JP3751937B2 - アクチュエータおよびアクチュエータシステム - Google Patents

アクチュエータおよびアクチュエータシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータおよびアクチュエータシステムに関し、更に詳しくは、光波や音波などの電磁波の送信特性や受信特性などを可変できる可変特性素子、例えば、可変焦点ミラーなどの特性を可変するのに好適なアクチュエータおよびアクチュエータシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の可変特性素子として、例えばSi半導体微細加工技術を用いた光学素子である可変焦点ミラーがある。この可変焦点ミラーとしては、例えば、図21に示されるように、単結晶Si基板に異方性エッチングによって得られる非常に薄い円形ダイヤフラム20と対向電極21との間に静電気力を印加し、このときにできる凹面をミラーとして用いるものがある。この可変焦点ミラーでは、印加する静電気力によって円形ダイヤフラム20の曲率を変化させて焦点22を可変するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来例の可変焦点ミラーは、円形のダイヤフラム20の面全体を変形させるものであって、このため、焦点22は、ミラーの中心軸(光軸)23に沿って可変できるだけであって、ミラーの中心軸23とは異なる任意の軸に沿って焦点を可変するといったことはできず、かかる場合には、可変焦点ミラーを移動させて位置合わせを行う必要があり、そのための機構を別途設ける必要がある。
【0004】
また、ダイヤフラム22を部分的に変形させて複数の焦点を同時に形成するといったこともできなかった。
【0005】
このように従来の可変特性素子では、その特性を可変するのに制約があって、容易に特性を可変できない場合があるという難点がある。
【0006】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、可変特性素子などの特性を容易に可変するのに好適なアクチュエータおよびアクチュエータシステムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上述の目的を達成するために、次のように構成している。
【0012】
本発明のアクチュエータは、一方向に沿って移動可能な複数の移動子をアレイ状に並設するとともに、前記移動子を吸着するための電極を有する単一の固定子および前記移動子を吸着するための電極を有する単一の搬送子を、前記移動子に対向するように配設し、前記搬送子には、伸縮動作によって該搬送子を前記一方向に沿って変位させる単一の圧電素子を併設し、前記固定子は、前記複数の移動子を個別に静電引力によって固定位置に吸着保持可能であり、前記搬送子は、前記固定子による吸着保持が解除されている状態で、前記複数の移動子を個別に吸着して前記一方向に沿って搬送可能である。
【0013】
本発明によると、圧電素子の伸縮動作に合わせて搬送子および固定子による移動子の吸着およびその解除を行うことによって、移動子を一方向に沿って正逆方向に移動させることができるので、この移動子に駆動対象を連結して移動を繰り返すことによって、高い精度でかつ十分な移動距離を確保して駆動対象を駆動でき、また、半導体製造技術を用いて小型のアクチュエータを実現できる。さらに、アレイ状に並設された複数の移動子を、単一の固定子、搬送子および圧電素子によって移動させるので、各移動子に対応させて固定子、搬送子および圧電素子を設けるのに比べて構成が簡素化される。
【0014】
本発明の他のアクチュエータは、上下に重ねられる上部基板と下部基板とを備え、前記上部基板には、該上部基板に対して水平方向に移動可能な前記移動子が、支持ばねを介して移動子支持台構造に支持されており、前記下部基板には、前記固定子が備えられるとともに、前記搬送子が、支持ばねを介して搬送子支持台構造に支持されており、前記移動子支持台構造、前記搬送子支持台構造および前記固定子が、機械的に連結されている。
【0015】
本発明によると、二枚の基板を重ねる構成として、これら基板に対して水平方向に移動子を移動させることができる。
【0016】
