JP3759571B2 - リニアモータ駆動往復機構の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアモータによって往復出力部を往復駆動するリニアモータ駆動往復機構の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷蔵庫の如き冷却装置においては、膨張した冷媒ガスを圧縮する装置として、リニアモータによってシリンダー内でピストンを往復駆動してガスの圧縮を行なうリニアコンプレッサーの開発が進められている(例えば特開平11−324911号参照)。
【0003】
リニアコンプレッサーにおいては、ピストンが上死点に達したときのピストンヘッドとシリンダー上壁の間隙(トップクリアランス)が小さい程、高い体積効率が得られるので、変位センサーによってピストンの位置を検知し、該検知信号に基づいて、トップクリアランスが例えば100μmとなる様、リニアモータのフィードバック制御が行なわれる。
変位センサーとしては例えば、MRセンサー、差動トランス、レーザ変位計等を採用することが可能である。
【0004】
具体的には、リニアモータのフィードバック制御において、ピストンの目標位置に応じて位置指令値が生成され、位置センサーによって検出されたピストンの現在位置と、前記生成された位置指令値とに基づいて、リニアモータに供給する駆動電流の指令値が生成され、生成された電流指令値に応じた駆動電流によってリニアモータが駆動される。
【0005】
又、ピストンを共振周波数で駆動することが効率の点で有利となるため、ピストンの振動の数百サイクル毎に共振周波数を算出し、ピストンの駆動周波数を共振周波数に近づける制御が実行される。
但し、ピストンの駆動周波数が共振周波数に近づくと、ピストンの駆動に必要な電力が減少するため、一時的に過大な駆動電流がリニアモータに供給されることになり、この結果、ピストンが上死点や下死点にて目標位置をオーバーして、シリンダー上壁に衝突する虞れがある。
そこで従来は、ピストンの駆動周波数を共振周波数に近づける際に、電流指令値を算出する際のゲイン(電流ゲイン)を数%減少させて、ピストンのオーバーストロークを回避している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の如くピストンの駆動周波数を共振周波数に近づける際に一律に電流ゲインを数%減少させる制御では、特に現在の駆動周波数と共振周波数の差が小さい場合、ピストンのストロークが本来のストロークよりも小さくなる問題があった。
電流ゲインを減少させることなくピストンのオーバーストロークを回避するためには、ピストンの駆動周波数を共振周波数に近づける際の周波数の最小変更単位を出来るだけ小さく設定することが有効である。これによって、周波数を変更する際のピストンの駆動に必要な電力の変動幅を小さく抑えることが出来るため、オーバーストロークの発生を回避することが出来る。
【0007】
ところが、駆動周波数の最小変更単位は、ピストンの位置指令値を生成する際に用いるサインテーブルのデータ量(分解能)に依存し、サインテーブルのデータ量は、データの格納に利用出来るメモリの容量によって制約されるため、メモリの容量を増大させない限り、周波数の最小変更単位をより小さくすることは出来ない。
【0008】
例えば、サインテーブルには、図10に示す様に、ピストンの振動の4分の1周期分の波形を規定する5000個のデータ(No.0〜No.4999)が書き込まれており、制御周期が450μsecの場合、ピストンの駆動周波数を60Hzに制御するためには、サインテーブルからは540個のデータ取り出し間隔で離散的にデータを取り出す必要がある。この場合、例えば駆動周波数を上げるためにデータ取り出し間隔を最小単位の1だけ増大させて541個とすると、駆動周波数は60.1Hzに上がることになる。即ち、駆動周波数の最小変更単位は0.1Hzとなり、それよりも小さな幅で駆動周波数を変化させることは出来ない。
この様な大きな幅で駆動周波数を変化させると、上述の如くピストンの駆動に必要な電力が一度に大きく変化するため、オーバーストローク発生の可能性が高くなる。
【0009】
そこで本発明の目的は、メモリの容量を現状に維持したままで、駆動周波数の最小変更単位を小さくすることが出来るリニアモータ駆動往復機構の制御装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係るリニアモータ駆動往復機構の制御装置は、
往復出力部の現在位置を検出するための位置検出手段と、
往復出力部に対する位置指令値を生成する位置指令値生成手段と、
検出された現在位置と、生成された位置指令値とに基づいて、リニアモータを制御するモータ制御手段
とを具えている。
【0011】
ここで、前記位置指令値生成手段は、往復出力部の現在の駆動周波数を目標の駆動周波数に向けて変更する過程で、往復出力部の1往復動毎に、現在の駆動周波数と目標の駆動周波数の存在比率を変化させながら、現在の駆動周波数と目標の駆動周波数が混在する合成波形に基づいて、位置指令値を生成するものである。
【0012】
上記本発明の制御装置によれば、図8に示す如く現在の駆動周波数aHz(例えば60.000Hz)を目標の駆動周波数bHz(例えば60.100Hz)に変更する場合、往復出力部の複数回の往復動によって、徐々に駆動周波数の変更を行なう。即ち、現在の駆動周波数を実現している波形では、aHzの波形の存在比率が100%で、bHzの波形の存在比率が0%であるが、これを最終的に、aHzの波形の存在比率が0%で、bHzの波形の存在比率が100%の波形に変化させて、目標の駆動周波数bHzを実現する場合、図示の如く、1往復動毎に、aHzの波形の存在比率を99%、98%、…1%と徐々に減少させる一方、bHzの波形の存在比率を1%、2%、…99%と徐々に増大させる。この様に2つの波形の存在比率を変化させるためには、aHzの波形の一部をbHzの波形の一部で置き換えて、合成波形を生成すればよい。
【0013】
これによって、aHzの波形の存在比率が99%で、bHzの波形の存在比率が1%の場合、この1往復動における周波数は60.001Hzとなる。次に、aHzの波形の存在比率が98%で、bHzの波形の存在比率が2%の場合、この1往復動における周波数は60.002Hzとなる。この様にして、周波数が0.001Hzずつ変化して、最終的に60.100Hzに達するのである。
