JP3750039B2 - 高流動コンクリートの配合設計方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高流動コンクリートの配合設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、高流動コンクリートは、フレッシュコンクリート(まだ固まらないコンクリート)の状態において材料分離が生じることのない良好な材料分離抵抗性を維持しつつ、スランプがたとえば25cm以上、スランプフローが50〜70cm程度の著しく高い流動性を呈するものであって、自重のみで型枠内の隅々まで充填される自己充填性を有することから、近年盛んに使用されるようになってきている。
【0003】
このような高流動コンクリートは、増粘剤の使用の有無により2種類に大別される。すなわち、高流動コンクリートに必要な高度の材料分離抵抗性を主として増粘剤を添加することで付与するもの(増粘剤系といわれる)と、増粘剤を使用することなくセメントおよび各種混和材の配合量(粉体量)を増大させて水粉体比を低減させることにより材料分離抵抗性を確保するもの(粉体系といわれる)である。また、必要に応じて両者を併用するもの(併用系といわれる)もある。なお、上記の水粉体比とは、水量/(セメント量+混和材量)であるが、特に粉体がセメントのみで混和材量がゼロの場合は水セメント比(水量/セメント量)という場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般にコンクリートの配合は硬化後のコンクリートに要求される品質と施工時の種々の条件を満足するように決定されるものであり、それは高流動コンクリートの場合においても同様であるが、通常のコンクリートの場合に比較して流動性が格段に高く、しかもより高度の材料分離抵抗性が要求されるという特殊性を有する高流動コンクリートの場合に適用し得る有効かつ適切な配合設計の手法は未だ確立されておらず、種々の配合設計手法が試行錯誤的に模索されている状況にあるのが実情である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記事情に鑑み、本発明は高流動コンクリートの配合設計をフレッシュコンクリートのレオロジー特性に基づいて行うものであり、その要旨は、硬化後のコンクリートに要求される品質に基づいて決定される鉄筋間隔と粗骨材体積濃度をパラメータとして、フレッシュコンクリートの材料分離抵抗性を示す指標である塑性粘度の値と該フレッシュコンクリートの鉄筋間通過率との関係を求め、その関係から鉄筋間通過率が所定値以上となるような塑性粘度の適正範囲を定め、フレッシュコンクリートの塑性粘度をその適正範囲内とするように調節する点にある。
【0006】
塑性粘度の調節は、増粘剤系の高流動コンクリートの場合にあっては増粘剤の種類に応じてその添加率を調節することで行えば良く、粉体系の高流動コンクリートの場合にあっては水粉体比を調節することで行えば良く、併用系の高流動コンクリートの場合にあってはいずれか一方もしくは必要に応じて双方を調節すれば良い。また、塑性粘度の代用特性として、フレッシュコンクリートが鉛直状態の漏斗を流下するに要する漏斗流下時間の値を用いることも可能である。
【0007】
また、上記の塑性粘度の調節に加えて、コンクリート打設時に要求される条件に基づいてフレッシュコンクリートの流動性を示す指標である降伏値の適正範囲を定め、降伏値がその適正範囲となるように調節することがより好ましい。その場合には、降伏値の調節を高性能AE減水剤あるいは高性能減水剤の種類に応じてその添加率を調節することで行えば良い。また、降伏値の代用特性としてスランプフローを用いることも可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。本実施形態の配合設計方法は、前提条件として与えられる鉄筋間隔と粗骨材体積濃度(あるいは単位粗骨材量)をパラメータとして、配合設計すべきフレッシュコンクリートの塑性粘度の値と鉄筋間通過率との関係を予め求めておくか、あるいは、配合設計を行うに当たってまずそのような関係を求めるための試験を行うことを基本とするものである。