本発明の更に他のアクチュエータは、一方向に沿って移動可能な移動子と、前記移動子を吸着するための電極を有する固定子と、前記移動子を吸着するための電極を有するとともに、前記一方向に沿って変位可能な搬送子と、伸縮動作によって前記搬送子を変位させる圧電素子とを一枚の基板に備え、前記固定子は、前記移動子を静電引力によって固定位置に吸着保持し、前記搬送子は、前記固定子による吸着保持が解除されている状態で、前記移動子を吸着して前記一方向に沿って搬送するものであり、前記基板には、該基板に対して垂直方向に移動可能な前記移動子が支持ばねを介して移動子支持台構造に支持されるとともに、搬送子が支持ばねを介して搬送子支持台構造に支持されており、前記両支持台構造が、機械的に連結されているアクチュエータ素子であって、複数のアクチュエータ素子をアレイ状に並設してなる。
【0017】
本発明によると、基板に対して垂直方向に移動子を移動させることができるとともに、一枚の基板に集積化させることができる。
【0018】
本発明のアクチュエータシステムは、駆動対象面を駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備え、前記アクチュエータは、前記駆動対象面の裏面側に分散配置されて該裏面側に連結されるとともに、アレイ状に並設され一方向に沿って移動可能な複数の移動子と、前記各移動子を固定位置に保持する単一の固定子と、前記固定子による保持が解除されている状態で、前記各移動子を保持して前記一方向に沿って搬送する単一の搬送子と、伸縮動作によって前記搬送子を前記一方向に沿って変位させる単一の圧電素子とを有し、前記制御手段は、前記各移動子の移動を制御して前記駆動対象面を能動曲面としてその形状を変形させるものである。
【0019】
本発明によると、駆動対象面の裏面側に連結されている複数の移動子の移動を、制御手段によって制御して駆動対象面を能動曲面としてその形状を変形させることよって、所望の曲面を近似的に形成できることになり、例えば、能動曲面を送信面あるいは受信面とすることにより、電磁波の送信特性や受信特性などを容易に可変できることになる。
【0020】
本発明の他のアクチュエータシステムは、駆動対象面を駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動を制御する複数の制御手段とを備え、前記アクチュエータは、前記駆動対象面の裏面側に分散配置されて該裏面側に連結されるとともに、アレイ状に並設され一方向に沿って移動可能な複数の移動子と、前記各移動子を固定位置に保持する単一の固定子と、前記固定子による保持が解除されている状態で、前記各移動子を保持して前記一方向に沿って搬送する単一の搬送子と、伸縮動作によって前記搬送子を前記一方向に沿って変位させる単一の圧電素子とを有し、前記各制御手段は、他の制御手段と情報通信を行うとともに、対応する移動子の移動を制御して前記駆動対象面を能動曲面としてその形状を変形させるものである。
【0021】
本発明によると、複数の各制御手段が他の制御手段と情報通信を行って対応する各移動子の移動を制御する、いわゆる自律分散型制御を行うので、単一の制御手段で全ての移動子を制御する中央集中型制御に比べて、外部と素子との間の配線数および通信量の低減を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係るアクチュエータシステムを備える光学装置1の概略構成図である。
【0024】
この光学装置1は、光源2と、ビームエクスパンダ14と、ビームスプリッタ3と、本発明に係るアクチュエータシステム4とを備えており、このアクチュエータシステム4は、後述のように可変特性素子としての可変焦点ミラー5を駆動してその反射面を能動曲面5aとして形状を任意に変形させることによって、焦点6の位置を三次元的に変化させることができるとともに、複数の焦点を形成できるものである。
【0025】
図2は、この可変焦点ミラー5の反射面である能動曲面5aの形状制御の原理を示す説明図である。
【0026】
可変焦点ミラー5は、例えば、シリコンゴムなどの柔軟性有機膜に、アルミニウムなどの金属膜を蒸着等によって形成して反射面である能動曲面5aとするものであって、この能動曲面5aを、複数の領域、例えば矩形領域に仮想的に分割し、この矩形領域の各頂点位置であって、能動曲面5aの裏面側に、後述するリニアアクチュエータ7を二次元方向にアレイ状に配設したものである。
【0027】