【0014】
従って、図8の例では、駆動周波数の最小変更単位は0.001Hzとなり、従来の最小変更単位である0.1Hzと比べて、100分の1の小さな値となる。
この様に現在の駆動周波数から目標の駆動周波数に向かって、従来よりも小さな周波数変更単位で徐々に周波数を変更することによって、往復出力部の駆動に必要な電力の変動幅を小さく抑えることが出来るため、オーバーストロークの発生を回避することが出来る。
【0015】
尚、現在の駆動周波数から目標の駆動周波数に向かって徐々に周波数を変更する動作は、当初の目標駆動周波数に達するまで継続することによって、周波数の変更を滑らかに行なうことが出来る。
これに対し、現在の駆動周波数から目標駆動周波数に向かって徐々に周波数を変更する動作は、その途中で、目標駆動周波数の更新によって目標駆動周波数が達成されたときに中止することも可能である。
【0016】
具体的構成において、前記位置指令値生成手段は、
サイン波形を一連のデータ列として表わしたサインテーブルと、
サインテーブルから一定の周期で順次データを離散的に取り出しつつ、取り出したデータに基づいて、往復出力部の位置指令値を作成するデータ処理手段と、往復出力部の現在の駆動周波数を目標の駆動周波数に向けて変更する際、往復出力部の1往復動に必要な複数のデータをサインテーブルから取り出す動作において、現在の駆動周波数を決定している第1のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作から、目標の駆動周波数を達成することが出来る第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作へ向けて、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を徐々に増加させるデータ取り出し制御手段
とを具えている。
【0017】
該具体的構成を具えた制御装置によれば、現在の駆動周波数を決定している第1のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作によって、現在の駆動周波数の波形の存在比率が100%の波形に基づいて位置指令値が作成され、最終的に第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出した場合は、目標の駆動周波数の波形の存在比率が100%の波形に基づいて位置指令値が作成されることになる。又、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を徐々に増加させる過程では、現在の駆動周波数の波形と目標の駆動周波数の波形の存在比率が変化する合成波形に基づいて、位置指令値が作成されることになる。
【0018】
具体的構成において、サインテーブルには、サイン波形の4分の1周期分のデータが規定されており、データ処理手段は、前記4分の1周期分のデータに基づいて、残りの4分の3周期分のデータを導出する。
これによって、サインテーブルを格納するためのメモリの容量が節約される。
【0019】
又、具体的構成において、前記位置指令値生成手段は、データ取り出し制御手段によって設定された第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作に移行するまで、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を増加させる処理を続行する。
これによって、現在の駆動周波数から目標の駆動周波数まで、滑らかな周波数変更を行なうことが出来る。
【0020】
他の具体的構成において、前記位置指令値生成手段は、データ取り出し制御手段によって設定された第1のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作から、目標の駆動周波数を達成することが出来る第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作へ移行する途中で、目標駆動周波数が達成されたとき、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を増加させる処理を中止する。
これによって、周波数変更の途中で目標駆動周波数が変動した場合に、目標駆動周波数が迅速に実現されることになる。
【0021】
更に具体的構成において、データ取り出し制御手段は、第1のデータ取り出し間隔T1で全てのデータを取り出す動作から、第2のデータ取り出し間隔T2によるデータの取り出し回数を徐々に増加させるべく、
サインテーブルに規定されているデータに基づいて導出されるべき1周期分のデータの数をテーブルデータ数Nとして、該テーブルデータ数Nに整数の倍率Oを乗算して、テーブルデータ数拡張値Pを算出する手段と、
第1のデータ取り出し間隔T1に前記倍率Oを乗算して、データ取り出し間隔拡張値Mの初期値を算出すると共に、第2のデータ取り出し間隔T2によるデータの取り出し回数を増加させんとする度に、データ取り出し間隔拡張値Mを単位量だけ変化させて更新する手段と、
第2のデータ取り出し間隔T2によるデータの取り出し回数を増加させんとする度に、データ取り出し間隔拡張値Mだけカウンタ値Qが増大されるカウンタ手段と、
カウンタ手段のカウンタ値Qがテーブルデータ数拡張値P以上の値となったか否かを判断する手段と、
前記判断手段がイエスと判断したとき、カウンタ手段のカウンタ値Qからテーブルデータ数拡張値Pを減算して、カウンタ値Qを変更する手段と、
カウンタ値Qを前記倍率で除算し、切り捨て処理を伴って得られる除算結果をデータ取り出し番号Rとして、サインテーブルから順次データを取り出す手段
とを具えている。
【0022】
上記具体的構成において、カウンタ手段のカウンタ値Qにはその初期値0にサイクル毎にデータ取り出し間隔拡張値Mを加算する処理が繰り返され、これによって、前記仮想のサインテーブルからデータを取り出す際のデータ取り出し番号が得られる。
