。
  3. 入力電磁波の成分を要素とする送信波マトリックスの生成手段と,該電磁波の複屈折媒体中の伝搬特性を表す伝搬マトリックスを生成する手段と,性質の異なる媒体層の界面における散乱マトリックスを生成する手段と,性質の異なる界面で反射して該複屈折媒体を伝搬して受信される電磁波の成分を要素とするマトリックスを生成する手段とを備え,
    送信電磁波の電界を( ExT, EyT) ,深さrの層の電界を( Ex ,Ey ) ,深さrで散乱した伝搬する電界を( Ex ' ,E y' ),電磁波の電界を( ExR,EyR )として,
    層iの伝搬マトリックスをTi ,回転マトリックスをR(θi ),i層での反射面の散乱マトリックスをSi とし,
    層iに入射される電界は層i−1から出力される電界であるとし,反射するまでの深さrの層iの電界を
    で求め,
    反射層での電界を
    で求め、
    反射した後の電界を
    求めることを特徴とする請求項1に記載の積層構造解析方法。
  4. 入力装置と出力装置とCPUとメモリを備え,コンピュータ処理により,積層された複屈折媒体を解析する積層構造解析装置において,
    送信電磁波の電界と複屈折積層媒体の電磁波の伝搬に関するパラメータと複屈折媒体を伝搬する電磁波が反射する層における電磁波の散乱に関するパラメータおよび電磁波の偏向面の複屈折媒体の主軸に対する角度θを保持するパラメータ保持手段と,
    電磁波の主軸に基づく座標成分について複屈折媒体における伝搬特性および反射面における散乱特性に基づいて複屈折媒体を伝搬し,反射面で反射し,複屈折媒体を伝搬してもどる電磁波を求める伝搬特性演算手段と,演算結果を保持する演算保持手段とを備え,
    前記角度θおよび反射面の深さをパラメータとして変更し,前記角度θおよび反射面の深さおよび受信電磁波の関係を出力することを特徴とする積層構造解析装置。
  5. 入力電磁波の成分を要素とする送信波マトリックスの生成手段と,該電磁波の複屈折媒体中の伝搬特性を表す伝搬マトリックスを生成する手段と,性質の異なる媒体層の界面における散乱マトリックスを生成する手段と,性質の異なる界面で反射して該複屈折媒体を伝搬して受信される電磁波の成分を要素とするマトリックスを生成する手段とを備え,
    送信電磁波の電界を( ExT, EyT) ,深さrで反射して受信される受信電磁波の電界を( E xR, yR ) として,
    層iの伝搬マトリックスをTi ,回転マトリックスをR(θi ),層iの反射面の散乱マトリックスをSi とし,
    を求めることを特徴とする請求項4に記載の積層構造解析装置。
  6. 入力電磁波の成分を要素とする送信波マトリックスの生成手段と,該電磁波の複屈折媒体中の伝搬特性を表す伝搬マトリックスを生成する手段と,性質の異なる媒体層の界面における散乱マトリックスを生成する手段と,性質の異なる界面で反射して該複屈折媒体を伝搬して受信される電磁波の成分を要素とするマトリックスを生成する手段とを備え,
    送信電磁波の電界を( ExT, EyT) ,深さrの層の電界を( Ex ,Ey ) ,深さrで散乱した伝搬する電界を( Ex ' ,Ey ' ),電磁波の電界を( E xR, yR ) として,
    各層iの伝搬マトリックスをTi ,回転マトリックスをR(θ),反射面の散乱マトリックスをSとし,
    層iに入射される電界は層i−1から出力される電界であるとし,反射するまでの深さrの層iの電界を
    で求め,
    反射層での電界を
    で求め、
    反射した後の電界を
    求めることを特徴とする請求項4に記載の積層構造解析装置。
  7. 積層された複屈折媒体の積層構造解析するプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体において,
    該プログラムは,送信電磁波の電界と複屈折積層媒体の電磁波の伝搬に関するパラメータと複屈折媒体を伝搬する電磁波が反射する層における電磁波の散乱に関するパラメータと電磁波の偏向面の複屈折媒体の主軸に対する角度θをパラメータとして保持し,
    入力した電磁波の主軸に基づく座標成分について複屈折媒体における伝搬特性および反射面における散乱特性に基づいて複屈折媒体を伝搬し,反射面で反射し,複屈折媒体を伝搬してもどる電磁波を求め,前記角度θおよび反射面の深さをパラメータとして変更し,前記角度θおよび反射面の深さおよび受信電磁波の関係を出力することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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