各リニアアクチュエータ7は、その一端が能動曲面5aの裏面側の柔軟性有機膜の頂点位置に接着剤などを用いて接合されており、この頂点位置を制御点15として、図2の部分拡大図の矢符Aで示されるように、変形前の能動曲面5aに対して垂直方向にリニアアクチュエータ7が変位することによって能動曲面5aの形状を変形させるものであり、例えば、各リニアアクチュエータ7が、図3に示されるように下方へ所要量変位することによって、能動曲面5aである反射面を凹状に変形することができる。リニアアクチュエータ7は、例えば、マイクロマシン技術を用いて精密小型に製作されるものである。
【0028】
なお、能動曲面5aを、より滑らかに変形させるために、上述の柔軟性有機膜の剛性を制御してもよい。すなわち、柔軟性有機膜の裏面に、例えば、切り込みパターンを形成するなどして制御点15と制御点15との間を柔軟性有機膜が直線的に張る(あるいは垂れる)のではなく、自然と曲面になる(フィッティング)ようにしてもよい。
【0029】
能動曲面5aの仮想的な分割方法は、種々の形態が考えられるが、例えば、図4(a),(b)に示される正方形のマトリックスパターンや同図(c)に示されるハニカムパターンあるいは同心円状のパターンなどがある。
【0030】
また、図5(a)に示されるように、菱形の分割パターンの各頂点位置を制御点15とすることもでき、この構成は、同図(b)に示されるように、ハニカムパターンの各頂点位置および各ハニカムの中央位置を制御点15とする構成として把握することもできる。
【0031】
このように能動曲面5aの仮想的な分割の形態およびリニアアクチュエータ7に連結する制御点15の位置も種々の形態をとることができるが、より細かな仮想分割領域として多数の制御点15を設けることによって、能動曲面5aを所望の曲面により近似した滑らかな曲面に変形させることができる。
【0032】
次に、この実施の形態のリニアアクチュエータの構成について、図6に基づいて説明する。
【0033】
このリニアアクチュエータ7は、アレイ状に並設された複数の移動子8と、これら移動子8の下方に対向配置されて移動子8を搬送する搬送子9と、これら移動子8の下方に対向配置された固定子10と、矢符A方向に沿う伸縮動作によって搬送子9を変位させるPZTなどの積層型圧電素子11とを備えており、半導体製造技術を用いて小型で精密に製作される。
【0034】
なお、以下の図面においては、移動子8をS、搬送子をCS1、固定子をCS2および積層型圧電素子をPZTとしてそれぞれ示している。
【0035】
各移動子8の固定子10側の端8cは、能動曲面5aの制御点15にそれぞれ接続されて能動曲面5aに垂直な矢符A方向に沿ってそれぞれ移動するものである。上述の図2においては、能動曲面5aの制御点15にリニアアクチュエータ7が連結されるとして原理を説明したけれども、この実施の形態では、具体的には、リニアアクチュエータ7の複数の各移動子8が、各制御点15に接続されるものである。
【0036】
複数の各移動子8は、図7に示されるように、下面に絶縁層8aが形成されるとともに、その上に導電層8bが形成されており、能動曲面5aに垂直な矢符A方向に移動可能に図示しない支持ばねによって、例えば左右の両面それぞれ2箇所で支持されている。この移動子8の一端8cが、能動曲面5aの裏面側に連結されており、移動子8の矢符A方向の移動によって能動曲面5aが、該能動曲面5aに垂直方向に変形するものである。支持ばねは、移動子8の動作を一直線方向に制約し、初期位置への復帰を可能とするものである。また、移動子8の支持ばねとして、能動曲面を利用することもできる。これによって、アクチュエータシステムにおける支持ばねの占有面積を減らすことができるので、ダウンサイジングを図ることが可能となる。
【0037】
積層型圧電素子11は、一端が固定されるとともに、他端が、搬送子9に連結されており、能動曲面5aに垂直な矢符A方向に伸縮動作を行うものである。搬送子9は、移動子8に対向する上面に、該移動子8を静電引力によって吸着するための吸着用電極9aを有しており、この吸着用電極9aに移動子8を吸着して積層型圧電素子11の変位に応じて矢符A方向に移動子8を搬送するものである。固定子10は、移動子8に対向する上面に、該移動子8を静電引力によって吸着して保持する吸着用電極10aを有しており、固定位置に設けられている。
【0038】
このリニアアクチュエータ7は、図8に示される制御信号によってその駆動が制御されるものである。積層型圧電素子11は、図8(a)に示される制御信号によって伸縮動作を繰り返すものである。以下、能動曲面5aに連結される移動子8の移動方向に応じて説明する。