この過程で、カウンタ値Qがテーブルデータ数拡張値P以上となったときは、カウンタ値Qからテーブルデータ数拡張値が減算されて、サインテーブルから1周期分のデータを繰り返し読み出す際の折り返し処理が行なわれる。
この様にして得られるカウンタ値Qを倍率で除算し、切り捨て処理を伴って得られる除算結果をデータ取り出し番号Rとすることより、実際のサインテーブルからデータを取り出す際のデータ取り出し番号が得られる。ここで、カウンタ値Qの増大に伴ってデータ取り出し番号は一定値ずつ増大することになるが、除算に伴う切り捨て処理で桁上りを生じることによって、データ取り出し番号は前記一定値よりも1だけ大きな値に増大することになる。この桁上りの回数は、データ取り出し間隔拡張値Mの変化に伴って、1サイクル毎に1回ずつ増加する。
従って、前記のデータ取り出し番号に基づいてサインテーブルからデータを取り出す手続きを繰り返すことによって、第1のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作から、第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作へ向けて、1サイクル毎に、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を増加させることが出来る。
【0023】
【発明の効果】
本発明に係るリニアモータ駆動往復機構の制御装置によれば、メモリの容量やCPUの能力を現状に維持したままで、駆動周波数の最小変更単位を小さくすることが出来る。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をリニアコンプレッサに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係るリニアコンプレッサー(1)は、図3に示す如く、円筒状のケーシング(10)の上端部及び下端部の夫々に設けられた一対のシリンダー(11a)(11b)と、シリンダー(11a)(11b)内に夫々嵌挿された一対のピストン(12a)(12b)とを具え、ピストン(12a)(12b)のヘッドとシリンダー(11a)(11b)の上壁の間には、一対の圧縮室(13a)(13b)が形成されている。又、各シリンダー(11a)(11b)には、圧縮室(13a)(13b)内のガス圧に応じて開閉する吸入バルブ(14a)(14b)と吐出バルブ(15a)(15b)が取り付けられている。
【0025】
一対のピストン(12a)(12b)は夫々、1本のロッド(16)の一方の端部及び他方の端部に連結されており、該ロッド(16)は、一対の軸受け(17a)(17b)及びコイルばね(18a)(18b)によって、ケーシング(10)及びシリンダー(11a)(11b)内を往復動自在に支持されている。
【0026】
また、リニアコンプレッサー(1)は、ピストン(12a)(12b)を往復駆動するためのリニアモータ(20)を具えている。該リニアモータ(20)はボイスコイルモータであって、ヨーク部(10a)及び永久磁石(21)を含む固定部と、コイル(23)及び円筒状の支持部材(24)を含む可動部とを具えている。ヨーク部(10a)は、ケーシング(10)の一部を構成している。永久磁石(21)は、ヨーク部(10a)の内周壁に固定されている。
支持部材(24)の一方の端部は、永久磁石(21)と本体胴部(12)外周壁との間の円筒状空間に遊挿され、他方の端部はロッド(16)の中央部に連結されている。コイル(23)は、支持部材(24)の前記一方の端部に取り付けられ、永久磁石(21)に対向している。
【0027】
ロッド(16)の中央に突設したアーム(160)には、N極とS極が一定ピッチで交互に着磁されたマグネット板(42)が固定される一方、ケーシング(10)の内面に形成した突部(100)には、マグネット板(42)に対向して、MR素子(41)が取り付けられ、MR素子(41)及びマグネット板(42)によって変位センサー(4)が構成されている。該変位センサー(4)は、変位に応じたA相及びB相の出力と、ロッド(16)が一対のピストン(12a)(12b)の原点位置に達したときのZ相の出力を有している。
【0028】
上記リニアコンプレッサー(1)は、ピストン(12a)(12b)、ロッド(16)、コイル(23)、及び支持部材(24)の質量、圧縮室(13a)(13b)のガスのばね定数、コイルばね(18)のばね定数等から決まる共振周波数を有しており、該共振周波数は、通常、商用電力の周波数(例えば60Hz)付近に設定される。この共振周波数でリニアモータ(20)を駆動することにより、高い効率にて、上下一対の圧縮室(13a)(13b)内で交互にガスを圧縮することが出来る。
【0029】
図1に示す如く、リニアコンプレッサー(1)には、モータドライバー(3)、制御回路(5)及びセンサー信号処理回路(6)からなる駆動制御装置(2)が接続されている。モータドライバー(3)は、リニアコンプレッサー(1)のリニアモータに駆動電流Iを供給するものである。又、制御回路(5)は、CPU、メモリ等からなるマイクロコンピュータによって構成されており、CPUによる制御周期は150μsecである。
【0030】
リニアコンプレッサー(1)のピストンの変位に応じて変位センサー(4)から出力される正弦波のセンサー信号Sは、センサー信号処理回路(6)に供給されて、方形波に変換された後、該方形波の個数がカウントされ、該カウント値に基づいて、ピストンの変位を表わす位置データPaが作成され、制御回路(5)に供給される。尚、前記カウント値は、変位センサー(4)から得られるZ相の信号に基づいてリセットされ、これによって、位置データPaは、ピストンの原点位置を零点とする変位を表わすことになる。ここで、方形波のカウントは、制御回路(5)に設けたカウンタによって行なう構成も採用可能である。
制御回路(5)は、センサー信号処理回路(6)からの位置データPaに応じて制御信号φcを作成し、該信号をモータドライバー(3)へ出力して、出力電流Iを制御する。
【0031】
図2は、図1に示す制御回路(5)の構成を表わしている。
図示の如く制御回路(5)は、位置指令値生成部(30)、位置・速度制御部(31)、電流指令値生成部(32)、位置・速度検出部(33)、上下死点検出部(34)、電流・速度位相差検出部(35)、電流ゲイン制御部(36)、振幅中立位置制御部(37)、及び周波数制御部(38)から構成されている。