【0009】
すなわち、コンクリートの配合設計を行うに当たっては、硬化後のコンクリートに要求される品質に基づいて決定される鉄筋間隔と粗骨材体積濃度(あるいは単位粗骨材量)が前提条件として与えられる。たとえば通常のコンクリート構造物の場合においては鉄筋相互間のあき寸法は60mm程度以上とされることが通常であるが、特殊な構造物の場合等においてはあき間隔がさらに小さくなるような過密配筋される場合もある。また、粗骨材体積濃度VG(あるいは単位粗骨材量G)は硬化後のコンクリートに要求される設計基準強度等に基づいて様々に設定され、高流動コンクリートの場合にはたとえばVG=0.25〜0.37m3/m3程度の範囲(G=700〜1,000kg/m3程度の範囲)で任意に設定される。
【0010】
そこで、上記の前提条件となる2要素をパラメータとして、フレッシュコンクリートの材料分離抵抗性を示す指標である塑性粘度の値と鉄筋間通過率との関係を予め求めておく。あるいは配合設計に際してまずその関係を求めるための試験を行う。そして、上記の関係を求めるためには、図3に示す鉄筋間通過試験装置および図4に示す回転翼型粘度計を用いて以下のような試験を行う。
【0011】
図3に示す鉄筋間通過試験装置は、(a)に示すように試料としてのフレッシュコンクリートが投入される容器の底部を傾斜面として側面に流出口を設け、その流出口に配筋モデルとしての種々のスクリーンを装着して、そのスクリーンを通過して流出する試料の通過率を測定するものである。(b),(c)、(d)は代表的な3種のスクリーンA〜Cを示すもので、スクリーンAは鉄筋間隔が60mm程度である通常の配筋条件に相当するもの、スクリーンBはそれよりやや密な配筋条件に相当するもの、スクリーンCは超過密な配筋条件に相当するものである。なお、上記のスクリーンはいずれも粗骨材の最大寸法が通常の20mm程度とされる場合に適用されるものであるが、特殊な構造物においては粗骨材最大寸法がたとえば10mm〜40mm程度に変更される場合もあるので、そのような場合には実際に使用される粗骨材の最大寸法に対応して格子間隔を変更したスクリーンを別途用意し、粗骨材最大寸法もパラメータとして試験を行うと良い。
【0012】
図4に示す回転翼型粘度計(Two-Point試験装置ともいわれる)は、(a)に示すように試料としてのフレッシュコンクリート中に回転翼を埋没させて回転させることにより、その回転数NとトルクTの関係から試料の塑性粘度と降伏値を求めるものである。すなわち、上記の試験により得られた回転数NとトルクTとの関係を(b)に示すような直線で表し、その直線の勾配(1/h)、回転を始める際のトルクの値(g)、および別途求める装置定数K,Gとから塑性粘度ηplと降伏値τyを求めるものである。塑性粘度はレオロジー特性のうち特に材料分離抵抗性に係わる指標であり、降伏値は特に流動性に係わる指標であって、それら塑性粘度と降伏値とを一括してレオロジー定数という場合がある。なお、高流動コンクリートのレオロジー定数(塑性粘度と降伏値)は、公知の二重円筒型回転粘度計では正確に計測することはできない。しかし、後述するように、塑性粘度は各種の漏斗の流下時間を測定することで簡易的に求めることもできるし、その流下時間の値を塑性粘度の代用特性として用いることも可能である。降伏値の代用特性としてはスランプフローを用いることが可能である。
【0013】
上記の鉄筋間通過試験装置と回転翼型粘度計を用いてフレッシュコンクリートの塑性粘度と鉄筋間通過率の関係を求めるには、粗骨材体積濃度および塑性粘度が様々に異なるフレッシュコンクリートを試料として多数調製し、それらの試料の塑性粘度を回転翼回転型粘度計により測定するとともに、鉄筋間通過試験装置により各スクリーンA〜Cに対する通過率を測定し、その結果から両者の関係を図5に示すようなグラフとして整理する。