【0039】
(i)移動子8を正方向(図7の左方向)に移動させる場合には、搬送子(CS1)9には、積層型圧電素子11の伸長動作に同期して移動子8を吸着するための電圧を図8(b)に示されるように印加する一方、固定子(CS2)10は、移動子8を吸着しないように図8(c)に示されるように0電位とされ、移動子8も図8(f)に示されるように0電位とされる。
【0040】
これによって、移動子8は、図9(a),(b)に示されるように積層型圧電素子11の伸長動作によって正方向へ変位する搬送子9に吸着されて正方向へ移動する。
【0041】
積層型圧電素子11の伸長動作が終了すると、移動子8が元の位置にもどらないように、搬送子9には、図8(b)に示されるように電圧の印加を止めて移動子8の吸着を解除する一方、固定子10には、図8(c)に示されるように積層型圧電素子の縮小動作に同期して移動子8を吸着して固定するように電圧を印加するものである。これによって、移動子8は、図9(c),(d)に示されるように、固定子10に吸着保持され、搬送子9は、積層型圧電素子11の縮小動作によって負(逆)方向へ変位する。
【0042】
以上の動作を繰り返すことによって、積層型圧電素子11の伸長動作の度に、移動子8が正方向に順次移動することになる。
【0043】
このようにして積層型圧電素子11によって高い精度で移動子8を変位させることができるとともに、繰り返し動作によって十分な移動距離を確保できる。
【0044】
(ii)移動子8を負方向(図7の右方向)に移動させる場合には、搬送子9には、積層型圧電素子11の縮小動作に同期して移動子8を吸着するための電圧を図8(d)に示されるように印加する一方、固定子10は、移動子8を吸着しないように図8(e)に示されるように0電位とされ、移動子8も図8(f)に示されるように0電位とされる。これによって、移動子8は、積層型圧電素子11の縮小動作によって負方向へ変位する搬送子9に吸着されて負方向へ移動する。
【0045】
積層型圧電素子11の縮小動作が終了すると、移動子8が元の位置にもどらないように、搬送子9には、図8(d)に示されるように電圧の印加を止めて移動子8の吸着を解除する一方、固定子10には、図8(e)に示されるように積層型圧電素子11の伸長動作に同期して移動子8を吸着して固定するように電圧を印加するものである。
【0046】
以上の動作を繰り返すことによって、積層型圧電素子11の縮小動作の度に、移動子8が負方向に順次移動することになる。
【0047】
(i)(ii)のように移動子8の電位を0にしておくことによって、正方向または負方向に移動子8を移動させることができるのであるが、この実施の形態では、上述の図6に示されるように、搬送子9、固定子10および積層型圧電素子11は、一つであるのに対して、移動子8は、複数備えられており、これら複数の移動子8の内、固定位置に保持しておきたい移動子8に対しては、図8(g)あるいは図8(h)に示される電圧を印加するものである。
【0048】
すなわち、搬送子9および固定子10が、移動子8を正方向に移動させる動作を行っている場合には、図8(g)に示されるように搬送子9に印加される電圧と同じ電圧を印加して搬送子9には、吸着されず、固定位置の固定子10に吸着保持されるようにすればよく、また、搬送子9および固定子10が、移動子8を負方向に移動させる動作を行っている場合には、図8(h)に示されるように搬送子9に印加される電圧と同じ電圧を印加して搬送子9には、吸着されず、固定位置の固定子10に吸着保持されるようにすればよい。
【0049】
このように搬送子9、固定子10および移動子8に印加する電圧を制御することによって、複数の移動子8の内所望の移動子8のみを正方向あるいは負方向に個別に移動させることができ、これによって、能動曲面5aの所望の制御点15を、対応する移動子8を移動させることによって該能動曲面5aに垂直方向に変位させることができ、これによって、能動曲面5aを変形することができる。
【0050】
なお、制御信号は、移動子8の搬送子9および固定子10に対する受け渡しを円滑に行えるように、図10に示されるように、部分的に重複させた信号とするとともに、受け渡し期間中は、積層型圧電素子11の動作を停止させている。なお、図10(a)〜(h)は、図8(a)〜(h)にそれぞれ対応している。
【0052】