【0032】
位置・速度検出部(33)は、センサー信号処理回路(6)から位置データPaを取り入れて、これを位置現在値Pnowとすると共に、位置現在値Pnowを微分して速度現在値Vnowを求める。
【0033】
上下死点検出部(34)は、位置・速度検出部(33)から得られる一連の位置現在値Pnowに基づいて、ピストン(12a)(12b)の上死点と原点の間の上死点側振幅、及び下死点と原点の間の下死点側振幅を検出する。上死点側振幅及び下死点側振幅の検出は、位置指令Prefの1サイクルが終了する度に、即ち位置指令Prefがゼロクロス点(−→+)を通過する度に行なわれる。
【0034】
電流・速度位相差検出部(35)は、位置・速度検出部(33)で生成された位置現在値Vnowと電流指令値生成部(32)で生成された電流指令値Irefとの位相差を検出する。この位相差は、現在の駆動周波数と共振周波数のずれに応じた値となる。尚、位相差の検出は、位置現在値Pnowの1サイクルが終了する度に、即ち位置現在値Pnowがゼロクロス点(−→+)を通過する度に行なわれる。
【0035】
周波数制御部(38)は、電流・速度位相差検出部(35)によって検出された位相差が予め定められた許容値を越えているかどうかを判断し、越えている場合は位相差がなくなるように、即ち共振周波数が得られる様に、位置指令値生成部(30)で用いられる角周波数ωを補正し、補正後の角周波数ωを目標駆動周波数として位置指令値生成部(30)へ供給する。
尚、目標駆動周波数の達成によって、ピストン(12a)(12b)の駆動に必要な電力は減少するが、後述の如く、電力の変動幅は十分に小さいため、ピストン(12a)(12b)のヘッドがシリンダー(11a)(11b)の上壁に衝突する虞れはない。
【0036】
振幅中立位置制御部(37)は、上下死点検出部(34)で検出された上死点側振幅と下死点側振幅とを比較し、両振幅の差が小さくなるように位置指令値生成部(30)で用いられるシフト量Bを位置指令値Prefの1サイクルが終了する度に制御する。即ち振幅中立位置制御部(37)は、上死点側振幅の方が下死点側振幅よりも大きい場合はシフト量Bを負側(下方向)に補正し、上死点側振幅の方が下死点側振幅よりも小さい場合はシフト量Bを正側(上方向)に補正する。通常、シフト量Bはバルブの非対称性等の装置の特性によりほぼ一定になるため、シフト量Bの1回あたりの制御量は小さな値(例えば1μm)に設定されている。このようにシフト量Bを制御することにより、一対のピストン(12a)(12b)のトップクリアランスを同じ値に精度よく制御することができる。
【0037】
位置指令値生成部(30)は、メモリに格納されたサインテーブルと、振幅Aと、角周波数ωと、シフト量Bと、式Pref=Asinωt+B(正弦関数)とに基づいて位置指令値Prefを生成し、生成した位置指令値Prefを位置・速度制御部(31)に与える。尚、サインテーブルには、図10に示す如く、サイン波形の4分の1周期分に相当する5000個のデータ(No.0〜No.4999)が規定されており、残りの4分の3周期分のデータは、前記4分の1周期分のデータに基づいて導出されるが、以下の説明では、便宜上、1周期分の20000個のデータをサインテーブルから取り出すものとして説明する。
【0038】
位置指令値Prefの生成に際し、位置指令値生成部(30)は、サインテーブルから一定の周期(450μsec)で順次データを離散的に取り出す。このときのデータの取り出し間隔によって、駆動周波数が決まることになる。
そして、駆動周波数を変更するときのデータ取り出し間隔は、周波数制御部(38)から得られる目標駆動周波数(角周波数ω)に基づいて、次の様にして決定される。
即ち、現在の駆動周波数が共振周波数から許容値を越えてずれている場合、共振周波数を実現するべく、ピストンの1往復動に必要な20000個のデータをサインテーブルから取り出す動作において、現在の駆動周波数(例えば60Hz)を決定している第1のデータ取り出し間隔(例えば540)で全てのデータを取り出す動作から、ピストンの1往復動毎に、データの取り出し回数を1回ずつ増加させる。これによって、駆動周波数について最小分解能が達成される。そして、このデータ取り出し間隔でサインテーブルから取り出したデータに基づいて、位置指令値Prefを生成するのである。尚、位置指令値生成部(30)による具体的な位置指令値生成手続きについては後述する。
【0039】
図9は、現在の駆動周波数60.0000Hzから目標の駆動周波数60.1000Hzへ周波数を変更する過程を表わしている。ここで、サインテーブルから1周期分の20000個のデータを順次取り出す動作において、1振動分を全て540のデータ取り出し間隔で行なう動作から、1周期分を全て541のデータ取り出し間隔で行なう動作へ向けて、541のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数が1サイクル毎に1回ずつ増加され、37サイクル目で目標周波数が達成される。例えば、第2サイクルでは、データ取り出し間隔541によるデータの取り出しが1回だけ行なわれ、第3サイクルでは、データ取り出し間隔541によるデータの取り出しが2回行なわれ、更に目標周波数達成直前の第36サイクルでは、541のデータ取り出し間隔によるデータの取り出しが36回行なわれる。この様にして、1サイクル毎に、現在の駆動周波数60.0000Hzと目標の駆動周波数60.1000Hzの存在比率を変化させながら、現在の駆動周波数と目標の駆動周波数が混在する波形に基づいて、位置指令値Prefが生成される。
この結果、駆動周波数について最小分解能0.0027Hzが実現されることになる。
【0040】
図2の位置・速度制御部(31)は、位置指令値生成部(30)で生成された位置指令値Prefと位置・速度検出部(33)で生成された位置現在値Pnowと偏差Pref−Pnowに基づいて速度指令値Vrefを生成し、更に速度指令値Vrefと位置・速度検出部(33)で生成された速度現在値Vnowとの偏差Vref−Vnowに基づいて速度制御値Vcを生成する。
【0041】