【0014】
図5に一例として示すグラフは、粗骨材体積濃度VG(単位粗骨材量G)が異なる4種のフレッシュコンクリートを対象とし、それぞれの塑性粘度ηplの設定値を様々に変化させた場合におけるスクリーンB(やや密な配筋条件の場合に相当)に対する鉄筋間通過率を求めた結果を示すものである。ここでの試料の粗骨材体積濃度VGの値は高流動コンクリートにおいて通常採用されていると推定される範囲から4種類(VG=0.261、0.294、0.327、0.359m3/m3)選択されている。また、それら試料の塑性粘度ηplの値は概ね20〜80Pa・sの範囲にわたって設定されており、その設定は増粘剤系および併用系の高流動コンクリートに適用する場合においては増粘剤の種類や添加率の調節により行われ、粉体系の高流動コンクリートに適用する場合にあっては水粉体比を調節することで行われている。
【0015】
図5に示されるグラフから、粗骨材体積濃度VGが小さいほど鉄筋間通過率が高いこと、また、一般に塑性粘度ηplが大きいほど鉄筋間通過率も高くなる傾向にあるものの粗骨材体積濃度VGが大きい場合においては塑性粘度が過度に高いと鉄筋間通過率が逆に低下することが読み取れる。したがって、試料であるフレッシュコンクリートの粗骨材体積濃度や塑性粘度を様々に変化させてスクリーンA〜Cの全てに対して上記試験を行い、さらに必要であれば粗骨材最大寸法をも考慮して試験を行い、それぞれの結果を図5のようにグラフ化しておくことにより、配筋条件と粗骨材体積濃度をパラメータとして鉄筋間通過率と塑性粘度との関係を予め知ることができることになる。
【0016】
本実施形態の配合設計方法は、上記の試験によって予め求めた鉄筋間通過率と塑性粘度との関係から、配合設計するべきフレッシュコンクリートが良好なワーカビリティーを有するものとなるようにその塑性粘度の適正範囲を定めて、塑性粘度をその適正範囲内となるように調節するものである。
【0017】
すなわち、一般に良好なワーカビリティーが得られるためにはフレッシュコンクリートの鉄筋間通過率が所定値以上(通常は80%以上)であることが必要とされており、したがって、図5に例示したグラフにおいて鉄筋間通過率が所定値以上となるような塑性粘度の範囲が、配筋条件がやや密な場合(スクリーンBに相当)における良好なワーカビリティーが得られる条件となる。図5に示すグラフに関して具体的に説明すれば、鉄筋間通過率が80%以上で良好なワーカビリティーが得られるとしたとき、粗骨材体積濃度VGが0.261m3/m3の場合には塑性粘度の如何に拘らず条件を満たし、VG=0.359m3/m3の場合には塑性粘度の如何に拘らず条件を満たし得ないことが分る。また、VG=0.294m3/m3の場合には塑性粘度が約35Pa・s以上であれば条件を満たし、VG=0.327m3/m3の場合には塑性粘度が約42〜61Pa・sの範囲で条件を満たすことがわかる。同様に、配筋条件が異なる場合や粗骨材体積濃度が異なる場合にも、予め行った上記の試験の結果からそれぞれの条件に対応する塑性粘度の適正範囲を容易に定めることができることになる。
【0018】
本実施形態の配合設計方法では、フレッシュコンクリートの塑性粘度が上記のようにして定められた適正範囲となるように調節することを主眼とする。また、併せて、フレッシュコンクリートの降伏値も適正に調節することとする。降伏値の設定は施工条件、特に運搬時間、打込み時間、気温等を考慮して行う必要があり、また粗骨材体積濃度とも関連して適正値が変化するが、一般的には20〜130Paの範囲が適当とされている。そして、高流動コンクリートの場合には降伏値の代用特性としてスランプフロー値を採用することが可能であり、それが60±7.5cmの範囲内であれば問題ないとされる。
【0019】