この実施の形態では、移動子8を0電位にし、搬送子9、固定子10に対して、正方向または負方向に対応する電圧を印加して移動子8を正方向または負方向に移動させたけれども、本発明の他の実施の形態として、例えば図11および図12に示されるように、搬送子9、固定子10に対して、各図(b),(c)に示されるように正方向に対応する電圧を印加し、各図(d),(e)に示されるように移動子8を0電位にするか、あるいは、移動子8に電圧を印加することによって、移動子8を正方向または負方向に移動させるようにしてもよい。
【0053】
以上の動作を行うリニアアクチュエータ7は、能動曲面5aを、多数の制御点15で形状制御するために、図13に示されるように、二次元方向にアレイ状に複数配設される。
【0054】
この実施の形態では、Si半導体微細加工技術を用いることにより、一つの移動子8が、能動曲面5aを占有する面積は、例えば、1mm2以下であり、移動子8の動作範囲は、該移動子8を支持する支持ばねの設計仕様によって決定されるが、例えば、0.5mm程度である。また、積層型圧電素子11の精度は、0.1μm以下である。
【0055】
次に、以上のようなリニアアクチュエータ7による能動曲面5aの形状制御について、図14を参照して放物面(回転二次曲面)を例にとって説明する。
【0056】
同図(a)は、能動曲面の形状制御によって形成される放物面を示し、同図(b)はxz平面における放物線を示し、同図(c)は能動曲面の制御点15の位置を示す平面図である。
【0057】
この図14においては、xy平面が、変形のない状態の反射面である能動曲面5aに対応し、z軸が能動曲面5aに垂直な方向に対応している。
【0058】
この例では、放物面の焦点6の位置のx,y,z座標を(0,0,f)としており、中心の制御点15のx,y座標、すなわち、焦点6を通る法線がxy平面と交わる点のx,y座標は、能動曲面5aのほぼ中心位置(0,0)である。この放物面は、xz平面については、放物線z=4f・x2で示され、yz平面については、z=4f・y2で示される。
【0059】
中心の制御点15から距離dずつ順次離れている周辺の各制御点15は、中心の制御点15からの距離Dに応じて、放物線の式Z=4fD2としてZ座標が決定される。すなわち、同図(b),(c)に示されるように、「0」が付されている中心の制御点15が決定されると、それから距離dずつ離れた「2」「3」「4」等が付された各制御点15の変位量がそれぞれ決定されることになる。したがって、各制御点15に対応する移動子8を、決定された変位量だけ正方向に移動させることによって、能動曲面5aを、放物面に近似して変形できることになる。
【0060】
なお、この図14(c)においては、能動曲面5aを、仮想的にハニカムパターンに分割し、その頂点位置およびハニカムの中心を制御点15とした場合の例を示している。
【0061】
この例では、焦点6は、能動曲面5aのほぼ中央のz軸上にあったけれども、図15(a)に示されるように、z軸からずれた位置にあってもよく、また、図15(b)に示されるように複数の焦点6を形成するように能動曲面5aを変形させてもよい。この実施の形態では、焦点6を、三次元の任意の位置にすることができる。
【0062】
本発明の能動曲面5aは、放物面に限らず、半球面やその他の種々の曲面に近似して変形できるのは勿論である。
【0063】
図16は、この実施の形態のアクチュエータシステム4の概略構成図であり、このアクチュエータシステム4は、可変焦点ミラー5の反射面である能動曲面5aの裏面側に二次元方向にアレイ状に配設された多数のリニアアクチュエータ7と、このリニアアクチュエータ7の上述の積層型圧電素子11、搬送子9、固定子10および移動子8を制御する制御手段としてのCPU12とを備えている。
【0064】
能動曲面5aの各制御点には、予めアドレスが割り付けられており、CPU12は、図示しない入力手段から焦点位置が入力されると、その焦点位置になるように中心の制御点を決定するとともに、各制御点の変位量を上述のようにして算出してリニアアクチュエータ7の対応する移動子8の移動制御をアドレス回路16,17を介して行うことにより、能動曲面5aを所望の曲面に近似して変形させるものである。すなわち、単一のCPU12によってすべてのリニアアクチュエータ7を制御する中央集中型制御である。
【0065】