電流ゲイン制御部(36)は、上下死点検出部(34)で検出された上死点側振幅と下死点側振幅とを比較し、上死点側振幅及び下死点側振幅のうちのいずれか大きい方を最大振幅現在値Anowとし、この最大振幅現在値Anowが予め定められた最大振幅目標値Arefに一致するように電流指令値生成部(32)で用いられる電流ゲインGiの値をピストン(12a)(12b)の振動の1サイクルごとに制御する。
【0042】
又、電流ゲイン制御部(36)は、ピストン(12a)(12b)の往復動の数百(例えば300)サイクルに1回、電流・速度位相差検出部(35)で検出された位相差が予め定められた許容値を越えているかどうかを判断し、越えている場合は更に、位相差が所定の超過判断基準を越えているかどうかを判断し、越えている場合は、電流指令値生成部(32)で用いられる電流ゲインGiの値を所定値だけ減少させる。尚、位相差が所定の許容値を越えているが、所定の超過判断基準を越えていない場合は、電流ゲインを減少させることなく、位置指令値生成部(30)による最小分解能での周波数変更処理が実行される。
【0043】
電流指令値生成部(32)は、位置・速度制御部(31)で生成された速度制御値Vcと、電流ゲインGiと、式Iref=Gi×Vcとに基づいて電流指令値Irefを生成し、更に電流指令値Irefを制御信号φcに変換してモータドライバー(3)に与える。モータドライバー(3)の出力電流Iの制御は、例えばPWM方式で行なわれる。
【0044】
上記制御回路(5)においては、先ず位置指令値生成部(30)で位置指令値Prefが生成され、位置・速度制御部(31)で速度制御値Vcが生成され、位置・速度制御部(31)で制御信号φcが生成される。モータドライバー(3)からリニアモータ(20)のコイル(23)に電流が供給されると、リニアモータ(20)の可動部が往復運動を開始して、ガスの圧縮が開始される。
【0045】
次に、図4〜図7に示すフローチャートに基づいて、図1及び図2に示す制御回路(5)の具体的な制御手続きを説明する。
具体的制御手続きにおいては、サインテーブルが仮に、実際のデータ数に所定倍率を乗算したデータ数を有しているものとした場合において、この仮想のサインテーブルから順次データを取り出すときのデータ取り出し間隔を算出し、その結果を、実際のサインテーブルから順次データを取り出すときのデータ取り出し間隔に換算するという手続きが採用されている。
【0046】
先ず図4のステップS0では、下記数1に基づいて、データ取り出し間隔拡張値が算出される。
【数1】
【0047】
ここで、テーブルデータ数は、サインテーブルから取り出されるサイン波形1周期分のデータの数であって、本実施例では20000個である。倍率は、周波数についての分解能(微細化率)であって、本実施例の場合は37である。又、位置データ取り出し周期は、CPUの制御周期(サンプリング時間)である150μsecの任意の整数倍、本実施例では、制御周期に後述の第1カウンタの設置値:3を乗算した値:450μsecに設定される。従って、テーブルデータ数拡張値は740000となる。又、現在の駆動周波数を60Hzとすると、データ取り出し間隔拡張値は19980となる。
【0048】
次に、ステップS1では、位置・速度検出部(33)によって位置データPaの読み込みが行なわれ、ステップS2では、位置・速度検出部(33)によって位置現在値Pnow及び速度現在値Vnowが算出される。
ステップS3では、位置・速度制御部(31)によって速度制御が行なわれる。即ち、位置・速度制御部(31)は、速度指令値Vrefと速度現在値Vnowとの偏差に基づいて速度制御値Vcを生成し電流指令値生成部(32)に与える。
【0049】
ステップS4では、電流指令値生成部(32)によって速度制御値Vcと電流ゲインGiの積である電流指令値Irefが生成され、ステップS5において電流指令値生成部(32)から電流指令値Irefに応じた電流指令データ即ち制御信号φcがモータドライバー(3)に出力される。
ステップS6にて、制御回路(5)に含まれる第1カウンタ(図示せず)のカウント値がインクリメント(+1)され、ステップS7において第1カウンタのカウント値が設定値(本実施例では3)に到達したか否かが判断される。
【0050】
ステップS7にて第1カウンタのカウント値が設定値に到達していた場合は、ステップS8に移行し、位置指令値生成部(30)において位置補正量及び周波数設定値に基づいて振幅A及び角周波数ωが生成され、更に、サインテーブルのデータ、振幅A、シフト量B及び角周波数ωに基づいて、位置指令値Pref=Asinωt+Bが生成される。尚、位置指令値Prefの生成において、サインテーブルからデータを取り出すための具体的な手続きについては図7に基づいて後述する。
【0051】
続いて、図4のステップS9では、位置・速度制御部(31)によって位置制御が行なわれる。即ち位置・速度制御部(31)は、位置指令値Prefと位置現在値Pnowの偏差に基づいて速度指令値Vrefを生成する。位置制御が終了した後、ステップS10にて第1カウンタのカウント値がリセットされる。
【0052】
ステップS7において第1カウンタのカウント値が設定値に到達していない場合は、ステップS8〜S10は実行されない。
次に、ステップS11にて位置指令値Prefの1サイクルが終了したか否かが判断される。この判断は、位置現在値が負の値から正の値にゼロクロスしたかどうかの判断に代えることも可能である。
【0053】
ステップS11において位置指令値Prefの1サイクルが終了したと判断した場合はステップS12に移行し、上下死点検出部(34)によって、位置・速度検出部(33)から得られる位置現在値Pnowの最大値及び最小値に基づいて、ピストン(12a)(12b)の上死点側振幅及び下死点側振幅が算出される。
ステップS13において上死点側振幅と下死点側振幅の大小関係が比較され、上死点側振幅の方が下死点側振幅より大きい場合は、ステップS14に移行し、振幅中立位置制御部(37)によってシフト量Bの補正量として負の補正量が設定され、ステップS15では、最大振幅現在値Anowとして上死点側振幅が設定される。
【0054】
ステップS13における大小比較の結果、下死点側振幅の方が上死点側振幅より大きい場合は、ステップS16に移行し、振幅中立位置制御部(37)によってシフト量Bの補正量として正の補正量が設定され、ステップS17では、最大振幅現在値Anowとして下死点側振幅が設定される。