そこで、本実施形態の配合設計方法では、降伏値の代用特性としてスランプフローが上記の範囲内となるように調節し、併せて、フレッシュコンクリートの塑性粘度を上記のように鉄筋間通過率が80%以上となるような範囲に調節するものとする。この場合、スランプフローの調節は高性能AE減水剤あるいは高性能減水剤(以下、それらを総称して高性能(AE)減水剤という)の種類に応じてその添加率を調節することで行う。また、塑性粘度の調節は、増粘剤系の高流動コンクリートの場合には増粘剤の種類に応じてその添加率の調節により行うこととし、粉体系の高流動コンクリートの場合にあっては水粉体比を調節することで行うこととし、併用系の高流動コンクリートに適用する場合には増粘剤の調節を基本として必要に応じて水粉体比の調節を併せて行うこととする。
【0020】
図1に示すフロー図を参照して、増粘剤系の高流動コンクリートの場合に適用する基本的な配合設計手順を説明する。まず、既に述べたように前提条件として鉄筋間隔および粗骨材体積濃度(単位粗骨材量)が与えられたら、それらの2要素をパラメータとして、予め求めておいた図5に示すようなグラフから、塑性粘度の適正範囲の設定を行い、また、降伏値の代用特性としてのスランプフローの適正範囲の設定を行う。
【0021】
一方、硬化後のコンクリートに要求される品質に基づき、適当と思われる暫定配合を行う。すなわち、使用するセメントや粉体、混和材の種類を決定するとともに、前提条件として既に決定されている粗骨材体積濃度の他に単位水量、単位粉体量、水粉体比、細骨材量、空気量等の値をそれぞれ暫定的に決定する。また、使用する増粘剤の種類や添加率、高性能(AE)減水剤の種類や添加率を決定し、必要であればこの段階で仮配合する。
【0022】
そして、上記の暫定配合に基づいてフレッシュコンクリートの試料を調製し、まず、スランプフローの測定を行い、測定値が先に設定した適正範囲内であるか否かを判定し、適正範囲を逸脱していれば高性能(AE)減水剤の添加率の変更あるいは種類の変更を行うことでスランプフローを再調節する。
【0023】
次いで、回転翼型粘度計により試料の塑性粘度の測定を行い、測定値が上記で設定した適正範囲内にあるか否かの判定を行い、適正範囲を逸脱していれば増粘剤の添加率の変更あるいは種類の変更を行って塑性粘度の再調節を行う。具体的には、塑性粘度が適正範囲よりも小さい場合には増粘剤の添加率を増加させて塑性粘度を増大させれば良く、逆の場合には逆の操作を行えば良い。
【0024】
以上により、塑性粘度と、降伏値の代用特性としてのスランプフローが適正範囲に設定された高流動コンクリートの配合が決定される。
【0025】
図2は粉体系の高流動コンクリートの場合に適用する基本的な配合設計手順を示すフロー図である。この場合も基本的には上記の増粘剤系の場合と同様であるが、増粘剤を用いないことから、塑性粘度が適正範囲を逸脱している場合の再調節を暫定配合の変更により行う。具体的には、塑性粘度が適正範囲よりも小さい場合には水粉体比を小さくして塑性粘度を増大させれば良く、逆の場合には逆の操作を行えば良い。なお、併用系の高流動コンクリートの場合には、増粘剤系の場合と同様に増粘剤の調節により塑性粘度の調節を行うことを基本とし、必要に応じて水粉体比の調節を補助的に行えば良い。
【0026】
上記手順による配合設計方法によれば、フレッシュコンクリートのレオロジー特性、特に物理量である塑性粘度に基づいて配合設計を行うので、合理的かつ客観的で信頼性を有する配合設計が可能となる。また、上記のようにして配合設計のなされたコンクリートの品質管理(すなわち実機プラントから出荷するフレッシュコンクリート、あるいは現場に搬入されたフレッシュコンクリートが、設計どうりの配合となっているか否かを確認するための品質管理)は、サンプルのレオロジー定数を測定することで確実に行い得る。
【0027】