なお、本発明の他の実施の形態として、図17に示されるように制御手段としてのCPU13をリニアアクチュエータ7の各移動子8に対応させて、すなわち、各制御点に対応させて多数アレイ状に配置し、各CPU13間で情報通信を行える構成とし、各CPU13がリニアアクチュエータ7の対応する移動子8を個別に制御する自律分散型制御としてもよい。
【0066】
この自律分散制御方式では、例えば、中心制御点に対応するCPU13に焦点距離のデータを与えることにより、中心制御点に対応するCPU13は、隣接するCPU13に対して、中心制御点からの距離と焦点距離のデータを与え、隣接する各CPU13は、与えられた情報から対応する移動子8の変位量を上述のように算出して移動子8を移動させる一方、さらに、隣接するCPU13に対して、中心制御点からの距離と焦点距離のデータを与えるものである。このようにして中心制御点から順次その周囲のCPU13に、中心制御点からの距離と焦点距離のデータを与えることにより、各CPU13は、与えられたデータから移動子8の変位量を算出して移動子8を移動させるものである。
【0067】
この自律分散型制御によれば、各CPU13を一つの基板に集積することによって、中央集中型制御に比べて、外部と素子との間の配線数および通信量の低減を図ることができる。なお、各CPU13は、最初に受けたデータのみを有効なデータとして動作するものである。
【0068】
上述の実施の形態では、単一のCPU12あるいは各制御点に個別的に対応する多数のCPU13によって、リニアアクチュエータ7を制御したけれども、本発明の他の実施の形態として、複数の制御点毎にCPUを設け、各CPUが複数の制御点をそれぞれ制御するようにしてもよい。
【0069】
次に、この実施の形態のリニアアクチュエータ7のより詳細な構成を図18に示す。同図(a)は、上部構造の平面図であり、同図(b)は、その下の下部構造の平面図であり、同図(c)は側面図であって、上述の図7に対応する図である。
【0070】
基板上水平方向に動作する移動子8アレイの上部基板を、固定子10、搬送子9等の駆動構造の下部基板に重ねることによって構成されるものであり、上部基板の移動子8は、移動子支持台構造30に支持ばね31で支持されており、下部基板の搬送子9は、搬送子支持台構造32に支持ばね33で支持されており、積層型圧電素子11は、積層型圧電素子固定台34に固定されている。移動子支持台構造30、搬送子支持台構造32、固定子10および積層型圧電素子11は、電気的には絶縁されているが、機械的には連結されている。
【0071】
図19は、本発明の他の実施形態のリニアアクチュエータの構成図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b),(c)は、側面図である。上述の実施の形態では、移動子8は、基板に水平方向に移動する構成であったのに対して、この実施の形態では、移動子8は、基板に垂直方向に移動するものである。
【0072】
移動子8は、移動子支持台構造30に支持ばね31で支持されており、搬送子9は、搬送子支持台構造32に支持ばね33で支持されており、積層型圧電素子11の伸縮動作は、動作伝達板35を介して搬送子9に伝達される。移動子支持台構造30、搬送子支持台構造32、固定子10および積層型圧電素子11は、電気的には絶縁されているが、機械的には連結されている。
【0073】
このアクチュエータでは、水平型と異なり、一枚の基板に移動子構造と駆動構造とを集積化することができる。移動子の動作方向は、基板垂直方向(厚み方向)である。
【0074】
この図19のリニアアクチュエータのアレイ構成の一例を、図20に示す。この図20は、素子を8×8のアレイ状に配置したものであり、このような多数のアクチュエータを一枚の基板に集積化することが可能であり、また、二次元配列になっているので、水平型のようにスタック化する必要がない。
【0075】
なお、搬送子9は、共通の積層型圧電素子11に動作伝達板35を介して連結されており、また、固定子10も先端が各移動子8に個別的に対応するように枝分かれして構成されているが、根元と共通となっており、単一の搬送子9、単一の固定子10および単一の積層型圧電素子11によって多数の移動子8を移動させるものである。
【0076】
以上のようにして本発明のアクチュエータシステムを用いた可変焦点ミラー5は、能動曲面5aの形状制御によって、三次元の任意の位置に焦点を形成することができる。また、複数の焦点を同時に形成することができる。
【0077】
したがって、例えば、三次元物体を異なる焦点深度で撮像したり、複数の焦点を同時に形成して撮像するデバイスとして好適に利用できる。