ステップS18において電流ゲイン制御部(36)によって最大振幅現在値Anowが最大振幅目標値Arefに一致するように電流ゲインGiが制御、設定された後、ステップS19に移行し、上下死点検出部(34)において位置現在値Pnowの最大値及び最小値がリセットされる。
【0055】
ステップS11にて位置指令値Prefの1サイクルが終了しなかったと判断した場合は、ステップS12〜S19は実行されない。
次にステップS20では、上下死点検出部(34)において位置現在値Pnowの最大値及び最小値の検出・保持が行なわれる。
【0056】
その後、図5のステップS21に移行し、位置現在値Pnowの1サイクルが終了したか否かが判断される。この判断は、位置現在値が負の値から正の値にゼロクロスしたかどうかの判断に代えることも可能である。
ステップS21にて位置現在値Pnowの1サイクルが終了したと判断された場合は、ステップS22に移行し、電流・速度位相差検出部(35)によって電流指令値Irefと速度現在値Vnowの位相差が検出される。
【0057】
次に、ステップS35では、周波数制御処理フラグFLAGがON(オン)となっているか否かが判断され、ここでノーと判断されたときはステップS36に移行して、第2カウンタ(図示省略)のカウント値をインクリメントし、ステップS37では第2カウンタのカウント値が設定値(300)に到達した否かが判断される。
ステップS37にて第2カウンタのカウント値が設定値に到達したと判断された場合は、ステップS38に移行し、電流指令値Irefと速度現在値Vnowの位相差が許容値以内であるか否かが判断される。
【0058】
ステップS38にて位相差が許容値以内でないと判断されたときは、ステップS39にて周波数処理フラグFLAGをONとした後、ステップS40では、目標周波数が設定される。
更にステップS41では、周波数を目標周波数に向けて最小分解能だけ変更する手続き、具体的には、周波数を増大させるときは前記データ取り出し間隔拡張値に1を加算し、周波数を減少させるときには前記データ取り出し間隔拡張値から1を減算して、データ取り出し間隔拡張値を更新する手続きが実行される。
その後、ステップS42にて、第2カウンタをリセットする。
【0059】
前記ステップS37にてノーと判断されたとき、ステップS38〜S42は実行されない。又、前記ステップS38にてイエスと判断されたときは、ステップS39〜S41は実行されない。
【0060】
前記ステップS35にてイエスと判断されたときは、ステップS43に移行して、現在の駆動周波数が目標周波数に到達したか否かが判断される。ここでノーと判断されたときはステップS44にて周波数を最小分解能だけ変更する手続きが実行され、イエスと判断されたときはステップS45にて周波数制御処理フラグFLAGをOFF(オフ)とした後、ステップS46に移行する。
そして、ステップS46では、リニアコンプレッサーの運転中止等により制御を終了すべきか否かを判断し、イエスと判断されたときは手続きを終了し、ノーと判断されたときは図4のステップS1に戻って、制御を繰り返す。
【0061】
図7は、図4のステップS8で実行される位置指令値生成の際のデータ取り出し手続きであって、前記仮想のサインテーブルから順次データを取り出す場合のデータ取り出し間隔に基づいて、実際のサインテーブルから順次データを取り出す際のデータ取り出し番号を算出する具体的な手続きを表わしている。
【0062】
先ずステップS51にて、第3カウンタのカウント値(第3カウンタ値)にデータ取り出し間隔拡張値を加算して、第3カウンタ値を更新する。この第3カウンタ値によって、前記仮想のサインテーブルからデータを取り出す際のデータ取り出し番号が得られる。
続いて、ステップS52にて第3カウンタ値がテーブルデータ数拡張値以上であるか否かが判断され、ここでノーと判断されたときはステップS54へ移行し、イエスと判断されたときは、ステップS53に移行して、第3カウンタ値からテーブルデータ数拡張値を減算して、第3カウンタ値を更新した後、ステップS54へ移行する。この様に、第3カウンタ値からテーブルデータ数拡張値を減算することによって、サインテーブルから1周期分のデータを繰り返し読み出す際の折り返し処理が行なわれる。
【0063】
ステップS54では、第3カウンタ値を倍率で除算し、切り捨て処理を伴って得られる除算結果をデータ取り出し番号とする。これによって、実際のサインテーブルからデータを取り出す際のデータ取り出し番号が得られることになる。
そして、ステップS55では、算出されたデータ取り出し番号により、サインテーブルからデータを取り出す。尚、4分の1周期分のデータはサインテーブルから直接に取り出すが、残りの4分の3周期のデータは、4分の1周期のデータに基づいて導出する。
【0064】
図7に示すデータ取り出し手続きを繰り返すことによって、第1のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作から、1サイクル毎に、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を増加させることが出来る。
例えば図9に示す例において、前記の如く、テーブルデータ数N=20000、倍率O=37、位置データ取り出し周期=450μsec、テーブルデータ数拡張値P=740000、データ取り出し間隔拡張値M=19980(初期値)の場合、図7のステップS51を経ることによって、第1サイクルにて、第3カウンタのカウンタ値(第3カウンタ値Q)は0から719280まで19980ずつ増大する。
この過程で、データ取り出し番号は、0から19440まで540ずつ増大し、37回の全てのデータの取り出しが、データ取り出し間隔T1=540で行なわれることになる。
【0065】
次に第2サイクルにて、図5のステップS44を経てデータ取り出し間隔拡張値Mが19981となることによって、第3カウンタ値Qは739261となり、次に図7のステップS51を経ることによって、第3カウンタ値Qは一旦、759242となるが、テーブルデータ数拡張値P=740000を越えることとなって、ステップS53を経て19242となる。