ところで、塑性粘度の代用特性として各種の漏斗における流下時間を採用することができる。図6は、フレッシュコンクリートの塑性粘度とその代用特性としての漏斗流下時間との関係について説明するためのものである。この種の漏斗としては種々のものが知られているが、ここでは(a)に示すような2種類の鉛直管式漏斗を用いる場合について説明する。これらの漏斗はいずれも長さが800mmとされ、内径が98mmと70mmとされた単なる直管(便宜上、以下ではそれぞれをφ100Sロート、φ70Sロートと称す)であって、鉛直姿勢とした状態で内部に試料であるフレッシュコンクリートを充填し、下端を開放して試料を自由落下させ、全量が落下するまでの時間を測定するようにしたものである。
【0028】
上記の漏斗の流下時間と塑性粘度とは、(c)および(d)に示されるように強い相関関係がある。(c)および(d)は、(b)に示すような配合の7種類の試料について、それぞれの塑性粘度を回転翼型粘度計により測定するとともに、φ100Sロートおよびφ70Sロートでの流下時間をそれぞれ測定し、それらの関係をグラフ化したものである。これらのグラフから、黒マークで示す粉体系の試料(3種類)と、白マークで示した増粘剤系に属する試料(4種類)ごとに強い相関を示すことが分る。したがって、φ100Sロートあるいはφ70Sロートにおける流下時間を計測すれば、上記のグラフにより、あるいはグラフ中に示した回帰式から、塑性粘度を容易に求めることができる。
【0029】
したがって、配合設計に際して塑性粘度の値に代えて上記の漏斗流下時間を代用特性として採用して同様の配合設計を行うことが可能である。つまり、漏斗流下時間と鉄筋間通過率との関係を求め、それに基づき漏斗流下時間の適正範囲を定め、それが適正範囲となるように配合を調節すれば良い。そのようにすれば、回転翼型粘度計あるいは二重円筒型回転粘度計による塑性粘度の測定に代えてより簡略な漏斗流下試験を行うことで足りるし、現場における品質管理もより簡便に行い得る。
【0030】
以下に、本発明の配合設計方法を、増粘剤系および粉体系に適用した場合の具体的な実施例を示す。なお、以下の実施例1および実施例2は、いずれも図1および図2のフロー図に示されているように、暫定配合した試料のスランプフロー(降伏値の代用特性)が適正範囲となるように高性能(AE)減水剤の調節を行ったうえで、塑性粘度(およびその代用特性としての漏斗流下時間)が適正範囲内であるか否かの判定を行って配合を決定するものである。
【0031】
(1)実施例1(増粘剤系の場合)
・施工対象箇所:LNG地下式貯槽の側壁頂部
・硬化コンクリートの要求品質から定まる使用材料の種類と配合条件
セメントの種類:3成分系低発熱形セメント
単位セメント量:C=344kg/m3
単位水量 :W=155kg/m3
粗骨材体積濃度:VG=0.336m3/m3
単位粗骨材量 :G=900kg/m3
空気量 :A=5±1.5%
【0032】
・フレッシュコンクリートの要求品質から定まるレオロジー定数
条件 配筋条件:通常(図3 (b) に示すスクリーンA(鉄筋間隔58mm)相当)
粗骨材最大寸法:20mm
鉄筋間通過率 :80%以上
塑性粘度の適正範囲:27.5Pa・s≦ηPl≦60Pa・s
(予め行った試験により求めておいたグラフ(図示略)による)
スランプフロー(降伏値の代用)の適正範囲
:SF=60±7.5cm (52.5〜67.5cm)
【0033】
・暫定配合 空気量 :A=5±1%
水セメント比(水粉体比;粉体をセメントのみとしたので水セメント比とする。実施例2においても同様) :W/C=45.0%
細骨材率 :s/a=50.0%
単位水量 :W=155kg/m3
単位セメント量:C=344kg/m3
単位細骨材量 :S=873kg/m3
単位粗骨材量 :G=906kg/m3
増粘剤の添加率:(1)Va/W=1.1%
(2)Va/W=2.2%
(3)Va/W=3.3% の3水準
スランプフロー:上記(1)(2)(3)のそれぞれの場合に対し
(a)SF=55±2.5cm(52.5〜57.5cm)
(b)SF=60±2.5cm(57.5〜62.5cm)
(c)SF=65±2.5cm(62.5〜67.5cm)の3水準