【0078】
また、CD、DVD共用の読み出し光学系の焦点深度調整用デバイスとして用いることもできる。
【0079】
さらに、光が物質に及ぼす放射圧を利用したレーザーマニュピレーションに適用することもできる。レーザーマニュピレーションでは、微粒子を焦点に引き寄せて焦点の移動によって微粒子を非接触で移動させることができるものであり、複数の焦点を同時に形成できる本発明の可変焦点ミラーを用いることにより、例えば、二つの焦点に引き寄せられた二つの細胞を接近させて一つにする細胞融合を行うといったことも可能となる。
【0080】
媒質中を伝播する光は、媒質の不均一性や時間的変動によって位相歪を生じるが、かかる位相歪を補正する分離鏡方式や変形鏡方式を用いた位相変調素子として本発明のアクチュエータシステムを用いた可変焦点ミラーを適用することもできる。
【0081】
さらに、この位相変調素子の考え方の発展として、能動曲面(もしくは分離鏡アレイ面)の真上に平行に配した半透過ミラー面と能動曲面(もしくは分離鏡アレイ面)とのギャップを各制御点において制御する。面に入射した波長λの電磁波は、ギャップをλ/4(の整数倍)に制御した場合には、反射が起こらなくなる。この性質を利用した反射/非反射の2モードを実現すれば、一つの制御点を一つの画素に対応させたディスプレイを実現することもできる。
【0082】
(その他の実施の形態)
能動曲面の駆動は、本発明に係るアクチュエータに限らず、接触式の従来の積層型圧電アクチュエータや部分的な加熱制御によって形状が変化する選択駆動型形状記憶合金フィルム、あるいは、非接触式の電磁型アクチュエータや静電型アクチュエータを用いてもよい。
【0083】
本発明のアクチュエータシステムは、光波に限らず、音波等の電磁波に用いることも可能であり、受動(間接)送信するための反射鏡、能動曲面をホーンとするスピーカあるいは受信面を能動曲面としたアンテナ、望遠境や集音型マイクロホンの集音構造などに用いることもできる。
【0084】
さらに、一つの移動子を、ポンプのピストンとして利用することにより、インクジェットプリンタヘッド部の吐出機構に適用することもできる。
【0085】
【発明の効果】
以上のように本発明のアクチュエータによれば、圧電素子の伸長動作あるいは縮小動作を利用して移動子を一方向に沿って正逆方向に移動させることができるので、この移動子に駆動対象を連結することによって、高い精度でかつ十分な移動を確保して駆動対象を駆動でき、また、半導体製造技術を用いて小型のアクチュエータを実現できる。
【0086】
本発明のアクチュエータシステムによれば、駆動対象面の裏面側に連結されている複数の移動子の移動を、制御手段によって制御して駆動対象面を能動曲面としてその形状を変形させることよって、所望の曲面を近似的に形成できることになり、例えば、電磁波の送信特性や受信特性などを容易に可変できることになり、電磁波の送信や受信を行う各種の用途に利用することができる。
【0087】
特に、複数の各制御手段が他の制御手段と情報通信を行って対応する各移動子の移動を制御する、いわゆる自律分散型制御を行うことにより、中央集中制御に比べて、外部と素子との間の配線数および通信量の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る光学装置の概略構成図である。
【図2】図1の能動曲面の形状制御の原理を示す説明図である。
【図3】能動曲面が凹状に変形した状態を示す図である。
【図4】能動曲面の仮想分割のパターンを示す図である。
【図5】能動曲面の他の仮想分割のパターンおよび制御点を示す図である。
【図6】リニアアクチュエータの概略構成図である。
【図7】リニアアクチュエータの側面図である。
【図8】リニアアクチュエータの制御信号の波形図である。
【図9】リニアアクチュエータの動作説明図である。
【図10】リニアアクチュエータの実用的な制御信号の波形図である。
【図11】本発明の他の実施の形態の図8に対応する波形図である。
【図12】本発明の他の実施の形態の図10に対応する波形図である。
【図13】リニアアクチュエータの配置状態を示す図である。
【図14】能動曲面を放物面に形状制御する場合の説明図である。
【図15】能動曲面の他の形状制御の例を示す図である。
【図16】本発明のアクチュエータシステムの概略構成図である。
【図17】本発明の他の実施の形態のアクチュエータシステムの概略構成図である。