第1サイクルから第2サイクルにかけて、データ取り出し番号Rは0から19980まで540ずつ増大した後、前述の如く第3カウンタ値が19242になったとき、データ取り出し番号Rは520となり、サインテーブルを折り返すこととなって、データ取り出し間隔T1=540が維持される。
【0066】
その後、第2サイクルでは、第3カウンタ値Qは19242から718577まで19981ずつ増大する。これによって、データ取り出し番号Rが520から18880まで540ずつ増大した後、第3カウンタ値Qが718577になることによりデータ取り出し番号Rが19421となって、データ取り出し間隔はT2=541に桁上りすることなる。
この様にして、第2サイクルでは、37回のデータ取り出しにおいて、最後の1回だけ、データ取り出し間隔T2=541によるデータ取り出しが行なわれることになる。
【0067】
第2サイクルから第3サイクルにかけて、第3カウンタ値Qは718577から、図7のステップS51を経て738559となり、これよってデータ取り出し番号Rは、19421から19961となって、データ取り出し間隔はT1=540に戻ることなる。
その後、第3サイクルでは、第3カウンタ値Qが、ステップS53を経て738559から18541となった後、ステップS51にてデータ取り出し間隔拡張値M=19982が加算されて、717911まで増大することになる。この過程で、第3カウンタ値Qが338253から358235に変化することによって、データ取り出し番号が9141から9682に変化し、データ取り出し間隔がT2=541に桁上りすることになる。又、最後に第3カウンタ値Qが697929から717911になることによって、データ取り出し番号Rが18862から19403となって、データ取り出し間隔がT2=541に桁上りすることなる。
この様にして、第3サイクルでは、37回のデータ取り出しにおいて、中間と最後の2回だけ、データ取り出し間隔T2=541によるデータ取り出しが行なわれることになる。
【0068】
以後、同様にして、サイクルを重ねる度に、データ取り出し間隔T2=541によるデータ取り出しの回数が増えて、最終的に第37サイクルでは、37回の全てのデータの取り出しが、データ取り出し間隔T2=541で行なわれることになる。
【0069】
上述のサインテーブルからのデータ取出し手続きにおいては、サインテーブルのデータ数が倍率Oを乗算した数(テーブルデータ数拡張値P=740000)だけ存在すると仮定し、この仮想のサインテーブルから順次データを取り出す場合の間隔(データ取り出し間隔拡張値M)をサイクル毎に1ずつ変化させて、データ取り出し番号を第3カウンタ値Qによって表わし、その後、第3カウンタ値Qを倍率Oで除算して、実際のサインテーブルからのデータ取り出し番号に換算する。この際、整数化処理に伴う桁上りを利用して、データ取り出し間隔T2=541によるデータ取り出しを発生させると共に、データ取り出し間隔拡張値Mを変化させることによって、データ取り出し間隔T2=541によるデータの取り出し回数をサイクル毎に1回ずつ増大させているのである。
【0070】
上記手続きによれば、駆動周波数が目標周波数(共振周波数)に到達するまで、上記の例では、60.0000Hzから60.1000Hzまで、最小分解能(0.0027Hz)による滑らかな周波数の変更が行なわれるので、周波数の変更に伴うリニアモータ駆動電力の変動幅は微少となり、この結果、従来の如く電流ゲインを削減することなく、ピストンの衝突を回避することが出来る。
【0071】
図6は、図5の手続きに代えて採用することが出来る他の制御手続きを表わしている。
図6の制御手続きにおいては、上述のステップS21、S22を経た後、ステップS23にて、第2カウンタ(図示省略)のカウント値をインクリメントし、ステップS24において第2カウンタのカウント値が設定値(300)に到達したか否かが判断される。 ステップS24において第2カウンタのカウント値が設定値に到達したと判断された場合は、ステップS25に移行し、電流指令値Irefと速度現在値Vnowの位相差が許容値以内であるか否かが判断される。
ステップS25にて許容値以内でないと判断された場合は、ステップS26に移行し、前記位相差が第1の超過判断基準▲1▼を越えているか否かが判断され、ここでノーと判断されたときは、更にステップS27にて、前記位相差が前記第1の超過判断基準▲1▼よりも小さな第2の超過判断基準▲2▼を越えているか否かが判断される。
【0072】
ステップS27にてノーと判断されたときは、ステップS28に移行して、ピストンの駆動周波数を最小分解能だけ変更するための手続き、具体的には周波数を増大させるときは前記データ取り出し間隔拡張値に1を加算し、周波数を減少させるときには前記データ取り出し間隔拡張値から1を減算して、データ取り出し間隔拡張値を更新する手続きが実行される。
【0073】
次にステップS29において第2カウンタのカウント値がリセットされる。ステップS21にて位置現在値Pnowの1サイクルが終了していないと判断された場合は、ステップS22〜S29は実行されない。ステップS24において第2カウンタのカウント値が設定値に到達していないと判断された場合は、ステップS25〜S29は実行されない。
【0074】
ステップS26にてイエスと判断されたときは、ステップS32に移行して、周波数の変更量を大きな値(例えば0.03Hz)に設定して、周波数の制御・設定を実行した後、更にステップS33にて、電流指令値の振幅ゲインを所定値(例えば5%)だけ削減して、ステップS29に移行する。又、ステップS27にてイエスと判断されたときは、ステップS30に移行して、周波数の変更量を小さな値(例えば0.15Hz)に設定して、周波数の制御・設定を実行した後、ステップS33にて、電流指令値の振幅ゲインを所定値(例えば30%)だけ削減して、ステップS29に移行する。
【0075】
図6の手続きによれば、電流と速度の位相差が許容値以内に収まった時点で、即ち、周波数がほぼ共振周波数となったとき、周波数変更処理は中止されることになる。又、電流と速度の位相差が超過判断基準▲1▼若しくは▲2▼を越えた場合、即ち現在の駆動周波数が共振周波数から大きくずれている場合には、周波数の変更と共に、電流指令値のゲインの削減が行なわれるため、ピストンの衝突が確実に回避される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリニアコンプレッサーの駆動制御装置の構成を表わすブロック図である。