【0034】
・レオロジー定数による判定および品質管理目標値の設定
上記▲1▼〜▲3▼、(a)〜(c)を組み合わせて暫定配合した9種類の試料につき、回転翼型粘度計による塑性粘度の測定試験およびφ100Sロートによる流下時間の測定試験を行い、その結果を図7に示す。
【0035】
図7(a)は増粘剤添加率と塑性粘度との関係を示すもので、塑性粘度が適正範囲として設定した範囲内(27.5Pa・s≦ηPl≦60Pa・s)に入るためには、増粘剤添加率が2.2%が最適であることが分る。つまり、増粘剤添加率が1.1%あるいは3.3%の場合には塑性粘度が適正範囲を外れる場合がある。したがって、これから増粘剤添加率を最終的にVa/W=2.2%に決定することにより、スランプフローにより代用される降伏値および塑性粘度の双方が適正範囲内となり、これを最適配合として決定する。
【0036】
図7(b)はφ100Sロートの流下時間と塑性粘度との関係を示すもので、図6(c)に示した回帰式に充分な精度で合致している。これから、塑性粘度の適正範囲に対応する流下時間t(秒)の適正範囲は1.93≦t≦4.86であり、これを配合決定後の品質管理における目標値とする。
【0037】
(2)実施例2(粉体系の場合)
・施工対象箇所:狭隘部である既存軌道直下のRC構造物
・硬化コンクリートの要求品質から定まる使用材料の種類と配合条件
セメントの種類:高炉セメントB種(高炉スラグ分量56%)
単位水量 :W=160kg/m3
粗骨材体積濃度:VG=0.319m3/m3
単位粗骨材量 :G=858kg/m3
空気量 :A=4.5±1.5%
【0038】
・試料の調製(暫定配合)
塑性粘度の適正範囲を定めるための試験を行うべく、次の4種の試料▲1▼〜▲4▼を調製した(図8(a)参照)。
▲1▼水セメント比W/C=40.0%、単位セメント量C=400kg/m3
▲2▼ 35.5 450
▲3▼ 32.0 500
▲4▼ 29.0 550
【0039】
・レオロジー定数の設定
上記の4種の配合の試料(1)〜(4)を対象として、鉄筋間通過試験装置により鉄筋間通過試験を行うとともに、回転翼型粘度計により塑性粘度の測定試験を行った。その結果を図8(b)に示す。このグラフから、次の条件により塑性粘度の適正範囲を定めた。また、降伏値の代用特性としてスランプフローの通常値を採用することとした。
条件 配筋条件:やや密(図3 (c) に示すスクリーンB(鉄筋間隔34mm)相当)
粗骨材最大寸法:20mm
鉄筋間通過率 :80%以上
塑性粘度の適正範囲の設定:60Pa・s≦ηPl≦125Pa・s(図8(b)より)
スランプフロー(降伏値の代用)の適正範囲:SF=60±7.5cm
【0040】
・レオロジー定数による判定および品質管理目標値の設定
上記4種の試料(1)〜(4)の配合をそのまま暫定配合として採用し、各試料のスランプフローが上記の適正範囲内であることを確認した後、各試料の塑性粘度を測定した。単位セメント量(水セメント比)と塑性粘度との関係を図8(c)に示す。この図から、塑性粘度が適正範囲として設定した範囲内(60Pa・s≦ηPl≦125Pa・s)に入るためには、試料(3)(水セメント比W/C=32.0%、単位セメント量C=500kg/m3のもの)が最適であることが分り、この試料(3)の配合を最適配合として決定する。
【0041】
また、各試料▲1▼〜▲4▼に対してφ100Sロートによる流下時間の測定試験を行い、塑性粘度との関係を図8(d)に示す。この図から、塑性粘度の適正範囲に対応する流下時間t(秒)の適正範囲は3.0≦t≦5.6であり、これを品質管理における目標値とする。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、フレッシュコンクリートのレオロジー特性、特に物理量である塑性粘度に基づいて配合設計を行うので、合理的でかつ客観的しかも比較的簡便で信頼性を有する配合設計が可能となり、かつ、同様の手法で品質管理も精度良く行うことが可能であり、高流動コンクリートの配合設計方法として極めて有効である。また、レオロジー定数である塑性粘度、降伏値の代用特性としてそれぞれ漏斗流下時間、スランプフローを採用することができるので、そのようにすればより簡便な配合設計と品質管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の配合設計方法の実施形態を示すもので、増粘剤系に適用する場合の手順を示すフロー図である。