【図18】本発明のリニアアクチュエータの構成図である。
【図19】本発明の他の実施の形態のリニアアクチュエータの構成図である。
【図20】図19のリニアアクチュエータのアレイ構成を示す図である。
【図21】従来例を示す図である。
【符号の説明】
4 アクチュエータシスム
5 可変焦点ミラー
5a 能動曲面
7 リニアアクチュエータ
8 移動子
9 搬送子
10 固定子
11 積層型圧電素子
12,13 CPU
15 制御点

Claims (5)

  1. 一方向に沿って移動可能な複数の移動子をアレイ状に並設するとともに、前記移動子を吸着するための電極を有する単一の固定子および前記移動子を吸着するための電極を有する単一の搬送子を、前記移動子に対向するように配設し、前記搬送子には、伸縮動作によって該搬送子を前記一方向に沿って変位させる単一の圧電素子を併設し、
    前記固定子は、前記複数の移動子を個別に静電引力によって固定位置に吸着保持可能であり、前記搬送子は、前記固定子による吸着保持が解除されている状態で、前記複数の移動子を個別に吸着して前記一方向に沿って搬送可能であることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 請求項記載のアクチュエータであって、
    上下に重ねられる上部基板と下部基板とを備え、
    前記上部基板には、該上部基板に対して水平方向に移動可能な前記移動子が、支持ばねを介して移動子支持台構造に支持されており、
    前記下部基板には、前記固定子が備えられるとともに、前記搬送子が、支持ばねを介して搬送子支持台構造に支持されており、
    前記移動子支持台構造、前記搬送子支持台構造および前記固定子が、機械的に連結されていることを特徴とするアクチュエータ。
  3. 一方向に沿って移動可能な移動子と、前記移動子を吸着するための電極を有する固定子と、前記移動子を吸着するための電極を有するとともに、前記一方向に沿って変位可能な搬送子と、伸縮動作によって前記搬送子を変位させる圧電素子とを一枚の基板に備え、
    前記固定子は、前記移動子を静電引力によって固定位置に吸着保持し、前記搬送子は、前記固定子による吸着保持が解除されている状態で、前記移動子を吸着して前記一方向に沿って搬送するものであり、
    前記基板には、該基板に対して垂直方向に移動可能な前記移動子が支持ばねを介して移動子支持台構造に支持されるとともに、搬送子が支持ばねを介して搬送子支持台構造に支持されており、
    前記両支持台構造が、機械的に連結されているアクチュエータ素子であって、
    複数のアクチュエータ素子をアレイ状に並設してなるアクチュエータ。
  4. 駆動対象面を駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備え、
    前記アクチュエータは、前記駆動対象面の裏面側に分散配置されて該裏面側に連結されるとともに、アレイ状に並設され一方向に沿って移動可能な複数の移動子と、前記各移動子を固定位置に保持する単一の固定子と、前記固定子による保持が解除されている状態で、前記各移動子を保持して前記一方向に沿って搬送する単一の搬送子と、伸縮動作によって前記搬送子を前記一方向に沿って変位させる単一の圧電素子とを有し、
    前記制御手段は、前記各移動子の移動を制御して前記駆動対象面を能動曲面としてその形状を変形させることを特徴とするアクチュエータシステム。
  5. 駆動対象面を駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動を制御する複数の制御手段とを備え、
    前記アクチュエータは、前記駆動対象面の裏面側に分散配置されて該裏面側に連結されるとともに、アレイ状に並設され一方向に沿って移動可能な複数の移動子と、前記各移動子を固定位置に保持する単一の固定子と、前記固定子による保持が解除されている状態で、前記各移動子を保持して前記一方向に沿って搬送する単一の搬送子と、伸縮動作によって前記搬送子を前記一方向に沿って変位させる単一の圧電素子とを有し、
    前記各制御手段は、他の制御手段と情報通信を行うとともに、対応する移動子の移動を制御して前記駆動対象面を能動曲面としてその形状を変形させることを特徴とするアクチュエータシステム。
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