【図2】駆動制御装置を構成する制御回路のブロック図である。
【図3】リニアコンプレッサーの構造を表わす断面図である。
【図4】制御回路の制御手続きの前半を表わすフローチャートである。
【図5】同上手続きの後半を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す手続きに代えて採用されるべき手続きのフローチャートである。
【図7】位置指令値生成のための具体的な手続きを示すフローチャートである。
【図8】本発明における周波数変更の原理を説明する波形図である。
【図9】本発明における周波数変更の具体例を説明する波形図である。
【図10】サインテーブルを示す図表である。
【符号の説明】
(1) リニアコンプレッサー
(2) 駆動制御装置
(3) モータドライバー
(4) 変位センサー
(41) MR素子
(5) 制御回路
(20) リニアモータ
(11a)(11b) シリンダー
(12a)(12b) ピストン
Claims (8)
- リニアモータによって往復出力部を往復駆動するリニアモータ駆動往復機構の制御装置において、
往復出力部の現在位置を検出するための位置検出手段と、
往復出力部に対する位置指令値を生成する位置指令値生成手段と、
検出された現在位置と、生成された位置指令値とに基づいて、リニアモータを制御するモータ制御手段
とを具え、前記位置指令値生成手段は、往復出力部の現在の駆動周波数を目標の駆動周波数に向けて変更する過程で、往復出力部の1往復動毎に、現在の駆動周波数と目標の駆動周波数の存在比率を変化させながら、現在の駆動周波数と目標の駆動周波数が混在する波形に基づいて、位置指令値を生成することを特徴とするリニアモータ駆動往復機構の制御装置。 - 前記位置指令値生成手段は、
サイン波形を一連のデータ列として表わしたサインテーブルと、
サインテーブルから一定の周期で順次データを離散的に取り出しつつ、取り出したデータに基づいて、往復出力部の位置指令値を作成するデータ処理手段と、
往復出力部の現在の駆動周波数を目標の駆動周波数に向けて変更する際、往復出力部の1往復動に必要な複数のデータをサインテーブルから取り出す動作において、現在の駆動周波数を決定している第1のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作から、目標の駆動周波数を達成することが出来る第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作へ向けて、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を徐々に増加させるデータ取り出し制御手段
とを具えている請求項1に記載の制御装置。 - サインテーブルには、サイン波形の4分の1周期分のデータが規定されており、データ処理手段は、前記4分の1周期分のデータに基づいて、残りの4分の3周期分のデータを導出する請求項2に記載の制御装置。
- 前記位置指令値生成手段は、データ取り出し制御手段によって設定された第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作に移行するまで、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を増加させる処理を続行する請求項2又は請求項3に記載の制御装置。
- 前記位置指令値生成手段は、第1のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作から、第2のデータ取り出し間隔で全てのデータを取り出す動作へ移行する途中で、目標駆動周波数が達成されたとき、第2のデータ取り出し間隔によるデータの取り出し回数を増加させる処理を中止する請求項2又は請求項3に記載の制御装置。
- 更に、目標の駆動周波数を決定する周波数制御手段を具え、該周波数制御手段は、電流指令値生成手段から得られる電流指令値の変化と、位置検出手段から得られる往復出力部の現在位置の変化との位相差に基づいて、往復出力部に共振が発生する周波数を算出し、該周波数を目標駆動周波数として設定する請求項2乃至請求項5の何れかに記載の制御装置。
- 更に、前記位相差が所定の超過判断基準を上回っているか否かを判断する手段を具え、上回っていないと判断された場合に前記データ取り出し手段による駆動周波数の変更を実行し、上回っていると判断された場合は、駆動周波数を目標駆動周波数に向けて所定値だけ変更すると共に、電流指令値を作成するためゲインを所定値だけ小さく設定する請求項6に記載の制御装置。
- データ取り出し制御手段は、第1のデータ取り出し間隔T1で全てのデータを取り出す動作から、第2のデータ取り出し間隔T2によるデータの取り出し回数を徐々に増加させるべく、
サインテーブルに規定されているデータに基づいて導出されるべき1周期分のデータの数をテーブルデータ数Nとして、該テーブルデータ数Nに整数の倍率Oを乗算して、テーブルデータ数拡張値Pを算出する手段と、
第1のデータ取り出し間隔T1に前記倍率Oを乗算して、データ取り出し間隔拡張値Mの初期値を算出すると共に、第2のデータ取り出し間隔T2によるデータの取り出し回数を増加させんとする度に、データ取り出し間隔拡張値Mを単位量だけ変化させて更新する手段と、
第2のデータ取り出し間隔T2によるデータの取り出し回数を増加させんとする度に、データ取り出し間隔拡張値Mだけカウンタ値Qが増大されるカウンタ手段と、
カウンタ手段のカウンタ値Qがテーブルデータ数拡張値P以上の値となったか否かを判断する手段と、
前記判断手段がイエスと判断したとき、カウンタ手段のカウンタ値Qからテーブルデータ数拡張値Pを減算して、カウンタ値Qを変更する手段と、
カウンタ値Qを前記倍率で除算し、切り捨て処理を伴って得られる除算結果をデータ取り出し番号Rとして、サインテーブルから順次データを取り出す手段
とを具えている請求項2乃至請求項7の何れかに記載の制御装置。
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