【図2】 同、粉体系に適用する場合の手順を示すフロー図である。
【図3】 鉄筋間通過試験装置を示す図である。
【図4】 回転翼型粘度計を示す図である。
【図5】 塑性粘度と鉄筋間通過率との関係を示すグラフである。
【図6】 塑性粘度の代用特性としての漏斗流下時間について説明するための図である。
【図7】 本発明の配合設計方法を増粘剤系に適用した場合の具体的な実施例を説明するための図である。
【図8】 本発明の配合設計方法を粉体系に適用した場合の具体的な実施例を説明するための図である。

Claims (8)

  1. 高流動コンクリートの配合をフレッシュコンクリートのレオロジー特性に基づき決定する配合設計方法であって、硬化後のコンクリートに要求される品質に基づいて決定される鉄筋間隔と粗骨材体積濃度をパラメータとして、フレッシュコンクリートの材料分離抵抗性を示す指標である塑性粘度の値と該フレッシュコンクリートの鉄筋間通過率との関係を求め、その関係から鉄筋間通過率が所定値以上となるような塑性粘度の適正範囲を定め、フレッシュコンクリートの塑性粘度をその適正範囲内とするように調節することを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
  2. 請求項1記載の高流動コンクリートの配合設計方法において、塑性粘度の調節を増粘剤の添加率を調節することで行うことを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
  3. 請求項1記載の高流動コンクリートの配合設計方法において、塑性粘度の調節を水粉体比を調節することで行うことを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
  4. 請求項1記載の高流動コンクリートの配合設計方法において、塑性粘度の調節を、増粘剤の添加率の調節および水粉体比の調節の双方により行うことを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
  5. 請求項1,2,3または4記載の高流動コンクリートの配合設計方法において、塑性粘度の代用特性として、フレッシュコンクリートが鉛直状態の漏斗を流下するに要する漏斗流下時間の値を用いることを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
  6. 請求項1、2,3,4または5記載の高流動コンクリートの配合設計方法において、コンクリート打設時に要求される条件に基づいてフレッシュコンクリートの流動性を示す指標である降伏値の適正範囲を定め、降伏値がその適正範囲となるように調節することを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
  7. 請求項6記載の高流動コンクリートの配合設計方法において、降伏値の調節を高性能AE減水剤あるいは高性能減水剤の添加率を調節することで行うことを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
  8. 請求項6または7記載の高流動コンクリートの配合設計方法において、降伏値の代用特性としてスランプフローを用いることを特徴とする高流動コンクリートの配合設計方法。
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